6615 UMCエレ 2020-09-11 15:00:00
当社宮崎工場における会計処理の誤謬に関する報告及び再発防止策について [pdf]

                                            2020 年9月 11 日
各    位
                  会 社 名   ユー・エム・シー・エレクトロニクス株式会社
                  代表者名    代表取締役社長       髙    田    昭    人
                                (コード番号:6615 東証第一部)
                  問合せ先    取締役副社長 副社長執行役員 管理本部本部長
                                       仙    波     陽    平
                                      (TEL. 048-724-0001)




         当社宮崎工場における会計処理の誤謬に関する報告及び再発防止策について


    当社は、2020 年4月 23 日付「当社コンプライアンス委員会による調査開始に関するお
知らせ」にて公表しましたとおり、当社宮崎工場における棚卸資産に関する不適切な会計
処理の疑義に関して、外部専門家を含めた当社コンプライアンス委員会による調査を実施
いたしました。
    本件調査では、意図的に不適切な会計処理がなされた事実は確認されませんでしたが、
「従業員に対する教育の不足」
             「関係者間のコミュニケーション欠如」
                              「業務量の増加」を
背景に、「ルール及び業務フローの不備」等を原因とした複数の誤謬が判明しており、よ
り重大な問題を引き起こしかねない状態にあったと認識しております。
    当社は、下記「Ⅳ. 再発防止に向けた改善措置」に記載する対策を確実に実施すること
で、皆様の信頼回復に尽くしてまいります。


                           記


Ⅰ. コンプライアンス委員会 1
1. 不適切な会計処理の発覚と社内調査委員会設置の経緯
    2020 年3月末の当社宮崎工場における棚卸において、多額の棚卸差異が発生したため、
その原因を調査していたところ、同年4月8日、宮崎工場の社員から実態の伴わない棚卸
資産を計上する等、棚卸資産に関する不適切な会計処理の申告がありました。

1
 コンプライアンス委員会:取締役会における適切なコンプライアンス運営、コンプライアンス重視の企
業風土醸成、コンプライアンスが定着する仕組み作りに加え、当社グループを取り巻く経営リスクや法令
の遵守状況をモニタリングする機能を担うことを目的として、2020 年3月 27 日に取締役会直下に当社が
新設した常設の機関。内部通報や各部門から寄せられるコンプライアンス上の問題への対応、役職員によ
る違反行為事案の調査及び再発防止策の策定と実施等に対応。

                            1
    同日以後、当社は、監査法人、当社コンプライアンス委員会と随時情報を共有しつつ、
調査を行いました。調査を進める中で、外部専門家を含めた調査チームによる調査の実施
を検討することとなり、4月 23 日開催の当社臨時取締役会にて、コンプライアンス委員
会を主体とする社内調査委員会による調査開始を決定いたしました。


2. 社内調査委員会
(1) 構成
    当委員会の構成は、コンプライアンス委員会メンバー(委員長:中村薫前社外取締役・
監査等委員会委員長)、外部専門家である足立学氏(弁護士・東京富士法律事務所)、井上
寅喜氏(公認会計士・株式会社アカウンディング・アドバイザリー)その他弁護士4名、
公認会計士3名です。
    当委員会の調査は、調査の客観性・専門性を担保するために、上記の弁護士5名及び公
認会計士4名によって構成される外部専門家チームが主体となって行っております。


(2) 調査の目的・範囲
① 不適切な会計処理の有無等の事実関係の解明
② 本件と類似する事案の存否・内容の調査(以下「類似取引調査」という。
                                  )
③ 連結財務諸表への影響額の確定
④ 原因の究明及び再発防止策の提言


(3) 調査対象期間
    調査対象期間は、2017 年4月1日から 2020 年3月 31 日までといたしました。なお、本
調査対象期間以前であったとしても、調査の過程で本件に関連する事象等が確認された場
合は、本調査の対象といたしました。


3. 判明した事実
    2020 年5月 26 日に当社はコンプライアンス委員会より調査報告書を受領いたしまし
た。調査報告書によると、2019 年3月期及び 2020 年3月期の宮崎工場及び佐賀工場にお
ける会計処理については、意図的な不正ではなく、複数の誤謬があったと認められまし
た。調査の過程で認められた主な誤謬の概要は以下のとおりです。


(1) 棚卸資産の過大計上・二重計上
    2019 年8月の棚卸実施時に、在庫のカウント結果をまとめたエクセルファイルに基づき
SAP2へのアップロードを実施する際、宮崎工場と佐賀工場の担当者間のコミュニケーシ
ョン不全等により、①エクセルファイル中の異なる箇所の在庫数量をアップロードする

