6050 Eガーディアン 2021-11-11 15:00:00
調査委員会の調査報告書の受領および役員報酬の減額に関するお知らせ [pdf]
2021 年 11 月 11 日
各 位
会 社 名 イー・ガーディアン株式会社
代表者名 代表取締役社長 高谷 康久
(コード:6050 東証第一部)
問合せ先 専務取締役 溝辺 裕
(TEL.03-6205-8859)
調査委員会の調査報告書の受領および役員報酬の減額に関するお知らせ
当社は、2021年8月31日に開示いたしました「当社子会社元取締役の不正行為に関
するお知らせ」のとおり、当社子会社元代表取締役(以下「当該元代表取締役」とい
う。)による不正行為に対し、社外取締役及び外部専門家を中心に構成される調査委
員会(以下「当調査委員会」という。)を設置し、調査を進めてまいりました。
本日、当調査委員会より、調査の結果判明した不正行為の疑義に関する事実関係と
発生原因の分析、内部統制上の問題についての再発防止策の提言等を目的とする調査
報告書(以下「本調査報告書」という。)が当社取締役会に提出されましたので、下
記のとおりお知らせいたします。
また、本日開催の取締役会において、下記のとおり、取締役の役員報酬の減額を行
うことを決議いたしましたので、お知らせいたします。
株主および投資家の皆様をはじめ、関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配を
おかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
記
1.調査委員会の調査結果
調査委員会により多面的に事実関係の調査を実施しましたところ、結論として、当
該元代表取締役による不正行為として、①不適正な支出行為、②不適正な債務負担行
為、及び③これらに連動する粉飾行為が認められました。
なお、当社またはグレスアベイル社内の組織的共謀、関与があったものとは認めら
れませんでした。
当調査委員会の調査結果の詳細につきましては、添付の本調査報告書をご覧くださ
い。本調査報告書はプライバシー及び機密情報保護等の観点から、個人名及び会社名
等につきましては、部分的な非開示処置を行っております。
2.役員報酬減額について
当社は、当調査委員会からの最終報告を受け、その内容を真摯に受け止め、経営責
任を明確にするため、以下の通り役員報酬の減額を実施いたします。
(1) 取締役の役員報酬減額の内容
代表取締役社長:月額基本報酬の 20%減額
専務取締役 :月額基本報酬の 10%減額
(2) 対象期間
2021年11月から 2022年1月まで3ヶ月間
3.過年度の訂正の範囲と影響額について
当委員会の調査に基づき、当社は過年度の業績を訂正し、過年度有価証券報告書等
の訂正報告書の提出及び過年度決算短信等の訂正を本日提出いたしました。なお、業
績訂正の範囲と影響額につきましては、本日開示の「過年度に係る有価証券報告書等
の及び決算短信等の訂正に関するお知らせ」をご参照ください。
4.当委員会の調査結果を受けた再発防止策について
当社は、当委員会からの再発防止策の提言を踏まえ、下記の再発防止策を実行して
まいります。
(1) 子会社に対する管理監督強化
① 子会社含む取締役へのコンプライアンス研修実施
コンプライアンス意識の維持向上のため、子会社含む取締役に対しコンプライ
アンス研修を定期に実施する。
② 子会社社長の当社経営会議へ出席義務化
週次開催の当社経営会議へ子会社社長の出席を義務化し、子会社経営状態の報
告頻度を増やし、管理監督を強化する。
③ 子会社経理業務の当社への委託
子会社経理業務を当社に委託することにより、経理業務における透明性を確保す
る。
④ 上記内容の関係会社管理規程への明文化
(2) M&Aにおけるデュー・デリジェンスの強化
対象会社が小規模な場合においても、外部専門家によるデュー・デリジェンス
を実施し、M&Aプロセスの透明性を確保する。
(3) 当社内部監査部門の強化
内部監査部門の体制を強化するために人員を増強し、機能強化を図る。
(4) 子会社経理業務フローの見直し
子会社経理業務・出納業務に関する担当者及び承認者の職務を分離し、不正行
為の防止に努める。加えて、当該内容の業務分掌規程及び職務権限規程への明文
化を行う。
また、その他本件に関して新たに開示すべき事項が発生した場合には適宜情報開示
を行ってまいります。
5.今後の対応について
株主・投資家の皆様、お客様、お取引先皆様をはじめとする関係者の皆様には、多
大なるご迷惑とご心配をおかけいたしますこと改めてお詫び申し上げます。今後は全
社をあげて再発防止策を実行し、信頼の回復に努めてまいります。
以上
(別紙)
2021 年 11 月 11 日
イー・ガーディアン株式会社 御中
調 査 報 告 書
イー・ガーディアン株式会社
調査委員会
委員長 楠美 雅堂
委員 瀧澤 秀俊
委員 大川 康平
委員 峯尾 商衡
委員 藤倉 邦之
目次
第1 本調査の概要 ........................................................................................................1
1.はじめに ...................................................................................................................1
2.当調査委員会設置の経緯 ...........................................................................................1
3.当調査委員会の目的 ..................................................................................................2
4.当調査委員会の構成等...............................................................................................2
5.調査対象期間 ............................................................................................................2
6.調査方法 ...................................................................................................................3
(1) 関係者に対するヒアリング ....................................................................................3
(2) デジタルフォレンジック調査 ................................................................................4
7.本件調査の分析等とその限界 ....................................................................................5
第2 調査の結果 ............................................................................................................6
1.当社・GA社の概要及びGA社への出資の経緯等 .....................................................6
(1) 当社の概要 ............................................................................................................6
(2) GA社の概要 ...................................................................................................... 11
(3) 当社のGA社への出資経緯等 .............................................................................. 13
2.不正行為 ................................................................................................................. 15
(1) 不正行為の概要 ................................................................................................... 15
(2) 不正行為に至る事情・管理体制等について.......................................................... 15
(3) 不適正な支出行為 ............................................................................................... 17
(4) 不適正な債務負担行為(ファクタリング取引等) ............................................... 20
