6205 OKK 2021-12-01 16:00:00
東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ [pdf]

                                          2021 年 12 月1日
各   位
                        会 社 名   OKK株式会社
                        代表者名 代表取締役社長       森本   佳秀
                             (コード番号:6205、東証第1部)
                             取締役上席執行役員
                        問合せ先            足立 圭介
                             管 理 本 部 長
                             (TEL.072-771-1159)


        東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ


 当社は、過年度決算短信等を訂正した件につきまして、2021 年 11 月 16 日付で株式会社東京証
券取引所より、有価証券上場規程第 502 条第1項第1号に基づき、その経緯及び改善措置を記載
した「改善報告書」の提出を求められておりましたが、  本日別添のとおり提出いたしましたので、
お知らせいたします。



 別添書類:改善報告書

                                                     以上
                改 善 報    告 書
                                   2021 年 12 月 1 日
株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 山道 裕己   殿
                                    OKK株式会社
                                    代表取締役社長
                                        森本 佳秀


このたび、過年度決算短信及び四半期決算短信、並びに有価証券報告書及び四半期報告書
(以下「過年度決算短信等」といいます。)の一部訂正の件について、有価証券上場規程第
502 条第 3 項の規定に基づき、その経緯及び改善措置を記載した改善報告書をここに提出
いたします。




                     1
                                                                 目次
1.経緯 ..................................................................................................................................3
   (1)過年度決算訂正の内容................................................................................................3
   (2)過年度決算短信等を訂正するに至った経緯・原因 ....................................................7
          ①     不適切な会計処理が発覚した経緯 ........................................................................7
          ②     不適切な会計処理の内容.......................................................................................7
          ③     不適切な会計処理に関する過年度決算訂正の処理内容 .......................................8
          ④     不適切開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等 ................................9
          ⑤     特別調査委員会より不適切開示の原因となった行為への指摘を受けた関与者の
                状況 .....................................................................................................................10
2.改善措置 .........................................................................................................................10
   (1)不適切開示の発生原因の分析...................................................................................10
          ①     組織体制の問題 ...................................................................................................10
          ②     G2 システムの複雑性 ..........................................................................................13
          ③     コンプライアンス意識の欠如 .............................................................................13
   (2)再発防止に向けた改善措置(実施済みのものも含む。 .........................................15
                              )
          ①     組織体制の問題への対応.....................................................................................15
          ②     G2システムの複雑性への対応 ..........................................................................19
          ③     コンプライアンス意識の欠如への対応 ...............................................................20
          ④     適時開示の遅延を生じさせたことに対する改善策 ............................................22
   (3)改善措置の実施スケジュール...................................................................................23
3.経営責任等の明確化について ........................................................................................25
4.不適切な情報開示等が投資家及び証券市場に与えた影響についての認識 ...................25




                                                                   2
1.経緯


(1)過年度決算訂正の内容
    当社は、2021 年6月 24 日付で特別調査委員会を設置し、過去の会計処理の誤りの
   可能性及び当社役員による不適切な業務執行の可能性を含む内部統制上の問題が存
   在する疑義について調査を進めてまいりました。
    2021 年9月 17 日付で特別調査委員会より調査報告書を受領し、記載された調査
   結果から、①過去において実在性のない仕掛品が存在していたこと、②担当者が、実
   在性のない仕掛品の存在を認識しながら、棚卸資産の帳簿残高と実棚金額との差額
   を埋めるため、棚卸対象外資産である加工費等を水増しする等して、適切な費用処理
   を行わず、資産を過大計上していたこと、また③ ①により適時に費用処理がされず、
   過大計上が継続していた仕掛品の残高を、担当者が恣意的に費用処理していたこと
   が判明しました。
    当社は、調査報告書の内容を検討した結果、過大計上となっていた棚卸資産の修正
   を行うため、2017 年3月期から 2020 年3月期までの有価証券報告書、及び 2019 年
   3月期第2四半期から 2021 年3月期第3四半期までの四半期報告書についての決算
   訂正を行いました。訂正した報告書は 2021 年 10 月6日に関東財務局に提出し、過
   年度決算短信及び四半期決算短信につきましては、2021 年 10 月 6 日にその影響額
   をサマリー表にて開示いたしました。訂正した過年度決算短信等及び業績への影響
   額については、以下のとおりです。


    【訂正した過年度有価証券報告書】
    第 159 期(自 2016 年4月1日 至 2017 年3月 31 日)
    第 160 期(自 2017 年4月1日 至 2018 年3月 31 日)
    第 161 期(自 2018 年4月1日 至 2019 年3月 31 日)
    第 162 期(自 2019 年4月1日 至 2020 年3月 31 日)


    【訂正した過年度四半期報告書】
    第 161 期 第2四半期(自 2018 年 7月1日 至 2018 年 9月 30 日)
    第 161 期 第3四半期(自 2018 年 10 月1日 至 2018 年 12 月 31 日)
    第 162 期 第1四半期(自 2019 年 4月1日 至 2019 年 6月 30 日)
    第 162 期 第2四半期(自 2019 年 7月1日 至 2019 年 9月 30 日)
    第 162 期 第3四半期(自 2019 年 10 月1日 至 2019 年 12 月 31 日)
    第 163 期 第1四半期(自 2020 年 4月1日 至 2020 年 6月 30 日)
    第 163 期 第2四半期(自 2020 年 7月1日 至 2020 年 9月 30 日)
    第 163 期 第3四半期(自 2020 年 10 月1日 至 2020 年 12 月 31 日)

                           3
【過年度決算短信等の訂正による連結業績への影響額】
                                                 (単位:百万円)
   期間             項目    訂正前       訂正後        影響額      増減率
            売上高          23,642    23,639       △2      0.0%

  第159期     営業利益         △251           15      266         -
 (2017年3月   経常利益         △443      △176         266         -
   期)
            親会社株主に帰属す
   通期       る当期純利益       △410      △143         266         -
            総資産          50,873    50,110     △762    △1.5%
            純資産          21,238    20,414     △824    △3.9%
            売上高          26,621    26,624         2     0.0%
            営業利益           715       386      △328    △45.9%
  第160期
            経常利益           493       165      △328    △66.5%
 (2018年3月
            親会社株主に帰属す
  期)通期
            る当期純利益         352      △38       △391          -
            総資産          49,742    48,624    △1,117   △2.2%
            純資産          21,360    20,147    △1,212   △5.7%
            売上高          11,839    11,836       △2      0.0%

