5938 LIXIL 2019-03-13 15:30:00
当社子会社における不適切な取引行為に係る特別調査委員会からの中間報告書の受領について [pdf]

                                                 2019 年 3 月 13 日
各 位
                        会 社 名   株式会社 LIXIL グループ
                        代表者名    代表執行役会長 潮田 洋一郎
                                (コード番号 5938 東証・名証各一部)
                        問合せ先    IR 室 室長     平野 華世
                                (TEL.03-6268-8806)


                当社子会社における不適切な取引行為に係る
               特別調査委員会からの中間報告書の受領について


 当社は、2019 年 2 月 8 日の「当社子会社における不適切な取引行為に係る特別調査委員会設置
に関するお知らせ」においてお知らせしましたとおり、当社の連結子会社である株式会社LIX
ILリニューアルにおいて、当社に対して適切な報告が行われていなかった可能性があること、
及び売上高の一部を早期に計上するという不適切な会計処理を行っていた可能性があることにつ
いて、当該事象の詳細及び当社連結財務諸表への影響度を含め、事実関係解明のために特別調査
委員会を設置し、また再発防止策の検討を行うため、調査を実施しております。
 その過程において、当該事象の詳細及び当社連結財務諸表への影響度の見込み、その他子会社
における類似事例発生の有無の確認の経過などを含め、特別調査委員会より調査の中間報告書を
受領いたしましたので、お知らせいたします。なお、中間報告書の全文につきましては、個人の
プライバシー及び機密情報保護等の観点から、全文に部分的な非開示措置・匿名化を施しており
ます。また、特別調査委員会からの最終的な報告書及び再発防止策についての提言は、2019 年 3
月末を目途に提出されることを見込んでおります。
 なお、本件による当社の連結決算への影響は軽微であると判断し、監査法人と協議の上、過去
の決算訂正は行わない予定であります。また、現在、監査法人による四半期レビュー手続が行わ
れており、2019 年 3 月期第 3 四半期報告書の提出は、2019 年 3 月 14 日になる見込みでありま
す。


 株主・投資家をはじめ関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしております
こと、深くお詫び申し上げます。
                                                            以上
  中間報告書



  2019 年 3 月 13 日




株式会社 LIXIL グループ
  特別調査委員会
                                2019 年 3 月 13 日



株式会社 LIXIL グループ   御中




          株式会社 LIXIL グループ      特別調査委員会

                       委員長      熊谷    真喜

                       委   員    清野    訟一

                       委   員    丸山    琢永
                                                                      目次

はじめに ................................................................................................................................... 1	
第1        本調査の概要 ............................................................................................................... 1	
   1    当委員会設置の経緯...................................................................................................... 1	
   2    本調査の目的 ................................................................................................................. 1	
   3    本調査の対象範囲.......................................................................................................... 1	
   4    当委員会の構成.............................................................................................................. 2	
   5    本調査の期間 ................................................................................................................. 3	
   6    本調査の方法 ................................................................................................................. 3	
       (1) インタビューの実施 ............................................................................................... 3	
       (2) 会計データ、業務データ及び関連資料等の閲覧及び検討 ............................... 4	
       (3) デジタル・フォレンジック調査 ........................................................................... 4	
       (4) アンケート調査 ....................................................................................................... 5	
       (5) 自主申告の要請 ....................................................................................................... 5	
第2        本調査の前提となる事実............................................................................................ 5	
   1 当社の概要 ..................................................................................................................... 5	
   2 LR の概要........................................................................................................................ 6	
   3 LBT の概要 ..................................................................................................................... 7	
   4 LIXIL 鈴木シャッターの概要 ...................................................................................... 7	
   5 LIXIL 沖縄販売の概要 .................................................................................................. 8	
第3        本調査により判明した事実........................................................................................ 8	
   1 LR について判明した事実 ............................................................................................ 8	
    (1) 本調査の結果の要旨 ............................................................................................... 8	
    (2) 本調査により把握した前提事実 ........................................................................... 9	
    (3) 本調査の結果判明した事実関係 ......................................................................... 10	
    (4) 連結財務諸表への影響額 ..................................................................................... 12	
   2 LBT について判明した事実 ....................................................................................... 12	
    (1) 本調査の結果の要旨 ............................................................................................. 13	
    (2) 連結財務諸表への影響額 ..................................................................................... 13	
   3 LIXIL 鈴木シャッターについて判明した事実......................................................... 14	
    (1) 本調査の結果の要旨 ............................................................................................. 14	
    (2) 本調査の遂行中に実施された会議 ..................................................................... 14	
    (3) 連結財務諸表への影響 ......................................................................................... 15	
   4 LIXIL 沖縄販売について判明した事実 .................................................................... 16	
    (1) 本調査の結果の要旨 ............................................................................................. 16	
    (2) 連結財務諸表への影響額 ..................................................................................... 16	
第4        まとめ ......................................................................................................................... 16	
はじめに

 本報告書は、株式会社 LIXIL グループ(以下「当社」という。       )が設置した特別調査委
員会(以下「当委員会」という。   )が、2019 年 3 月 12 日までに実施した下記第 1 記載の調
査(以下「本調査」という。 )に基づき、中間報告を行うものである。
 当委員会は、今後、原因分析及び再発防止策等について更なる調査を行い、最終報告を
行う予定である。


第1    本調査の概要

1   当委員会設置の経緯

  2018 年 12 月 3 日、当社の連結子会社である株式会社 LIXIL(以下「LIXIL」という。)
に対し、当社の連結子会社である株式会社 LIXIL リニューアル(以下「LR」という。        )の
第一事業本部において架空受注や不適切な会計処理等が行われた疑義があるとの申告があ
った。かかる申告を契機として、LIXIL において社内調査を実施した結果、LR において売
上計上基準に違反して早期に売上を計上する等の不適切な会計処理を行っていた可能性が
ある(以下「本件疑義」という。       )ことを把握した。
  そこで、当社執行役会は、2019 年 2 月 8 日、透明性が高く、実効性の高い調査を実施す
るとともに効果的な再発防止策について提言を受けるため、既に実施した社内調査に関与
がなく、当社と利害関係のない弁護士及び公認会計士で構成される特別調査委員会を同月
12 日付けで設置することを決議した。

