6753 シャープ 2021-03-12 12:00:00
調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ [pdf]

                                                    2021 年3月 12 日
各      位
                             会 社 名 シ ャ ー プ 株 式 会                  社
                             代表者名 代 表 取 締 役           戴    正      呉
                                      (コード番号          6753)
                             問 合 せ 先 会 長 室 広報 担当      吉 田         敦
                                  TEL ( 0 5 0 ) 5 2 1 3 - 6 7 9   5



                調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ


当社は、2020年12月25日に公表いたしました「当社連結子会社における不適切な会計処理および調査委員
会の設置に関するお知らせ」に記載のとおり、当社の連結子会社であるカンタツ株式会社において、不適切
な会計処理の疑義について、弁護士・公認会計士を含む調査委員会を設置し、調査を行ってまいりましたが、
本日、調査委員会より、調査報告書を受領いたしましたので、添付のとおり公表いたします。
株主、お取引先を始めとする関係者の皆さまには、多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたことを改め
て深くお詫び申し上げます。
当社は、今回の事態に至りましたことを重く受け止め、調査委員会が認定した事実、発生原因、及び再発
防止策の提言を十分に分析し、問題点を正しく認識したうえで、具体的な再発防止策等を策定、実行してま
いります。


1.調査委員会の調査結果
    調査委員会の調査結果につきましては、添付の「調査報告書」をご覧ください。
    なお、調査報告書は取引先との守秘義務契約等の観点から部分的な非公開措置を行っております。


2.連結業績への影響
    連結業績への影響につきましては、本日公表する予定です。




                                                            以 上
                       2021 年 3 月 12 日

シャープ株式会社 御中




カンタツ株式会社における不適切な会計処理に関する

調査報告書




                シャープ株式会社    調査委員会
                   委員長      村中      徹
                   委   員    加藤    正憲
                   委   員    姫岩    康雄
                   委   員    榊原      聡
目次


第1.調査委員会による調査の概要                            1

1    調査委員会設置に至る経緯                           1


2    調査委員会の構成                               1


3    調査の目的                                  1


4    本調査の対象範囲・対象期間                          2


5    本調査の期間及び方法                             2


6    調査の前提と限界                               5


第2.シャープグループにおけるカンタツの位置づけ                    6

1    カンタツの概要                                6


2    本件に関連するシャープグループの事業                     9


3    シャープにおけるグループガバナンス体制                    9


第3.本件問題による不適切な会計処理の内容と影響額                  10

1    不適切な会計処理の概要                           10
    (1)A 法人による商社宛の取引の売上計上についての不正又は誤謬       11
    (2)B 法人における簿価を有しない製品の循環取引              11
    (3)B 法人から商社(乙社)に対する販売による不正な売上計上        12
    (4)カンタツから商社に対する販売による不正な売上計上            12
    (5)上記(4)の取引についての B 法人及び A 法人による買戻し     13
    (6)その他の商社(丁社又は甲社)に対する先行販売による不適切な売上計上   14
    (7)棚卸資産についての評価損の計上の回避                  14
    (8)その他の不適切な会計処理                        14


2    不適切な会計処理の具体的手法とその内容                   14
    (1)カンタツの事業体制と不適切な会計処理の発生に至る経緯・背景等      14
    (2)A 法人における商社(甲社)に対する不適切な売上計上の具体的内容    18
    (3)B 法人・カンタツにおける不適切な売上計上の具体的内容          22
    (4)その他の不適切な会計処理                         34


3   会計上の影響額                                 37
    (1)会計上の問題点                              37
    (2)会計上の影響額                              39


第4.発生原因の分析                                  40

1   不正の動機・機会・正当化等の観点に照らした整理                 40
    (1)不正の動機                                40
    (2)不正の機会                                41
    (3)不正の正当化                               46


2   不正が容認・助長された背景事情等                        47
    (1)カンタツでの業績の低迷の継続                       47
    (2)シャープの連結子会社化とシャープ出身の代表取締役への迎合・忖度      48
    (3)業績向上への取組みに際しての安易な収益の糊塗               48


3   シャープにおけるグループガバナンス上の課題                   49
    (1)親会社であるシャープのカンタツに対するグループ内部統制の機能の不奏功   49
    (2)子会社役員人事についての親会社としての管理の不十分性           51
    (3)子会社の経営管理(モニタリング)が不十分であったこと           52
    (4)親会社による子会社監査の拡充                       52


第5.再発防止策                                    53

1   会計基準の順守等コンプライアンスに関する意識の醸成、会計知識の強化       53


2   相互牽制の強化、手続順守の徹底、監査・監督の強化                53


3   シャープによる管理・監督の強化                         54


第6.結語                                       54
第1.調査委員会による調査の概要

1 調査委員会設置に至る経緯
  シャープ株式会社(以下「シャープ」又は「シャープ本社」という。
                                )は、カンタツ
 株式会社(以下「カンタツ」という。)において多額の売掛金の滞留があったことか
 ら、このような滞留が生じた経過・原因について内部監査を実施することとし、2020 年
 11 月、シャープ監査部によって監査が実行された結果、取引先からの注文(purchase
 order。以下、注文あるいは注文書を示すものとして「PO」を用いる。)が無いままに
 売上が計上されていること(架空売上)を発見した。また、過年度から滞留している売
 掛金が存在していたため、シャープ監査部がその経過や回収可能性について継続監査を
 行った結果、当該売掛金がカンタツの直接の取引先である商社に対して製品を販売する
 取引から生じたものであるところ、その取引については、さらに商社の取引相手(以下
 「製品納入先」という。)に転売できない場合にはカンタツに返品できるという返品特
 約が付されていること、よって、転売がなされるまではカンタツにおいて通常売上を計
 上することは許されないにもかかわらず、売上を計上していることを発見した。
  このような不適切な売上計上がなされていたことを受けて、シャープは社内調査チー
 ムを組成し、外部専門家に相談を行いつつ調査を開始したが、案件の複雑性等から外部専
 門家が主体的・主導的に調査を行う調査委員会形式とすべきであると判断して、12 月 25
 日、取締役会において、調査委員会の設置を決議してこれを公表し、 (以下
                                調査  「本調査」
 という。なお、本調査で発見した不適切な売上計上等を総称して「本件」という。)を開
 始することとした。


2 調査委員会の構成
 当委員会は、2020 年 12 月 25 日、シャープの取締役会決議に基づき設置された。
 当委員会の構成は以下のとおりである。
  ・委員長:村中 徹(弁護士法人第一法律事務所 弁護士)
  ・委 員:加藤正憲(加藤公認会計士事務所 公認会計士)
  ・委 員:姫岩康雄(シャープ独立社外取締役・監査等委員・姫岩公認会計士事務所
              公認会計士)
  ・委 員:榊原 聡(シャープ管理統轄本部管理本部 本部長)
  なお、当委員会は、上記のほか外部の弁護士3名、公認会計士及びフォレンジック専門
 家 23 名のほか、シャープ調査チーム(社内弁護士2名を含む)を調査補助者とした。


3 調査の目的
  本調査の目的(調査事項)は、以下のとおりである。
  ・本件に関する事実関係及び会計処理の調査(類似事象の存否を含む)
  ・本件による連結財務諸表への影響額の確定

                       1
  ・本件が生じた原因の分析と再発防止策の立案
  ・その他、調査委員会が必要と認めた事項


4 本調査の対象範囲・対象期間
(1)本調査の対象範囲
 ア 本調査の端緒となった不適切行為は、シャープの子会社であるカンタツ、その子会社
  である A 法人及び B 法人。以下「カンタツ」「A 法人」「B 法人」と併せて「カンタツ
                         、      、
  グループ」と総称する。
            )において発生したものであることからカンタツグループを調
  査対象の重点とした。
 イ   本件はカンタツの経営幹部が内部統制を無効化したことで生じた案件であるところ、
  カンタツの経営幹部・社員のうちにシャープの出身者・出向者が含まれており、特に元
  カンタツ代表取締役については、シャープの事業本部において経営幹部として在籍し
  ていたことから、その所属部門であったカメラモジュール事業本部、及び 旧 電子デバ
  イス事業本部(現 シャープ福山セミコンダクター株式会社及びシャープ福山レーザー
  株式会社)を調査対象とした(以下、これらを総称して「調査対象事業本部等」という。。
                                          )
     なお、これら調査対象事業本部等については、後記のとおり、アンケート調査やヒア
  リングのほか、カンタツと取引のあった商社との取引の有無及びその内容・証憑等を確
  認したうえ、当該商社に対して確認状を送付するなどにより調査を行った。また、この
  ほかに、シャープグループの全事業本部及び子会社の売掛金の滞留状況を調査し、不審
  な取引が無いか確認したが、本調査においては、不適切な会計処理に該当し得るものは
  発見されなかった。


(2)本調査の対象期間
     当初発覚した不適切事象が 2019 年 2 月に発生したものであることや、シャープの連
  結業績に与える影響の有無を確認する観点から、シャープがカンタツを連結子会社化
  した直後の 2018 年 4 月から 2020 年 12 月を調査対象期間とした。なお、調査対象期間
  外である 2018 年 3 月以前であっても、調査の過程で不適切行為に関連する可能性があ
  る事象については調査対象とした。


5 本調査の期間及び方法
(1)本調査の期間
     本調査は、2020 年 12 月 26 日から 2021 年 3 月 11 日まで実施した。


(2)本調査の方法
     当委員会は、調査期間において、計 13 回の委員会を開催した。また、当委員会が実
  施した具体的な調査内容は以下のとおりである。



                              2
ア   関係者に対するインタビュー等
    当委員会は、本調査において、本件に直接的又は間接的な関与が想定される以下
 の者(合計18名)に対し、インタビューを実施した。
    このほか、当委員会は、本調査において、随時、上記のインタビュー対象者等に
 対して、メール、電話、WEB会議等の随意の方法で、事実関係の照会及び必要資料
 の提供等を求めた。


所属       役職(2020 年 9 月 30 日時点)              氏名
カンタツ     代表取締役会長                            A氏
         取締役 a 事業本部本部長                      B氏
         a 事業本部副本部長                         C氏
         取締役 プロジェクト A2担当(元 b 事業本部本部長)       D氏
         b 事業本部本部長代行                        E氏
         b 事業本部ビジネス推進部企画グループ                F氏
         執行役員 事業戦略本部本部長                     G氏
         事業戦略本部事業戦略部部長                      H氏
         常務取締役 財務本部本部長                      I氏
         財務本部経理部部長                          J氏
         業務本部担当次長(内部統制担当)                   K氏
         業務本部法務部長                           L氏
         監査役                                M氏
         退任(元 取締役副社長)                       N氏
A 法人     総経理(兼 カンタツ執行役員)                    O氏
B 法人     総経理(兼 カンタツ執行役員)                    P氏
         副総経理                               Q氏
シャープ     カメラモジュール事業本部 本部長                   R氏


イ   会計データ、取引記録・会計資料その他の関連資料等の閲覧及び検討
    当委員会は、カンタツグループの 2018 年 4 月から 2020 年 12 月までの会計データ、
 各種証憑書類等の取引記録・会計資料その他の関連資料の閲覧及び検討を行うとと
 もに、取締役会、経営会議議事録等の関連資料についても、当委員会が必要と認める
 範囲で閲覧及び検討を行った。


ウ   外部取引先への取引内容の照会
    当委員会は、本調査に関係する取引先及び本件に関連する在庫を保管している倉
 庫業者に対し、カンタツグループ又は調査対象事業本部等との取引内容の照会を行


