4714 リソー教育 2020-08-21 15:30:00
分配可能額を超えた剰余金の配当に関する調査結果および再発防止策について [pdf]

                                                2020年8月21日
各 位
                              上 場 会 社 名 株 式 会 社 リ ソ ー 教 育
                              代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 平野 滋紀
                                      (コード番号:4714 東証第一部)
                              問 合 せ 先 取締役副社長(CFO) 久米 正明
                                      (TEL 03-5996-3701)




      分配可能額を超えた剰余金の配当に関する調査結果および再発防止策について



  当社は、2020年7月15日付「分配可能額を超えた剰余金の配当に関する調査委員会設置のお知らせ」および
2020年7月20日付「分配可能額を超えた剰余金の配当に関する社内調査委員会および外部調査委員会設置完了
のお知らせ」にて公表いたしました、2020年2月期第4四半期配当、2019年2月期第3四半期配当、2020年2
月期第2四半期配当および第3四半期配当において、会社法および会社計算規則により算定した分配可能額を
超えて配当を実施した件(以下、「本件配当」といいます。)に関する社内調査委員会および外部調査委員会
の調査結果並びに再発防止策についてご報告いたします。

                          記

 1.本件配当の経緯
   2021年2月期第1四半期決算公表後の再確認の過程において、2020年2月期第4四半期配当金(1株当
  たり3円)の支払いの時点で、会社法および会社計算規則により算定した分配可能額を超えていたこと
  が判明いたしました(配当総額440百万円、配当超過額389百万円)。これを受けて、過去に遡り社内で
  調査しましたところ、さらに2019年2月期第3四半期配当(配当総額369百万円、配当超過額49百万円)
  および2020年2月期第2四半期配当(配当総額442百万円、配当超過額310百万円)、第3四半期配当(配
  当総額442百万円、配当超過額442百万円)においても、分配可能額を超えていたことが判明したため
  (累計配当超過額 約11億円)、2020年7月20日付で事実関係の確認、原因の究明、再発防止策および社
  内処分の検討等を行うため、社内調査委員会および外部調査委員会を設置いたしました。

 2.調査の方法
 (1)社内調査委員会
    以下のメンバーで構成する社内調査委員会において、事実経過の確認、関係者に対するヒアリング、
   発生原因の分析、社内処分の検討、再発防止策の立案等を行いました。
    委員長 表 美行(2020年(令和2年)5月28日開催の定時株主総会にて選任、常勤監査役)
    委 員 笠 賢一郎(執行役員)、真田 信治(内部監査室長)他

 (2)外部調査委員会
    また、以下のメンバーで構成する外部調査委員会において、社内調査委員会の調査結果の検証、必
   要に応じた事実関係の調査、原因の究明および再発防止策の提言、並びに本件配当に係る関係者の責
   任についての検討を行いました。
    委員長 松村 卓治(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー 弁護士)
    委 員 早田 尚貴(アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル 弁護士)
    委 員 西谷 敦 (アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー 弁護士)

 3.本件配当につき判明した事実
   社内調査委員会の調査および外部調査委員会の調査・検証により判明した事実は以下のとおりです。
   (1)当社の取締役および監査役が、配当額が分配可能額を超過していることを認識しつつ本件配当
      を実施したという事実は認められませんでした。
   (2)もっとも、当社においては、配当額を検討するに際して分配可能額の計算がそもそも行われて
      おらず、①本件配当の具体的な配当額を確定する過程、②監査役において本件配当に係る剰余
     金の適法性を検討する過程、③取締役会において本件配当を審議する過程、④取締役会決議後
     の配当金支払を行う過程のいずれにおいても、本件配当が分配可能額を超過していることに気
     づくに至りませんでした。

4.本件配当の発生原因
  社内調査委員会の調査および外部調査委員会の調査・検証結果によれば、本件配当の発生原因は以下
 のとおりです。
  (1)配当額決定のための業務プロセスの不遵守・不適切な運用
  (2)分配可能額規制違反の検証を行うシステムの不存在
  (3)配当手続および配当規制に関する担当者の知識および情報共有不足
  (4)組織・体制上の問題(職務権限規程と実際の業務分掌の乖離、部署同士の横の連携の欠如、法
     令違反を含むリスクファクターをチェックする体制の不整備)