(5) 粉飾(架空取引の計上) ..................................................................................... 20
(6) 業績への影響額 ................................................................................................... 24
(7) 株式追加取得に対する会計処理の修正................................................................. 25
第3 要因分析と再発防止策の提言 .............................................................................. 26
1.本件の特異性 .......................................................................................................... 26
(1) a 氏の背信的意図と隠蔽工作 ............................................................................... 26
(2) 内部統制システム構築の遅れ .............................................................................. 26
目次
2.時系列による要因分析と再発防止策の検討.............................................................. 27
(1) 2019 年 8 月(増資引受時) ................................................................................ 27
(2) 2019 年 9 月以降(増資引受時後) ...................................................................... 27
(3) 2019 年 12 月(八重洲口座の管理移管) ............................................................. 28
(4) 2019 年 11 月~2020 年 4 月(H 社の架空売上と F 社の架空請求) ..................... 29
(5) 2020 年 4 月(諸規程の整備・適用時) ............................................................... 29
(6) 2020 年 10 月(完全子会社化時) ....................................................................... 30
(7) 2020 年 10 月以降(b 氏退職後) ........................................................................ 30
(8) 再発防止策の総括 ............................................................................................... 31
第4 結び .................................................................................................................... 35
目次
<主な略語一覧>
文中に定義するほか、以下の略称を用いることがある。
略称 意義
当社 イー・ガーディアン株式会社
GA社 株式会社グレスアベイル
a氏 GA社前代表取締役 a 氏
JPS社 株式会社ジェイピー・セキュア
EGSS社 EGセキュアソリューションズ株式会社
GA社現社長 GA社現社長兼当社取締役寺田剛氏
当社専務 当社現専務取締役溝辺裕氏
a 氏口座 a 氏または a 氏の個人会社である D 社・E 社名義の銀行口座
八重洲口座 GA社名義の C 銀行の普通預金口座であり、もっぱら日常的取
引の入出金を行う口座として開設されていたもの。
管理口座 GA社名義の C 銀行の普通預金口座であり、もっぱら大口資金
の管理を行う口座として開設されていたもの。
b氏 b 氏(2019 年 11 月から 2020 年 10 月までGA社の CFO)
D社 a 氏の個人会社である D 社
E社 a 氏の個人会社である E 社
F社 GA社の取引先である F 社
H社 市場調査会社である H 社
<金額表示>
文中の金額は、消費税を除いた金額で表示している
第1 本調査の概要
1.はじめに
本調査は、いずれも当社が 100%を出資する連結子会社であるGA社及びJPS
社をEGSS社に 2021 年 10 月1日付で吸収合併することを企図し、新体制への移
行を進めている過程において発覚したGA社の不適正な支出・債務負担及び粉飾決
算等の不正行為があったと疑われる事象を対象に行われた。その結果、当調査委員
会として、それら不正行為の存在を確認するとともに、それらが a 氏の独断によっ
て行われた可能性が極めて高いと認定する一方、その要因分析の上で、再発防止に
向け、当社の企業買収時のデュー・デリジェンスの在り方、その後の子会社管理体
制等について改善されるべきであると提言するものである。
2.当調査委員会設置の経緯
① 当社は、サイバーセキュリティ事業の強化及び経営のスピードアップを図る
ため、いずれも当社が 100%を出資する連結子会社であるGA社及びJPS社
をEGSS社に 2021 年 10 月1日付で吸収合併することを企図し、同年 7 月
12 日、その旨の取締役会における承認決議を経て、具体的準備に着手した。
しかし、その手続きのための諸指示事項につき、a 氏の対応は遅延し、かつ
連絡そのものに支障を来すようになったことから、2021 年 8 月 6 日、a 氏をG
A社取締役から解任し、あらたにGA社現社長を代表取締役に、当社専務を取
締役に選任し、役員体制の刷新を行った。
② 当社として、これを機にGA社の銀行残高及び入出金明細等を確認したとこ
ろ、残高に差額があることが判明し、この結果、それまでGA社から当社に提
出されていた銀行取引記録は改竄されたものであるとの疑いが発覚した。ま
た、GA社名義の銀行口座と a 氏口座間の不明朗な受送金やGA社事業との関
連性が認められない会社への送金、さらにはファクタリング会社への債権売却
及び支払い等が行われていたことも判明し、これらの諸事実を隠蔽するため
に、銀行取引記録、契約書及び請求書等の偽造・変造に加え、当社社印の印影
までもが偽造されたものと推測された。
③ こうして発覚した事実を踏まえ、かつ、これらの不正行為は a 氏の独断また
は少なくとも主導で行われており、当社の他の関係者が関与していた疑いは認
められなかったことから、当社は、独立社外取締役及び内部監査担当者に、外
部から専門的知見を有する弁護士を加えて構成する調査委員会が調査を行うべ
きと結論し、2021 年 8 月 31 日開催の取締役会において当調査委員会が設置さ
れたものである。
1
3.当調査委員会の目的
当調査委員会の調査目的は、以下のとおりである。
ⅰ)本件に関する事実関係の確認
ⅱ)本件による業績への影響額の確認
ⅲ)本件が生じた原因分析と再発防止策の提言
ⅳ)その他、調査委員会が必要と認めた事項
4.当調査委員会の構成等
当調査委員会の構成は以下のとおりである。
委員長 楠美 雅堂 (公認会計士 当社独立社外取締役監査等委員)
委員 瀧澤 秀俊 (弁護士 あたご法律事務所)
委員 大川 康平 (弁護士 当社独立社外取締役監査等委員)
委員 峯尾 商衡 (公認会計士 当社独立社外取締役監査等委員)
委員 藤倉 邦之 (当社総務部 内部監査担当)
なお、瀧澤秀俊委員は、当社と特別な利害関係を有しておらず、調査委員として
の独立性及び中立性を有している。
また、本件調査にあたっては、2名の公認会計士の補助を受けたほか、GA社及び
当社のグループ会社の資料等の収集、事務処理等のため、当社職員の補助を受けて
いる。なお、2名の公認会計士は、いずれも当社及び GA 社と、また本件と特別な
利害関係のないものである。
また、後述するデジタルフォレンジック調査は、AOS データ株式会社に委託し、
同社が収集したデータの精査・分類作業につき、表参道パートナーズ法律事務所
(赤坂屋潤弁護士、唐木大輔弁護士、大原宏晶弁護士)による調査の補助を受け
た。なお、AOS データ株式会社及び表参道パートナーズ法律事務所は、いずれも当
社及びGA社と、また本件と特別な利害関係のないものである。
5.調査対象期間
当調査委員会において、本調査の対象としたのは、2019 年 1 月 1 日から 2021 年
9 月 30 日までである。
すなわち、当社がGA社への増資に応じて連結子会社としたのは 2019 年 8 月 20
日であるが、これに先立つGA社の直近決算期(2019 年 5 月期)において、銀行預
金の期末実際残高と期末帳簿残高に 6,904 千円の差額(期末実際残高が少ない)が
2
見られ、さらに遡るとその差額は 2019 年 3 月末から生じていることが確認され
た。そこで、さらに確認のため、概ね四半期遡り、調査対象期間の始期を 2019 年 1
月 1 日としたものである。
また、前述のとおり、GA社の経営体制は 2021 年 8 月 6 日までに刷新されてお
り、以後にあらたな不正行為が生じる恐れは認められないこと、他方、簿外での債
