6178 日本郵政 2020-03-26 16:30:00
「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」からの報告について [pdf]
2020 年 3 月 26 日
各 位
会 社 名 日 本 郵 政 株 式 会 社
代表者名 代 表 執 行 役 社 長 増田 寬也
(コード番号:6178 東証第一部)
問合せ先 IR室(T E L . 0 3 - 3 4 7 7 - 0 2 0 6 )
「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」からの報告について
日本郵政株式会社(東京都千代田区、代表執行役社長 増田寬也)は、日本郵
便株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長兼執行役員社長 衣川和秀)およ
び株式会社かんぽ生命保険(東京都千代田区、代表執行役社長 千田哲也)とと
もに、
「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会(委員長:伊藤鉄男弁護士)
」
から調査報告書を受領いたしましたので、公表します。
以上
日本郵政株式会社 御中
日本郵便株式会社 御中
株式会社かんぽ生命保険 御中
追加報告書
2020 年 3 月 26 日
かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会
委 員 長 弁護士 伊藤 鉄男
委 員 弁護士 寺 𦚰 一峰
委 員 弁護士 早川 真崇
目次
はじめに .......................................................................... 1
第 1 編 追加調査の概要............................................................. 2
第 1 追加調査の経緯 2
第 2 当委員会の体制 2
第 3 追加調査の目的及び対象 3
第 4 追加調査の方法 3
1 ヒアリングの実施 3
2 募集人ヒアリング 4
3 関係資料の精査・分析 4
4 デジタル・フォレンジック調査 4
第 2 編 契約調査の範囲・方法等に関する検証及び調査結果.............................. 6
第 1 契約調査の内容及び方法 6
1 全契約調査 6
2 特定事案調査 8
第 2 範囲及び方法等の妥当性 11
1 全契約調査 11
2 特定事案調査 12
第 3 契約調査の結果 13
1 全契約調査 13
2 特定事案調査 14
第 3 編 特定事案調査結果の分析 .................................................... 15
第 1 分析の対象及び方法等 15
第 2 分析結果 17
1 「違反疑い事案」の数は、5 年平均で 2,679 件(5 年平均の新規契約件数の約 0.13%)で
あること 17
2 全募集人のうち、
「違反疑い事案」に関与した募集人の割合は、5 年平均で約 3.1%であ
ること 18
3 「違反疑い事案」を受理した郵便局数は、全体の約 14.5%であること 19
4 「違反疑い事案」 万 3,396 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割合
(1
は、 85.5% 万 1,456 件)
約 (1 であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、
約 14.5%(1,940 件)であること 20
5 「違反疑い事案」 万 3,396 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与し
(1
た件数の割合は、約 25.7%(3,442 件)であること 23
i
6 「違反疑い事案」に関与した同一の募集人の関与件数は、少ない者は 1 件(5,972 人)
で、多い者は 47 件(1 人)であるところ、関与件数が 1 件から 3 件の募集人が 9 割近く
を占め、4 件及び 5 件の募集人を加えると約 94%を占めていること 25
7 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の 1 人当たりの加入件数は、1 件から 14 件
にわたっているところ、1 件の顧客が約 95.1%、2 件の顧客が約 3.8%であり、この合
計で約 98.9%を占めていること 26
8 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の加入年代は、 代から 90 代にわたってい
10
るところ、最も多いのが 60 代(約 32.8%)であり、60 代、70 代(約 25.9%)
、80 代
(約 6.1%) 代(約 0.1%)の合計が 6 割以上を占めていること
、90 27
9 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の性別は、女性が約 83.5%、男性が約 16.5%
であること 28
第 4 編 特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果の分析............................... 29
第 1 分析の対象及び方法等 29
第 2 分析結果 31
1 全募集人のうち、不祥事件 不祥事故事案に関与した募集人の割合は、 年平均で約 0.5%
・ 5
であること 31
2 不祥事件・不祥事故事案を受理した郵便局数は、全体の約 4.4%であること 32
3 不祥事件・不祥事故事案(2,206 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割
合は、約 91.7%(2,024 件)であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、
約 8.3%(182 件)であること 33
4 不祥事件・不祥事故事案(2,206 件)のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与
した件数の割合は、約 21.5%(474 件)であること 36
5 不祥事件 不祥事故事案である契約に加入した顧客の加入年代は、 代から 90 代にわた
・ 10
っているところ、最も多いのが 60 代(約 35.2%)であり、60 代、70 代(約 24.1%)
、
80 代(約 5.5%) 代(約 0.0%)の合計が 6 割以上を占めていること
、90 37
第 5 編 募集人ヒアリングの実施状況と結果等 ........................................ 38
第 1 募集人ヒアリングの目的及び実施方法 38
第 2 募集人ヒアリングの結果 38
1 前回報告書における原因分析に関係するもの 38
2 前回報告書において提言した改善策に関係するもの 45
3 販売実績が高く、かつ、募集品質も良好な募集人の募集態様等の共通点 48
4 募集人調査への対応 52
5 小括 53
第 6 編 郵政グループの不適正募集問題への取組みに関する事実経過等 ................... 54
第 1 当委員会の問題意識 54
第 2 郵政民営化以前の不適正募集の発生状況等 58
第 3 郵政民営化以降の不適正募集の発生状況等 58
第 4 募集管理統括部の設置及び募集管理統括部による不適正募集防止に向けた施策の実施等
61
ii
第 5 平成 26 年改正保険業法の施行及びその対応状況 62
1 平成 26 年改正保険業法の内容 62
2 平成 26 年改正保険業法施行に係るかんぽ生命及び日本郵便の対応状況 63
第 6 2016 年 8 月に金融庁からヒアリングの可能性に関する示唆を受けた後の対応状況 63
1 金融庁監督局総務課郵便貯金・保険監督参事官室の概要 63
2 金融庁によるヒアリングの可能性に関する示唆に対するかんぽ生命及び日本郵便の対応
64
3 評価 67
第 7 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置及び「募集品質向上に向けた総合対策」の
策定経緯等 67
1 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」の設置 67
2 「かんぽ募集品質改善緊急対策本部」における取組み状況等 68
3 「募集品質向上に向けた総合対策」の策定経過等 68
4 評価 71
第 8 総合対策の内容及び実施状況 72
1 総合対策の内容 72
2 かんぽ生命及び日本郵便における募集実態の把握の状況及び総合対策の実施に関する検
証の状況(2018 年 4 月まで) 73
3 クローズアップ現代+(プラス)の放送を契機とする日本郵便による高齢者募集の停止
の提案及びこれに対する日本郵政グループの対応状況等 75
4 評価 78
第 9 多数契約募集への対応等 80
1 概要 80
2 2015 年度までの取組み 80
3 多数契約募集に対する取組みの変遷 80
4 多数契約募集に係る不祥事件判定 82
5 新規と消滅を繰り返す事案に対する取組み 83
6 深掘調査 85
7 評価 85
第 10 金融庁から報告徴求を受けるまでの経緯 86
1 経済合理性に疑問のある乗換契約(特定事案の C 類型に相当)について、顧客の意向を
確認するための「サンプル調査」を実施した状況 86
2 金融庁参事官室の指摘を受け、かんぽ生命が、乗換後の告知義務違反等により支払謝絶
となった事案(特定事案の B 類型に相当)の件数等について回答した状況 91
3 金融庁参事官室の指摘を受け、かんぽ生命が、乗換時に新規契約が引受謝絶となった事
案(特定事案の A 類型に相当)の件数等について回答した状況 91
4 金融庁参事官室から乗換契約に係る指摘を受け、追加対策等を検討した状況等 91
5 金融庁参事官室の乗換契約に係る追加指摘に対する対応等 94
6 金融庁の報告徴求の可能性に係る日本郵政グループの認識 95
iii
7 評価 96
第 11 金融庁の報告徴求及びかんぽ生命等の対応状況 98
1 金融庁のかんぽ生命に対する報告徴求の概要 98
2 かんぽ生命における植平社長の指示 98
3 金融庁の本件報告徴求の趣旨を踏まえたかんぽ生命の対応 99
4 総務省から日本郵便に対する報告徴求 99
5 過去遡及対応の範囲に関する検討状況等 100
6 新聞報道を受けた過去遡及対応の範囲等の決定 100
7 本件報告徴求を受けてかんぽ生命が提出した報告書の概要 102
8 総務省の報告徴求に対する日本郵便の報告 103
9 過去遡及対応範囲の拡大及び特別調査委員会設置等の公表 103
10 契約調査の実施等の公表 103
11 当委員会による調査報告書の提出及び金融庁による行政処分等 104
12 評価 104
第 12 日本郵政によるかんぽ生命株式の第二次売出しの概要 106
1 概要 106
2 日本郵政によるかんぽ生命株式の第二次売出しの経緯 106
3 第二次売出しの公表と条件決定等 108
4 金融庁参事官室による乗換契約に係る追加指摘の発覚 109
第 7 編 不適正募集問題の実態に係る経営陣の認識 ................................... 111
第 1 かんぽ生命 111
1 概要 111
2 植平社長 111
第 2 日本郵便 112
1 概要 112
2 横山社長 113
第 3 日本郵政 113
第 4 小括 114
第 8 編 日本郵政グループ各社の経営陣の不適正募集に対する認識と今般判明した不適正募集の
実態が乖離している原因 ..................................................... 115
第 1 特定事案調査等の調査規模、顧客の意識の変化及び不祥事件等判定の方法等の大幅変更
による不祥事件等の判定件数の増加 115
第 2 かんぽ生命及び日本郵便では、不適正募集の実態を正確に把握できていなかったこと116
