6584 三桜工 2021-05-21 15:00:00
中期経営方針策定に関するお知らせ [pdf]

                                                      2021 年 5 月 21 日
各     位
                                  会 社 名   三櫻工業株式会社
                                  代 表 者   取 締 役 社 長         竹田 玄哉
                                         (コード番号:6584 東証第一部)
                                  問 合 せ 先 ガバナンス統括本部長 松本 安生
                                         (TEL.03-5793-8411)


                       中期経営方針策定に関するお知らせ

当社は、2021 年度~2030 年度の中期経営方針を策定いたしましたのでお知らせいたします。


                              記


1.中期経営方針の概要
    当社は、1939 年大宮航空工業として創業し今年創業 83 年目を迎えております。
    創業から昭和、平成、令和の現在に至るまで多様な事業を営んで参りました。その中で、この 30 年間は、
自動車業界でグローバルに成長してきました。しかしながら、VUCA と言われる近年の外部環境や、すで
に始まっている CASE 革命に対応できるよう、第三の創業ともいえる事業変革にチャレンジします。


2.中期方針の3つの柱
    1)既存事業
       存続する自動車市場において、圧倒的な高収益・高品質基盤を確立する。
    2)サーマル・ソリューション事業
       サーマル・マネジメントのソリューションにおいて世界のトップ・プレイヤーとなり、環境負荷低減
       に貢献する。
    3)次世代コア事業
       自動車事業にとらわれない新事業を創出する。
       地域経済に貢献する新たな事業を創出する。


3.定量目標
    2030 年度(2031 年 3 月期)
       連結売上 2,000 億円
       ROE 15%以上


4.ESG の取り組み
    われわれは、次の 10 年で、『環境にやさしい三桜』のブランドを確立できるよう環境優先的に ESG の
強化にリソースを投下します。


※ 当社の中期経営方針に写真・図示にはイメージとして掲載しているものもございますので、実際に記載・
    活動しております事業内容とは異なる部分がありますこと、ご留意ください。



                                                               以 上
              証券コード:6584




三櫻工業株式会社
中期経営方針
 2021年5月21日
1. 中期経営理念

三桜⼯業はグローバル⾃動⾞市場の成⻑とともに歩んで
きました。1990年〜2020年の30年間に渡って、われわ
れの生産・販売拠点は7カ国から20カ国に、連結売上高
は400億円から約1,400億円にまで成⻑しました。

過去5年間は、取締役会改革、ジョブ型の成果主義人事
制度、カスタマー・ファーストを軸に、大胆な構造改
革、ガバナンス改革に取り組んできました。その結果、
3%強だったROEは10%を超え、グループ内には多くの
新しいリーダーが生まれ、スリムで活力のある⾃律型組
織に生まれ変わりました。

しかし、半世紀以上に渡って成⻑してきた世界の⾃動⾞
市場は、2018年頃から調整局面に入り、停滞の兆しを     取締役社⻑ 竹田 玄哉
見せています。更に、全産業を横断しての環境負荷低減は
近年グローバル・イシューとなり、それに伴って⾃動⾞市場にもCASE※1革命の波が押
し寄せています。日本の⾃動⾞メーカーの世界進出に乗じて、⾃動⾞内燃機関の部品加
⼯・組み立てにより規模を拡大してきたわれわれ⾃動⾞部品メーカーも、方針を見直す
必要に迫られています。これまでの30年で成功を収めた成⻑のモデルは、次の30年には
当てはまりません。

計画的な需要と供給の見通しが立てやすい世の中は、先行き不透明なVUCA※2 な社会に移
行しています。一方で不確定性とリスクの高いウィズ・コロナ、アフター・コロナの世界
では、新たな機会、社会のニーズが生まれ始めています。

われわれ三桜⼯業は、1939年の創業以来、安全要求の厳しい重要保安製品を、技術力と品
質保証力、リーダーシップとチームワークをもって、お客様に提供し続けてきました。
マーケット・インの問題解決能力、ステークホルダーに寄り添った安心の創出こそが、三
桜⼯業の強みです。われわれは次の30年間もこの強みを活かし、『第三の創業』とも言え
る大きな事業変革に果敢にチャレンジし、コロナ・ショックの後に来たるべき新しい世界
において、さらなる成⻑を実現させていきます。




※1   : CASE = Connected (つながる), Autonomous (⾃律走行), Shared (共有), Electric (電動) の略語
※2   : VUCA = Volatility (変動性), Uncertainty (不確実性), Complexity (複雑性), Ambiguity (曖昧性) の略語
                                                                                            1/9
2. 事業の変遷

