5232 住友大阪 2021-08-05 15:00:00
TCFDへの賛同、TCFDコンソーシアム参加及び情報開示について [pdf]
2021 年8月5日
各 位
会 社 名 住友大阪セメント株式会社
代表者名 取締役社長 諸橋 央典
(コード番号 5232 東証第1部)
TCFD への賛同、TCFD コンソーシアム参加及び情報開示について
当社は、
「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)(※1)へ賛同し、
」 「TCFD コンソ
ーシアム」
(※2)に参加しましたのでお知らせいたします。
また、当社グループの CO₂排出量の大部分を占めるセメント事業を含むセメント関連事業、
高機能品事業等、全事業における気候変動が及ぼす影響についてシナリオ分析を行い、TCFD
が推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について別紙のとおり、
、 、 、
開示いたします。
当社は、2020 年 12 月に「2050年“カーボンニュートラルビジョン”SOCN205
0」を策定し、2050 年までのあらゆる方策を通じて、当社グループの CO₂をカーボンニュー
トラルにすることに挑戦するとともに、サプライチェーンを通じて社会全体の脱炭素化へ
の貢献をするための取組を進めています。今後も気候変動問題への取組を推進するととも
に、TCFD に基づく情報開示を進めてまいります。
※1 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
G20 からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が設立。気候変動によるリスク及び機会が
経営に与える財務的影響を評価し、開示することを推奨。
※2 TCFD コンソーシアム
TCFD に賛同する企業や金融機関等が一体となって、企業の効果的な情報開示や、開示され
た情報を金融機関等の適切な投資判断に繫げるための取組を議論する場として設立。
【本件に関するお問い合わせ先】
総務部 IR 広報グループ TEL 03-5211-4505 FAX 03-3221-4652
【別紙】TCFD に基づく情報開示
1.ガバナンス
当社グループの気候変動問題への取組みを推進する機関として代表取締役を委員長とす
る「サステナブル対策委員会」を設置しています。
「サステナブル対策委員会」は定期的に
開催され、気候変動問題に関する情報の集約、リスクの想定、対応策の立案、社内教育・啓
蒙プログラム推進等、年度活動の計画立案およびその進捗管理を行っています。サステナブ
ル対策委員会において審議された重要な事項については、必要に応じ、取締役会へ報告し、
審議されます。
また、
「サステナブル対策委員会」を運営し、気候変動問題を中心としたサステナビリテ
ィ課題に関する事項を専属で司る「サステナビリティ推進室」を常設組織として設置してい
ます。
2.戦略(リスクと機会)
当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030 年を想定し、IPCC(気候変
動に関する政府間パネル)や IEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを
参考に、分析を行いました。
気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的
な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて2℃以
下または4℃上昇するシナリオを想定し、それぞれのリスクと機会について影響度が高い
と思われる項目を抽出しました。
分 類 リスク 機会
移 政 炭素税の引き上 ●セメント産業はエネルギー多 ●従来より力を入れている石炭代
行 策 げ、温室効果ガス 消費産業であるため、化石エネル 替(廃プラスチック、バイオマス燃
リ ・ 排出や化石エネル ギーの価格上昇によりエネルギ 料)の更なる利用推進により廃棄物
ス 規 ギーに関する規制 ーコストの増加が想定される。 収集事業における収益拡大が期待