第 3 不適正募集の実態把握につながり得る情報が経営陣等の出席する会議等において質量と
もに十分な報告がなされていなかったこと 116
1 かんぽ生命 116
2 日本郵便 117
3 日本郵政 118
4 日本郵政グループコンプライアンス連絡会 118
iv
第 4 小括 118
第 9 編 当委員会の提言した改善策の検討及び実施状況等.............................. 119
第 1 募集状況の可視化(録音録画) 119
1 提言の概要 119
2 検討及び実施状況等 119
第 2 不適正募集のリスクがある契約をシステムにより営業のフロントで簡易に検知できる仕
組みの整備 120
1 提言の概要 120
2 検討及び実施状況等 120
第 3 新規契約の獲得に偏った手当及び人事評価の体系の見直し 120
1 提言の概要 120
2 検討及び実施状況等 121
第 4 不適正募集を行った募集人及び管理者に対する処分の徹底 121
1 提言の概要 121
2 検討及び実施状況等 122
第 5 募集コンプライアンスに特化した通報制度の設置と通報内容の定期報告 122
1 提言の概要 122
2 検討及び実施状況等 123
第 6 責任部署と実施時期を明記した具体的改善策とその実施計画を策定し、外部専門家によ
り構成された第三者検証機関のモニタリング等を受けながら、その進捗状況を適時に各社の
取締役会に報告し、定期的に公表すること 123
1 提言の概要 123
2 検討及び実施状況等 124
第 7 その他の改善策の提言 124
1 売上・利益重視の経営から真に「顧客本位の業務運営」を実行する組織への改革 124
2 時代や環境の変化に対応できるビジネスモデルへの転換と保障性商品の営業スキルの向
上 125
3 営業の実力に見合った営業目標の設定と配算方法の見直し 126
4 顧客本位の保険募集を実現するための研修・教育の充実化 126
第 8 その他の自主的な取組み 127
1 適正な営業推進態勢確立のための取組み 127
2 適正な募集管理態勢確立のための取組み 127
3 ガバナンス強化のための取組み 128
第 9 評価 128
第 10 編 結語 ................................................................... 129
v
はじめに
)は、2019 年 7 月 24
かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会(以下「当委員会」という。
日、株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。、日本郵便株式会社(以下「日
)
本郵便」という。 及び両社の持株会社である日本郵政株式会社
) (以下「日本郵政」という。
)
の依頼を受け、約 8 か月間にわたり調査(以下「本調査」という。
)を行ってきた。
この間、本調査には、多数の調査補助弁護士及び当委員会事務局職員並びに日本郵政グル
ープの関係社員が関与した。日本郵政グループは、当委員会に協力し、総力を挙げて、今回
の不適正募集問題の調査等に取り組んできた。
このような関係者の努力により、
不適正募集問題の全容は、
概ね解明されたと考えている。
しかしながら、調査全体としては、いまだ完了したとは言えない。被害者の救済も道半ば
であり、不適正募集に関与した募集人等の調査・処分も、完了していないのである。
詳細は本文中で述べるが、本調査の対象である不適正募集問題は、郵政民営化以前から、
様々な対策の網を潜り抜け、伏流水のように存在し続けてきた。8 か月間に及ぶ調査によっ
ても、調査全体が完了していないということ自体、不適正募集問題の深さと広がりを示して
いると言えよう。
ところで、このように、郵政民営化以前から今日に至るまで、不適正募集が存在し続けて
きたのは、その時々の経営陣が、不適正募集の実態をよく把握できなかったために、これを
根絶させるに足る対策をとり得なかったからである。
前回報告でも明らかにしているとおり、日本郵政グループでは、不適正募集の実態を正確
に把握するための態勢が十分ではなかった。担当部署においては、不適正募集の実態把握に
つながり得る情報が活用されておらず、担当部署から経営陣らへは、不適正募集の実態把握
に資する十分な情報が報告されていなかった。そのため、不適正募集の実態把握に至らず、
適切な対応を取ることができなかったのである。
本調査報告書(以下「追加報告書」という。 では、
) 前回報告後も継続実施された特定事案
調査の結果、及び全契約調査の深掘調査として実施されている多数契約調査等の進捗状況等
を踏まえ、日本郵政グループにおいて、不適正募集の実態把握が遅れた理由や背景に関わる
事実経過等を明らかにし、不適正募集の実態等についての経営陣の認識なども可能な限り明
らかにするよう努めた。なお、併せて、特定事案調査の結果を踏まえ、前回報告において明
らかにした原因分析等につき、念のための検証を行ったが、改善策等の提言の前提となる分
析結果等も含めて、特に変更等すべき点は見られなかった。
1
第 1 編 追加調査の概要
この追加報告書は、当委員会が 2019 年 7 月 24 日に設置された後に実施した調査のうち、
主に 2019 年 12 月 18 日付け報告書(以下「前回報告書」という。
)の提出後に実施した調査
(以下「追加調査」という。
)の結果について報告を行うものである。
第 1 追加調査の経緯
当委員会は、前回報告書提出後も、引き続き調査を行い、2019 年 3 月 24 日まで、調査を
実施した。
)は、2020 年 3
追加調査の結果を報告するための基準日(以下「追加調査基準日」という。
月 24 日であり、追加報告書は、追加調査基準日までの間に判明した事項に基づき、追加調査
の結果を取りまとめたものである。
第 2 当委員会の体制
当委員会は、前回の調査時と同様、下記 3 人の委員で構成されている。
委員長 伊藤鉄男(西村あさひ法律事務所 弁護士)
委員 寺𦚰一峰(鈴木諭法律事務所 弁護士)
委員 早川真崇(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士)
いずれの委員もかんぽ生命、
日本郵便及び日本郵政のいずれとも利害関係を有していない。
当委員会は、追加調査を実施するに当たり、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業に所属
する、いずれも上記 3 社と利害関係を有しない下記の弁護士 16 人を調査補助者として従事
させた(以下、調査補助者である弁護士を「調査補助弁護士」という。。
)
調査補助弁護士は、細田浩史(総括担当)
、安冨潔(顧問)
、花田さおり、大塚美奈子、湊
健太郎、齊藤千尋、都築翔、渡邊俊典、山梨浩史、藤原瞭平、請園未矩、布施景子、紀野祥
之、白川雄基、竹井駿及び渡邉裕介である。
また、当委員会は、追加調査を実施するに当たり、上記 3 社と利害関係を有さず、かつ、
会社法、金融商品取引法及びコーポレートガバナンス等を研究分野とする筑波大学ビジネス
2
サイエンス系教授弥永真生氏1(以下「弥永教授」という。
)から、2020 年 1 月以降、定期的
に助言を得た。
当委員会は、追加調査の独立性及び客観性を確保するため、日本弁護士連合会策定の「企
業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の趣旨を踏まえ2、追加調査を実施した。
第 3 追加調査の目的及び対象
追加調査の目的は、前回報告書の「はじめに」にも記載のとおり、かんぽ生命保険商品の
募集に係る不適正募集問題について、主に
(第 2 編参照)の範囲・方法等の妥当性を検証するととも
①かんぽ生命による「契約調査」
に、その調査結果を分析・検討すること
②「特定事案」等を受理した保険募集人に対する個別的調査を実施すること
③不適正募集問題に係るグループ各社の経営陣の認識等を含めた事実経過などの調査を行う
こと
④前回報告書において当委員会が提言した改善策に関して、日本郵政グループの実施状況及
び検討状況に対する評価を行うこと
によって、不適正募集問題の実態、原因及び改善策を、より明確にすることである。
第 4 追加調査の方法
1 ヒアリングの実施
当委員会は、追加調査として、日本郵政グループの役職員その他の関係者合計 110 人に対
してヒアリングを実施した(前回報告書 5 頁記載のヒアリング実施対象者 649 人と合わせて
759 人3)
。上記 110 人の内訳は、以下のとおりである。
①かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の執行役・執行役員以上の役員(前役員も含む。 28 人
)
②①を除く、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の本社又は支社等の社員 46 人
1
弥永教授の略歴は以下のとおりである。
1986 年 3 月 東京大学法学部 私法コース 卒業
1986 年 4 月 東京大学法学部助手
1989 年 5 月 筑波大学講師
1992 年 1 月 筑波大学助教授
1992 年 10 月 日本銀行 金融研究所 客員研究員
2002 年 2 月 筑波大学教授(現在に至る)
2
本調査では、かんぽ生命による「契約調査」の範囲及び方法の妥当性の検証を含み、かつ、この調査
結果にも依拠しつつ、 当委員会も独自の調査を実施している。この点で、当委員会の調査は、調査自体
が全て外部の第三者に委ねられる「第三者委員会」の調査とは性質を異にしている。なお、 「企業等不
祥事における第三者委員会ガイドラインの解説」 (日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会編)」121
頁では、 「内部調査と第三者委員会が根本的に違うのは、 その主催者である。企業等の不祥事について、
事実調査を企業等が自らの手で行うのが内部調査であり、それを完全に外部の第三者に委ねるのが第
三者委員会である。 」とされている。
3
759 人の中には、重複する対象者も含まれている。
3
③郵便局員である保険募集人 36 人(下記 2 の募集人ヒアリングの対象者 36 人である。
)
2 募集人ヒアリング
当委員会は、追加調査として、2020 年 1 月下旬から同年 2 月中旬までの間、委員が分担し
て、13 の日本郵便支社のうち、沖縄支社を除く 12 支社に赴き、各支社管内の郵便局の保険
)を対象に合計 36 人のヒアリング(以下「募集人ヒアリン
募集人(以下「募集人」という。
グ」という。
)を実施した。
当委員会が、前回報告書(101 頁)で指摘したように、顧客に不利益を生じさせる乗換契
約その他の不適正募集については、渉外社員がその多くに関与していると認められ、かつ、
その動機については、営業目標達成が理由となっている傾向があるものの、その動機付けと
なっている要因は、年間販売実績が高い者については、営業手当欲しさや選奨等の個人的利
得等であり、そうでない者については、上司等の叱責や指導を回避することなどであると認
められた。
また、販売実績が高く、かつ、募集品質にも問題のない募集人も多数存在しているところ、
どうしたらそれが可能かについても、検討してみる価値があると考えられた。
そこで、これらの点につき、追加調査では、より詳細な実態を把握することを目的として、
主に単独マネジメント局4の金融渉外部に所属する募集人の中で、販売実績が比較的高い層の
募集人を対象としたヒアリングを実施した。
3 関係資料の精査・分析
当委員会は、追加調査として、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の関係部署及び関係者
から提出を受けた書面及び電子データを精査・分析した。
4 デジタル・フォレンジック調査5
当委員会は、本調査及び追加調査として、デジタル・フォレンジック調査を実施し、各社
の関係する会議体の議事録や関係部署におけるパーソナルコンピュータに対する必要な電磁
的記録の調査のほか、送受信された電子メールを分析・検討し、事案の全体像を把握するこ