  第161期     営業利益           168          50    △117    △69.6%
 (2019年3月   経常利益           251       133      △117    △46.6%
期)第2四半
            親会社株主に帰属す
    期       る四半期純利益        203          95    △108    △53.2%
            総資産          48,933    47,779    △1,153   △2.4%
            純資産          21,575    20,255    △1,320   △6.1%
            売上高          19,363    19,360       △2      0.0%

  第161期     営業利益           527       386      △141    △26.8%
 (2019年3月   経常利益           504       363      △141    △28.0%
   期)
            親会社株主に帰属す
 第3四半期      る四半期純利益        431       287      △143    △33.2%
            総資産          49,283    48,098    △1,184   △2.4%
            純資産          21,436    20,080    △1,356   △6.3%




                           4
           売上高         26,464   26,459      △5      0.0%
           営業利益          814      631     △182    △22.4%
 第161期
           経常利益          703      520     △182    △25.9%
(2019年3月
           親会社株主に帰属す
  期)
           る当期純利益        577      444     △133    △23.1%
  通期
           総資産         49,314   48,097   △1,217   △2.5%
           純資産         21,521   20,176   △1,344   △6.2%
           売上高          4,417    4,419        2     0.0%
           営業利益        △126     △117          8       -
 第162期
           経常利益        △171     △162          8       -
(2020年3月
           親会社株主に帰属す
期)第1四半
           る四半期純利益     △200     △187         12       -
   期
           総資産         48,426   47,204   △1,222   △2.5%
           純資産         21,040   19,708   △1,332   △6.3%
           売上高         10,127   10,129        2     0.0%
           営業利益        △217      △48        169       -
 第162期
           経常利益        △317     △147        169       -
(2020年3月
           親会社株主に帰属す
期)第2四半
           る四半期純利益     △488     △475         12       -
   期
           総資産         47,233   46,149   △1,083   △2.3%
           純資産         20,754   19,422   △1,332   △6.4%
           売上高         16,068   16,070        2     0.0%
           営業利益         △81        48       130       -
 第162期
           経常利益        △145      △15        130       -
(2020年3月
           親会社株主に帰属す
期)第3四半
           る四半期純利益     △392     △348         43       -
   期
           総資産         47,968   46,895   △1,073   △2.2%
           純資産         20,962   19,661   △1,300   △6.2%




                         5
           売上高         21,346   21,348      2    0.0%
           営業利益         △290       141    432      -
 第162期
           経常利益         △430         2    432      -
(2020年3月
           親会社株主に帰属す
  期)
           る当期純利益      △9,622   △9,159    463      -
  通期
           総資産         35,217   34,444   △773   △2.2%
           純資産         11,616   10,735   △881   △7.6%
           売上高          2,011    2,011      -      -
           営業利益         △781     △688      92      -
 第163期
           経常利益         △766     △674      92      -
(2021年3月
           親会社株主に帰属す
期)第1四半
           る四半期純利益      △769     △676      92      -
   期
           総資産         34,253   33,574   △678   △2.0%
           純資産         10,849   10,060   △788   △7.3%
           売上高          5,081    5,081      -      -
           営業利益        △1,243   △1,300   △57       -
 第163期
           経常利益        △1,124   △1,182   △57       -
(2021年3月
           親会社株主に帰属す
期)第2四半
           る四半期純利益     △1,126   △1,184   △57       -
   期
           総資産         35,600   34,764   △836   △2.3%
           純資産         10,536    9,596   △939   △8.9%
           売上高          7,866    7,866      -      -
           営業利益        △1,977   △1,989   △12       -
 第163期
           経常利益        △1,802   △1,815   △12       -
(2021年3月
           親会社株主に帰属す
期)第3四半
           る四半期純利益     △1,693   △1,705   △12       -
   期
           総資産         34,773   34,005   △768   △2.2%
           純資産          9,951    9,057   △893   △9.0%




                          6
(2)過年度決算短信等を訂正するに至った経緯・原因


 ① 不適切な会計処理が発覚した経緯
    当社は、2021 年 3 月期決算手続の過程において、EY 新日本有限責任監査法人(以
   下「EY 新日本」といいます。)へ期末での減損処理について報告したところ、EY 新
   日本より、金額と内容の詳細について社内調査を求められ、5 月 10 日~11 日に実施
   した監査等委員会による調査で担当者が EY 新日本に改ざんしたデータを渡してい
   た事実が判明しました。また、その調査の過程で当社の仕掛品残高の確定につき、過
   去の会計処理に誤りがある可能性を確知しました。そこで、2021 年 5 月 21 日、EY
   新日本と協議の上、当該会計処理に係る事実の解明に社内調査委員会による調査が
   必要であると判断し、速やかに専門性を有する有識者からなる社内調査委員会を設
   置して調査を行っておりました。
    しかし、社内調査委員会による調査の過程で、当初誤りがある可能性が指摘されて
   いた会計処理以外にも誤った会計処理がなされていた可能性があること、これらの
   会計処理の誤りについて、2020 年 5 月頃、当社取締役がその誤りを認識し得た可能
   性があるにもかかわらず、適時に適切な会計処理がされていなかったとの内部統制
   上の問題の有無について疑義が生じるに至ったことから、2021 年 6 月 24 日より客
   観性・独立性の高い外部専門家 3 名による特別調査委員会を設置し、調査を行ってま
   いりました。


 ② 不適切な会計処理の内容
    当社は、2021 年 9 月 17 日に特別調査委員会からの調査報告書を受領いたしまし
   た。本件不適切な会計処理に関する当社の事実認識は以下のとおりです。


  ⅰ) 当社は 2017 年 3 月期において、基幹システムの移行を行いましたが、それ以前
     の旧システムの使用期間において、実在性のない仕掛品が存在しておりました。
     基幹システム移行時に、その実在性のない仕掛品のデータは移行させず、調査の
     上で正しい勘定への移管等を行う予定でおりましたが、その指示が徹底できて
     おらず、新基幹システム(以下「G2システム」といいます。)に移行してしまい
     ました。


  ⅱ) 2017 年 3 月末の棚卸資産に関して、実棚金額と帳簿残高に約 15 億 7,700 万円
     の差額が発生し、これは実地棚卸対象外となる金額として、具体的にはシステム
     管理外部品や外注費、加工費等であると担当者により分析されておりました。し
     かし、当該分析資料の内、外注費や加工費等の金額は本来の実体ある金額より水
     増し改ざんされたもので、最終的に棚卸資産の帳簿残高から、実棚金額を控除し