                           3
 った。なお、照会作業は当委員会が直接実施した。


エ   デジタル・フォレンジック調査
(ア)カンタツ
     当委員会は、カンタツグループの役職員11名のコミュニケーション関連データ
    及びドキュメントデータの解析を行うため、調査対象者の会社貸与パソコン、会
    社貸与携帯電話の保全を実施した。保全したデータに対し、削除データの復元処
    理を実施した後、メール、チャット等のコミュニケーション関連データ、及びド
    キュメントデータを抽出した。これらのデータはレビュー環境においてインデッ
    クス処理(全文検索のための下処理)を施した上で、調査対象期間である2018年
    4月1日以降のメールデータに対し、キーワードによる検索を行い、該当したメー
    ルをレビュー対象として、分析及び検討を行った。
(イ)シャープ
     当委員会は、シャープの役職員2名(うち 1 名は調査対象期間内にシャープを
    退職してカンタツに移籍した者)のコミュニケーション関連データ及びドキュメ
    ントデータの解析を行うため、シャープのメールサーバに保存されていた電子メ
    ールデータを受領した。これらのデータはレビュー環境においてインデックス処
    理(全文検索のための下処理)を施した上で、調査対象期間である 2018 年 4 月 1
    日以降のメールデータに対し、キーワードによる検索を行い、該当したメールを
    レビュー対象として、分析及び検討を行った。
(ウ)デジタル・フォレンジック調査の対象者は以下のとおりである。
    所属     役職(2020 年 9 月 30 日時点)          氏名
    カンタツ   代表取締役 会長                       A氏
           取締役 a 事業本部本部長                  B氏
           取締役 プロジェクト A2担当(元 b 事業本部本部長)   D氏
           b 事業本部本部長代行                    E氏
           b 事業本部ビジネス推進部企画グループ            F氏
           事業戦略本部事業戦略部部長                  H氏
           取締役 財務本部本部長                    I氏
           財務本部経理部部長                      J氏
    A 法人   総経理(兼 カンタツ執行役員)                O氏
    B 法人   総経理(兼 カンタツ執行役員)                P氏
    シャープ   カメラモジュール事業本部 本部長               R氏


オ   社内アンケートの実施、臨時通報窓口の設置
    上記アないしエの調査に加え、類似案件の存否の調査の一環として、不適切行為と
 疑われる情報を幅広く集める目的で、カンタツ及びシャープにおいて、それぞれ以下

                          4
   の調査を行った。
 (ア)カンタツ
      当委員会は、カンタツの役職員 291 名に対しアンケートを実施し、対象者全員か
     ら回答を得た。また、本アンケートは記名式で実施した。
 (イ)シャープ
      当委員会は、調査対象事業本部等の営業、生産企画及び経理部門の管理職以上の
     役職員 94 名に対しアンケートを実施し、対象者全員から回答を得た。なお、本ア
     ンケートは記名式で実施した。
      また、上記アンケート調査を補完する目的で、調査対象事業本部等の全役職員を
     対象とし、2021 年 2 月 5 日から同年 2 月 15 日までの間、弁護士法人第一法律事務
     所を窓口として、本件疑義及びこれに類似する行為若しくはその疑いのある行為
     について臨時内部通報窓口を設置した。当該臨時通報窓口の利用方法としては、広
     く情報を募るために、電子メール、電話という複数の手段を用意し、また、匿名で
     の臨時通報窓口の利用も許容した。さらに、本件臨時通報窓口の利用を促進するた
     めに、本件臨時通報窓口を利用したこと等を理由として、シャープグループが、利
     用者に対し、いかなる不利益な取扱いも行わないことを明示した。
      なお、当該臨時通報窓口については、利用は無かった。


 カ   棚卸資産の実地調査
     当委員会は、在庫数量を確定するため、カンタツグループに棚卸の実施を要請し、
   福島金型工場については 2020 年 12 月 29 日に、 法人及び B 法人については 2020 年
                                 A
   12 月 31 日に、神奈川県相模原所在の倉庫(以下「相模原倉庫」という。
                                       )について
   は 2021 年 1 月 21 日に、それぞれ実地棚卸を実施させ、実施状況及び結果を確認し、
   当委員会において把握している情報と整合しているかどうかを検証する等の調査を
   行った。


6 調査の前提と限界
(1)本報告書及び調査結果の利用
   本報告書及び当委員会の調査結果は、調査対象の事案に関する事実確認及びこれに
 関連する問題等が指摘された場合における発生原因の究明と再発防止策の策定・評価
 のために用いられることが予定されている。当委員会は、本報告書及び当委員会の調
 査結果が、関係者の法的責任の追及等、前記3以外の目的のために用いられることを
 予定しておらず、当委員会はシャープ以外の第三者に対し何らの責任を負うものでは
 ない。


(2)任意調査
   当委員会による調査は、捜査機関による捜査とは異なり、関係者の協力に基づくも

                          5
 のである。捜索・差押え等の強制的な手段を用いることのできる捜査機関とは異な
 り、調査には自ずから関係者の任意の協力度合いに影響を受けることを否定できず、
 特に、関係者に対するヒアリング内容の真偽について確認する手段も限定されてい
 る。また、本調査により収集した取引先との契約書、見積書、請求書等の書類は、真
 正な原本又はその正確な写しでありデータには改竄が加えられてないことを前提とし
 ている。


(3)時間的・人的制約
   当委員会による調査は、前記5(1)の調査実施期間に、前記2の各委員が優先順
 位を考慮しながら、また、一部において役割分担しながら実施したものである。調査
 の範囲及び深度には時間的・人的制約が存在した。


(4)地理的制約
   カンタツの子会社であるA法人、B法人の所在地は中華人民共和国である。当委員会
 は、現地との電話会議の実施等、調査実施期間において可能な限りの調査活動を行っ
 たが、次項の感染症予防・対策による渡航制限等もあいまって、中華人民共和国への
 現地訪問・関係者の対面ヒアリング等は実施できず、地理的な制約による一定の影響
 を受けた。なお、これらの影響に対しては、十分な証憑・資料の提出を受け、また、
 オンラインでのヒアリング等を実施することにより対応した。


(5)感染症予防・対策
   新型コロナウイルス感染症予防・対策の観点から、対面によるヒアリングの実施、
 国内外への移動等に制約が存在した。




第2.シャープグループにおけるカンタツの位置づけ

1 カンタツの概要
(1)カンタツの概要
   カンタツは、スマートフォン等に搭載されるカメラのマイクロレンズユニット分野
 で有数の企業であり、その概要は以下のとおりである。
   シャープは、従前から同社が製造するレンズユニット製品(以下「製品」とい
 う。)を仕入れて、これを組み込んだカメラモジュール等の製造・販売を行ってお
 り、カンタツへの出資も行っていたが、2018年1月、仕入れから製造販売まで一気通
 貫のグループ体制を構築すべく、カンタツが発行した新株予約権付社債を普通株式に
 転換することにより子会社化した。



                     6
     ①   名               称   カンタツ株式会社
     ②   所       在       地   東京都品川区南品川 3-6-21
     ③   代表者の役職・氏名           代表取締役社長・張舜治
     ④   事   業       内   容   マイクロレンズユニットの設計及び製造等
     ⑤   資       本       金   4,706 百万円
     ⑥   設   立   年   月   日   1979 年 6 月 19 日
     ⑦   大株主・議決権比率           シャープ:53.25%、その他:46.75%
     ⑧   シャープとカンタツとの関係
         資   本       関   係   普通株式の 53.25%及び種類株式 12,300 株を保有
         人   的       関   係   カンタツに対し 11 名が出向(2020 年 3 月末時点)
         取   引       関   係   カンタツからレンズユニットを購入
         関 連 当 事 者 へ         カンタツ及びその子会社は、シャープの子会社及び孫会社
         の   該   当   状   況   であり、シャープの関連当事者に該当する


(2)カンタツの組織体制・役員構成等
 ア   組織体制等
 (ア)本社・子会社等の所在
     ⅰ    国内拠点
         ・本社(東京都品川区南品川 3 丁目 6-21 トーヨービル
                 但し、2019 年 10 月 1 日までは栃木県矢板市片岡 1150 番地 23)
         ・福島金型工場(福島県須賀川市横山町 139)
     ⅱ    海外拠点
         ・A 法人及び B 法人


 (イ)事業部門の組織
     ⅰ 2018 年 10 月までの組織
          カンタツでは、2018 年 10 月までは、機能別の組織体制を採用しており、製品
         の製造機能を担う生産本部の傘下に製造工場である A 法人及び B 法人が置かれ、
         金型の加工及び成型技術の開発等を担うe事業本部のほか、営業機能を担う事
         業本部が置かれていた。また、これ以外に、技術開発を担う技術開発本部、管理
         部門として、事業戦略本部、財務本部、業務本部が置かれていた。
     ⅱ 2018 年 11 月以降の組織
          2018 年 11 月以降、組織を再編し、事業本部制が採用され、a 事業本部、b 事
         業本部、e事業本部に改組された。
          また、在庫管理・資材購買を担う生産統括本部、品質管理を担う品質統括本部
         が設けられたほか、管理部門として、事業戦略本部、財務本部、業務本部が置か
         れていた。

                                      7
 (ウ)機関設計及び会議体
      カンタツは、監査役会設置会社かつ会計監査人設置会社であるところ、取締役会
     のほかに経営戦略や各事業の進捗状況、予実等について決定や見直しを行う任意
     の会議体として経営会議が存在する。
      経営会議の出席者は、代表取締役、業務執行取締役、執行役員、本部長、副本部
     長、A 法人・B 法人の総経理、監査役、事業戦略本部に所属する社員である。


 イ   連結子会社化(2018 年 3 月)以降の役員構成等の推移
 (ア)2018 年 3 月以降 2019 年 4 月までの役員構成と担当
      シャープが 2018 年 3 月にカンタツを連結子会社化し、シャープから転籍し
     た A 氏が 2018 年 10 月に代表取締役に就任し、2019 年 4 月 1 日に、現在の事業
     本部制を採用するまでの主要な役員の担当と異動状況は、以下のとおりであ
     る。なお、事業戦略本部に存在する事業戦略部の部長は H 氏が、財務本部に存
     在する経理部の部長は J 氏が、業務本部に存在する法務部の部長は L 氏が務め
     ている。
      氏 名                 2018.3~                    2018.7~                  2018.10~     2018.11~

      A氏           シャープCM事業本部本部長                    専務取締役                    代表取締役社長

      N氏                代表取締役社長                                              取締役副社長

      I氏          常務取締役(財務本部本部長)

      D氏           取締役(c統括本部本部長)                                                         (c事業本部本部長)

      B氏                  社外取締役                                取締役(d営業本部本部長)             (d事業本部本部長)

      R氏      取締役・シャープCM事業本部本部長代行               2018.6 退任(シャープCM事業本部本部長代行)

      O氏                                       執行役員(A法人 総経理)

      P氏                                       執行役員(B法人 総経理)

      T氏                  常勤監査役

      M氏                  社外監査役

      U氏                  社外監査役



(イ)2019 年 4 月以降 2020 年 12 月までの役員構成と担当
      氏 名                            2019.7~                                  2020.7~     2020.11~

      A氏                            代表取締役社長                                  代表取締役会長        顧問

      V氏                                                                     取締役社長       代表取締役社長

      N氏                            取締役副社長                       2020.6 退任

      W氏                                                                     社外取締役       取締役副社長

      I氏                   常務取締役(財務本部本部長)

      D氏                     取締役(c事業本部本部長/b事業本部本部長/プロジェクトA2担当)                              顧問

      B氏                取締役(d事業本部本部長/a事業本部本部長)

      O氏                                       執行役員(A法人 総経理)

      P氏                                       執行役員(B法人 総経理)