とを目的とした調査を実施した。なお、当委員会は、以下に述べる電子データの保全、復元、
レビューなど、一連のデジタル・フォレンジック調査に当たっては、当該調査について専門
的技術、知見及びシステムを有する外部ベンダーによる調査の補助を受けた。
当委員会は、2019 年 7 月 24 日に設置された当初から、デジタル・フォレンジック調査の
実施を視野に入れ、これに向けて外部ベンダーとの折衝などを含めた作業に取り掛かり、実
施体制を構築した後に、同年 8 月下旬から速やかにデジタル・フォレンジック調査を開始し
た。そして、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の 3 社につき、取締役会、経営会議、監査
4
単独マネジメント局とは、単独の郵便局で損益管理(損失や利益のバランスを管理すること)を行う
郵便局をいう(前回報告書 25 頁参照)
。
5
デジタル・フォレンジックとは、不正や不祥事案の調査を行う際、コンピュータやサーバ内部に保存
されたデータ、あるいは関係者間で送受信されたメールを調査対象として実施される電磁的記録の調
査・分析に関する一連の調査手法・技術である。一般に、事案の全容把握と原因究明、類似不正及びそ
の他の不正の有無を確認するためにデジタル・フォレンジックが用いられる。
4
、コンプライアンス委員会及びその他関連する会議体の 2014 年 4 月から
役会(監査委員会)
不適正募集問題が発覚した 2019 年 6 月までの約 5 年間の議事録及び添付資料等の電子デー
タ合計 1 万 2,203 件を取得し、保全した。
これと並行し、当委員会は不適正募集問題に関連する事項を所掌する、かんぽ生命、日本
郵便及び日本郵政 3 社の役職員合計 2,174 人(内訳は、かんぽ生命 338 人、日本郵便61,802
人、日本郵政 34 人)を対象として、これら対象者が現に利用し又は過去に利用していた社内
業務用のパーソナルコンピュータ端末、及びメールサーバに保存されていた電子メールデー
タを取得し、削除されたデータについても可能な限り復元した上で、電子メールデータ(本
)合計 890 万 4,242 件(2,563.78GB)を保全した。
文及び添付ファイルを含む。
当委員会は、上記のデジタル・フォレンジック調査を通じて得られたデータについても、
分析・検討を行い、追加調査の基礎資料とした。
6
支社及び郵便局に所属する者を含む。
5
第 2 編 契約調査の範囲・方法等に関する検証及び調査結果
前回報告書第 3 編「本調査の結果明らかとなった事実」第 1「契約調査の内容及び方法」
(77 頁以下)で述べたように、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政は、2019 年 7 月 31 日付
「日本郵政グループにおけるご契約調査及び改善に向けた取組について」7を公表し、
けで、
下記の「全契約調査」及び「特定事案調査」
(以下、これらを併せて「契約調査」という。
)
を実施している。
なお、契約調査のほか、かんぽ生命募集管理統括部は、2019 年 1 月から、一定の基準に該
当する 48 件の多数契約について、顧客から苦情の申出等がなくともかんぽ生命の方から能
動的に行う契約者調査及び募集人調査(以下「能動調査」という。
)を開始しているが、これ
については、第 4 編第 1 及び第 6 編第 9 の 5(2)において詳述する。
第 1 契約調査の内容及び方法
1 全契約調査
(1) 概要
全契約調査は、2014 年 4 月から 2019 年 3 月までの過去 5 年間分の消滅契約を含む、全て
のかんぽ生命保険商品の契約者(顧客。特定事案を除く約 1,900 万人)について、顧客の意
向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを検証し、
意見や要望、
不満等がある場合には、
可能な限り早期に、当該不利益を解消するなどの顧客対応を行う、というものである。全契
約調査では、顧客の意向の確認をするとともに、顧客対応を行う。
かんぽ生命及び日本郵便では、2019 年 8 月下旬から 10 月までの間に、上記の対象者に対
し、連名で、返信用はがきを同封した書面を発送した。これにより、顧客の意向の確認を要
請するとともに、意見や要望、不満等がある場合の返送を要請した。そして、かんぽ生命は、
顧客の回答に含まれる意見や要望等に関し、訪問による説明、専用コールセンターからの電
話による説明、さらに、保険契約に関する手続等の顧客対応を行っている。
また、かんぽ生命は、顧客からの回答内容等に照らし法令違反又は社内規則違反の疑いが
あると判断される事案については、品質改善室からコンプライアンス統括部に引き継がれ、
募集人に対する調査等を行うこととしている。
(2) 深掘調査
かんぽ生命は、全契約調査等における顧客からの回答・意見等の中には多数回にわたって
契約の消滅・新規契約が繰り返されているなど、顧客の意向に沿ったものではない可能性が
想定されるケースがあったことから、全契約調査の更なる深掘調査(以下「深掘調査」とい
)として、2020 年 2 月から、かんぽ生命支店の社員による訪問等を優先順位の高いもの
う。
から順次開始し、顧客の不満や意見等の確認、当時の募集状況の調査を行い、不利益が発生
している顧客については、その解消を図っている。
7
https://www.japanpost.jp/pressrelease/jpn/2019/20190731148117.html
https://www.post.japanpost.jp/notification/productinformation/2019/0731_02.html
https://www.jp-life.japanpost.jp/information/press/2019/abt_prs_id001470.html
6
深掘調査においては、下記の区分の契約のうち、多数契約、多額契約8、被保険者を替えた
乗換契約(乗換が複数回)
、保険種類を替えた乗換契約(乗換が複数回)については、かんぽ
生命支店の社員が対象契約者を訪問することにより、契約内容や募集状況の確認等を行う。
また、 (乗換が 1 回)保険種類を替えた乗換契約
被保険者を替えた乗換契約 、 (乗換が 1 回)
、
保険期間等短縮変更制度を利用した乗換契約については、対象契約者に契約内容の確認等を
依頼する書面を送付し、専用コールセンター又は返信封筒の返送等により不満や意見等があ
った対象契約者に対して、かんぽ生命支店の社員が訪問することにより、契約内容や募集状
況等の確認等を行う。
深掘調査の対象(合計約 5.9 万人)は、その契約形態により、以下の 5 つに区分されてい
る。
ア 多数契約
深掘調査の対象となる「多数契約」とは、2014 年 4 月から 2019 年 3 月までの過去 5 年間
で新規契約に 10 件以上加入し、その 3 割以上が消滅(解約、失効、減額9又は保険料払済契
約への変更を指す。以下本(2)において同じ。 した契約形態を指す。
) 対象契約者数は約 0.6 万
人である。
イ 多額契約
深掘調査の対象となる「多額契約」とは、2019 年 12 月時点で 65 歳以上の契約者が月額保
険料 10 万円以上の払込みを行っており、かつ短期消滅契約が 1 件以上発生(2014 年 4 月か
ら 2019 年 12 月まで)している契約形態を指す。対象契約者数は約 1.8 万人である。
ウ 被保険者を替えた乗換契約
深掘調査の対象となる「被保険者を替えた乗換契約」とは、2014 年 4 月から 2019 年 3 月
までの過去 5 年間で契約者が同一で被保険者を変更した新規契約を締結し、その変更後契約
が短期消滅している契約形態を指す。対象契約者数は約 2.7 万人である。
エ 保険種類を替えた乗換契約
深掘調査の対象となる「保険種類を替えた乗換契約」とは、2014 年 4 月から 2019 年 3 月
までの過去 5 年間で年金から保険への乗換があったもの、又は保険と年金との間で乗換の繰
返しがあった契約形態を指す。対象契約者数は約 0.4 万人である。
8
月額保険料 20 万円未満の場合は、郵便局担当者の訪問により、契約内容の確認を行い、不満や意見
等があった対象契約者に対しては、 かんぽ生命支店の社員が訪問することにより、契約内容や募集状況
の確認等を行う。
9
減額とは、保険金額の減額変更のことであり、保険金額及び特約保険金額を減らすことにより、以後
の保険料を少なくする制度をいう。
7
オ 保険期間等短縮変更制度を利用した乗換契約
深掘調査の対象となる「保険期間等短縮変更制度を利用した乗換契約」とは、2014 年 4 月
から 2019 年 3 月までの過去 5 年間で既契約の保険期間等を短縮変更し、新規契約の申込み
をしているもののうち、新規契約が引受謝絶等に該当する契約形態を指す。対象契約者数は
約 0.4 万人である。
かんぽ生命では、上記アの多数契約のうち、2014 年 4 月から 2019 年 3 月までの過去 5 年
間で新規契約に 15 件以上加入し、その半数以上が消滅している契約者(897 人)について、
優先的に対応を開始する対象とし、2020 年 2 月からかんぽ生命支店の社員の訪問により契約
内容や募集状況の確認等を行っている(以下「多数契約調査(優先対応) という。。なお、
」 )
多数契約の深掘調査のうち、多数契約調査(優先対応)以外の対象契約者は 5,532 人である。
2 特定事案調査
かんぽ生命においては、全契約調査と並行し、顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能
性のある乗換契約のうち、特定の類型に分類が可能な事案を「特定事案」として、過去の契
約データから、乗換後の契約状況が特定事案に合致する 2019 年 3 月以前の過去 5 年分の約
18.3 万件の保険契約(契約者数約 15.6 万人)について、顧客に生じた不利益を解消するとと
もに、顧客の回答及び契約状況をもとに、乗換契約の際の保険募集に係る法令違反等の疑い
がある事象を発見するための調査に連携させる対応を行った。
この特定事案調査の類型、調査対象事案と調査対象事案数は、以下のとおりである。
類型 調査対象事案 調査対象事案数
A 乗換契約に際し、乗換前の契約は解約されたものの、乗換後 約 1.8 万件
の契約が引受謝絶となった事案
例:保険契約を解約して、新規に保険契約の申込みを受けた
が、この新規保険契約が顧客の病歴等で成立しなかったた
め、保険契約(保障)がない状態となった場合
B 乗換契約後、告知義務違反により乗換後の契約が解除とな 約 0.3 万件
り、保険金が支払謝絶等となった事案
例:保険契約を解約した後に、顧客が新規に加入した保険契
約において、その加入時に正しく告知がなされていなかった
として、保険契約が解除となり、保険金の支払いがなされな
かった場合
C 特約切替や保険金額の減額により、より合理的な提案が可能 約 2.6 万件
であった事案
例:顧客の医療保障を充実したいとの意向に対し、当該顧客
が保険契約の基本契約と特約の双方を解約し、新規に保険契
約に加入したものの、基本契約を解約せずに、特約の見直し
のみで当該顧客の意向に沿えた可能性がある場合
8
D 乗換契約前後で予定利率が低下しており、保障の内容・保障 約 1.5 万件
期間の変動がない等の事案
例:顧客が保険契約を解約した後、予定利率が低下し、かつ、
保障の内容及び保障期間が同じ新規の保険契約に加入して
いる場合
E 乗換契約の判定期間後(乗換後の契約の契約日の後 7 か月か 約 7.5 万件
ら後 9 か月)の解約により、保障の重複が生じた事案
例:顧客が新規に保険契約を契約した後に、乗換契約の判定
期間後(乗換後の契約の契約日の後 7 か月から後 9 か月)に
解約したため、保障の重複が生じた場合
F 乗換契約の判定期間外(乗換後の契約の契約日の前 4 か月か 約 4.6 万件
ら前 6 か月)の解約により、保障の空白が生じた事案
例:顧客が保険契約を解約した後に新規に保険契約に加入し
たもののうち、乗換契約の判定期間外(乗換後の契約の契約
