4575 M-CANBAS 2021-03-16 15:00:00
AACR年次総会における当社研究成果発表の抄録公表について [pdf]

                                                                            2021年3⽉16⽇
各 位
                                       会社名             株 式 会 社  キ ャ ン バ ス
                                       代表者名                    代表取締役社⻑ 河邊 拓⼰
                                                          (コード番号︓4575 東証マザーズ)
                                       問合せ先                 取締役最⾼財務責任者 加登住 眞
                                                                    IR@canbas.co.jp



              AACR年次総会における当社研究成果発表の抄録公表について

 当社研究開発部 Jonathan M. Friedman, PhD による研究成果が2021年4⽉10〜15⽇及び5⽉17〜21⽇に
バーチャル(オンライン)で開催される⽶国癌研究会議(AACR)年次会議においてポスター発表されることと
なったのは2⽉3⽇既報のとおりですが、その抄録が公表されましたので、お知らせします。

【発表の概要】
 表題︓            “A probabilistic analysis of somatic mutations indicates individual survival
                outcome classes with AUC near 1.00 for all tested cancer-drug combinations
                from TCGA and 4 immune checkpoint studies (all having ≥ 20 patients and
                an outcome ratio < 6)”
                (参考訳題︓「TCGA*1 からテストした全ての癌と薬剤の組み合わせ、およびテストした4
                つの免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験(いずれも20症例以上、転帰⽐率6未満*2)にお
                いて、AUC*3 1.00に近い予後予測精度を⽰した体細胞変異の確率的分析⼿法」)
 セッションカテゴリー︓ バイオインフォマティクス・コンバージェンスサイエンス・システムバイオロジー
 セッションタイトル︓           ⼈⼯知能(AI)と機械学習(Machine Learning)
 アブストラクト番号︓           191
【抄録】
 https://www.abstractsonline.com/pp8/#!/9325/presentation/1273

 当社Jonathan M. Friedman, PhDが⾒出したのは、患者の体細胞変異(後天的な突然変異)のデータだけを
⽤いて抗癌剤治療の結果を予測する、新たな計算⼿法です。
 今回、78通りの抗癌剤の組み合わせ(うち74通りはTCGA収載データ、4通りは免疫チェックポイント阻害抗
体に関する公表済み臨床試験データ)を⽤いて検証した結果、個別患者の体細胞変異データだけでほぼ完璧に
(AUC 1.00をわずかに下回る予測精度で)治療結果の予測を的中させました。

 Jonathan M. Friedman PhDが⾒出した新たな計算⼿法では、他の感受性予測AIで⼀般に使われている下記
のような⼿法を使⽤しません。
 (1) 推定値を変数に適⽤して得られた値と観察データとの⽐較を⾏い、当初の推定値をさらに補正する。
 (2) 線形代数法や勾配法を使う。(サンプル選択誤差が⽣じやすい。)
 (3) 因⼦ごとの相対的な重要度の違いに応じて寄与率の係数を決める。
 (4) ランダムな測定値からの不正確な実験的推論によって確率値を推定する。

 新たな⼿法では、これらのような複雑さや不正確さを解消し、正確な確率値を使⽤するとともに、部分的な
寄与率を観測データに当てはめるのではなくメタ統計を⽤い、ノンパラメトリック法(正規分布など特定の分
布を仮定しない⽅法)による分布間⽐較で観測結果が無作為抽出と違う確率を算出しています。
 Jonathan M. Friedman PhDは、「従来の⼿法に⾒られるモデリングバイアスの原因を分析し、それを回避
することによって、実⽤に耐え得るシンプルな⼿法と予測精度の向上を実現できた」と述べています。

 当社は今後、この計算⼿法に関する前向き研究を進め、承認申請実施可能レベルに⾄ると判断した場合には、
化学療法剤や免疫系抗癌剤などの予後予測のための体外診断⽤医療機器*4 として開発(パートナーとの共同開
発等を含む)を開始する可能性があります。
 本件による当期業績への影響はありませんが、当社の中⻑期的な収益及び企業価値の向上に寄与すると考え
ています。