      T氏    2019.6 辞任

      M氏                 常勤監査役

      U氏                 社外監査役

      X氏                 社外監査役                                   2020.6 辞任

      Y氏                                                                     社外監査役

      R氏                    シャープCM事業本部本部長



                                                       8
2 本件に関連するシャープグループの事業
  シャープのカメラモジュール事業本部はスマートフォン、タブレット、その他 IT 機器
 に搭載されるカメラモジュールの開発・生産・販売を行っており、カンタツから製品を購
 入している。
  旧電子デバイス事業本部(現   シャープ福山セミコンダクター株式会社及びシャープ
 福山レーザー株式会社)は、光センサ・LSI・CMOS イメージセンサ・レーザーなどの開発・
 生産・販売を行っている。上記カメラモジュール事業本部は、旧 電子デバイス事業本部
 の一部門から派生した事業本部である。


3 シャープにおけるグループガバナンス体制
  シャープグループのコーポレート・ガバナンス体制は次の図のとおりである。




   カンタツグループを始めとする子会社は、図中の業務執行部門に含まれ、具体的には
  次のとおりシャープ本社の管理・監督に服している。


(1)管掌責任体制による管理・監督
   シャープグループでは、企業集団としての内部統制の実効性を上げるため、シャープ
  本社に管掌本部、管掌責任者及び経営管理部門等を設けて管掌責任体制を構築し、子会
  社等の事業の推進及び管理を行わせている。
   管掌責任者は、子会社の経営状況等を掌握し、必要に応じて子会社の取締役に対して
  指導・助言を行うことなどにより、業績向上や構造改革の推進に責任を負っている。経
  営管理部門は、経営内容・事業概況を把握し、管掌責任者等の職務執行を補完している。
   カンタツの管掌本部はカメラモジュール事業本部であり、管掌責任者はカメラモジ
  ュール事業本部長、経営管理部門は管理統轄本部調達統轄部 CM 調達部である。



                      9
(2)業務執行の事前確認
   シャープグループでは、一定の内容・金額の業務執行については、子会社内での決裁・
 執行に先立ち、シャープ本社の事前確認を要求しており、上記管掌責任者やシャープ本
 社の会長又は社長あるいは取締役会が確認を行っている。
   もっとも、通常の取引に関する事項については、多くを子会社に委ねている。


(3)経営状況のモニタリング
   シャープ本社は、子会社に対し、管掌する管掌本部の報告と併せて、経営計画や業績
 報告を行わせており、併せて売掛金や棚卸資産の状況を確認している。


(4)監査体制
   子会社の業務執行・経営状況に関して、シャープ本社の監査部や監査等委員会により
 定期あるいは臨時に監査が行われている。シャープ本社の監査部及び監査等委員会に
 よる監査については、両者が協議・連携して、重要な国内子会社については毎年、その
 他の国内子会社については2年ないし5年毎にヒアリングが実施されている。また、一
 定規模以上の海外子会社についても同様に監査が行われている。
   カンタツはその他の国内子会社に含まれており、調査対象期間中においては、A 法
 人・B 法人と併せて以下のとおり監査が行われていた。
      監査部    :カンタツの監査(2018 年 7 月)
                                。
      監査等委員会:B 法人の監査(2018 年 9 月)。
      監査等委員会:A 法人の監査(2019 年 1 月)。
      監査等委員会:カンタツの監査(2019 年 3 月)
                               。


(5)内部通報制度
   シャープグループにおいては、公益通報者保護法に準拠して内部通報制度を設けて
 おり、シャープ及び国内関係会社における組織又は個人の法令違反や倫理違反等に関
 する通報・相談・苦情を受け付ける窓口として、社内においては管理統轄本部管理本部
 内部統制部を、社外においては弁護士事務所を指定している。
   なお、カンタツにおいては、上記に加えて独自の内部通報制度を設けており、通報窓
 口として、社内においては総務担当部門を、社外においては弁護士事務所を指定してい
 る。




第3.本件問題による不適切な会計処理の内容と影響額

1 不適切な会計処理の概要
 本調査の結果、当委員会は、カンタツにおいて、大要、以下の類型の不正又は誤謬と評

                        10
 価すべき不適切な会計処理が行われていたことを確認した。
  なお、第3.1及び2に記載の外貨建て金額に対しては参考として 1USD=105 円、1
 元=16 円で換算した円貨額を記載している。但し、実際の会計処理において用いられて
 いる換算レートとは異なる。


(1)A 法人による商社宛の取引の売上計上についての不正又は誤謬
  ア 商社(甲社)に対する先行販売による不適切な売上計上
    A 法人においては、2018 年 7 月頃から、資金繰りの必要性及び売上高確保のため、
   商社(甲社)を経由して製品納入先に対してレンズを販売するという商流において、
   製品納入先から商社への PO が提出されていないなど転売見込みが確定していない時
   点で、予め合意した範囲で商社(甲社)からの PO のみに基づき、当該商社(甲社)
   に対し商品を引き渡し、この時点で売上を計上していた。
    当該引渡しにかかる商品については、製品納入先からの発注が無い場合、後日返品
   される可能性が否定できないため、返品されないことが確定するまでは会計上は原
   則として売上計上することはできない。それにもかかわらず、カンタツグループにお
   いては、この点が特段意識されることなく、商社から PO の発行がなされ製品を引き
   渡した時点で売上を計上したが、これは不適切な会計処理であった。


  イ 商社(甲社)の了解を欠く不正な売上計上(架空計上)
    2020 年 1 月頃以降、上記アの先行販売によっても売上が不足したため、売上を確
   保するため、製品納入先からの PO 発行がないことはもとより、商社(甲社)からの
   PO 発行もない(商社(甲社)の了解がない)状況下で、不正に売上を計上した。


(2)B 法人における簿価を有しない製品の循環取引
   評価損又は廃棄損を計上して簿価を有しない製品を販売して得られた収益は、営業
  外収益に計上され、売上を計上できない。
   B 法人は、後記(3)のとおり簿価を有しない製品の販売を見込んでいたことから、
  当該販売についても売上を計上できるよう、これに先立ち、2019 年 2 月から 3 月にか
  けて、当該製品を、B 法人が商社 A に、商社 A が商社 B に、商社 B が B 法人に販売する
  循環取引により、通常の製品であるかのように装い、不正に仕入価格を簿価とする製品
  として棚卸資産計上した。かかる循環取引は、伝票処理のみで実施され、実際の出荷は
  されておらず、実体のない取引であった。
   なお、B 法人から商社 A への販売時点では簿価を有しない製品であり、上記のとおり
  その販売について売上・営業利益を計上することができないものであったが、実際には、
  誤って売上及び原価が計上され、後記(3)の商社(乙社)への販売による売上・営業
  利益と併せて、同一の製品の販売について二重に売上・営業利益が計上された。



                        11
(3)B 法人から商社(乙社)に対する販売による不正な売上計上
   B 法人は、2019 年 2 月ないし 3 月、商社(乙社)に対し 2 回にわたり製品を販売した
  (なお、このうち、2019 年 2 月に発行された PO の対象となった製品は、前記(2)の
  循環取引により資産計上されたものであった。。
                       )
   B 法人から商社(乙社)への販売には、契約上、売買代金の支払に一定の条件が付さ
  れており、又は、一定の条件のもとに返品を受けることを義務付ける条件が付されてい
  た。このため、同取引については、会計上、当該商社(乙社)がその販売先に対して当
  該製品を販売し B 法人に返品しないことが確定するなど、売買代金の支払条件が充足
  された時点ではじめて B 法人において売上計上が可能であったが、B 法人は、当該製品
  について、商社(乙社)への納品をした時点で、売買代金の支払条件が成就していない
  にもかかわらず、不正に売上を計上した。
   また、2019 年 3 月に PO の発行を受けた製品については、製品の出荷すらなされてい
  ないにもかかわらず、不正に売上を計上した(但し、当該製品にかかる取引については、
  下記(4)イの商社(丁社)との取引によって販売できる見通しが立ったことから取引
  が解消され、その売上処理は 2019 年 7 月に取り消されている)。


(4)カンタツから商社に対する販売による不正な売上計上
  ア   カンタツから商社(丙社)に対する販売による不正な売上計上
      (支払条件を充足しない取引による不正な売上計上)
      カンタツは、2019 年 4 月から 6 月にかけて、及び同年 8 月から 12 月にかけて、製
   品納入先による発注の有無が未確定の段階で、商社(丙社)に対する製品の販売を実
   施した。当該販売に際しては、当該商社(丙社)の転売先の検収を了さない限り、カ
   ンタツとして販売代金の支払を受けることができないことを合意していた。このた
   め、かかる商社(丙社)との間の取引では、会計上、対価支払の条件成就の見通しが
   立っていないため、売上を計上することは許されなかった。また、カンタツは、当該
   取引の対象製品について出荷があったと見せかけるため、カンタツの他の倉庫に移
   動させたり、棚卸資産から除外して販売先からの預かり品に切り替えたりしていた
   が、かかる倉庫への移動や預かり品への切り替えだけでは実質的にみて出荷(財貨の
   移転)とは認められず、売上を計上することは許されない。それにもかかわらず、カ
   ンタツは当該商社(丙社)からの PO を取得した時点で不正に売上を計上していた。
      なお、上記のカンタツの当該商社(丙社)との取引のうち、2019 年 4 月から 6 月ま
   での取引にかかる製品については、下記イの商社(丁社)との取引によって販売でき
   る見通しが立ったことから、カンタツは取引を解消し、その売上処理を 2019 年 7 月
   に取り消している。


  イ カンタツから商社(丁社)に対する販売による不正な売上計上
      (返品特約付き売買による不正な売上計上)

                          12
      カンタツは、2019 年 7 月、商社(丁社)に対して、製品を販売した。また、B 法人
   が 2019 年 2 月に商社(乙社)に販売した製品についても、カンタツの仲介により、
   商社(丁社)が買い取ることとなった。
      これらの取引の時点では当該商社(丁社)から製品納入先に対する転売可能性は未
   確定であったため、カンタツと商社(丁社)との契約においては、一定期間経過して
   も製品納入先による製品買取りが確定しない場合には、カンタツが返品に応じる旨
   の特約(返品特約。なお、2019 年 2 月販売分の製品についてはカンタツが買い取る
   旨の特約(買戻特約))が合意されていた。返品特約等が付されている物品の販売に
   ついては、財貨の移転が完了しておらず、会計上原則として売上を計上することは許
   されないが、カンタツは、当該商社(丁社)に当該製品を納入した時点で、不正に売
   上を計上した。


(5)上記(4)の取引についての B 法人及び A 法人による買戻し
  ア   上記(4)アに関する一部買戻し
      上記(4)アのカンタツから商社(丙社)に対する販売のうち 2019 年 8 月から 12
   月になされた取引については、当該商社(丙社)から製品納入先への販売が一定期間
   内に実現せず、商社(丙社)はカンタツに対して代金を支払わなかった。カンタツ社
   内で売掛金の回収遅延が問題となったことから、納入先商社(丙社)は、一部を更に
   別の商社(戊社)へ転売するなどして製品納入先への販売を模索したが、その後も当
   該製品の製品納入先への販売は実現しなかった。
      カンタツは、上記の商社(丙社)から転売先商社(戊社)との取引に際して、転売
   先商社(戊社)との間で、当該転売先商社(戊社)から一定期間内に製品納入先への
   販売が実現しない場合には B 法人において買戻しを行う旨を約していた
                                    (買戻特約)。
   上記のとおり製品納入先への転売は実現されなかったため、 法人は当該製品を買い
                              B
   戻した。
      かかる取引は、実質的には循環取引である。


  イ   上記(4)イに関する買戻し
      上記(4)イの取引について、製品納入先による製品買取りが一定期間内に実現し
   なかったため、納入先の商社(丁社)はカンタツに対して返品特約に基づいて買戻し
   を求めた。
      カンタツは、丁社から買戻しを求められた製品を自ら買い戻すことなく、一部につ
   いては 2020 年 2 月に A 法人で買い戻すことを合意し、残余については 2020 年 7 月
   に別の商社2社(庚社・辛社)を介在させ、B 法人で買い戻した。
      これらの取引は、実質的には循環取引である。