  ※尚、本件配当の事実関係、原因の分析、再発防止策の提言および関与者の責任等につきましては、
   外部調査委員会作成の別紙「調査報告書」をご参照ください。

5.再発防止策
  社内調査委員会および外部調査委員会からの再発防止策の提言を踏まえ、下記の点について再発防止
 策を実行いたします。なお、当期の四半期配当については再発防止策が完了するまでは慎重に行うべき
 との結論に至り、第2四半期、第3四半期配当を見送ることとしております。
  (1)配当額決定のための業務プロセスの整備
     剰余金配当に関する過程において、各担当部署の業務フロー等の策定・整備を行い、社内の職務
    権限規程の見直しをいたします。
  (2)配当額の検証を容易にするシステムの構築
     配当予想額または配当額についてチェックするプロセスを導入し、適法性検証に係る責任部署を
    明確化するとともに、外部専門家へのチェック依頼を行うプロセスを追加し、剰余金配当までの業
    務プロセスを社内規程に明記いたします。
  (3)会社法制に関する基本的知識の理解の推進および情報共有
     eラーニング等の方法を含めた社内研修を実施し、会社法上の諸手続きや配当政策に関する法令
    知識への理解度を深めます。
  (4)組織・体制上の問題点の改善
     職務権限規程の見直し等を行い、管理企画部門の権限強化等を通じて他部署との連携を強化し、
    責任をもって業務を行うことができる組織・体制強化を図ります。

6.本件配当に関する役員報酬の返納
  本件に関する責任を示すため、本件配当に係る剰余金配当議案に係る提案に同意した取締役および当
 該提案に異議を述べなかった監査役から、その職責に応じ、報酬2か月相当分の1割から3割を返還す
 るとの申し出を受けております。

7.関係者の責任
  本件配当に関する関係者の責任について、外部調査委員会の検討結果は以下のとおりです。
  (1)取締役および監査役の刑事責任
     故意犯である違法配当罪の刑事責任を負うものではない。
  (2)会社法上の責任
     本件配当に関与した取締役および監査役が「その職務を行うについて注意を怠らなかった」との
    事実を認めることはできず、これらの者に会社法上の責任が存在することは否定できない。
     もっとも、上記取締役および監査役は分配可能額を超過していることを認識しつつ敢えて分配可
    能額を超過する配当を行ったわけではないこと、2020年8月6日に実施した自己株式の処分を通じ
    分配可能額超過による会社債権者への影響が実質的に吸収・解消されていると評価しうること、役
    員報酬の返納の限りで会社財産の一部の回復が見込まれることから、取締役および監査役に対して
    会社法上の責任を追及する必要性までは認められないものと判断する。

8.今後の見通し
  当社は、本件配当発生の事態を重く受け止め、再発防止策を実施するとともに、より充実した内部管理
 体制の構築に努めてまいりますので、皆様方にはよろしくご理解のほどお願い申し上げます。
                                              以上
(別   紙)




          調   査     報    告      書




              2020 年 8 月 21 日
                                           2020 年 8 月 21 日

株式会社リソー教育     御中




                               外部調査委員会


                               弁護士     松   村   卓   治


                               弁護士     早   田   尚   貴


                               弁護士     西   谷       敦




 外部調査委員会は、株式会社リソー教育(以下「貴社」という。)から委託を受けた
調査(後記第1において定義、以下「本調査」という。)について、以下のとおり報告
する。


第1   本調査の概要

1   社内調査委員会及び外部調査委員会設置の経緯及び概要

   貴社は、  2016 年 2 月期以降、取締役会によって四半期ごとに剰余金の配当を決議
 し、 配当金の支払いを実施しているところ、        2021 年 2 月期第 1 四半期の決算内容を
 再確認する過程において、貴社が実施した 2020 年 2 月期第 4 四半期の配当が会社
 法及び会社計算規則の定めにより算定した分配可能額(以下、単に「分配可能額」
 という。 )を超過していることが判明した。また、その後の調査によって、2019 年
 3 月期第 3 四半期並びに 2020 年 2 月期第 2 四半期及び同第 3 四半期の各配当につ
 いても、分配可能額を超過していることが判明した。上記各配当の詳細は下表のと

