6958 CMK 2019-03-29 15:00:00
外部法律事務所からの調査結果と当社の対応等についてのお知らせ [pdf]

                                            2019年3月29日
各 位
                      会 社 名 日本シイエムケイ株式会社
                      代 表 者 代 表 取 締 役 社 長 大澤 功
                              (コード番号6958 東証第1部)
                      問合せ先 管理本部総務部 部長 上山 尚志
                                   (TEL. 03-5323-0231)


       外部法律事務所からの調査結果と当社の対応等についてのお知らせ


 当社が2018年12月14日に公表いたしました「製造工程に関する未承認変更について」に
関して、お客様、株主の皆様をはじめとする当社の関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心
配をおかけしておりますことを改めて深くお詫び申し上げます。当社グループでは、製品
の製造工程を変更する場合には、事前に納入先となるお客様にその変更に係る承認申請
を行うことがお客様との間で取り決められていたにもかかわらず、一部のお客様につい
てかかる承認申請を行わずに、製品の製造工程において、製造拠点の変更又は外注委託
を行っていた事案(以下「未承認4M変更」といいます。)が長期間継続していたにもか
かわらず、これを把握できなかった事実を重く受け止め、その理由や背景等も含め、外
部の独立した法律事務所に、徹底的な調査による事実解明と原因分析などを委ねました。
 今般、外部の法律事務所の調査結果の報告を受け、当社において、当社の役員の責任を
明らかにするとともに再発防止策を策定いたしましたので、「調査報告書(要約版)(以  」
下「本報告書」といいます。)を公表いたします。なお、本報告書は、外部の法律事務所
から報告を受けた調査結果に基づき、当社が作成したものです。
 今回の調査結果を真摯に受け止め、当社グループを挙げて徹底して再発防止を図ると
ともに、お客様、株主の皆様をはじめとする当社の関係者の皆様からの信頼を回復する
ため全力で取り組んでまいります。

                      記

1.事実関係の概要
 当社は、2000年代ころまでの主に民生品を取り扱っていた時期において、納期遅れを回避す
る必要性が生じた場合や稼働状況の悪い工場に製造場所を移管する必要性が生じた場合等に、
日常的に未承認4M変更を行っておりました。客観的資料を確認することができた最も古い未承
認4M変更は、2002年に実施されたものですが、当社としては2002年以前からも行われていたと
認識しております。
 2000年代以降、当社においては、製造工程の変更管理が厳格になされる車載品の取り扱いが
多くなり、社会的にも4M変更管理の問題が重要視されるようになったものの、当社における以
上のような実務的運用や役職員の意識は変わることはなく、未承認4M変更を行うことが常態化
しておりました。
 2012年ころには、未承認4M変更を行った製品について、複数のお客様から製品の不具合に関
する指摘を受け、当社はその都度改善に向け対応してまいりましたが、かかる対応は十分に機
能せず、その後も繰り返し未承認4M変更が行われておりました。
 その一例として、2016 年ころに当社において実際の発注が増加したことに伴い、タイ工場、
新潟工場及び無錫工場において生産能力を超過し、納期が逼迫する状況が発生したため、納期
遅延を回避する目的で、全社的に大規模な未承認 4M 変更が行われました。なお、本件調査の
結果明らかとなった未承認 4M 変更の原因の詳細については、本報告書「第 3 編 発生した
問題の原因」をご参照ください。
 本調査の結果明らかとなった、未承認4M変更を行っていた全てのお客様数は175社となり、



                          1
現在、当該お客様に対して未承認4M変更による品質への実質的な影響がないことを確認したう
えで、その旨の報告をそれぞれのお客様に行い、随時お客様からご了解を得ております。

2.役員の処分
  当社は、未承認 4M 変更について、当社の関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおか
けしたことを厳粛に受け止め、未承認 4M 変更についての責任の所在を明確にするため、下
記のとおり関係取締役の異動及び報酬減額を行うことといたしました。当社においては、
これを機に抜本的な改革に取り組み、外部の法律事務所の提言を踏まえて、再発防止策を
着実に実行してまいります。
 (1) 異動内容
     未承認4M変更の問題を認識しつつ、当社の代表取締役社長在任中にこれを是正する
   ことのできなかった当社の髙井建郎代表取締役会長については、本日付「代表取締役
   の異動及び役員人事に関するお知らせ」で公表いたしましたとおり、未承認4M変更に
   対する経営責任を明確にするため代表権を返上したい旨の申し出があり、代表取締役
   会長から取締役会長とすることを、本日開催された当社の取締役会で決議いたしまし
   た。なお、同氏は、2019年6月下旬に開催予定の当社第59回定時株主総会の終結の時
   点をもって、任期満了により取締役を退任する予定です。
     また、営業担当取締役として、未承認での製造拠点の変更又は外注委託を推進した
   当社の柴田栄造取締役常務執行役員についても、本日付「代表取締役の異動及び役員
   人事に関するお知らせ」で公表いたしましたとおり、執行役員としての常務の任を解
   き取締役執行役員とすることを、本日開催された当社の取締役会で決議いたしました。

(2) 報酬減額
  代表取締役会長      髙井 建郎   月額報酬の 50%(2019 年 4 月から 3 か月間)
  代表取締役社長      大澤 功    月額報酬の 50%(2019 年 4 月から 3 か月間)
  取締役常務執行役員    柴田 栄造   月額報酬の 30%(2019 年 4 月から 3 か月間)
  (製造担当)
  取締役執行役員(内部   花岡 仁志   月額報酬の 30%(2019 年 4 月から 3 か月間)
  統制担当)
  取締役常務執行役員    黒沢 明    月額報酬の 15%(2019 年 4 月から 3 か月間)
  (経理財務担当)

3.再発防止策
  外部の法律事務所からの未承認 4M 変更の原因及び再発防止策に関する提言を受け、当社
としては、以下の再発防止策を策定し、今後これらの施策を着実に実行してまいります。
(外部の法律事務所からの提言の詳細は本報告書「第 5 編 再発防止策に関する提言」を
ご参照ください。)
 (1) 受注統制機能の強化
     当社としては、外部の法律事務所からの指摘のとおり、生産能力と受注量のバラン
   スを統制する機能の不備が未承認4M変更の主要な要因の一つと考えております。そこ
   で、当社の生産能力と受注量の管理を一元的に行うため、受注統制本部を新たに発足
   し、納期状況を定量的に把握できる仕組み、並びに納期遅延状況及び需給バランスに
   応じたアクションプランを実行できる仕組みを策定しました。そして、新たな生産管
   理システムの導入及び運用にも着手することで、受注データの管理を行い、納期を遵
   守しつつ、当社の生産能力を超えた受注が行われることがないようにします。

(2) 第三者を含めた監視体制の強化
    また、本報告書において、監視体制の機能不全を指摘されたことを踏まえ、外部の
  品質コンサルタントを委員に加えた品質委員会を設置し、品質マネジメントシステム、
  製造工程管理状況、品質保証に関するリスク等の課題を審議します。また、社外取締
  役、外部弁護士等で構成されるモニタリング委員会を設置し、再発防止策の実施状況



                         2
 等をモニタリングします。
  さらに、内部監査室の人員を増員し、工場の内部監査を年3回以上実施することで、
 当社の内部監査機能を強化します。
  加えて、当社の内部通報制度の周知徹底を図り、内部通報制度の活用を促します。

(3) コンプライアンス及び品質保証に対する規範意識の強化
    当社は、コンプライアンス及び品質保証に対する規範意識の低下に関する外部の法
  律事務所からの指摘を厳格に受け止め、以下の施策を策定いたしました。
  ① 経営トップによるメッセージの発信
     2018年12月に2度、コンプライアンスを重視した経営を行う旨の宣言を行いました。
   今後も、定期的に経営トップから従業員に対するメッセージの発信を行います。

