6502 東芝 2021-06-21 17:00:00
法律事務所作成の調査報告書及び監査委員会作成の見解書の開示に関するお知らせ [pdf]

                                                                 2021 年6月 21 日

各     位

                                    会 社 名 株式会社 東芝
                                            東京都港区芝浦1-1-1
                                    代表者名 代表執行役社長 CEO 綱川 智
                                             (コード番号:6502 東、名)
                                    問合せ先 執行役員
                                            コーポレートコミュニケーション部長
                                            石山 一可
                                            Tel   03-3457-2100


     法律事務所作成の調査報告書及び監査委員会作成の見解書の開示に関するお知らせ


     当社は、2021 年 2 月 17 日付「臨時株主総会の開催日時及び場所、付議議案並びに株
    主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ」においてお知らせしましたとお
    り、当社が、Effissimo Capital Management Pte Ltd 様及び Suntera (Cayman) Limited
    as Trustee of ECM Master Fund 様(以下併せて「ECM」といいます。
                                                   )から 2020 年 12
    月 17 日付「株主総会招集請求書」を受領したことを受け、監査委員会において、いわ
    ゆる「圧力問題」に関し、外部法律事務所である西村あさひ法律事務所を補助者として
    起用して調査の一部を委託し、調査を実施しました。監査委員会は、同法律事務所の調
    査結果を 2021 年 2 月 17 日付「調査報告書」及び同日付「追加調査報告書」
                                             (以下併せ
    て「法律事務所報告書」といいます。)として受領し、さらに監査委員会が自ら行った調
    査も踏まえ、監査委員会としての調査結果を「ECM による株主総会招集に係る監査委員
    会の見解」
        (以下「監査委員会見解書」といいます。
                          )として 2021 年 2 月 17 日に開催し
    た取締役会に提出しました。
     当社としては、監査委員会の調査結果(西村あさひ法律事務所の調査結果を含む。 に
                                          )
    ついては、行政当局の公務の執行状況を含む第三者の行為に関して言及がなされている
    ため、これまで開示しておりませんでした。
     しかしながら、今般、2021 年 3 月 18 日開催の当社臨時株主総会で選任された「会社
    法第 316 条第 2 項に定める株式会社の業務及び財産の状況を調査する者」から、2021 年
    6 月 10 日付「調査報告書」
                   (以下「調査者調査報告書」といいます。)を受領し、公表し
    ておりますが、調査者調査報告書においては行政当局の公務の執行状況を含む第三者の
    行為について既に言及があることから、当社は監査委員会の調査結果を開示しない理由


                                     1
がなくなったと判断し、法律事務所報告書及び監査委員会見解書を添付のとおり開示す
ることといたしましたので(注)、お知らせいたします。
 当社は、今般、調査者調査報告書における昨年の定時株主総会の運営に関するご指摘
について真摯に受け止めております。当社はガバナンスを抜本的に改善し、当社の企業
価値向上に向けて、全力で取り組んでまいる所存です。
(注)法律事務所報告書の記載の固有名詞の一部については、今回の開示にあたり匿名
化処理を行っております。
                                   以   上




                  2
法律事務所報告書(調査報告書)



                           調    査    報 告       書

                                                              2021 年 2 月 17 日


株式会社東芝 監査委員会 御中


                                             西 村 あ さ ひ 法 律 事 務 所


                                             弁護士         渋     谷    卓     司


                                             弁護士         勝     部          純


                                             弁護士         浅     野    啓     太


                                             弁護士         今     泉    仁     志




    当職らは、貴委員会のご依頼により、以下の事項に係る調査(以下「本件調査」といいま
す。)を行いましたので、その結果を以下のとおりご報告申し上げます。


     Effissimo Capital Management Pte Ltd(以下「エフィッシモ」といいます。)及び
     Suntera (Cayman) Limited as Trustee of ECM Master Fund からの 2020 年 12 月 17
     日付け臨時株主総会招集請求書において、2020 年 7 月 31 日に開催された株式会社東
     芝(以下「東芝」といいます。)の第 181 期定時株主総会(以下「本件株主総会」といいま
     す。)において「一部の株主が圧力を受け議決権行使を行わなかった」と言及されてい
     るところ、2020 年 12 月 24 日付け Reuters 記事 1で報道されている、当時経済産業省
     (以下「経産省」といいます。)参与であった M 氏(以下「M 氏」といいます。)による
     Harvard Management Company, Inc.(以下「HMC」といいます。) 2の議決権行使への不当
     な干渉があったとすれば、それに東芝が関与したか否か、及びこれに関連する事項




1
     「今夏の東芝株主総会、経産省参与がハーバード大基金に干渉=関係者」と題する記事。
2
     HMC はハーバード大学基金を運営する機関投資家である。
目次
第1         本件調査の概要 ······················································· 3

     1           本件調査の経緯及び目的 ··········································· 3

     (1)         関連報道 ························································ 3

     (2)         エフェッシモからの申入れ等 ······································· 4

     (3)         東芝監査委員会からの本件調査依頼 ································· 4

     2           本件調査対象期間の設定 ··········································· 4

     3           本件調査の方法 ·················································· 4

           (1)       関係資料等の精査 ············································ 4
           (2)       ヒアリング ·················································· 5
           (3)       メールデータレビュー ········································ 5