                          1
 おりである(以下、下表の配当を総称して「本件配当」という。。
                              )

                           取締役会         効力                          分配可能額
      期        基準日                                   配当額
                            決議日        発生日                           超過額
2019 年 2 月期   2018 年      2019 年     2019 年     1 株につき 7 円 50 銭
                                                                    49,786,389 円
第 3 四半期       11 月 30 日   1 月 15 日   2月8日       総額 369,060,548 円
2020 年 2 月期   2019 年      2019 年     2019 年     1 株につき 3 円
                                                                   310,998,812 円
第 2 四半期       8 月 31 日    10 月 9 日   11 月 7 日   総額 442,869,087 円
2020 年 2 月期   2019 年      2020 年     2020 年     1 株につき 3 円
                                                                   442,868,937 円
第 3 四半期       11 月 30 日   1月8日       2 月 13 日   総額 442,868,937 円
2020 年 2 月期   2020 年      2020 年     2020 年     1 株につき 3 円
                                                                   389,544,117 円
第 4 四半期       2 月 29 日    4月7日       5 月 13 日   総額 440,329,887 円

  上記を受け、貴社は、2020 年 7 月 20 日、本件配当に係る事実関係の確認、原因
 の究明、再発防止策及び社内処分の検討等を行うため、以下の委員から構成される
 社内調査委員会を設置した。
  委員長  表  美行(常勤監査役)
  委 員  笠 賢一郎(執行役員)
  委 員  真田 信治(内部監査室長)

   また、貴社は、社内調査委員会の調査結果を検証し、事実関係及び原因の究明に
 必要な追加調査を行い、       再発防止策の提言と関係者の責任問題の検討を行うために、
 2020 年 7 月 20 日、以下の外部弁護士のみで構成する、3 名の委員から成る外部調
 査委員会を設置し、本調査を委託した。
   委員長       松村 卓治(アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士)
   委 員       早田 尚貴(アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士)
   委 員       西谷   敦(アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士)

2    本調査の目的

  本調査の対象範囲は次のとおりである。
 ① 社内調査委員会が行う本件配当に係る事実関係の確認、原因の究明及び再発防
   止策の検討等の結果を検証すること
 ② 必要に応じ、独自に、本件配当に係る事実関係の調査及び原因究明を行い、再発
   防止策の提言をすること
 ③ 本件配当に係る関係者の責任について検討すること

3    本調査の期間及び方法

     外部調査委員会は、2020 年 7 月 20 日から同年 8 月 14 日までの期間、本調査を
    実施した。
     外部調査委員会は、本件配当に係る取締役会の目的事項である提案につき賛同し
    た取締役、当該提案に異議を述べなかった監査役、本件配当に関与した可能性のあ
    る貴社従業員及び会計監査人に対して、ヒアリング又はアンケートにより、事情聴
    取を実施した。
     また、外部調査委員会は、貴社から、本件配当及び過去 3 年間の剰余金の配当に
    関する取締役会議事録、人員配置表及び業務分掌規程を含む社内規程一式、本件配
                             2
 当に係る取締役会決議前後の監査役会議事録及び月次財務報告書、      並びに過去 3 年
 間の経営政策会議議事録を含む関係資料の提出を受けるとともに、      社内調査委員会
 作成にかかる令和 2 年 8 月 11 日付「調査報告書「分配可能額を超えた剰余金の配
 当について」」の内容を検証した。


第2    社内調査委員会による調査結果の概要

1    社内調査の方法

     社内調査委員会は、本件配当に関する事実経過の確認、貴社従業員のうち本件配
    当に関与した可能性のある者に対するヒアリング、社内規程の確認、取締役会及び
    監査役会議事録の調査、決算関係書類の調査、取締役及び監査役に対するアンケー
    トを実施した上、本件配当の発生原因の分析、再発防止策の検討及び社内処分の検
    討等を行った。

2    社内調査委員会による調査結果等

(1) 調査結果
    当該調査の結果、貴社は、分配可能額の計算及び配当額が分配可能額を超過して
   いないかの確認を実施せず、その結果、配当額が分配可能額を超過しているにもか
   かわらず本件配当を行った事実が判明した。