ク 制 ●保有する自家発電設備が、非効 できる。
率石炭火力のフェードアウト対 ●工場跡地等多数保有する遊休地
象となった場合、売電事業の縮小 を再生可能エネルギー発電等の新
や喪失の可能性がある。発電設備 規発電設備や植林に活用できる可
の廃止により工場使用電力を小 能性があり,グリーン電力やグリー
売電気事業者から購入した場合、 ンカーボンにより気候変動問題対
電力コストの増加が想定される。 応から発想する新たな事業の創出
が期待できる。
分 類 リスク 機会
移 技 新技術の開発 ●新技術の研究開発費やカーボ ●CO₂排出削減技術の向上に伴う収
行 術 ンニュートラル実現のための設 益獲得が期待できる。(炭酸塩鉱物
リ 備投資増加によるコストの増加 化技術、人工光合成水素製造技術、
ス が予想される。 アンモニア/水素利用技術)
ク ●CO₂有効利用技術の進歩とその活
用により大量の CO₂の安定的固定化
と新たな事業分野への拡大が期待
できる。
(メタン、メタノール、プラ
スチック素材)
●保有する未使用特許を新しい市
場で活用できる可能性がある。
市 ユーザー行動の ●混合セメントの使用量が増え、 ●従来より取り組んできた低炭素
場 変化 クリンカ生産量の減少が想定さ 型セメント、低炭素型コンクリート
れる。 のさらなる開発と普及促進により
●炭素排出コストが低い国から 製品の差別化が進み、今後普及と成
の低価格セメントの流入、気候変 長が期待される低炭素型建設構造
動対策の進んだ国から低炭素型 物への採用が進み、事業を拡大する
セメントの普及が進みセメント ことができる。
シェアを圧迫する可能性がある。 ●ヒートアイランド現象低減効果、
●低炭素物流が求められること 燃費向上効果、耐久性の観点で LCC
で物流コストが増加する可能性 に優れたコンクリート舗装が普及
がある。 し、セメント需要が増加する可能性
がある。
リサイクル市場 ●廃棄物/副産物(廃油類、廃プ ●廃棄物/副産物処理の技術力向上
ラスチック、石炭灰、排煙脱硫石 に伴い受入可能な品目が増加し、廃
膏等)の発生減少により、廃棄物 棄物収集・利活用における収益が期
の収集競争激化、品質悪化、処理 待できる。
費下落、価格高騰が想定される。 ●多様な廃棄物を収集、原燃料処理
●バイオマス燃料の調達競争が できる巨大な製造インフラを有し
激化することで価格高騰が想定 ていることから、廃棄物からの資源
される。 抽出・精製・販売などの新規事業分
野の拡大が期待できる。
分 類 リスク 機会
移 市 高機能品事業 ●平均気温上昇に伴うライフスタ
行 場 イル、ワークスタイルの変革、によ
リ るデータトラフィックの増大や脱
ス 化石エネルギー化による電力供給
ク 不足により、大容量、高速、省電力
デバイスのニーズが高まり光通信
部品や半導体製造装置需要の増加
が想定される。
●再生可能エネルギーの安定供給、
ZEH/ZEB、EV/PHEV の普及により二次
電池需要の増加が想定される。
評 ステークホルダー ●温室効果ガス排出企業への評 ●積極的な気候変動対策、CO₂利活
判 の評価の変化 価低下による資金調達難等が予 用に係る新規技術開発と新しいビ
想される。 ジネスモデルの推進、廃棄物/副産
物処理の貢献への評価上昇により、
資金調達、社員採用で有利に働くこ
とが期待できる。
物 急 自然災害の頻発・ ●大型台風・豪雨等の頻発によ ●国土強靭化に資するインフラ整
理 性 激甚化 り、生産拠点の被害やサプライチ 備、構造物の維持・補強・補修など
的 的 ェーンが寸断され、操業への支障 に伴うセメント関連製品の需要増
リ や復旧に要するコスト増加が想 加が見込まれる。
ス 定される。 ●災害廃棄物処理の要請により、社
ク 会的役割を高めていくことができ
る。
●災害時の備えとして蓄電池市場
の拡大が見込まれる。
慢 平均気温の上昇、 ●気温上昇により生産現場にお ●より一層の工期短縮や施工効率
性 慢性的な異常気象 ける従業員の健康 安全面での労
・ 化などの省人化工法の需要増加が
的 の発生 働力への悪影響が想定される。 見込まれる。
●海面上昇により、臨海拠点の高 ●海洋製品の需要拡大、事業創出に
潮等浸水被害の可能性がある。 より新たな収益源を獲得できる可