【株式会社キャンバスについて】

キャンバスは、癌免疫に特化して新規抗癌剤の創出を⽬指す、臨床開発段階の研究開発型創薬企業です。

創業期から研究開発を続け現在最も開発ステージの進んでいる⾃社創出化合物CBP501は、「CD8発現T細胞の
存在しない(または極めて少ない)免疫コールドな癌組織にCD8発現T細胞を誘引して免疫ホットにし、免疫チ
ェックポイント阻害抗体の効果を⾼める」というユニークな作⽤機序を持つImmune Igniter(免疫着⽕剤)で
あり、これまで多数の臨床試験で⼗分な安全性が確認された上、直近では膵臓癌3次治療を対象とした⽶国での
フェーズ1b試験で有効性を⽰す有望な結果が得られました。現在、第2相試験の2021年央開始に向けて準備中
です。

後続の化合物CBS9106は、⾃社の探索システムから創出し独⼒で前臨床試験を完了した段階で2014年に⽶国
Stemline社へ導出しました。臨床第1相試験で有望な安全性と有効性が⽰されており、次相臨床試験が検討され
ています。

これらのほかキャンバスは、前臨床試験段階の抗癌剤候補化合物CBP-A08、低分⼦の免疫系抗癌剤である
IDO/TDO⼆重阻害剤、新しいコンセプトの免疫系抗癌剤の探索創出段階にある「NEXT」プロジェクト、免疫
系抗癌剤の感受性予測システムなど、癌免疫領域に集中した基礎研究に基づく中⻑期的な研究開発ポートフォ
リオを有しています。また、IDO/TDO⼆重阻害剤については、同じ作⽤メカニズムでサイトカインストームの
抑制にも効果が期待できることから、静岡県⽴⼤学と共同で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬
としても研究を進めています。

                                                                                 以上

《注》


*1 TCGA
The Cancer Genome Atlasの略。⽶国癌研究所(National Cancer Institute: NCI)と⽶国ヒトゲノム研究所(National
Human Genome Research Institute: NHGRI))の共同プロジェクトで、多種多様な癌についてゲノム変異などを網羅的
に解析したデータベース。
*2 転帰⽐率6未満
このプログラムは、治療前に得ることのできる体細胞変異の情報をもとに治療の転帰(outcome、無増悪⽣存期間・全⽣存
期間の期待値⽐短期・中期・⻑期の分類)を予測する⼿法であり、今回の発表は、過去の臨床試験データをもとにプログラ
ムの予測精度を検証したいわばバックテストの報告。
検証⽤データに偏りがあまりに⼤きいとバックテストに⽤いるのに不適格なので、今回は、転帰の良否の⽐率が6倍以上離れ
たデータを⽤いないこととした。
*3 AUC
Area under the curve(ROC曲線下⾯積)の略。機械学習モデルの識別性能を評価する代表的指標として⽤いられる。
ROC(閾値を変化させたときの偽陽性率と真陽性率の変化を表したグラフ)の曲線より下の⾯積のことで、1.00に近いほど
識別性能=予測精度が⾼い。
参考情報として、他の試験かつ他の癌種であるものの、例えばグリオーマの予後予測でAUC0.7〜0.8が得られた⽂献では
「good test」等と表現されている。
当社では、複数の参考⽂献などから、AUC0.81以上が承認申請実施可能性を検討すべきレベルと判断している。
*4 体外診断⽤医療機器
本システムが将来実⽤化される場合は、薬事申請・承認のカテゴリは「体外診断⽤医療機器」に該当する。
⼀般に、体外診断⽤医療機器に求められる試験内容は医薬品と⼤きく異なり、医薬品よりも簡易で症例数も少ない臨床研究
等で薬事申請・承認申請実施が可能となるケースが多い。