2
    SAP: ERP(Enterprise Resource Planning/統合基幹業務システム)パッケージをいう。

                                    2
(これにより過大計上が発生)
             、②同一の在庫を宮崎工場と佐賀工場の両方でアップロー
ドするなどした結果、約 45 百万円分の在庫が、誤って過大または二重に計上されまし
た。


(2) 2019 年8月末の宮崎工場MRP 3対象外倉庫コード 4への在庫計上
    調査の過程で、宮崎工場の社員から 2019 年8月の棚卸時に、実物の存在を確認できて
いなかった在庫約 28 百万円分をMRP対象外倉庫に計上した旨の証言があり、調査の結
果、そのうち①15 百万円分は実在する良品であったこと、②11 百万円分は実在するが資
産性に疑問がある保留品・不良品であり、最終的に約 10 百万円分について資産性が認め
られなかったこと、③2 百万円分は、誤謬により二重計上されたものであったことが判明
いたしました。したがって、当時、宮崎工場MRP対象外倉庫コードに計上された 28 百
万円の在庫のうち、12 百万円分については資産性がなかったものと調査委員会は認定いた
しました。なお、①及び②の詳細については以下のとおりです。


①良品の誤計上
    2019 年8月の棚卸実施時に、正規の製造エリアで保管されている良品について、実在庫
として計上すべきだったにもかかわらず、現場担当者が棚卸カードへの誤入力を行ったこ
とにより、約 15 百万円分の良品が、誤ってMRP対象外倉庫に計上されておりました。


②保留品・不良品の計上
    宮崎工場では、生産が逼迫する中で、良品と判定されなかった製品(保留品・不良品)
が製造現場に点在しておりました。本来、こうした保留品・不良品については、再検査の
上、適時に処理すべきだったにもかかわらず、生産に追われる中で処理が滞っていたこと
から、2019 年8月の棚卸実施時に、約 11 百万円分の保留品・不良品がMRP対象外倉庫
に計上されることとなりました。当該在庫については、2019 年 12 月頃までに約 1 百万円
分が良品と判定され、残り約 10 百万円は廃棄されたものと推定されました。


(3) 無償外注委託先における保管部品の残高差異
    宮崎工場では、外注先に無償で部品を支給し、外部業者に製造を委託する無償外注委託
を行っておりましたが、一部の無償外注委託先(3社分)について、部品がサプライヤー
から当社を介さず直接外注先に納入されているなどの事情によって、外注委託先合計の在
庫数を把握していただけで個別の在庫数を把握しておりませんでした。2020 年3月末の棚

3
 MRP:
    「資材所要量計画」のことで、⽣産計画を基にして原材料(部品等)の必要数量の計画を⽴てるこ
と。
4
 MRP 対象外倉庫:MRP の対象外とする必要がある原材料(部品等)を⼀時的に保管するための SAP 上の
倉庫コード。MRP 対象外倉庫コードに計上することによって、対象部品等は SAP 上の引当対象外となり、
追加の発注等が可能となる。

                          3
    卸において、このことが判明したため、各外注委託先に対して預り在庫の残高報告を依頼
    したところ、外注委託先の在庫数とSAP上の在庫数との間に約 15 百万円の差異が発生
    していることが判明いたしました。


    (4) その他
        上記(1)~(3)の他、2020 年3月期第3四半期において、佐賀工場のMRP対象外倉庫コ
    ードへの誤った在庫計上等により、約 11 百万円の棚卸資産が過大に計上されておりまし
    た。


    Ⅱ. 本件不適切な会計処理の当社連結財務諸表への影響
        調査の結果、本件の不適切な会計処理(誤謬)による当社連結財務諸表に与える影響は
    以下のとおりです。なお、これら誤謬については、2020 年3月期第4四半期決算において
    一括して会計処理いたしました。
                                                                 (単位:百万円)

                                    2020 年 3 月期       2020 年 3 月期       2020 年 3 月期
          誤謬の内容     2019 年3月期
                                     第 1 四半期           第 2 四半期           第 3 四半期

    宮崎工場における棚卸資産
①                               0                 0              45                45
    の過大・二重計上

    宮崎工場におけるMRP対

②   象外倉庫に計上された不良                0                 0              12                   7
    品等

    無償支給外注先における棚
③                               7                 8              11                14
    卸減耗

    その他調査の過程で発見さ

④   れた棚卸資産に関連した誤                0                 0                 0              11
    謬

        合計                      7                 8              68                77


    連結税引前損失             △1,897           △1,698           △3,029            △4,932
    連結税引前損失に対する割
                        △0.4%            △0.5%            △2.2%             △1.6%
    合