(2) 原因分析
    社内調査委員会の原因分析は、要約すると以下のとおりである。
    ・ 剰余金配当が実施されるまでの業務プロセス及び職務分掌が不明瞭であった。
    ・ 貴社役職員において、分配可能額の計算に係る知識及び情報共有が不足して
      いた。

(3) 社内調査委員会による再発防止策の概要
    社内調査委員会の策定した再発防止策は、要約すると以下のとおりである。
    ・ 剰余金配当が決定されるまでの業務プロセス及び職務分掌を文書化し、各役
      職員に対して周知徹底する。
    ・ 会社法及び会社計算規則の定めによる分配可能額に関する規制(以下「分配
      可能額規制」という。)を含め、関連法令による規制の情報共有を行う。
    ・ 剰余金配当の適法性について、外部専門家によるチェックを行う。
    ・ 配当政策を見直す。
    ・ 組織体制を見直す。


第3    外部調査委員会による調査・検証結果

1    本件配当が分配可能額を超過して行われた経緯

     本調査の結果、貴社の取締役及び監査役が、配当額が分配可能額を超過している
    ことを認識しつつ本件配当を実施したという事実は認められなかった。
                       3
  もっとも、貴社においては、本件配当の実施に至るプロセスにおいて、配当額が
 分配可能額を超過していることに気づく契機として、①本件配当の具体的な配当額
 を確定する過程、②監査役において本件配当に係る剰余金の適法性を検討する過程、
 ③取締役会において本件配当を審議する過程、④取締役会決議後の配当金支払を行
 う過程がありえたところ、以下のとおり、これらの過程のいずれにおいても、貴社
 において、本件配当が分配可能額を超過していることに気づくに至らなかった。な
 お、本件配当が分配可能額を超過してなされたことについて、各四半期報告書に係
 るレビューの過程において、会計監査人である監査法人からの指摘はなされなかっ
 た。

(1) 本件配当の具体的な配当額を確定する過程
    貴社では職務権限規程が設けられており、同規程によれば、配当額は、①経理財
   務部財務課(本件配当当時。現在は財務部。以下「財務課」という。)による配当案
   の申請、②管理企画局局長、代表取締役社長及び経営政策会議(社外取締役以外の
   取締役から構成される会議体を指す。 への報告、
                    )     というプロセスを経て、取締役会
   決議に付議されることとされている。
    しかし、上記プロセスは貴社役職員において十分認識されておらず、また、実施
   もされていなかった。実際に貴社において行われていた配当額の確定プロセスは、
   以下のとおりであった。

  ①    配当方針等の決定
       貴社では、代表取締役を中心とした役職員にて、(i) 配当予想決定に係る取
    締役会の数日前に、当該事業年度の業績予想に基づき、剰余金見込額を 4 等
    分した金額を各四半期の配当予想額とした取締役会上程案を決定し、また、
    (ii) 各四半期の配当額決定に係る取締役会の数日前に、      実際の業績と業績予想
    の差異を踏まえて、配当予想額どおりの配当額で問題がないことの確認を行
    い、各四半期の配当額決定に係る取締役会上程案を決定していた。
  ②    取締役会への上程
       上記①(i)及び(ii)により取締役会への上程が決定された各期の配当予想額又
    は配当額は、    経営企画部を通して経理財務部経理課     (本件配当当時。現在は経
    理部。以下「経理課」という。       )に伝達され(なお、配当額については、積極
    的な周知は行われず、配当予想額どおりの配当でよいかを経理課が経営企画
    部に確認するという方法で経理課に伝達された。、経理課において決算短信
                                   )
    等の書類が作成された。       当該書類は総務法務部に回付され、  総務法務部は、当
    該書類を添付書類として、配当予想額を決定し又は配当額を配当する旨の議
    案  (以下、 総称して   「剰余金配当議案」 という。 を取締役会に上程していた。
                                 )
       なお、 取締役会に上程される剰余金配当議案は、      取締役会決議に先立ち、経
    営政策会議に報告されることもあった。しかし、各期の配当予想額又は配当
    額が確定するのは取締役会開催日の直前であることが多かったため、経営政
    策会議への上程が間に合わない場合には事後報告で済まされるという運用が
    なされており、本件配当に関しても同様の運用がなされていた。