務負担行為などの不正についても、概ねGA社のEGSS社への合併までに明らか
になったものと見込まれたことから、調査対象期間の終期を 2021 年 9 月 30 日とし
たものである。
6.調査方法
当調査委員会は、本件調査にあたり、銀行取引情報・総勘定元帳情報・偽造され
た銀行情報、その他関連資料の検証、関係者に対するヒアリング、GA社の取引先
に対する照会、デジタルフォレンジック調査等を実施した。
なお、書面を含む関連資料の検証内容及びその結果は、後に個別に明らかにす
る。
(1) 関係者に対するヒアリング
当調査委員会では、やむを得ない場合を除き、委員全員が立会いの上、下記の
とおり、延べ 15 名の関係者に対して、直接面談、またはWEB会議システムを
用いてヒアリングを行った。
役職等 氏名 実施日
【当社】
代表取締役 高谷 康久 2021 年 10 月 07 日
専務取締役 溝辺 裕 2021 年 09 月 22 日
取締役 寺田 剛 2021 年 10 月 01 日
元取締役 c氏 2021 年 09 月 29 日
従業員 総務部内部監査担当 d氏 2021 年 10 月 05 日
【GA社】
取締役 e氏 2021 年 10 月 08 日
取締役 f氏 2021 年 11 月 02 日
元取締役 g氏 2021 年 09 月 21 日
元取締役 h氏 2021 年 09 月 08 日
元従業員 CFO b氏 2021 年 09 月 09 日
従業員 管理本部長 i氏 2021 年 09 月 09 日
3
役職等 氏名 実施日
従業員 セキュリティ・サービス・グループ マネージャー j氏 2021 年 09 月 09 日
従業員 システム・エンジニアリング・グループ マネージャー k氏 2021 年 09 月 14 日
従業員 システム・エンジニアリング・グループ l氏 2021 年 09 月 15 日
【その他】
F 社 代表取締役 m氏 2021 年 09 月 14 日
また、a 氏の不正行為に関与したものと疑われる第三者(不正であるとの認識
があることを前提とするものではない)に対し、同様の方法によるヒアリングを
行い、または書面・メール・電話等によって照会を行った。
他方、a 氏に対しても事情聴取に応じるよう要請すべく、直接本人に対し、ま
たはその代理人弁護士を通じて、書面・メール・電話等のほか、自宅訪問を試み
るなど、再三再四にわたり連絡を試みたが、残念ながら、本調査報告書提出日ま
でにこれに応じられることはなかった。
(2) デジタルフォレンジック調査
a 氏が使用していたGA社のメールアカウントから取得された電子メール延べ
18,192 通のドキュメントデータを対象としてデジタルフォレンジック調査を実施
し、以下の事実の有無を確認した。
ⅰ)a 氏が同人または第三者の債務保証等によりGA社に潜在債務を負担
させる行為の有無。
ⅱ)a 氏がGA社にファクタリング取引を行わせた事実の有無。
ⅲ)その他、a 氏の横領・背任・架空取引に該当しうる行為の有無。
ⅳ)a 氏の印章偽造、契約書等の偽造・捏造、またはこれらの行使に関与
した事実の有無。
ⅴ)これらの事実に協力または関与した者の有無。
ただし、GA社が a 氏に貸与していたパソコン、携帯電話は a 氏が持ち出した
まま返還されていないため、当調査委員会の把握していないメールアカウントを
使用したデータの解析はできなかった。
なお、上記レビュー結果及び当調査委員会のヒアリング等による調査結果によ
れば、当社及びGA社内での共謀者や組織的関与をうかがわせる情報は認められ
なかったため、デジタルフォレンジック調査の対象は a 氏のメールアカウントに
とどめた。
4
7.本件調査の分析等とその限界
① 当調査委員会は、前述の関係者に対するヒアリング後の協議を含め、その設
置から本調査報告書提出日まで、延べ 14 回のミーティングを開催し、得られ
た情報の分析と検討を行った。
② その結果として、当調査委員会は以下に述べる結論に達したものである。
しかし、a 氏自身が最後まで事情聴取に応じておらず、かつ当調査委員会に
は強制的な調査権限があるわけでもない。
このため、当調査委員会の分析及びその検討結果は、a 氏の不正行為のすべ
てを網羅したものとの確信に至っているものではない。
また、a 氏の弁明が得られなかったことから、当調査委員会としては慎重に
検討を重ねたところではあるが、その一部においては、不正との評価が過剰な
ものであるとの可能性を否定しない。
かくして、当調査委員会の事実認定及びその評価は、一定の限界がある中で
実施されたものであるから、a 氏の供述、その他当調査委員会が対象とした以
外の資料等が存在し、新たな事実関係等が明らかとなった場合には、本件の事
実認定が変更され、または追加・削除されるべき可能性があることを保留す
る。
5
第2 調査の結果
1.当社・GA社の概要及びGA社への出資の経緯等
(1) 当社の概要
① 当社の沿革(現事業に関連するもの)は、以下のとおりである。
そこからは、当社の成長戦略として、当社事業そのものの拡張とともに、事
業買収・M&Aの手法により他社事業を取り込むことにより、市場変革スピー
ドの速いインターネットセキュリティに関するワンストップ型サービスの提供
体制が整われてきたことがうかがわれる。
年月 概要
1998 年 05 月 大阪府大阪市西区西本町に株式会社ホットポット(資本金 10,000
千円)を設立
2000 年 04 月 本社を大阪府大阪市港区弁天に移転
2001 年 06 月 コールセンター事業開始
2001 年 12 月 人材派遣事業開始
2003 年 04 月 当社グループ内でインターネット掲示板における掲示板投稿監視
事業(現インターネットセキュリティ事業)を開始
2004 年 08 月 本社を大阪府大阪市北区堂島に移転
2005 年 10 月 イー・ガーディアン株式会社に商号変更
2006 年 10 月 本社を東京都港区麻布十番に移転(旧本社を大阪センターへ)
本社に東京センター開設
2009 年 03 月 東京都立川市曙町に立川センターを開設
掲示板投稿監視事業(現インターネットセキュリティ事業)の一
2009 年 04 月
環としてオンラインゲームサポート業務開始
2010 年 12 月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2011 年 06 月 宮崎県宮崎市に宮崎センターを開設
投稿監視システム「E-Trident」をリリース
2012 年 06 月 イーオペ株式会社(現イー・ガーディアン東北株式会社)の株式
を取得し、完全子会社化
2012 年 11 月 ソーシャルメディア運用支援ツール「ソーシャルダッシュボード
+」をリリース
2014 年 07 月 自動識別型画像フィルタリングシステム「ROKA SOLUT
ION」をリリース
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年月 概要
2014 年 08 月 東京都豊島区西池袋に池袋センターを開設
2014 年 09 月 クリエイティブ人材派遣に特化した人材コンサルティングを展開す
る株式会社パワーブレイン(現イー・ガーディアン株式会社)の株
式を取得し、完全子会社化
2014 年 10 月 デバッグ業務に特化したトラネル株式会社(現EGテスティングサ
ービス株式会社)を新設分割により設立
2015 年 04 月 サイバーセキュリティ業務に特化したHASHコンサルティング株
式会社(現EGセキュアソリューションズ株式会社)の株式を取得
し、完全子会社化
2015 年 9 月 熊本県熊本市に熊本センターを開設
2016 年 2 月 リアル・レピュテーション・リサーチ株式会社(現イー・ガーディ
アン株式会社)を設立
2016 年 9 月 東京証券取引所市場第一部に市場変更
2017 年 1 月 デバッグ業務に特化した株式会社アイティエス(現EGテスティン
グサービス株式会社)の株式を取得し、完全子会社化
2017 年 05 月 イーオペ株式会社をイー・ガーディアン東北株式会社に、リンクス
タイル株式会社をEGヒューマンソリューションズ株式会社に、H
ASHコンサルティング株式会社をEGセキュアソリューションズ
株式会社に、それぞれ商号を変更
画像内物体検知システム「Kiducoo AI」をリリース
2017 年 07 月 海外進出を図るためフィリピンに E-Guardian Philippines Inc.を設立
2018 年 04 月 大阪府大阪市北区に大阪GAMELABOを開設
2018 年 10 月 EGヒューマンソリューションズ株式会社及びリアル・レピュテー
ション・リサーチ株式会社を当社が吸収合併
2019 年 01 月 本社を東京都港区虎ノ門に移転
2019 年 08 月 クラウドセキュリティ製品開発業務を行う株式会社グレスアベイル
の株式を取得し、子会社化
2019 年 10 月 ソフトウェアデバッグ業務を行うトラネル株式会社が、ハードウェ
アデバッグ業務を行う株式会社アイティエスを吸収合併
トラネル株式会社をEGテスティングサービス株式会社に商号変更
掲示板投稿監視事業の名称をインターネットセキュリティ事業に変
更
2020 年 04 月 東京都新宿区に新宿サテライトを開設
広島県広島市中区に広島センターを開設
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年月 概要
2020 年 10 月 株式会社グレスアベイルの株式を追加取得し、完全子会社化
ソフトウェア型WAF開発業務を行う株式会社ジェイピー・セキュ
アの株式を取得し、完全子会社化
2021 年 06 月 東京都港区赤坂に赤坂 Ad Process Lab を開設
2021 年 07 月 ベトナムに E-Guardian Vietnam Co.Ltd.を設立
2021 年 10 月 株式会社グレスアベイル及び株式会社ジェイピー・セキュアをEG