                         13
(6)その他の商社(丁社又は甲社)に対する先行販売による不適切な売上計上
   カンタツは、2019 年 8 月以降、商社(丁社)への販売、及び、商社(甲社)への販
 売について、それぞれ転売予定先の製品納入先が存在するものの、製品納入先から商
 社への PO が提出されていないなど転売見込みが確定していない時点で、商社からの
 PO の発行及び商社への引渡しをもって売上を計上した。
   前記(1)アと同様に、上記取引においては製品納入先からの発注が無い場合は返
 品することが合意されており、その可能性が否定できないため、返品されないことが
 確定するまでは会計上原則として売上が計上できない。にもかかわらず、カンタツグ
 ループにおいては、この点が特段意識されることなく、商社(甲社又は丁社)から PO
 の発行がなされ製品を引き渡した時点で売上を計上したが、これは不適切な会計処理
 であった。


(7)棚卸資産についての評価損の計上の回避
   カンタツグループにおいては、販売見込みのない製品については、社内規定に即して
 適時に評価損を計上すべきところ、上記(1)ないし(6)に関連する一連の販売取引
 は、売上の計上(又はその維持)を目的とすると同時に、棚卸資産(製品)について、
 評価損の計上を不正に回避することをも目的として実行された。


(8)その他の不適切な会計処理
   以上のほか、カンタツグループでは、その他の売上の架空計上 1 件のほか、簿外製品
 を棚卸資産として再計上して原価を低減することや、交付が決定されていない補助金
 について収益として計上すること等、不適切な会計処理が行われていた。


2 不適切な会計処理の具体的手法とその内容
(1)カンタツの事業体制と不適切な会計処理の発生に至る経緯・背景等
  ア カンタツの事業体制と不適切な会計処理の発生に至る背景
 (ア)カンタツでは、2019 年 3 月までは、製造を担う生産本部の傘下に製品管理、資
    材購買を担う生産統括部を設けるとともに、製造工場である A 法人及び B 法人を
    管理していた。その後、2019 年 4 月に事業本部制を採用し、これ以降、事業本部
    制の下で3つの事業本部を設けて事業本部単位での収益管理を行っており、この
    うち2つの事業本部が、それぞれ中国の現地法人である製造工場 法人・B 法人)
                                 (A
    に関する事業を行っている。
  (イ)B 法人は、予てより稼働率が低迷する一方、設備投資の減価償却負担が重く、B
    法人単体としての損益は赤字の状態が続いていた。B 法人では、工場の稼働率を高
    めることに取り組んでいたが、結果として、2018 年 6 月以降に製品が滞留する問
    題が生じた。加えて、納品済みの製品について、2019 年 7 月には返品を受けるこ
    ととなり、当該返品分についての評価損の計上の負担が危惧されたこともあり、早

                     14
    期に販売することが必要となっていた。
(ウ)カンタツでは、本社管理部門として、品質統括本部、事業戦略本部、財務本部、
    業務本部を設けていた。このうち、品質統括本部は品質保証等を統括し、また、業
    務本部は、人事総務、法務、システム管理等を担っていた。
     事業戦略本部(本部長 G 氏・事業戦略部長 H 氏)は、事業計画の立案と進捗管理
    を行っており、経営会議や週次会議等において、事業計画の進捗管理等を行ってい
    た。事業戦略本部は、それぞれの事業本部に対して、製品納入先からのフォーキャ
    ストの状況を確認するとともに、受注の見込み等を統括し、月次で事業計画通りの
    受注や製造・納入等の進捗管理を行っていた。
     また、財務本部(本部長 I 氏、経理部長 J 氏)は、金融機関からの借り入れ等の
    資金調達・管理を行うとともに、事業部からの申請に基づいて取引先の与信を審査
    し、また、売掛金の回収状況を精査するなど、資金繰りについても管理していた。


イ   シャープによる子会社化と 2018 年 4 月以降の業績の低迷
(ア)シャープでは、カメラモジュール事業の成長を志向して、2016 年 9 月にカメラ
    モジュールに関する事業を独立の事業本部として立ち上げて、事業基盤の強化を
    図っていた。その一環としてカンタツの収益をシャープグループ内に取り込むこ
    とを企図し、転換社債を譲り受け、2018 年 1 月に転換権を行使し、カンタツ株式
    の保有比率を高めた。この結果、2018 年 3 月末以降、カンタツは、シャープの連
    結対象子会社となった。これ以降、カンタツは、シャープに対して、月次で事業の
    進捗状況の報告を行うようになり、従来に比して、事業計画通りの業績を達成する
    ことについてのプレッシャーが高まっていた。
(イ)カンタツでは、2017 年 3 月期に業績が低迷し、その主要な要因として、B 法人の
    収益の低迷があり、カンタツの会計監査人からは、工場設備・金型等の固定資産に
    ついて減損の可能性を指摘されていた。カンタツは 2018 年 3 月期の業績も低迷し
    たため、同様の指摘を重ねて受けた。
     B 法人関連の事業は、2018 年 6 月以降、2019 年 3 月期についても、その業績が
    低迷することが見込まれていたため、業績を挽回することが求められていた。


ウ   製品の販路拡大による売上貢献への期待
(ア)2018 年 6 月に A 氏が、次期社長含み(2018 年 10 月のカンタツ株主総会において
    社長に就任)でシャープからカンタツに転籍し、折からのカンタツの業績の低迷に
    ついてのテコ入れに取り組むこととなった。
     そこで、2018 年 8 月頃以降、A 氏は、製品の販路等の拡大への取組みの強化を提
    唱した。その具体的な遂行は、専ら A 氏と D 氏の二人の協議に基づき実行され、本
    来取引開始に先立って行われるべき与信審査や契約審査も事後的に行われるなど、
    カンタツの社内でもその実情が適時かつ十分に情報共有されていなかった。 氏に
                                      D

                        15
  よる製品の販路拡大の取組みは、2019 年 2 月ないし 3 月の商社(乙社)への販売
  に始まるが、かかる取引はその後 2019 年 8 月まで売掛金が回収されなかった。ま
  た、2019 年の 4 月から 6 月には、商社(丙社)への販売が一旦売上として計上さ
  れたものの、その後、売掛金の回収が実現しないために 2019 年 7 月にかかる売上
  が取り消され、その後に別の商社(丁社)宛の売上が計上されており、この間、製
  品の販売の実情はカンタツの経営会議等においても十分に明らかにされていなか
  った。
   事業戦略本部の事業計画の作成・管理を担う H 氏や財務本部長の I 氏らは、D 氏
  の担当する製品の販売先の商社(乙社)からの売掛金の回収が一向に進まない状況
  を 2019 年 4 月から 5 月頃に把握した。その際、H 氏や I 氏らは、当該商社との契
  約条件に返品条件や一定の回収条件が付されていることを知り、かかる取引につ
  いて売上を計上することの問題点を意識し、 氏に対してこれらの問題点を指摘す
                      D
  るとともに、早期に売掛金の回収を図ることを個別に指導するなどをしていた。し
  かしながら、A 氏の提唱した製品の販売施策については、A 氏が D 氏と二人で管理
  している案件という性質もあり、I 氏らは、売掛金の回収が滞留していることにつ
  いて、ことさらに取締役会等の場において問題であることを指摘しなかったため、
  取締役会の場で社外取締役等の指摘等を受ける機会もないままに推移した。
   以上のように、カンタツにおいて、親会社であるシャープから派遣された A 氏の
  経営指導力に大いに期待が寄せられている状況下において、他の取締役以下の経
  営幹部がかかる取組みを黙認し、特に異を唱えずに推移したことには酌むべき事
  情も認められる。
   さらに、そもそもカンタツでは製品の採算性が悪化することが常態化しており、
  また、工場設備の稼働の繁閑が変動するなど、固定費の管理を含めた収益性の管理
  が難しいこと等の事情があることも手伝って、 氏が強い姿勢で収益性を高めるべ
                       A
  く、従来のカンタツにおいては取り組まれてこなかった形で販売戦略を打ち出す
  ことについて、カンタツでは、シャープ出身者ならではの経営手腕への期待もあっ
  たことが認められる。
   このような諸事情が複雑に絡み合い、カンタツにおいては、A 氏の提唱した販売
  施策の取組みについて、表立って特段の反発や反対の声が上がらなかったものと
  推認される。
(イ)後述のとおり、カンタツでは、2018 年 6 月以降、製品が滞留することとなった。
   さらに、2019 年 7 月には、納入済みの製品について返品に応じざるを得ないこと
  となり、大量の滞留在庫を抱えることとなった。
   他方で、2018 年 10 月頃を始めとして、シャープから、カンタツグループ全体で
  の棚卸資産の圧縮への取組みの強化の指示を受けるなど、棚卸資産の販売に対す
  るプレッシャーが強まっていた。
   カンタツでは、これらの事情を背景に販売に取り組んでおり、A 氏提唱した販売

                      16
    施策は、事業計画の穴埋めとして売上高を維持することを目的とすると同時に、棚
    卸資産についての評価損の計上を回避するという側面もあった。


エ   2019 年 4 月以降の資金繰りのひっ迫
(ア)シャープの連結対象子会社となったことに伴い、カンタツは、2018 年 4 月以降、
    シャープに対して業績の報告を月次単位で行うこととなった。カンタツの経営陣
    は、予め策定した事業計画通りに収益を上げることに注力するも、前述のとおり、
    2018 年 6 月以降、 法人関連の事業の不振は、
                 B            事業計画が未達となる主要な原因と
    なった。
(イ)この結果、カンタツの 2019 年 3 月期の業績は低迷し、金融機関からの借入時に
    設定された財務制限条項に抵触する結果となり、2019 年 4 月以降、一部の金融機
    関からの借入金について、借り換えが認められず、資金繰りのひっ迫が一層厳しい
    ものとなった。カンタツでは、シャープから融資(3,000 百万円)を得るなどして
    急場をしのいでいたが、賞与の支払はもとより、給与の支払についても綱渡りとな
    るなど、資金繰りを協議するための会議を開催することが頻繁に行われ、恒常的に
    資金繰りに窮する状態が続いていた。
(ウ)事業面では、B 法人の稼働は低迷が続いた。加えて、米国による経済制裁の一環
    として、
       2019 年 5 月に主たる納入先メーカーに対する製品の供給制限が実施され、
    A 法人においても事前のフォーキャスト通りの納入を行えないなどの不振が続い
    た。
     また、2020 年 1 月から 4 月にかけて新型コロナウイルスの感染拡大による B 法
    人の生産停止に伴う損失等が発生し、この結果、2020 年 3 月期の業績は、策定済
    みの事業計画を大幅に達成できない事態となって低迷した。
(エ)このほか、B 法人において、受注の拡大を目論んで設備投資を行ったが、前記の
    とおり、2018 年及び 2019 年の両年度ともに製品納入先からの新たな受注が伸びな
    かった。B 法人については、予てより生産工場でありながら赤字状態が継続してい
    たが、その後も新型コロナウイルスの影響を受けて工場の稼働率は上がらず、収益
    は低迷した。
(オ)このような状況下で、米国が 2020 年 5 月に納入先メーカーに対して経済制裁を
    科すことを決定し、同社から事前に提示されていたフォーキャストどおりに納入
    できる見通しが立たなくなり、カンタツの収益は再度大きな打撃を受けた。
     さらに、2020 年 8 月には、納入先メーカーに対して、米国による経済制裁が科
    され、業績が大幅にダメージを受けた。この結果、カンタツは事業計画を達成でき
    ないばかりか、当面の資金繰りにも窮するようになった。
(カ)この間、 法人関連の事業本部では、
       A            策定済みの事業計画の未達を回避するべく、
    2020 年 1 月以降、製品の将来的な発注が回復することを期待して、製品納入先は
    もとより商社(甲社)からの正式の PO の発注をも欠いた状態で、商社(甲社)に