2   本調査の目的

    当委員会の本調査の目的は、以下のとおりである。
     ① 本件疑義に関する事実関係(類似事象の存否を含む)の調査
     ② 連結財務諸表への影響額の確定
     ③ 本調査により判明した事実における要因の究明と再発防止策の提言

3   本調査の対象範囲

  本調査を開始した後、当委員会は、LIXIL においてビルディングテクノロジー事業を行
う事業部門(以下「LBT」という。     )のビル東関東支店ビル千葉営業所1(以下「ビル千葉
営業所」という。   )に関して、2018 年 10 月 12 日に LBT の外部の取引業者より当社の取締
役代表執行役社長 兼 CEO (兼) LIXIL 代表取締役社長 兼 CEO(2018 年 10 月 12 日当時)の
瀬戸欣哉氏宛てに、ビル千葉営業所から①納品途中・納品前に代金全額の請求を求められ
る、②請求完了後に発生した追加工事について売上済みで支払いができないといわれる、
③別物件で支払いがなされる事実がある旨が通知されたため、2019 年 2 月 6 日までに
LIXIL において社内調査が実施され、これによりビル千葉営業所においては 2015 年 7 月よ
り売上の先行計上が行われていたとの調査結果が得られていたことを把握した。
  また、同じく本調査を開始した後、当委員会は、当社の連結子会社である株式会社
LIXIL 鈴木シャッター(以下「LIXIL 鈴木シャッター」という。       )に関して、2018 年 11 月

1
 2015 年 7 月時点の名称は、首都圏営業本部千葉支社ビル千葉支店千葉ビルフロント営業
所。



                             1
26 日に、当社が設置した社外通報窓口である法律事務所宛てに、LIXIL 鈴木シャッターに
おける不適切な会計処理を示唆する匿名の情報提供が行われていたことを把握した。
  そこで、当委員会では、本件疑義の申告のあった LR の第一事業本部を中心に調査を開
始した。その結果、後記第 3,1 に記載のとおり、LR における不適切な会計処理は、主体工
事完了基準という売上計上基準を前提に、支店長及び施工管理者が、月次の売上及び事業
利益の計画数値を達成することを目的として行っていたこと、その手口として、主体工事
を行う外注業者に対して、実際と異なる工事完了日を売上計上処理の際に必要となる工事
完了報告書に記載するよう要請し、主体工事の完了前に残工事も含めて LR に工事代金全
額の請求を行わせていたことが明らかとなった。これを踏まえると、本件疑義と類似の事
象は、当社グループにおける事業のうち、工事外注業者に施工を委託するビルディングテ
クノロジー事業において発生している可能性があると認められた。他方、主体工事完了基
準ではなく顧客への製品の到着日又は製品完納時をもって売上計上を行う物販事業におい
ては、類似の手口による不適切な会計処理を行う余地はないと考えられた。これに加え、
LR において不適切な会計処理が行われていたマンションの改修工事は、1 件当たりの売上
金額が多額であり、工期が遅延した場合の計画数値への影響も大きいという特殊性がある
一方で、物販事業においては取引 1 件当たりの売上金額の計画数値への影響は小さいと思
料された。
  また、LR の第二事業本部、LIXIL のウォーターテクノロジー事業、ハウジングテクノロ
ジー事業、キッチンテクノロジー事業、流通・小売り事業、住宅・サービス事業等におけ
る取引は、物販を中心としており、中には簡単な設置作業が付随する取引もあるものの、
その場合の取付業者に対する発注等の業務フローは LR 第一事業本部及び LBT における請
負工事の業務フローとは大きく異なり、また、取引 1 件当たりの売上金額も小さく、これ
を踏まえると、LR 第一事業本部において実行されたものと類似の手口による不適切な会計
処理が行われる可能性は低いと考えた。
  また、ビル関係の請負工事を行う当社の海外の連結子会社は、取引慣行が大きく異なる
上、顧客の承認のない代金請求行為について厳重なモニタリングが行われていること、取
引開始時に顧客は金融機関の保証を得なければならないことを踏まえると、LR 第一事業本
部において実行されたものと類似の手口による不適切な会計処理が行われる可能性は低い
と考えた。
  以上の経緯から、当委員会は、①LR 第一事業本部、②LIXIL の LBT、③LIXIL 鈴木シャ
ッター及びその 100%子会社である株式会社 LIXIL 沖縄鈴木シャッター(以下「LIXIL 沖
縄鈴木シャッター」という。、並びに④2015 年 4 月に設立され、LBT の沖縄支店の事業を
                )
承継して LR・LBT と同じくビル・マンション関係の請負工事を営む、当社の連結子会社
である株式会社 LIXIL 沖縄販売(以下「LIXIL 沖縄販売」という。)を調査対象とすること
とした。

4   当委員会の構成

 当委員会の構成は以下のとおりであり、当委員会の委員は当社と利害関係を有していな
い。
   委員長 熊谷 真喜(祝田法律事務所 弁護士)
   委 員 清野 訟一(祝田法律事務所 弁護士)
   委 員 丸山 琢永(PwC ビジネスアシュアランス合同会社 公認会計士)

 本調査では、厳しい時間的制約のある中で、複数の法人について適切な調査範囲を設定
し深度のある調査を行う必要があった。そのため、委員会が機動的に調査手法を決定し、
適切な調査を実行するためには、LIXIL に設置された本調査の事務局(以下「事務局」と
いう。)と随時情報を共有しながら、迅速に、デジタル・フォレンジック調査の対象とな