日の前 4 か月から前 6 か月)に解約を行っており、保障がな
い期間が存在する場合
(1) 顧客の意向確認
特定事案調査においては、対象となる顧客に 2019 年 8 月上旬から書面を発送し、書面発送
後、顧客に対して、かんぽ生命の専用コールセンターからの電話又はかんぽ生命社員による
訪問等を通じて、乗換契約時の意向その他の状況、乗換前の契約への復元等に関する説明の
希望の有無、 (当該説明を希望した顧客に対しては)
及び 契約復元等の意向を確認している。
なお、上記書面の発送は、同月下旬までに完了した。
かんぽ生命は、上記の顧客の意向確認をできる限り進めるため、連絡のとれない顧客に対
しては、①繰返しの訪問、当該顧客の住所調査を行うことにより意向確認を実施し、こうし
た活動によっても顧客と連絡がとれない場合は、②特定記録郵便により顧客の意向を確認す
るための質問を記載したアンケート用紙等を顧客に送付し回答を依頼することにより意向確
認を実施し、これによっても意向確認ができない場合は、③日本郵便の配達員が、配達の際
に、顧客の都合の良い日時等を確認した上で、専用コールセンターからの電話、かんぽ生命
社員による訪問等による顧客への意向確認を行うこと等の手段を講じてきた。
(2) 募集人調査等
ア 募集人調査
かんぽ生命は、(1)の顧客への意向確認の結果、法令違反又は社内規則違反の疑いが生じた
事案(以下「違反疑い事案」という。
)については、募集態様に問題がなかったかを確認する
ため、募集人に対する調査を行っている(以下、不適正募集等の疑いのある保険契約を受理
した募集人に対する調査を個別に又は総称して「募集人調査」という。。
)
9
特定事案調査における募集人調査は、かんぽ生命エリアコンプライアンス室10が日本郵便
コンプライアンス室と合同で行うものであり、支社等に面談室を設置し、募集人を支社等に
召集して調査を行う。また、募集人調査の実施前に、募集人に調査用紙を送付して一般的な
事項を書面により確認し、
当該書面により確認した事項と顧客への聴き取り結果を踏まえて、
募集人に対する聴取を行う。
加えて、かんぽ生命は、この募集人調査に当たっては、募集人が自ら違反行為を申告し、
かつ、募集人調査に協力した場合は、下記イの不祥事件等判定の結果に基づいて当該募集人
に対して行われる処分を、本来よりも軽減又は免除する(以下「処分減免制度」という。
)こ
ととしている11。特定事案調査において、この処分減免制度は、募集人に対して処分を予定し
ている旨を通知(以下「処分予定通知」という。 した後に募集人が自認した場合においても
)
適用されている。
なお、従来の募集人調査は、調査員が募集人の所属する郵便局を訪問して調査しており、
また、原則として顧客への聴取と同様の内容を聴取するものであった。
イ 不祥事件等判定
募集人調査の結果を踏まえて、かんぽ生命コンプライアンス統括部が、法令違反又は社内
規則違反の有無を判定している(以下、コンプライアンス統括部による法令違反(不祥事件
12
)又は社内規則違反(不祥事故13)の有無の判定を「不祥事件等判定」という。。
)
特定事案に対する不祥事件等判定は、以下の手続により行われる。
すなわち、かんぽ生命では、各事案に関し、コンプライアンス統括部の担当者が、
「特定事
14
案調査におけるお客さまの声」 における、募集態様等に関する顧客の主張内容及びその他追
15
加調査の結果と、
「申込受理状況調査用紙」 の記載内容、聴き取り調査の結果を記載した「調
査用紙」等における募集人の供述内容を対照しながら、各類型につき作成されたチェックシ
ートを用いて不祥事件等判定を行っている。
また、具体的方法について、かんぽ生命では、いずれの類型においても、①乗換契約が合
理的な理由や動機に基づいて行われたか、②募集人の発言内容に関して、合理的理由に基づ
10
かんぽ生命エリアコンプライアンス室は、かんぽ生命本社直轄の部門であり、全国 13 か所に設置さ
れている。 同室は、各受持ち地域内のコンプライアンスに関する総合的企画・調整、 推進及び指導の統
括並びに不祥事件対応の統括を所掌するものとされている。
11
かんぽ生命では「調査協力(自己申告)制度」と称している。この点、 「社内リーニエンシー制度」
とは、一般に、社内の不正行為について、社内調査開始前に自主申告・調査協力等を行った者には、懲
戒処分の減免等を認めることを指すが、かんぽ生命の「調査協力(自己申告)制度」は、募集人が不適
正募集について自主申告等を行った場合に、 かんぽ生命が募集人に対して、その処分を減免するという
点で「リーニエンシー制度」に類似する制度といえる。なお、この制度は、全契約調査における募集人
調査にも活用される。
12
不祥事件とは、詐欺、 横領等の犯罪や情報提供義務違反、 意向把握義務違反、重要事項不告知など、
保険業法施行規則 85 条 5 項に該当する旨、かんぽ生命コンプライアンス統括部が判定した法令等違反
行為をいい、不祥事件と判定された場合、金融庁に届出を行う必要がある。
13
不祥事故とは、社内規則に違反する旨、 コンプライアンス統括部が判定した行為をいい、追加報告書
では、不祥事件に該当しないものを指す。
14 顧客への書面発送後の架電により聴取された顧客の申出内容等をいう。
15 募集人調査に先立って、募集人に対して事前にレター調査として送付する調査用紙をいう。
10
くものか、顧客の主張と募集人の主張に齟齬がないか、齟齬がある場合はいずれの主張に合
理性があるかなどを、上記の申込受理状況調査用紙等の記載と「特定事案調査におけるお客
さまの声」の記載等に基づき判断することにより、不祥事件等判定を行っている。
かんぽ生命は、この不祥事件等判定に当たっては、募集人が不適正募集の事実を否定した
場合であっても、外形的に顧客に不利益と認められる契約形態や顧客からの回答内容及び信
憑性の高い状況証拠等に基づき、不適正募集に関する事実認定・判定を行っている。
また、コンプライアンス統括部の担当者による不祥事件等判定の結果は、全件について、
外部弁護士が確認・検証を行っている。
コンプライアンス統括部は、
募集人調査の結果を踏まえて、
上記の不祥事件等判定により、
不祥事件・不祥事故への該当・非該当を判定するが、募集人調査から判明している事実関係
によっても該当・非該当を判定できない事案については、コンプライアンス統括部が再調査
の指示を行い、コンプライアンス統括部からの顧客への架電やかんぽ生命支店の社員の訪問
による顧客への再調査を実施するほか、募集人に対しては、かんぽ生命エリアコンプライア
ンス室及び日本郵便コンプライアンス室による再調査を行うこととされている。
また、異議申立ての制度も導入され、これにより、処分予定通知に異議がある募集人は、
その旨の申立てをかんぽ生命に行うことができることとされている。16
(3) 契約復元等
かんぽ生命は、(1)の顧客への意向確認の結果、契約復元等を希望した顧客に対しては、希
望内容を確認し、顧客の要望に沿った形で再提案するなど、可能な限り顧客の意向・都合に
合わせて契約復元等に向けた手続を進めている。17
第 2 範囲及び方法等の妥当性
1 全契約調査
当委員会は、全契約調査に関し、かんぽ生命の担当部署から、その範囲及び方法等につい
て、報告を受けた。
当委員会は、全契約調査は、過去 5 年間分の消滅契約を含めてかんぽ生命保険商品の全て
の契約者を対象とするものであり、その調査範囲の設定に関しては、網羅的に契約者保護を
図るものとして相当なものと考える。
また、後記第 3 の 1 のとおり、全契約調査の対象となる顧客約 1,900 万人のうち、2020 年
2 月 29 日時点で回答があったのは約 100.8 万件に過ぎないが、これは、全契約調査における
返信用はがきの記載 「ご加入いただいている保険契約は、
( お客さまのご意向に沿ったもので
しょうか」との質問事項等)が、契約内容が自らの意向に沿っていないと考える顧客やその
他特に意見、要望、不満等がある顧客に対してのみ積極的に応答を求める形式となっていた
ことによるものであった。この点に関しては、契約内容が自らの意向に沿っていないと考え
16
上記の方法による、客観的な状況証拠等に基づく事実認定 判定、
・ 外部弁護士の確認 検証、
・ 再調査、
異議申立ての制度は、全契約調査における募集人調査においても実施される。
17 契約乗換の復元等対応に係る総合的企画・調整は、2019 年 7 月 10 日付けでかんぽ生命の事務企画
部内に設置された品質改善室(現在員数 160 人)が行っている。
11
る顧客等の契約については、顧客の申出の内容等を確認した上で、無効処理、合意解除等の
契約措置やコンプライアンス統括部による募集人調査の対象とされており、顧客救済及び事
案の解決・解明につなげる適切な手続が設けられていると考える。
また、当委員会は、全契約調査の更なる深掘調査に関しても、外形的に見て顧客にとって
経済合理性が乏しい契約形態や顧客の意向に沿ったものではない可能性がある契約形態につ
いて、優先順位の高いものから調査対象とするものであり、顧客に重大な不利益が生じうる
形態の不適正募集に関して、顧客保護及び実態解明に資するものとして相当なものと判断し
た。
さらに、深掘調査では、特に多数契約、多額契約(月額保険料 20 万円以上)
、被保険者を
替えた乗換契約(乗換が複数回)
、保険種類を替えた乗換契約(乗換が複数回)といった顧客
に対し、より重大な不利益が生じている可能性のあるものについては、通常の全契約調査に
おけるレター送付による確認に代えて、当初からかんぽ生命支店の社員が対象契約者を訪問
することにより、契約内容や契約締結状況等の事実の確認等を行っており、この点で、顧客
に特に重大な不利益が生じうる形態の不適正募集に関して、顧客保護及び実態解明のために
より有効な手法がとられているものと考える。
2 特定事案調査
特定事案調査は、乗換契約をその契約形態に応じて分類し、特定の類型に該当する事案を
調査対象とするものであり、当委員会は、その調査範囲の設定に関しては、乗換契約のうち
顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能性のある契約形態を特定した上で契約者保護を図
るものとして相当なものと考える。
なお、当委員会は、特定事案調査に関し、かんぽ生命の担当部署から、その範囲及び方法
等について、進捗に応じて適時に報告を受け、意見を述べるなどしてきた。
例えば、当委員会では、特定事案の調査に関して、顧客からの回答の分類方法について、
サンプルの提示を受け、法令違反の可能性のある事例の区分の見直しに関する指摘を行い、
かんぽ生命においてこれを反映した。また、募集人調査においても、自認した募集人からそ
の動機等について意識調査を行うこと等を提案し、これが実際の調査に取り入れられた。こ
のように、当委員会の意見が適切に反映されていると評価できる。
次に、当委員会は、募集人調査の調査方法及び不祥事件等判定の方法等について、かんぽ
生命から説明を受けたが、募集人調査の調査方法及び不祥事件等判定の方法は、2020 年 2 月
29 日時点で募集人調査の対象事案とされる 1 万 3,396 件につき、意向把握義務(保険業法 294
条の 2)の違反、虚偽告知(保険業法 300 条 1 項 1 号)
、誤解告知(保険業法施行規則 234 条
1 項 4 号)等の保険業法上の義務違反の有無を、可能な限り正確かつ迅速に認定することに
資するものであり、乗換募集の場面において募集人の言動に虚偽等があったかどうかという
観点に主眼が置かれがちではあるものの、これらの違反事由を認定するものとしては相当で
あると判断した。
加えて、当委員会は、前記第 1 の 2(2)イ記載の客観的な状況証拠等に基づく事実認定及び
不祥事件等判定の方法については、
従来の自認中心の認定 判定方法からの脱却を目指した、
・
事案の解決・解明に資する有効なものと判断した。また、この点に関連して、当委員会は、
前記第 1 の 2(2)アの処分内容の決定方法については、特に処分予定である旨の通知後に自認
12
した募集人も処分減免制度の対象とすることにより、一定程度の客観証拠が存在する場合に