     4           本件調査の基準日················································· 6

第2         本件調査の結果認められた事実 ········································· 6

     1           証拠により認め得る事実関係 ······································· 6

           (1)       本件株主総会前におけるエフィッシモを始めとする株主からの要望・
                     提案等の状況 ················································ 6
           (2)       本件株主総会前における改正外為法の施行状況等 ················· 7
           (3)       経産省・東芝間の本件株主総会前のやり取り等 ··················· 8
           (4)       HMC・東芝間の本件株主総会前のコミュニケーション状況 ·········· 9
           (5)       M 氏が関与することになった経緯に関する東芝の認識 ·············· 9
           (6)       M 氏とハーバードとのコミュニケーションに関する東芝の認識状況 · 10
           (7)       本件株主総会後の HMC・東芝間のコミュニケーション ············· 11

     2           HMC の議決権行使に対する東芝による不当な干渉や、不当な干渉への関与の
                 有無 ··························································· 11

     3           結    語 ······················································· 12




                                        - 2 -
第 1 本件調査の概要


1    本件調査の経緯及び目的


(1) 関連報道


    2020 年 9 月 15 日付け Financial Times 記事 3においては、大要、以下の内容が記載され
ていた。(ア)東芝が株主 4及び議決権行使助言会社を揺さぶることを期待したため、M 氏が
HMC の CEO(以下「HMC の CEO」という。)との間で本件株主総会における HMC の投票意思に関
して私的な協議を行った。(イ)エフィッシモが株主に対して「意図に反する形で議決権を
行使したか」についてアンケート調査を行った結果、投票を変えるよう不当なプレッ
シャーを受けたと感じた株主が存在した疑いがある。(ウ)本件株主総会の 2 週間程前に M
氏が HMC の CEO との間でオンライン会議を行い、その後、HMC が議決権を行使しないことを
決めた。(エ)東芝がアクティビスト対応のために起用していたフィナンシャル・アドバイ
ザー(以下「FA」という。)が、上記会議に先立ち、賛成・反対票が非常に僅差であることを
東芝に伝え、また、HMC を浮動票の 1 つと特定していた。(オ)上記会議において、M 氏が
HMC の CEO に対して、東芝は日本政府と深い関係を有しているため HMC が反対票を投じた場
合は HMC のレピュテーションに影響する可能性があると述べた。(カ)東芝は議決権行使助
言会社の意見を揺さぶるために FA を起用した。
    また、2020 年 12 月 24 日付け Reuters 記事においては、大要、以下の内容が記載されて
いた。(ア)2020 年 5 月に経産省の参与に就任した M 氏は、HMC が東芝の企業統治に不満を
持っていることを知り、知人であった HMC の CEO に本件株主総会の数週間前に連絡した。
(イ)M 氏と HMC の CEO とのやり取りは電話やメールで行われ、最初は友好的であった議論
は、本件株主総会前の週末までには行き詰まり、M 氏が HMC の CEO に対して、東芝と対立す
る内容の議決権行使を HMC が行った場合、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」とい
う。)に基づく調査が行われる可能性に言及した。(ウ)(外為法では複数の外国人株主が合
意し、上場会社の議決権を共同で行使する場合、議決権の合算が 10%以上だと新たな届出
対象となることを前提に)M 氏は、HMC の CEO とのやり取りの中でエフィッシモと HMC の関
係性を特に取り上げた。(エ)M 氏はツイッター上で「私は経産省参与で、ハーバードのシニ
アフェロー、同基金とは長年の信頼関係にあり、その上で相談に乗ることはありますが、
匿名条件の関係者の証言に基づいた本記事は CEO・CIO が経産省の私に脅されて議決権行使
方針を決定したかのように書かれており極めて遺憾です」と述べた 5。



3
     「Former Japan GPIF investment chief intervened in Toshiba AGM」と題する記事。
4
     特に断りのない限り「株主」とは東芝の株主を指す。以下同じ。
5
     なお、Reuters は、2020 年 12 月 23 日付けで上記記事を発表し、翌 24 日付けの上記記事の更新版に
     おいて、M 氏のツイッター上の上記発言を加筆している。


                                        - 3 -
(2) エフェッシモからの申入れ等


    エフィッシモから東芝に対する 2020 年 9 月 23 日付け「第三者委員会設置の要請」と題す
る文書には、一部の株主が圧力を受け議決権行使を行わなかったという報道もなされてお
り、エフィッシモが東芝の株主数十社に質問を行ったところ、実際に、意図した議決権行
使を行うことができなかった株主が複数存在することを確認した旨、報道によれば、議決
権行使助言会社が意見表明に当たり圧力を受けたことが明らかにされている旨等が記載さ
れていた。
    さらに、エフィッシモからの 2020 年 12 月 17 日付け臨時株主総会招集請求書には、一部
の株主が圧力を受け議決権行使を行わなかったことや議決権行使助言会社が圧力を受けた
ことについても報道されている旨、エフィッシモが東芝の株主数十社に質問を行った結
果、実際に、圧力により議決権行使を行うことを断念した株主が存在することを確認した
旨等が記載されていた。
    なお、自らの議決権行使について圧力を受けた旨の申立て等を東芝に対して行った株主
はこれまで存在しない。


(3) 東芝監査委員会からの本件調査依頼


    エフィッシモからの上記臨時株主総会招集請求等を受け、臨時株主総会を招集するか否
か等について東芝の取締役会が意思決定を行うに当たり、東芝監査委員会は、2021 年 1 月
22 日、西村あさひ法律事務所に対して、上記(1)及び(2)の報道やエフィッシモ指摘事項に
関連して、頭書記載の事項の事実関係の解明を目的とする本件調査を依頼した。
    西村あさひ法律事務所において本件調査に関与した弁護士は、いずれも、本件株主総会
に関して法的助言を行っておらず、中立的及び客観的立場から本件調査を実施した。