                         2
る機器・データ等の選定、ヒアリング対象者の選定、会計データ等の取得、アンケート調
査の実施及び自主申告の要請等を行う必要があり、また、当社の内部監査部門が有する企
業集団監査に関するノウハウ・経験・情報等を最大限に活用することが有効であることが
明らかであった。
  加えて、本調査の端緒となった申告は、事務局が設置された LIXIL の子会社である LR
に関するものであり、適切に情報管理を行えば、委員会と事務局が随時調査方針・情報を
共有することが調査の弊害になることはないと考えられたことから、当社は、日本弁護士
連合会が策定した「企業等不祥事における第三者ガイドライン」が規定する「第三者委員
会」ではなく、特別調査委員会である当委員会により本調査を行うこととした。
  ただし、当社は、当委員会に対して調査手法等を一任し、当委員会は、自らの完全な裁
量に基づいて調査手法等を決定した。また、調査に基づく事実認定の権限及び調査報告書
の起案権は当委員会に専属しており、かつ、当委員会は調査により判明した事実とその評
価を当社の現在の経営陣の不利となる場合であっても調査報告書に記載することとし、当
委員会が本調査の過程で収集した資料等については、当委員会が処分権を専有している。
  以上のとおり、当委員会では、 「企業等不祥事における第三者ガイドライン」の趣旨を
十分に踏まえた独立性・中立性のある調査を実施した。
  なお、当委員会は、当社に設置された事務局の支援を得ることに加え、本調査の補助者
として、当社と利害関係を有していない以下の外部専門家を調査業務の補助者として選任
した。
          所属                  氏名等
祝田法律事務所              弁護士中林数基、同戸口拓也
                     公認会計士本多守、同那須美帆子、同中山崇、
PwC ビジネスアシュアランス合同会社
                     同白髭英一、田中洋範、他 13 名

5   本調査の期間

 当委員会は、当社に対して本中間報告書を提出した時点において、2019 年 2 月 12 日か
ら同年 3 月 12 日までの期間、本調査を実施し、その間 19 回の委員会を開催した。

6   本調査の方法

    当委員会は、主として以下の方法により調査を実施した。

(1) インタビューの実施

 当委員会は、LR、LBT 及び LIXIL 鈴木シャッターの役職員である以下の者(合計 40 名)
に対しインタビューを実施した。
 なお、以下に記載する役職は、本調査開始時である 2019 年 2 月 12 日時点のものである。

         対象者                所属・役職等
    LR
    濵田   晋      代表取締役




                        3
 LBT




 LIXIL 鈴木シャッター
 山田 智            代表取締役・社長執行役員




(2) 会計データ、業務データ及び関連資料等の閲覧及び検討

 当委員会は、本件疑義に関連する可能性がある会計データ、業務データ及び各種証憑書
類等の関連資料の閲覧及び検討を行った。また、社内規程等の関連資料についても当委員
会が必要と認める範囲で閲覧及び検討を行った。


(3) デジタル・フォレンジック調査

 当委員会は、本件疑義に関連する可能性がある LR、LBT 及び LIXIL 鈴木シャッターの
役職員 45 名について、会社貸与のパーソナルコンピュータ等に保存されていた電子データ
を保全した。保全した電子データは、可能な限り削除ファイルの復元処理を施した上で、
メール及びその他の電子データのうちワードファイル、エクセルファイル、パワーポイン
トファイル、PDF ファイル等で当委員会が必要と認めたものについて分析及び調査を行っ
た。



                         4
 また、当委員会は、LR、LBT 及び LIXIL 鈴木シャッターの役職員(退任者を含む)14
名について、メールサーバに保存されていた同人らのメールデータを保全し、分析及び調
査を行った。


(4) アンケート調査

    当委員会は、以下の役職員に対してアンケートを実施し、回答を得た。

                                  対象者                     回答を得た数
LR                  すべての役員及び従業員(339 名)                      333 名
LBT                 営業、業務調達及び施工管理を担当する部                     409 名
                    門の役員及び従業員のうち、支店長、セン
                    ター長、営業所長、GL、TL 及び担当者の
                    職位に該当する従業員(410 名)
LIXIL 鈴木シャッター       1 回目:営業本部の各支店に在籍する一部                    276 名
                    の従業員(283 名)
                    2 回 目 : す べ て の 役 員 及 び 従 業 員 ( 480     453 名
                    名)
LIXIL 沖縄販売          すべての役員及び従業員(42 名)                        41 名
LIXIL 沖縄鈴木シャッター     すべての役員及び従業員(9 名)                          9名

 上記アンケートにおいて回答が得られなかった対象者は、病気療養のための休職者、育
児休暇取得者等であり、回答できない理由について合理性はあるものと認められる。


(5) 自主申告の要請

 当委員会は、LR に対し、2018 年 3 月、6 月、9 月、12 月に売上計上したすべての物件
(ただし、受注金額が 1 百万円以下の小額物件は除く。     )について、不適切な業務処理又は
会計処理を行っているものについてはその旨の自主申告を求め、正常な取引であると主張
する物件については客観的な証憑の提出を求めた。
 また、当委員会は、LBT 及び LIXIL 沖縄販売に対し、会計データ及び工程管理データの
分析等の結果、売上の先行計上が行われた可能性があると判断した物件について、不適切
な業務処理又は会計処理を行っているものについてはその旨の自主申告を求め、正常な取
引であると主張する物件については客観的な証憑の提出を求めた。
 当委員会は、これら提出された自主申告について、アンケート調査の結果及びデータ分
析の結果を含む本調査における判明事実を踏まえて、確認・検討を行った。


第2    本調査の前提となる事実

1   当社の概要
                                                (2018 年 3 月 31 日時点)
名称          株式会社 LIXIL グループ
上場市場        東京証券取引所市場第一部、名古屋証券取引所市場第一部
決算日         3 月決算
株主構成        日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)(4.59%)、日