    連結純損失               △2,213           △1,414           △3,166            △5,189
    連結純損失に対する割合         △0.3%            △0.6%            △2.1%             △1.5%




                                     4
    また、調査の結果判明した、宮崎工場及び佐賀工場での棚卸資産の会計処理に関する誤
謬のあった期間の損益に与える影響額は軽微であることから、当社会計監査人とも協議の
上、当社連結財務諸表に重大な影響を及ぼさないと判断し、過年度決算への遡及修正は行
いませんでした。


Ⅲ. 原因に関する分析
    宮崎工場での実地棚卸と仕損処理に関するルール及び業務フローに問題があったこと
が、今回の調査の結果明らかになった複数の誤謬の直接の原因となっておりました。そし
て、宮崎工場従業員に対する、定められたルール・業務フローに関する教育が不十分であ
り、正確な数量・数値を維持し、正確な数字を報告する意識が低かったことが、ルール及
び業務フローの問題が発生した原因になっていると当社は考えております。
    また、2020 年4月の事業組織変更以前 5においては、中国拠点にあった旧製造本部が製
造方針を定め、日本拠点及び海外拠点(ベトナム、タイ、メキシコ)に対して製造方針を
伝達し、連携を取っていました。そして日本拠点内においては、旧製造本部に属する本社
工場と本社(日本拠点 管理部)が、上尾工場・宮崎工場・佐賀工場に対して製造方針の
横展開を図る役割を持っていましたが、地理的な隔たりもあり、宮崎工場とのコミュニケ
ーション・情報交換の不足により、宮崎工場・佐賀工場において本社工場と同レベルのル
ール及び業務フローが定着しなかったと考えております。


1. 教育の不徹底
    本社(日本拠点 管理部)は国内全ての従業員に対して業務上のルールや手順について
教育し、その重要性を理解させるべき立場にありましたが、宮崎工場においては、製造に
ついての教育や研修が優先され、棚卸の方法やMRP対象外倉庫の使い方、仕損処理、S
APについての教育が不十分であり、その結果ルールや手順の理解が及んでいませんでし
た。


(1) 実地棚卸
    宮崎工場の生産管理グループの責任者は実地棚卸の事前説明会を開催していましたが、
重要な注意事項(在庫カウント時に使用するバーコードリーダーの動作確認、作業ごとの
注意事項等)の事前準備、棚卸スケジュール(最終受入・最終出荷・最終生産計画)の部
内整合・各グループ長及び実作業者への説明を行っていませんでした


(2) 仕損処理


5
 2020 年4月に、三本部制(営業本部、製造本部、管理本部)を廃止し、拠点機能(縦軸)とコーポレー
ト機能(横軸)の二軸で管理する体制に移行。製造本部は解体し、各拠点を社長の直接の指揮系統に属す
る組織とし、コーポレート機能が、各拠点の生産管理・生産技術・品質管理等を統括・指揮。

                        5
    宮崎工場従業員に対して、明確な仕損処理に関する説明・教育が行われておらず、仕損
処理の運用ルールが実作業者まで周知されていなかったため、仕損処理の重要性が生産業
務に比べて軽視されていました。


(3) SAP
    当社におけるSAP導入(2018 年4月)後、本社(日本拠点 管理部)による宮崎工場S
AP担当者に対する研修が2日間実施され、以降は不明点やトラブルが発生した場合に、
管理部へ問い合わせるという運用となっておりましたが、宮崎工場においてはSAPの運
用を担当する人材にSAPに対する重要性の認識が根付いておらず、SAPの運用につい
て理解も進みませんでした。また本社(日本拠点 管理部)からの支援の働きかけもなか
ったため、1年間にわたりSAPが完全には機能していませんでした。


2. 本社と宮崎工場のコミュニケーション・情報交換の不足
    本社(日本拠点 管理部)と宮崎工場の人員は、どちらも基本的には現地採用であり、
地域をまたいだ人事異動も一部を除いて無かったため、コミュニケーション・情報交換や
人事交流が活発なものではありませんでした。また、各工場単位で業務や課題への対処が
行われていたことにより、本社(日本拠点 管理部)は、宮崎工場の実地棚卸、仕損処理
の不備があることを認識しておりませんでした。