 ② コンプライアンスに対する意識の強化
   経営層への外部弁護士による四半期ごとのコンプライアンス教育を実施するととも
  に、従業員に対しても継続的かつ定期的にコンプライアンス教育を実施します。また、
  経営層と部課長との対話、コンプライアンスに関する社内アンケート等も今後継続的
  に実施します。

 ③ 品質保証に対する意識の強化
   品質担当役員による品質意識の向上を目的とした教育及び車載品に関する安全意識
  の向上を目的とした教育を定期的に実施します。

(4) お客様とのコミュニケーション
    需給バランスに応じて、お客様に対する4M変更承認申請又はその相談を早期に実施
   します。

(5) 品質管理体制の強化
  ① お客様要求事項の周知徹底と受注時における精査
    年4回実施していた品質会議を毎月開催することにより、品質に関連する事項の社
   内情報共有を密にして、4Mを含む製造工程に関するお客様要求事項の伝達を行うこと
   で、お客様要求事項の全社的な周知徹底を図ります。
    また、お客様から新規に受注する都度、営業部門及び品質管理部門が主体となって、
   お客様要求事項を精査し、必要に応じて具体的な内容を協議させていただくことによ
   り、お客様要求事項を遵守した生産活動が行われるようにします。

 ② 社内規程の見直し・周知徹底
   4M変更管理規程を改訂することで、国内外の4M変更内容及び手続の進捗状況を全社
  的に共有できる仕組みを構築します。さらに、社内規程の周知徹底を図るため、品質
  管理部門が、各工場の課長職以上の従業員に対する教育を、年2回以上実施します。

 ③ 外注先の信頼性の確保の徹底
   外注先に対する、お客様要求事項及び当社要求事項の周知徹底を図るため、工場品
  質部門が、全外注先に対して要求事項の説明を実施します。また、3年ごとに外注先
  の信頼性試験を実施することで、外注先の信頼性を確保します。

4.業績への影響
  未承認 4M 変更が 2019 年 3 月期の当社グループ連結業績に与える影響については、現時
点では軽微であると判断しておりますが、重要な影響を及ぼすことが明らかになった場合
には速やかに公表いたします。
  お客様、株主の皆様をはじめとする当社の関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配




                         3
をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。

5.おわりに
  昨今、EV、自動運転、5G、IoT、AI などの技術伸展により多くの産業分野でイノベーシ
ョンが起き、それらに即応する勢いで新たな技術結合が出現し、社会全体が大きく変わろ
うとしています。
  このような大変革期において、当社の社会的な存在意義は、より安全でより信頼性の高
いプリント配線板をお客様にお届けすることであります。しかしながら、この度の未承認
4M 変更問題は、お客様の信頼を裏切るものであり、ひいては当社の社会的存在意義を自ら
否定するものといわざるを得ません。
  当社としては、お客様との取り決めを遵守するという、取引におけるもっとも基本的な
意識・行動を疎かにしていたことを真摯に反省し、今後、昨年 4 月以降実施している未承
認 4M 変更の解消へ向けた対応を更に推し進めるとともに、今回取りまとめた再発防止策を、
経営トップの強いリーダーシップの下、当社グループの全役員・全従業員が一丸となって
着実に実行してまいる所存です。
  正々堂々としたものづくりを実践し、失った信頼の回復に全力で邁進してまいります。

                                        以 上




                       4
 調査報告書
   (要約版)




  2019 年 3 月 29 日




日本シイエムケイ株式会社




         1
                             目        次
第1編   はじめに ........................................................... 4
 第1   これまでの経緯 ..................................................... 4
 第2   本報告書の位置付けと構成 ............................................ 4
 第3   用語の定義 ......................................................... 4
 第4   調査の方法等 ....................................................... 5
 1    調査期間 ........................................................... 5
 2    調査の方法 ......................................................... 5
 第5   調査の前提・留保/調査できなかった事項 .............................. 6
第2編   認定された事実関係の概要 ............................................ 8
 第1   要旨 ............................................................... 8
 第2   当社の概要 ......................................................... 8
 第3   4M 変更に関するルール ............................................... 9
 1    顧客との取り決め ................................................... 9
 2    社内規程 ........................................................... 9
 第4   未承認 4M 変更(本件不適切行為)の経緯と内容 ......................... 9
 1    未承認 4M 変更の経緯及び内容 ......................................... 9
 2    品質への影響 ...................................................... 13
 3    役員の関与 ........................................................ 14
第3編   発生した問題の原因 ................................................ 16
 第1   外的要因 .......................................................... 16
 1    基板業界の受注構造 ................................................ 16
 2    民生品における実務慣行............................................. 16
 3    4M 変更承認手続きの長期化 .......................................... 16
 4    車載品の急激な受注拡大............................................. 17
 5    顧客からのプレッシャー............................................. 17
 第2   内的要因 .......................................................... 17
 1    役員の意識改革が不十分であったこと ................................. 17
 2    全社的なモラル・意識の低下・麻痺 ................................... 17
 3    再発防止策の不奏功 ................................................ 18
 4    役職員の顧客承認の要否に関する理解不足 ............................. 18
 5    営業部門及び製造部門の問題点 ....................................... 18
 6    監視部門の問題点 .................................................. 19
第4編   法的責任の検討 .................................................... 20
 第1   顧客に対する契約上の責任の可能性 ................................... 20


                                  2
 第2   刑事責任及び行政法規上の責任の可能性 ............................... 20
 第3   役員の責任 ........................................................ 20
第5編   再発防止策に関する提言............................................. 22
 第1   役員及び全社的な意識改革 ........................................... 22
 1    コンプライアンス宣言............................................... 22
 2    経営体制の刷新 .................................................... 22
 3    社外役員との情報共有・活用強化 ..................................... 22
 4    コンプライアンス研修・教育の定期的な開催 ........................... 22
 5    人事制度等の見直し ................................................ 23
 第2   営業部門及び製造部門の改革 ......................................... 23
 1    顧客承認に向けた組織的な努力 ....................................... 23
 2    営業部門と製造部門の連携強化 ....................................... 23
 3    受注と製造の調整強化............................................... 23
 4    生産能力の増強 .................................................... 23
 第3   4M 変更に係る契約条件の整理・見直し ................................ 24
 第4   4M 変更管理の改革 .................................................. 24
 1    4M 変更管理規程の周知 .............................................. 24
 2    工程変更を制限するシステムの検討 ................................... 24
 第5   監視体制の改革 .................................................... 24
 1    内部監査体制 ...................................................... 24
 2    内部通報制度の周知 ................................................ 24
 第6   モニタリング ...................................................... 25




                                 3
                      第1編 はじめに

第1 これまでの経緯
    2018 年 2 月に、当社は、当社の顧客から、同顧客宛に、当社が未承認 4M 変更を行ってい
る旨の匿名の情報提供がなされた旨の連絡を受けた。
    2018 年 5 月、代表取締役社長 B は、当社における未承認 4M 変更の実態について初期的な
内部調査を顧問弁護士の所属する法律事務所に委託した。
    同内部調査の結果を受け、当社においては、代表取締役社長 B を中心として未承認 4M 変
更について強い問題意識を持つようになり、代表取締役社長 B は、社内の抜本的な改善策
を講じるため、同年 11 月、外部の法律事務所である高井&パートナーズ法律事務所及びレ
ックス法律事務所(以下、「外部調査チーム」という)に改めて当社における未承認 4M 変更
の実態等の調査を依頼するに至った。


第2 本報告書の位置付けと構成
    本報告書は、本調査の結果明らかになった事実関係及び当該事実関係を踏まえた原因分
析及び再発防止策等についての外部調査チームの検討結果を、当社の責任において要約し、
取りまとめたものである1。
    本報告書においては、外部調査チームによる本調査により明らかになった事実関係(下
記第2編参照)、その原因分析(下記第3編参照)、法的責任の検討(下記第4編参照)及
び再発防止策の提言(下記第5編参照)について報告する。