2    本件調査対象期間の設定


    エフィッシモからの株主提案が行われたのが 2020 年 5 月 14 日、本件株主総会開催日が
同年 7 月 31 日であることを踏まえ、本件調査の対象期間につき、それらの前後を含めて同
年 4 月 1 日から同年 8 月 31 日までの間と設定した(以下「本件調査対象期間」という。)。


3    本件調査の方法


(1) 関係資料等の精査


    当職らは、本件株主総会に関する資料の精査を実施した。精査対象となった資料のう
ち、主要なものは以下のとおりである。


                         - 4 -
・    エフィッシモ、HMC、その他東芝の主要株主とのコミュニケーションに関する資料
・    財務大臣及び経済産業大臣から東芝に対する 2020 年 5 月 22 日付けの外為法に基づく
     報告徴収命令(以下「本件報告徴収命令」という。)に関する資料


(2) ヒアリング


    東芝監査委員会による関係者のメール等の初期的確認の結果を踏まえ、本件調査におけ
る調査対象事項及び時間的な制約も考慮し、以下の東芝関係者を対象者として選定してヒ
アリングを実施した。すなわち、本件調査対象期間において、経産省の大臣官房政策立案
総括審議官(当時)の A 氏(以下「A 氏」という。) 6及び東芝を所管する商務情報政策局情報産
業課の課長(当時)の B 氏(以下「B 氏」という。) 7との間での連絡業務に従事していた、東芝
代表執行役副社長(人事・総務部担当、コーポレートコミュニケーション部担当)の豊原正
恭氏(以下「豊原氏」という。)及び執行役上席常務(経営企画部担当、グループ経営統括部
担当、経営企画部バイスプレジデント)の加茂正治氏(以下「加茂氏」という。)、並びに、
東芝取締役代表執行役社長 CEO の車谷暢昭氏(以下「車谷氏」という。)を対象者として選定
し、ヒアリングを実施した。ヒアリングの実施状況は下表のとおりである。


                       【表】ヒアリング実施状況
                 対象者             ヒアリング実施日 8
             豊原氏           1 月 26 日
             加茂氏           1 月 27 日、同月 28 日、2 月 1 日
             車谷氏           1 月 29 日


(3) メールデータレビュー


    当職らは、上記(2)のヒアリング対象者をメールデータレビュー対象者として選定し、
各対象者の本件調査対象期間(2020 年 4 月 1 日から同年 8 月 31 日)のメールデータ 9につい
て、Microsoft Office Outlook を用い、「"(A 氏の姓の漢字表記)" OR "(A 氏の姓のローマ
字表記)" OR "(B 氏の姓の漢字表記)" OR "(B 氏の姓のローマ字表記)" OR "(M 氏の姓の漢
字表記)" OR "(M 氏の姓のローマ字表記)" OR "経産省" OR "経済産業省" OR "METI" OR "



6
     なお、A 氏は 2020 年 7 月 20 日付けで経産省大臣官房総括審議官に異動となっている。
7
     なお、B 氏は 2020 年 7 月 20 日付けで経産省製造産業局総務課長に異動となっている。
8
     いずれも 2021 年である。
9
     東芝監査委員会より受領した、上記各対象者について上記対象期間において現存する全メールデー
     タである。


                              - 5 -
エフィッシモ" OR "effissimo" OR "ハーバード" OR "harvard" OR "外為法"」の検索式を
用いて、差出人、宛先、件名、本文及び添付ファイルのいずれかでヒットするドキュメン
トを絞り込み、レビューを実施した。


4     本件調査の基準日


     本件調査の基準日は 2021 年 2 月 1 日である。


第 2 本件調査の結果認められた事実


1     証拠により認め得る事実関係


(1) 本件株主総会前におけるエフィッシモを始めとする株主からの要望・提案等の状況


     東芝によって 2017 年 12 月に実施された約 6,000 億円の第三者割当増資において、新株
が外国投資家に対して割り当てられた結果、本件株主総会当時、東芝の主要な株主は、エ
フィッシモ、Farallon Capital Management, L.L.C.(以下「ファラロン」という。)、3D
Investment Partners Pte. Ltd.(以下「3D」という。)、King Street Capital Management,
                                    10
L.P.等の外国投資家により占められており                    、これらの外国投資家は、本件株主総会当
時、東芝に対して以下のような要望・提案等を行っていた。
     エフィッシモは、2020 年 3 月 19 日、東芝に対して、東芝 IT サービス株式会社における
架空循環取引に対して強い問題意識を有しているとして、全取締役との個別面談を要請す
るなどするとともに、状況によっては、本件株主総会において株主提案等を行うことにつ
いても検討する必要が生じる可能性があると伝えるなどしており、その後、実際に、同年
5 月 19 日、取締役 4 名(竹内朗氏、杉山忠昭氏、今井陽一郎氏(以下「今井氏」という。)及
び高坂卓志氏)の選任に関する株主提案を行った 11。ファラロンは、不採算事業のリストラ
クチャリングを行ってコングロマリット・ディスカウントを解消することを東芝に求めて
おり、同年 5 月 13 日、東芝に対して、東芝の外国籍社外取締役 4 名の再任を求める株主提
案を行った。3D は、東芝にコングロマリット・ディスカウントが生じている点が大きな問
題点であり、ノンコア事業を切り出すどころか積極的に取り込む施策を実行していると指
摘し、同年 4 月 30 日、東芝に対して取締役 2 名(Allen Chu 氏及び清水雄也氏)の選任に関
する株主提案を行った。