3. ルール及び業務フローの不備
(1) 実地棚卸
① 宮崎工場・佐賀工場での報告フォーマット不統一
    佐賀工場の出荷前製品用倉庫(VMI倉庫 6)内の在庫については、宮崎工場で資産計
上するため、佐賀工場から宮崎工場へ在庫カウント結果をまとめたエクセルファイルが送
付され、宮崎工場の生産管理グループが、SAPにアップロードするという手順がとられ
ています。この際、佐賀工場から送られる報告フォーマットが、宮崎工場で用いられるも
のとは異なるものであったため、宮崎工場側の担当者が入力すべき数値を誤認し、誤った
数値をSAPにアップロードした結果、在庫の過大計上となりました。
    佐賀工場においては、かんばん方式 7に従い、在庫を数量ではなく箱数で管理していた
ため、宮崎工場と異なる報告フォーマットを用いていました。


② 手入力作業による事務処理ミス(棚卸票作成時のミス)


6
 VMI倉庫:工場から一旦別倉庫に保管する、出荷前製品用倉庫。
7
 かんばん方式:商品名・品番・保管場所などを記載した「かんばん」と呼ばれる商品管理カードを用
い、「かんばん」の指示とおりに生産することで、
                      「必要なものを、必要なときに、必要な分だけ」製造す
る生産手法。

                         6
    宮崎工場においては、棚卸の際に一部、現場責任者が対象製品の顧客・保管場所コード
を手入力した上で、現場でカウント結果(品目番号・品目名・数量)を手入力する Excel
形式 8を採っていました。宮崎工場の現場責任者が対象商品の顧客・保管場所コードの入
力を誤った Excel 形式の実地棚卸票で報告し、生産管理担当者は顧客コードの誤りに気づ
き訂正しましたが、保管場所コードまでは訂正しなかったため、本来は良品であるものを
不良倉庫(MRP対象外倉庫)として計上いたしました。


③ 業務フローのカバー領域の漏れ(無償外注委託先)
    宮崎工場においては、外注先に無償で部品を支給し、製造を委託する無償外注委託を行
っていました。棚卸においては、当社の資産を漏れなく棚卸対象とするために、無償外注
委託先ごとの在庫の把握が必要であるところ、無償外注委託先のうち3社については、サ
プライヤーから当社を介さず直接外注先に部品が納入されていたため、それぞれの在庫数
を把握していませんでした。実地棚卸指示書で外注先の棚卸を明記するなどの方法で、支
給部品に対する棚卸の運用ルールが規定されていなかったため、2020 年3月まで、当社か
ら外注先に対して残高報告を依頼しておらず、棚卸の際にはSAP上の3社合計の在庫数
(理論値)で計上していました。


④ 業務フロー遵守の不徹底(MRP対象外倉庫の目的外使用)
    SAPが導入された 2018 年4月以降、SAP上でMRPの対象外(当初の生産計画
外)とする必要のある部品等を、(安全在庫 9等の事情がある場合に限って)一時的に保管
するための倉庫コード(MRP対象外倉庫)がありました。宮崎工場においてはこの「M
RP対象外倉庫」を、保留品(良品と判定されなかった製品)・不良品が残っている状態
でも生産が継続できるようにする目的で使用し、計上していました。本来は、こうした保
留品・不良品については、再検査の上、適時に処理すべきものでした。
    2019 年6月に、
             「MRP対象外倉庫」の運用ルールに沿ったツールを本社(日本拠点 管
理部)が作成し、同ツールを宮崎工場にも展開していましたが、ツールの使用方法が宮崎
工場で周知されておらず、使用されていませんでした。


8
  宮崎工場で使用された実地棚卸票の種類
①Excel 形式:バーコードを用いずに、品番コードを手入力して棚卸票を作成する方法。宮崎工場では、
  倉庫でのネット環境が悪く、データベースにアクセスする必要のあるバーコードリーダーの使い勝手が
  良くなかったため、Excel 形式が多用されていた。
②棚カード:バーコードリーダーでネットにアクセスして、棚に張り付けたバーコードを読み取る方法で
  発行する棚卸票。1つの棚(保管場所)に1つの品番を保管している場合に用いる点が Access 形式と
  異なる。
③Access 形式:バーコードリーダーでネットにアクセスして、棚に張り付けたバーコードを読み取る方
  法で発行する棚卸票。1つの棚(保管場所)に複数の品番を管理している場合に用いる点が棚カードと
  異なる。
9
  安全在庫:不確定な要素によって欠品が生じないために、通常必要な在庫(適正在庫)に加えて最低限
保持しておく在庫のこと。

