4584 M-キッズ・バイオ 2019-05-10 15:30:00
ORTHOREBIRTH株式会社との口唇口蓋裂の治療法創出に向けた共同研究開発契約締結のお知らせ [pdf]

                                                        2019 年5月 10 日


各    位


                             会    社   名 株式会社ジーンテクノサイエンス
                             代表者名 代 表 取 締 役 社 長 谷              匡 治
                                        (コード番号:4584 東証マザーズ)
                                       執   行   役    員
                             問合せ先                       栄      靖 雄
                                       経営管理本部長
                                                   (TEL.011-876-9571)



         ORTHOREBIRTH 株式会社との
口唇口蓋裂の治療法創出に向けた共同研究開発契約締結のお知らせ


    この度、当社は、ORTHOREBIRTH 株式会社(以下、「オルソリバース」といいます。)と、口唇口蓋裂に
関する治療法の創出に向けて、共同研究開発契約(以下、
                         「本契約」といいます。)を締結することを決議
いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。
                              記
1.本契約締結の目的及び理由
     当社は、2018 年度より新たな事業ステージを指す GTS3.0「バイオで価値を創造するエンジニアリン
    グカンパニー」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見
    及び、本年4月1日付で完全子会社化した株式会社セルテクノロジーが保有する歯髄幹細胞治療プラ
    ットフォームを最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的な
    ターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様のみならずそのご家族や介護者の方を含めた包括的な
    ケアを目指して、新薬開発にとどまらず先進的な医療の開発・提供に取り組んでおります。本契約は、
    このうち小児疾患に属する研究開発テーマとして、当該疾患の新たな治療法の創出を目指すものであ
    ります。
     口唇口蓋裂は、口腔の先天的な発生異常によって生じる疾患で、発生時に口蓋の片側が閉鎖しない
    ことで裂が残る先天性疾患の一つです。この病気は、発症部位により口唇裂、口蓋裂および唇顎裂に
    分けられ、上顎の歯槽骨に亀裂を生じる唇顎裂の治療難度が最も高いとされています。唇顎裂の治療
    法は、就学前後の患者から自己腰骨を取り出し、唇顎裂に移植することで、歯槽骨再生を促す治療法
    ですが、十分な量の自己腰骨を取り出せるようになる年齢まで治療を待たなければならないこと、さ
    らに、当該治療法は侵襲性が高く、歩行障害を伴い、約 10 日間の入院が必要となることなどが課題に
    なっています。当社はこれら課題に対処するため、歯髄幹細胞を用いた再生医療により、非侵襲性の
    新規治療法の開発を目指します。
     また、口唇口蓋裂は、発生学的には顔面の形成に重要な働きを行う神経堤細胞(Neural crest cell)
    の異常によって生じ、神経堤症(Neurocristopathy)に分類される疾患です。歯髄幹細胞は、発生学的
    に神経堤細胞由来であり、優れた骨再生能力を有していることから、唇顎裂の再生医療には最適な細
    胞ソースであると考えられます。加えて、歯髄幹細胞を用いた唇顎裂治療において、適切な足場材と
    細胞を組み合わせて移植することで、治療部位での細胞の生着性が向上し、歯髄幹細胞と足場材の骨
    再生能力の相乗効果により、より強固な歯槽骨再生が期待されます。この足場材には、当社が資本業

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 務提携を行っているオルソリバースの保有する綿状の人工骨充填材レボシスが歯髄幹細胞との組み合
 わせを行う上で多数の利点を有していると考えております。レボシスは米国 FDA によって既に骨折治
 療において認可されており、安全性と高い骨再生誘導能力が証明されています。また、レボシスは綿
 状であるため、固形の充填材に比べて表面積が多く、多数の歯髄幹細胞が生着できることが期待でき
 ます。さらに、レボシスは生分解性の素材からできているため、骨再生後には消失することから、再生
 した歯槽骨は患者由来の骨によって占められ、人工成分の残留の心配がありません。今後、当社とオ
 ルソリバースは、このような綿状の人工骨充填材と歯髄幹細胞を組み合わせる共同研究を実施し、口
 唇口蓋裂治療法としての最適化を進め、動物モデルにおける骨再生能力の実証を行う予定です。
  以上のとおり、当社はオルソリバースと協働の下、研究開発活動を進めてまいります。なお、当社
 は、オルソリバースと 2014 年 11 月 10 日に人工骨事業の製品開発に関する資本業務提携を行うことを
 決議しておりますが、この度オルソリバースと協議した結果、当該資本業務提携に伴う事業に区切り
 がついたことから、同社との協働体制は人工骨事業から本再生医療等製品の製品開発へとシフトさせ
 ることが双方にとって最適であるとの結論に至り、当該資本業務提携契約は本契約の締結をもって終
 了することといたしました。しかしながら、本契約の締結に伴い、新たな業務提携関係を構築するこ
 ととなり、かつ 2014 年 11 月に取得した同社の普通株式については引き続き一定数を中長期的に保有
 する方針であるため、これまでの資本業務提携関係を実質的に継続することで両社合意しております。