10
      2020 年 5 月 15 日現在において、外国法人等が東芝の株式の 62.65%を保有していた。
11
      なお、エフィッシモは、2020 年 6 月 19 日、上記株主提案の一部(高坂卓志氏の選任に関する議案)を
      取り下げた。


                                  - 6 -
(2) 本件株主総会前における改正外為法の施行状況等


ア     改正外為法の施行状況


     2019 年 11 月 22 日に成立した改正外為法については、2020 年 4 月 30 日、関連改正政省
令・告示が公布され、同年 5 月 8 日に施行、同年 6 月 7 日に全面適用されることとなった
(以下、関連改正政省令・告示も併せ、総称して「改正外為法」という。)。


イ     改正外為法の趣旨等


     従来、外為法においては、外国投資家が行おうとする対内直接投資等のうち、所定の取
                              12
引等につき、国の安全等の観点からの審査                が必要となる対内直接投資等として、当該取
引等の事業目的等を財務大臣及び事業所管大臣に対して事前に届け出る義務が定められて
いた。例えば、外国投資家が、事前届出対象業種(指定業種)を営む上場会社の株式を取得
し、当該取得の結果、当該上場会社の発行済み株式数の 10%以上を所有することになる場
合、事前届出を行って審査を受ける必要があった。
     改正外為法は、「経済の健全な発展につながる対内直接投資を一層促進」するとともに、
「国の安全等を損なうおそれがある投資に適切に対応」することで、「メリハリのある対内
直接投資制度を目指す」ことを目的とするものとされる。
     「経済の健全な発展につながる対内直接投資を一層促進」する点では、外国投資家による
対内直接投資等に関し、指定業種の企業への投資であっても事前届出・審査を免除する
「事前届出免除制度」が導入された。事前届出免除制度においては、例えば、上場会社の株
                                          13
式取得について、一般的な外国投資家は、指定業種(コア業種                   以外)に関しては、所定の
免除基準を遵守すれば事前届出が免除され、また、コア業種に関しては、上記免除基準に
加えて上乗せ基準も遵守することにより、当該取得の結果の株式保有比率が 10%未満であ
れば、事前届出が免除されることとなった。
     一方、「国の安全等を損なうおそれがある投資に適切に対応」するという点では、まず、
指定業種の事業の継続的かつ安定的な実施を困難にする行為を行うことを目的とする対内
直接投資等に該当する場合は、事前届出免除の対象外とされた。また、事前届出の対象と
なる上場会社の株式取得等の閾値が 10%から 1%に引き下げられた。さらに、「対内直接投
資等」の定義に、指定業種に属する事業を営む上場会社の株式を 1%以上保有している外国
投資家が、①自ら又はその密接関係者が役員に就任することについて株主総会において同

12
      国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、若しくは公衆の安全の保護に支障を来すことになるお
      それ、又は、我が国経済の円滑な運営に著しい悪影響を及ぼすことになるおそれがある対内直接投
      資等に該当するかどうかの審査である。
13
      例えば、武器、航空機、原子力、宇宙関連、軍事転用可能な汎用品の製造業がコア業種に含まれ
      る。



                             - 7 -
              14
意する行為              、及び②指定業種に属する事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案し、同意
する行為が追加された。なお、上記改正に先立ち、投資の形態が多様化していることを踏
まえて、上場会社の議決権取得後における外国投資家間の共同議決権行使に係る同意の取
得(合算して総議決権の 10%以上となる場合)が、対内直接投資等に追加されている 15                     16
                                                                 。


(3) 経産省・東芝間の本件株主総会前のやり取り等


     東芝は、防衛事業、原子力事業、半導体事業等、外為法上の指定業種・コア業種に該当
する事業を行っているため、従前から、経産省に対して事業の状況の報告等を行ってお
り、代表執行役副社長(人事・総務部担当、コーポレートコミュニケーション部担当)の豊
原氏が東芝の窓口を担っていた。豊原氏は、上述したような外国投資家からの東芝に対す
る要望・提案等についても、随時、経産省(東芝を所管する部署である情報産業課の課長
を務める B 氏、又は、過去に情報産業課長を務め、当時は大臣官房政策立案総括審議官で
あった A 氏を指す。以下同じ。)に伝達していた。
     本件株主総会前の当時、本件株主総会における外国投資家からの株主提案に対する改正
外為法の運用のあり方が注目される状況にあったところ、2020 年 5 月上旬頃、豊原氏及び
        17
加茂氏          は、経産省から、法執行に当たっては、口頭説明ではなく証拠が必要であるた
め、東芝に対する外国投資家からの要望・提案等に係る経産省の調査に協力し、関連する
資料を提出してほしい旨、及び調査の端緒となるべき書面を提出してほしい旨の要請を受
けた。上記要請を受け、豊原氏及び加茂氏は、2020 年 5 月 3 日、経産省に対して調査の申
入書のドラフト及び本件株主総会の票読みに関する資料を送付し、また、同月 7 日、エ
フィッシモ等の外国投資家への対応に関する東芝の考え方を経産省に対して統一的に説明
するためのペーパーを作成し、経産省に対して東芝の考え方を説明した。その後、経産省
の求めにより、経産省の当時の商務情報政策局長と東芝の一部の社外取締役との間の電話
会議が設定され、同会議において、同局長から、外為法の下で、原子力事業、防衛事業、
半導体事業等の安全保障上重要な事業が守られていることについて、経産省としては重大
な関心がある旨などが伝えられた。これを受けて、東芝内においても、外国投資家の要
望・提案等について改正外為法上取り得る措置に関する検討が行われたが、現状に照らし
特段のものはなく、また、本件株主総会で会社提案が否決されることに対しては有効な手