                         7
 また、宮崎工場においてはMRP対象外倉庫の移動は生産管理担当者の権限ですること
ができ、長期間継続していても異常を検知できる仕組みがありませんでした。


(2) 仕損処理
① 仕損報告の滞留・未発行
 宮崎工場においては、仕損品が発生した場合、以下の流れで、遅滞なく仕損品を処理す
ることを定めていました。
 1. 製造部門(技術製造グループ及び自動機グループ)の担当者が「仕損報告/補充生
   産連絡書(仕損報告)」を作成。
 2. 製造部門の各グループ長が「仕損報告」を承認後、工場長の承認を得る。
 3. 「仕損報告」が生産管理担当者に送付され、生産管理グループ長の確認後、生産管
   理担当者がSAP上の処理を行う。
 4. 生産管理担当者によるSAPへの入力処理の段階で、(場合によっては修理可能か否
   かを品質管理部が検討し)仕損品自体を廃棄処分する。
 しかしながら、宮崎工場の製造部門は、上記「仕損報告」の発行を適時に行っておりま
せんでした。そのことを把握していた工場長・生産管理担当者が製造部門に対して「仕損
報告」の提出を指示していましたが、仕損報告の担当者に仕損処理の業務が集中する等に
より改善しませんでした。
 仕損処理報告書の提出が行われないと、部材の欠品が発生するため、生産管理グループ
が製造部門に確認することなくデータのみをMRP対象外倉庫へ移動させていました。ま
た、発生した仕損品の保管場所が定まっておらず、現況から仕損品の処理状況が判断でき
なかったため、処理前に廃棄されたものもあり、SAP上のデータ反映タイミングがずれ
ることがありました。


4. 適切でないSAPの運用
 前述の「1. 教育の不徹底 (3) SAP」の記載のとおり、作業者のSAPに対する
重要性の認識が欠如していたことにより、2018 年4月の当社におけるSAP導入後、宮崎
工場においては 2019 年の前半まで、本来、製造時に生産実績をSAPに計上するとこ
ろ、出荷時にSAPに計上していたため、SAP上の製品数と実際の生産実績が合致して
いませんでした。VMI倉庫については、棚卸時にカウントした実数を確認した上で、生
産管理担当者が生産実績の登録を行っていました。
 2019 年1月~4月にSAPの知識を有する本社(日本拠点 管理部)部長によるSAP
の運用指導(実績入力の工程の責任者が、作業者を監督して生産時の入力運用を維持する
ことで、適時の仕損処理、正確な実地棚卸と組み合わせてSAPの適正な運用、データと
実際の一致を担保する)の結果、生産実績入力運用は改善しました。しかしながら、その
後、業務負荷増加により製造を優先したために、最終工程グループでは、出荷時に出荷数


                      8
に合わせてSAPに計上する運用に戻っていました(自動機グループにおいては改善後の
運用方法が維持されていました)。
 佐賀工場では、2019 年8月まで出荷・売上処理を行うのに必要な分のみ後追いで実績を
登録していましたが、2019 年8月~10 月に本社(日本拠点 管理部)部長が実績登録を行
う製造部門に対して指導を行った結果、運用状況が改善しました。


5. コミュニケーションの問題
 工場長、生産管理担当者、宮崎工場のグループ間では、実地棚卸に関してコミュニケー
ションが不十分な状態が継続していました。
 具体的には、生産管理担当者による棚卸の理論値と実績値の差異についての報告と、そ
れに対する宮崎工場工場長と指示のやり取りに関して、工場長は信ぴょう性に欠ける説明
に対しては再調査を指示していましたが、時に高圧的ともとれる発言をすることや、納得
できない説明に対しては厳しく詰める傾向にあり、また、生産管理担当者も具体的な根拠
をもって主張・反論しない等、業務上必要なコミュニケーションに支障が生じていまし
た。
 また、製造が逼迫する中で、棚卸時においては棚卸を完了させなければ製造が止まって
しまうという時間的制約があったため、関係者との密なコミュニケーションが省かれ、各
担当者内で業務が処理されており、積極的な協力体制が取られていませんでした。具体的
には棚卸現場担当者による顧客コード・保管場所コードの入力誤りがあった際、データア
ップロード作業の過程で顧客コードの入力誤りに気付いた生産管理担当者は、棚卸現場担
当者に直接確認を取らずに修正しておりました。仮に生産管理担当者が棚卸現場担当者に
入力誤りについて連絡をしていたら、保管場所コードの誤りについてもあわせて発見でき
た可能性がありました。


6. 過大な業務負荷
(1) 2019 年8月末棚卸時点での負荷
 宮崎工場において売上の8割を占める顧客の売上が 2017 年度以降に拡大し、製造ライ
ンの立ち上げ期にかかる不良品増加に加え、製造工程の複雑さと部品点数の多さから、同
顧客を担当していた製造部門、生産管理グループの業務負荷が増大していました。その結
果、生産管理担当者は、棚卸時には、棚卸を完了させなければ、生産が止まってしまうと
いうプレッシャーのもと業務に従事していました。
 この製造現場や生産管理の業務負荷に対して、宮崎工場では、業務をサポートする等の
対策を講じていたものの、補充人員の退職等により機能せず、対応出来ていませんでし
た。