セキュアソリュー ションズ株式会社に統合
② 当社及び連結子会社における事業の概要(2021 年 9 月 30 日現在)
当社グループは、当社及び連結子会社 7 社(イー・ガーディアン東北株式会
社、EGテスティングサービス株式会社、EGセキュアソリューションズ株式
会社、株式会社グレスアベイル、株式会社ジェイピー・セキュア、E-Guardian
Philippines Inc.、E-Guardian Vietnam Co.Ltd.)により構成されており、ソー
シャルWEBサービスを運営するクライアントに対する投稿監視サービス、デ
バック、カスタマーサポートその他、インターネットセキュリティ事業等を展
開している。
このうち、インターネットセキュリティの分野に関しては、個人情報漏洩事
件、仮想通貨の流出、キャッシュレス決済の不正利用など、インターネット上
のトラブルが多数生じており、サイバー攻撃の脅威に多くの注目が集められ、
国内サイバー・セキュリティサービス市場も急拡大しているところである。こ
れに対し、当社グループでは、EGSS社を中心としてWEBアプリケーショ
ンの脆弱性診断サービスなどを提供しているものであるが、GA社の技術力・
商品開発力を得て、クラウド型セキュリティサービスの開発及びソリューショ
ンの提供が図られていたものである。
③ 当社の役員の状況は以下のとおりである。
・2021 年 9 月 30 日現在
氏名 役職
高谷 康久 代表取締役(最高経営責任者)
溝辺 裕 専務取締役(最高財務責任者、総務部・経理部担当)
寺田 剛 取締役(営業部・アカウントリレーション部・情報システム部等担当)
楠美 雅堂 取締役 監査等委員
大川 康平 取締役 監査等委員
峯尾 商衡 取締役 監査等委員
8
なお、GA社への出資時(2019 年 8 月 20 日)には、c 氏取締役(当時経理
部担当)が在任していたが、2020 年 12 月 17 日をもって退任している。
④ 当社連結及び単体の業績推移の公表決算値は下記のとおりである。
ただし、連結業績については、本調査によりGA社の粉飾が明らかとなって
いるが、修正前の数値である。修正による損益への影響額については後述す
る。
ア.連結経営指標 単位:千円
回次 第 19 期 第 20 期 第 21 期 第 22 期 第 23 期
決算年月 2016 年 9 月 2017 年 9 月 2018 年 9 月 2019 年 9 月 2020 年 9 月
売上高 3,813,968 5,067,621 5,902,868 6,535,674 7,845,183
経常利益 554,717 840,660 1,049,286 1,201,544 1,380,458
親会社株主 350,584 572,908 736,105 840,768 980,010
に帰属する
当期純利益
包括利益 350,584 570,849 733,286 837,236 932,358
純資産額 1,689,460 2,244,662 2,848,832 3,488,123 4,327,724
総資産額 2,354,632 3,187,195 3,781,907 4,598,445 5,642,494
イ.単体経営指標 単位:千円
回次 第 19 期 第 20 期 第 21 期 第 22 期 第 23 期
決算年月 2016 年 9 月 2017 年 9 月 2018 年 9 月 2019 年 9 月 2020 年 9 月
売上高 3,023,757 3,650,984 4,084,879 4,900,128 6,009,367
経常利益 450,983 702,805 800,933 955,940 1,348,616
当期純利益 295,332 510,465 592,887 756,916 1,029,735
資本金 358,933 364,280 364,280 364,280 364,280
発行済株式 10,359,000 10,405,800 10,405,800 10,405,800 10,405,800
総数
純資産額 1,607,055 2,101,873 2,565,645 3,062,888 3,999,866
総資産額 2,142,678 2,785,891 3,256,957 3,853,380 5,072,527
9
⑤ 組織体制
2019年8月20日現在
株主総会
取締役会 監査等委員会
代表取締役
事業本部 営業部
アカウントリレーション部
情報システム部
経理部
総務部
2021年9月30日現在
株主総会
取締役会 監査等委員会
代表取締役
営業部
アカウントリレーション部
情報システム部
経理部
総務部
※ 2020 年 10 月 1 日より、事業本部を廃止し、現行の組織体制へ移行
10
(2) GA社の概要
① GA社の沿革は、下記のとおりである。
年月 概要
2015 年 06 月 株式会社グレスアベイル発足
2016 年 09 月 事業拡大に伴い、本社を東京都中央区に移転
2017 年 04 月 事業拡大及びサービス設備増強を目的に本社を移転
2017 年 05 月 自社開発によるクラウド型セキュリティサービスを順次リリース
2017 年 11 月 資本金を 1,500 万円に増資
2018 年 06 月 資本金を 2,500 万円に増資
2019 年 01 月 資本金を 3,000 万円に増資
2019 年 08 月 イー・ガーディアンの子会社となる(64.3%)
2020 年 10 月 イー・ガーディアンの完全子会社となる(100%)
② GA社の事業の概要
GA社は、拡大を続けているサイバーセキュリティ市場において、自社開発
のクラウドセキュリティ製品の開発・販売及びソリューションの提供を行うサ
イバーセキュリティ事業を行っている。具体的には、クラウド型セキュリティ
サービス、脆弱性診断サービスの提供を行っている。
③ GA社の役員の推移は下記のとおりである。
・2019 年 8 月 20 日現在
氏名 役職
a氏 代表取締役(最高経営責任者) 2021 年 08 月 06 日解任
g氏 取締役(最高技術責任者) 2021 年 03 月 31 日辞任
h氏 取締役(最高財務責任者) 2020 年 07 月 31 日辞任
e氏 取締役
・2021 年 9 月 30 日現在
氏名 役職
寺田 剛 代表取締役(最高経営責任者) 2021 年 08 月 07 日就任
e氏 取締役
f氏 取締役 2020 年 12 月 17 日就任
溝辺 裕 取締役 2021 年 08 月 07 日就任
11
④ GA社の決算帳簿における業績推移は下記(略)のとおりである。
⑤ 組織図
※ 2021 年 2 月 1 日より、ソリューション事業本部を廃止し、現行の組織体制へ移行
12
(3) 当社のGA社への出資経緯等
既述のとおり、当社のGA社に対する出資は二段階を経て行われており、その経
過は以下のとおりである。
① 増資引受
2019 年 7 月 10 日 守秘義務契約を締結した。
なお、当社は恒常的にインターネットセキュリティ事業に関連するM&A等
の情報取得を試みており、その過程において P 社のネット上でのGA社の資本
提携の申出情報を得たものである。
また、本資本提携は、当時より全額出資ではなく、51%以上 66%未満の範囲
での協議とされていた。これは、GA社代表取締役であった a 氏がIPO(新
規上場)を目指しており、また当社においても連結対象子会社とすることで将
来の事業拡大による投資メリットを業績に反映させうるものとして位置付けた
ものであった。
2019 年 8 月 9 日 GA社株主総会において、募集株式発行及び総数引受契
約書の締結について承認決議があり、また取締役会設置会社移行の定款変更等
を踏まえて代表取締役 a 氏の重任、g 氏・h 氏及びEGSS社代表取締役 e 氏
の新任等が承認された。
2019 年 8 月 13 日 GA社の株式取得について、当社取締役会の承認を経
て、当社及びGA社間で「投資契約書」及び「総数引受契約書」を締結し、G
A社が新たに発行する株式 9,000 株(発行後の株式比率 64.3%)を@33,300
円、総額 299,700 千円を引き受けることが合意された。
2019 年 8 月 20 日 当社からGA社に対し、上記株式払込金全額を支払っ
た。
なお、本増資引受においては、上記のとおり P 社の仲介を受けたのみであ
り、当社によるGA社へのデュー・デリジェンスは当社内部のみにおいて行わ
れ、またその方法は、税務申告書に添付されている決算書の財務諸表の内容の
確認、謄本、定款、規程、組織、従業員の状況、資本政策、事業計画の確認等
について行われ、財務諸表の裏付けとなる預金残高証明書、取引残高証明書等
の第三者作成による徴憑の提出は求めていなかった。
② a 氏からの株式購入による完全子会社化
2020 年 9 月 17 日 当社取締役会の承認を経て、当社及び a 氏間で a 氏の保
有するGA社全株式(5,000 株)を@15,500 円、総額 77,500 千円で売買するこ
とが合意された。
13
なお、本売買は、当社による増資引受後のGA社の業績が低迷を続けてお
り、またGA社の技術力や a 氏の営業力が当社の想定ほどに高くないことが明
らかとなってきことから、IPOなどの計画を白紙化し、当社の完全子会社と
して、信用力・技術力の梃入れをすることを目的とするものであった。
2020 年 10 月 1 日 当社から a 氏に対し、上記売買代金全額を支払った。
ただし、この時点で a 氏の代表取締役の改選は行われず、取締役構成の変更
は事前(2020 年 7 月 30 日付)の取締役 h 氏の辞任のみであった。
2020 年 12 月 17 日 GA社株主総会において取締役会設置会社及び監査役設
置会社としての定款を変更し、また新たにJPS社社長の f 氏を取締役として
新任した。
14
2.不正行為
(1) 不正行為の概要