第3 用語の定義
             用語                     定義
    移管先工場             製造場所の移管後の工場
    移管元工場             製造場所の移管前の工場
    車載品               自動車に設置される製品
                      日本シイエムケイ株式会社並びにその子会社及び関連
    当社グループ
                      会社
                      製品の品質を維持・管理することを目的として締結さ
    品質保証マニュアル
                      れる協定書や顧客から差し入れられる文書
                      顧客に承認を得ずに、当社グループの他の工場に製造
    未承認移管
                      場所を変更すること

1
 外部調査チームによる本調査の結果には、多数の個人情報、顧客情報及び顧客との取引条件並びに当社
の営業秘密を含む秘密情報が含まれており、そのまま開示することは適当ではない。これらの事情に鑑み、
当社としての説明責任を可能な限り果たす観点から、当社固有の責任において、本報告書を作成し、公表
するものである。


                           4
                     顧客の承認を得ずに製造の全部を外部業者へ委託する
未承認 OEM
                     こと
                     顧客の承認を得ずに一部の工程を外部業者へ委託する
未承認外注
                     こと
未承認 4M 変更            顧客の承認を得ずに 4M 変更を行うこと
民生品                  車載品以外の製品
民生品メーカー              民生品向けの製品を当社グループに発注する顧客
                     デザインレビューの略称。4M 変更時の品質トラブルを
DR                   未然に防止するため第三者の観点から製品の評価・検
                     証を行うこと
                     一般的に機械加工では、重要視されている人(Man)
                                             、
4M                   機械(Machine)
                               、材料(Material)及び方法(Method)
                     の 4 要素(4M)
                     人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)及び方
4M 変更                法(Method)が生産の 4 要素(4M)のいずれかに変更
                     が生じること


第4 調査の方法等
1    調査期間
 外部調査チームは、2018 年 11 月 12 日から 2019 年 3 月 8 日までの間(以下、「本件調査
期間」という)
      、以下に掲げる方法による調査及び調査結果に基づく協議を行った。
 この間、外部調査チームは、計 49 回にわたるヒアリング調査を実施すると共に、事前打
ち合わせを含め、合計 12 回にわたる会議形式の審議を行った。


2    調査の方法
 (1)入手資料
 外部調査チームは、網羅的に本件不適切行為に関する資料開示を求めると共に、当社に
対し、定期的に追加資料の開示、質問事項への回答を求めた。当社は、クラウド上のファ
イルへのアクセス権を付与する方法により資料開示を行ったほか、随時ヒアリング時に書
面により資料開示を行った。


 (2)インタビュー及び事情聴取
 外部調査チームは、本件調査期間中、当社の役職員合計 44 名を対象に、計 49 回、合計
約 79 時間にわたるヒアリングを実施した。




                           5
 (3)デジタル・フォレンジック調査
 外部調査チームは、本件調査期間中、本件不適切行為に関連性の強い部署に所属する当
社の従業員 3 名が 2011 年以降に送信し又は受信したメールについて、デジタル・フォレン
ジック調査を行った。
 デジタル・フォレンジック調査の実施にあたっては、幾つかのキーワードによって本件
不適切行為に関連性の強いと思われるメールを抽出し、そのレビューを行った。もっとも、
検索結果が膨大な数量に及んだことから、一部のメールについては、外部調査チームが選
別した結果に基づき、AI によりスコアリングを行い、スコアが上位に分類されるメールに
ついて、外部調査チームにおいてレビューを行った。


 (4)アンケート調査
 外部調査チームは、本件調査期間中、当社の従業員 1,564 名を対象として、本件不適切
行為に関する認識等に関するアンケート調査を行った。
 アンケート調査の実施にあたっては、25 問の質問について、原則として選択肢を選ぶ形
で匿名での回答を求め、質問によっては自由記載欄を設けた。アンケート調査は、ウェブ
上で回答をもらう形式で実施し、従業員が回答しやすいよう各事業所に共用パソコンを設
置した。
 アンケート調査の結果、当社の従業員 1,459 名(回答率 93.3%)から回答が得られた。


 (5)通報窓口
 前記アンケート調査の実施に際して、外部調査チームは、当社の従業員に対し、本件不
適切行為に関する通報窓口として、外部調査チームが受信者となるメールアドレスを告知
し、従業員に対して情報提供を求めた。


 (6)PWB コンサルタントへの調査委託
 外部調査チームは、未承認 4M 変更実施時における製品の評価、検証が適切に行われてい
たか否か等、技術面の調査を行うにあたり、専門家として、PWB コンサルタントである保坂
三喜雄氏に調査を依頼した。同氏からは、2019 年 3 月 6 日、調査報告書の提出を受けた。


第5 調査の前提・留保/調査できなかった事項
 外部調査チームは、当社及びその子会社である旗利得電子(東莞)有限公司(以下、同
社工場を「東莞工場」という)、希門凱電子(無錫)有限公司(以下、同社工場を「無錫工場」
という)及び CMK Corporation (Thailand) Co.,Ltd. (以下、同社工場を「タイ工場」とい
う)のみを調査対象としており、その他の子会社の調査は実施できていない。
 当社は、群馬工場、新潟工場及び蒲原工場以外にも国内に、SE センター、秩父工場を保
有しているが、 センターはもともと民生品の製造が主で基板の製造も 2005 年ころが最後
       SE


                             6
であったこと、また、秩父工場は金型がメインでありプリント基板は製造していないこと
から、本調査の対象に含まれていない。シイエムケイ・プロダクツ株式会社は試作に加え、
プリント基板の量産も行っているが、同社に関しては、時間的制約等により当社が資料を
開示できなかったことから、本調査の対象とならなかった。
 外部調査チームの調査を通じて、当社グループにおいてはかなり長期にわたって未承認
での 4M 変更が行われていた事実が確認された。しかし、当社が開示した資料は、主として
2012 年以降の資料に限られており、それ以前の古い資料は散逸しており、適切な資料収集
が困難であり、2012 年以前の資料は基本的に開示を行っていないこと、後記第 2 編第 4 の
1(2)のとおり 2012 年ころに未承認の 4M 変更に起因するクレームが複数発生し、再発防止
策を対外的に表明していることなどから、本調査においては 2012 年以降が主たる調査対象
期間とされており、それ以前における未承認 4M 変更の実態については詳細な調査は実施さ
れていない。
 当社においては、後記第 2 編第 4 のとおり様々な形態による 4M 変更が行われていたが、
本調査報告書においては、時間的な制約もあり、工場の移管及び製造場所の変更を中心的
な調査事項として取り扱っている。
 メールについても、時間的な制約等から、本件不適切行為に関連性の強い部署に所属す
る当社の従業員 3 名のメールを調査したに留まり、他の役職員のメールに対するデジタル・
フォレンジック調査は実施できていない。




                       7
            第2編 認定された事実関係の概要

第1 要旨
 当社は、2000 年代ころまでは主に民生品を取り扱っており、民生品メーカーとの間の契
約では、顧客の承諾を 4M 変更の条件とする旨の規定が定められることが少なかった。その
ような背景のもと、当社においては、以前より、納期遅れを回避する必要性が生じた場合
や各工場の収益を改善するために稼働状況の悪い工場に製造場所を移管する必要性が生じ
た場合等に日常的に未承認 4M 変更が行われていた。
 2000 年代以降、当社においては、4M 変更管理が厳格な車載品の取り扱いが多くなり、社
会的にも 4M 変更管理の問題が重要視されるようになったが、当社における以上のような 4M
変更の実務的運用や役職員の意識は本質的に変わることはなく、未承認 4M 変更が常態化し
ていた。
 2012 年ころには、未承認 4M 変更が実施された製品について複数顧客から品質クレームを
受けたため、当社はその都度再発防止策を策定したが、かかる再発防止策は十分に機能せ
ず、その後も未承認 4M 変更が繰り返されていた。
 その一例として、2016 年ころに当社において実際の発注が増加したことに伴い、タイ工
場、新潟工場及び無錫工場において生産キャパシティを超過し、納期が逼迫する状況が発
生したため、納期遅延を回避する目的で、全社的に大規模な未承認 4M 変更が行われた。
 以下においては、当社の概要、当社における 4M 変更のルール、未承認 4M 変更(本件不
適切行為)の経緯と内容について記載する。