                        9
 また、担当顧客製品の部品点数が多いうえに部品のグレード分けが細かいなどの特異性
のため生産管理担当者の業務が属人化しており、負荷が高まったときに他担当者が容易に
フォローできるような業務平準化に対応出来ていませんでした。


Ⅳ. 再発防止に向けた改善措置
1. 教育の実施
(1)棚卸業務
 2019 年7月に発覚した当社中国連結子会社での不適切会計処理問題を契機に、本社経理
部は、2020 年3月期決算作業に際して宮崎工場の実地棚卸不備のリスクを認識し、2020
年3月末の棚卸を本社経理部の主導で実施しています。具体的には、宮崎工場に対して棚
卸対象の網羅性(在庫保管場所の責任分担、抜け漏れがないことの確認)を含む棚卸方法改
善の指示を出しています(そして 2020 年3月に実施した本社工場と同レベルの立合監査
の結果、宮崎工場において多額の棚卸差異が発生し、調査開始の発端となっています)。
 また、宮崎工場は、2020 年7月の予行練習時に、カウント方法の映像資料を作成いたし
ました。作成した映像資料を用いて、同年7月 17 日(対象者:基板搭載品の棚卸のリー
ダー)及び8月 28 日(対象者:リール品、トレイ品、生板の棚卸のリーダー)にカウン
ト方法の研修を実施しており、最終的には、同年9月末の実地棚卸前の全体教育時に、カ
ウント作業者に対して周知する予定です。


(2)従業員のコンプライアンス意識向上の取り組み
 規程に則った業務の実施、業務における関係者間のコミュニケーションの重要さに対す
る認識を全従業員に定着させるために、
                 「コンプライアンス通信」上で、宮崎工場で判明
した棚卸資産に関する不適切な会計処理を取り上げ、自らの業務の在り方を振り返るチェ
ックリストを掲載しています(2020 年8月 21 日)
                           。本件を風化させないよう、今後も「コ
ンプライアンス通信」で定期的に発信して行く予定です。


2. 本社と宮崎工場のコミュニケーション・情報交換
 下記「3. 宮崎工場の業務フローの見直し」に記載する、実地棚卸及び仕損処理に関す
る業務フローの改善は、本社工場生産管理グループが宮崎工場と連携して行っています。
 また、スキルの横展開を図るため、宮崎工場工場長の配下に、当社連結子会社であるU
MC・Hエレクトロニクス(株)の生産管理担当者が宮崎工場生産管理グループ長として
赴任しています。


3. 宮崎工場の業務フローの見直し
(1)実地棚卸



                      10
 2019 年7月に発覚した当社中国連結子会社での不適切会計処理問題を契機に、本社経理
部と本社工場生産管理グループが宮崎工場の業務フローの見直しを行っています。2020 年
3月の棚卸の際には、棚卸の精度を高めるために、以下の棚卸ルール・手順の見直しを実
施しております。
・ 棚卸し決算チェックリストの整備:担当割、外部倉庫、仕損、特殊在庫、外部保管区
 分を追加
・ 外部委託在庫確認の進捗管理表作成:外部倉庫を実地棚卸対象として明確化
・ 特殊在庫(外部保管または外部委託倉庫)
                    ・廃棄品の事前確認:実地棚卸時の在庫保管
 場所と在庫保管場所エリアを明確化
・ 宮崎工場・佐賀工場の棚卸で使用するファイルのフォーマット統一:誤認の原因を解
 消
 また、見直しを行ったルール・手順での棚卸を定着させるために、棚卸作業一覧表をも
とに、棚卸実務担当者レベルまで棚卸に対する教育を行い、2020 年7月 17 日に、棚卸対
象品目(若しくは、顧客)を限定し、対策効果確認を兼ね実地棚卸予行練習を実施いたし
ました。この予行演習では、本社工場生産管理グループから展開された「棚カード」
                                     (宮
崎工場では従来「Excel 形式」
                )を使用し、棚卸を実施しています。この結果、「棚カー
ド」の追加手順が不明であることを検知し、9月末までに本社工場生産管理グループから
追加手順について指示がある予定です。また、バーコードリーダーの通信レスポンスが悪
いことを検知し、全体通信速度自体には問題ないことを確認したため、複数の Access フ
ァイルを準備し、集計をプログラム化する対策を9月末までに実施する予定です。
 2020 年7月 21 日には、上記練習の評価を宮崎・本社工場の生産管理グループが共同し
て行い、棚卸作業一覧表の注記事項を更新いたしました。
 今後の棚卸時の負荷と必要人員については、製造部門と営業部門が確認し、既存人員で
対応できない見通しとなった場合は、宮崎工場工場長が人員の手配方法を 2020 年9月下
旬までに検討し、棚卸に対応する予定です。
 見直した業務フローの定着状況については、CSR推進部がコンプライアンス委員会に
対して、宮崎工場の棚卸報告資料を共有し、棚卸手順一覧表記載の注意事項及び、結果報
告が定められたフォーマットに統一されているかをレビューし、2020 年 10 月に開催する
コンプライアンス委員会で報告する予定です。2021 年3月末の実地棚卸以降は、内部監査
計画に基づき運用状況を確認する予定です。


