7013 IHI 2019-05-10 14:00:00
当社民間航空機エンジン整備事業における業務改善命令に対する改善措置の提出について [pdf]

                                               2019年5月10日
各   位
                             株   式   会   社     I   H    I
                             東京都江東区豊洲三丁目1番1号
                             代表取締役社長             満岡 次郎
                                        (コード番号 7013)
                             問合せ先 広 報 ・ I R 部 長 白井 崇喜
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        当社民間航空機エンジン整備事業における業務改善命令に対する

                 改善措置の提出について


 2019年4月9日付「当社民間航空機エンジン整備事業で発生した不適切事象に対する国土交通省殿
からの行政処分について」においてお知らせしましたとおり,当社瑞穂工場における民間航空機エン
ジンの整備事業に関し,複数の不適切な事象が判明したことから,同日,国土交通省殿より,業務改
善命令を受け,同年5月10日までに改善措置を提出するよう指示されました。
 本日,当社は,国土交通省殿に対して,改善措置を提出いたしましたので,ご報告いたします。
 国土交通省殿に提出いたしました改善措置の概要は,下記のとおりです。


 また,当社は,日本経営倫理学会会長の梅津光弘氏(慶應義塾大学商学部准教授)および西村あさ
ひ法律事務所に本件の原因分析と対策提言をお願いし,その報告書を受領しております。概要につき
ましては,別紙のとおりです。


 今般,策定した再発防止策は,直接的には,当社瑞穂工場において判明した不適切事象に対するも
のですが,他の製造拠点も含めた当社の航空機エンジン事業全般において,適切な業務が確保される
よう再発防止策を踏まえた取組みを実施してまいります。


 このたびの不適切事象に関し,航空会社様ならびに関係機関をはじめとする皆様,当社のすべての
ステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けする事態となりましたことを,重ねて深
くお詫び申し上げます。


 当社は,一連の事態を受けて,コンプライアンスの徹底を図るとともに,不適切検査の原因分析も
踏まえたうえで,再発防止策を確実なものとし,全社一丸となって,信頼回復に努めてまいります。




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                         記


1.出荷品の回収
     不適切事案が確認された出荷品につきましては,検証の結果,搭載エンジンの安全性に直ちに
  影響がないことは確認されましたが,長期的継続使用の観点から,会社として,エンジン2台,
  部品58個について自主回収を行うことにしました。既に部品56個に関しては,処置済みであり,
  残り部品2個とエンジン2台についても5月末までに処置する予定です。


2.不適切事案の要因・背景の分析
(1) 今般判明した不適切事案が生じた事実に対する要因・背景の分析
 ①   事業拡大,業務量の増加に応じた検査員の育成・増員計画がなされないまま作業・検査が進
     められ,納期が優先された
 ②   現場において安全意識やコンプライアンス意識が働かなかった
 ③   検査スタンプの管理が不十分であった
 ④   検査記録電算システムにおいて記録の入力が煩雑だった
 ⑤   作業記録書の記述の方法が不明確であった
 ⑥   検査職場におけるOJT(On the Job Training,実地訓練)指導に関してルールがわかりづら
     いために解釈に幅が生じた
 ⑦   同じ職場内に検査員と作業員が所属しているため,両者の間の独立性が十分に担保されてい
     なかった


(2) 過去に社内において改善の機会があったにもかかわらず,見過ごされ,必要な措置が講じられ
     なかった事実に対する要因・背景の分析
 ①   経営層まで情報が共有されず,必要な要因分析や再発防止策を講じていなかった
 ②   過去に受けた厳重注意および業務改善勧告が生かされなかった
 ③   検査職場における検査員と中間管理職員のコミュニケーションが不足していた
 ④   経営層や管理職員が現場の実態を直視せず,現場力への過度な期待があった


3.再発防止策
(1) 安全意識の再徹底およびコンプライアンス教育の実施
 ①   当面の対策として認定事業場の全社員(経営層や管理職員含む)にコンプライアンス教育を
     実施する
 ②   継続の対策として認定事業場の新入社員へのコンプライアンス教育内容を強化する
 ③   継続の対策として認定事業場における全社員(経営層や管理職員含む)にリカレント教育を
     設定する




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(2) 安全管理体制の抜本的見直し
  ① 最高責任者による対話集会を定期的に開催する
  ② 検査員および作業者と中間管理職員のグループ・ディスカッションを定期的に開催する
  ③ 新たに航空安全管理責任者を任命し,安全管理業務を統括させるとともに「航空安全推進部」
   を新設する
  ④ 全検査工程に生産技術者および検査員経験者等をフロアエンジニア(航空安全推進部所属)と
   して配置する
  ⑤ 職場相談窓口(職場ホットライン・意見箱)を設置し,認定事業場に係る対応は航空安全管理
   責任者が行う


(3) 業務実施体制の見直し
  ① 現在の最高責任者である民間エンジン事業部副事業部長は,広範囲な経営判断をする地位には
   なかったので,最高責任者を副事業領域長(民間航空機エンジン整備事業担当)に変更する
  ② 検査スタンプと検査記録電算システムによる検査記録作成を廃止し,検査員は検査記録に手書
   きでサインし日付を記入する
  ③ 職場の処理能力を超えないために,処理能力に合わせた月次の投入計画を策定する
  ④ 認定事業場内の検査員資格は,国土交通省航空局(JCAB)と米国連邦航空局(FAA)の資格を
   一本化し,かつ一元管理する
  ⑤ OJT指導を受けている訓練生が検査の実作業を行うことがないよう検査員と訓練生を帽子等で
   識別する
  ⑥ 品質保証部門が定期的に検査記録と勤務データの照合および手順変更リストを点検する
  ⑦ コンプライアンス違反行為に厳しく対処する
  ⑧ 検査作業・判定への自部門の上司(製造)からの納期プレッシャーをなくすため,製造部門に
   所属していた検査員を品質管理部門へ集約する