                                5
              本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)                 (4.53%) 、STATE
              STREET BANK CLIENT OMNIBUS OM04(常任代理人 香港上海銀行
              東京支店)   (3.34%)  、野村信託銀行株式会社(信託口)           (3.07%)、
              JPMC OPPENHEIMER JASDEC LENDING ACCOUNT(常任代理人 株
              式会社三菱東京 UFJ 銀行)       (2.71%)、第一生命保険株式会社(常任代
              理人 資産管理サービス信託銀行株式会社)             (2.26%)、LIXIL 従業員持
              株会(2.22%)  、日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口
              5)(1.92%)、株式会社三井住友銀行(1.91%)       、STATE STREET BANK
              WEST CLIENT – TREATY 505234(常任代理人 株式会社みずほ銀行決
              済営業部)   (1.65%)他
代表者           代表執行役社長          瀬戸   欣哉
本店所在地         東京都江東区大島二丁目 1 番 1 号
従業員数          61,140 人
事業内容          ウォーターテクノロジー事業、ハウジングテクノロジー事業、ビルデ
              ィングテクノロジー事業、キッチンテクノロジー事業、流通・小売り
              事業、住宅・サービス事業等
会計監査人   有限責任監査法人トーマツ
(注)株式会社三菱東京 UFJ 銀行は、2018 年 4 月 1 日付けで株式会社三菱 UFJ 銀行に商号
変更している。

2   LR の概要

                                                  (2018 年 3 月 31 日時点)
    決算日            3 月決算
    代表者            濵田 晋
    本店所在地          東京都江東区大島二丁目 1 番 1 号
    従業員数           301 名

  LR は、当社グループの主要な事業の一つであるビルディングテクノロジー事業を中心に
営む株式会社である。
  2013 年 4 月 1 日、株式会社新日軽ビル建材販売と LIXIL のリフォーム営業部(ビル系の
改修工事専門部門)が統合し、株式会社 LIXIL ビルリフォーム販売が発足した。その後、
2015 年 4 月 1 日には、株式会社 LIXIL リニューアルを吸収合併し、また株式会社サンウェ
ーブリビングデザインの事業を譲り受け、現在の商号に変更した。
  LR では、第一事業本部において、既存のマンション・ビル・大型店舗等の改修工事の設
計・施工等を行い、第二事業本部において、住宅設備機器及び水回り製品の販売等を行っ
ている。ビル・大型店舗等の改修工事については、ゼネコン等から業務を受託することが
ほとんどであるが、マンションの改修工事については、マンションの管理組合から直接業
務を受託することも多い。

    LR の経営成績(日本基準)は、以下のとおりである。

                                                       (単位:百万円)
         期別          売上高            営業利益      経常利益     当期純利益
     2016 年 3 月期      18,038          2,185    2,204     1,386
     2017 年 3 月期      17,772          2,265    2,286     1,497
     2018 年 3 月期      15,960          1,241    1,257      848


                                       6
3   LBT の概要

 LBT は、LIXIL において、当社グループの主要な事業の一つであるビルディングテクノ
ロジー事業を中心に営む部門である。
 ビル建材等の製造・販売及びこれら製品の取付けの請負工事を中心に営んでいるが、一
部、既存ビルの改修工事も行っている。

4   LIXIL 鈴木シャッターの概要

                                     (2018 年 3 月 31 日時点)
    決算日       3 月決算
    代表者       山田 智
    本店所在地     東京都豊島区南大塚一丁目 1 番 4 号
    従業員数      440 名

  LIXIL は、2000 年 10 月、鈴木シャッター工業株式会社を株式交換により子会社化し、
2011 年 4 月に現在の商号に変更した。100%子会社に LIXIL 沖縄鈴木シャッターがある。
  LIXIL 鈴木シャッターでは、防火性能・防煙性能を備えたシャッター等の製造・販売・
施工等及びシャッター等のメンテナンス事業を行っている。シャッター等の施工について
は、ゼネコンから業務を受託することがほとんどであるが、メンテナンスについては、ビ
ルのオーナー又は管理会社等から直接業務を受託することもある。




                          7
    LIXIL 鈴木シャッターの経営成績(日本基準)は、以下のとおりである。

                                                   (単位:百万円)
         期別         売上高      営業利益         経常利益      当期純利益
     2016 年 3 月期    12,004    831           825       549
     2017 年 3 月期    11,134    834          1,196      811
     2018 年 3 月期    11,956    848          1,138      799



5   LIXIL 沖縄販売の概要

                                              (2018 年 3 月 31 日時点)
    決算日            3 月決算
    代表者            辻 智之
    本店所在地          沖縄県宜野湾市字大謝名 237 番地 5
    従業員数           28 名

 LIXIL 沖縄販売は、当社グループの主要な事業の一つであるビルディングテクノロジー
事業を中心に営む株式会社である。2015 年 4 月 1 日に設立され、LBT の沖縄支店の事業を
承継した。
 LIXIL 沖縄販売では、ビル建材等の製造・販売及びこれら製品の取付けの請負工事を中
心に営んでいるが、一部、既存ビルの改修工事も行っている。

    LIXIL 沖縄販売の経営成績(日本基準)は、以下のとおりである。

                                                   (単位:百万円)
         期別         売上高      営業利益         経常利益      当期純利益
     2016 年 3 月期       -      ▲8           ▲8         ▲9
     2017 年 3 月期     3,170    251          252        168
     2018 年 3 月期     3,848    211          217        141


第3    本調査により判明した事実

1   LR について判明した事実

(1) 本調査の結果の要旨

 LR においては、過年度より、複数の支店において、①工事完了日を操作し、売上計上基
準に違反して早期に売上を計上する行為(以下「工事完了日操作による先行売上」とい
う。)及び②受注物件を恣意的に分割し、工事が完了したものだけ早期に売上を計上する
行為(以下「物件分割による先行売上」という。 )が認められた2。当委員会は、これらの


2
 LR においては、日本の会計基準で財務諸表を作成しているが、後記のとおり、当社の連
結財務諸表は国際基準(IFRS)で作成している。そのため、LR において売上の先行計上
があった場合、当社の連結財務諸表上は、当該物件に係る利益のみが先行して計上される
結果となる。