おいて募集人の自認を促す効果が認められるなど、事案の解決・解明に資する有効な方法が
とられているものと判断した。
さらに、特定事案調査においては、書面の発送、電話、訪問等により顧客の意向等を確認
し、この確認結果を踏まえて募集人調査が行われているところ、前記第 1 の 2(2)イのとおり、
募集人調査の結果に対しては再調査の手続が設けられていること、また、不祥事件等判定に
おいては異議申立ての手続が設けられていることに関しても、当委員会は、事案の解明に資
する慎重かつ有効な方法がとられているものと判断した。
なお、前記第 1 の 2(2)イのとおり、コンプライアンス統括部担当者による不祥事件等判定
の結果は、全件について、外部弁護士が確認・検証を行っているとのことであり、当委員会
は、その判断を尊重することとし、個々の事案の不祥事件等判定の結果の当否については、
追加調査における検証の対象外とした。
第 3 契約調査の結果
1 全契約調査
かんぽ生命によれば、全契約調査の対象となる顧客約 1,900 万人のうち、2020 年 2 月 29 日
時点で約 100.8 万件の回答があった。そのうち、訪問による説明、専用コールセンターから
の電話による説明、
保険契約に関する手続などの顧客対応が完了しているものが約82.8万件、
顧客対応の手続中であるものが約 14.7 万件、顧客からの回答内容を確認中であるものが約
3.3 万件であった。
上記の顧客対応については、2020 年 3 月末を目途に完了する見込みとのことである。しか
し、無効処理や合意解除等の契約措置が必要なものについては、2020 年 4 月以降も対応を継
続するとしている。
また、顧客対応が完了している事案のうち、法令違反又は社内規則違反の疑いがあると判
断される事案については、2020 年 4 月以降、コンプライアンス統括部による募集人調査が実
施される予定とのことである。
かんぽ生命によれば、全契約調査の更なる深掘調査については、第 1 の 1(2)記載の多数契
約調査の中で優先対応した対象契約者(897 人)のうち、2020 年 2 月 29 日時点で、契約内容
の確認が完了した契約者は727 人である。
そのうち意向に沿う旨の確認がされた契約者が309
人であり、意向に沿わない旨の確認がされた契約者が 418 人であった。また、多数契約の深
掘調査の対象契約者であって多数契約調査(優先対応)以外の対象契約者(5,532 人)につい
ては、2020 年 2 月 29 日時点で契約内容の確認が完了した契約者は 882 人であった。
これらの多数契約の深掘調査については、かんぽ生命支店の社員による対象契約者への訪
問により契約内容の確認等を 2020 年 4 月末終了を目途に進めるとのことである。また、か
んぽ生命は、契約内容の確認後、不利益が発生している顧客については合意解除等の契約措
置を行うとともに、募集人調査を行うとのことである。
さらに、多数契約以外の深掘調査(第 1 の 1(2)イからオ)については、かんぽ生命支店の
社員による対象契約者への訪問、書面の送付等により契約内容の確認等を 2020 年 6 月末終
13
了を目途に進めるとのことである。かんぽ生命は、契約内容の確認後、不利益が発生してい
る顧客については合意解除等の契約措置を行うとともに、
募集人調査を行うとのことである。
2 特定事案調査
(1) 特定事案調査の進捗状況
2014 年度から 2018 年度までの新規契約件数 1,067 万 1,058 件のうち、特定事案の事案数は
18 万 2,912 件であった。特定事案調査における意向確認の対象となる顧客 15 万 6,452 人のう
ち、2020 年 2 月 29 日時点で、案内が終了している顧客は約 15.4 万人(約 99%)であり、そ
のうち意向確認が完了した顧客は約 13.4 万人(約 86%)であった。
この意向確認が完了した顧客の増加に伴って、2019 年 9 月 30 日に行われた中間報告の時
点では、6,327 件と公表された違反疑い事案は増加し、現在、1 万 3,396 件が募集人調査の対
象となっている。
顧客への案内終了後に繰り返し架電をしても連絡がとれないなど、意向確認が未了の顧客
については、今後も意向確認を引き続き実施していくことにしている。
(2) 募集人調査等の状況
2020 年 2 月 29 日時点で、募集人調査の対象とされた 1 万 3,396 件のうち、不祥事件等判
定がされたのは 8.772 件であり、そのうち、かんぽ生命が法令違反(不祥事件)と判定した
事案は 174 件であり、社内規則違反(不祥事故)と判定した事案は 1,996 件であった(詳細
は、第 4 編記載のとおり。。
)
上記 1 万 3,396 件のうち、不祥事件等判定が未了の事案については、募集人が病休等の理
由により調査不能になっている事案や、一部の顧客への再確認が必要な事案等を除き、2020
年 3 月末までに不祥事件等判定を完了する予定とのことである。
(3) 契約復元等の状況
当委員会が、2020 年 2 月 29 日時点でかんぽ生命から報告を受けたところによれば、契約
契約復元等に関する説明を希望した顧客が 4 万 7,968 人であり、 万 3,013
復元等については、 4
人の顧客に対して契約復元等の手続の案内が完了している。
そのうち、3 万 6,721 人の顧客が契約復元等の意向を示し、既に 3 万 5,564 人の顧客につい
て契約復元等の措置が完了している。
契約復元等の措置が未了の顧客に対しては、顧客の都合による場合を除いて、2020 年 3 月
末までに契約復元等を完了させる予定とのことである。また、2020 年 4 月以降においても、
顧客から契約復元等の要望があった場合は対応することにしている。
14
第 3 編 特定事案調査結果の分析
第 1 分析の対象及び方法等
当委員会は、前回報告書(81 頁)記載のとおり、不適正募集全体の原因や対策を検討する
ため、特定事案調査結果の分析を行うこととし、どのような募集人が「違反疑い事案」に関
与したかを中心に分析・検討することを試みた。
この「違反疑い事案」は、法令違反又は社内規則違反の「疑い」を有するにとどまる段階
の事案であり、その後の不祥事件等判定の結果、法令違反又は社内規則違反と判定されるも
のは限られるが、顧客が当該契約の募集に対して不満を抱き、その旨の申告をしたことに間
違いはない事案である。そして、当委員会は、不適正募集全体の原因や対策を検討するため
には、まず、分析の対象をある程度広めに設定した方が良いと考えたため、この「違反疑い
事案」を分析の対象とすることとした。
なお、前回報告書では、特定事案調査の進捗等の事情から、2019 年 9 月 27 日(以下「9 月
末基準日」という。
)時点における「違反疑い事案」
(6,327 件)を分析対象とした。
特定事案調査は、前回報告書の分析対象であった 9 月末基準日時点においては半分程度の
進捗であったものの、追加報告書の分析対象である 2020 年 2 月 29 日(以下 月末基準日」
「2
という。 「違反疑い事案」は 1 万 3,396 件となった。
)時点においては概ね完了し、
当委員会は、かんぽ生命から 2 月末基準日のデータを基に集計等を行ったデータの提供を
受け、これらを基に、前回報告書と同様の手法による特定事案調査結果の分析を行うことに
より、前回報告書で示された分析結果について、調査の進捗に伴う母集団の増加によっても
同様の傾向が認められるか否かを検証することとした。
15
2
まず、 月末基準日のデータによれば、分析対象となる「違反疑い事案」の件数、新規契約
件数、特定事案件数、意向確認済み件数等の年度別の推移及び合計は、表 1 下段のとおりで
ある。
表 1:
「違反疑い事案」の件数、新規契約件数、特定事案件数、意向確認済み件数等の年度
別の推移及び合計
2019年9月末時点
特定事案調査件数
(2014年度から2018年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
までの対象5年間)
新規契約件数(*1) 2,381,977件 2,397,286件 2,441,232件 1,739,153件 1,711,410件 10,671,058件
特定事案件数 30,283件 33,357件 41,780件 43,603件 33,889件 182,912件
意向確認済み件数 10,331件 12,175件 15,469件 16,931件 13,114件 68,020件
「違反疑い事案」の件数 789件 929件 1,208件 1,838件 1,563件 6,327件
「違反疑い事案」
1,007人 1,141人 1,489人 2,155人 1,860人 5,797人(*2)
に関与した募集人数
2020年2月末時点
特定事案調査件数
(2014年度から2018年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計(*2)
までの対象5年間)
新規契約件数(*1) 2,381,977件 2,397,286件 2,441,232件 1,739,153件 1,711,410件 10,671,058件
特定事案件数 30,283件 33,357件 41,780件 43,603件 33,889件 182,912件
意向確認済み件数 23,908件 28,066件 35,999件 38,041件 29,732件 155,746件
「違反疑い事案」の件数 1,681件 1,929件 2,571件 3,899件 3,316件 13,396件
「違反疑い事案」
1,886人 2,091人 2,818人 3,929人 3,284人 9,653人(*2)
に関与した募集人数
(*1) ディスクロージャー誌による公表値。
(*2) 「違反疑い事案」に関与した募集人数に関しては、同一募集人が複数年度で関与したケースがあるところ、そのようなケースでは重複を除き、
複数年度で関与した同一募集人は一人と計算している。
表 1 上段のとおり、9 月末基準日のデータ(以下「9 月末基準日データ」という。
)によれ
ば、 年 4 月から 2019 年 3 月までの 5 年間に受理した特定事案に該当する契約に関して、
2014
契約時の状況や意向を確認できた 6 万8,020 件のうち、 9.3%
顧客からの聴き取りに基づき、 約
に相当する 6,327 件が「違反疑い事案」として把握された。その後の調査により、各「違反
疑い事案」に関与した募集人が特定され、その人数は 5 年間の合計で 5,797 人であることが
判明した。
他方、表 1 下段のとおり、2 月末基準日のデータ(以下「2 月末基準日データ」という。
)
によれば、2014 年 4 月から 2019 年 3 月までの 5 年間に受理した特定事案に該当する契約に
関して、顧客からの聴き取りに基づき、契約時の状況や意向を確認できた 15 万 5,746 件のう
ち、約 8.6%に相当する 1 万 3,396 件が「違反疑い事案」として把握された。その後の調査に
より、 「違反疑い事案」
各 に関与した募集人が特定され、その人数は 5 年間の合計で 9,653 人
であることが判明した。
16
第 2 分析結果
1 「違反疑い事案」の数は、5 年平均で 2,679 件(5 年平均の新規契約件数の約 0.13%)で
あること
表 2 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、2014 年度から 2018 年度までの 5 年間
の新規契約件数は合計約 1,067 万件(5 年平均で約 213.4 万件)であるところ、特定事案の件
数は合計約 18.3 万件(5 年平均で約 3.7 万件)であり、そのうち顧客の意向確認が終了した
件数は 6 万 8,020 件で、その結果、
「違反疑い事案」とされたものは 6,327 件 年平均で 1,265
(5
件)であった。
他方、表 2 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、顧客の意向確認が終了した件数
は 15 万 5,746 件で、その結果、
「違反疑い事案」とされたものは 1 万 3,396 件(5 年平均で