14
      なお、上記(1)のとおり、エフィッシモは、その設立者・取締役である今井氏の取締役選任に関する
      株主提案を行っていたところ、今井氏の取締役選任議案について本件株主総会においてエフィッシ
      モが賛成票を投じることは、改正外為法において、事前届出・審査の対象となるものであった。
15
      対内直接投資等に関する政令の一部改正(2019 年 9 月 26 日公布、同年 10 月 26 日施行)による。
16
      なお、上記第 1・1(1)で述べた 2020 年 12 月 24 日付け Reuters 記事が言及しているのは、上記の外
      国投資家間の共同議決権行使に係る同意の点であると推測される。
17
      加茂氏は、2020 年 4 月 1 日付けで東芝の執行役上席常務(経営企画部担当、グループ経営統括部担
      当、経営企画部バイスプレジデント)に就任して以降、豊原氏とともに経産省との窓口を担うように
      なった。


                                - 8 -
段はないと分析されていた。そして、同月 19 日、東芝は経産省に対して申入書を提出し、
同月 22 日、東芝に対する本件報告徴収命令が行われ、同月 28 日、東芝は、外国投資家に
よる東芝株式取得状況やその他の関連資料を経産省に提出した。その後も、東芝は、経産
省の求めに応じるなどして、本件株主総会に向けた外国投資家とのエンゲージメントの概
要や、票読みに関し、経産省に伝えていた。


(4) HMC・東芝間の本件株主総会前のコミュニケーション状況


 HMC は、2020 年 3 月 3 日、東芝に対してレターを送付し、大規模な自社株買いプログラ
ムを直ちに発表し実行することや、株式公開後にメモリ事業の少数持分を売却し、その売
却金を追加の自社株買いに充てる意向であることを公約することを要望するなどしてい
た。東芝は、HMC と面談することを試みたものの、同年 5 月 26 日、HMC より、面談は拒絶
され、レターであれば、HMC の CEO ではなく HMC のジェネラル・カウンセルを通じて受け取
る旨の回答を受領した。その後、同月 28 日、東芝は、HMC に対して、HMC の上記要望に直
ちに応えることは難しい旨のレターを送付したところ、同年 6 月 1 日、HMC は、東芝に対し
て、上記要望を繰り返すとともに、株主価値向上のために外国籍取締役 4 名の再任を求め
る旨のレター(以下「HMC6 月レター」という。)を送付した。その後、同月 11 日頃に東芝社
外取締役のワイズマン廣田綾子氏と HMC との間で面談を設定する話が進んだが、結果的
に、本件株主総会が終了するまでは面談することはできないと HMC から伝えられた。同月
22 日、東芝は HMC に対して、メモリ事業の少数持分の売却が実現したら、売却代金の過半
を株主に還元する意図がある旨と外国籍社外取締役 4 名は再任する方針である旨を記載し
たレターを送付した。
 このように、本件株主総会前、HMC から拒絶され、面談によるコミュニケーションの途
を絶たれていたため、東芝と HMC との間のコミュニケーションは、レターのやり取りのみ
によって行われていた。


(5) M 氏が関与することになった経緯に関する東芝の認識


 当職らによるヒアリング結果によれば、豊原氏及び加茂氏は、HMC6 月レター受領後に
HMC と上記コミュニケーションを取っていく過程で、経産省に対し状況報告をする中で、
経産省から、経産省の参与であり、ハーバード大学のフェローとして HMC とも接点がある
人物として M 氏の名前が挙げられたもので、東芝としては、経産省の判断により、HMC と
のコミュニケーションに関して M 氏が関与することになったという認識でいたものであ
り、少なくとも、東芝から M 氏を関与させたものではないとのことである。上記説明は、
下記(6)記載の M 氏と HMC との間でのその後のコミュニケーションに関する東芝の認識状況




                      - 9 -
                                     18
に整合するものであり、不自然とは認められない                    。その後、豊原氏及び加茂氏が経産省
に対して上記の東芝から HMC に対する同月 22 日付けレターのドラフトを共有した後、経産
省からは、東芝に対して、当該レタードラフトにつき、M 氏からのコメントであるとし
て、コメントが伝えられた。


(6) M 氏とハーバードとのコミュニケーションに関する東芝の認識状況


     2020 年 7 月に入ってから、豊原氏及び加茂氏は、経産省からの問合せを受けるなどする
と、経産省が M 氏に対してインプットするためのものとして、本件株主総会に関する状況
について、経産省に対して情報提供を行い、他方、経産省からは、東芝の票読みに関する
M 氏のコメント等、断片的な情報を共有されていた。
     上記(5)のとおり、豊原氏及び加茂氏は、M 氏につき、経産省の判断により、HMC とのコ
ミュニケーションに関与することとなったという認識であったところ、その後において
も、経産省の意向を踏まえて、HMC とコミュニケーションを取っているものと認識してい
た。
     東芝と M 氏との間で直接やり取りが行われていたとは認められず、東芝が M 氏に対して
直接コンタクトを取ろうとしていたことも認められない。
     本件株主総会直前の 2020 年 7 月下旬以降、豊原氏及び加茂氏は、経産省に対し、東芝の
票読みや、株主とのコミュニケーション等の東芝の対応状況について伝達する一方、経産
省から、HMC の投票行動に関する予測について伝達されたり 19、M 氏が HMC と面談をする予
定である等の断片的な情報を伝達されるなどし、また、経産省からの求めに応じ、HMC の
投票行動を場合分けして、各場合における他の株主の票読み情報に基づく計算結果を伝達
するなどしたが、その後、M 氏と HMC との面談結果や、当該面談を踏まえた HMC の投票行動
の予測等について、経産省からは伝達されなかった。