2.本契約の内容
  歯髄幹細胞と人工骨充填材を組み合わせた口唇口蓋裂に対する新規治療法に係る共同研究開発契約
  (1)in vitro における歯髄幹細胞と人工骨充填材の最適化検討
  (2)in vivo における歯髄幹細胞と人工骨充填材による骨再生能力の実証


3.本契約の相手先の概要(2019 年3月 31 日現在)
  (1)名称               ORTHOREBIRTH 株式会社
  (2)代表者              代表取締役社長 西川 靖俊
  (3)設立年              2011 年6月
  (4)所在地              神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央 15 番3
  (5)事業内容             医療機器・医療用消耗品等の研究開発・販売・製造及び修理
                      医薬品・医薬部外品・工業薬品等の販売 その他
  (6)資本金              447,461 千円
  (7)大株主及び持株比率        イノベーション・エンジン株式会社                         15.2%
                      デクセリアルズ株式会社                               9.7%
  (8)上場会社と当該会社の関係     資本関係         当社は、2014 年 11 月 10 日付「ORTHOREBIRTH
                                   株式会社との資本業務提携及び第三者割当
                                   の引受けに関するお知らせ」に基づき、同社
                                   の普通株式を 909 株所有しております。
                      人的関係         該当事項はありません。
                      取引関係         該当事項はありません。
                      関連当事者へ       該当事項はありません。
                      の該当状況


3.今後の見通し
  本件に伴う 2020 年3月期の業績への影響は軽微の見通しです。


                                                                以   上


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【用語説明】
  口唇口蓋裂
  発生時に口蓋の片側が閉鎖しないことで裂が残る疾患で、新生児の 500 人に一人が発症する先天性
 疾患です。発症部位によって、唇顎裂、口蓋裂、口唇裂の3つに分けられますが、発症機序が同じな
 ため、併発することが多い疾患です。これらの症状のうち、治療難度が最も高い症状が唇顎裂です。
 唇顎裂は、上顎の歯槽骨に裂が形成されるため、治癒しない場合は、鼻汁の逆流、顎の生育不全によ
 り咬合(噛み合わせ)の問題が生じ、それに伴って、腰痛・頭痛・咀嚼障害、発声障害等が引き起こ
 されます。唇顎裂の治療は、患者の顎の発育にあわせて、就学前後に自分の腰骨の一部を手術により
 採取し、それを砕いて顎裂部に移植することにより、顎堤、即ち歯槽骨を再生する治療法が取られて
 おります。しかしながら、発育期の患者から手術により腰骨を採取することは侵襲性が高いため、侵
 襲性の低い代替治療法が期待されます。


  神経堤細胞
  発生過程において、受精卵が、細胞分裂を行い、細胞の移動や誘導現象により将来皮膚や神経を形
 成する外胚葉、血液や心臓、腎臓等を形成する中胚葉、内臓を形成する内胚葉の3つの胚葉が形成さ
 れることが知られています。神経堤細胞は、外胚葉のうち、表皮になる部分と神経になる部分の境目
 に形成される細胞で、もともとは外胚葉由来の細胞ですが、発生過程において、体の中の様々な領域
 に移動し、移動した先で、外胚葉由来の組織や器官のみならず、中胚葉や内胚葉由来の組織に分化す
 ることができる多分化能を持つ細胞です。神経堤細胞を起源とする組織は、顔面の骨や軟骨、歯、血
 管平滑筋や血管周皮細胞、感覚神経やグリア細胞等の神経組織、色素細胞、眼球内の角膜・虹彩・毛
 様体や脈絡膜、さらに、副腎髄質などにも含まれます。これらの特徴から、神経堤細胞を第4の胚葉
 とする考え方もあり、多数の基礎研究が進められております。
  当社が手掛ける歯髄幹細胞も神経堤細胞を起源とし、頭部の神経から顔面に移動し、幹細胞として
 歯髄に定着した細胞です。


  神経堤症
  発生過程における神経堤細胞の異常により引き起こされる疾患を神経堤症と呼び、1974 年に Robert
 Bolande により提唱されました。神経堤症は、神経堤細胞が異常増殖することで癌化する腫瘍性の疾患
 と、神経堤細胞の移動や組織への分化が異常になる異発生性の疾患に大別されます。腫瘍性の神経堤
 症としては、褐色細胞腫(副腎髄質のクロム親和性細胞の腫瘍)や神経線維腫症1型(カフェオレ斑や
 神経線維腫を特徴とする先天性母斑症)が挙げられ、一方、異発生性の神経堤症としては、ヒルスシュ
 プルング病(腸管末端部における神経節細胞の先天的欠損を原因とする巨大結腸症)やワールデンブ
 ルグ症候群(感音難聴、白髪、虹彩色素異常を呈する先天性症候群)等が代表的な疾患です。




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