  以上の運用においては、役職員が配当額の適法性を検証するプロセスは存在して
 いなかった。その結果、代表取締役を中心とした役職員及び各部署のいずれにおい
 ても、本件配当が分配可能額規制を遵守しているか否かについて、具体的な議論又

                       4
    は検証等がなされることはなく、本件配当の配当額が分配可能額を超過したもので
    あることが認識されることはなかった。
     なお、上記の過程に関与した役職員のうち、分配可能額規制の存在及び計算方法
    を理解していた役職員は経理課あるいは経理課出身の一部従業員のみであり、その
    他の役職員は、分配可能額規制の存在及び計算方法を明確には理解していなかった。

(2) 監査役において本件配当の適法性を検討する過程
    貴社では、取締役会の開催に先立ち監査役会が開催され、当該監査役会において
   取締役会上程議案の監査を行うことが通例となっている。しかし、剰余金配当議案
   の監査において、監査役らは、分配可能額の計算及び配当額が分配可能額を超過し
   ていないことの確認は社内の担当部署で行っているだろうとの認識のもと、本件配
   当の配当額が分配可能額を超過していないか等の本件配当の適法性に関する議論
   又は検証を行わず、決算短信に基づく各四半期の売上等の業績説明及び配当は配当
   予想額どおり行われるという報告をもって、剰余金配当議案が適切なものであると
   判断していた。
    以上の結果、監査役会において、本件配当が分配可能額規制を遵守しているか否
   かに関する具体的な議論又は検証等がなされることはなく、監査役において、本件
   配当が分配可能額を超過したものであることが認識されることはなかった。

(3) 取締役会において配当予想額及び本件配当を審議する過程
    貴社では、2019 年 1 月以降、配当予想額及び配当額に係る取締役会決議は書面決
   議の方法によって行うこととされ、本件配当に係る取締役会決議も、全て書面決議
   の方法で行われた 1。具体的には、総務法務部から各役員に対して議案書及び添付
   書類が送付され、質問がある役員は E メール等で各部署に質問をした上で、議案に
   異議がなければ同意書を返送する、     という方法がとられた。剰余金配当議案の場合、
   議案書には経理課作成の決算短信等が添付されたが、     配当予想額及び各期の配当額
   の計算過程を記載した資料が作成・添付されたことはなく、また、配当予想額及び
   各期の配当額の確認は取締役会開催日の直前であったため、      剰余金配当議案に係る
   議案書及び添付書類が各役員に送付されるのは、     取締役会開催日の前日又は当日で
   あった。これらの運用は、本件配当に係る取締役会決議においても同様であった。
    本件配当に係る議案に同意しあるいは異議を述べなかった役員らは、(i) 分配可
   能額規制の存在を認識していないか、又は、(ii) 認識していたものの、(a) 当該四半
   期の業績が良好であった、(b) 適切な部署による配当額の適法性の確認や会計監査
   人による監査が行われていると誤信していた等の理由で、     本件配当が分配可能額規
   制を遵守しているか否かに関する議論又は検証等を行わなかった。
    以上の結果、取締役会において、本件配当が分配可能額規制を遵守しているか否
   かに関する具体的な議論又は検証等がなされることはなく、取締役において、本件
   配当が分配可能額を超過しているものであることが認識されないまま、      本件配当に
   係る剰余金配当議案が決議された。




1 本件配当に係る取締役会決議が行われたものとみなされた日は、2019 年 3 月期第 3 四半期配当
については 2019 年 1 月 15 日、2020 年 2 月期第 2 四半期配当については 2019 年 10 月 9 日、
2020 年 2 月期第 3 四半期配当については 2020 年 1 月 8 日、2020 年 2 月期第 4 四半期配当につい
ては 2020 年 4 月 7 日である。
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(4) 本件配当決議後の配当金支払を行う過程
    貴社においては、本件配当に係る剰余金配当議案の決議後、総務法務部が配当金
   支払業務を委託している外部の金融機関に配当事務を依頼し、また、財務課が貴社
   内での配当事務を行っている。貴社の社内規程上、これらの過程において総務法務
   部又は財務課が配当額の適法性の検証を行うこととはされておらず、決議された配
   当額の適法性の確認又は検証等が行われたことはなかった。なお、上記の過程に関
   与した従業員のうち、分配可能額規制の存在及び計算方法を明確に理解していた従
   業員は存在しなかった。
    以上の結果、配当金支払の過程においても、本件配当の配当額が分配可能額を超
   過しているものであることが認識されることはなかった。