18
      なお、2020 年 6 月上旬頃、株主提案による取締役候補が本件株主総会で選任された場合に、取締役
      会が株主提案により選任された取締役主導となることへの懸念から、東芝が提案する取締役候補者
      数を追加する案が一時浮上し追加候補者の検討がなされたことがあり、その際に追加候補者の 1 人
      として車谷氏から M 氏の名前が挙げられたが、結局、候補者数は増やさないこととされ、同月 12 日
      に開催された指名委員会には追加する案自体諮られることもなかった。当職らによるヒアリング結
      果によれば、M 氏の名前が挙げられたのは、その経歴等によるものであり、M 氏と人脈等を有してい
      たものではなく、指名委員会に諮る前に候補者案の追加自体が立ち消えになったことから、M 氏に対
      するコンタクトも行われなかったとのことである。上記説明は、取締役人数を追加する案自体が浮
      上後数日のうちに立ち消えになっていること、追加候補者には M 氏の他にも複数の著名な経営者等
      の名前が挙げられていたことなどに照らし、不自然とは認められない。したがって、上記追加取締
      役候補者のうちの 1 名に M 氏の名前が挙がったことをもって、東芝が M 氏との人脈を有したり、M 氏
      が HMC とのコミュニケーションに関与するようになったことに東芝が関係したことを示唆するもの
      とは認め難い。
19
      車谷氏、永山治氏、外国籍社外取締役 4 名、及び 3D の提案する取締役について HMC が賛成票を投じ
      るという予測を伝達されたことがあったと思われる。



                            - 10 -
(7) 本件株主総会後の HMC・東芝間のコミュニケーション


     当職らによるヒアリング結果及び関係証拠によれば、本件株主総会後、2020 年 9 月 15 日
に Financial Times 記事において HMC の議決権行使に対する圧力に関する報道がなされた
前後を問わず 20、HMC から東芝に対して、HMC が本件株主総会における議決権行使に関して
圧力を掛けられた旨の発言、指摘等がなされたとは認められなかった。


2     HMC の議決権行使に対する東芝による不当な干渉や、不当な干渉への関与の有無


     上記 1(3)から(7)までにおいて述べたとおり、東芝が、HMC の議決権行使に関し、HMC に
圧力を掛けるなどの不当な干渉をしたことや、M 氏又は経産省に対して、HMC に圧力を掛け
るよう依頼したり、M 氏又は経産省との間でそのことにつき協議を行うなどして、不当な
干渉に関与するような行為をした事実は認められなかった。


     この点につき、証拠関係に照らして敷衍すると、まず、上記事実の存在を示すメールそ
の他の客観的証拠は見当たらなかった。また、ヒアリング対象者は、いずれも、東芝にお
いて、HMC の議決権行使に関し、圧力を掛けるなどの不当な干渉に関与したことはなく、
不当な干渉自体があったという認識もないと述べている。


     Financial Times 記事、Reuters 記事のいずれにおいても、HMC の議決権行使に関し問題
とされているのは M 氏の言動であるところ、M 氏と HMC との間のコミュニケーションに関
し、M 氏と東芝との間で直接的なコミュニケーションがなされていたことを窺わせるメー
ルその他の客観的証拠は見当たっていない。むしろ、ヒアリング結果及び客観的証拠から
は、HMC の件に関し、東芝は、M 氏との間で直接的にやり取りをするコミュニケーション
チャネルを有さず、M 氏の行動や M 氏と HMC との間のやり取りについては、経産省から断片
的に情報を得るのみであったことが窺われ、東芝は、M 氏と直接的なコミュニケーション
を行っていなかったと考えられる。
     そうであるとすると、仮に、東芝が M 氏に対して HMC の議決権行使に関して圧力を掛け
るよう依頼を行っていたとすれば、他者、すなわち、上記コミュニケーションの状況に則
して言えば、経産省を介して、又は経産省と共同して、その旨の意思連絡を M 氏との間で
することによって、実施していたということになる。しかしながら、経産省と東芝との間
のやり取りにおいても、上記依頼、仲介、協議等が行われたことを示す証拠は見当たらな
かった。




20
      本件株主総会後、東芝は、2020 年 8 月 27 日、HMC と面談を実施し、同年 9 月 14 日、HMC からレター
      を受領し、同年 10 月 1 日、HMC と面談を実施し、同月 29 日、HMC と電話で会話し、同年 11 月 11
      日、HMC に対してレターを送付し、同月 24 日、HMC と面談を実施している。


                                - 11 -
    また、M 氏と HMC とのコミュニケーションについては、上記事実関係に照らし、東芝が
その全容を把握する立場にあったとは認められず、実際に把握していたとも認められない
ものの、本件調査において確認した証拠の限りにおいて M 氏から HMC に対する何らかの圧
力行使があったことを窺わせるものはなく、そうした行為があったと東芝が認識していた
ことを窺わせるものもなかった。


    なお、本件調査の過程において、他の株主に対してその議決権行使に関して不当な圧力
が加えられたことを疑わせるような証拠は見当たらなかった。


3    結   語


    以上のとおり、本件調査において確認した証拠の限りにおいて、M 氏が、HMC に対し、本
件株主総会における議決権行使に関して不当な圧力を掛けていたことを窺わせるものはな
く、また、東芝が M 氏をして不当な圧力を掛けさせようとするなどして不当な干渉に関与
したことは認められなかった。


                                           以   上




                       - 12 -
法律事務所報告書(追加調査報告書)