当委員会は、GA社における不正行為として、①不適正な支出行為、②不適正
な債務負担行為、及び③これらに連動する粉飾行為の3つに分類して認定し、こ
れらによる業績への影響額を分析した。以下、それぞれの類型ごとに詳細を明ら
かにし、これら不正行為を防ぎえなかった管理体制の問題点を指摘する。
(2) 不正行為に至る事情・管理体制等について
① 銀行口座の管理に関する問題点
GA社の八重洲口座及び管理口座は、2019 年 12 月までの間、a 氏一人によ
って管理され、入出金も a 氏のみがその手続きを行っていた。
両口座は、いずれも紙の通帳が発行されていたが、a 氏はその事実を秘匿し
た上、ファームバンキングの照会結果をプリントアウトし、GA社の経理担当
者に提出していた。経理担当者はこのプリントされた照会結果を真正な預金デ
ータとして記帳していた。
なお、a 氏は、GA社において上記2口座はいずれもいわゆるWEB通帳で
あり、紙の通帳は発行されていない旨虚偽の説明をしており、現時点において
も、紙の通帳は返還されていない。
他方、2019 年 12 月の時点でGA社には経理規程、稟議規程を含む内部統制
に関する諸規程は制定されておらず、これらが規程化されたのは当社による増
資引受から半年以上を経た 2020 年 4 月であった。
もっとも、規程として整備されていなくても、入出金等の経理に関する起
案・承認・実行を代表取締役一人がすべてを兼任することが内部統制上問題で
あることは他の取締役らも指摘していたところであり、2019 年 12 月頃、八重
洲口座だけは b 氏(CFO)による管理に移管され、b 氏も八重洲口座のファー
ムバンキング情報の閲覧が可能となった。
しかし、この時点でも管理口座については、a 氏は社員管理のリスクを唱え
て移管を拒否し、入出金権限はもとより、ファームバンキング情報へのアクセ
スまでもが禁止された状態が継続されていた。
2020 年 9 月、株式譲渡による完全子会社化を契機に、あらためてGA社の内
部統制の在り方について検討が行われ、また管理コストの合理化を図り、同社
の経理事務は当社で受託することになった。
上記のとおり、八重洲口座については、2019 年 12 月から b 氏が管理(閲
覧)できていたが、2020 年 8 月、b 氏の退職に合わせて、同口座のファームバ
ンキングのアクセス権限も当社経理に移管しようとした。ところが、a 氏は、
15
そのアクセス権限を渡すことなく、当社からの要請に対しても言を左右しては
ぐらかし、自ら入出金処理を行い、その照会結果をプリントアウトして GA 社
管理本部長の i 氏に渡し、当社はその照会結果を基データとして記帳を行う体
制になっていた。このように、b 氏の退職後は、再び八重洲口座及び管理口座
ともに a 氏一人が管理(入出金及び閲覧)をする状態に戻っていた。
それに対し当社は a 氏に対し、上記銀行口座の管理移管を強く求めたが、a
氏が事実上サボタージュすることでうやむやに先送りされ、2021 年 8 月 6
日、a 氏をGA社取締役から解任するまで状況は変わらなかった。
そして、a 氏解任後ようやく銀行口座残高との照合が行われ、その結果、八
重洲口座及び管理口座に関する粉飾が発覚したものである。
② 銀行口座の情報改竄について
前述のとおり、八重洲口座及び管理口座は、いずれも紙の通帳が発行されて
いながら、a 氏はそれを秘匿し、ファームバンキングの照会結果をプリントア
ウトし、GA社の経理担当者に提出していた。経理担当者はこのプリントされ
た照会結果を真正な預金データとして記帳し経理処理が行われていた。
しかし、紙の通帳や証明印のある残高証明書と異なり、ファームバンキング
からプリントアウトされた照会結果は改竄が容易である。a 氏は、変造した照
会結果をGA社経理担当に提出することでGA社の経理処理を粉飾し、長くそ
の不正行為の発覚を逃れてきたものと考えられる。
③ GA社内の管理体制の不備
前述のとおり、GA社において経理規程、稟議規程を含む内部統制に関する
諸規程が適用されたのは 2020 年 4 月以降であり、それ以前は明確な権限規程
が存在しておらず、a 氏の典型的なワンマン体制が維持されたままであった。
この点、当社は 2019 年 8 月の増資引受に際し、十分なデュー・デリジェン
スを行っておらず、諸規程の不存在に関する問題意識は不十分であった。ま
た、GA社がIPOを目指していたことから、東京証券取引所の上場審査等に
関するガイドラインに沿って、当社との一定の独立性が維持されるよう配慮さ
れ、GA社内部での自助努力による内部統制システムの構築を期待する面もあ
った。これらの事情から、当社によるGA社の内部監査及び指導は徹底されて
いなかった。
また、当社関係者から延べ 2 名がGA社の取締役として選任されたが、もっ
ぱら技術分野や営業分野を担当する者であり、管理部門に精通した担当者の派
遣は行われなかった。
16
このため、2020 年 4 月にGA社に内部統制上の諸規程が適用されるに至った
後も、実際にはそれらは遵守されておらず、たとえば、預金残高の確認は、経
理規程上、出納責任者が四半期末には当該金融機関から残高証明を徴して確認
し、経理責任者に報告することとされていたが、前述のとおり、残高証明の徴
求は行われず、かつその不遵守は放置されたままとなっていた。
④ 不正行為の動機について
前述のとおり、当調査委員会は、a 氏に対し事情聴取に応じるよう再三にわ
たり督促を続けているが、現時点でその実現に至っていない。このため、a 氏
がどのような動機や事情により本件不正行為に及んだものであるのかは未だ判
然としない。
もっとも、a 氏は当調査対象期間の前後において私生活上の変化があったこ
とがうかがわれるほか、a 氏が掌管する個人会社(D 社、E 社など)宛てに資
金流出していたことが確認されており、何らかの私的資金需要から不正行為に
及んだことが推認される。
さらに言えば、2019 年 8 月の当社による増資引受直後に a 氏口座への高額の
資金流出が行われていることから、当初より、M&Aや業務提携を口実として
個人的資金獲得を企図していたのではないかとの疑念も払拭しえないところで
ある。
(3) 不適正な支出行為
① a 氏は、2019 年 8 月 20 日に当社から増資(299,700 千円)が行われた前後
において、再三に渡り a 氏口座に多額の資金を送金しており(2019 年 8 月 20
日 20,000 千円、翌 21 日 5,000 千円)、いずれも自己取引に該当するが、取締役
会決議は経ていない。
また、それ以前にも、2019 年 3 月に 400 千円、5 月に 7,302 千円、6 月に
790 千円、7 月に 600 千円を a 氏口座に振り込みを行い、8 月(20 日以前)に
も 1,315 千円の不適正な支出を行っている。これらは、当社増資後も 2021 年 7
月まで頻繁に繰り返されているが、比較的少額のものであった。それら振り込
み送金の他にカードで引き出すなどによって、GA社の口座から資金を不正に
流出させていたが、それらの資金の動きは会計帳簿に反映させていなかった。
ただし、不適正な支出のみではなく、GA社が資金ショートしそうな時 に
は、逆に a 氏口座から八重洲口座・管理口座に振り込みを行うこともあった。
これらの不適正な入出金は合計で 100 回程度あり、出金したものと入金したも
のを清算した結果、36,211 千円がGA社から不正に流出しているものと認めら
れた。内訳は下記一覧表を参照されたい。
17
② また、上記のようにGA社の銀行口座から直接 a 氏口座に送金するという方
法をとらず、第三者(F 社)を介して、a 氏が掌管する個人会社に 5,700 千円
を送金させたり、ファクタリング会社から a 氏口座に 9,000 千円を振り込ませ
たり、ファクタリング会社に a 氏口座から 7,800 千円の振り込みを行った事例
もあり、合計で 43,111 千円のGA社資金が a 氏に不適正に支出されていたもの
と認定された。詳細は後述する。
③ この他にも、コンサルタント会社等(I 社、J 社、L 社、K 社、F 社等)へ
5,003 千円の支払いを行っているが、これらにはGA社の業務との関係が認め
られず、不適正な支出と認定した。詳細は後述する。
18
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(4) 不適正な債務負担行為(ファクタリング取引等)
① 2021 年 2 月に入ると、上記の不適正支出を行ってきたことで、GA社が資金
ショートを起こすようになってきたと考えられ、a 氏はファクタリング取引に
より、一時的に資金を得て資金ショートを回避しようとしたものと推認され
る。
ファクタリングは、多額の債務負担ないし売掛債権の処分であるにもかかわ
らず、取締役会の決議を経ることなく、不適正に実施している。
またファクタリング会社と取引するためには、GA社の決算書、銀行の通帳
情報、売却債権に関する契約書、作業報告書、請求書等が必要となるが、a 氏
はそれら書類を偽造し、実際の売掛債権額より多くの債権があるかの如く装っ
て、またときには債務者の印影までも偽造して、必要書類を捏造していた。
そのようなファクタリングは一時的な資金調達であるから、1つのファクタ
リングの清算のために別の新たなファクタリングを行わざるを得なくなり、結
局自転車操業の状態に陥っており、その破綻は時間の問題と言えた。
② さらに、上記のファクタリング取引においては、当然、その都度多額の手数料
が生じており、
2021 年 2 月から 8 月までで 4 社との延べ 12 回の取引において、
合計 38,433 千円の手数料がGA社からファクタリング業者に支払われている。
ファクタリング業者との取引詳細は別紙(略)のとおりである。
③ なお、前述のとおり、ファクタリング取引の一部では、本来、GA社に振り
込まれるべき金員を a 氏口座に振り込ませていることがあったが、その際に a