2   原因分析

  前記 1 のとおり、貴社において、本件配当の配当額が分配可能額を超過している
 ことについて認識しつつ、本件配当が実施されたという事実は認められない。
  その中で、分配可能額を超過した本件配当がなされた直接的な原因は、剰余金配
 当に関する業務を行う担当部署や責任の所在が不明確であり、  配当額を決定する際
 に社内において分配可能額の計算が行われず、  分配可能額規制に関する検証がなさ
 れなかったことにあると考えられる。
  以下、詳述する。

(1) 配当額決定のための業務プロセスの不遵守・不適切な運用
    上記 1(1)のとおり、配当予想額は、剰余金見込額を 4 等分するという方法、すな
   わち配当性向 100%を前提とした方法で策定されており、実際の業績や自己株式取
   得等の分配可能額に影響する活動の有無次第では、   配当実施時に剰余金の額が配当
   予想額に満たない額となる可能性があった。そのため、配当額の確定に当たっては
   分配可能額の計算及び検証を要するものであったといえるが、貴社においては、職
   務権限規程において剰余金配当議案の決定プロセスが規定されているにもかかわ
   らず、各役職員がその規定を認識しておらず、職務権限規程に従った方法で配当額
   を決定するという意識自体が欠如していた。また、実際の配当額決定プロセスは、
   各部署の業務分掌が明確化されないまま運用されていたため、     どの部署において分
   配可能額の計算及び検証が行われているかは、   役職員のいずれにとっても明らかで
   はなかった。
    そのため、   貴社には会社法上の分配可能額規制について知識を有していた役職員
   もいたものの、役員においては、剰余金配当議案における配当予想額及び配当額の
   適法性が、   しかるべき部署又は外部専門家において検証された上で取締役会に剰余
   金配当議案が上程されるものと誤信し、そのため、自ら分配可能額の計算及び検証
   を行い、 又はいずれかの部署に分配可能額の計算及び検証を行うよう指示する必要
   があるとの考えに至らなかった。また、上記従業員においては、配当予想額及び配
   当額は、 しかるべき部署において分配可能額規制に係る検証が行われた上で自らの
   部署に伝達されているものと誤信し、そのため、自ら分配可能額の計算及び検証を
   行う必要があるとの考えに至らなかった。
    このように、貴社において、職務権限規程が周知徹底されず、配当額決定のため
   の業務プロセスが確立されていなかったために、   分配可能額規制の知識があった役
   職員においても、   他のいずれかの部署又は外部専門家において配当額の適法性の検

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 証が行われていると誤信するに至ったことが、本件配当の原因の一つであると考え
 られる。

(2) 分配可能額規制違反の検証を行うシステムの不存在
    貴社においては、配当予想額又は配当額を確定・決定する業務プロセスにおいて、
   分配可能額を算定するシステムが社内規程あるいはマニュアル等に規定されてい
   なかった。
    このため、経理課や財務課、あるいは総務法務部といった配当関連業務に従事す
   るいずれかの部署において分配可能額を算定するプロセスが欠けており、さらに、
   配当の妥当性を検証する監査役会や、剰余金配当議案を決議する取締役会における
   検討資料として分配可能額の算定結果を示す資料が提供されておらず、 剰余金配当
   議案の配当予想額又は配当額が取締役会の直前に確定され、 検証のための時間的余
   裕がなかったこととも相俟って、剰余金配当議案が分配可能額規制に違反している
   か否かについて、適切な検証・決議を行うことができなかったことが、本件配当の
   原因の一つであると考えられる。

(3) 配当手続及び分配可能額規制に関する担当者の知識及び情報共有不足
    貴社では、配当に関する社内の役員研修や従業員研修は行われておらず、配当手
   続に関与する多くの役職員において、分配可能額規制についての基本的知識が不足
   していた。また、一部の役職員は、分配可能額規制に関する十分な知識を有してい
   たものの、その知識を他部署等と共有する機会がなく、重要な規制についての情報
   共有が行われなかった。そのため、多くの役職員においては、配当額決定の業務プ
   ロセスにおいて分配可能額規制を遵守しているか否かが検証されていない可能性
   があるという問題点そのものを、十分に認識することができなかった。
    このように、貴社の役職員の多くが、分配可能額規制に関する十分な知識を持っ
   ていなかったために、分配可能額規制をいずれかの部署において検証すべきである
   との問題点に思い至らなかったことが、本件配当の原因の一つであると考えられる。