        自己変革と多様性が三桜のDNAです

三桜⼯業は1939年に大宮航空⼯業として創業しました。
戦後、醸造や家電など、様々な事業へのチャレンジを経た後、1960年代に⾃動⾞事業に参入し、世
界第⼆位の⾞輌配管メーカーとして成⻑してまいりました。
お客様のニーズに応え、鉄、樹脂、ステンレス、アルミなど多様な材料を扱い、世界のすべての主
要⾃動⾞メーカーに日々製品とサービスをお届けしています。

                                          連結売上の推移

                1939     1950    1960    1970   1980     1990   2000     2010    2020
        1,500




                創業     航空部品製造           鋼管製造     油圧ブレーキ用配管   Ni-MH
                                                  燃料用配管製造  バッテリー製造



        1,000
                                   ⾃動⾞用シートベルト製造        配管用樹脂製品製造                 海外売上
    売
    上
                         醸造酒製造
億(
円
)                                       エンジン用配管製造       燃料噴射配管製造

                       小型モーター製造
         500                              1990年代の海外進出
                                           東南アジア 1社
                                           北米      2社                            国内売上
                                           その他    10社
                     テープレコーダー製造
                                          1980年代の海外進出     2000年代の海外進出      2010年代の海外進出
                                           東南アジア 4社        中国      7社       ロシア    1社
                                           北米     2社       その他    10社       欧州     1社
                                           欧州     1社                        韓国     1社

                        草創期                            グローバル事業拡大期


        2021年3月末現在




                                         20ヵ国
            82
                                                                       連結従業員総数
                  創業

                                                                   8,132         名

                          年
                                         82拠点
                                                                   (単体:1,128名)


         1939
         May


                                                                                        2/9
 3. 2010年代のレビュー

 従来の自動車市場の変化

リーマン・ショックが明けた2010年、われわれは中期成⻑戦略”Goal 15”※3を打ち出しました。
ドイツのGeiger Automotive GmbH買収を含む積極的な海外投資により、2018年度には連結売上
1,400億円を突破しました。2008年度〜2018年度までの10年間で、連結売上は2倍近くにまで成⻑し
ています。
しかし世界の⾃動⾞生産台数※4は2017年前から成⻑が鈍化し、2020年にはコロナ・ショックにより
年間8,000万台を割り込みました。それに伴い、三桜⼯業の売上も1,137億円にまで減少していま
す。
国内の⾃動⾞生産台数も、海外への生産シフトにより、この10年間は減少傾向にあります。
さらなる成⻑のためにわれわれは、グローバライゼーションの深化、そして新しい高付加価値事業
の創出に取り組みます。                   生産台数推移

                                世界自動車生産台数                国内自動車生産台数




 7,100万台
                                                                                     7,800万台




 993万台
                                                                                       696万台

    2008   2009   2010   2011    2012    2013     2014   2015   2016   2017   2018   2019   2020



                                           業績推移
                                        連結売上高            連結営業利益率




                                                                                      1,137億円
  762億円


  1.8%                                                                                      3.1%



 2008年度                                         2014年度                                  2020年度

リーマン・ショック                        Geiger Automotive GmbH 買収                              COVID-19


※3 : Goal 15= 2010年度から三桜グループのグローバルで活動した中期計画(社外未公表)
※4 : 生産台数実績は日本⾃動⾞⼯業会ウェブサイトから引用
                                                                                                   3/9
4. CASEのインパクト

電気自動車コンポーネントの市場が拡大する

現在、当社の製品の約8割が、内燃機関⾃動⾞の構成部品です。
われわれは、世界の⾃動⾞総生産台数は次の10年間も年間7,000万台以上の規模は維持される
と想定しています。
一方で、2030年までにハイブリッド(HEV)やプラグイン・ハイブリッド(PHEV)を含む、⾞輌
電動化へのシフトは必然の流れです。バッテリー、モーター、インバーター、パワーコント
ロールユニット(PCU)※5などの市場は2030年に向けて拡大が見込まれます。

                       グローバル乗用⾞販売予測※6
                                                                 電気自動車市場

                                      EV,FCV※7 2,346万台            対象コンポーネント
                                                                  ・バッテリー
                                                                  ・インバーター
                                     HEV,PHEV 2,705万台             ・モーター
                                                                   他


                                                                 内燃機関自動車市場
                                 内燃機関⾃動⾞ 4,830万台                 対象コンポーネント
                                                                 ・燃料配管
                                                                 ・油圧配管
                                                                  他
    2020                                                  2030