氏は「個人口座振込依頼書」や「臨時株主総会議事録」などを偽造し、さらに
当社印影の偽造まで行っていた。
(5) 粉飾(架空取引の計上)
① 架空原価
前述のような不適正な支出行為を行った結果、当然、銀行の実際残高(以下
「実際残高」という)は、GA社の会計帳簿上の残高(a 氏が偽造した照会結
果を記帳したもの。以下「帳簿残高」という)を下回ることとなる。
そこで a 氏は、架空の原価取引を帳簿に計上することで帳簿残高を減額さ
せ、実際残高との差を縮小しようと画策した。
具体的には、a 氏は、取引実績のある他社名義の請求書を偽造し、原価とし
て計上する一方、実際には振り込みは行っていないのに振り込みをした内容の
照会結果を偽造して、GA社経理担当に提出し計上させていた。
すなわち、当調査対象期間中、2019 年 1 月~2 月は実際残高と帳簿残高での
差額は認められなかったが、2019 年 3 月から差額が生じ始め、当社が増資する
20
前の 2019 年 5 月期の決算書では、期末預金残高は 20,825 千円(帳簿残高)の
ところ、実際残高は 13,920 千円であり、6,904 千円の預金不足が生じていた。
しかし、2019 年 3 月に支払関係の書類を改竄することで実際より 400 千円
多くの経費計上が行われていた。この架空原価の計上がなければ帳簿残高は
21,225 千円であり、その場合の実際残高との差額(預金不足額)は 7,304 千円
になっていたと考えられる。
同様に、2019 年 6 月~9 月には、取引先 3 社(M 社、N 社、O 社)の名義
で、5 回、架空の契約書や請求書等を偽造し、GA社の原価として計上してい
たことが認められ、その合計額は 9,275 千円となっている。
こうした架空原価の計上は、既述の「不適正な支出」による実際残高の不足
を糊塗することを目的としたものと思われ、その検証のため 2019 年 8 月の増
資前までの「架空原価」と「不適正な支出」を対比したところ、下記のとおり
両者はほぼ一致していることが認められた。
21
② 架空売上(H 社・F 社事案)
2019 年 8 月の増資により当社の子会社となった後は、GA社として相応の売
上・収益を計上することが求められていた。そこにおいて上記のような架空原
価の計上を行うと見かけ上の収益を圧迫してしまい、当社の管理が厳しくなる
ことが予想された。そこで、a 氏は、帳簿上の売上げを増やすため、他社に対
する実体のない取引(a 氏一人でシステムコンサルタント業務を行った)を偽
装し、高額の売上高を架空計上して、GA社の業績を一時的に良いものに見せ
る粉飾を行った。
すなわち、a 氏は H 社に対するシステムコンサルタント業務を完了したと称
し、2019 年 11 月 30 日付で 60,000 千円の売上を計上した上、a 氏が管理して
いた管理口座から八重洲口座に宛てて、H 社の名義を冒用して 2019 年 12 月
19 日、同額の入金を行った。それに合わせて、a 氏は、2 か月程度の時間をか
けて作業をしたものと偽り、これに沿った契約書、作業報告書、請求書などを
偽造していた。
そもそも、GA社は、セキュリティ事業と脆弱性診断を事業の柱として営業
している会社であり、システムコンサルタント業務の売上というのは、たとえ
a 氏の個人的業務であるとしても不自然であり、かつ、60,000 千円という多額
の売上が生じるほどに a 氏が当該業務に専念していた様子は全く無く、他の社
員、GA社取締役らからみても疑念があったようである。
しかし、60,000 千円という多額の売上計上という好結果に加え、形式的には
書類は整備されていたことから、疑念は深く追求されることのないままに受け
入れられてしまっていた。
しかし、この高額架空売上の計上により、管理口座においては、
「実際残
高」と「帳簿残高」の差額が拡大することとなった。
③ F 社による架空原価
さらに a 氏は、上記の H 社への業務の外注として、従前より取引(月額 100
千円程度の補助金申請、労働者派遣事業等の資料作成その他に関するコンサル
タント業)を行っていた F 社に依頼し、300 千円の手数料と引き換えに、6,000
千円の架空の原価請求をするよう依頼し、同社から 2020 年 4 月 10 日付請求書
を受領した上、GA社からその支払をさせた。
そして、a 氏は、F 社が受領した金額から、5,700 千円を E 社に対し送金させ
た。
以上の架空原価の計上は、F 社という第三者の協力を得て、その F 社自身が
作成する請求書等を利用している点において、a 氏自ら書類の偽造等行った他
の粉飾事例とは相違が認められる。
22
なお、H 社への業務完了後に約4か月も経てからの外注費の請求であったこ
とから、当社内においてもその不自然さが疑われ、厳しく検証するよう指示さ
れたが、書類が完備していたことから、その時点では実体のない架空原価であ
ることの確認にまでは至らなかった。
④ その他の粉飾
その他、粉飾に分類されるべき不正行為として、以下の事例も認めた。
ⅰ)経費の期間帰属
2019 年 5 月前に生じていた外注費が本来計上されるべき時期に計上され
ず、当社の増資が内定された 2019 年 8 月に請求が行われ、その後支払がな
されている事例がある。GA社の資金繰り上の都合と思われ、不正な資金流
出をともなうものとは認められなかったが、それによって当社は粉飾された
財務情報を基に増資が行われたことになり、しかも増資後の営業費や開発費
に充てられるべき資金が、増資前の旧債務に流用されたことになる。その意
味で、不適正な会計処理と認められる。
ⅱ)K 社事案
GA社は、2019 年 9 月 6 日、K 社(以下「K社」という)に「コンサルタ
ントフィー」として 3,000 千円の支払いを行っている。K社との取引実績が
認められないことからその内容を照会したところ、GA社が業務委託をした
n 氏(以下「n 氏」という)に対してK社が債権を有しており、n 氏への請求
に代えて、GA社の n 氏への支払から回収されたいとの n 氏の指示に対応し
たものである旨の回答がなされた。
しかし、GA社から n 氏に対する業務委託内容は不明であり、同人の指示
によるK社への支払が妥当なものであったかどうか確認には至っていない。
また、仮にGA社の n 氏に対する債務が存在するとしても、GA社における
適正な社内手続きもなく、かつ明確な合意書面のないまま、三者決済を行う
ことが妥当な手続きであるとは到底認められないものと考える。
23
(6) 業績への影響額
以上の不正発生の状況に関して、時系列にまとめたものが表 1 である。
不適正な支出行為、不適正な債務負担行為及び粉飾によって発生したGA社業
績(四半期ごと)への影響額は、表2のとおりである。なお、表2における未収
入金は、当社及びGA社の a 氏による不正行為に基づく同氏に対する返還請求権
ないし損害賠償請求権を意味し、当該未収入金の回収可能性を現時点で見込めな
いことから、その全額について貸倒引当金を計上する会計処理を採用している。
ただし、引き続き a 氏に対し、これらの回収を図っていく必要がある。
24
(7) 株式追加取得に対する会計処理の修正
2020 年 10 月、当社が a 氏から取得したGA社株式については、上記の不正行
為発覚とそれによる業績への影響が判明した以上、その時点において実質的に買
受価格相当の価値を有していなかったことになる。
当該株式譲渡契約書では、GA社の資産の所有に関して表明保証違反に伴う損
害賠償責任が定められている。
それに関する会計処理としては、追加取得持分の実質的価値と追加投資額との
間に生じた差額は、資本剰余金として処理する(連結財務諸表に関する会計基準
第 28 条)のは適切ではなく、個別財務諸表上で取得時に評価を減ずる処理を行
うことが必要と考えられる。
25
第3 要因分析と再発防止策の提言
1.本件の特異性
(1) a 氏の背信的意図と隠蔽工作
本件は、2019 年 8 月に当社がGA社の増資を引き受けた際に、当社から支払わ
れた多額の資金が、その直後からGA社の事業とは関係なく a 氏個人に対して支
出されていることや、a 氏による各種書類の偽造によって巧妙に隠蔽工作がなさ
れていたことなどから見て、元々、資本提携に関する交渉当初より a 氏には明確
な背信的意図があったのではないかと強く疑われるところである。また、a 氏の
その隠蔽手段は、銀行名義の照会結果や、他社との契約書・請求書等の様々な徴
憑書類を偽造するという極めて悪質で巧妙なものであることから、GA社の内部
だけでそれを疑い不正を調査することは極めて困難であったと考えられる。な
お、デジタルフォレンジックによる a 氏のメールの確認や、関係者からのヒアリ
ングにより、本件が a 氏個人による不正を超えて、当社またはGA社内の組織的
共謀、関与があったものとは認められなかった。
(2) 内部統制システム構築の遅れ
このような意図的な不正を防止し、早期発見するためには、そのような不祥事
を想定した二重・三重のチェック体制や人事異動制度、研修等を通じた意識改
革、小さな情報までもが共有される自由で開放的な組織体制などを構築すること
が必要であり、それによって相当程度の効果を挙げうるものと考えられる。
その点、本件では、以下のような諸事情により、GA社に関してその内部統制シ
ステムの構築が遅れていたことが認められる。
① a 氏はGA社の実質的な創業者であり、オーナーとして実権を把握し、代表
取締役を務めていたものであり、しかも当社による増資引受時においては、a
氏個人の有する商品開発力、営業力に期待を寄せていた事情があった。このた
め、当社としては、a 氏自身がGA社に不利益をもたらすような不正を謀るこ
とを全く想定していなかった。
② a 氏は、GA社のIPOを志向していたが、当社としてもそれを期待すると
ころがあり、100%連結子会社とすることにはこだわらずに増資に応じた上、