                               8
行為は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していないものと判断した。
 直近では、2018 年 3 月期においては 9 件、2019 年 3 月期の第 2 四半期においては 20 件
の工事完了日操作による先行売上があったものと認められる。
 なお、LR においては、架空受注(受注実態がないのに受注登録を行う行為)は認められ
なかった。

(2) 本調査により把握した前提事実

ア    売上計上基準

 LR を含む、当社グループのビルディングテクノロジー事業を営む部門では、すべて、同
一の売上計上基準を採用している。
 製品を 1 個単位で販売する売買取引(以下「単品取引」という。)については、売買の目
的物の顧客への到着日をもって売上計上を行っている。
 複数の製品一式を販売する売買取引(以下「製品物件取引」という。   )については、す
べての製品を引き渡した日をもって売上計上を行っている。
 取付工事の施工を請け負う取引(以下「工事付き物件取引」という。   )については、請
け負った工事のうち主体工事がすべて完了した時点をもって売上計上を行っている。この
工事付き物件取引の売上計上に係る基準を、主体工事完了基準という。主体工事以外の工
事(以下「附帯工事」という。  )については、予めこれに要する原価を見積もり、その額
を計上した上で、売上を計上する。
 主体工事及び附帯工事のそれぞれの内容は、以下のとおり定められている。

              主体工事                         附帯工事(原価見積り計上もの)
【カーテンウォール工事】                             クリーニング、網戸、面格子、オペレータ
方 立及 び方立 カバ ー、無 目及 び無目 カバ                ーフェース
ー 、 ユ ニ ッ ト 、 耐 火 ボ ー ド 、 BBOX 、 額
縁、パネル、笠木、ボーダー、オペレータ
ー、エコレーター、エンジン、チャンバー
ボックス、ベンチレーター、シール、化粧
カバー
【それ以外の工事】                                網 戸、 サッシ 調整 、クリ ーニ ング、 シー
サッシ工事、扉工事、オペレーター工事、                      ル、錠前、押棒、戸当り、面格子
フロント工事、エンジン工事、手摺工事、
サ ニタ リー工 事、 厨房工 事、 リビン グ工
事、耐火ボード工事

 主体工事完了の時点は、外注業者から工事完了報告書の提出を受けることによって確認
している。

イ   業務フロー

 ビルディングテクノロジー事業における基本的な業務フローは、以下のとおりである。

受注         営業は、顧客から要求のあった概ねの仕様に基づき原価予算を立て、交渉
           を行い、顧客から注文書又は設計手配指示書を交付された段階で、受注等
           管理システムである T-PROCESS に受注登録を行う。
受注金額の      営業からの依頼に基づき設計を行い、詳細の仕様に基づき原価予算を見直
追加・変更      す。これに基づき、営業は、顧客との間で当初受注額の変更について交渉



                                     9
           する。受注額の変更があった場合は、営業は、顧客から新たに注文書又は
           設計手配指示書を入手し、T-PROCESS に変更後の受注額を登録する。
製作手配       業務は、設計図面から必要な製品を選定し、LIXIL 製品については LIXIL
           の工場に発注を行い、それ以外の製品については外注業者に発注を行う。
           発注に際しては、注文書を発行し、注文請書を回収する。
業者手配       施工管理は、施工計画を立てて必要な外注業者(以下、施工を行う外注業
           者を「工事外注業者」という。    )を選定し、工事の手配をする。手配に際し
           ては、注文書を発行し、注文請書を回収する。
納品確認       業務は、外注業者からの納品書や、施工管理からの納品状況報告に基づ
           き、業務が発注した製品の搬入を確認し、当該物件について仕入を計上
           し、T-PROCESS に登録する。また、施工管理は、工程管理システムである
           BKP に搬入日を登録する。
現場管理       施工管理は、外注業者からの納品書や現場取付けの進捗状況を確認し、当
           該物件について仕入を計上し、T-PROCESS に登録する。
出来高請求      顧客から受注した工事の完工前であっても、工事の進捗に応じて、顧客に
           出来高を査定してもらい、請求を行う。
売上         施工管理は、工事外注業者から回収した主体工事に係る工事完了報告書等
           の受領をもって、物件の売上計上処理を行う。附帯工事については、金額
           を見積もり、その額を計上する。
確認書等の      LR が元請となってマンションの改修工事等を行った場合には、工事の完了
取得         時に、当該住居の住民に対し鍵の引渡等を行い、署名と確認印をもらう。
代金回収       代金(出来高請求をしている場合には、残金)を請求し、これを回収す
           る。


ウ   目標計画数値と売上準備会議

 LR においては、毎事業年度、売上高、事業所利益、受注高等について目標数値を設定す
る。目標数値は、まず上期(4 月~9 月)と下期(10 月~3 月)で設定され、各支店におい
て月次の計画にまで具体化される。計画の達成率は、社長、事業本部長、支店長ほかの営
業ラインの役職員の人事考課における主要な考慮要素とされている。
 各支店は、計画の進捗状況を、週次で、第一事業本部長及び社長等に報告する。
 また、各支店では、毎月、売上準備会議を開催し、その月に売上計上が予定されている
物件の進捗について確認を行っている。売上準備会議の出席者は、各支店の支店長、売上
計上責任者たる施工管理者、並びに各物件の施工担当者及び営業担当者である。
 LR 全体の業績は、月次で開催される業績確認会議において、LIXIL のビルディングテク
ノロジー事業の担当者(2018 年 3 月以前においては、リフォーム事業部の担当者)と共有
される。

(3) 本調査の結果判明した事実関係


    ア   判明した売上の先行計上

 LR においては、2018 年 3 月から同年 12 月までの間、以下の取引において、工事完了日
を操作することにより、売上の先行計上が行われていた。




                          10
             物件名          売上計上日       売上金額(単位:円)
関東支店
                          2018/3/30
マンション東関東支店
                          2018/3/31
                          2018/3/30
                          2018/3/31
                          2018/3/31
                          2018/3/31
                          2018/9/30
                          2018/9/30
                          2018/9/29
                          2018/9/30
                          2018/9/30
                          2018/9/29
                          2018/9/30
                          2018/9/30
                          2018/9/30
                          2018/9/30
                          2018/9/30
マンション東関東支店千葉営業所
                          2018/9/29
                          2018/9/29
マンション西関東支店(旧神奈川支店)
                          2018/3/30
                          2018/3/29
                          2018/3/30
                          2018/9/29
                          2018/9/30
                          2018/9/29
                          2018/9/28
                          2018/9/29
九州支店
                          2018/9/30
                          2018/9/30