                        17
      対して、商品を売り渡したこととして、不正に売上を計上していた。
 (キ)また、A 氏の提唱した販売施策に基づく売掛金について回収が滞留していること
      は、2020 年 2 月頃にはカンタツの監査役会も問題視し、同年 3 月の期末を控えて
      A 氏に対して、その当時未回収となっていた商社(丙社)向けの 1,945 百万円の売
      掛金についての回収の見込み等を確認するなどしていた。
       カンタツの会計監査人は、同年 3 月期の決算監査に際して、商社(丙社)向けの
      1,945 百万円の売掛金についての引当金の計上の要否を問題にしていたが、これに
      対し、同年 5 月、A 氏及び I 氏が 2020 年 9 月には当該売掛金を回収する旨約して
      いたこともあり、同年 3 月期に貸倒引当金の計上を不要と判断したカンタツの会
      計処理について、監査上問題としなかった。
       しかしながら、その後、2020 年 9 月になっても当該売掛金の回収は実現せず、
      カンタツの取締役会で問題となり、また、シャープ本社監査部の内部監査が実施さ
      れた結果、一連の会計不正等が発覚するに至った。


(2)A 法人における商社(甲社)に対する不適切な売上計上の具体的内容
  ア   商社(甲社)との取引の担当・経過等
  (ア)甲社との具体的な取引条件等は、カンタツの A 法人関連の事業本部において担当
      していた。
  (イ)前述のとおり、カンタツでは、2018 年 3 月期の業績が低迷し、シャープの連結
      対象子会社となってスタートした 2018 年 4 月以降も、B 法人関連の事業の業績が
      低迷した。このため、その穴埋めとして、他の事業本部において業績をカバーする
      ことが期待されていた。


  イ   商社(甲社)に対する先行販売による不適切な売上計上
  (ア)先行販売時点における売上計上
       A 法人の取引の相手方である商社(甲社)は、予てより 2019 年 9 月頃まで、毎
      月 15 日を締め日として当月分の売上を集計していた。このため、当月の 16 日以
      降月末までに製品納入先から PO を得たとしても、当該 PO にかかる発注分は翌月
      分の売上として計上されていた。A 法人及び A 法人関連の事業本部では、このよう
      な売上の締め日の設定の関係で、月次の計画通りの業績達成ができないことがあ
      ったが、2018 年 4 月からの事業年度において、折からの他の事業本部の業績が低
      迷したこともあり、 法人関連の事業本部において業績を計画通りに達成すること
               A
      が、以前にも増して強く意識されるようになった。
       かかる状況のもと、2018 年 7 月以降、本社の営業と A 法人の間で毎月2回開催
      されていたフォーキャスト会議において、本社の了解又は本社の指示のもとで、計
      画通りの売上を達成するべく、製品納入先からフォーキャストが出ている取引に
      ついて、製品納入先からの PO を欠く時点であっても、 (甲社)
                                 商社   の了解を得て、

                          18
 商社(甲社)からの PO のみに基づいて商品の引渡しを実行した時点で売上を計上
 するようになった(なお、商品の引渡しは A 法人工場で行われており、売上計上後
 も引き続き A 法人工場内で区分保管して、製品納入先からの PO や出荷指示があっ
 た時点で A 法人工場から出荷されていた)
                     。
  カンタツグループでは、かかる取引を「先行販売」と称しており、以降、2020 年
 12 月まで先行販売が実施された。
(イ)先行販売の会計上の問題点
  ところで、かかる先行販売は、開始当初の 2018 年 7 月時点では、商社(甲社)
 との間での口頭合意に基づくものであったが、2018 年 11 月には、当該商社(甲社)
 から提示された覚書をもって合意するようになり、これ以降、2019 年 3 月まで、
 先行販売が実施される都度、毎月事後に覚書が作成された。また、2019 年 7 月 9
 日付で一定数量の先行販売についての覚書が締結された(なお、当該覚書は、現実
 には、2019 年 9 月に作成されたものであるが、2019 年 3 月に行われたシャープ監
 査等委員会の指摘事項のフォローアップ期限までに対応したこととするため、日
 付をさかのぼって作成されている)。これ以降、カンタツと当該商社(甲社)との間
 で、先行販売についての協議が随時行われ、覚書の変更についての合意が重ねられ
 ている。
  これらの合意においては、所有権が当該商社(甲社)に移転することが記載され
 る一方、将来の返品の可能性についても記載されており、また、先行販売において
 は、製品納入先からの PO を欠いた状態で売上を計上しているため、製品納入先か
 らのフォーキャストが落ちた場合には、当該商社(甲社)から納入した製品を返品
 される可能性が存在した。
  会計上、当該引渡しにかかる商品に関し後日返品される可能性を否定できない
 場合には原則として売上計上することはできず、したがって、上記先行販売につい
 ては先行販売の時点で売上を計上することはできないものであった。
(ウ)不正であることの認識の有無
   このように先行販売時点で売上を計上することに関しては、B 氏は、2018 年 12
 月には、カンタツの T 監査役から返品の可能性あるものについて売上計上するこ
 とについての疑義があることの指摘を受け、2019 年 1 月には、当該商社(甲社)
 から、 月から 3 月分の先行販売を実施することについてコンプライアンス上の疑
    1
 義がある等の指摘を受けていたうえ、さらに、2019 年 2 月には、B 氏は A 氏から、
 2019 年 4 月以降に IPO に向けた審査が始まることを踏まえて、2019 年 4 月以降、
 先行販売を執り行わないようにという指示を受けていた。これらの状況からする
 と、カンタツグループの関係者が先行販売時に売上を計上することが会計上不適
 切であることを認識していた可能性が認められる。
  しかしながら、B 氏のみならず、A 氏など、先行販売についての存在を認識して
 いたカンタツの経営幹部は、調査委員会のインタビューに対し一様に、特定の製品

                     19
  納入先への商流が確定している製品について、商社からの PO があり、商社への引
  渡しが行われれば、後日にフォーキャストのダウン等によって返品の可能性があ
  るとしても、売上を計上すること自体に会計処理上、特段の問題はないと認識して
  いたと説明している。
   相当の会計知識を有する者からすれば、先行販売時点では売上計上を認めるに
  足る要素(特に財貨の移転)は不十分であって、上記説明は不合理で信用できない
  ように思われる。もっとも、後述する製品納入先への商流が確定していない場合と
  は異なり、先行販売は特定の確立された商流において将来出荷が相当程度期待で
  きる場合であったこと(なお、その後現実に出荷がなされていて、返品に至ってい
  ないこと) そもそも会計上の売上計上の基準が明確な要件をもって定められて
       や、
  いるものではないこと、相手方が引渡しとして了承していることも考慮すると、上
  記説明のように売上計上が認められると認識していた可能性も十分に考えられ、
  彼らの説明が全くの虚偽であるとは断定できない。経営幹部等取引関与者がかか
  る認識であり、経理担当者等が覚書を確認しておらず、先行販売において返品条件
  が付されていることを了知していなかった可能性があることからすると、カンタ
  ツにおいて先行販売について販売時の売上計上が会計上許されないことまで認識
  してなされたものであるとは断定ができなかった。
   このようなことから、調査委員会としては、先行販売時点での売上計上が不適切
  な会計処理であると認定はするものの、
                   (極めて軽率な)誤謬に基づくものであっ
  た可能性があり、関係者において不適切であることを認識しつつ敢えて行った不
  正な会計処理であるとの認定までには至らなかった。


ウ 2019 年 4 月以降の資金繰りのひっ迫
  カンタツでは、2019 年 3 月期に業績が低迷し、金融機関からの借入時に設定され
 た財務制限条項に抵触する結果となり、一部の金融機関からの借入金について、借り
 換えが認められず、予てよりの資金繰りのひっ迫がさらに増すこととなった。
  A 法人関連の事業本部では、2019 年 5 月に商社(甲社)向けの売掛債権について、
 金融機関の運営する債権流動化プログラムを利用することを合意し、製品納入先の
 発行する PO を金融機関が確認し、商社(甲社)が承認することを条件に、早期に売
 掛金債権を現金化できることとして、資金繰りを改善するための取組みを整備した。
 しかしながら、米国による経済制裁の一環として、2019 年 5 月に納入先メーカーに
 対する製品の供給制限が実施されたこともあり、製品納入先からの発注が伸び悩み、
 当初提示されたフォーキャスト通りに、製品納入先からの PO の発行がなされない状
 況が続くこととなり、そもそも計画通りに売上が計上されず、また、債権流動化プロ
 グラムの利用も限定され、資金繰りの改善も進まなかった。


エ 商社(甲社)の了解を欠く不正な売上計上(架空計上)

                      20
(ア)2019 年 11 月には、商社(甲社)との間で合意に基づき先行販売として売上を計
    上した在庫について、正式に製品納入先からの発注が行われず、さらなる先行販売
    による引渡しを商社(甲社)に了解してもらうことに苦労する事態が続くようにな
    った。
     このような状況下において、2020 年 3 月期末を控えて、経営会議や週次会議等
    の場において、事業戦略本部から事業計画通りの売上を達成できていないことに
    ついて指摘されることが重なり、2020 年 1 月以降、B 氏の指示又は承認の下で、商
    社(甲社)からの PO の発行を受けることなく、商社(甲社)の了解も得ず、カン
    タツのみの処理として、将来の売上の見込みのみに依拠して、売上を計上していた。
(イ)このような商社(甲社)の了解を得ることなく、カンタツのみの処理として売上
    を計上する手法は架空売上であり、明白に不正な会計処理である。
     このことについて、B 氏は、社内で「ダマテン」と呼称して商社(甲社)に「黙
    って売上を計上する」旨の指示を行っていることや、A 法人において、総経理の O
    氏が経理担当者に対して、売上計上に際して確認すべき商社(甲社)発行の書類が
    無いままに売上計上を行うよう指示していることからすると、不正であることに
    ついての認識を有していたことは明らかである。
     なお、A 氏は、かかる PO 無しの売上について、A 法人関連の事業本部からメール
    等を介した報告を受け、不正な売上計上を認識し、又は、少なくとも認識し得たが、
    これに特段異議等を述べることはなかった。
(ウ)かかる PO 無しの売上は、2020 年 1 月から始まり、同年 8 月までの間に 235,671
    千元(3,535 百万円)が計上されたが、カンタツは同年 7 月及び 8 月に事後的に製品
    納入先から PO を取得し、かかる売上計上分のうち 23,940 千元(359 百万円)につい
    て現実の売上を計上した。また、9 月度も事後的に製品納入先から PO を取得し、
    11,425 千元(171 百万円)について現実の売上を計上した。この結果、PO 無しの売
    上(その結果としての未回収の売掛債権)の残高は、2020 年 9 月末時点で 200,306
    千元(3,005 百万円)となった。
(エ)このように多額の売掛債権の滞留が存在していたことは、シャープ本社への業績
    報告の際にシャープの経営陣から疑義が呈され、シャープ監査部の監査がなされ
    ることとなった。
     また、カンタツにおいても監査役らから疑義が呈された結果、PO 無しの売上残
    高については同社の 2021 年 3 月期第 2 四半期(7 月から 9 月)において売上取消
    がなされた。


オ   その余の A 法人に関する不正(丁社が購入した製品(カンタツ販売分)の A 法人に
    よる買戻し)
    後述(3)カに記載のとおり、2019 年 7 月にカンタツから商社(丁社)に対して
 返品特約付きで販売した商品について、当該商社(丁社)からの返品要求に対し、カ