GA社のIPOに期待さえしていたと言える。このため、子会社の上場審査基
準に抵触することがないよう、あえてGA社の独立性を尊重し、人事・監査な
どによる干渉にも消極的であった。
26
③ ちなみに、当社グループの他の連結子会社についても、GA社と同様にM&
Aの手法により傘下に置いてきたものもあることから、万が一にも同様の不正
行為がなかったかについて、あらためて銀行から残高証明書を徴求するなどし
て検証したが、そのような事象は一切認められなかった。
2.時系列による要因分析と再発防止策の検討
上記のような認定を踏まえ、当調査委員会は、時系列的に対応すべき以下の検討
を行い、それらを踏まえた再発防止策を提言するものである。
(1) 2019 年 8 月(増資引受時)
① 当社がGA社と資本提携し、増資に応じた際の調査としては、前述した当社
内部でのデュー・デリジェンス調査にとどまっていた。そのような拙速な調査
に止まった原因としては、GA社の財務規模(現預金 20,825 千円、借入金
116,359 千円、純資産 3,606 千円など)が大きくなかったことに加え、当社が
GA社の開発するクラウド型セキュリティサービス事業の将来性を高く評価し
ている中で、他のベンチャーキャピタルが同社に興味を示しているとの情報が
あったことなどによるものと思われる。
② しかし、少なくとも銀行口座について残高照会を行い、その回答を得ること
は極めて容易であった。もちろん、当社が a 氏に対しその要請をした場合に
は、これを可としない a 氏に拒絶され、結果として資本提携には至らなかった
可能性もあれば、あるいは a 氏が銀行の残高証明書を捏造した可能性も否定で
きない。しかし、こうした基本的なデュー・デリジェンスの対応を怠ったこと
は事実であり、その結果として本件端緒時の発覚の機会を逸する結果となった
ことは銘記され、反省されなければならないと考える。
③ 当社が今後もM&Aによる事業拡大を図り、成長戦略の柱の一つとするので
あれば、本件を教訓とし、事前のデュー・デリジェンス手続きの相当性・客観
性が確保されるべきであり、相手方の規模によっては外部専門家への委託を含
めて、より慎重な対応が取られるべきである。
(2) 2019 年 9 月以降(増資引受時後)
① GA社は当社の増資引受に合わせて取締役会設置会社となり、a 氏を含む 4
名の取締役のうち、当社の指定を受けた1名が選任された。
② しかし、当社指定の取締役1名は、技術部門の専門家であり、GA社の管理
体制を十分に掌握し監督しうる者ではなかった。
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また、GA社は、取締役会設置などの組織変更にかかわらず、これにともな
って必要な取締役会規程や、代表取締役である a 氏の預金管理に関する権限規
程、経理規程などの整備を進めておらず、内部統制システムの構築は、事後的
に、かつ a 氏の了解が及ぶ限りの範囲で進めていたにすぎなかった。
③ 当社が技術的専門家をGA社の取締役として指定し選任したこと自体に問題
があるわけではないが、子会社の取締役に就任した以上、当社と連携しつつ内
部統制システムの構築に一定の関与を果たすべきであることは言うまでもな
い。ところが本件では、当社は当該取締役を選任するに際し、必ずしも管理部
門への関与を要さないと誤認されるような指示をした可能性があり、少なくと
も管理部門にも目を配るよう明確な指示はされていなかった。
今後、同様に当社から子会社取締役に選任される者に対しては、取締役とし
ての責務を認識させ、また就任後も連携を図り、相応の役割を果たすようにす
べきである。
④ 諸規程の整備が遅れたことについては、背景にIPOとの関連がうかがわれ
るものの、むしろ、内部統制システムの構築はIPOの第一歩でもあり、IP
O志向ゆえに親会社としての関与が弱まり、内部統制システムの構築が遅れた
という弁明は自己矛盾であり合理性は認められない。
今後の当社の子会社戦略におけるIPOの位置づけは別途議論されるべきで
あるが、本件を教訓とし、少なくとも内部統制システムの構築など前提条件が
整った上でIPOの検討が開始されるべきである。
(3) 2019 年 12 月(八重洲口座の管理移管)
① GA社内でも、八重洲口座及び管理口座が a 氏一人の管理下に置かれていた
ことについては、内部統制上の問題としても、また代表取締役が仔細な経理事
務を行うことの合理性の問題としても、その改善が議論されていた。また、当
社からも a 氏から経理担当者への口座管理の移管が指示されていた。
この結果、ようやく 2019 年 12 月に八重洲口座のファームバンキングへのア
クセス権限のみ b 氏への移管が行われた。
② 八重洲口座はその移管時において、実際残高と帳簿残高の帳尻が合わせられ
ていたものの、直近決算期である 2019 年 5 月末時点では、108 千円の差額が
生じており、2019 年 8 月末の時点では 25,719 千円の差額が生じていた。
したがって、八重洲口座の管理移管時に、その時点での照合にとどまらず、
少しでも遡って照合されていたならば、実際残高と帳簿残高の違いが確認さ
れ、本件不正が発覚した可能性があった。
③ その点、経理処理の問題と見るならば、過去に遡ってまで照合することは過
剰な事務負担を課する恐れが無いわけではない。
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しかし、本件の特異性、ことに a 氏が移管要請を拒否して長く独占的に管理
し、ようやく八重洲口座のみ移管されたものの、管理口座の移管は未了のまま
という不自然な状況にあったのであるから、より厳密かつ慎重な照合手続きを
行うことが必要であったと考える。
(4) 2019 年 11 月~2020 年 4 月(H 社の架空売上と F 社の架空請求)
① 2019 年 12 月 19 日、H 社名義の架空売上 60,000 千円の入金があり、他方、
それに関する外注業務費用として 2020 年 4 月に F 社からの架空請求が行われ
た。
② H 社への売上については、当時から a 氏個人による作業実態の存在に疑念が
あり、他方、F 社の架空請求については、その請求時期が明らかに不自然であ
った。とくに後者についてはGA社における原価管理の問題として当社でも調
査を行ったが、契約書類等が完備されていた上、この一連の取引により多額の
売上及び利益が計上されていたことから、踏み込んだ調査は行われず、実態の
解明に至ることはなかった。
③ この一連の取引に関する調査、とくに F 社の架空請求について、外注業務か
ら4か月を経過しての請求であることの異常性について調査が不十分であった
と言わざるを得ない。もとより、GA社の取引について、当時、完全親会社で
はなかった当社の調査権が及ぶ範囲やその行使方法には制約がないわけではな
い。しかし、今般、当調査委員会の照会に対し、F 社代表取締役から任意かつ
速やかに協力が得られ、その結果、上記の真相が判明したことに鑑みれば、当
時においても、書面の形式的確認にとどまらず、F 社にアクセスしていたなら
ば、a 氏の不正が明らかになった可能性を否定できない。
今後は、一定の疑念のある取引に対する調査に際しては、本件を教訓とし、
取引先との信頼関係維持に配慮しつつも、直接のヒアリング実施も検討されな
ければならないと考える。
(5) 2020 年 4 月(諸規程の整備・適用時)
① GA社では、2020 年 4 月になってようやく経理規程、稟議規程を含む内部統
制に関する諸規程が整備され、適用された。
② しかし、諸規程の整備は形式的なものにとどまっていたものと思われ、四半
期ごとの銀行残高照会など、規程上のルールが厳密に運用されていたとは認定
しえなかった。
③ 諸規程は、それが遵守されていなければ意味がなく、また遵守されているか
どうかは常に検証されなければならないことは自明である。もとより、内部統
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制の運用が長期に及んでいる当社のシステムが、すべての子会社、とくに子会
社化して間もない会社にそのまま適用されることは困難な場合もあろう。その
場合には経過規程を設けるなどして、段階的にシステムの浸透を図ることも許
容される場合があるものと考える。
この点、GA社に適用した諸規程については、その作成過程において、GA
社に適合するのかどうか、そこでの運用にいかなる支障が生じる恐れがあるの
か、それを回避するためにどのような調整が必要となるか、など具体的な検討
作業が行われた様子がうかがわれない。
それらの対応が、GA社における諸規程整備の遅れとその適用の不徹底の要
因となり、結果として本件不正行為の発覚を遅らせたものと考えられる。
(6) 2020 年 10 月(完全子会社化時)
① 当社が a 氏からGA社保有株の全部を譲り受けることで 100%子会社化を行
い、これに合わせて取締役会非設置会社への移行などの組織変更を行った。
② その時点でIPOへの志向は放棄されたにもかかわらず、管理口座に関する
a 氏の独占的管理状況は改善されず、当社への移管にはさらに時間を要するこ
ととなった。
その頃、a 氏の代表取締役としての資質にはすでに疑義が生じており、また
諸会議への欠席が続くなど、形式的にもその責務を果たしているとは言えない
状況であった。
それにもかかわらず、a 氏の職務が解かれるまでにはさらに約 1 年を要した
のである。
完全子会社化以前の段階において管理口座の移管が実現しなかったことや、
経営体制の刷新が行われなかったことの背景には、a 氏からの株式買収による
完全子会社化実現を優先せざるを得なかった事情があると思われる。
しかし、完全子会社化が実現した以降は迅速にそれらを推進すべきであった
が、その後の対応にも遅れがあったものと言わざるを得ない。確かに、人事に