 上記 29 物件のうち、                   は、施工担当者が
主体工事が完了したと誤認して売上計上したものと認められる。
 その他の物件については、売上計上の責任者たる施工管理者は、主体工事が完了してい
ないことを認識しながら、支店長の明示又は黙示の指示に基づき、月次の計画数値を達成
することを目的として、故意に売上の先行計上を行った。


イ   動機、手口及び正当化

 支店長及び施工管理者が、上記のような売上の先行計上を行ったことについては、月次
の計画数値を達成することにより、計画達成に関する強いプレッシャーから逃れたいとい
う心理状態が背景にあったものと認められる。このほか、支店によっては、計画を達成で
きない場合には人員削減をされてしまい、残った従業員の業務負荷が高まることに対する
恐怖心があったものと認められる。また、売上及び事業利益の計画達成が支店長等の管理



                     11
職にとっては人事考課の主要な考慮要素とされていたことも影響しているものと考えられ
る。
  そして、LR の改修工事を請け負う工事外注業者は、小規模な事業者が多く、工事完了報
告書に事実と異なる虚偽の工事完了日を記載して欲しいという LR 担当者からの要請に容
易に応じる状況にあった。そこで、支店長及び施工管理者は、自ら又は部下に指示して、
工事外注業者に対してかかる要請を行わせていた。また、工事外注業者も、これに応じる
ことによって残工事も含めて工事代金の全額を早期に請求できることから、不利益はなく、
LR 担当者からの要請を受け入れていた。
  加 え て 、「                               」、
「                                        」、
「                                        」、
「                       」においては、運送業者の外部倉庫を利用
して、主体工事に用いる製品を保管していた。LR のマンションの改修工事においては、建
材の保管スペースが限られており、正常な取引においても外部倉庫を利用することがあっ
たため、本件においても、外部倉庫が利用されやすい環境があったものと思われる。
  支店長及び施工管理者は、これら売上の先行計上を行う工事物件については、①工事の
実態があること、②施主の都合により工期が延期され、当初予定していた時期に完工でき
なくなった場合もあること、③前倒しした売上計上日と実際の主体工事の完了日にそれほ
どの乖離がないこと、④工事代金の全額を早期に支払処理するため工事外注業者に不利益
を被らせるものでもないこと等から、売上の先行計上を正当化していたものと思料される。


(4) 連結財務諸表への影響額

 LR においては、上記のとおり、各四半期で売上の先行計上が行われていた。
 この点、当社は、連結財務諸表の作成にあたり、会計基準として国際会計基準(以下
「IFRS」という。  )を採用しており、上記の個別財務諸表における売上の先行計上による
影響額を IFRS15 号「顧客との契約から生じる収益」に定める「原価回収基準3」に組み替
えると、当社の連結財務諸表においては、下表のとおり、売上収益及び売上総利益が過大
に計上されていたものと認められる。

                                                            (単位:百万円)
             2018 年 3 月     2018 年 6 月       2018 年 9 月     2018 年 12 月
    売上収益               43                -            247               -
    売上総利益              43                -            247               -
    物件件数                9                -             20               -




2   LBT について判明した事実



3
 IFRS15 号第 45 項によれば、「一部の状況(例えば、契約の初期段階)においては、企業
が履行義務の結果を合理的に測定することができないが、当該履行義務を充足する際に発
生するコストを回収すると見込んでいる場合がある。そうした場合には、企業は、当該履
行義務の結果を合理的に測定できるようになるまで、収益の認識を、発生したコストの範
囲でのみ行わなければならない。       」とされている。



                                12
(1) 本調査の結果の要旨

 LBT においては、過年度より、複数の営業所において、工事完了日操作による先行売上
が行われていたことが認められた。当委員会は、これらの行為は、一般に公正妥当と認め
られる企業会計の基準に準拠していないものと判断した。
 直近では、少なくとも、2018 年 3 月期においては 23 件、2019 年 3 月期においては 33 件
の売上の先行計上があったものと認められる。
 このような売上の先行計上のうち、ビル千葉営業所において行われたものは、営業所長
及び施工管理者の指示のものと、実行されていた。営業所長及び施工管理者が、上記のよ
うな売上の先行計上を行ったことについては、月次の計画数値を達成することにより、計
画達成に関する強いプレッシャーから逃れたいという心理状態が背景にあったものと認め
られる。また、売上及び事業利益の計画達成が営業所長等の管理職にとっては人事考課の
主要な考慮要素とされていたことも影響しているものと考えられる。
 ビル千葉営業所において、取付工事を請け負う工事外注業者は、小規模な事業者が多く、
工事完了報告書に事実と異なる虚偽の工事完了日を記載して欲しいという営業所担当者か
らの要請に容易に応じる状況にあった。そこで、営業所長及び施工管理者は、自ら又は部
下に指示して、工事外注業者に対してかかる要請を行わせていた。また、工事外注業者も、
これに応じることによって残工事も含めて工事代金の全額を早期に請求できることから、
不利益はなく、営業所担当者からの要請を受け入れていた。
 営業所長及び施工管理者は、これら売上の先行計上を行う工事物件については、①工事
の実態があること、②施主の都合により工期が延期され、当初予定していた時期に完工で
きなくなった場合もあること、③前倒しした売上計上日と実際の主体工事の完了日にそれ
ほどの乖離がないこと、④工事代金の全額を早期に支払処理するため工事外注業者に不利
益を被らせるものでもないこと等から、売上の先行計上を正当化していたものと思料され
る。