               I
             II
                         製品市場規模の変化イメージ




             III
     <2020年>                           HEV,PHEV EV

           ⾃動⾞市場            内燃機関⾃動⾞


      三桜製品の市場
                        カテゴリーⅠ・Ⅱ市場                カテゴリーⅢ市場

                                                      三桜製品市場増
     <2030年>
           ⾃動⾞市場      内燃機関⾃動⾞         HEV,PHEV       EV


      三桜製品の市場
                       カテゴリーⅠ・Ⅱ市場                    カテゴリーⅢ市場



           事業カテゴリー
                     既存事業①(内燃機関⾃動⾞のみに使用する製品)
                     既存事業②(内燃機関⾃動⾞とEV, HEV,PHEVで使用する製品)
                     サーマル・ソリューション事業

※5 : パワーコントロールユニット(PCU)= 電力駆動⾞輌に使われる制御装置
※6 : 商用⾞を除く⾞両総重量6トン以下の乗用⾞のみの販売台数予測(出典:LMC Automotive Ltd)
※7 : FCV=Fuel Cell Vehicle (燃料電池⾞輌)                                           4/9
5. 定量目標

アフター・コロナの世界において、平均年率 6% の成⻑を目指します

 中




      III                                     IV
     存続する⾃動⾞市場において、圧倒的な高収
                                                         既存事業
 期   益・高品質基盤を確立する
 方




       II
 針   サーマル・マネジメントのソリューションにお
                                              サーマル・ソリューション
     いて世界のトップ・プレーヤーとなり、環境負




                                       III    2,000 億円 I + II
 3   荷低減に貢献する
                                                   事業
 本
 の   ⾃動⾞事業にとらわれない新事業を創出する




                       I
                                                   次世代コア事業
 柱   地域経済に貢献する新たな事業を創出する


                                定量目標

            連結売上                               連結売上


     1,137億円                                 2,000億円
            2020年度                             2030年度

                 ROE                               ROE




            I
       10.2%                                 15%以上




            II
          III
          IV
            2020年度                             2030年度

                       事業カテゴリーのポートフォリオ変革




       1,137 億円




      2020年度                                  2030年度
                           既存事業①(内燃機関⾃動⾞のみに使用する製品)
                           既存事業②(内燃機関⾃動⾞とEV, HEV,PHEVで使用する製品)
                           サーマル・ソリューション事業
                           次世代コア事業
                                                                5/9
6. 既存事業の深化

DXにより、既存事業の収益率と品質保証レベルを更に高度なものに

 既存事業の⾃動⾞用製品(ブレーキ配管、燃料や冷却の配管、シートベルトなどの安全
 製品)は次の10年間も存続します。
 コロナ・ショックの対策で実行した構造改革により手に入れた収益体質を、更にレベル
 アップさせていきます。鍵となるのはDX※8、信頼性⼯学※9です。⾃社生産⼯程とサプ
 ライ・チェーンの状況をリアルタイムで完全に『視える化』し、一段上の高収益体質、
 高品質生産体制を確立します。




        既存事業売上            既存事業営業利益率

                                        2030
     1,200億円             10%以上
         2030年度              2030年度   Ⅰ・Ⅱ   既存事業




※8 : DX=デジタル・トランスフォーメーション
※9 : 信頼性⼯学=製品やシステムの信頼性を統計的に分析する⼯学手法                6/9
7. サーマル・ソリューション事業の拡大

最適な熱輸送設計と品質保証力により、環境負荷を低減する

三桜⼯業は数十年に渡って、⾃動⾞用の熱交換器、冷媒配管を開発・販売・生産してきまし
た。その実績を評価され、われわれの冷却配管システムはスーパー・コンピュータ『富岳』
にも採用されました。




⾃動⾞の電動化に伴い、モーターやバッテリー、インバーターやPCUの市場が拡大しま
す。これらの電気⾃動⾞コンポーネントは、どれも高性能な冷却機能を必要とします。
また、今後更に市場が拡大すると見込まれるデータセンターや通信機器にも、最適な冷却
効果が求められます。
われわれは配管から熱交換器まで一貫して最適設計・生産ができる強みを活かし、放熱、
熱回収、熱の有効利用に至るまでのサーマル・ソリューション事業の拡大を狙います。




  サーマル・ソリューション事業売上             EV, PHEV, HEV製品売上目標

                                  250億円
      500億円
                                                            2030
                               HPC※10冷却製品売上目標

          2030年度                  250億円              Ⅲ   サーマル・ソリューション事業




※10 :HPC= ハイ・パフォーマンス・コンピューター                                              7/9
8. 次世代コア事業の拡大

テクノロジーで社会の課題を解決する

われわれはコロナ・ショックの次に生まれる新たな社会的課題とニーズを見据えていま
す。そのために過去から継続的に研究開発と将来の成⻑が見込めるVC※11に投資してま
いりました。これからはさらに⾃動⾞事業にとらわれない新事業をM&Aも活用し拡大さ
せます。キーワードは、M&Aの積極的活用、環境低負荷低減社会の実現、地域経済の活
性化貢献、そして生きがい・働きがいの創造です。

