5408 中山鋼 2019-01-31 17:00:00
ロール製品の品質に係る不適切行為の調査結果と再発防止策について [pdf]

                                                                      平成 31 年 1 月 31 日
各     位
                                                   会 社 名     株式会社 中山製鋼所
                                                   代表者名      代表取締役 箱 守 一 昭
                                                         (コード:5408 東証第一部)
                                                   問合せ先      総務人事部長 清水 明夫
                                                             (TEL 06-6555-3029)




             ロール製品の品質に係る不適切行為の調査結果と再発防止策について




    当社が 2018 年 10 月 31 日に公表しました「当社ロール製品の品質に係る不適切行為について」に関
しまして、お客様をはじめ関係各位に多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを改めて深く
お詫び申し上げます。
    今般、社内調査結果を基に、再発防止策を策定いたしました。
    今回の調査結果を真摯に受け止め、全社を挙げて徹底して再発防止を図るとともに、お客様をはじめ
とする関係各位からの信頼の回復に全力で取り組んでまいります。


1.調査の概要
    (1)調査者      顧問弁護士を含む当社社員で構成された特別調査チーム(以下、「調査チーム」)
                (※エンジニアリング本部従事者を除く。)
    (2)調査期間     2018 年 10 月 24 日~2019 年 1 月 29 日
    (3)調査方法
     ①品質点検
      ・当社はロール製品と同様にエンジニアリング本部で製造している全製品について、お客様との
       間で取り決めた仕様や公的規格等の製品が満たさなければならない仕様の確認と、検査成績表
       と実際の検査結果が合致していることの確認(以下、
                              「品質点検」 を調査チームが行いました。
                                   )
       品質点検を行った製品と点検対象期間は以下【表 1】のとおりです。


                       【表 1】品質点検の製品と点検対象期間
                                                                          不適切行為
      本部   部    グループ        製   品           対象期間             点検対象
                                                                           の有無
      エ    エ   鋳機グループ       ロール      2011 年 4 月~2018 年 9 月    全   数          有
      ン    ン
      ジ    ジ                バルブ     2009 年 4 月~2018 年 11 月   サンプル            無
      ニ    ニ
      ア    ア
      リ    リ                鋳   物   2016 年 4 月~2018 年 11 月   サンプル            無
      ン    ン
      グ    グ   海洋グループ       魚   礁   2014 年 6 月~2018 年 12 月    全   数          無
      本    部
      部        建設グループ      建設物件     2013 年 4 月~2018 年 12 月   サンプル            無


                                      1
  ②社内資料の精査
   ・調査チームは、エンジニアリング本部におけるロール製品の品質監査に関する記録、品質検査
      に関するマニュアル、社内規程等、調査のために必要と判断した資料を幅広く収集し、内容を
      精査しました。
  ③調査チームによる関係者ヒアリング
   ・調査チームは、ロール製品の製造・品質保証、営業等の業務経験者や、本件不適切行為を認識
      し、又はこれに関与していたことが疑われる従業員や OB 等のヒアリングを行いました。


2.事実関係の概要
 (1)ロール製品に関して
   ・エンジニアリング本部のロール製品に関して、2018 年 10 月 31 日公表のとおり「硬度」「成
                                                   、
      分」、
        「外層厚」、
             「硬度測定位置」、
                     「顕微鏡写真」について、本件不適切行為が確認されました。
   ・また、本件不適切行為にはお客様と取り決めた仕様から外れた測定値を当該仕様値内に収まる
      数値に書き換えて検査結果として報告した行為に加え、仕様内に収まる測定値におきましても
      仕様内の異なる数値に書き換えて検査結果として報告した行為が確認されました。
   ・OB を含む関係者へのヒアリングから、ロール製品に関する本件不適切行為は 1993 年にロー
      ル製造会社の三星機工株式会社が当社と合併する以前より行われていた事が確認されました。
   ・本件不適切行為が判明したロール製品の数量は、以下【表 2】のとおりです。