                        7
    た差額に当該実地棚卸対象額となる金額が合致するように、外注費や加工費等
    の金額が調整されておりました。


 ⅲ) 2017 年 9 月末の実地棚卸以後、担当者は実棚・帳簿分析表の作成を担当してい
    ましたが、棚卸資産の帳簿残高と実棚金額との差額が、実地棚卸対象外の合計金
    額となるように外注費や加工費等の項目の金額を調整していました。またその
    際には加工費等の内訳金額が前年度の金額と比して異常な増減を示さないよう
    に調整しつつ、金額を調整していました。


 ⅳ) 適切な費用処理を行わずに過大計上していた仕掛品の残高を、担当者が本来処理
    すべき時期に費用処理をせず、恣意的に処理していました。


ⅴ) 担当者は、不適切な会計処理を行っていることを認識しながら、G2 システムの
    不具合から生じる各部門からの苦情への対応や、日常業務への支障に対する対
    応、さらに G2 システムの改修に関するベンダーとの連絡窓口まで担当してお
    り、業務に追われ、会計監査人からの追及を受けることに耐えられない状況にあ
    ったこともあり、仕掛品残高の総額は変えないものの、会計監査人に提出する製
    番別の仕掛品残高の明細上にてその差分の金額を改ざんしておりました。


③ 不適切な会計処理に関する過年度決算訂正の処理内容
   調査報告書と会計監査人による訂正監査を踏まえ、棚卸資産の過年度修正を行い
  ました。訂正項目は複数ありますが、下表のとおり、主たる要因は仕掛品の過大計上
  であります。仕掛品の過大計上については、発生時期を特定の上、適切な時期に費用
  処理等を行いました。




                     8
                                                            (単位:百万円)
                                        年度別利益への訂正影響額の内訳
                                                                   163期
           過年度利益へ               159期     160期     161期     162期 2021年3月期
   項目
           の訂正影響累   構成比      2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 第三四半期
            計額(B)   (B/A)     当期純利益    当期純利益    当期純利益    当期純利益   当期純利益


 仕掛品過大計上
              163    84.0%        179   △ 205    △ 105      285       9
 買掛金残高の
  不一致
             △ 46   -23.7%       △6      △ 20     △ 20
訂正仕訳の計上に
 伴う原価差額の
 配賦の再計算        21    10.8%          3       7        0       14     △3
訂正仕訳の計上に
 伴う棚卸資産
未実現の再計算      △ 18    -9.3%          7     △9         3        5    △ 24
訂正仕訳の計上に
伴う税金税効果の
   再計算         80    41.2%         75   △ 149      △1       153       2

   その他
              △6     -3.1%          8    △ 15     △ 10        6       5

影響額合計(A)
              194   100.0%        266   △ 391    △ 133      463    △ 12




④ 不適切開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等
   当社は、リーマンショック後において、大規模なリストラによる人員削減を余儀な
  くされ、各部門において必要なスキルを有する人員が削減の対象となったことから、
  業務の適正な配分が可能となるだけの人員が不足し、特定の従業員に業務権限・業務
  負荷が集中していったことで目の前の業務処理に追われる状況に置かれることにな
  りました。また、専門性をもった人材を削減したことにより、業務遂行を過去の踏襲
  に頼ることで業務内容に疑問を持たず遂行していた状況でもありました。
   このような環境のなかで、担当者は、原価計算関係の業務に携わるようになった時
  点で、既に存在していた不明瞭・不適切な過去からの会計データを前提に、担当業務
  を進めていこうとする中で不適切な会計処理に及んだものであり、自ら又は第三者
  の利益を得るために本件不適切な会計処理に及んだものではなく、当社の損益の操
  作、調整を企図して本件不適切な会計処理に及んだものでもありません。しかし、不
  適切な会計処理は、複数の類型に及び、かつ長年に渡って継続してきたにも関わらず、
  それらが発覚し、是正されることもなかったことから当社の組織的なリスク管理体
  制ないし管理監督機能にも問題があったと認識しております。

                                   9
 ⑤ 特別調査委員会より不適切開示の原因となった行為への指摘を受けた関与者の状況


  ⅰ)当社経営者が不適切な会計処理や不正を指示した事実は認められておりません。
    しかし、前代表取締役社長に関しては、2020 年 3 月期決算の際、約 500 百万円の
    滞留している仕掛品の存在について報告を受けていたにもかかわらず、会計監査
    人に報告しなかったこと、2021 年 3 月期において、 872 百万円の
                                約        「実体のない」
    仕掛品の存在について報告を受けていたにもかかわらず、会計監査人に報告せず、
    また、これを反映するか否かの検討を行わないまま、2021 年 3 月期第 3 四半期報
    告書を財務局に提出したこと、及び、通期への影響を検討せずに安易に売上原価で
    の費用処理を進めたことは不適切な対応でありました。


  ⅱ)元企画管理課長については、原価計算を適正に行っていくためには、G2 システム
    内の問題があると疑われるデータの検証や、その発生原因の究明、現場の運用方法
    の改善、適正な数値の算定及び訂正といった、多大な労力を要する業務の実施が必
    要でありましたが、各部門において、従来からの慣習を重視して、目の前の自部門
    の業務を回していくことに注力して業務処理がなされる中で、原価計算について
    も長年の業務の中で当社独自の複雑なルールが形成されていたことから、それら
    G2 システムの問題を踏まえた原価計算処理を行うには、一般的な原価計算のため
    の会計・経理の知見だけではなく、当社独自の運用にも精通していなければなりま
    せんでした。
    当社において原価計算に関する業務は、専門性の高い業務として、上席役職者にも
    十分な理解がなされておらず、企画管理課の担当者に任せきりにされている状況
    にありました。


2.改善措置


(1)不適切開示の発生原因の分析
  担当者による不適切な会計処理を長年にわたり把握できず、是正できなかったことは、
 経営陣の責任であります。事業環境が悪化する中で、人員不足等により現場の牽制機能が
 形骸化し、経営陣も含めた当事者意識の欠如などにより、監督・監視機能も十分に機能し
 なかったことが不適切開示につながった原因と考えております。
  具体的には、以下の事項への対応が不十分であったことが原因と考えております。