(4) 組織・体制上の問題点
    本件配当の配当額決定プロセスでは、 分配可能額の検証という作業が各部署の業
   務役割の隙間に落ちた結果、分配可能額規制の知識がある部署においても、同作業
   は他部署が行っているであろうとの意識の下、 自部署で責任をもって検証するとい
   うことができなかったことが、本件配当の原因の一つであると考えられる。
    上記事態を招いた貴社の組織・体制上の問題点として、以下の点が挙げられる。
    ・ 職務権限規程と実際の業務分掌が乖離していること((1)参照)
    ・ 各部署が縦割りの組織となっており、人事が固定化している傾向にあること
      とも相俟って、部署同士の横の連携が欠如していること
    ・ 会社法その他の法令違反を含むグループ全体のリスクファクターをチェック
      する体制が整備されていないこと

3   再発防止策の提言

  外部調査委員会は、前記 2 の原因分析を踏まえ、再発防止策について、以下のと
 おり提言する。


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(1) 配当額決定のための業務プロセスの整備
    貴社における配当予想額又は配当額の決定プロセスは適切に策定・運用されてお
   らず、また、実際に行われていた業務プロセスも、分配可能額規制の遵守状況を検
   証できる体制とはなっていなかったことから、 剰余金配当議案の作成や取締役会決
   議後の配当実施等、剰余金配当に関する各過程において、各部署がとるべき措置を
   規定化し、担当部署ごとの業務フローや確認リスト等の策定・整備を行うとともに、
   社内の職務権限規程の見直しを行う必要がある。
    適切な配当額決定のための業務プロセスには様々な在り方が考えられるところ、
   本調査の結果を踏まえると、以下の方法等が考えられる。
    ・ 配当予想額又は配当額を、剰余金配当議案の起案部署を含めた複数の部署(分
      配可能額の計算を速やかに行うことが期待できる経理課、取締役会議案を漏
      れなく把握できる立場にある総務法務部等)においてチェックするプロセス
      を設ける。
    ・ 必要に応じて部署を再編成し、配当予想額又は配当額の適法性検証に係る責
      任部署を明確化する。
    ・ 必要に応じて外部専門家へのチェックを依頼するプロセスを設ける。
    ・ 剰余金配当までの業務プロセスを社内規程に明記し、周知徹底する。

(2) 配当額の検証を容易にするシステムの構築
    貴社においては、剰余金配当に関する業務に関与する役職員において、分配可能
   額規制の存在を十分意識できず、また、意識したとしても速やかにその検証を行う
   ことができる体制となっていなかったことから、担当部署のみならず、剰余金配当
   に関する業務に関わる役職員において、分配可能額規制を意識し、その遵守状況を
   直ちに検証できる体制を構築する必要がある。
    各役職員が分配可能額規制を意識し検証するための体制には様々な在り方が考
   えられるところ、本調査の結果を踏まえると、以下の方法等が考えられる。
    ・ 剰余金配当議案の起案部署等において分配可能額規制の検証を行うための定
      式等を作成し、必要に応じて外部専門家によるチェックを受ける。
    ・ 剰余金配当議案の起案部署等が行った分配可能額規制の検証結果を、書面化
      し、各議案書等の添付資料として他の役職員に回覧する。
    ・ 配当額決定に関わる役職員や部署において、十分な検証を行うことができる
      よう、余裕を持った剰余金配当スケジュールを策定する。
    ・ 配当額が分配可能額規制を超過しないよう、四半期配当の実施については再
      検討の上、余裕を持った配当性向とする。