                       追    加   調    査    報    告    書

                                                             2021 年 2 月 17 日


株式会社東芝        監査委員会        御中


                                              西 村 あ さ ひ 法 律 事 務 所


                                              弁護士       渋    谷     卓    司


                                              弁護士       勝    部          純


                                              弁護士       浅    野     啓    太


                                              弁護士       今    泉     仁    志




    当職らは、貴委員会のご依頼により、当職らの 2021 年 2 月 17 日付け調査報告書(以下
「本件調査報告書」といい、本件調査報告書記載の調査を「本件調査」といいます。)に関連
して追加調査(以下「本件追加調査」といいます。)を行いましたので、その結果を下記のと
おりご報告申し上げます。


                                      記


第 1 本件追加調査の経緯、目的及び方法


    当職らは、Effissimo Capital Management Pte Ltd 及び Suntera (Cayman) Limited as
Trustee of ECM Master Fund からの 2020 年 12 月 17 日付け臨時株主総会招集請求書におい
て、2020 年 7 月 31 日に開催された株式会社東芝(以下「東芝」という。)の第 181 期定時株主
総会(以下「本件株主総会」という。)において「一部の株主が圧力を受け議決権行使を行わ
なかった」と言及されているところ、2020 年 12 月 24 日付け Reuters 記事1で報道されてい
る、当時経済産業省参与であった M 氏(以下「M 氏」という。)による Harvard Management
Company, Inc.(以下「HMC」という。)の議決権行使への不当な干渉があったとすれば、それ
に東芝が関与したか否か、及びこれに関連する事項の事実関係の解明を目的として、本件
調査を実施した。


1
      「今夏の東芝株主総会、経産省参与がハーバード大基金に干渉=関係者」と題する記事。
    本件調査においてヒアリング対象者に選定した東芝取締役代表執行役社長 CEO の車谷暢
昭氏、東芝代表執行役副社長(人事・総務部担当、コーポレートコミュニケーション部担
当)の豊原正恭氏及び執行役上席常務(経営企画部担当、グループ経営統括部担当、経営企
画部バイスプレジデント)の加茂正治氏(以下、上記 3 名を「ヒアリング対象者 3 名」とい
う。)は、ヒアリングにおいて、いずれも、自身も含め、東芝においては、HMC の議決権行
使に関し、圧力を加えるなどの不当な干渉に関与したことはなく、不当な干渉自体があっ
たという認識もないと述べたのに加え、HMC 以外の株主の議決権行使に関しても、不当な
圧力を掛けたり、掛けるよう指示等したことはない旨述べた。
    また、本件調査報告書第 1・3(3)において述べたとおり、本件調査におけるメールデー
タレビューにおいては、本件調査事項に則し、ヒアリング対象者 3 名をメールデータレ
ビュー対象者として選定し、各対象者の本件調査対象期間(2020 年 4 月 1 日から同年 8 月
31 日)のメールデータについて、Microsoft Office Outlook を用い、「"(A 氏2の姓の漢字表
記)" OR "(A 氏の姓のローマ字表記)" OR "(B 氏3の姓の漢字表記)" OR "(B 氏の姓のローマ
字表記)" OR "(M 氏の姓の漢字表記)" OR "(M 氏の姓のローマ字表記)" OR "経産省" OR "
経済産業省" OR "METI" OR "エフィッシモ" OR "effissimo" OR "ハーバード" OR "harvard"
OR "外為法"」の検索式を用いて、差出人、宛先、件名、本文及び添付ファイルのいずれか
でヒットするドキュメントを絞り込んで実施していたが、本件調査報告書第 2・2 において
述べたとおり、本件調査の過程において、HMC 以外の株主に対してその議決権行使に関し
て不当な圧力が加えられたことを疑わせるような証拠は見当たらなかった。
    これらを受けて、東芝監査委員会は、HMC 以外の株主の議決権行使に関する不当な圧力
を疑わせる客観的証拠の有無を更に確認するため、補充のメールデータレビューを実施す
ることを西村あさひ法律事務所に依頼した。
    そこで、当職らは、ヒアリング対象者 3 名を、本件追加調査のメールデータレビュー対
象者として選定し、各対象者の本件調査対象期間(2020 年 4 月 1 日から同年 8 月 31 日)の
メールデータ4について、Microsoft Office Outlook を用い、「"farallon" OR "ファラロン
" OR "3d" OR "king street" OR "ks" OR "finepoint" OR "canyon" OR "senrigan" OR
"argyle" OR "アーガイル" NOT "(A 氏の姓の漢字表記)" NOT "(A 氏の姓のローマ字表記)"
NOT "(B 氏の姓の漢字表記)" NOT "(B 氏の姓のローマ字表記)" NOT "(M 氏の姓の漢字表
記)" NOT "(M 氏の姓のローマ字表記)" NOT "経産省" NOT "経済産業省" NOT "METI" NOT "
エフィッシモ" NOT "effissimo" NOT "ハーバード" NOT "harvard" NOT "外為法"」の検索




2
     本件調査報告書第 1・3(2)記載の A 氏を指す。
3
     本件調査報告書第 1・3(2)記載の B 氏を指す。
4
     東芝監査委員会より受領した、ヒアリング対象者 3 名について上記対象期間において現存する全
     メールデータである。