 ① 組織体制の問題



                      10
ⅰ)担当部署における特定担当者への業務負荷の集中及び不適切な決裁権限の付与等
   当社においては、リーマンショック後の業績の落ち込みが著しく、大規模なリス
 トラによる人員削減を余儀なくされました。人員削減により、各部門において必要
 なスキルを有する人員も削減対象となったことから、業務の適正な配分が可能と
 なるだけの人材が不足し、特定の従業員に業務権限、業務負荷が集中しておりまし
 た。
   今回、不適切な会計処理を行った担当者も原価関係の業務を十分に熟達する前
 の段階から業務を一手に引き受けざるを得ない状況に置かれており、G2システム
 移行後においては、G2システムの改修についての社内窓口の担当にもなっており
 ました。適切な原価計算が行われないことや、G2システムにおいて対処できない
 原価処理を手作業で行うこと等、過大な業務負荷が生じており、結果として、専門
 性の高い、複雑な業務について、担当者一人に過大に業務が集中するような状況を
 生じさせ、適切な業務対応を行う余力や、現場での相互チェックがなされる機会を
 失わせしめ、本件の不適切な会計処理を生じさせる原因の一つとなったと考えて
 おります。
   また、原価計算の業務については、企画管理部から財務部へ部署が移管された後、
 原価計算を理解している上席者が不在となり、企画管理課長(当該担当者)が課長
 権限で決裁できるものと認識したことによる個人決裁が常態化しており、上席者
 による決裁フローが存在せず、適切な業務遂行を担保し、不正を組織的に防止する
 ための複層的なチェック体制が欠如している状況にありました。このことが不適
 切な会計処理を可能にし、助長した大きな原因となったと考えております。


ⅱ)管理部門における企画管理課業務の理解・情報共有の不足等
   当社における原価計算は、当社独自のルールやシステムの仕組み等、非常に複雑
 であり、当社内においては、経験を積んだ企画管理課員以外に原価計算を十分に理
 解している者は存在しない状況にありました。前記のとおり、業務処理にあたって
 特定の担当者に属人的に依拠する状況にあったことに加え、新卒採用での管理部
 門要員を十分に確保しておらず、中途採用で職種別に人員不足を補ってきたこと
 から、部門をまたぐ人事異動が少ないといった事情等があり、他の従業員に企画管
 理課の業務に対する理解が不足しており、原価計算処理の業務については、企画管
 理課長である当該担当者に一任されている状況にありました。
   また、現在、財務部に所属している企画管理課は、以前、企画管理部に所属して
 おり、財務部への統合後は、他の財務部の管理職ですら、企画管理課の行う原価計
 算処理の業務については全く分からないとして、企画管理課長に対応を任せきり
 にしていたことなどの組織的な問題も相まって、長期に渡り行われていた不適切
 な会計処理が発覚することがなかったと考えております。

                 11
ⅲ)内部監査部門の権限・位置づけが不明確、抑止機能が不十分及び業務の理解不足、
  内部通報制度の未浸透等
   当社においては、内部監査室が設置されてはいるものの、本件の不適切な会計処
  理に至る経緯において、関連する事情を把握し、それに踏み込んで是正措置を勧告
  するといった、不適切な会計処理の抑止に繋がるような動きはできておりません
  でした。
   これは、当社における内部監査室の権限や役割が、社内においても十分に理解さ
  れていないことや、内部監査室の業務が、特定の役員らによる指示に依拠してなさ
  れるなど、内部監査計画が計画どおりに実施されなかったことが原因であり、内部
  監査部門が十分な抑止機能を発揮できませんでした。
   さらに、企画管理課の原価計算処理業務への理解不足は、内部監査室においても
  同様であり、そのために、原価計算における課題を適切に把握し、監査の対象とし
  ていくことができず、監査による抑止ができておりませんでした。
   一方で、原価計算処理業務に明るくない者の中でも、不適切な会計処理に気づい
  ていた者がいた可能性もありますが、当社においては、社内通報規程に基づき、内
  部監査室及び外部の弁護士を通報窓口として、内部通報窓口が設置され、案内ポス
  ターや研修により、その周知をしていたものの、利用実績は、直近の過去 5 年間
  で 2 件の通報しかなく、内部通報窓口が十分に機能していたものとはいえません。
  このことも不適切な会計処理の発覚を遅らせた要因の1つと考えております。


ⅳ)経営陣における専門性の欠如と対応策の不足
   原価計算に関する業務への理解不足は経営陣においても同様でありました。金
  融機関出身者だけでなく、当社のプロパー従業員から役員となった者であっても、
  原価計算に関しては担当部署の業務経験者以外は十分な理解ができておりません
  でした。そして、原価計算について精通している者が特定の担当者のみに限られて
  いる状況を認識しながら、経営課題としてその改善(専門的知見を有する者を採用
  する、その業務をこなす能力のある人材を配置し経験を積ませるなど)を図ること
  をしておりませんでした。
   また、原価計算に関する必要な事項について、企画管理課の担当者らに対して適
  切に説明を求め、その理解に努める、又は企画管理課を所管する財務部の管理職そ
  の他の従業員らに対して、原価計算に関する業務を理解するよう適宜指示を出し、
  対応を求めるといったことも十分には行っておりませんでした。
   その結果として、取締役会においても、原価計算及びそれに係る業務の状況につ
  いて、適切な経営判断及び業務監督の基礎とするに足るだけの十分な情報が共有
  されなかったと考えております。

                    12
    そのために、経営陣により、原価計算に関する業務課題の把握及び対応策の指示
   がなされることはなく、本件の不適切な会計処理に繋がったものと考えます。


② G2 システムの複雑性


 ⅰ)「仕掛品」管理の観点で煩雑なシステム(実在性確認が困難)
    G2 システムは、一般的なパッケージシステムに旧システムにおける運用を踏襲
   できるように、独自に原価計算モジュールを組み込んだシステムですが、以下のよ
   うな点において、仕様が複雑かつ仕掛品の管理が適切に行われない状況となって
   いました。


   ・G2 システムは仕掛品在庫のレポートを出力することが可能であるが、当該レポ
    ートだけでは正しい在庫数量が把握できない仕組みであり、直接、実地棚卸のデ
    ータとしての利用ができないこと

   ・一部の仕掛品について、数量のデータを保持していないこと(金額のデータしか
    保持していないこと)

   ・材料・部品を当初予定した製品ではない他の製品に利用する場合は、振替処理を
    行う必要があるものの、一部の振替処理はシステムによる振替処理ができない
    ため手作業で行う必要があること