【表 2】ロール製品の数量(本件不適切行為が認められた数量/出荷数量)と本件不適切行為の割合
                                 対    象   項   目   (単位:本)
  区   分
                硬   度        成    分           外層厚         硬度測定位置        顕微鏡写真
 仕様外れの      5,001/14,741    362/14,741     1,528/13,129   1,709/1,875   1,444/1,642
測定結果の改ざん      (33.9%)        (2.5%)           (11.6%)      (91.1%)       (87.9%)
 仕様内に収まる    5,557/14,741    307/14,741     5,924/13,129
                                                              -             -
測定結果の改ざん      (37.7%)        (2.1%)           (45.1%)
            10,558/14,741   669/14,741     7,452/13,129   1,709/1,875   1,444/1,642
  合   計
              (71.6%)        (4.5%)           (56.8%)      (91.1%)       (87.9%)
(注)対象項目毎の出荷本数が異なっているのは、顧客仕様に規定されている検査対象が異なるため。


   ・なお、現時点で本件不適切行為が行われた当社製品を使用してお客様が製造した製品の品質に
      何らかの影響が生じた事象は確認されておりませんが、今後もお客様からのご要望に対して、
      真摯に取り組んでまいります。


 (2)その他の製品に関して
   【表 1】に記載のとおり、エンジニアリング本部のロール製品以外の品質点検対象製品には不適
   ・
      切行為は確認されませんでした。
   ・当社及び当社グループの鋼材製品につきましては、一昨年 10 月から昨年3月までに当社分は
      当社品質管理部門が、当社グループ分はグループ会社の製造管理部門が過去1年間の記録を調

                                      2
   査した結果、公的規格やお客様との間で取り決めた仕様に関する不適切な行為は確認されませ
   んでした。
  ・また、当社グループの鋼材製品に関しましては、今回、調査チームがグループ会社の全ての製
   造工場に立ち入り、直近約1年間の記録を再度調査しましたが、不適切行為は確認されません
   でした。


3.本件不適切行為の原因分析
 本件不適切行為を引き起こし、これが長期間にわたり継続された主な原因は以下の(1)から(4)
に集約されると考えております。
 (1)受注・製造に関する品質コンプライアンス意識の不足
  ・工場の製造能力に見合い、かつお客様の要望を満たす顧客仕様を取り決めるべきでありました
   が、その様な検討が充分なされないまま顧客仕様が合意されていました。
  ・これは、ロール外販活動を拡大する過程におきまして、お客様との新規取引開始に当たり既存
   ロールメーカーの品質仕様に合わせる必要があると考え、工場の製造能力に見合わない顧客仕
   様を取り決めたことに起因するものです。
   ・また、旧来の測定機器は現在のものと異なり測定誤差が生じやすいという技術的背景があり、
   各検査項目における顧客仕様と実際の検査結果の差が測定誤差と言い得る程度であれば、デー
   タの書き換えは問題ないという身勝手な考えが根付き、不適切行為の発覚までデータの書き換
   えが継続して行われていました。


 (2)不適切行為を可能とする品質管理体制
  ・ロール製品の製造工程における検査から検査成績表作成までの間には、手書きや手入力の工程
   が多く、容易に書き換えができる状況でした。
  ・検査成績表を作成する品質検査係はロール製品を製造するロール製造係とは異なる部署ですが、
   両係を統括する鋳機製造課の課長が検査成績表のチェック・確認を行っており、品質保証の独
   立性を欠いた品質管理体制となっていました。
  ・品質保証部門の製造部門からの独立性が確保されない体制となっていましたので、本来期待さ
   れる製造部門への牽制機能を果たしておりませんでした。


 (3)硬直化した組織体制
  ・本件不適切行為は別会社であったロール製造会社が当社に合併する以前より行われていたこと
   が確認されました。
  ・別会社であった時代から同一人物が長期間にわたりロール製造部門の管理責任者として留任し
   続けた人事により、製造に関する権限が集中し、当該不適切行為を解決する仕組みの構築が困
   難となっていました。この結果、組織全体に顧客仕様を遵守する意識が低下し、本件不適切行
   為が継続することになりました。
  ・本件不適切行為の実行者や認識者(主に課長から担当者クラス)が部門長へ報告した事実は認
   められませんでした。しかしながら、部門長はこの組織体制に内在する品質リスクへの認識が
   不充分であり、品質保証を図るための適切な措置を取らなかったことが本件不適切行為を長期
   間にわたって継続した遠因になったと考えられます。