                         21
   ンタツが返品を受け入れた場合には当初の売上が取消となるとの問題意識から、カ
   メラモジュール化のための製品として、カンタツではなく、A 法人にてこれを買い戻
   すことにし、2020 年 2 月、カンタツの E 氏及び A 氏が、A 法人の O 氏に対して直接
   に電話し、A 法人での買戻しに応じるように指示命令を行って、A 法人において買い
   戻しの PO が発行された。


(3)B 法人・カンタツにおける不適切な売上計上の具体的内容
  ア   B 法人における簿価の無い製品の循環取引と商社(乙社)に対する販売(2019 年 2
      月販売分)による不正な売上計上
  (ア)商社(乙社)に対する 2019 年 2 月における販売
       前記のとおり、A 氏の指示・了解の下、主として、D 氏が 2018 年 10 月頃から製
      品の販路拡大を本格的に検討し、その販売先を探していた。
       2019 年 1 月頃、D 氏は、予てより面識のあった商社(丙社)の代表者 S 氏に対し
      て製品の販売先について相談したところ、S 氏から中国商社(乙社)の紹介を受け
      た。もっとも、 氏が中国語で交渉等をすることはできなかったため、
             D                        中国商社(乙
      社)との実質的な交渉業務は S 氏が担う形で、製品の販売に関する交渉を開始し
      た。
       交渉の結果、D 氏は、B 法人から当該商社(乙社)に対して、6,400 千元(102 百
      万円)で製品を販売する旨合意し、B 法人に実行を指示した。これを受けて、B 法
      人は、当該商社(乙社)からの PO を受領し、当該商社が製品納入先へ商品を転売
      して代金の回収ができた時点で売買代金の支払を受ける旨の条件(以下「回収支払
      条件」という。
            )が付されていた。
       その後、B 法人は、2019 年 2 月 26 日付けで、当該商社(乙社)から PO の発行を
      受け、同年 3 月に製品を出荷し、売上を計上した(以下「2019 年 2 月販売分」と
      いう。。
         )
  (イ)2019 年 2 月販売分に先立つ B 法人における循環取引
       2019 年1月頃、カンタツと B 法人との間で行われた B 法人の 2019 年 2 月度の損
      益見込みに関する会議において、B 法人の P 氏は、売上や営業利益がシャープに対
      して報告済みの事業計画上の数値に達しない見込みであることを報告した。これ
      に対し、A 氏及び H 氏らのカンタツの会議出席者からは、2019 年 2 月に上記製品
      の販売を見込んでいるにもかかわらず、売上・営業利益が報告値に達しないことに
      対する疑念が示された。会計基準上、評価損又は廃棄損を計上して簿価を有しない
      製品を販売して得られた収益は、営業外収益に計上され、売上・営業利益には計上
      されないところ、P 氏もかかる認識を有していたため、簿価を有しない製品の販売
      について売上・営業利益に計上することはできない旨指摘したところ、カンタツか
      ら、当該製品について販売を行い、なおかつ、売上及び営業利益として計上する方
      策を検討するよう指示を受けた。

                          22
   かかる指示を受け、B 法人内では、当該製品を外部の商社に販売し、これを再び
 B 法人で仕入れる循環取引を実行することで、改めて当該製品につき仕入価格を簿
 価とする棚卸資産として計上したうえで、S 氏から紹介された商社(乙社)に対し
 て販売して売上及び営業利益として計上するという循環取引スキームが考案され
 た。P 氏は、かかるスキームについて、社長である A 氏や副社長である N 氏、経理
 部の J 氏らに資料を送信して説明し、了承を得た。
   このような経緯を経て、2019 年 2 月から 3 月にかけて、実際には製品を移動さ
 せることなく、売上証憑書類及び金銭の授受をもって、B 法人から商社Aへ、商社
 Aから商社Bへ当該製品を販売したこととして、商社Bから B 法人が当該製品を
 仕入れた形を装ってこれを棚卸資産として計上した。
   なお、 法人から商社Aへの販売については、
      B                 営業外収益が計上できるにすぎず、
 上記のとおりそのことを認識していたにもかかわらず、誤って売上が計上された。
 その上で、B 法人は、2019 年 3 月に S 氏から紹介を受けた商社(乙社)に対して当
 該製品の販売し、売上計上を行われたため、同一製品について二重に売上計上がさ
 れる結果となった。
(ウ)手続上の不備
   B 法人において、S 氏から紹介された商社(乙社)等とはこれまで取引実績等は
 存しないものの、そもそも B 法人は工場としてカンタツとのみ取引を行うことが
 通例であったことから、与信審査や契約書の審査等の手続が適切に予定されてお
 らず、その結果、与信審査が行われず、上記回収支払条件等が付された契約書も作
 成されなかった。
(エ)会計処理の問題点
   2019 年 2 月販売分の取引の前提となる循環取引については、売上の架空計上で
 あり、かかる会計処理が不正であることはいうまでもない。この点、商社(乙社)
 に対する取引についても、財務本部のうち、少なくとも経理部の J 氏は P 氏から
 スキーム説明を受けており、循環取引として不正な売上計上であることを認識し
 ていたことが窺われるが、財務本部からは、D 氏に対して、複数回にわたり入金時
 期の確認が行われたのみで、循環取引の停止措置や売上計上についての訂正措置
 がとられるまでには至らなかった。
   その後の 2019 年 2 月販売分の取引については、回収支払条件が付されているた
 め、会計上は、出荷時点ではなく、早くとも乙社が製品納入先に転売を行って代金
 回収がなされた時点以降に売上計上を行うことが適切である。
   かかる 2019 年 2 月販売分の取引は、B 法人の取引であったものの、少なくとも
 2019 年 2 月末頃には、財務本部も、D 氏と I 氏とのやり取りを通じて、回収支払条
 件が付された取引であることを認識していた。また、D 氏は、転売先への商流が確
 立していないところ、転売先が見つからない場合には代金回収ができない可能性
 や、返品がなされれば売上取消に至ることについては認識していたものと解され

                    23
    る。よって、カンタツは 2019 年 2 月販売分について販売時点で売上計上すること
    自体が不適切であることは認識していたと解され、不正な売上計上であったと認
    められる。
(オ)その後の循環取引
     その後、後記エのとおり、2019 年 2 月販売分については、同年 8 月、商社(乙
    社)から別の商社(壬社)を経由して、さらに別の商社(丁社)に転売された結果、
    商社(乙社)から B 法人に対し、代金が支払われた。もっとも、この取引に際して
    は商社(丁社)が製品納入先に転売できない場合はカンタツにおいて買い戻すこと
    が合意されており、これが縁由となって、後記キのとおり、2020 年 7 月以降に行
    われた B 法人による買戻しがなされ、B 法人を起点とする一種の循環取引に至る
    こととなった。


イ   B 法人における商社(乙社)に対する販売(2019 年 3 月販売分)による不正な売上
    計上
(ア)カンタツでは、2019 年 3 月期の期末を迎えるにあたって、2019 年 3 月期に滞留
    する製品を販売することができなければ、棚卸資産の評価損を計上しなければな
    らず、事業計画達成が困難な状況にあった。そこで、2019 年 2 月末から 3 月初旬
    にかけて、カンタツの経営幹部である A 氏及び事業戦略本部の H 氏らの間では、
    事業計画の達成のために、製品を販売し、棚卸資産の評価損を回避することが企図
    された。
     本部長である D 氏は、上記の評価損回避の必要性を踏まえ、2019 年 2 月販売分
    とは別に当該商社(乙社)との間で製品を販売することを合意した(以下「2019 年
    3 月販売分」という。。
               )
     なお、2019 年 3 月 8 日付けで作成された出荷明細表には 3 月 26 日に客先が受領
    した旨の記載が存在するものの、現実に出荷がなされたことを示す証憑がなく、同
    年 4 月には商社(丙社)への売却に切り替えることを企図する中で「一旦当初の販
    売先企業へ 3 月販売をした形を取り、4 月以降返品を受けて PL 影響が出ない様、
    返品月内で、輸出を行い日本の商社へ販売するという話になっております。、
                                     」「会
    計監査での実地棚卸対応の為、現品も別場所へ移動」等のやり取りからは、2019 年
    3 月時点では現実に出荷されないばかりか、監査で発覚しない場所に移動させてい
    たものと解されるところ、P 氏も現実には出荷していないことを認めている。
     このように出荷がなされていないにもかかわらず、B 法人では、2019 年 3 月 20
    日付けの PO に基づき、また、出荷がなされたものとして、2019 年 3 月に当該商社
    (乙社)に対する売上を計上した。
(イ)会計上の問題点
     前記のとおり、2019 年 3 月販売分の取引については、そもそも現実に出荷がな
    されていないため、売上計上が認められる余地はなく、かつ、売上を計上すること

                        24
    が不適切であることの認識(不正の認識)があったものと認められる。
     なお、 月販売分については取引時点では具体的な製品納入先は決定しておらず、
        3
    かつ、D 氏と当該商社(乙社)との間では、代金の支払いについて当該商社が製品
    納入先に転売して転売先から代金を回収して以降とする回収支払条件が付され、
    さらに、当該商社(乙社)が商品を卸す製品納入先を D 氏が見つけることとされて
    いた。また、D 氏が製品納入先を見つけることができず、当該商社(乙社)が製品
    納入先へ商品を転売できなかった場合には、当該商品をカンタツに対して返品す
    ることができることとされている。会計上、回収支払条件や返品条件といった特約
    が付されている場合は、当該商社(乙社)が製品納入先に対して製品を販売し返品
    されないことが確定するなど、売買代金の支払条件が成就した時期に B 法人にお
    いて売上計上すべきと解され、この点でも 2019 年 3 月販売分については売上計上
    をすべきではなかった。
(ウ)社内手続及び指摘の不存在
     なお、本件においても、回収支払条件が付された発注書が商社(乙社)から発行
    されているものの、カンタツと商社(乙社)との間では回収支払条件を付した契約
    書は作成されておらず、社内で正式な契約内容のチェック等は行われていない。
     また、財務本部は、2019 年 3 月末の時点で、2019 年 3 月販売分についても、回
    収支払条件等が付されていることを認識していたことが窺われるが、売上計上自
    体が不適切であることについて、取締役会等に対して特段の指摘をした形跡は認
    められない。
(エ)2019 年 3 月販売分の転売と売上取消し
     2019 年 4 月になって、D 氏は、商社(乙社)から、その真偽は定かではないもの
    の、2019 年 3 月販売分については当該商社(乙社)では取扱いができる金額規模
    ではなく中国政府との間で問題になる可能性がある、中国の商慣習上問題のある
    取引であるという理由で、契約の解消を求められた。
     D 氏は、当該商社(乙社)との契約を解消に応じるべく、別の商社(丙社)に対
    して販売できないかを模索したが、最終的には後記エのとおり、2019 年 7 月に更
    に別の商社(丁社)に販売し、事後的に、2019 年 3 月販売分を販売先の乙社との
    間で合意解除して、売上を取り消した。


ウ   カンタツから商社(丙社)に対する販売による不正な売上計上(2019 年 4 月から
    6 月)
(ア)2019 年 4 月から 6 月の商社(丙社)に対する製品の販売
     カンタツは、B 法人から製品を買い受けて、2019 年 4 月から 6 月にかけて、前記
    商社(丙社)から PO の発行を受け、製品を当該商社(丙社)に対して販売した。
    かかる取引においては、当該商社(丙社)が多額の資金準備ができないことから、
    回収支払条件にて取引を行うこととされた。