① 棚卸票作成の見直し
 手入力作業による棚卸票自体の誤りを防ぐために、Excel 形式での棚卸票作成ができる
条件を以下の場合に限定しています。
 ・外注委託先からサプライヤーへの預け在庫など、バーコードリーダーによる棚卸票自
  動出力が使えないときのみ使用する。


                      11
 ・Excel 形式の棚卸表を発行できるのは生産管理グループの担当者のみとし、エリア責
  任者、棚卸責任者と重複等がないか確認した上で発行する。
 ・Excel 棚卸表は連番で発行し、棚卸終了後に連番通りに漏れ・紛失が無いかを確認し
  た後、指定フォルダにて保管する。


 9月中旬までを目途に宮崎工場の生産管理グループが、Excel 形式となっている一部の
品目を Access 形式に移行するために必要な環境の整備を進めています。Access 形式の場
合、バーコードを読み取ることで棚卸票が自動出力されるため、誤った棚卸票は作成され
なくなります。Access 形式での運用のために宮崎工場のインターネット環境がよくない場
所(2019 年8月末時点で Excel 形式にて対応していた場所)での運用確認を、2020 年7
月 17 日に実施いたしました。


② 無償外注委託先の棚卸実施
 実地棚卸の指示を行う本社経理部が、2020 年4月時点で、実地棚卸指示書のフォーマッ
ト上で、実地棚卸指示書から漏れていた無償外注委託先3社を明記する変更を実施してい
ます。2020 年4月以降は、3社個別の検収連絡を受け、それぞれ計上するオペレーション
に変更しています。


③ MRP対象外倉庫の使用方法の明確化
 2020 年6月、宮崎工場において、「MRP対象外倉庫」の使用用途を安全在庫と保留品
に限定して、製品・半製品不具合システム処理手順を定めています。同処理手順では、以
下の流れで製造ライン担当者が倉庫移動申請連絡書を起案し、工場長の承認を要する運用
に変更しています。
 1. 保留品等が生じた時に、担当者が現品を不良品棚へ保管し、倉庫移動申請連絡書を
   発行
 2. グループ長と工場長が承認
 3. 生産管理担当者がSAPで移動処理し、生産管理グループ長が処理確認
 4. 同申請連絡書のコピーを現品に貼り付け
 5. 保留品対処決定後、同申請連絡書の戻し欄を使い、1.~3.と同様のルートで承認し
   た後、廃棄等の処理


 あわせて、MRP対象外倉庫に滞在したまま放置・処理が滞留することを防ぐ目的で、
倉庫移動をシステムに登録する際に、保留期限の設定を要する仕組みとし、期限を超過す
るとメールアラートが配信されるようにSAPと連携するツールを実装しています。




                        12
     そして、月一回の頻度で、日本事業統括 管理部 10がMRP対象外倉庫の推移を確認する
こととしています。
     これらの「MRP対象外倉庫」の保留品の運用方法について、2020 年6月9日~16 日
にかけて宮崎工場・佐賀工場従業員 57 名に対する研修を実施しています。


(2)仕損処理
     仕損品の滞留状況の判断を容易にするために、2020 年5月に、仕損品の置き場を現場中
央付近に置くように管理方法を変更し、処理状況が可視化出来るように対策いたしまし
た。これにより、仕損処理が滞留しているかどうかを目視で判別可能な状態となり、シス
テム未処理に気づかず廃棄されることを防ぐことを可能にいたしました。
     2020 年6月には、宮崎工場長が、仕損処理のフローを製品・半製品不具合システム処理
手順に定め、宮崎工場従業員の資産管理の重要性に対する意識を高めるために、6月 10
日から6月 16 日にかけて、各グループ長からグループメンバーに仕損処理のフロー及
び、仕損処理が会社の資産管理に直結していることについて研修を実施いたしました。