第2 当社の概要
 本事案の対象製品及びグループの関係拠点等は以下のとおりである。


対象製品        プリント配線板(車載品、通信機器、AV・デジタル家電及びデジ
            タルカメラ等に用いられている)
関係する拠点      国内 3 拠点
             日本シイエムケイ株式会社            G ステイション工場
             日本シイエムケイ株式会社            新潟工場
             日本シイエムケイ株式会社            蒲原工場
            海外 3 拠点
             中国 旗利得電子(東莞)有限公司
             中国 希門凱電子(無錫)有限公司
             タイ CMK CORPORATION (THAILAND) CO.,LTD.




                           8
第3 4M 変更に関するルール
    1   顧客との取り決め
    当社が顧客から受注する場合、顧客との間で取引基本契約書を締結するほか、製品の品
質を維持・管理するため、顧客との間で「取引先品質保証協定書」等の協定書を締結した
り、顧客から品質保証マニュアルを差し入れられることがある。
    取引基本契約書においても、品質保証マニュアルを遵守することが契約上の義務として
定められることが多い。
    顧客との取引基本契約書や品質保証マニュアルにおいて、4M 変更をするときは事前に顧
客の承認を得なければならないと規定されている2ときや顧客と別途合意があるときは、顧
客との契約上、これらの取引基本契約書や品質保証マニュアルに定められた所定の手続を
行うことが必要となり、これに違反したときは契約違反となる。


    2   社内規程
    当社グループは、 変更時の品質トラブルを未然に防止するため、
            4M                    関係部署による確認・
検討・DR を経て 4M 変更を実施することを目的として、
                            「4M 変更管理規程」という社内規程
を制定している。「4M 変更管理規程」は、社内における 4M 変更の申請手続及び顧客の承認
の要否及び手続についても定めている。


第4 未承認 4M 変更(本件不適切行為)の経緯と内容
    1   未承認 4M 変更の経緯及び内容
        (1)過去から行われていた未承認 4M 変更
    当社で行われていた未承認 4M 変更のうち、
                         客観的資料で確認できた最も古いものは、2002
年に実施されたものである。
    もっとも、複数の役職員が、自身の入社時(すなわち 2002 年より以前)から未承認 4M
変更が行われていた旨、また、未承認 4M 変更が顧客に露見しないように製造カードの改ざ
ん等の偽装工作を行っていた旨を述べていることから、当社においては、2002 年より以前
から未承認 4M 変更が行われていたものと考えられる。
    当社は、2000 年代ころまでは主に民生品を取り扱っており、民生品では事後的に未承認
4M 変更の承諾を得られることが多かったという背景があり、そのような背景のもと、納期
遅れを回避する必要性が生じた場合や各工場の収益を改善するために稼働状況の悪い工場
に製造場所を移管する必要性が生じた場合等に未承認 4M 変更が行われていた。また、この
ような未承認 4M 変更の必要性が生じるか否かにかかわらず、過去から継続して取引のある
外注先を顧客からの承認を得ることなく使っていた。


2
 たとえば、工場の移管・増設、新規設備の導入、加工方法の変更、加工条件の変更、製造場所の変更等
について、顧客の事前承認が必要とされることがある。


                            9
     (2)2012 年以降の未承認 4M変更の実態
    当社は、2009 年から 2012 年にかけて、未承認 4M 変更を経た製品に係る品質クレームを
計 3 社から受け、その都度再発防止策を策定し、同社らに報告した。しかし、当社の策定
した再発防止策及びその実施状況はいずれも不十分なものであり、2013 年以降も未承認 4M
変更が全社的に繰り返されていた3。その一例が、以下に記載する、2016 年ころの大規模な
未承認 4M 変更である。


     (3)2016 年ころの大規模な未承認 4M変更
       ア 2016 年ころの未承認 4M 変更の内容
    当社は、2008 年のリーマンショックを受けて、大幅に受注が減少し、2015 年ころまで厳
しい経営状態が継続した。かかる状況から、当社は受注増加を図るべく、全社的に営業強
化の意識が強くなっていた。
    2016 年ころから実際の発注が増加したが、以上のような営業強化という意識は変わらず、
まず、2016 年初めころ、タイ工場で生産キャパシティを超過し、納期が逼迫する状況が発
生した。当社は、タイ工場における納期遅延を回避するため、東莞工場及び無錫工場に対
して未承認移管を実施した。
    さらに 2016 年 5 月ころから、新潟工場においても、群馬工場生産停止に伴う新潟工場へ
の生産移管及び受注増加の影響により生産キャパシティを超過し、納期が逼迫する状況が
発生した。当社は、新潟工場における納期遅延を回避するため、複数製品について、蒲原
工場及び無錫工場への未承認移管、外部業者への未承認 OEM 及び一部工程の未承認外注を
実施した。
    2016 年 12 月ころには、新潟工場から生産移管を受けていた無錫工場において、生産キャ
パシティを超過し、納期が逼迫する状況が発生した。当社は、無錫工場における納期遅延
を回避するため、複数製品について無錫工場からタイ工場及び新潟工場への未承認移管を
実施すると共に未承認 OEM、未承認外注を実施した。これにより生産キャパシティを超えた
タイ工場においても東莞工場及び新潟工場への未承認移管を実施することとなり、さらに
東莞工場においても、外部業者へ未承認移管を実施することとなった。
    タイ工場及び新潟工場における未承認 4M 変更は、取締役(当時)B の入ったメール及び
同氏の出席する生産会議と呼ばれる会議4にて納期逼迫状況及びそれを解消するための生産
移管のプランが共有され進められたものであり、無錫工場における未承認 4M 変更は、社外
取締役を除くすべての取締役が出席する月次報告会で議論され、執行役員(当時)E 及び代
表取締役社長(当時)A とのやり取りを経て進められたものであった。

3
 なお、当社は、175 社の顧客向けの製品について未承認 4M 変更が行われていたことを確認した。
4
 タイ工場から東莞工場への移管について議論されている 2016 年 10 月 20 日開催の生産会議には代表取締
役社長(当時)A も出席している。


                           10
       イ 未承認 4M 変更の方法
    品質保証マニュアルにおいて顧客の事前承認が必要とされる 4M 変更の内容は、「4M 変更
管理規程」と一致しない場合があるため、最終的には「顧客との合意」を確認する必要が
あるが、当社では顧客毎の確認をしていなかった。また、本来の「4M 変更管理規程」に基
づく承認手続は履践されていなかった5。
    また、当社においては、未承認の移管が行われた製品については、顧客にその事実が露
見することを防ぐため、例えば、2016 年ころ、無錫工場で本来製造すべき製品であったも
のを、顧客に無断で新潟工場に移管したときは、一旦、新潟工場から無錫工場に当該製品
を輸送した上で顧客に納付し、さらに、顧客に納付する際、当該製品に「MADE IN CHINA」
と記載されたラベルを貼付したり、顧客に無錫工場のフォーマットを用いた出荷検査成績
表等を交付していた。
    さらに、顧客の承認を得ずに移管した上で製造した製品に、文字の一部を削った数字や
本来と異なるフォントの文字を利用して印をつけることによって、当社内では、どの製品
がどの工場で製造されたかを事後的に確認できるようにする措置が講じられていた。
    当社では、このような未承認 4M 変更の偽装工作が 2002 年より以前から行われていたと
考えられる。また、当社の役員(なお、以下では、
                      「役員」と記載する場合には、別途個別
に定義した場合を除き、原則として社内取締役、社内監査役及び執行役員を意味するもの
とするが、文脈に応じて別段の意味を有する場合もある。)において、これらの偽装工作の
詳細・具体的な内容について全て把握していたとまでは認められないが、未承認 4M 変更は
4M 変更の事実を顧客へ報告しないことを前提に行う以上、少なくとも未承認移管が顧客に
発覚しないように一定の手立てが取られていたことについては認識していたものと認めら
れる。