は機微の問題もあり、形式的な時間経過のみをもって批判すべきではないが、
管理口座の移管は1年以上前から要請していたものであり、かつ a 氏の意図的
サボタージュを併せ考慮するならば、その背景にあるリスクを推察し、毅然と
対応して然るべきであったと考える。
(7) 2020 年 10 月以降(b 氏退職後)
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① 2019 年 11 月に b 氏がGA社のCFOに就任し、2019 年 12 月頃、八重洲口
座だけは b 氏による管理に移管され、b 氏も同口座のファームバンキング情報
の閲覧が可能となった。
2020 年 10 月 1 日、当社は a 氏からGA社株式を追加取得し、100%子会社
になったこと、及び、同月にCFOの b 氏が退職したことなどから、同社の経
理事務を当社が受託することになった。他方、b 氏が有していたファームバン
キング情報のアクセス権限は当社に引き継がれることなく a 氏のみが持つこと
となった。
そうした状況において、当社が受託した経理事務は、あくまで形式的事務処
理にとどまり、口座情報は a 氏が提供する照会結果によらざるを得なかった。
のみならず、a 氏からの情報提供が遅滞しがちであったことから、当社は a 氏
に対しファームバンキング情報のアクセス権限を移管するよう a 氏に再三要請
したが、言を左右してはぐらかされ先送りにされてしまった。
② このように、100%子会社化と b 氏の退職は、GA社の口座管理を移管させ
る大きな契機であったと考えられる。しかし、上記経緯からすれば、a 氏に対
する疑念を強め、その行動を疑い、より徹底した調査と追求を行うべきであっ
たにもかかわらず、その時点での当社の対応が不十分であったこと、その結果
として本件不正行為の発覚がさらに遅れたことは指摘されなければならない。
(8) 再発防止策の総括
以上の検討結果を踏まえて、当調査委員会では、以下のとおり再発防止策を提
言する。
① 子会社に対する管理体制構築の重要性
GA社では、経理処理における基本的なチェックシステムさえ構築されてい
なかった。例えば、銀行からの残高証明書の入手や、印鑑管理、印鑑使用記録
の作成と管理などについては規程すらなく、あるいは運用が徹底されていなか
ったため、資金管理の杜撰さは疑問の余地がなかった。これらは容易に改善で
きるところであり、当社としても買収に際して、早期にそのような視点を持
ち、改善に取り組むべきであった。ところが当社は、買収後も、GA社の管理
体制について、だれが、どのように管理・指導するのかについて、明確な権限
と責任の分担を決めておらず、その結果、a 氏のワンマン経営と杜撰な管理体制
が継続し、本件不正行為の発覚もいたずらに遅れてしまったと考えられる。
a 氏のような、ワンマン経営者に対するコントロールは、経験が乏しく、また
権限のない社員だけでは難しいところである。その点、親会社である当社がG
A社の役員や社員と緊密に連携し、当社への相談・報告体制を設置し、経営者
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に対しても毅然たる態度で臨むべきであった。しかし、本件ではそれができ
ず、管理口座が最後まで移管されなかったように、a 氏の独断やルーズな対応に
翻弄されてしまったものである。
「経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがあ
る」(財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 I 「3.内部統制の限界」参
照)との前提に立ち、有効かつ実効性のある内部統制システムが構築されてい
なければならない。
当社としては、本件を教訓とし、子会社の役員・社員と連携を含めて、子会
社に対する毅然たる管理体制構築の重要性を再認識すべきである。
② デュー・デリジェンスの重要性
M&Aにおいては、適切にデュー・デリジェンスを実施することが肝要であ
る。買収案件で当社の担当者が自らデュー・デリジェンスを行う場合には、現
金預金などの実体資産については、買収時における残高確認について適切な証
拠を持って行うべきである。具体的には、買収先のすべての銀行口座に関して
銀行発行の残高証明書を入手して残高照合を行うか、または預金通帳を入手し
て残高照合を行うことが必要不可欠である。
相手の企業規模が大きい場合など、当社担当者がデュー・デリジェンスを行
うことが適切でない場合には、外部の専門業者にデュー・デリジェンスを依頼
することを躊躇してはならない。
③ 会議出席の重要性
子会社を含め定例で行われている当社の進捗会議・月次報告会において、子会
社社長の出席を義務付けることが肝要である。体調不良等の理由で長期的に欠席
が継続する場合には、診断書などの提示を求めるべきである。
本件関係者からのヒアリングによると、a 氏は完全子会社化後、同会議に出席
する回数が著しく減っていたにも関わらず、当社はその理由の確認も徹底せず、
COOの代理出席を認めるなど安易に放置してしまったものと言わざるを得な
い。代理ではなく、 氏本人に会議への出席を強く義務づけ、
a その場で経営状況・
経理状況などについて直接質問がなされたならば、本件不正行為の早期発見に
つながった可能性は否定できないところである。
④ 経理業務の当社受託
子会社の経理業務などの重要な管理業務は当社が受託することを原則とし、例
外は限定的にすべきである。また、これを「関係会社管理規程」に明文化するこ
とが肝要である。
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GA社はIPO志向を理由として管理業務を自社にて行っており、当社の子会
社としては例外的な措置となっていた。このため、銀行口座の管理権限を a 氏に
集中させてしまい、不正行為を可能とする機会を与えてしまったものである。本
件を教訓とし、経理業務などの重要な管理業務を当社が受託することについて、
規程上明確にルール化するべきと考える。
⑤ 当社内部監査部門の強化
当社内部監査部門の機能強化を図るべきである。本件買収後において当社内
部監査部門によるGA社の内部監査は 2 回行われている(2020 年 8 月~9 月、
2021 年 5 月)
。
しかしその際は、関係書類の閲覧やヒアリングなどの監査手続を通じた社内
規程の整備や情報資産管理の状況などのチェックに留まり、実体資産の現物確
認や残高の確認手続までには至っていない。時間的にも人的資源においても限
界があったと推察するが、それもまた、本件不正行為の発覚を遅らせた一因と言
わざるを得ない。
現状の内部監査部門の担当者は専任 1 名、兼任 2 名の体制であるが、本件
を教訓とし、予断を持つことなくより実質を伴った内部監査を遂行するため
には、他部署との兼任でもやむを得ないが、内部監査部門の人員増強による
機能強化を図るべきであると考える。
⑥ 経理業務の職務分担の重要性
子会社の経理業務・出納業務に関しては、銀行口座のファームバンキングへ
のアクセス権限者、入出金処理担当者、及び承認者を適切に職務分離すること
が重要である。また、そのことを子会社の業務分掌規程や職務権限規程に明確
に文章化する必要がある。
そのうえで、当社の連結会計に取り込まれる四半期末ごとの残高について
銀行口座の帳簿残高と残高証明書の残高の照合を行うようにルール化・運用
の徹底をするべきと考える。
銀行口座の通帳については、紙の通帳か、WEB通帳かを明確に決め、紙
の通帳の場合は上記職務分離の視点で通帳管理者を決めるべきである。ま
た、WEB通帳の場合には明細書などの改竄の危険が増えることを想定し、
残高証明書の入手は銀行口座の入出金担当者及び承認者以外の者が行うよう
に明確にルール化すべきである。
さらに、実印や銀行印の管理の徹底を行うべきである。GA社以外の子会
社については、当社にて保管管理及び押印簿による使用記録の明確化を徹底
している。しかし、GA社に関しては買収後から今回の不正が発覚する直近
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までの間、押印簿も整備されていなかった。その結果、a 氏に悪質な不正行為
の機会を与えてしまった側面も否めない。
現状では押印簿はすべての子会社で整備されているが、これを継続・徹底
すべきと考える。
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第4 結び
当調査委員会は、限られた時間と権限の中で、最大限の情報収集と分析を行い、
議論を重ね、上記の結論に至った。再三の要請にもかかわらず、a 氏が一切調査に
応じなかったことから、不正行為の動機や取得金の使途など解明に至らなかったこ
とは誠に遺憾である。
本件不正行為は、a 氏による会社資産の私的流用に止まらず、各種書類の偽造変
造による粉飾経理や第三者を巻き込んだ隠蔽工作などの事実が確認されており、当
調査委員会としては極めて計画的で悪質な不正が長期間にわたって繰り返されたも
のと評価せざるを得ない。また、それによるGA社及び当社の損失も甚大なものと
なった。
当社の傘下に入ったとはいえ、代表取締役による犯行であり、早期発見が難しい
背景事情があったことも否定しないが、GA社においても、当社においても、リス
クを想定し、本来あるべき適切な管理を行っていたならば、ここまでの損失拡大は
避けられた可能性があることは指摘されなければならない。
当調査委員会としては、当社が、本調査によって浮き彫りとなった数々の問題点
を真摯に受け止め、グループ企業全体の毅然たる内部統制システムの構築と確実な
実践に務め、再発防止に取り組むことを強く要請し、調査の結びとする。
以上
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