    このような状況から、当社では製品毎の仕掛品在庫の合計金額は把握できます
   が、数量については把握ができない状況となっており、実地棚卸において棚卸差異
   が生じた場合であっても、その差異は金額ベースでの把握になるため、その後の詳
   細調査には非常に労力が必要であったこと、さらには G2 システムの仕様が複雑
   であったことにより、当社内でも数名しか仕掛品の管理について仕組み等を理解
   しておらず、棚卸差異を把握しても詳細な分析をすることが困難でした。
    その結果、企画管理課の担当者に棚卸差異の分析を一任し、その分析結果につい
   ても検証を行うことが困難であったため、当該結果を踏まえて費用処理等の判断
   を行わざるを得ない状況となっていました。


③ コンプライアンス意識の欠如


 ⅰ)関係部門(企画管理課、管理本部)におけるコンプライアンス意識の欠如
    上述のとおり、当社においては、リーマンショック後の業績の落ち込みが著しく、
   大規模なリストラによる人員削減を余儀なくされました。人員削減により、各部門
                   13
  において必要なスキルを有する人員も削減対象となったことから、業務の適正な
  配分が可能となるだけの人材が不足し、特定の従業員に業務権限、業務負荷が集中
  しておりました。そのため、本来であれば、関連する部門間では必要な情報を連携
  し、また必要に応じて部門間で協力して業務に従事することが求められるところ、
  当社では、ただ目の前の業務を何とかこなしていけばよいという風潮が広まって
  おりました。特に企画管理課においては、多忙であることを理由に、外形上、適正
  な処理がなされていれば良いとの誤った意識の下、仕掛品の過大計上や会計監査
  人に対する虚偽の資料の提出等の不適切な行為が行われ、その結果が、不適切な会
  計処理に繋がったものと考えております。


ⅱ)経営陣のコンプライアンス意識の欠如
   企画管理課、管理部門及び内部監査部門における問題点については、当社におけ
 る長年の慣習及び業務上の運用並びにそれらにより醸成される従業員の意識によ
 る部分が大きく、これらを打破するには、経営陣がリーダーシップを発揮して、粘
 り強く取組みを継続していくことが不可欠であったと考えております。そのよう
 な意味では、上述の組織体制上の諸問題については、経営陣の積極的かつ実効的な
 関与がなされなかったからこそ生じてしまったものであり、経営陣自身のコンプ
 ライアンス意識の欠如が、不適切な会計処理の最も重大な原因の一つと考えてお
 ります。
   現に、当社の役員及び従業員らの間では、仕掛品在庫について不明確な点がある
 のではないかという疑いが、具体的な根拠までは明らかではないままに、一定程度
 共有されておりました。また、旧システムの時代から、社外取締役からも、仕掛品
 在庫について調査を要するのではないかといった意見が出されることもあり、今
 回の不適切な会計処理の抑止に繋がるような調査を実施し、対応策を講じるため
 の端緒は十分に存在していましたが、経営陣の中には仕掛品在庫の管理について
 正確に把握している者がいなかったため、主体的に調査を行うには至らず、企画管
 理課に一任してしまいました。
   また、当社は、G2 システム移行後の諸問題の解決のために外部の専門家と契約
 し、社外取締役として会計、法務及び経営に関する高度な知見を有する方を選任す
 るなど、社内の従業員だけでは対処できない課題への対応を図るための体制をも
 整えておりました。それにもかかわらず、実効性のある調査や、それに基づく措置
 を実施することなく、原価計算及び仕掛品在庫に関する曖昧な問題認識を、システ
 ム移行後の様々な経営課題を一つずつ解決して行く中で、先送りしてしまい、曖昧
 なままに放置してしまっておりました。何より、経営陣においては、投資家や会計
 監査人等への情報開示を含め、全社を統括して社内外を問わず適正な情報の管理
 及び共有に努めていかなければならないことからしても、これらの原因、要因につ

                  14
    いて有効な対応策を講じるべく、本来は仕掛品在庫の調査は経営課題の優先順位
    を上げて解決に取り組むべきものであるところ、目の前の経営課題の解決に注力
    するあまり、問題点をそのままにしてしまったことについて、その責任は重いもの
    と理解しております。


(2)再発防止に向けた改善措置(実施済みのものも含む。)


 ① 組織体制の問題への対応


   ⅰ)原価計算担当部署の業務、権限の見直し及び体制の強化(2.(1) ①ⅰ)に対応)


      不適切な決裁権限への対応として、原価計算担当部署の業務及び権限を適正
     に見直し、加えてチェック体制の再構築を図ります。
      具体的には、上席者の業務の理解と複層的なチェック体制を強化した業務フ
     ローを確立するため、2021 年 11 月 10 日付で企画管理課統括責任者を設置する
     ことを経営会議にて決定し、財務部副部長をこれに任命しました。
      企画管理課統括責任者の役割は実務に時間を取られる企画管理課長に代わり
     企画管理課の業務を統括、マネジメントすることであり、同副部長はりそな銀
     行において十分な会計知識とマネジメントの業務経験を有していることから、
     当社の原価計算の複雑性について、早期に習得し統括できる素地のある人材と
     考えており、企画管理課の統括責任者として適任であると考えております。
      また、原価計算業務の更なる強化のため、2022 年 3 月末までに、製造業にお
     いて原価計算に係る業務の経験を有する原価計算担当の責任者及び担当者を採
     用いたします。
      今後、取締役会及び経営会議に対する原価計算の報告資料や四半期決算時に
     会計監査人に提出する原価計算資料は、原価計算担当者が作成した資料を同責
     任者が確認し、提出等の承認を得ることとし、同責任者による承認を得て提出
     した資料であることを容易に把握できるように、紙面で資料を提出する場合に
     は提出資料の先頭ページに原価計算担当者及び同責任者の押印を行うことを必
     須とし、データで資料を提出する場合には必ず同責任者が資料の提出を行う業
     務フローに変更いたしました。
      これまで原価計算担当者以外は、原価計算について正確な理解が乏しかった
     ことが不適切な会計処理の発生した一因にあります。そのため、取締役会、経
     営会議、会計監査人等から原価計算関連の説明を求められた場合には、必ず、
     同責任者が説明者として求められた質問に対する回答を行うようにいたします。
      これらの施策を講じることにより、企画管理課における原価管理業務が属人