     (4)未承認 4M変更の発覚とその後の対応措置
    2017 年 10 月及び同年 12 月には、当社顧客宛に当社が未承認移管を行っている旨の匿名
の情報提供がなされた。情報提供された内容は、無錫工場で生産すべき製品を当該顧客の
承認を得ずにタイ工場で生産したという内容であり、その内容は真実であったが、当社は、
当該顧客に対し、未承認移管はない旨報告をした。
    また、2018 年 2 月にも、当社顧客に対し、未承認移管を行っている旨の匿名の情報提供
がなされた。当社は、当該顧客に対して、一部の未承認生産移管は認めたものの、一部の
未承認 4M 変更についてはその存在を明らかにしていなかった。2018 年 5 月、代表取締役社
長 B は、当社における未承認 4M 変更の実態について初期的な内部調査を顧問弁護士の所属

5
 例えば、2016 年 12 月に実行された無錫工場から他の工場への移管に関する 4M 変更申請書が 2017 年 4
月に提出され、その際に本来顧客申請が必要とされる変更に該当するものとして申請すべきにもかかわら
ず、顧客申請が不要な変更として申請されている。


                            11
する法律事務所に委託した。
 その後、代表取締役社長 B を中心として未承認 4M 変更について問題意識を持つようにな
ったが、当社における未承認 4M 変更を解消するには至らず、一部顧客について、新たな未
承認 4M 変更を実施せざるを得ない状況が生じていた。代表取締役社長 B は、同年 11 月に
外部調査チームに改めて当社における未承認 4M 変更の実態等の調査を依頼し、同年 12 月
には、記者会見を実施した。また、当社は、代表取締役社長 B を中心として未承認 4M 変更
の再発防止策を策定し、顧客に対しても未承認で 4M 変更を実施していた事実を報告し、承
認を得る、内製化する等の対応を各顧客ごとに進めている。本報告書作成時点において未
承認 4M 変更の対象製品を納入していた全ての顧客に対して報告が行われている。


 なお、当社は 2018 年 4 月以降の未承認 4M 変更に対処する活動として、以下の活動を行
っている。但し、外部調査チームは、かかる説明の正確性及び合理性について、独立して
確認してはいない。


① 概要
 当社は、2018 年 4 月以降、B を代表取締役社長とする新体制発足後、第 1 編第 1 記載の
顧問弁護士が所属する法律事務所による初期的な内部調査の実施、外部調査チームによる
本調査の実施、2018 年 12 月 14 日に行われた未承認 4M 変更の公表及び顧客への説明のほか、
以下のような対応及び再発防止策を実施している。


② 受注管理の徹底
 当社は、各工場における需給バランスを改善するために、各工場から随時生産状況に関
するフィードバックを受け、そのうえで、各工場の生産状況に照らして生産能力を超える
受注が存在する場合には、当該受注を発注した顧客との間で納期を調整するなどの受注管
理体制を徹底している。また、当社は、新体制発足後、納期調整を行うよう交渉したにも
かかわらず、なお納期の調整ができない場合には、顧客に転注を求めるなどの対応も行っ
ている。


③ 各工場の生産能力の向上
 当社は、「設備投資 3 ヶ年計画」を定め、各工場の生産能力を向上させる計画を行ってい
る。
 上記「設備投資 3 ヶ年計画」とは、各工場への大規模な設備投資を 3 年間にわたって行
い、生産能力の向上、老朽化改善等による業務効率の向上を行うことで、各工場の生産能
力を向上させ、受け入れ可能な受注量を増やし、内製化を目指す計画である。具体的には、
海外工場(東莞工場、無錫工場及びタイ工場)は、2019 年夏までに前記設備投資を完了し、
全受注について内製化を行う予定である。また、国内工場(新潟工場及び蒲原工場)は、


                         12
2020 年までに上記設備投資を完了し、内製可能な工程と外注委託を前提とする工程を明確
化した上で、外注委託が必要な工程を含む受注については顧客承認を得るよう交渉を行う
予定である。


    2   品質への影響
        (1)PWB コンサルタントによる調査結果
    外部調査チームが調査を委託した PWB コンサルタントの報告書によれば、外注先(一部
加工委託先)及び OEM 先(複数工程委託先)の技術力等に関し問題は認められなかったが、
2013 年度から 2015 年度における 4M 変更の DR は、4M 変更管理規程に基づき正しく製品品
質への影響を確認していたのに対し、2016 年度において行われた無錫工場からタイ工場へ
の生産移管では、製品品質の DR が不十分であり、当時は DR が納期遅延を解消する目的で
実施され、4M 変更に関する製品品質に与える影響の確認・検証が先送りにされていた。以
上の事実を踏まえれば、未承認 4M 変更が行われた場合には、顧客承認を経て 4M 変更がな
される場合と比較して、少なくとも品質に問題が生じやすい状況となることが認められる。


        (2)未承認 4M 変更の対象製品の品質に関する対象会社の説明内容
    当社は、未承認 4M 変更の対象となった製品に関する品質について、以下のとおり認識し
ている。但し、外部調査チームは、かかる対象会社の認識の正確性及び合理性について、
独立して確認してはいない。


① 当社は、全ての顧客の生産実績の確認、未承認 4M 変更の対象となった製品及びその品質
    に関する社内確認を行った上で報告資料を作成し、2018 年 11 月以降、未承認 4M 変更を
    行っていた顧客に対して、未承認 4M 変更を実施していた旨及び未承認 4M 変更による品
    質影響について、順次説明を行い、理解を得ている。また、当社は、未承認 4M 変更がな
    かった顧客(事業所)については、必要に応じ対象となる未承認 4M 変更が無かった旨を
    報告している。
② 前記①記載の社内確認は、未承認 4M 変更により製品の品質低下が生じていないかという
    点に焦点を当てて行われた。具体的には、本来顧客から承認を得ていた工場の製造ライ
    ンと外注先工場又は対象会社の移管先工場における未承認の製造ラインとを比較し、変
    更点を確認した上で、当該変更により品質の低下が生じているか否かを検証したもので
    ある。
③ かかる社内確認作業においては、変更のあったいずれの工程についても、出来栄え確認
    及び信頼性試験6の結果を整理し、それを元に顧客への報告資料を作成した。当該報告資

6
 信頼性試験とは、電子部品が市場環境で使用された場合の不具合発生を未然に防ぐために、様々な環境
における当該電子部品の耐久性を確認する試験をいう。信頼性試験では、当該電子部品の想定される使用
環境により試験内容は異なるものの、一般的には、環境試験、電気的試験、安全性試験、機械的試験及び


                           13
 料において、当社は、未承認 4M 変更によって製品の品質に実質的な影響がないことを確
 認している。
④ 当社は、未承認 4M 変更を行う際に、外注及び生産移管の調整を行う前提として、当社と
 外注先の間及び移管元工場と移管先工場の間で、各ラインで生産された製品に出来栄え
 の差が生じていないか確認するとともに、外注先及び移管先において、当社において通
 常行われている信頼性試験を実施していたことから、上記社内確認のために改めて出来
 映え確認又は信頼性試験を実施したものは少数であり、基本的には、従前から当社が有
 するデータに基づいて顧客に対して報告を行った。