2,679 件)である。
すなわち、9 月末基準日から調査が進んだことで、顧客の意向確認が終了した件数が約 2.3
倍となり、それに伴い「違反疑い事案」の件数も約 2 倍となり、新規契約件数に占める「違
反疑い事案」の件数の割合(5 年平均)も約 2 倍となっている。
表 2:新規契約件数に占める「違反疑い事案」の件数の割合(5 年平均)
2019年9月末時点
特定事案調査件数 合計 5年平均
(2014年度から2018年度 までの対象5年間)
新規契約件数 10,671,058件 2,134,212件
特定事案件数 182,912件 36,582件
意向確認済み件数 68,020件 ‐
「違反疑い事案」の件数 6,327件 1,265件
新規契約件数に占める
‐ 0.059%
「違反疑い事案」件数の割合
2020年2月末時点
特定事案調査件数 合計 5年平均
(2014年度から2018年度 までの対象5年間)
新規契約件数 10,671,058件 2,134,212件
特定事案件数 182,912件 36,582件
意向確認済み件数 155,746件 ‐
「違反疑い事案」の件数 13,396件 2,679件
新規契約件数に占める
‐ 0.126%
「違反疑い事案」件数の割合
17
2 全募集人のうち、
「違反疑い事案」に関与した募集人の割合は、5 年平均で約 3.1%であ
ること
表 3 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」に関与した募集人(以
下「関与募集人」という。
)は、かんぽ生命保険商品の募集実績のある全体人数(年度ごとに
約 8 万 9,000 人から約 9 万 3,000 人)のうち、年度ごとに約 1.1%(1,007 人)から約 2.4%
(2,155 人)であり、5 年平均では全体人数(9 万 1,435 人)のうちの約 1.7%(1,530 人)で
あった。
他方、表 3 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、関与募集人は、かんぽ生命保険
商品の募集実績のある全体人数(年度ごとに約 8 万 9,000 人から約 9 万 3,000 人)のうち、年
度ごとに約 2.1%(1,886 人)から約 4.3%(3,929 人)であり、5 年平均では全体人数のうち
の約 3.1%(2,802 人)である。
表 3:関与募集人の人数と割合
2019年9月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
「違反疑い事案」
1,007人 1,141人 1,489人 2,155人 1,860人 1,530人
の募集人数
全体
91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
募集人数(*1)
割合 1.1% 1.2% 1.6% 2.4% 2.1% 1.7%
2020年2月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
「違反疑い事案」
1,886人 2,091人 2,818人 3,929人 3,284人 2,802人
の募集人数
全体
91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
募集人数(*1)
割合 2.1% 2.3% 3.0% 4.3% 3.7 % 3.1%
(*1) 全体募集人数:
当該年度に募集実績のあった募集人数。
18
3 「違反疑い事案」を受理した郵便局数は、全体の約 14.5%であること
募集人の受け付けたかんぽ生命保険商品は、募集人の在籍する各郵便局で受理した扱いと
されるところ、表 4 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」の 5 年間
の受理局数は 1,841 局であり、簡易郵便局18を除く郵便局総数 2 万 0,156 局(2019 年 9 月 30
)のうちの約 9%であった。
日時点。以下同じ。
他方、表 4 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」の 5 年間の受理
局数は 2,921 局であり、郵便局総数のうちの約 14.5%である。
9
すなわち、 月末基準日から調査が進んだことで「違反疑い事案」の件数が約 2 倍となり、
それに伴い「違反疑い事案」の 5 年間の受理局数、及び「違反疑い事案」の受理局が郵便局
総数に占める割合も増加している。
表 4:
「違反疑い事案」を受理した郵便局数
2019年9月末時点
2014年度~2018年度
「違反疑い事案」受理局数 1,841局
郵便局総数 20,156局
割合 9.13%
2020年2月末時点
2014年度~2018年度
「違反疑い事案」受理局数 2,921局
郵便局総数 20,156局
割合 14.5%
18
簡易郵便局とは、簡易郵便局法に基づき、日本郵便から委託された郵便窓口業務等の委託業務を行う
施設をいう。かんぽ生命は、簡易郵便局(委託業務の受託者)に対し、かんぽ生命の生命保険契約の募
集業務を委託しており、また日本郵便に対し、 簡易郵便局に対するかんぽ生命の生命保険契約に係る教
育・指導・管理を委託している(前回報告書 24 頁参照)
。
19
4 「違反疑い事案」 万 3,396 件)のうち、渉外社員である募集人が関与した件数の割合
(1
は、約 85.5%(1 万 1,456 件)であり、窓口社員である募集人が関与した件数の割合は、約
14.5%(1,940 件)であること
表 5 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」
(6,327 件)のうち、渉
外社員が関与した件数の割合は、約 87%(5,507 件)であった。
他方、表 5 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」 万 3,396 件)
(1
のうち、渉外社員が関与した件数の割合は、約 85.5%(1 万 1,456 件)である。
また、 6 のとおり、 月末基準日データによれば19、
表 9 全募集人 年平均で 9 万 1,435 人)
(5
に占める渉外社員の割合は、5 年平均で約 18%(1 万 6,438 人)であり、窓口社員の割合は、
5 年平均で約 82%(7 万 4,996 人)である。
さらに、表 7 のとおり、 月末基準日データによれば、関与募集人
2 (9,653 人)のうち、
「違
反疑い事案」に関与した渉外社員(以下「関与渉外社員」という。 の割合は、 73.7%
) 約 (7,116
人)であり、
「違反疑い事案」に関与した窓口社員(以下「関与窓口社員」という。
)の割合
は、約 26.3%(2,537 人)である。
加えて、表 8 のとおり、2 月末基準日データによれば、全渉外社員(5 年平均で 1 万 6,438
人)に占める関与渉外社員の割合は、5 年平均で約 13.7%(2,250 人)であり、全窓口社員(5
年平均で 7 万 4,996 人)に占める関与窓口社員の割合は、5 年平均で約 0.7%(552 人)であ
る。
すなわち、全募集人のうち約 18%に過ぎない渉外社員の中の約 13.7%の渉外社員が、
「違
反疑い事案」の約 85.5%に関与したということである。
19
表 6 は、2014 年度から 2018 年度の全募集人、渉外社員、窓口社員の数及び全募集人のうち渉外社員
と窓口社員の割合を記載したデータであるところ、このデータは 9 月末基準日からの調査の進捗によ
り更新される性質のものではないため、追加報告書においても 9 月末基準日データを用いた。
20
表 5:
「違反疑い事案」の関与件数の割合(渉外社員・窓口社員別)
2019年9月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
「違反疑い事案」
789件 929件 1,208件 1,838件 1,563件 6,327件
件数
渉外社員
707件 836件 1,041件 1,573件 1,350件 5,507件
募集件数
割合 89.6% 90.0% 86.2% 85.6% 86.4% 87.0%
窓口社員
82件 93件 167件 265件 213件 820件
関与件数
割合 10.4% 10.0% 13.8% 14.4% 13.6% 13.0%
2020年2月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
「違反疑い事案」
1,681件 1,929件 2,571件 3,899件 3,316件 13,396件
件数
渉外社員
1,436件 1,660件 2,184件 3,273件 2,903件 11,456件
募集件数
割合 85.4% 86.1% 84.9% 83.9% 87.5% 85.5%
窓口社員
245件 269件 387件 626件 413件 1,940件
関与件数
割合 14.6% 13.9% 15.1% 16.1% 12.5% 14.5%
表 6:全募集人に占める渉外社員及び窓口社員の割合(*1)
2019年9月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
全体募集人数 91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
渉外社員数 17,664人 17,089人 16,718人 15,810人 14,910人 16,438人
(割合) (19.2%) (18.5%) (17.9%) (17.4%) (16.8%) (18.0%)
窓口社員数 74,320人 75,325人 76,449人 74,943人 73,945人 74,996人
(割合) (80.8%) (81.5%) (82.1%) (82.6%) (83.2%) (82.0%)
(*1) 全募集人に対する渉外社員と窓口社員の割合であるため数値の更新はなし。
21
表 7:関与募集人に占める関与渉外社員及び関与窓口社員の割合
2020年2月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
「違反疑い事案」
に関与した 1,886人 2,091人 2,818人 3,929人 3,284人 9,653人
募集人数
「違反疑い事案」
に関与した 1,549人 1,690人 2,282人 3,065人 2,663人 7,116人
渉外社員数
割合 82.1% 80.8% 81.0% 78.0% 81.1% 73.7%
「違反疑い事案」
に関与した 337人 401人 536人 864人 621人 2,537人
窓口社員数
割合 17.9% 19.2% 19.0% 22.0% 18.9% 26.3%
表 8:全渉外社員に占める関与渉外社員、全窓口社員に占める関与窓口社員の割合
2020年2月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
渉外社員数 17,664人 17,089人 16,718人 15,810人 14,910人 16,438人
「違反疑い事案」
に関与した 1,549人 1,690人 2,282人 3,065人 2,663人 2,250人
渉外社員数 (8.8%) (9.9%) (13.6%) (19.4%) (17.9%) (13.7%)
(割合)
窓口社員数 74,320人 75,325人 76,449人 74,943人 73,945人 74,996人
「違反疑い事案」
に関与した 337人 401人 536人 864人 621人 552人
窓口社員数 (0.5%) (0.5%) (0.7%) (1.2%) (0.8%) (0.7%)
(割合)
22
5 「違反疑い事案」 万 3,396 件)のうち、販売実績が「優秀」20とされる募集人が関与し
(1
た件数の割合は、約 25.7%(3,442 件)であること
表 9 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」
(6,327 件)のうち、販