                      15
  的に行われることを防止し、必ず複層的な確認が行われる体制といたします。
   また、特定の担当者への業務の負担を軽減するために、マルテック株式会社
  と 2021 年 10 月 1 日付で契約し、企画管理課専属会計士として坂上会計士の派
  遣を受けて複雑化した業務フローを精査し、2022 年 9 月までに財務部内の他の
  社員でも業務可能なフローに改善します。具体的には、①原価計算の規程の整
  備を 2021 年 12 月までに完了し、②2022 年1月より同規程にのっとった月次
  原価計算の運用を開始いたします。③同年3月下旬から5月上旬においては、
  年次決算における原価計算を同規程にのっとって実施いたします。④また、内
  部監査室による同規程の整備状況の評価(同年1月予定)
                           、月次原価計算及び年
  次決算における原価計算の運用評価を随時実施し、同年9月までに自社の人員
  で適切な原価計算業務が運用できるようにいたします(①~④はマルテック株
  式会社の協力を得て 6 月末までに完了し、7 月以降 9 月までの期間に自社で運
  用を完結できる体制を構築します。。
                  )
   企画管理課は 2021 年 3 月末時点では 4 名体制でしたが、現在、企画管理課
  統括責任者を含め、5 名体制(統括責任者 1 名、課長 1 名、課長代理 1 名、課
  員 2 名)となっております。上述のとおり、さらに製造業において原価計算業
  務の経験を有する原価計算担当の責任者及び担当者を 2022 年 3 月までに採用
  することによって、体制の充実を図ります。


ⅱ)管理部門における企画管理課業務の理解・情報共有の不足等への対応(2.(1)
 ①ⅱ)に対応)


   上記、業務フローの改善によって、原価計算業務が、財務部内の他の社員で
  も業務可能なフローに改善する予定です。改修後は財務部内で業務フローの共
  有を図ります。
   また、注文のキャンセル情報の報告が適切に行われなかったことや余剰とな
  った材料を利用して製品を製造する際のシステム登録の失念等が、結果として
  原価計算の誤りに繋がる点を踏まえ、関連部門である営業部門、設計部門、生
  産部門に対しても原価計算に係る業務フローの共有を図ることにより、原価計
  算の上流に位置する各部門が原価計算の業務フローを意識するようになり、処
  理誤りや報告遅延等の防止に繋がるものと考えております。


ⅲ)内部監査部門も含めた管理部門による監視監督機能の強化、内部統制に関する体
  制の見直し(2.(1)①ⅲ)に対応)
   当社では、内部統制に係る構築を行う部署として業務管理部を設けています
  が、過去の慣例より内部監査室が内部統制の構築、評価の実務及び結果の監査に

                   16
至るまでの業務を行ってきたとの理由から内部監査室と業務管理部との業務の
線引きが曖昧であり、従業員にとっても内部監査室と業務管理部の違いが分か
りづらい状況になっていました。また、構築から結果の監査まで一つの部署で行
ってきていたことから監視監督機能が不十分な状況でした。そのため、構築、評
価の実務、結果の監査という 3 つの職務について、内部監査室と業務管理部の職
務分掌を見直し、業務管理部は業務プロセスの構築及び整備・運用評価を担い、
内部監査室は独立的監査を担うこととし、両部門の位置づけを明確化しました。
 また、企画管理課の原価計算処理業務への理解不足から十分な監査が実施で
きていなかったことを踏まえ、内部監査室員の業務の知見を深めるためにコン
サルティング契約を締結しておりますマルテック株式会社の石原会計士(石原
公認会計士事務所)、丸井会計士(丸井会計事務所)を講師とし、原価計算業務・
会計業務について本件事案の内容も踏まえ、深度ある内部監査ができる業務の
習得のために、2021 年 12 月より 2022 年 3 月まで、原則として週 1 回の教育を
実施します(2022 年 4 月以降も状況に応じ四半期に 1 回程度継続してまいりま
す。。
  )
 さらに、内部監査室は、マルテック株式会社の会計士の補助を受けて、2022 年
3 月末までに資産・在庫管理(仕掛残)について監査を行い、その結果は監査等
委員会に報告されます。
 また、内部監査室は、組織図上では監査等委員会直属の組織でありながら、取
締役社長からも指示を受けて内部監査を実施し、その結果を報告するといった
運用が常態化しており、内部監査室に対する指示系統が曖昧な状況となってい
ました。
 当該状況の改善のため、内部監査室が監査等委員会の指揮命令下で活動する
ことを明確にしました。さらに社内で問題等が発生した場合、内部監査室はコン
プライアンス室(法務部門)と協同して対応するなど業務が重複することが多い
ことから、コンプライアンス室も監査等委員会の直属とし、両室において、当社
におけるリスク情報の共有が積極的に実施され、監査機能及びコンプライアン
ス機能が強化されるよう努めてまいります。
 さらに、通報窓口が十分に機能していなかったことへの対応として、これまで
内部監査室が管轄している社内ヘルプライン、外部弁護士により社外ヘルプラ
イン、また、総務人事部が管轄している人事に関する内容の相談窓口、コンプラ
イアンス室が管轄するハラスメント関連の通報窓口と事実上 4 つある内部通報
の窓口を設置していたところ、新たな内部通報制度として通報窓口を社内ヘル
プライン、社外ヘルプラインに集約し、通報制度とは別に、人事に関する相談内
容に特化した相談窓口のみ存続させることにいたしました。また内部通報とい
う響きにより相談がしづらいとの意見があった社内ヘルプラインについては、

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 呼び名をサポートライン(仮名)へ変更し、通報があった場合は内部監査室で受
 けて対応等の検討を行うことになりますが、通報内容によってはコンプライア
 ンス室にも協力を求め、対応を行います。また、受付する内容を相談窓口ごとに
 具体的に例示することで、どのような内容をどの窓口に相談すれば良いかを従
 業員全員へのメール及び掲示している案内に記載し、社外窓口の弁護士の連絡
 先を含め社内に周知し、相談しやすい環境を作ります。