3   役員の関与
    (1)現在の役員
 A は、2011 年 6 月に顧客から品質クレームを受ける直前の同年 4 月に代表取締役に、同
年 6 月に代表取締役副社長(製造・技術担当)に就任した。A は、顧客から品質クレームを
受け、同社発注製品について未承認 4M 変更を実施していたことが発覚した時において代表
取締役として事態を把握し、再発防止に努める責務を負っていたにもかかわらず、かかる
責務の履行を怠り、再発防止策として対外的に説明した内容を厳格に実行しなかったため、
その後も未承認での 4M 変更は継続的に行われた。
                        また、
                          2016 年に無錫工場の納期が逼迫し、
大規模な未承認 4M 変更が実施された際には、未承認での他工場や外注先への生産移管を推
進していたと認められる。
 B は、1989 年 9 月にシイエムケイ蒲原電子株式会社に入社し、2014 年 10 月に当社に入社
するまでの間、当社の取引先である株式会社桑原電器製作所等に在籍していた。この在籍
期間中に当社の業務に携わることもあったが、少なくとも 2007 年 4 月から 2013 年 7 月ま
での間は当社の業務から離れていた。B は、2014 年 10 月に当社に入社した後、執行役員就
任直後の 2015 年 9 月ころから開始された、群馬工場の閉鎖に伴う新潟工場、蒲原工場及び
シイエムケイ・プロダクツ株式会社の工場への生産移管及び 2016 年ころの大規模な未承認
4M 変更について、一部の顧客から 4M 変更に対する承認が得られず、未承認のまま製造移管
を行っている事実を認識しながら、これを容認していたと認められる。
 また、2016 年 6 月に取締役になって以降は、国内製造担当取締役として、タイ工場、新
潟工場、無錫工場で納期が逼迫し、未承認 4M 変更が行われている状況を認識しながら、こ
れを容認していたと認められる。
 他方で、B は、未承認 4M 変更が行われていることについて問題意識を持っており、未承
認 4M 変更の温床となる納期逼迫状況を回避するため受注を抑制すべきという発言をしてい
たことも認められる。B は、2018 年 4 月に当社の代表取締役社長に就任したが、2018 年 5
月以降外部専門家の助言を仰ぎ調査を進め、さらに同年 12 月には、記者会見を実施して当


負荷試験が実施される。


                         14
社における未承認 4M 変更の実態を公表するなど、当社において長年解決出来なかった未承
認 4M 変更の問題の抜本的な解消に向けた行動に踏み切ったことが認められる。
 その他の役員(本項において、社内取締役及び執行役員を指す。
                             )について、必ずしも役
員による具体的な指示・命令を端緒として未承認 4M 変更が行われていたわけではない。し
かし、当社においては、2002 年より以前から日常的に未承認 4M 変更が行われており、ほと
んどの社内取締役はそのことを認識していたと考えられ、社内取締役就任後も、未承認 4M
変更が行われていることを知りながらこれを積極的に是正する努力を怠り、これを放置し
ていたものと認められる。なお、2016 年ころの大規模な未承認 4M 変更において、現在取締
役常務執行役員である C は、営業担当の取締役として、未承認での他工場や外注先への移
管を推進していたことが認められるほか、取締役執行役員の D は、品質担当の取締役とし
て本来であれば、4M 変更管理規程の遵守を確認すべき立場にありながら、その役割を果た
せなかったことが認められる。


  (2)過去の役員の関与
 2009 年から 2012 年にかけて発生した品質クレームを受けて、役員(本項において、社内
取締役、社内監査役及び執行役員を指す。)の間には未承認 4M 変更が当社にとって極めて
重大なコンプライアンス上の問題であることが認識されたにもかかわらず、過去の役員に
おいて、再発防止に向けた対応が十分に行われず、前記第 4 の 1(2)で述べたとおり、2013
年以降も未承認 4M 変更は繰り返し行われた。
 2013 年から 2017 年 1 月までの期間においては、社内の取締役も出席する営業会議の中で
各工場の納期逼迫状況について情報共有がなされており、同会議の中で生産移管について
も議論がなされており、未承認で 4M 変更が行われていた事実もあったことを取締役におい
て認識し、少なくとも認識し得たと考えられるが、これを容認していた。また、2017 年 2
月からは、社内取締役全員が出席する需要報告会と呼ばれる会議の場で各工場の納期逼迫
状況、また、それに伴う未承認移管等について情報共有がなされ、当時の社内取締役は認
識したにもかかわらず、これを容認していた。




                       15
                第3編 発生した問題の原因

第1 外的要因
1   基板業界の受注構造
 基板の仕様は最終製品の設計において最終段階で決定されることが多いにもかかわらず、
製造過程においては、上流部分に位置するため、最も早く製造して納品しなければならな
いという特徴がある。
 しかも、基板は製品毎に回路が異なるカスタム品であるため、事前に作りだめをするこ
とが難しく、最終製品の設計が確定した後でなければ製造を開始することができない。
 このような基板業界の受注構造から、基板業界の需給バランスは変化しやすく、生産見
込みが立てづらいという特徴がある。
 特に車載品については、製品化までに長期間を要するため、その間の経済環境等により
需要が変化する可能性があるが、当初の想定よりも受注が大幅に増加し、工場の生産能力
を超えてしまうような場合も、カスタム品であるが故に、Tier1 の顧客に対して増加分の注
文を断りにくく、未承認での 4M 変更が行われやすい業界構造にあったことは否定できない。


2   民生品における実務慣行
 民生品においては、かつては 4M 変更に顧客承認が不要であったか、必要な場合も車載品
と比べて短期間又は事後的であっても承認が得られることが多く、また、1990 年代以前は
現在ほど 4M 変更の重要性が社会的に意識されていなかったという事情もあり、民生品にお
いて受注量が想定以上に増加した場合も、外注等により対応することが問題化することが
なかった。
 当社は元々民生品向けの基板を製造しており、前記のような民生品における実務慣行が
役職員に浸透しており、4M 変更の重要性に対する意識が低く、4M 変更に対して厳しい制限
を設けている車載品の製造においても(とりわけその重要性が認識されだした 2000 年代以
降になっても)
      、従前の民生品での実務慣行又は意識を払しょくできなかった可能性がある。


3   4M 変更承認手続きの長期化
 民生品においては、評価基板を納入してから 2~3 ヶ月で承認を得るという柔軟な対応が
可能だったのに対し、車載品(特に重要保安部品)の場合は、評価基板(試作品)を納入
してから承認を得るまでに半年から 1 年程度時間がかかることもあった。
 また、4M 変更の申請を行った場合、その評価のために要する費用を顧客から請求される
事案もあり、このような時間、コストのために、4M 変更の申請を回避する方向に向かって
しまったものと考えられる。



                      16
4    車載品の急激な受注拡大
 2016 年ころに大規模な未承認 4M 変更が行われていた原因となった無錫工場の生産キャパ
シティオーバーは、2014 年から 2015 年ころに当社の営業部門が行った受注活動の成果であ
ったが、この時期、自動車業界では、低価格帯の車両まで一気に電子化が普及したことか
ら、車両搭載用の基板についても、想定を大幅に上回る需要が発生することとなった。
 このような想定を超える受注量の増加により、2016 年においては、4M 変更をしなければ
ならない状況が生じたものである。


5    顧客からのプレッシャー
 当社は、一部の顧客から製造ラインストップしたら一日当たりいくらや一分あたりいく
らの損害賠償を請求すると言われたことがあり、また、2016 年の無錫工場の生産キャパシ
ティオーバー時には、顧客が海外の生産工場に押し寄せ、深夜まで居座られたこともあっ
た。
 このような顧客からのプレッシャーも未承認で 4M 変更を行う要因の一つになったと考え
られる。