                       25
   なお、製品は通常中国での販売が想定されるが、当該商社との販売時点では具体
 的な製品納入先は存在していなかったため、当該商社(丙社)への販売のみをもっ
 て売上を計上するべく、当該商社(丙社)が所在する日本へ出荷され、福島金型工
 場等で当該商社(丙社)へ引渡したこととして、そのまま預かり保管された。
(イ)社内手続の不備
   カンタツでは、新たな取引先と取引を開始する場合、社内規定に基づき、経営会
  議に付議され取引を開始することの是非について審議が行われるとともに、取引
  与信審査、取引基本契約書の締結が行われなければならない。かかる取引基本契約
  書の締結に際しては、カンタツ内で契約書申請及び押印申請手続が行われ、社長、
  事業本部長・事業副本部長、営業部長等が、それぞれ、これらの申請について確認
  又は承認する。
   しかしながら、上記の取引基本契約の締結にかかる契約書申請及び押印申請手
  続については、カンタツの社内ルールとして、経理担当者が承認者等には含まれて
  おらず、経理担当者はこれらの申請手続を通じて取引内容を把握する機会を有し
  ない。このため、経理担当者は、売上計上等の経理処理の作業に際しては、必ずし
  も取引基本契約書等を参照しておらず、取引内容について契約書等に照らせば適
  切ではないと判断できる不正な経理処理が見過ごされる余地があり、現に 2019 年
  4 月から 6 月に当該商社(丙社)との取引を開始した時点では、カンタツでは、社
  内ルールに即した取引内容の精査や、経理部門に対する取引内容の共有等がなさ
  れておらず、経理部門は、事業本部から、当該商社(丙社)が発行した PO の提供
  を受けたのみで、回収支払条件が付されていることに留意することなく、かかる PO
  の受領と出荷いう事実のみに基づき売上計上を行っていた。
   さらに、上記商社(丙社)との取引については、2019 年 4 月の取引開始時点で
  は、そもそも経営会議における審議、与信審査や取引基本契約の締結にかかる契約
  書申請・押印申請手続等の社内手続がいずれも遵守されていなかった。上記商社
  (丙社)に対する与信審査については、財務本部長の I 氏が D 氏に対して社内ル
  ールに即した手続きを執るように要請したことに基づき、D 氏から指示を受けた E
  氏は、事後的に当初の取引開始時点である 2019 年 4 月 1 日付けの取引与信申請書
  を作成し、これを A 氏が承認した(但し、当該与信は、実績の乏しい商社(丙社)
  に対して与信額が多額である点も極めて不適切なものであった)
                              。また、取引基本
  契約書についても、2019 年 11 月に決裁がなされ、営業部門からの押印申請に対し
  て A 氏らが承認したうえで、事後的に当初の取引開始時点である 2019 年 4 月 1 日
  付けで作成された。
(ウ)会計上の問題点
   カンタツは、当該取引の対象製品について出荷があったと見せかけるため、カン
  タツの他の保管倉庫に移動させたうえ、棚卸資産から除外して販売先からの預か
  り品として取り扱いを替えた。かかる保管倉庫への移動や棚卸資産からの除外等

                     26
    の手続だけでは実質的にみて出荷(財貨の移転)とは認められず、そもそも製品納
    入先が定まっていなかったことを考えると、 (実需)
                        実体   を伴った販売とはいえず、
    売上を計上することは許されないが、カンタツはこのことを認識して不正に売上
    を計上した。
(エ)上記売上の取消し
     後記エのとおり、2019 年 4 月から 6 月に計上されていた当該商社(丙社)に対
    する販売した製品については、別の商社(乙社)に対する 2019 年 3 月販売分とあ
    わせてカンタツから別の商社(丁社)に売却することになり、その前提として 2019
    年 7 月には当該商社(丙社)に対する売上はすべて取り消された。


エ   カンタツから商社(丁社)に対する販売による不正な売上計上
(ア)2019 年 7 月における商社(丁社)への販売の経緯
     カンタツでは、2019 年 7 月に銀行の借入債務(2,500 百万円)の弁済があったほ
    か、賞与・給与等の資金需要があり、2019 年 7 月中に資金ショートに陥る恐れが
    あった。
     財務本部は D 氏に対して、当該商社(丙社) に対して計上された売掛金につい
    て、直ちに回収するよう求めたが、カンタツと当該商社(丙社)との取引には、上
    記の通り回収支払条件が付されており、製品納入先に対する転売の目途がたたな
    い中で、当該商社(丙社)には、その当時カンタツが必要とした多額の資金を直ち
    に融通する資力がなかった。このため D 氏は、当該商社(丙社)とは別の商社に商
    品を販売する等して、代金を即時に回収する必要性に迫られた。
     D 氏は、A 氏と協議して別の商社への転売を模索し、A 氏がシャープの在籍時に
    取引を通じて面識のあった商社(丁社)の紹介を受け、当該商社(丁社)に対して
    製品の買い取りを依頼した。なお、当該商社(丁社)に対する製品の販売において
    は、事後、製品納入先と交渉して転売することを想定していた。
     当該商社(丁社)と取引を行うことは、カンタツにとっては、他の商社(乙社、
    丙社)では支払いを受けることができていなかった製品の販売代金について即時
    に支払いを受けることができ、2019 年 7 月当時の資金繰りの苦境を乗り越えるこ
    とできること等の利点が存在した。他方、当該商社(丁社)にとっては、カンタツ
    の製品の販売取引に介在できることが利点と認識されていたものと推測される。
(イ)合意書の締結並びに製品の引渡し及び代金支払
     以上の事情を背景に、2019 年 7 月、カンタツは、早期の決済を依頼することで
    資金繰りへの協力を得るべく、商社(丁社)との間で、以下の合意書を締結した。
     ①2019 年 7 月 3 日付けで「6Pレンズ売買に関する合意書」
      ・カンタツから当該商社(丁社)に販売するもの
      ・対象製品は、前記イの商社(乙社)への 2019 年 3 月販売分(なお、当該販
       売分にかかる取引は、本取引の前提として合意解除された)

                       27
  ②同年 7 月 29 日付けで「6Pレンズ(3型式)売買に関する合意書」
   ・カンタツから当該商社(丁社)に販売するもの
   ・対象製品は、前記ウの商社(丙社)に対する 4 月から 6 月販売分(なお、当
     該取引は本項の取引の前提として解除され、売上が取り消されている)及び
     B 法人所在の製品
  ③同年 7 月 29 日付けで「M6・T5レンズ売買に関する合意書」
   ・カンタツが製造した製品(契約書上の記載であり、実際は B 法人が製造した
     製品)について、別の商社(壬社)を売主として当該商社(丁社)に販売す
     るもの
   ・対象製品は、前記アの 2 月販売分であり、別の商社(乙社)から上記商社
     (壬社)に転売されたもの
  上記①及び②については 2019 年 7 月に当該商社(丁社)に引渡しがなされて売
 上として計上され、同月、当該商社(丁社)から代金として合計 2,456 百万円が支
 払われた。但し、①の全部及び②のうち B 法人所在製品は、実際にはカンタツの香
 港倉庫に送付され、当該商社(丁社)からの預かり品として保管された。また、②
 のうち商社(丙社)に対する 4 月から 6 月販売分については製品の移動はなされ
 ず、2020 年 7 月までカンタツの相模原倉庫等にて当該商社(丁社)からの預かり
 品として保管とされた後、上記カンタツの香港倉庫に送付され、引き続き当該商社
 (丁社)からの預かり品として保管とされた)。
  また、上記③については、2019 年 8 月に商社(乙社)から売主(壬社)を経由
 して商社(丁社)に引き渡され、これに対して、同月、商社(丁社)から 1,110,000
 ドル(116 百万円)が売主(壬社)に支払われ、同時期に B 法人の 2 月販売分の代
 金 6,400 千元(102 百万円)が支払われた。
(ウ)会計上の問題点
  ところで、上記商社(丁社)との合意の時点あるいは引渡しの時点においては、
 具体的な製品納入先が定まっておらず、引渡しについてもカンタツが保管するこ
 ととなっていて、取引の実体(実需)が未確定な状況であった。
  また、前記(イ)①ないし③の合意書においては、カンタツより販売した製品に
 つき一定期間内に当該商社(丁社)からの更なる売却が実現しない場合には、カン
 タツが代金を返金した上で当該販売製品を引き取る旨の付帯条件(以下「返品特約」
 という。)が合意されていた。すなわち、前記(イ)①ないし③の合意書において
 は、いずれも、
       「3ケ月以上にわたり再販先への製品の納入がない場合」にはカン
 タツが販売製品を引き取る旨が記載されており、また、再販売期間として、合意書
 ①においては 2022 年 9 月 30 日までに、合意書②においては 2020 年 12 月 31 日ま
 でに、合意書③においては 2020 年 9 月 30 日までに、再販先が全製品を購入しな
 かった場合には、それぞれカンタツが当該販売製品を引き取る旨が記載されてい
 る。カンタツは、社内での検討において、返品特約が付された状態での売上計上に

                       28
    ついて問題点があることを認識しており、その修正を交渉した形跡も窺われるが、
    結果として、上記内容で各合意書が締結されるに至った。
     カンタツと当該商社(丁社)との間の前記(イ)①ないし③の合意書には、前記
    内容の返品特約が付されているところ、会計上、返品特約が付されている物品の販
    売については、原則として売上を計上することは許されない。
     加えて、具体的な製品納入先への商流が確立していない段階であって、かつ、上
    記のとおり製品についてもカンタツの預かり品としていることから、 (実需)
                                   実体
    を伴わない取引であって、製品納入先への販売がなされない場合、売上の計上が許
    されないことは十分に認識していたと解される。よって、販売製品の転売先(再販
    先)も未確定であった 2019 年 7 月時点において、売上(2,456 百万円)を計上し
    たことは不正な会計処理であった。
(エ)A 法人又は B 法人での買戻し
     なお、当該商社(丁社)は、上記取引開始の時点で製品納入先への転売時には3
    割程度の利益を得ることができる旨を約束していたと主張しており、後記カ及び
    キに記載のとおり、カンタツが当該商社(丁社)から転売が実現しないことを理由
    に買戻しを求められた際に、カンタツが当該商社(丁社)から受領した代金 2,456
    百万円を大幅に上回る金額で、カンタツが A 法人や B 法人をして、引き取りを応
    諾させざるを得ない理由の一つとなった。


オ   カンタツから商社(丙社)に対する販売による不正な売上計上(2019 年 8 月から
    12 月)
(ア)商社(丙社)に対する販売(2019 年 8 月から 12 月)
     カンタツでは、2018 年 9 月から 12 月の期間に販売・納入した製品につき、2019
    年 7 月に返品を受けることとなったことなどから、当該製品についての在庫が大
    量に累積する事態を生じた。
     D 氏は、A 氏の了解の下、これを商社(丙社)の S 氏に依頼して、2019 年 8 月か
    ら 12 月にかけて 4 度 PO を発行してもらった。具体的な製品納入先への商流は確
    立されておらず、出荷についても、一部の製品は日本の倉庫へ送付したうえで、あ
    るいは、所在を変えずに、当該商社(丙社)に引き渡して預かっているにもかかわ
    らず、出荷がなされたものとして売上を計上した。
                          (15,675 千 USD
                                      (1,645 百万円)
    及び 193 百万円。合計 1,839 百万円)
(イ)手続の不順守
     本取引に関しては、当該商社(丙社)との間の 2019 年 4 月 1 日付け代理店基本
    契約書があるほか、カンタツにおいて新規取引先との間での取引の開始に際して
    必要となる取引与信申請書が同日付けで存在するものの、前記ウ(イ)に記載のと
    おり、取引与信申請書については作成日付と異なり事後的に作成されており、前記
    契約書についても、契約書に記載された上記調印日とは異なり、2019 年 11 月に事