4. SAPの運用
     宮崎工場及び佐賀工場では、SAP上の製品数と実際の生産実績が整合しない状況を改
善するため、2020 年3月以降、生産時のSAP計上を徹底しています。


5. コミュニケーションの円滑化
     宮崎工場におけるグループ間コミュニケーションを図るために下記の会議を新設いたし
ました。
【月次】
     生産物量連絡会議(生産管理グループ、営業)
                         :営業からの要求で物量変動がある状態
     から、意見交換や情報交換によって変動削減、平準化が可能な状態へ変更。
     不良倉庫、安全在庫検証(生産管理グループ、技術製造グループ、自動機グループ):
     自動機グループに、使用する部品が占める割合に基づいて安全在庫設定を任せていた状
     態から、生産管理グループ内でも部品リードタイム情報を集約し、(部品の占める割合
     が低かったとしても)1ヵ月以上の長期部品については不良在庫を設定するように自動
     機グループと協議する状態に変更。
     棚卸対策会議(本社、宮崎、佐賀の各工場):棚卸に関するスケジュール、帳票見直
     し、事前準備等について協議。
【週次】



10
 日本事業統括 管理部:2020 年4月の組織改編により、日本拠点 管理部から改称。
                                         「本社工場 生産管
理グループ」
     「業務管理グループ」   「購買グループ」
                         「宮崎工場 生産管理グループ」を統括。

                         13
 自動機負荷検証会議(生産管理グループ、自動機グループ):従来は生産管理グループ
 からの指示がある場合のみに前倒し生産を実施したところ、自動機グループが生産管理
 グループに仕掛状況を連絡し、翌月分の生産負荷が高い場合や新規案件がある場合、時
 期や機種について協議の上で前倒し生産を実施することとし、負荷の平準化が出来る状
 態へ移行。
【日次】
 生産フォローアップ(生産管理グルプ、技術製造グループ、自動機グループ)
                                   :事前連
 絡が乏しく、割込み生産や当日出荷対応が多発する状態から、生産トピックス情報を共
 有して割込み生産が削減できる状態へ移行。


 また、2020 年6月に製品・半製品不具合システム処理手順を作成し、6月初旬から中旬
にかけて、各グループ長からグループメンバーに仕損処理のフローについて教育を実施し
ています。その結果、(担当者とグループ長、グループ長と工場長はコミュニケーション
の頻度も多く、コミュニケーションも取りやすいことから)仕損報告がしづらいとの理由
で滞留することはなくなっています。あわせて仕損処理の滞留を防止するため、最低でも
週に一度、グループ長は工場長に仕損処理報告をする運用としました。
 コンプライアンス委員会が、次回(2020 年9月末)実地棚卸時に事務局(管理本部 C
SR推進部)を派遣し、宮崎工場内のコミュニケーション状況についてヒアリングしてコ
ンプライアンス委員会へ報告する予定です。


6. 業務負荷軽減への対応
 2020 年 5 月に、連結子会社であるUMC・Hエレクトロニクスの生産管理経験者を宮崎
生産管理グループ長として赴任させ、負荷が高く属人化した担当者の業務と、佐賀工場生
産管理担当者の業務平準化のために、生産管理業務の役割分担見直しに着手しています。
改善状況については、新たに設定した、月次の会議(棚卸対策会議(本社、宮崎、佐賀の
各工場が参加)
      )で管理しています。この生産管理業務の棚卸し結果を踏まえ、製品在庫
や仕掛在庫の自動計算による可視化と作業効率改善、その在庫を基にした日々の生産管理
を標準化し、分散することによる属人化の解消、大口顧客の担当見直し(1名体制から3
名体制に変更)による作業量分散等の対策を 7 月に策定いたしました。
 一方で、業務負荷の要因となっていた製造面において以下の不良率の低減活動を実施し
ました。
 ・技術製造グループ、品質管理グループの人員を自動機部門内へ配置し、自動機グルー
  プでの不良品の処置ではなく、自動機グループの上流工程における潰し込みを実施。
 ・ワースト不良項目であった、
              「LEDズレ」に対して搬送用治具の仕様変更を実施
  (粘着性樹脂材料を用いて基盤を固定していたため、粘着力の低下により徐々に基盤



                     14
 自体の姿勢を保持できなくなり、LEDのズレの原因になっていたものを、基盤の位
 置決めピンを設置した搬送用治具に変更)
この結果、現状では、当時の1/3程度まで不良率を低減しています。




                                     以上




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