第2 内的要因
1    役員の意識改革が不十分であったこと
 第 1 に掲げる事項に起因し、役員の意識としても、未承認で 4M 変更を行うことに対する
抵抗感が低下・麻痺していたものと考えられる。前記第 2 編第 4 の 1(2)の 2012 年ころの顧
客からのクレームの問題等を通じて、未承認 4M 変更のリスクを十分に認識し、その後の改
善に向けた機会を得ていたにもかかわらず、再発防止策の徹底を怠り、その後も収益改善
等を目的とした未承認 4M 変更の発生を止めることができず、2016 年の無錫問題における再
発を許す事態を招いた。
 役員自身が積極的にコンプライアンスを遵守する意識を持たない限り、従業員の意識を
変革することはできないが、当社の役員においては、経営状況が厳しかったこともあり、
売上の増大が会社が生き残る道と考え、コンプライアンスの徹底よりも売上げを優先させ
るという判断をしていたと考えられる。
 これらの根底には、一部の役員の間に、他の基板メーカーでも同様の未承認 4M 変更が行
われていると思っていたという認識の甘さがあったと考えられる。


2    全社的なモラル・意識の低下・麻痺
 役員の意識改革の不十分さが、結果として、従業員のモラルを下げ、従業員がコンプラ
イアンスよりも売上げを意識した行動をとることにつながったと考えられる。
 なお、当社に途中入社した役職員は、このような当社の社風に違和感を感じつつも、最
終的には当社のモラル・意識に染まっていったものと考えられる。


                        17
3    再発防止策の不奏功
 第 2 編第 4 の 1(1)のとおり、民生品における 4M 変更ルールの影響があったと推測される
が、当社の役職員においては、顧客の承認を得ずに 4M 変更を行うことに対する抵抗感が低
かった。しかし、少なくとも、2009 年から 2012 年にかけて品質クレーム問題が発覚し、顧
客から再発防止策の提示を求められた時点で、車載品における 4M 変更が厳格であることを
理解し、かつ、全社的に未承認 4M 変更を防止すべく体制を整備する機会があったはずであ
る。
 しかしながら、当社はこれらの問題を個別の事案と位置付けることにより、問題を矮小
化し、全社的に 4M 変更にかかる運用を変えたり、その時点で判明していた他の 4M 変更事
案について改善するための行動をとることなく、その後も顧客に未承認の 4M 変更を継続し
ていたことが認められる。


4    役職員の顧客承認の要否に関する理解不足
 前記第 2 編第 4 の 1(3)イのとおり、どのような場合に事前に顧客の承認が必要となるか
については、顧客との取引基本契約書及び品質保証マニュアルによって定められているた
め、
 「4M 変更管理規程」における顧客承認の要否の判定は、顧客との合意事項と必ずしも一
致していなかった。そのため、顧客承認の要否は、最終的には顧客との合意事項を確認し
適切に対応する必要がある。
 しかしながら、これらのことが十分に理解されておらず、社内の規程である「4M 変更管
理規程」させ遵守していればよい、又は品質さえ守られていればよいと考えていた役職員
が少なからず存在したと考えられる。


5    営業部門及び製造部門の問題点
 当社は、2009 年 3 月期から 2011 年 3 月期は 3 期連続で連結営業赤字を計上しており、当
時の役員の間では、このまま赤字が続けば会社の存続が危ぶまれるという危機感があった。
このような経営状況が、生産能力を上回る受注を受けていたことの要因の一つであったと
考えられる。また、工場の生産キャパシティは、生産する基板の種類(例えば、何層構造
のものか等)により異なるものであるが、そもそも受注を獲得する営業部門は、各工場の
生産キャパシティの前提条件を理解しておらず、製造部門と営業部門の間で認識にギャッ
プが存在した。このことが、真の生産能力に基づかない生産予定に基づき計画を立て、納
期が逼迫し、外注等に大量に出す事態を招いたと考えられる。更に、各工場における生産
能力を顧客に正しく伝え、4M 変更に対する承認又は納期の変更を柔軟に行うよう交渉する
努力が不足していたことが納期が逼迫した原因となっている可能性がある。




                         18
6   監視部門の問題点
 品質保証統括部、法務部、内部監査室、内部統制管理委員会といった、監視部門が、未
承認での 4M 変更を監視する機能を有していないか、有していたとしても機能を果たしてい
なかったと考えられる。




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                    第4編 法的責任の検討

第1 顧客に対する契約上の責任の可能性
    前記第 2 編第 3 の 1 のとおり、当社は、顧客との取引基本契約書や品質保証マニュアル
において、4M 変更をするときは事前に顧客の承認を得なければならないと規定されている
ときや顧客と別途合意があるときは、顧客との契約上、これらの取引基本契約書等に定め
られた所定の手続を行うことが必要とされており、これに違反したときは契約違反となる。
    契約違反の行為について、当社は、各顧客に対して、債務不履行に基づき損害賠償責任
を負う可能性があるほか、各顧客との契約内容次第では、交換や修理を求められる可能性
もある。


第2 刑事責任及び行政法規上の責任の可能性
    当社の行為のうち、2016 年ころの、無錫工場で本来製造すべき製品であったものを新潟
工場で製造した際の行為は、不正競争防止法違反となる可能性がある。具体的には、①当
該製品に「MADE IN CHINA」と記載されたラベルを貼付した行為、及び②顧客に無錫工場の
フォーマットを用いた出荷検査成績表等を交付した行為は、商品又は取引に用いる書類に、
商品の原産地、品質又は内容を誤認させるような表示をした点で、また、③そのようにし
て製造した商品を販売した行為は、その譲渡や引き渡しをした点で、いずれも誤認惹起行
為(不正競争防止法第 2 条第 1 項第 14 号)に当たる可能性があり、また、前記①②の行為
は商品又はその取引に用いる書類に、商品の原産地、品質又は内容について誤認させるよ
うな「虚偽の表示」に当たる可能性があり、いずれも、不正競争防止法違反となる可能性
がある78。


第3 役員の責任
    当社においては、社内ルール上、4M 変更の意思決定には、役員(本項において、社内取
締役、社内監査役又は執行役員を指す。
                 )の承認が必要となるものではなく、未承認 4M 変
更の意思決定も、必ずしも役員による具体的な指示・命令を端緒として行われるものでは
なかった。
    しかし、当社においては、2002 年より以前から日常的に未承認 4M 変更が行われており、
ほとんどの社内取締役はそのことを認識していたと考えられ、社内取締役就任後も、未承


7
  誤認惹起行為は、 「不正の目的」をもって行われたときに不正競争防止法上の罰則の対象となるが、こ
こにいう「不正の目的」とは、     「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的」を
いい(同法第 19 条第 1 項第 2 号)
                     、およそ何らかの不正の目的があれば充足するとされている。本件にお
いては、未承認 4M 変更が顧客に露見することを防ぐために行われているので、      「不正の目的」が認められ
る可能性は否定できない。
8
  なお、本調査においては、詐欺罪(刑法(明治 40 年法律第 45 号)第 246 条第 1 項)の成否も検討対象
となったが、本調査においては、具体的に詐欺罪が成立する事実関係を認定することはできなかった。