ⅳ)経営陣を含めた管理職及び担当者の原価計算に関する業務及び会計知識の向上
 (2.(1)①ⅳ)に対応)
  経営陣を含めた管理職及び企画管理課担当者の原価計算に関する業務知識及
 び会計知識の向上の機会を設け、徹底します。業務都合により参加できなかった
 者については、研修資料を使った自習を行い、講師による習得状況の確認を行う
 ことでフォローしていきます。
  会計士による勉強会は、原価計算に関するものは、経営陣及び全部門から選任
 した管理職を対象に 2021 年 11 月 19 日から 4 回(各 2 時間)開催し、会計知識
 の習得に関するものは、経営陣及び全部門から選任した管理職及び一部一般社
 員を対象に同年 12 月 8 日を第 1 回目とし、2022 年 4 月 11 日まで原則週1回、
 合計 18 回実施します(2022 年 5 月以降は、担当部署に応じた業務別の更なる
 会計知識の習得を目指した研修を四半期に 1 回程度継続していく予定でおりま
 す。。今回の特別調査委員会報告書の理解を深め、原価計算に関する業務・会計
   )
 知識を習得することで、原価計算に関する基本及び原価計算に関する当社の業
 務フローを理解し、誤った事務手続きをチェックできる知識の習得を目指して
 いきます。


ⅴ)経営者による監視監督組織の構築
  社長を委員長とする「改善・再発防止特別委員会」を設置し、経営者が監視監
 督できる組織を構築します。
  当社は、社長を委員長とする「改善・再発防止特別委員会」を 2021 年 10 月
 20 日に設置し、各部門からの本件事案の対応についての定例報告、当社契約の
 公認会計士との本件事案への対応について毎月 2 回のミーティングを実施し、
 原価管理業務のモニタリングと課題解決に向けた積極的な関与を行います。
  これまでに、2021 年 10 月 20 日、 月 12 日、 月 26 日の合計 3 回開催し、
                         11      11
 第 1 回は、今後の活動内容について協議、第 2 回は、研修内容及び実施計画に
 ついて協議、 3 回は、
       第     再発防止策の検討及び実施スケジュール等の検討等を行
 っております。
  また、これまでも組織体制上の問題については経営会議(原則月 2 回開催、社

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    内取締役及び執行役員が出席)において報告を受け、主管部門に対応を依頼して
    いましたが、その後の対応状況までは適切に把握できていないなど、組織体制上
    の問題が、いわゆる「現場任せ」の状況となっていました。
    今後は、経営会議において報告を受けた問題は主管部門に対応を依頼するとと
    もに、経営会議の議事録の末尾に記録し、以後の対応状況は経営企画室が確認し、
    その進捗状況を経営会議において報告する体制といたします。


    ■委員会メンバー
     社長、管理本部長、統轄本部長、営業本部長、営業本部副本部長、技術本部副
     本部長、情報システム部長、総務人事部長、物流部長、財務部長、財務部副部
     長(企画管理課統括責任者)、内部監査室長、社長室長
     オブザーバー:常勤監査等委員

      同委員会は業務執行取締役及び部門長によって構成される委員会であるた
      め常勤監査等委員は同委員会の委員ではありませんが、情報共有のためオ
      ブザーバーとして参加します。また事務局は業務管理部が務めます。


② G2システムの複雑性への対応


 ⅰ)仕掛品及び原価計算に関するシステムの改修(2.(1)②ⅰ)に対応)
    仕掛品及び原価計算に関するシステムの改修を原価計算の主管部署である企画
   管理課、財務部及び情報システム部と前述の石原会計士、丸井会計士とで 22 年 3
   月末までに短期的な対処として以下のシステム改修を行い、2~3 年の長期的には
   次期基幹システムの導入を検討します。
    システムの改修につきましては、以下のとおりです。


    特別調査委員会調査報告書「3 G2 システム移行後に生じたシステム上の問題
   ⑶ MK、MY のキャンセルによる MC への原価の移行処理の不全」に記載のとお
   り、G2 システムでは、製品のキャンセル情報が原価計算に適切に反映されないた
   め、企画管理課において手入力で振替処理を行う必要がありました。当該状況を改
   善するため、キャンセル情報を入力した際に自動で原価の振替処理等が行われる
   ようにシステムの改修を行います。
    なお、上述のシステムの運用開始には 4 か月程度要する見込みであるため、それ
   までの間は、原価計算に関する運用の改善及び統制の強化を図ります。具体的には、
   キャンセル情報入力時の報告ルールの徹底により、キャンセル時の原価振替処理
   が確実に実施されるようにいたします。また、決算訂正の監査に実施した実地棚卸
   による在庫データと帳簿上の在庫データの差異を分析することによって処理漏れ
                    19
   を検出する等、代替的手段による管理を継続して行います。


 ⅱ)G 2 システムマニュアル等の整備と業務の標準化(2.(1)②ⅰ)に対応)
    原価計算担当部門(企画管理課)が月次の原価計算処理を行う上で必要な業務を
   洗い出し 49 項目の処理業務に細分化しました。それぞれの処理業務について、原
   価計算担当部門のそれぞれの担当者がG2システムを前提として適切に業務を遂
   行するための手順書・マニュアルを 2021 年 12 月までに作成、マルテック株式会
   社の石原会計士、丸井会計士、坂上会計士のレビューを受けます。
    当該業務の整理により、部門全体の業務の可視化を図り、各人の業務の偏りを防
   止し、業務過多を理由に処理が漏れることを防ぐ狙いがあります。
    そもそも、原価計算に関する不適切な会計処理が行われた主な原因は、当該部門
   の担当者が単独で原価計算に必要な数値を作成し、財務報告数値としていたため
   です。
    前述の手順書・マニュアルを作成することで、業務を見直し、担当者単独で業務
   処理を完結できないようにプロセスを変更します。具体的には、当該部門の他の担
   当者や上席者が再計算やレビュー・承認を行うことを追加します。その際も当該手
   順書・マニュアルを参照します。また、担当者が異動する場合の新入担当者の教育
   にも活用します。さらに、内部監査部門が実施する監査の前提にもなります。また、
   このマニュアルは定期的に見直します。


③ コンプライアンス意識の欠如への対応


ⅰ)コンプライアンス意識の醸成(2.(1)③ⅰ)
                       、ⅱ)に対応)
    当社の問題点に即した研修・教育の継続的な実施によるコンプライアンス意識
   の醸成を図ります。
    従来のコンプライアンス研修については、2017 年 3 月期下期より、コンプライ
   アンス室により、全職員に対し半期に 1 回実施しており、内容についてはハラスメ
   ント全般について具体的事例に基づく内容、下請法における禁止事項の具体的事
   例の説明、社内で発生した情報漏洩事案(未遂を含む)の問題点を中心に実施して
   いました。
       2017 年 3 月期下期の第1回目と 2018 年 3 月期上期の第2回目までは、
   コンプライアンス全般についての内容で研修を実施しておりましたが、2018 年 3
   月期下期の第3回目以降は先に述べた内容となっておりました。経営陣に対する
   研修は、ハラスメントに関する内容で年 1 回の実施に留まっていました。
    ハラスメントに関する事案は減少しており効果は出てきているものの、本件に
   て問題と認識しておりますコンプライアンス意識についての根本的な対応が不十
   分であり、且つ、経営陣に対する研修が実施できていなかったことが問題であった