売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約 25.9%(1,641 件)であった。
他方、表 9 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」 万 3,396 件)
(1
のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合は、約 25.7%(3,442 件)
である。
また、表 10 のとおり、9 月末基準日データによれば21、販売実績が「優秀」とされる募集
人は、5 年平均で募集人全体の約 1.4%(1,270 人)である。
すなわち、全募集人のうち約 1.4%に過ぎない販売実績が「優秀」とされる募集人が、
「違
反疑い事案」の 4 分の 1 以上に関与したということである。
なお、表 11 のとおり、9 月末基準日データによれば22、販売実績が「優秀」とされる募集
人は、2014 年度から 2018 年度までの新規契約全体のうちの約 8.9%に当たる合計約 95 万件
(5 年平均で約 19 万件)の契約を募集している。
20
販売実績が「優秀」とされる募集人とは、年間販売実績 500 万円以上の渉外社員又は年間販売実績
200 万円以上の窓口社員であり、この販売実績額以上の実績である募集人は、最高優績者を含む成績ト
ップ層のものとして扱われている。
21
表 10 は、2014 年度から 2018 年度の全募集人及び販売実績が「優秀」とされる募集人の数並びに全
募集人のうち販売実績が 「優秀」 とされる募集人の割合を記載したデータであるところ、このデータは
9 月末基準日からの調査の進捗により更新される性質のものではないため、 追加報告書においても 9 月
末基準日データを用いた。
22
表 11 は、2014 年度から 2018 年度の新規契約及び販売実績が「優秀」とされる募集人が募集した契
約の件数並びに新規契約のうち販売実績が 「優秀」とされる募集人が募集した契約の割合を記載したデ
ータであるところ、このデータは 9 月末基準日からの調査の進捗により更新される性質のものではな
いため、追加報告書においても 9 月末基準日データを用いた。
23
表 9:
「違反疑い事案」の件数に占める販売実績が「優秀」とされる募集人の関与件数の割
合
2019年9月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
①販売実績「優秀」
とされる募集人が
221件 246件 359件 463件 352件 1,641件
関与した「違反疑い
事案」件数
②「違反疑い事案」
789件 929件 1,208件 1,838件 1,563件 6,327件
件数
割合(①/②) 28.0% 26.5% 29.7% 25.2% 22.5% 25.9%
2020年2月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
①販売実績「優秀」
とされる募集人が
401件 499件 771件 1,020件 751件 3,442件
関与した「違反疑い
事案」件数
②「違反疑い事案」
1,681件 1,929件 2,571件 3,899件 3,316件 13,396件
件数
割合(①/②) 23.9% 25.9% 30.0% 26.2% 22.6% 25.7%
表 10:全募集人に占める販売実績が「優秀」とされる募集人の割合(*1)
2019年9月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
①販売実績「優秀」
1,191人 1,539人 1,592人 1,200人 827人 1,270人
とされる募集人数
②全体募集人数 91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
割合(①/②) 1.29% 1.67% 1.71% 1.32% 0.93% 1.39%
(*1) 全募集人のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人の割合であるため数値の更新はなし。
表 11:新規契約件数に占める販売実績が「優秀」とされる募集人が募集した契約件数の割
合(*1)
2019年9月末時点
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
①販売実績「優秀」
とされる募集人が 186,145件 236,998件 245,711件 157,227件 126,578件 952,659件
募集した契約件数
②新規契約件数 2,381,977件 2,397,286件 2,441,232件 1,739,153件 1,711,410件 10,671,058件
割合(①/②) 7.8% 9.9% 10.1% 9.0% 7.4% 8.9%
(*1) 新規契約件数のうち、販売実績が「優秀」とされる募集人の割合であるため数値の更新はなし。
24
6 「違反疑い事案」に関与した同一の募集人の関与件数は、少ない者は 1 件(5,972 人)で、
多い者は 47 件(1 人)であるところ、関与件数が 1 件から 3 件の募集人が 9 割近くを占め、
4 件及び 5 件の募集人を加えると約 94%を占めていること
表 12 左表のとおり、9 月末基準日データによれば、同一の関与募集人の関与件数は、少な
い者は 1 件(4,003 人)で、多い者は 22 件 人)であったところ、関与件数が 1 件から 3 件
(1
の関与募集人が 9 割以上を占め、4 件及び 5 件の関与募集人を加えると約 97.1%を占めてい
た。
他方、 12 右表のとおり、 月末基準日データによれば、
表 2 同一の関与募集人の関与件数は、
少ない者は 1 件(5,972 人)で、多い者は 47 件(1 人)であるところ、関与件数が 1 件から
3 件の関与募集人が 9 割近くを占め、4 件及び 5 件の関与募集人を加えると約 94%を占めて
いる。
表 12:同一の関与募集人の関与件数
2019年9月末時点 2020年2月末時点
同一の募集人が 「違反疑い 同一の募集人が 「違反疑い 同一の募集人が 「違反疑い
関与した「違反 事案」 割合 関与した「違反 事案」 割合 関与した「違反 事案」 割合
疑い事案」件数 募集人数 疑い事案」件数 募集人数 疑い事案」件数 募集人数
1件 4,003人 69.1% 1件 5,972人 61.87% 25件 1人 0.01%
2件 987人 17.0% 2件 1,696人 17.57% 26件 2人 0.02%
3件 357人 6.2% 3件 719人 7.45% 27件 0人 0.00%
4件 180人 3.1% 4件 421人 4.36% 28件 1人 0.01%
5件 101人 1.7% 5件 268人 2.78% 29件 0人 0.00%
6件 52人 0.9% 6件 172人 1.78% 30件 0人 0.00%
7件 34人 0.6% 7件 80人 0.83% 31件 0人 0.00%
8件 70人 0.73% 32件 0人 0.00%
8件 28人 0.5%
9件 54人 0.56% 33件 0人 0.00%
9件 16人 0.3%
10件 48人 0.50% 34件 1人 0.01%
10件 7人 0.1%
11件 25人 0.26% 35件 0人 0.00%
11件 8人 0.1%
12件 23人 0.24% 36件 0人 0.00%
12件 6人 0.1%
13件 15人 0.16% 37件 0人 0.00%
13件 4人 0.1%
14件 10人 0.10% 38件 1人 0.01%
14件 5人 0.1%
15件 13人 0.13% 39件 0人 0.00%
15件 1人 0.0%
16件 11人 0.11% 40件 2人 0.02%
16件 0人 0.0% 17件 9人 0.09% 41件 0人 0.00%
17件 3人 0.0% 18件 6人 0.06% 42件 0人 0.00%
18件 0人 0.0% 19件 8人 0.08% 43件 0人 0.00%
19件 3人 0.0% 20件 9人 0.09% 44件 1人 0.01%
20件 1人 0.0% 21件 3人 0.03% 45件 0人 0.00%
21件 0人 0.0% 22件 6人 0.06% 46件 0人 0.00%
22件 1人 0.0% 23件 0人 0.00% 47件 1人 0.01%
合計 5,797人 100% 24件 5人 0.05% 合計 9,653人 100%
25
7 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の 1 人当たりの加入件数は、1 件から 14 件
にわたっているところ、1 件の顧客が約 95.1%、2 件の顧客が約 3.8%であり、この合計で
約 98.9%を占めていること23
表 13 左表のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」である契約に加入し
た顧客の 1 人当たりの加入件数は、1 件から 5 件であったところ、1 件の顧客が約 97.3%、2
件の顧客が約 2.3%であり、この合計で約 99.6%を占めていた。
他方、表 13 右表のとおり、2 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」である契約に
1 1
加入した顧客の1 人当たりの加入件数は、 件から14 件であるところ、 件の顧客が約95.1%、
2 件の顧客が約 3.8%であり、この合計で約 98.9%を占めている。
表 13:
「違反疑い事案」の加入件数別の契約者数及び割合
2019年9月末時点 2020年2月末時点
同一契約者が 「違反疑い事案」 同一契約者が 「違反疑い事案」
「違反疑い事案」 「違反疑い事案」
加入した「違反 加入した「違反
契約者数(割合) 件数 契約者数(割合) 件数
疑い事案」件数 疑い事案」件数
1件 11,914人(95.1%) 11,914件
1件 5,952人(97.3%) 5,952件
2件 479人(3.8%) 958件
2件 142人(2.3%) 284件
3件 82人(0.7%) 246件
3件 17人(0.3%) 51件 4件 21人(0.2%) 84件
5件 12人(0.1%) 60件
4件 5人(0.1%) 20件
6件 5人(0.0%) 30件
5件 4人(0.1%) 20件 7件 5人(0.0%) 35件
8件 0人(0.0%) 0件
合計 6,120人(100.0%) 6,327件
9件 2人(0.0%) 18件
10件 0人(0.0%) 0件
11件 1人(0.0%) 11件
12件 0人(0.0%) 0件
13件 2人(0.0%) 26件
14件 1人(0.0%) 14件
合計 12,524人(100.0%) 13,396件
23
「違反疑い事案」である契約ではなく、より広げて、特定事案調査の対象となった契約(合計約 18.3
万件)で見た場合でも、同契約に加入した顧客の加入件数は 1 件から 23 件であるところ、1 件の顧客
が約 89.2%、2 件の顧客が約 8.1%であり、この合計で約 97.3%を占めている。
26
8 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の加入年代は、 代から 90 代にわたってい
10
るところ、最も多いのが 60 代(約 32.8%)であり、60 代、70 代(約 25.9%)
、80 代(約
6.1%)
、90 代(約 0.1%)の合計が 6 割以上を占めていること
表 14 左表のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」である契約に加入し
た顧客の加入年代は、 代から 90 代にわたっているところ、
10 最も多いのが 60 代(約 32.3%)
であり、60 代、70 代(約 29.3%) 代(約 10.2%) 代(約 0.1%)の合計が 7 割以上を
、80 、90
占めていた。
他方、表 14 右表のとおり、2 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」である契約に