能性がある。
2℃シナリオでは、炭素税の引き上げや化石エネルギーに関する規制が強化され、セメ
ント製造及び自家発電設備において石炭を使用するほかに、他社石炭火力発電所から発生
する石炭灰・石膏をセメント原料とする当社グループにとって、コスト増加が想定される一
方で、石炭に代わる熱エネルギーとして廃プラスチックや木質バイオマス燃料の利用を高
めることで、リサイクル処理収入による収益拡大と化石エネルギーによる CO₂排出量削減が
期待できます。
また、CO₂の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予
想されますが、同時に、技術力向上による新たな事業の創出、収益機会の獲得が期待できま
す。また低炭素社会への移行に際し、ユーザー行動の変容が想定されますが、製造過程で CO
₂を発生するセメントを敬遠し需要が減少する可能性がある反面、アスファルト舗装よりも
ライフサイクルコストに優れ、気温上昇を抑える効果も有するコンクリート舗装の評価が
高まり、セメント需要が増加する可能性もあります。
廃棄物/副産物の発生量が減少することが想定され、廃棄物/副産物の調達に影響を及ぼ
す可能性がある一方で、廃棄物/副産物処理技術の向上に伴い受入れ可能な品目が増加し、
収益が期待できます。またセメント産業は CO₂を排出する産業としてステークホルダーの評
価が下がり、資金調達難等が想定される反面、気候変動対策、廃棄物/副産物処理を推進す
ることで企業評価を高めることが期待できます。
高機能品事業分野では、ライフスタイル、ワーキングスタイルの変革によるデータトラフ
ィックの増大や脱化石エネルギー化による電力供給不足により、大容量、高速、省電力デバ
イスのニーズが高まり、光電子事業の光通信部品や新材料事業の半導体製造装置部品の需
要増が期待できます。加えて、再生可能エネルギーを活用する ZEH/ZEB では蓄電池、地球温
暖化防止に向け普及が進む EV/PHEV では、自動車向け二次電池市場の拡大が想定されるこ
とから、電池材料事業のリチウムイオン電池用正極材の需要増加も期待できます。
4℃シナリオでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化によ
り、生産部門での労働力への影響や生産拠点やサプライチェーンの被害増加が生じ、コスト
増加が見込まれる反面、国土強靭化によるセメント関連製品や省人化工法等の需要増加が
見込まれます。
3.リスク管理
当社グループは、サステナビリティ推進室を事務局とする「サステナブル対策委員会」に
おいて CO2 排出量削減の計画立案、進捗管理をグループ横断的に行っています。 当社グル
ープの事業が 気候変動 によって受ける影響を識別・ 評価するため、 気候変動のリスクと
機会を抽出、分析し、必要に応じて「サステナブル対策委員会」や取締役会を通じて適切に
対処します。
4.指標と目標
当社グループは企業活動を通じて重点的に取り組む社会課題であるマテリアリティ(重
要課題)の一つとして「地球環境への配慮」を掲げ、リサイクルによるエネルギー代替の推
進やバイオマス発電の活用など地球温暖化防止に取り組んできました。また、2020 年 12 月
には、
「2050 年カーボンニュートラル」に向けた具体的な中期目標並びに長期取組方針であ
る「2050年“カーボンニュートラルビジョン”SOCN2050」を策定し、2050 年ま
でのあらゆる方策を通じて、当社グループの企業活動をカーボンニュートラルにすること
に挑戦するとともに、サプライチェーンを通じて社会全体の脱炭素化への貢献をするため
の取組を進めています。
今後は、今回実施したシナリオ分析に基づくリスクと機会について、財務的インパクトの
算出を進めるとともに、
「SO-CN2050」を基盤に、リスク対応と機会獲得のための新
たな対応策の検討、具体的な指標と目標である KPI(重要業績評価指標)を設定し、その対
応策を推進してまいります。
参照:
「2050年“カーボンニュートラルビジョン”SOCN2050」
https://www.soc.co.jp/sys/wp-content/themes/soc/assets/pdf/csr/so-cn2050.pdf
以上