                          29
  後的に調印ないし締結されたものである。
   また、カンタツにおいては、新規取引先との取引の開始に際しては、経営会議の
  承認を得ることが義務付けられているが、当該商社(丙社)との取引の開始につい
  ては経営会議への付議がされておらず、A 氏と D 氏限りでの協議のもと、取引が開
  始されるに至った。
(ウ)会計上の問題点
   前記のとおり、当該取引については、製品納入先の転売先が具体的に決定してお
  らず、当該取引の対象製品について出荷があったと見せかけるため、カンタツの他
  の保管倉庫に移動させたり、棚卸資産から除外して販売先から預かっている製品
  に切り替えたりしている。かかる保管倉庫への移動や棚卸資産からの除外等の手
  続だけでは実質的にみて販売先への出荷(財貨の移転)とは認められず、そもそも
  製品納入先が定まっていなかったことを考えると実体(実需)を伴った販売とはい
  えず、売上を計上することは許されないが、カンタツは、そのことを認識して不正
  に売上を計上した。
   なお、当該商社(丙社)への取引条件については、主として D 氏と S 氏の間での
  協議を経て決定されたが、その際、当該製品につき当該商社(丙社)が他の販売先
  に対して転売して、転売先での検収を了さない限り、カンタツとして販売代金の支
  払を受けることができないことが合意されており(回収支払条件)、対価支払の条
  件成就の見通しがたっていないため、この点でも会計上売上の計上は許されない。
(エ)B 法人での買戻しによる代金の一部支払
   本取引に際して、D 氏は、当該商社(丙社)との契約当初、製品納入先への転売
  を意図していたが、現実化には至らなかった。
   そのため、カンタツにおいて、当該商社(丙社)に対する売掛金の回収が問題と
  なり、 氏は回収方法を模索していたところ、 氏が紹介した企業と交渉した結果、
     D                 S
  当該企業が指定した商社(戊社)が、一定期間内に当該商社(戊社)からの転売が
  実現しない場合には B 法人において買戻しを行うことを条件に、上記商社(丙社)
  に売却した製品の一部を買い取り、代金を支払う旨約した。かかる合意に基づき上
  記商社(丙社)からの転売が実現し、2020 年 3 月頃、上記商社(丙社)からカン
  タツに対し、売掛金の一部として 1,057 千 USD
                            (111 百万円)が支払われた。なお、
  製品は日本の相模原倉庫から上海に送付され、B 法人が引き取り、戊社からの預か
  り品として保管することとなった。
   但し、上記商社(丙社)から指定商社(戊社)への売却に際しては、前記のとお
  り、カンタツとして、一定期間内に指定商社(戊社)からの転売が実現しない場合
  には B 法人において買戻しを行うことを指定商社(戊社)との間で合意していたた
  め、かかる合意に基づき、B 法人における買戻しを強いられる結果となった(後記
  ク)。



                     30
カ   商社(丁社)が購入した製品の A 法人による買戻し(2020 年 2 月)
(ア)前記エに記載のとおり 2019 年 7 月に商社(丁社)に売却した製品については、
    その後も製品納入先に対する転売が実現しなかったため、
                             当該商社(丁社)からは、
    返品特約の存在を根拠として、2019 年 11 月頃以降、カンタツにおける買戻しを求
    められるに至った。なお、当該商社(丁社)への製品の売却に際しては、当初、最
    終的には製品納入先を転売先とすることが想定されていたが、その転売は実現す
    るには至らなかった。
(イ)商社(丁社)からの買戻し請求に接し、少なくとも A 氏や E 氏においては、2019
    年 7 月に売上を計上していることとの関係で、カンタツで買戻しに応じた場合に
    は、一種の循環取引であるとの指摘を受け得るとの問題意識を有していたことが
    窺われる。
     しかしながら、当該商社(丁社)との契約上、買戻しが不可避である一方で、当
    該商社(丁社)から他の取引(後記ケ)についての支払を受けてカンタツの資金繰
    りを維持する必要があった。このため、E 氏は、A 氏とともに、A 法人の O 氏に対
    して、前記販売製品の一部について、カンタツで買戻しを行う代わりに、カメラモ
    ジュール化のための製品として、A 法人において買戻しを行うことを指示し、O 氏
    はやむを得ずかかる指示に従った。かかる指示は、循環取引であるとの指摘を受け
    ることを回避するための隠蔽を目的としたものであったと推認できる。
(ウ)以上の経緯より、2019 年 7 月の商社(丁社)への販売製品の一部については、
    2020 年 2 月、A 氏及び E 氏からの指示を受けた A 法人において、丁社に対し PO が
    発行され、同年 3 月、A 法人へ引渡しがなされ、実際に買掛債務が計上された。か
    かる PO に関する A 法人からの売買代金(買掛債務)
                               の支払は未履行の状態にある。
     なお、買掛債務が計上されているものの、当初の合意に基づいて返品を受けた場
    合に生じる金銭返還債務との間には大きな差異があることから、取引の有効性に
    ついては疑義があり、現時点におけるカンタツの債務認識とは一致していない。


キ   丁社が購入した製品の B 法人による買戻し(2020 年 7 月)
(ア)前記カに記載の事例と同様、2019 年 7 月に商社(丁社)に売却した製品につい
    ては、その後も製品納入先に対する転売が実現しなかったため、当該商社(丁社)
    からは、返品特約の存在を根拠として、2019 年 11 月頃以降、カンタツにおいて買
    戻しをするよう求められるようになり、2020 年 6 月には当該商社(丁社)の決算
    期を迎えることからその要請が強まった。
(イ)この点、カンタツでは、前記カと同様、当該商社(丁社)から 2019 年 7 月に既
    にレンズ販売に対する売買代金として受領していることとの関係でも、少なくと
    も A 氏や E 氏においては、カンタツで買戻しを行うことは循環取引に該当し得る
    との問題意識を有していた。
     しかしながら、当該商社(丁社)との契約上、買戻しが不可避である一方で、A

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    氏及び E 氏は、当該商社(丁社)から別の商社(庚社・辛社)を経由して当該製品
    を B 法人で引き取った後、当該製品を組み込んだカメラモジュールに加工を施し
    てカンタツが引き取れば、カンタツとしては自らが販売した製品(レンズ)とは別
    の製品(カメラモジュール)を仕入れることとなり、必ずしも循環取引には該当し
    ないとの独自の整理のもと、B 法人をして前記の商社2社(庚社・辛社)から買戻
    しを行わせることとした。
     商社(丁社)との協議の結果、商社(丁社)から別の商社 2 社(庚社・辛社)に
    販売したうえで、当該商社 2 社から B 法人が買い取ることなり、2020 年 7 月に商
    社(丁社)から商社 2 社(庚社・辛社)に販売され、また、2020 年 9 月、B 法人は
    当該商社 2 社(庚社・辛社)に対し PO を発行し、買い取りを合意した。
     もっとも、B 法人においては、かかる PO に関する仕入債務の計上は行われてお
    らず、代金の支払も未だ履行されていない。また、納入先の商社(丁社)に対して
    売却された製品の物流面から考察しても、当該製品についてはその一部が別の商
    社(辛社)の倉庫を経由してカンタツの香港倉庫に移転されたのみであって、その
    他は納入先の商社(丁社)から直接カンタツの香港倉庫に戻し入れされたのみで、
    上記カンタツ独自の整理にあったような加工も行われていない。


ク   B 法人による商社(丙社)からの製品の買戻し(2020 年 9 月)
(ア)上記オに記載の B 法人から商社(丙社)に対する製品の販売については、一定期
    間内に当該商社(丙社)から製品納入先へ転売が実現せず、回収支払条件が成就し
    ないため、長期間にわたって、カンタツが売掛金を回収できない状態に陥った。
(イ)そのため、前記オ(オ)に記載のとおり、カンタツにおいて、当該商社(丙社)
    に対する売掛金の回収が問題となり、 氏において回収方法を模索していたところ、
                     D
    S 氏が紹介した企業と交渉した結果、当該企業が指定した商社(戊社)が、一定期
    間内に当該商社(戊社)からの転売が実現しない場合には B 法人において買戻しを
    行うことを条件に、上記商社(丙社)に売却した製品の一部を買い取り、代金を支
    払う旨約した。
     かかる合意に基づき上記商社(丙社)からの転売が実現し、2020 年 3 月、上記
    商社(丙社)からカンタツに対し、売掛金の一部として 1,057 千 USD
                                        (111 百万円)
    が支払われた。
(ウ)かかる商社(戊社)との間での買戻し条件を含む合意については、当該商社(戊
    社) 法人・A 法人の三者が調印した契約書が存在する。かかる契約条件等は、専
     ・B
    ら D 氏や D 氏が契約交渉を任せていた商社(丙社)の代表者の S 氏が当該商社(戊
    社)との間で合意したと認められるところ、D 氏は、B 法人の P 氏から、カンタツ
    ではなく B 法人が買戻しを行うことにつき、会計監査において正常な取引ではな
    いとの指摘を受けるおそれがあることや取締役会、経営会議、董事会において承認
    が必要であることを指摘されていた。しかしながら、D 氏は、かかる B 法人からの

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    指摘に応えることなく、本契約の内容では取締役会等で承認を得るのは難しいと
    考え、取締役会等の承認が不要な契約と独自に整理するなどしており、D 氏が主導
    的に買戻し合意を押し進めた。
(エ)以上の経緯のもと、前記契約書の存在を背景に、B 法人から商社(戊社)に対し
    て、2020 年 9 月に PO が発行され、同月、実際に代金 9,921 千元(158 百万円)が
    支払われた。


ケ   カンタツにおける先行販売による不適切な売上計上
    カンタツでは、上記エとは別に、2019 年 8 月以降、商社(丁社)への販売を開始
 しているところ、当該取引において、製品納入先からの PO の提出がない段階におい
 て当該商社(丁社)から PO の発行を得た製品についても、売上を計上している。
    すなわち、上記丁社を介する商流については 2019 年 8 月以降取引が開始されてい
 るところ、かかる商流においては、製品納入先から商社(丁社)の PO に基づき、商
 社(丁社)からカンタツに PO が発出され製品販売を行うのが通常であるが、カンタ
 ツは、折からの売上不振や資金繰りの懸念を解消するべく、製品納入先からの商社
 (丁社)に対して PO が発行されていない製品についても商社(丁社)に販売するこ
 とを意図し、同商社との交渉の結果、同商社から PO の発行を得るに至っている。ま
 た、カンタツと当該商社(丁社)の間の売買基本契約書には返品特約は存在せず、そ
 の他カンタツと当該商社(丁社)との間では特段の合意書等の書面は存在しないもの
 の、前記の製品納入先から商社(丁社)への PO が発行されていない製品にかかる取
 引については、カンタツの担当者(E 氏)と商社(丁社)の担当者の間で、最終的に
 製品納入先から PO の発行を得ることができなかった場合にはカンタツとして返品を
 受けることが口頭で合意されていた。
    かかる取引は、前記(2)アの A 法人による先行販売と同様に、引き渡した製品に
 ついて後日返品される可能性が否定できないため、財貨の移転が完了しておらず、原
 則として先行販売の時点で売上計上することはできない。にもかかわらず、カンタツ
 においては、この点が特段意識されることなく、製品納入先からの PO の発行を得る
 に至っていない販売や、上記のとおり口頭での返品特約が存在する販売についても、
 商社(丁社)からの PO の発行とそれに伴うカンタツからの出荷のみをもって、不適
 切に売上が計上された。
    なお、かかる先行販売による取引に関する代金の支払いを受けるために、カンタツ
 は、当該商社(丁社)に別途販売した製品について A 法人での買戻しを求められ、こ
 れに応じざるを得ない状況となったことは、上記カに記載したとおりである。


コ   カンタツにおける先行販売による売上計上の過誤
    前記エと同時期に、カンタツにおいては、事業計画どおりの売上達成や資金繰りの
 必要性から、新たな商流を模索していたところ、D 氏において、新たな製品納入先に

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