(4) 外部専門家からの提言を受けての対策
   今回の不適切な事案に関する要因分析の深掘りと再発防止策の検証のために,外部専門家へ検
  証作業等を委嘱した。提言された再発防止策(下線)とそれを受けた当社の対策内容は以下のと
  おり。


  ① ルールの新設・変更の際に,形式的なルール周知にとどまらず,存在意義・趣旨に立ち返った
   説明を徹底すること
   ・ 検査員,作業者のリカレント教育のなかで行われる品質規程,航空法規の項目において,
     趣旨にまで立ち返ったルール新設・変更の説明を行う。




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② 検査部門に対して,生産性・効率性とは独立した評価基準を設定することで,検査部門の独立
 性を担保すること
 ・ 検査部門の独立性を担保するため,各検査職場の処理能力を超えた投入となり納期を優先
   せざるを得ないような環境を解消するとともに,製造部門に所属する検査員を品質管理部
   門に集約することで,検査員に対する納期プレッシャーを解消する。また,業務規程に,
   検査員に対する不当な圧力を排除する旨の規程を新たに設ける。


③ 瑞穂工場において,各部門・組織のトップが,中間マネジメント層を巻き込む形で,職場の風
 土改善に取り組むこと
 ・ 工場長主導で,現場検査員および作業者と製造部門管理職員のグループ・ディスカッショ
   ンの定期的実施を計画し,工場長が計画・実施状況の確認を行うことで,現場風土の改善
   に取り組む。


④ 外部機関との折衝において,十分かつ健全なコミュニケーションを尽くすこと
 ・ 検査員,作業者のリカレント教育の中で,ルールの意義を説明するとともに,検査員,作
   業者から出た意見を吸い上げ,必要に応じ再説明を行う。


⑤ IHIの技術者として抱くべき健全な責任感について改めて定義しなおすこと
 ・ 2019年3月28日に制定した航空・宇宙・防衛事業領域「品質基本行動指針」の前文にて,
   「『品質』は技術的に間違いのないことはもとより,各プロセスにおいて決められたルー
   ル通りに作業が行われることにより創り込まれる」ことを明記,周知徹底した。


                                          以   上




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                                               別紙


                    外部専門家による調査結果
1.設置の目的
 今回の不適切な事案の発生を受けて,組織,職場風土も含めた原因分析・深掘りのため,以下
の外部専門家(以下,「第三者検証委員会」といいます)に,当社報告書において不適切な事案と
判断された行為類型についての原因分析および再発防止策の検証を委嘱しました。


 慶應義塾大学商学部       准教授
                        梅津 光弘
 日本経営倫理学会        会長
 西村あさひ法律事務所      弁護士    平尾       覚
                    同   緒方   健太
                    同   鈴木   悠介
                    同   河野   光輝
                    同   秋吉       諒
                    同   松本   佳子


2.調査方法ならびに結果
(1) 調査方法
       第三者検証委員会は,独自に以下の調査を実施しております。
   ①   関連資料の精査
   ②   梅津光弘氏によるコンプライアンス研修へのフィードバックアンケートの精査
       (受講者 112名)
   ③   航空・宇宙・防衛事業領域従業員55名へのヒアリングの実施


(2) 調査結果および再発防止策の提言
       第三者検証委員会は,調査の結果ならびに分析を行った「調査報告書(民間航空エンジン
   整備工事における不適切事象に関する原因分析及び再発防止策の提言)」(以下,「本報告
   書」といいます)を当社に対し提出しております。
       本報告書では,不適切な事案が発生した原因として6つの要因を挙げ,それらに対する5
   つの再発防止策を当社に対し提言しております。


  <原因>
   ①   「顧客や他工程に迷惑を掛けまい」という責任感による正当化や,
                                    「技術面・安全面で問
       題がない」という正当化によって,関与者が罪悪感を抱きにくい状況に陥ったこと
   ②   瑞穂工場においては,強い同調圧力ゆえに,「おかしなことをおかしいと指摘する」,「で
       きないことをできないと言う」のが困難になっていたこと



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③   ルール変更の実施において,ルールの存在意義を従業員に正しく理解させないまま,“押
    し付けられたルール”との印象を蔓延させてしまったこと
④   管理部門と現場とのパイプ役となるべき中間マネジメント層における現場志向の欠如と,
    乖離がリスク情報として正しく検知されなかったこと
⑤   現場からのリスク情報に対する管理部門側のリスク感度の鈍さ・事実の矮小化傾向
⑥   トレーサビリティーの確保をはじめとする,航空機事業に従事する者が身につけるべき
    基本的な考え方が正しく理解されていなかったこと


<再発防止策>
①   ルールの新設・変更の際に,形式的なルール周知にとどまらず,存在意義・趣旨に立ち
    返った説明を徹底すること
②   検査部門に対して,生産性・効率性とは独立した評価基準を設定することで,検査部門
    の独立性を担保すること
③   瑞穂工場において,各部門・組織のトップが,中間マネジメント層を巻き込む形で,職
    場の風土改善に取り組むこと
④   外部機関との折衝において,十分かつ健全なコミュニケーションを尽くすこと
⑤   IHIの技術者として抱くべき健全な責任感について改めて定義し直すこと


                                          以   上




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