                            20
認 4M 変更が行われていることを知りながらこれを積極的に是正する努力を怠り、これを放
置していたものと認められる。2017 年半ばからは、一部の役員において、未承認 4M 変更に
対する問題意識が各種会議体等で示されるようになったものの、その後においても会社の
基本的な姿勢は変わらず、未承認 4M 変更が継続して行われることとなった。
 このように、未承認 4M 変更については、全般的に、役員が「不作為」により関与してい
たと認められる。
 そして、当社が、顧客に対する契約上の責任を負い、顧客に対して損害を賠償すること
となった場合、未承認 4M 変更が日常的に行われていることを認識していた当社の役員を初
めとして、善管注意義務に違反していた状況にあったと認められたときには、これにより
当社に生じた損害を賠償する義務が役員に生じる可能性がある。




                      21
                  第5編 再発防止策に関する提言

    当社は、2012 年ころに未承認 4M 変更を経た製品に係る品質クレームを計 3 社から受け、
その都度未承認 4M 変更の再発防止策を策定したものの、
                           当該施策は一過性のものにすぎず、
継続的に当該再発防止策が遵守されていたとは評価し難い状況であった。当該経緯に照ら
せば、当社にとって、以下に記載する、外部調査チームの提言する再発防止策を継続的に
実施することが最大の課題であり、そのために、全社的な意識改革を行うための経営体制
の刷新、及び当該再発防止策の実施状況や改善状況について、社外の第三者によってモニ
タリングすることが特に重要である。


第1 役員及び全社的な意識改革
    1   コンプライアンス宣言
    役職員がコンプライアンスを意識し、それを実践することが企業の業績に寄与し、それ
が企業及び役職員自身のためでもあると考えることができる環境を作るためには、経営ト
ップ(代表取締役)が、コンプライアンスの重要性及びその徹底を発信するべきである。


    2   経営体制の刷新
    古くから当社に根付く 4M 変更に係るコンプライアンス軽視の意識を払拭するためには、
経営体制の刷新が求められ、外部から本件問題に適切に対応できる新たな役員を選任して、
経営体制を早期に刷新することが望ましい9。また、内部統制管理委員会の委員長と品質保
証担当役員という重要なポジションを同一人物が担ってきていたことも未承認 4M 変更が社
内で問題視されなかったことの一因になっているとも考えられるので、内部統制管理委員
会の委員長には適切な者を配置し、牽制機能が適切に働くようにするべきである。


    3   社外役員との情報共有・活用強化
    当社は、社外取締役及び社外監査役を選任しているところ、コンプライアンス上の問題
を含め社外役員に対し積極的に情報共有をし、その知見を活用すべきである。


    4   コンプライアンス研修・教育の定期的な開催
    当社では、4M 変更に係るコンプライアンスに関する研修を行っていたものの、その内容
は形骸化していた。今回の事例や他社事例を踏まえて、上記1のコンプライアンス宣言に
則り、社外から講師を招いて、具体例に基づき、役職員の階層別に 4M変更に重点を置いた
コンプライアンス研修を最低でも年に 2 回程度は実施すべきである。

9
 本報告書の提出時期が 2019 年 3 月中旬であること、適切な候補者を選定するためにかかる時間等に鑑み
れば、2019 年 3 月期にかかる定時株主総会で適切な人物を新たな取締役として選任することが難しい可能
性があることが、外部調査チームにより指摘されている。


                          22
5   人事制度等の見直し
 4M 変更に係るコンプライアンスを遵守しない者に対しては厳しい処分を科す人事評価制
度を構築するべきである。また、当社に 4M 変更に係るコンプライアンスを遵守する企業文
化が根付くまでの過渡的な対応として、例えば、4M 変更に係る顧客の承認を得たこと等の
4M 変更に係るコンプライアンス遵守の実現に貢献した者に対し、人事評価上一定の積極評
価を与える等の評価体系を人事評価制度として暫定的に導入することも検討に値する。


第2 営業部門及び製造部門の改革
1   顧客承認に向けた組織的な努力
 顧客から事前に 4M 変更の承認を得るための努力をするほか、試作品の受注段階で複数の
工場での量産や外注を使った量産について予め全ての顧客から承認を得ておく等、予測不
能な受注増にも耐えうる措置を講じていくべきである。
 また、4M 変更の承認の取得が難航した場合は、担当役員自ら顧客との交渉にあたる等、
営業担当者一個人のみに承認獲得の任務を背負わせることなく、顧客の承認獲得に向けた
組織的な努力を継続せねばならない。


2   営業部門と製造部門の連携強化
 営業部門と製造部門の情報共有を図る会議体を設けて定期的に開催し、あるいは両部門
間の人事交流により相互理解を促進するなど、両部門の連携を強化する体制を構築するべ
きである。


3   受注と製造の調整強化
 無制限に受注を取ろうとする営業部門を抑制し、他方で製造部門に対して生産効率の向
上を促す等、両部門を牽制しあるいは適切に調整して、需給のバランスのとれた状態を維
持するため、例えば、両部門から独立した専門の部署を組織・設置して調整業務にあたら
せることが考えられる。


4   生産能力の増強
 以上に挙げた施策のほか、受注量に比較して生産能力が不十分であったことが未承認の
4M 変更の一つの要因であったことに鑑みれば、生産能力を増強することも対応策として考
えられる。
 もっとも、生産能力の増強には設備投資が必要になることに鑑みれば、長期間にわたり
需要拡大が見込まれる状況であれば、設備投資により当社の生産能力を増強することも検
討に値する。



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第3 4M 変更に係る契約条件の整理・見直し
 品質保証部門において、顧客(機種)ごとに、所定の工程や顧客承認を要する 4M 変更の
範囲を再度確認整理し、当社内で共有することが必要である。
 また、当社において、4M 変更に係る契約条件が実務上対応が不可能であるなどの問題が
あれば、契約条件を再交渉し、合理的な契約条件とするなどの柔軟な対応も必要となる。
かかる契約条件の見直し、再交渉は、当社としての許容範囲を見極め戦略的に行うもので
あるし、契約交渉・作成の知見・能力も要するため、法務部門も積極的に活用すべきであ
る。


第4 4M 変更管理の改革
1    4M 変更管理規程の周知
 コンプライアンス研修等において 4M 変更管理規程を再度教育し、その周知を徹底するべ
きである。
 その際、顧客承認の要否は、最終的には顧客との合意事項を確認し適切に対応する必要
があることも、役職員に十分に理解させなければならない。


2    工程変更を制限するシステムの検討
 社内規程上工程変更の承認権限を有する品質保証統括部が、システム上登録された各製
品の製造仕様について工程変更の記録をするのであれば、品質保証統括部による工程変更
の管理・統制はシステム上担保される。
 かかるシステム上のコントロールの全社的な導入には、各工場の生産管理システムの統
一、人員配置、ネットワークの安定等解決の容易でない課題があるであろうが、工程管理
としての有用性は大きく、今後の対応策として検討に値すると考える。


第5 監視体制の改革
1    内部監査体制
 当社の従前の内部監査体制は、内部監査室の配属は 1 名で、優先度を低く評価された 4M
変更は監査項目となっておらず、不十分なものであった。もっとも、2017 年以降、4M 変更
の承認の有無が監査対象に追加され、2018 年 11 月からは内部監査室の人員も 3 名に拡充す
る改善が行われている。かかる内部監査体制の強化は未承認 4M 変更の再発防止に有用であ
り、継続的な内部監査体制の充実及び監査の実効性の検証、維持が望まれる。


2    内部通報制度の周知
 内部通報制度を社内で広く周知させ、コンプライアンス研修において、制度の意義・重
要性、適切な内部通報が正当な職務行為であり不利益に取扱われないこと、通報に関する
秘密保持など内部通報制度に関する教育を含めるなどして、従業員が安心して内部通報で


                        24
きる環境の整備に努めるべきである。


第6 モニタリング
 当社においては、各再発防止策を実施するとともに、その進捗状況を確認し、効果を検
証する制度を設けるべきである。かかるモニタリングは、社外取締役、社外の第三者を関
与させ、外部の視点からの客観的な検証を担保することが望ましい。
                                      以上




                    25