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 (4)監査する体制や機能の不備
   ・当社鋳機部門は 2006~2012 年の間で品質マネジメントシステム(ISO9001)の認証を取得し
    ており、この間は外部の登録認証機関による審査や自部門による内部監査を行っておりました
    が、本件不適切行為の検出および是正には至りませんでした。
   ・内部監査部門が実施している日常業務監査においても鋳機部門の品質コンプライアンスの課題
    が対象とされることはなく、不適切行為の指摘には至りませんでした。


4.再発防止策
  上記の調査結果と原因分析に基づき策定した以下の再発防止策を実施してまいります。
 (1)品質保証に対する規範遵守意識の強化
  ①経営理念・行動指針の周知・再徹底
   ・本件ロールに係る不適切行為の発覚後、2018 年 11 月 19 日の全従業員を対象とした会社方針
    説明会の席上で、社長より本件不適切行為の概要を報告すると共に、
                                  「中山製鋼所グループ企業
    理念」に規定されている行動指針の第1項「法令や社会的規範を守り、高い倫理観を持って行
    動します。 を再確認すると同時に、
         」           これらの経営理念を周知徹底する様に指示致しました。ま
    た、全従業員は企業理念が記述されたカードを常に携帯し、判断に迷う様な事象に遭遇した際
    には、必ずこれに記載されている経営理念に立ち返って、進路を決める様に社長が訓示しまし
    た。
   ・今後も継続的に品質保証を始めとするコンプライアンスに関する社長からのメッセージを発信
    し、全社的な規範遵守意識の強化のため、各人が経営理念についての理解を深め、行動指針の
    周知・徹底を図る機会を設けていきます。
  ②鋳機部門の品質保証に関する業務分掌規定の改訂(2019 年 2 月に実施予定)
   ・現在の当社の業務分掌規定においては、エンジニアリング本部の項において品質保証に関する
    内容が明確には記載されておりませんが、業務内容を明文化し責任区分を明確にするために、
    品質保証に関する内容を記載し、室課ごとの業務内容を見直し、責任区分の明確化を図ります。
  ③就業規則の見直し(2019 年 4 月に実施予定)
   ・現在の当社の就業規則において、品質に関する不正・不適切行為を実行、またはこれに関与し
    た者が懲戒処分の対象となることが独立した規定としては設けられていませんでした。今後、
    品質保証を遵守することを徹底するために当該の者を懲戒処分の対象とする旨を就業規則に
    明記します。


 (2)鋳機部門の管理体制の見直し
  ①鋳機部門の組織見直し-製造と品質保証の分離(2019 年 2 月に実施予定)
   ・鋳機製造課の下にある品質検査係を切り離し、新たに品質管理室を設け、品質検査係を移管し
    て、品質保証部門を製造部門から分離し品質保証の独立性を高めます。
   ・また、エンジニアリング部を廃止し、鋳機エンジニアリング部と海洋建設エンジニアリング部
    を新たに設けます。課・室扱いの鋳機グループから部扱いの鋳機エンジニアリング部に昇格し、
    鋳機専任の部長を配置することで統制力の強化を図ります。
                              (下図参照)


                          4
【変更前】                                【変更後】

  エンジニアリング本部                           エンジニアリング本部

         エンジニアリング部                            鋳機エンジニアリング部

             鋳機グループ                               鋳機製造課

                     鋳機製造課                            ロール製造係

                        ロール製造係                    品質管理室

                         品質検査係                         品質検査係

             海洋グループ                          海洋・建設エンジニアリング部

             建設グループ

  ②製造・管理・営業との連携を強化した工場運営体制(2019 年 4 月に実施予定)
   ・製造現場で発生している課題を製造・管理・営業部門が共有できるシステムを構築し、課題解
        決を進める体制を構築します。
   ・現在実施している管理に加え製造ラインの操業成績、品質工程能力の管理を行い、部内で共有
        し課題を見出せる運営を行っていきます。
  ③人事異動による組織の活性化(2019 年 9 月末までに実施予定)
   ・人事の固定化による閉鎖的な組織形成を回避することや、鋳機部門のより実効性の高い品質保
        証体制を確立することを目的に他事業部門から人材を投入し、組織の活性化を図ります。