生産ソリューション事業

度重なる⾃然災害やコロナ・ショックのために、グローバル・サプライ・チェーンは分
断されてしまっています。世界各地における中小規模の下請けメーカーは財務が悪化
し、日々変動するオーダーや要求に苦しんでいます。しかしサプライチェーン全体で見
ると、まだまだ在庫やスクラップの無駄が存在しています。どの会社も財務的な余裕は
ないのに、市場全体ではつくりすぎ、買いすぎ、捨てすぎ、というムダが発生している
のです。
三桜⼯業では加⼯設備や組み立て設備、検査装置を内製化しています。上流の製品、⼯
程、設備から、下流の最終検査まで、一貫した設計を行っています。こうした生産ソ
リューションを社外に向けても提供し始めています。
われわれの力で、世界の製造業がムダを削減し、リードタイムを短縮し、財務の健全性
と活力を取り戻す。そのような、中小企業に生産のソリューションを提供する事業を発
展させていきます。
研究開発とCVC

三桜⼯業では20名以上のPh.D.人財が、世界各国の大学や研究機関と提携して、全固体
電池や熱電発電※12、レーザーや先進医療などの次世代技術の研究を日々行っています。
先進的な技術を持つスタートアップ企業にも日頃から積極的に投資しています。
来たるべき市場の変化に備え、われわれは事業領域を問わず、地域貢献や環境負荷低減
に貢献するテクノロジーに対しては継続して基礎研究・投資を続けていきます。




                    次世代コア事業売上



                   300億円
                                                 2030


                       2030年度
                                             Ⅳ    次世代コア事業




※11 : VC=ベンチャー・キャピタルの略語
※12 : 熱電発電=熱電素子をもちいて熱エネルギーを電力エネルギーに変換する発電法                  8/9
9. ESGの取り組み

  ノルマとしてではなく、三桜のブランドを確立するためにESGの強化に
  リソースを投下する
環境      (Environment)
三桜⼯業では1980年代から『軽量化事業部』を発足させ、⾃動⾞の軽量化、燃費向上に
貢献してきました。⾃家発電や照明のLED化など、生産プロセスにおけるCO2削減にも早
くから取り組んでいます。しかし現時点でのわれわれの環境改善活動は、業界全体で見れ
ばまだ平均的なレベルです。
次の10年で、『環境にやさしい三桜』のブランドを確立できるよう、生産プロセスにお
けるCO2の徹底削減、排熱・無駄なエネルギー使用量の低減、サーマル・ソリューション
事業の拡大に優先的に投資を進めます。




 社会      (Social)
 社会環境の変化に早期から対応し、1992年からフレックスタイム制度、2016年からテレ
 ワーク制度を導入し従業員の働きやすさに貢献しています。これらの制度により昨年か
 らの新型コロナ感染症の拡大防止にも速やかに対応することもできました。
 また、従業員や地域の困りごとを解決すべく茨城県古河事業所に隣接する保育施設も運
 営しております。地域・社会貢献としましても東日本大震災、熊本地震などの復興支
 援、また、われわれの拠点地域でのボランティア活動にも積極的に参加し、近年では
 TABLE FOR TWO※13の仕組みを導入し社会貢献をしています。しかしながらわれわれが
 未来のためにやるべき社会貢献はまだまだありますので継続的に『地域、社会に密着し
 たグローバル企業』が根付くよう、活動してまいります。




 ガバナンス        (Governance)
 お客様、株主、従業員などのステークホルダーを意識した透明な経営を目指しています。
 コーポレート・ガバナンスにおいては、取締役会の実効性向上の観点から、2021年6月に
 は独立社外取締役が取締役の過半数を占める体制に移行する予定です。また、ダイバーシ
 ティの観点から常勤監査役に女性を選任することも検討しております。
 これからも財政状態・経営成績等の財務情報以外にもわれわれのサステナビリティへの取
 組み等の非財務情報について、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組み、
 積極的なIR活動を通じ、ステークホルダーとの相互信頼関係を深め、社会的課題に関心を
 持ち社会的責任を果たしてまいります。




※13 :   TABLE FOR TWO = 先進国の人々が新興国の子どもたちと食事を分かち合う活動をしているNPO団体   9/9
このプレゼンテーションで述べられている三櫻⼯業株式会社の
業績予想、計画、事業展開等に関しましては、本資料の発表日現
在において入手可能な情報に基づき判断したものです。
マクロ経済や当社の関連する業界の動向、新たな技術の進展等
によっては、大きく変化する可能性があります。
従いまして、実際の業績等が本プレゼンテーションと異なるリ
スクや不確実性がありますことをご了承下さい。また、大きな変
更がある場合は、その都度発表していく所存です