                                    - 2 -
式を用いて5、差出人、宛先、件名、本文及び添付ファイルのいずれかでヒットするドキュ
メントを絞り込み、レビューを実施した。


第 2 本件追加調査の結果


    本件追加調査によっても、本件株主総会において HMC 以外の株主の議決権行使について
不当な圧力が東芝により加えられたことを疑わせる証拠は認められなかった。


                                                以   上




5
     HMC 以外の主要な株主の名称を検索キーワードに含め、また、本件調査における上記メールデータレ
     ビュー結果を踏まえ、本件調査において既にレビュー対象としたドキュメントについては本件追加
     調査におけるレビュー対象から除外するよう検索式を設定した。


                         - 3 -
監査委員会見解書




                                                            2021 年 2 月 17 日
株式会社東芝 取締役会 御中
                                             株式会社東芝 監査委員会


                                             太田 順司
                                             古田 佑紀
                                             小林 伸行
                                             山内 卓




               ECM による株主総会招集請求に係る監査委員会の見解


 Effissimo Capital Management Pte. Ltd.及び Suntera (Cayman) Limited as Trustee
of ECM Master Fund (以下総称して「ECM」という)は、2020 年 12 月 17 日付「株主総会招集
請求書」(以下「本請求」という)において、当社の第 181 期定時株主総会(以下「本株主総会」と
いう)に関し、①「圧力により議決権行使を行うことを断念した株主が存在している」こと(以下「圧力問
題」という)、及び、②本株主総会の「議決権行使の集計に関しては説明のつかない不自然な点が数多
く存在している」こと(以下「議決権集計問題」という)、を申し立てている。
 当委員会は、当該申立てに関連し、必要な部分は外部弁護士事務所を起用して調査を実施した。
当委員会の見解を以下の通り申し述べる。


1.圧力問題︓
 当委員会は、2020 年 10 月 14 日に ECM と対話し、圧力問題等における具体的な事実関係を
明確にするように求めるとともに、当社執行側が多数のエンゲージメントを通じて圧力問題等に関し要求
された調査について範囲を限定しかつ明確化するよう ECM に要請したことを、執行側に確認している。
 しかしながら、かかる要請にも係わらず ECM からは実質的な追加情報の提供はなく、また不当な圧力
を受けた旨の申し立てや情報提供は他の株主からも一切なかった。このため、2021 年 1 月 22 日付で、
西村あさひ法律事務所を補助者とした調査を開始することとした。当該調査は、2020 年 12 月 24 日
Reuters 記事で報道されている Harvard Management Company, Inc.(以下「HMC」という)の
議決権行使への不当な干渉があったとすれば、それに当社が関与したかどうかを中心に検証したものであ
る。当委員会による調査手続には、補助者による当社関係資料の精査、当社関係幹部 3 名へのヒアリ
ングインタビュー及びメールレビューが含まれる。
 当該調査の結果、調査において確認された証拠の限りにおいて HMC に対し、本株主総会における
議決権行使に関して不当な圧力を掛けられていたことを窺わせるものはなく、また、当社が不当な圧力を
掛けさせようとするなどして不当な干渉に関与したことは認められなかった。
 一方、当委員会は、2 月 5 日付で HMC に書簡を発信し、本株主総会での議決権行使にあたり、


                                     1
不当な圧力を受けたかを照会し、2021 年 2 月 9 日、HMC から本株主総会に際して、著しく不適切
な時期に著しく不適切な内容の接触を受けたため議決権行使をしなかった旨の回答を受領した。HMC
からの回答は、接触した者の氏名、立場、接触の具体的内容が明らかにされていないため、当委員会は
2 月 10 日及び 12 日、具体的情報の提供を促す書簡を HMC に出状したが、現時点では回答を得ら
れていない。監査委員会としては、これ以上調査を進める必要を見出すことができず、これ以上の判断の
遅延を取締役会に求めることは適切ではないと判断する。なお、報道において HMC に接触したとされて
いる者に対して、当社からの何らかの依頼がなされたという事実は確認されなかった。
 なお、ECM は、本請求において、「議決権行使助言会社が圧力を受けたことについても報道がなされ
ている」と言及し、また、当委員会との対話において、当社の代理人による議決権行使促進活動に基づ
く一部株主の議決権行使について不透明な点があると述べている。
 当委員会は、本株主総会に関連して、議決権行使助言会社との接触につき関係部門から状況を
聴取するとともに、当社代理人が株主に接触した際の記録と報告を法務部から受領し、それらを検証し
た。これらの聴取・検証によれば、議決権行使助言会社及び株主の議決権行使に関する不当な干渉・
妨害等が当社またはその代理人により行われたことを疑わせる事情は認められなかった。


2.議決権集計問題︓
 当委員会は、本株主総会の投票の過程において特定の投票が不適切に除外された事案に関連して、
鳥飼総合法律事務所を起用して三井住友信託銀行(以下「SMTB」という)による調査の方法及び
その結果の相当性を検証した。それを踏まえ、当委員会は 2020 年 12 月 17 日付で取締役会に意
見書を提出した。
 ECM は、「議決権の集計に関する説明のつかない不自然な点」に関連しての主張を詳らかにしていな
い。しかしながら、議決権集計問題(上記1で述べた不当な圧力に関わるものを除く)は、当社が関
与する作業に関するものではなく、議決権の事前行使の集計を担当する SMTB 及び議決権行使書を
郵便物として取り扱った日本郵便株式会社に委ねられるべき問題である。


3.結論
 当委員会が、上記 1 及び 2 において取った手続において、圧力問題または議決権集計問題について
更なる調査を必要と認めるべき事柄は当委員会では認識されなかった。したがって、当委員会は、かかる
問題について更に調査を行うための時間、業務の中断・遅滞及び追加コストは正当化されるものではな
いとの見解であり、当社取締役会が、ECM の提案に対し反対するよう株主に推奨することが相当である
と考える。
                                                以 上




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