(2) 連結財務諸表への影響額

 LBT において行われた売上の先行計上の影響額を IFRS における原価回収基準に組み替
えると、下表のとおり、各四半期で、売上収益及び売上総利益が過大に計上されていたも
のと認められる。

                                                          (単位:百万円)
             2018 年 3 月     2018 年 6 月     2018 年 9 月     2018 年 12 月
 売上収益                  47             11            103               2
 売上総利益                 47             11            103               2
 物件件数                  23              4             25               4




                                13
 また、当委員会は、上記を含め、各四半期において、先行計上が行われていた疑いがあ
る売上収益及び売上総利益の連結財務諸表への影響額について、その最大値を以下のとお
り推定した。この最大値の数値は、工程管理データに記録された当該物件に用いる製品の
搬入日と売上計上日の比較検討に基づき推定した数値である。なお、今後の追加調査によ
り、この全部又は一部の取引が正常であることが確認できる可能性がある。

                                                           (単位:百万円)
              2018 年 3 月     2018 年 6 月     2018 年 9 月     2018 年 12 月
    売上収益               370            245            342             316
    売上総利益              370            245            342             316


3   LIXIL 鈴木シャッターについて判明した事実

(1) 本調査の結果の要旨

 LIXIL 鈴木シャッターにおいては、過年度より工事完了日操作による売上計上が行われ
た疑いは否定できない。LIXIL 鈴木シャッターの売上計上基準は、工事付き物件について
は主体工事完了基準を採用しており、より具体的にはシャッター取付け工事については電
気の通線工事まで完了していることが必要であったが、後記(2)アに記載のとおり、LIXIL
鈴木シャッターの山田智代表取締役社長(以下「山田社長」という。   )は電気の通線工事
まで完了していなくても売上計上できると誤認していた。LIXIL 鈴木シャッターにおいて、
同様の誤認をしている役職員が存在する可能性は否定できず、その場合には、誤った認識
に基づく売上計上が行われるおそれがある。
 そこで、当委員会は、時間的制約から、本中間報告書の提出日においては、不適切な会
計処理の存否を確定した上でその物件を特定することまではできないが、製品の搬入日と
実際の売上計上日の比較分析及び売上債権の回収サイトから推定される売上計上日と実際
の売上計上日の比較分析に基づき、先行売上による当社の連結財務諸表への影響額の最大
値を推定した。


(2) 本調査の遂行中に実施された会議

ア   会議の開催経緯

  LIXIL 鈴木シャッターにおいては、当委員会による調査のほか、防火設備検査員等の受
講資格問題に関する不適切行為4について外部弁護士による調査(以下「受講資格問題調査」
という。   )が行われていたが、2019 年 2 月 26 日、当委員会による調査及び受講資格問題調
査に関し、山田社長が幹部を招集して会議(以下「本件会議」という。                )を行っていたこ
とが判明した。当委員会の調査の結果判明した会議の開催経緯は、次のとおりである。
  当委員会は、2019 年 2 月 25 日の 12 時 30 分頃、LIXIL 鈴木シャッターの従業員のうち
283 名に対し、本調査の一環としてアンケートを送付した。これを受けて、翌日である 26
日の朝の打合せで、山田社長は、アンケートへの対応及び受講資格問題調査への対応を目

4
 LIXIL 鈴木シャッターにおいては、一般社団法人日本シヤッター・ドア協会が認定する
「防火シャッター・ドア保守点検専門技術者資格」に関し、必要な実務経験に満たない従
業員等がこれを受験し、資格を付与された上で、これを受講資格として 2016 年 6 月 1 日施
行の建築基準法改正により導入された防火設備定期報告制度に伴い新設された国家資格で
ある「防火設備検査員資格」を取得していたことが判明した。



                                 14
的として、関係者を招集して会議を開催することを決定した。かかる決定を受けて、
LIXIL 鈴木シャッターの A 氏は、各支店長を含む幹部役職員合計 16 名に対し、「緊急)ア
ンケートについての TV 会議開催の件」と題するメールを送付した。
  同日 16 時から、LIXIL 鈴木シャッターの本社会議室において、アンケートに関する会議
が行われた。遠隔地に所在する支店長は、テレビ会議システムによって会議に参加した。
  この会議で、山田社長は、各支店長に対して、アンケートが出されたのは LR において
不正行為が行われたためである旨の説明と、従業員には必ずアンケートに回答させるよう
にとの指示を行い、さらに、各支店において従業員から質問等はきていないか状況の確認
を行った。その中で、LIXIL 鈴木シャッターにおける売上の計上基準が問題となった。
LIXIL 鈴木シャッターの売上計上基準は、工事付き物件については主体工事完了基準を採
用しており、シャッター取付け工事については電気工事まで完了していることが必要であ
ったが、山田社長は、電気工事の通線ができていなくても売上計上することはできるはず、
電気工事は残工事として原価を見積り計上すればいいと解釈している、との自己の考えを
述べた。これに対し、B 氏が電気工事まで完了していることが必要である旨を説明したと
ころ、山田社長は、そのような売上計上基準自体、今後は見直す余地があると述べた。
  また、会議中、山田社長は、この会議はオフレコである旨参加者に告げた。
                         [中略]
  なお、本件会議の開催及び内容が判明したことを受けて、LIXIL は、2019 年 3 月 4 日、
山田社長に対し、LIXIL 鈴木シャッターの社長としての職務執行を停止するよう業務命令
を発出した。


イ   本件会議の影響に対する評価

 上記のとおり、本件会議において、山田社長は、アンケートの回答内容について具体的
な指示を出したとは認められない。しかし、売上計上基準については、誤った理解を述べ、
その内容が誤っていることを指摘されると、今後は売上計上基準自体を見直す余地がある
と述べた。
                         [中略]
 更に、当委員会が本件会議の存在を把握した後である 2019 年 3 月 4 日に LIXIL 鈴木シャ
ッターを訪問して会議参加者に対し聞き取り調査を行った際、本件会議の参加者は、当初、
メモの存在を秘匿した。
 以上より、当委員会は、2019 年 2 月 25 日に発出したアンケートの回答をそのまま有効
なものとして認めることはできないと判断し、山田社長に対し職務執行停止命令が発出さ
れた後である同年 3 月 5 日、LIXIL 鈴木シャッターの全役職員に対し、改めてアンケート
を送付した。
 なお、その後の本調査の結果、山田社長が LIXIL 鈴木シャッターの財務報告に係る内部
統制を無視又は無効化していた事実は認められなかった。