 (3)品質管理体制の強化
  ①鉄鋼事業部門による内部監査体制の構築(2019 年 4 月より実施予定)
   ・品質マネジメントシステムを取得していたにもかかわらず今回の不適切行為を発生させた背景
        には、当時の内部監査が十分に機能していなかったことにあります。それは、自部門の内部監
        査員が監査を行うため、客観的視点で監査を行うという機能が正しく働いていなかったもので
        す。
   ・鉄鋼事業部門の監査員による内部監査体制とすることで、より第三者的立場からの監査を行っ
        てまいります。
  ②受注~製造管理のシステム化(2019 年度末までに実施予定)
   ・品質判定、検査成績表作成等も含めた自動化を進めてまいります。鉄鋼事業で行っている様な
        品質工程設計システムの導入を進めていき、製造プロセスへの指令や品質判定、検査成績表作
        成等も含めた自動化を進めてまいります。
  ③受注可否検討に関するルールの明確化(2019 年 3 月に実施予定)
   ・新規ロールを受注する際は、製造可否を検討するルールが明確には存在していませんでした。
        そこで新規受注、又は大幅な仕様変更を行う場合の受注可否の判断に当たってのルールを明確
        化致します。つまり、標準的な製作仕様書、及び受注基準を制定し、新規顧客からの受注、及
        び新規仕様の受注時に顧客仕様、納期、及び受注金額に対して、受注の可否を組織的に審議す
        る仕組みを構築致します。



                                 5
 (4)品質コンプライアンスの再教育(2019 年 4 月に実施予定)
  ①法令遵守と品質保証に関する基本ルールの教育
   ・社内外の教育資料を用い、他社で発覚したデータ改ざん等の不適切事例を交え、法令遵守や品
    質保証の重要性を認識させます。
  ②製造現場での試験における精度確保の留意点についての教育
   ・化学成分分析、硬度試験、外層厚測定について、鉄鋼事業の有資格者による校正や測定方法、
    データの取扱いに対する実地教育を行います。


5.社内処分
  本件不適切行為に関する経営責任を明確にするために、以下の役員について役員報酬の一部自主返
 上を行います。
               対 象 者                        内   容
     箱守 一昭 (代表取締役社長)                  報酬月額の 30%を 2 ヶ月返上
     中村 佐知大(専務取締役   コンプライアンス担当)       報酬月額の 20%を 2 ヶ月返上
     森川 昌浩 (取締役 エンジニアリング本部統括)         報酬月額の 10%を 2 ヶ月返上


6.業績への影響
  現時点で業績に与える影響は軽微と考えています。


7.おわりに
  当社グループでは、公正な競争を通じて付加価値を創出し、経済社会の発展を担うとともに、社会
 にとって有用な存在であり続けることを理念として事業活動を進めてまいりました。しかしながら、
 本件不適切行為に係る事実関係の解明と原因分析を行った結果、品質とりわけお客様の仕様を遵守す
 るという意識・行動が徹底しきれていなかったことが明らかとなり、深く反省しております。
  その原因は、検査プロセスはもとより、ガバナンスの在り方・コンプライアンス意識・組織体制・
 人員配置など多岐にわたっており、お客様や関係各位にご指導を頂きながら再発防止策を取りまとめ
 ました。経営トップの強いリーダーシップの下、当社全役員・従業員がその一つ一つを着実に実行し、
 再発防止策の徹底を図ってまいります。
  本件不適切行為により失った信頼回復に向けて、品質最優先のものづくりを徹底してまいります。
                                                      以上




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