(3) 会社法制に関する基本的知識の理解の推進及び情報共有
    貴社の多くの役職員において、    分配可能額規制の存在が十分認識されていなかっ
   たため、決算や取締役会等の会社法制上の諸手続や配当政策に関連する法令知識に
   ついての理解を深め、取締役、監査役及び担当部署への情報提供や共有を行う体制
   を構築する必要がある。
    具体的な方法としては、e-learning 等の方法を含めた社内研修の実施や担当部署
   における業務マニュアルの作成等が考えられる。
    また、分配可能額規制の内容の変更等が行われる場合に備え、定期的に法令改正
   等の有無を確認し、その内容を社内に共有するシステム作りを行うことが望ましい。


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(4) 組織・体制上の問題点の改善
    本件配当が行われた背景として、  分配可能額の検証について各部署間でお見合い
   の状態にあり、責任をもって業務を行う部署が存在しなかったという組織・体制上
   の問題点が挙げられる。
    このような組織・体制上の問題点を解消する方法としては、職務権限規程の見直
   し・部署の再編成((1)参照)の他、部署間の人事異動の実施や、各部署を統括する
   管理企画部門の権限強化等を通じて他部署との横の連携を強化し、  業務分掌に漏れ
   が出ないような体制作りを行うことが考えられる。また、会社法その他の法令違反
   を含むグループ全体のリスクファクターを洗い出し、検証・対応を行うため、各部
   署の業務内容を網羅的に把握した上で、  全社レベルで俯瞰的な観点からチェックを
   行うことが考えられる。

4   関与者の法的責任

(1) 取締役及び監査役の刑事責任
    会社法第 963 条第 5 項第 2 号は、「法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配
   当をしたとき」について、刑事責任を定めている。
    この罪は故意犯であるところ、本調査によれば、貴社の取締役及び監査役が、本
   件配当が分配可能額を超過していることを認識しつつ、       本件配当を実施したという
   事実は認められず、同罪の故意は認められないから、本件配当に係る剰余金配当議
   案に係る提案に同意した貴社の取締役及び当該提案に異議を述べなかった監査役
   は刑事責任を負うものではない。

(2) 取締役及び監査役の会社法上の責任
    会社法第 462 条第 1 項柱書、同項 6 号ロ、会社計算規則第 159 条第 8 号イ、同号
   ハ及び同第 161 条により、      分配可能額を超過した本件配当による金銭の交付に関す
   る職務を行った取締役に加え、         本件配当に係る剰余金配当議案を取締役会の決議の
   目的である事項として提案した取締役、         本件配当に係る剰余金配当議案に賛成した
   その他の取締役は、     「その職務を行うについて注意を怠らなかったこと」を証明で
   きない場合、連帯して、貴社に対し、本件配当に相当する金銭を支払う義務を負う
   (会社法第 462 条第 1 項・第 2 項)  。
    また、監査役は、本件配当に係る剰余金配当議案について異議を述べる書面を提
   出していないところ、本件配当に関する監査任務を怠ったと評価される場合には、
   連帯して、本件配当により貴社に生じた損害を賠償する責任を負う(会社法第 423
   条第 1 項)。
    社内調査委員会及び外部調査委員会の調査結果を踏まえると、          貴社取締役及び監
   査役に会社法上の責任がないと断ずることはできない。
    もっとも、貴社の取締役及び監査役は、本件配当が分配可能額を超過しているこ
   とを認識しつつ、本件配当を敢えて実施したものではないため、態様として悪質と
   はいえない。また、本報告書作成時点において、貴社は自己株式 3,508,800 株を払
   込金額総額 1,000,008,000 円で処分しており、臨時決算は行っていないものの、   2020
   年 2 月期までの利益剰余金と合わせれば、       分配可能額超過による会社債権者への影
   響は実質的に吸収・解消されていると評価しうる。さらに、本件配当に係る剰余金
   配当議案に係る提案に同意した取締役(2020 年 5 月に退任した取締役 3 名を含む)

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及び当該提案に異議を述べなかった監査役は、その職責に応じ、報酬 2 か月相当分
の 1 割から 3 割を自主返納する予定であり、その限度において、会社財産の一部の
回復が見込まれる。加えて、貴社取締役及び監査役は、再発防止策に積極的に取り
組む姿勢を見せている。
 以上の事情を総合的に考慮すれば、外部調査委員会としては、貴社取締役及び監
査役に対して上記会社法上の責任を追及する必要性までは認められないものと判
断する。
                                       以上




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