加入した顧客の加入年代は、10 代から 90 代にわたっているところ、最も多いのが 60 代(約
32.8%)であり、60 代、70 代(約 25.9%) 代(約 6.1%) 代(約 0.1%)の合計が 6 割
、80 、90
以上を占めている。
「違反疑い事案」の年代別の契約者数(*1)及び割合
表 14:
2019年9月末時点 2020年2月末時点
「違反疑い事案」 「違反疑い事案」
契約者数(割合) 契約者数(割合)
契約者加入年代 契約者加入年代
10代 3人 (0.0%) 10代 3人(0.0%)
20代 42人 (0.7%) 20代 119人(1.0%)
30代 174人 (2.8%) 30代 495人(4.0%)
40代 472人 (7.7%) 40代 1, 265人(10.1%)
50代 1,023人 (16.7%) 50代 2,514人(20.1%)
60代 1,978人 (32.3%) 60代 4,105人(32.8%)
70代 1,793人 (29.3%) 70代 3,246人(25.9%)
80代 627人 (10.2%) 80代 762人(6.1%)
90代 8人 (0.1%) 90代 15人(0.1%)
合計 6,120人 (100.0%) 合計 12,524人(100.0%)
(*1) 契約者数:
1人の契約者が複数の「違反疑い事案」に加入し、その加入年代が異なる場合は、
最初に加入した年代を集計対象とする。
27
9 「違反疑い事案」である契約に加入した顧客の性別は、女性が約 83.5%、男性が約 16.5%
であること
表 15 上段のとおり、9 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」である契約に加入し
た顧客の性別は、女性が約 85%、男性が約 15%であった。
他方、表 15 下段のとおり、2 月末基準日データによれば、
「違反疑い事案」である契約に
加入した顧客の性別は、女性が約 83.5%、男性が約 16.5%である。
表 15:
「違反疑い事案」の契約者の性別ごとの人数及び割合
2019年9月末時点
性別 「違反疑い事案」契約者数(割合)
女性 5,199人(85.0%)
男性 921人(15.1%)
合計 6,120人(100.0%)
2020年2月末時点
性別 「違反疑い事案」契約者数(割合)
女性 10,453人(83.5%)
男性 2,071人(16.5%)
合計 12,524人(100.0%)
28
第 4 編 特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果の分析
第 1 分析の対象及び方法等
本編では、特定事案調査及び第 2 編の冒頭で触れた能動調査24(以下、両者を併せて「特定
事案調査等」という。 に係る不祥事件等判定結果について分析し、
) どのような募集人が不祥
事件・不祥事故事案に関与したかなどを明らかにする。なお、特定事案調査等の進捗等の事
情から、2 月末基準日時点における不祥事件・不祥事故事案を分析の対象とした。
また、当委員会は、特定事案調査等に係る不祥事件等判定結果と、第 3 編で示した特定事
案調査結果とを比較・分析し、両者の間に同様の傾向が認められるか否かについても検討し
た。
なお、上記のとおり、本編では 2 月末基準日時点における特定事案調査等に係る不祥事件
等判定結果を分析対象としているところ、
今後の特定事案調査等及び深掘調査の進捗に伴い、
本編で示した不祥事件等判定結果に係る不祥事件・不祥事故事案の件数等の数値や傾向が変
わり得ることを、念のため付言しておく。
24
かんぽ生命募集管理統括部は、2019 年 1 月から、一定の基準に該当する 48 件の多数契約について、
顧客から苦情の申出がなくとも、かんぽ生命の方から能動的に契約者調査及び募集人調査を開始した
2
(能動調査) そして、 月末基準日時点において、
。 この能動調査は概ね完了した。上記のとおり、能動
調査は一定の基準に該当する多数契約を対象とする調査であり、乗換契約を対象とする特定事案調査
とは異質ではあるものの、 深掘調査の先駆けのような調査であり、 追加調査基準日までに不祥事件等判
定が一定数終了していることから、能動調査に係る不祥事件等判定結果についても本編で併せて検討
を加えることとした。 本編において分析・検討対象としている以下の各種データ中の「能動調査」のデ
ータは、2 月末基準日時点における、能動調査に係る不祥事件等判定結果のデータである。なお、能動
調査については、第 6 編第 9 の 5(2)において詳述する。
29
まず、2 月末基準日データによれば、分析対象となる不祥事件・不祥事故事案の件数、不
祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数等の年度別の推移及び合計は、 A のとおり
表
である。
表 A:不祥事件・不祥事故事案の件数、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数
等の年度別の推移及び合計
特定事案調査等における
不祥事件・不祥事故件数
(2014年度から2018年度
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計
までの対象5年間)
不祥事件件数 39件 15件 15件 45件 96件 210件
特定事案調査 (10件) (14件) (15件) (42件) (93件) (174件)
内訳
能動調査 (29件) (1件) (0件) (3件) (3件) (36件)
不祥事故件数(*1) 174件 229件 316件 604件 673件 1,996件
合計 213件 244件 331件 649件 769件 2,206件
特定事案調査等における
不祥事件・不祥事故募集人数
(2014年度から2018年度
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 合計(*4)
までの対象5年間)
不祥事件募集人数(*2) 59人 64人 67人 95人 142人 273人
内訳 特定事案調査 (12人) (16人) (15人) (50人) (115人) (203人)
(*3)
能動調査 (47人) (48人) (52人) (45人) (28人) (71人)
不祥事故募集人数(*1) 169人 199人 272人 567人 666人 1,521人
合計 228人 263人 339人 662人 808人 1,794人
(*1) 不祥事故事案は全て特定事案調査の対象事案である。
(*2) 同一募集人が不祥事件・不祥事故事案の両方に関与した場合は、不祥事件募集人数に計上した。
(*3) 各調査の対象事案ごとの不祥事件募集人数を表記した。なお、各調査の対象事案につき、重複して関与した
募集人がいるところ、そのようなケースでは同一の募集人を一人と計算して不祥事件募集人数に計上したたため、
各調査の対象事案に関与した募集人の合算人数と不祥事件募集人数は異なる。
(*4) 募集人数に関しては、同一募集人が複数年度で関与したケースがあるところ、そのようなケースでは重複を除き、
複数年度で関与した同一募集人は一人と計算している。
第 3 編第 1 の表 1 下段のとおり、2020 年 2 月末時点における「違反疑い事案」の件数は 1
万 3,396 件である。
他方、表 A 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案の件数は 2,206 件である。
なお、 A 上段のとおり、
表 不祥事件事案 210 件のうち、特定事案調査の対象事案が 174 件、
能動調査の対象事案が 36 件であり、不祥事故事案 1,996 件は、全て特定事案調査の対象事案
である。
また、第 3 編第 1 の表 1 下段のとおり、
「違反疑い事案」に関与した募集人の人数は 9,653
人である。
他方、表 A 下段のとおり、不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数は 1,794 人で
ある。
なお、表 A 下段のとおり、不祥事件事案に関与した募集人 273 人のうち、特定事案調査の
対象事案に関与した募集人が 203 人、能動調査の対象事案に関与した募集人が 71 人であり、
不祥事故事案に関与した募集人 1,521 人は、全て特定事案調査の対象事案に関与した募集人
である。
30
第 2 分析結果25
1 全募集人のうち、不祥事件 不祥事故事案に関与した募集人の割合は、 年平均で約 0.5%
・ 5
であること
第 3 編第 2 の 2 の表 3 下段のとおり、
「違反疑い事案」においては、全募集人に占める「違
反疑い事案」に関与した募集人の割合は、5 年平均で約 3.1%(2,802 人)である。
他方、表 B 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案においては、全募集人に占める不祥事
件・不祥事故事案に関与した募集人の割合は、5 年平均で約 0.5%(460 人)である。
表 B:不祥事件・不祥事故事案に関与した募集人の人数と割合
不祥事件・
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
不祥事故
不祥事件・
不祥事故 228人 263人 339人 662人 808人 460人
募集人数
全体
91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
募集人数
割合 0.25% 0.28% 0.36% 0.73% 0.91% 0.50%
不祥事件 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
不祥事件
59人 64人 67人 95人 142人 85人
募集人数
全体
91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
募集人数
割合 0.06% 0.07% 0.07% 0.10% 0.16% 0.09%
不祥事故 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 5年平均
不祥事故
169人 199人 272人 567人 666人 375人
募集人数
全体
91,984人 92,414人 93,167人 90,753人 88,855人 91,435人
募集人数
割合 0.18% 0.22% 0.29% 0.62% 0.75% 0.41%
25
以下、特定事案調査等に係る不祥事件・不祥事故事案合計のデータ (青色の表)と特定事案調査に係
る「違反疑い事案」 のデータ(いずれも 2 月末基準日データ)とを比較・分析する。なお、参考のため、
不祥事件事案のみのデータ (橙色の表)と不祥事故事案のみのデータ (黄色の表)も併せて示している。
31
2 不祥事件・不祥事故事案を受理した郵便局数は、全体の約 4.4%であること
第 3 編第 2 の 3 の表 4 下段のとおり、
「違反疑い事案」の 5 年間の受理局数は 2,921 局であ
り、簡易郵便局を除く郵便局総数 2 万 0,156 局(2019 年 9 月 30 日時点。以下同じ。
)のうち
の約 14.5%である。
他方、表 C 上段のとおり、不祥事件・不祥事故事案の 5 年間の受理局数は 880 局であり、
郵便局総数のうちの約 4.4%である。
表 C:不祥事件・不祥事故事案を受理した郵便局数
不祥事件・不祥事故 2014年度~2018年度
不祥事件・不祥事故受理局数(*1) 880局
郵便局総数 20,156局
割合 4.4%
不祥事件 2014年度~2018年度
不祥事件受理局数 194局
郵便局総数 20,156局
割合 1.0%
不祥事故 2014年度~2018年度
不祥事故受理局数 829局
郵便局総数 20,156局
割合 4.1%
(*1) 受理局数に関しては、同一の郵便局で不祥事件・不祥事故事案の両方を受理したケースが
あるところ、そのようなケースでは重複を除き、両方を受理した郵便局は一つの郵便局と計算している。
32
3 不祥