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  と認識しております。
   今回、顧問弁護士による経営陣及び部長以上を対象としたコンプライアンス研
  修を隔月で 4 回開催(第 1 回は 2021 年 12 月 14 日に開催予定)し、経営者、管理
  職として遵守すべきこと等と従来から改善が必要と感じていた業務について顧問
  弁護士と研修受講者で洗い出し、法令遵守の徹底を図ります。本研修については、
  ビデオにより全社員に視聴させます。
   また、従来のコンプライアンス研修の内容に加え、今回の顧問弁護士による研修
  をもとに、課長以下一般社員向けの研修をコンプライアンス室にて 2 回に集約し
  2022 年 3 月期下期と 2023 年 3 月期上期に実施します。さらに、研修と併せて、
  全社員のアンケートを実施し、全社員のコンプライアンス意識の確認と、不足して
  いる部分について、顧問弁護士と連携し研修内容の充実を図ってまいります。


ⅱ)会計監査人との連携強化
   会計監査人との連携については、これまでは四半期に1度、当社の経営環境、事
  業活動などについて経営者ディスカッションとの名称の情報交換会を行っており
  ましたが、頻度が不十分であり、その内容についても形骸化していたと考えます。
  今回の事案においては、会計監査人との連携が不十分であったことが問題の大き
  な要因と捉え、監査期間中は週に1度、それ以外は月に1度の頻度で常勤監査等委
  員を中心に経営者ディスカッションを行います。当社は 2021 年 11 月 10 日に開催
  した臨時株主総会において監査法人やまぶきを新たな会計監査人に選任いたしま
  した。今後は監査法人やまぶきとの連携を強化し、会計処理で不案内な点が生じた
  場合等に相談しやすい関係を築いてまいります。


ⅲ)定期的なジョブローテーションの実施(2.(1)①ⅱ)に対応)
   当社では人員不足を主に中途採用者で補っておりますが、職種別に採用するこ
  とから人事異動が困難な要因となっております。今後は、新卒採用者を中心に各部
  門での人員を増強し、人材育成の制度として部門内、部門間で定期的なジョブロー
  テーションが可能な環境を作り、業務の属人化の障害を取り除くよう進めていき
  ます。なお、各従業員について所属部門での滞留年数や新卒採用者の配属予定等を
  踏まえ、毎年 7 月にジョブローテーションを検討いたします。


ⅳ)改善・再発防止特別委員会によるモニタリング
   社長を委員長とする「改善・再発防止特別委員会」を定期的に開催し、各部門に
  おいて本件事案を教訓に実施するコンプライアンス意識の欠如に対する各施策の
  実施状況や原価管理業務を継続的にモニタリングし、改善、再発防止策の徹底を図
  ってまいります。

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④ 適時開示の遅延を生じさせたことに対する改善策
   当社は、2021 年 8 月 13 日に「会計監査人の異動に関するお知らせ」で開示しました
 とおり、2020 年 9 月 17 日に当時の会計監査人である EY 新日本より、2021 年3月期
 の会計監査業務終了の時をもって、会計監査人を退任する旨の通知を受けていたにも
 関わらず、適時開示を怠り、1 年近く経過した後に開示するという事態を起こしてしま
 いました。
   これは、当社が適時開示の時期について誤った認識を持っていたことが原因であり
 ます。
   当社は、重要な決定事実については、原則として毎月 1 回開催する取締役会において
 決定するほか、必要に応じて臨時取締役会を開催することにより迅速な決定を行って
 おり、取締役会で決定された重要事項は、開示の要否を総務人事部が中心となって検討
 し、開示が必要な場合には、迅速に行うよう努めてまいりましたが、今回、当該検討が
 不十分であったことによって開示の遅延を生じさせてしまいました。今後は、取締役会
 の議案ごとに東京証券取引所の適時開示ガイドブックを確認し、開示の要否を総務人
 事部にて検討するように努めます。
   取締役会には、監査等委員として公認会計士及び弁護士が出席しておりますので、適
 宜、開示についてはアドバイスを受け、正確かつ公平な会社惰報を開示することに努め
 てまいります。
   また、発生事実についても適時開示情報となる可能性が生じた時点で、所管部門が直
 ちに総務人事部に報告することといたします。各部門が総務人事部に報告すべき情報
 については、総務人事部がガイドラインを作成し、役職者以上に周知し、社内における
 情報収集と適時適切な開示を行う体制を整備いたします。
   なお、8 月に開示遅延を発生させたことを踏まえ、当社の適時開示業務の担当者(総
 務人事部長、総務課長、担当者 1 名の合計 3 名)を、東京証券取引所の開催する適時開
 示セミナーにも参加させております。




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(3)改善措置の実施スケジュール




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3.経営責任等の明確化について


   前述の改善措置の実施に先立ち、本件不適切な会計処理を長年に渡って発見できず、
  是正に至らなかったことで、結果的に過去の決算の訂正を招いた問題に関する経営責
  任を重く受け止め、以下のとおり、役員の退任、報酬の一部自主返上を実施することと
  いたしました。


(役職は、臨時株主総会開催前のもの)


・取締役社長           11 月 10 日開催の臨時株主総会を持って退任
・取締役常勤監査等委員      11 月 10 日開催の臨時株主総会を持って退任
・相談役(前代表取締役社長) 11 月 10 日付で退任
・代表取締役常務執行役員(生産本部長兼技術本部長) 月額報酬(株式報酬を除く)
                               50%×3 ヶ月を自主返上
・代表取締役上席執行役員(管理本部長)            月額報酬(株式報酬を除く)
                               50%×3 ヶ月を自主返上




4.不適切な情報開示等が投資家及び証券市場に与えた影響についての認識


   当社は、この度、不適切な会計処理を行った結果、過年度決算短信等を訂正すること
  となり、株主、投資家の皆様をはじめ、関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお
  掛けしましたことを心より深くお詫び申し上げます。
   今後このようなことを二度と起こさないよう、改善措置に記載しました内容につき
  まして、経営陣をはじめ全従業員で確実に実行し、上場会社としての信頼の回復に努め
  てまいります。




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