(3) 連結財務諸表への影響

 当委員会は、LIXIL 鈴木シャッターの各四半期において、先行計上が行われていた疑い
が否定できない売上収益及び売上総利益の連結財務諸表への影響額について、その最大値
を以下のとおり推定した。これは、工程管理データに記録された当該物件に用いる製品の
搬入日と売上計上日の比較検討及び売上債権の回収サイトから推定される売上計上日と実
際の売上計上日の比較分析に基づき推定した数値である。なお、今後の追加調査により、
この全部又は一部の取引が正常であることが確認できる可能性がある。




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                                                           (単位:百万円)
              2018 年 3 月     2018 年 6 月     2018 年 9 月     2018 年 12 月
    売上収益               440             97            331             360
    売上総利益              440             97            331             360



4   LIXIL 沖縄販売について判明した事実

(1) 本調査の結果の要旨

 LIXIL 沖縄販売においては、過年度において、誤謬により、主体工事の完了前に売上計
上が行われていることが認められた。当委員会は、これらの行為は、一般に公正妥当と認
められる企業会計の基準に準拠していないものと判断した。
 直近では、少なくとも、2018 年 3 月期において 1 件の売上の先行計上があったものと認
められる。

(2) 連結財務諸表への影響額

 LIXIL 沖縄販売において行われた売上の先行計上の影響額を IFRS における原価回収基準
に組み替えると、下表のとおり、2018 年 3 月期において、売上収益及び売上総利益が過大
に計上されていたものと認められる。

                                                           (単位:百万円)
              2018 年 3 月     2018 年 6 月     2018 年 9 月     2018 年 12 月
    売上収益               ▲4              ‐              ‐               ‐
    売上総利益              ▲4              ‐              ‐               ‐
    物件件数                 1             ‐              ‐               ‐


 また、当委員会は、上記を含め、各四半期において、先行計上が行われていた疑いがあ
る売上収益及び売上総利益の連結財務諸表への影響額について、その最大値を以下のとお
り推定した。この最大値の数値は、工程管理データに記録された当該物件に用いる製品の
搬入日と売上計上日の比較検討に基づき推定した数値である。なお、今後の追加調査によ
り、この全部又は一部の取引が正常であることが確認できる可能性がある。
                                               (単位:百万円)
          2018 年 3 月  2018 年 6 月   2018 年 9 月  2018 年 12 月
 売上収益              ▲8            0          ▲5             5
 売上総利益             ▲8            0          ▲5             5


第4   まとめ

 以上のとおり、LR においては、過年度より、工事完了日操作による先行計上及び物件
分割による先行計上が行われていたことが認められた。他方、架空受注であると認められ
る取引はなかった。
 LBT においては、過年度より、工事完了日操作による先行計上が行われていたことが認
められた。LIXIL 鈴木シャッターにおいては、現時点では、先行売上であると認められる



                                 16
取引は存在しないが、その疑いが否定できない取引は存在している。LIXIL 沖縄販売にお
いては、過年度において、誤謬により、主体工事の完了前に売上計上が行われた取引があ
ることが認められた。
 以上を踏まえ、当委員会は、LR、LBT、LIXIL 鈴木シャッター及び LIXIL 沖縄販売につ
いて、不適切な会計処理が行われた可能性を否定できない売上収益及び売上総利益への影
響額の最大値を推定した。これをまとめると、下表のとおりとなる。


                                                         (単位:百万円)
            2018 年 3 月     2018 年 6 月     2018 年 9 月     2018 年 12 月
 売上収益                845            343            915             682
 売上総利益               845            343            915             682


 当社の公表済み連結財務諸表の税引前当期純利益の額に占める上記影響額の最大値の割
合は、以下のとおりである。

                                                   (単位:百万円)
                       2018 年 6 月     2018 年 9 月    2018 年 12 月
    税引前当期純利益                  6,555         13,910         36,209
    利益影響額                       502           ▲70             163
    割合                        7.7%         ▲0.5%            0.5%


  なお、2018 年 3 月 31 日時点における利益剰余金は、845 百万円過大に計上されている可
能性がある。
  以上を踏まえ、当委員会においては、上記第 1,3 に記載のとおり、調査対象を LR、LBT、
LIXIL 鈴木シャッター及び LIXIL 沖縄販売として調査を継続し、原因分析及び再発防止策
等について最終報告を行う予定である。

                                                                 以   上




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(備考)
   本中間報告書は、2019 年 3 月 12 日時点で、特別調査委員会が入手した情報をもと
    に作成している。特別調査委員会は最終報告書を作成する予定であり、新たに入手
    した情報によって、最終報告書においては本中間報告書と異なる内容を含んだ最終
    報告書となる可能性がある。
   特別調査委員会の行った調査は、関係者からの協力を前提とする任意の調査であ
    り、本中間報告書の記載内容は、2019 年 2 月 12 日から 3 月 12 日までの調査期間内
    に本委員会が実施した調査の範囲内で判明したものに限定される。
   本中間報告書は、中間報告書「第1 本調査の概要」       「2 本調査の目的」のために
    特別調査委員会が作成したものであり、それ以外の目的での利用は想定していな
    い。
   株式会社 LIXIL 鈴木シャッターにおいては、防火設備検査員等の受講資格問題に関
    する不適切行為について外部弁護士による調査が継続中である。特別調査委員会と
    は別に行われている調査への影響を避けるため、当該調査に関連する記載について
    は、開示版においては、開示を差し控える。その他、プライバシー保護の観点及び
    営業秘密保護の観点から、開示版においては、一部の記載の開示を差し控える。




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