4575 M-CANBAS 2021-02-03 15:00:00
AACR年次総会における当社研究成果のポスター発表について [pdf]

                                                                             2021年2月3日
各 位
                                       会社名             株 式 会 社  キ ャ ン バ ス
                                       代表者名                    代表取締役社長 河邊 拓己
                                                          (コード番号:4575 東証マザーズ)
                                       問合せ先                 取締役最高財務責任者 加登住 眞
                                                                    IR@canbas.co.jp



              AACR年次総会における当社研究成果のポスター発表について

 当社研究開発部 Jonathan M. Friedman, PhD による研究成果が、2021年4月10∼15日及び5月17∼21
日にバーチャル(オンライン)で開催される米国癌研究会議(AACR)年次会議においてポスター発表される
こととなりましたので、お知らせします。

【発表の概要】

表題:              A probabilistic analysis of somatic mutations indicates individual survival
                outcome classes with AUC near 1.00 for all tested cancer-drug
                combinations from TCGA and 4 immune checkpoint studies (all having ≥ 20
                patients and an outcome ratio < 6)
                (参考訳題:「TCGA*1 からテストした全ての癌と薬剤の組み合わせ、およびテストした4つ
                の免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験(いずれも20症例以上、転帰比率6未満*2)におい
                て、AUC*3 1.00に近い予後予測精度を示した体細胞変異の確率的分析手法の報告」)
セッションカテゴリー: バイオインフォマティクス・コンバージェンスサイエンス・システムバイオロジー
セッションタイトル:  人工知能(AI)と機械学習(Machine Learning)
アブストラクト番号:  191



 今回ポスター発表される研究は、2019年AACR年次会議でのポスター発表(2019年1月18日公表)の予測
プログラムをさらに改良し、        TCGA収載データや複数の臨床試験データを使ってその予測精度の高さを示したも
のです。
 当社Jonathan M. Friedman, PhDは、頻度の多い体細胞変異(後天的な突然変異)2種類の組合せを統計的
手法や独自の計算方法によって処理したパターンが、化学療法や免疫系抗癌剤の臨床効果を反映することを見
出しました。今回は、これをさらに進め、計算手法の改良・簡略化を行い、多くの臨床試験データを用いてそ
の高い予測精度の再現性を確認したものです。

 これは、免疫系抗癌剤や化学療法の各個人に対する効果を予測する新たな方法の開発に向けた知見です。
 効果の見られる確率の高くない免疫チェックポイント抗体や、副作用が嫌われる化学療法剤にとって、その
各個人に対する効果を予測できることは、新薬を開発するのに匹敵する価値があります。

 この知見が実用化された場合には、既存のオンコガイドNCCオンコパネルシステムやFoundationOne CDx
がんゲノムプロファイルなどを補完する役割や、次世代シークエンサーとの同時利用によって患者・医師の治
療方針の策定を補助する解析ソフトウェアにもなり得ると考えられます。さらに、将来的には、最適な薬剤選
択に寄与し、医療コストの低減に繋がることも期待できます。
 当社は今後この知見の研究を深化し、承認申請実施可能レベルに至ると判断した場合には、化学療法剤や免
疫系抗癌剤などの予後予測のための体外診断用医療機器*4 として開発(提携パートナーとの共同開発を含む)を
開始する可能性があります。

 また、こうした手法や知見の蓄積は、新たな創薬ターゲットの発見にもつながります。
 本件による当期業績への影響はありませんが、当社の事業展開力や創薬能力の基盤である基礎研究領域の広
がりと深みを表す成果であり、当社の中長期的な企業価値の向上に寄与すると考えています。



【株式会社キャンバスについて】

キャンバスは、癌免疫に特化して新規抗癌剤の創出を目指す、臨床開発段階の研究開発型創薬企業です。

創業期から研究開発を続け現在最も開発ステージの進んでいる自社創出化合物CBP501は、「CD8発現T細胞
の存在しない(または極めて少ない)免疫コールドな癌組織にCD8発現T細胞を誘引して免疫ホットにし、免疫
チェックポイント阻害抗体の効果を高める」というユニークな作用機序を持つImmune Igniter(免疫着火剤)
であり、これまで多数の臨床試験で十分な安全性が確認された上、直近では膵臓癌3次治療を対象とした米国で
の臨床第1b相試験で有効性を示す有望な結果が得られました。現在は次相臨床試験を準備中です。

後続の化合物CBS9106は、自社の探索システムから創出し独力で前臨床試験を完了した段階で2014年に米国
Stemline社へ導出しました。臨床第1相試験で有望な安全性と有効性が示されており、次相臨床試験が検討され
ています。

これらのほかキャンバスは、前臨床試験段階の抗癌剤候補化合物CBP-A08、低分子の免疫系抗癌剤である
IDO/TDO二重阻害剤、新しいコンセプトの免疫系抗癌剤の探索創出段階にある「NEXT」プロジェクト、免疫
系抗癌剤の感受性予測システムなど、癌免疫領域に集中した基礎研究に基づく中長期的な研究開発ポートフォ
リオを有しています。また、IDO/TDO二重阻害剤については、同じ作用メカニズムでサイトカインストームの
抑制にも効果が期待できることから、静岡県立大学と共同で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬
としても研究を進めています。

                                                                                 以上

《注》


*1 TCGA
The Cancer Genome Atlasの略。米国癌研究所(National Cancer Institute: NCI)と米国ヒトゲノム研究所(National
Human Genome Research Institute: NHGRI))の共同プロジェクトで、多種多様な癌についてゲノム変異などを網羅的に
解析したデータベース。
*2 転帰比率6未満
このプログラムは、治療前に得ることのできる体細胞変異の情報をもとに治療の転帰(outcome、無増悪生存期間・全生存
期間の期待値比短期・中期・長期の分類)を予測する手法であり、今回の発表は、過去の臨床試験データをもとにプログラ
ムの予測精度を検証したいわばバックテストの報告。
検証用データに偏りがあまりに大きいとバックテストに用いるのに不適格なので、今回は、転帰の良否の比率が6倍以上離
れたデータを用いないこととした。
*3 AUC
Area under the curve(ROC曲線下面積)の略。機械学習モデルの識別性能を評価する代表的指標として用いられる。
ROC(閾値を変化させたときの偽陽性率と真陽性率の変化を表したグラフ)の曲線より下の面積のことで、1.00に近いほど
識別性能=予測精度が高い。
参考情報として、他の試験かつ他の癌種であるものの、例えばグリオーマの予後予測でAUC0.7∼0.8が得られた文献では
「good test」等と表現されている。
当社では、複数の参考文献などから、AUC0.81以上が承認申請実施可能性を検討すべきレベルと判断している。
*4 体外診断用医療機器
本システムが将来実用化される場合は、薬事申請・承認のカテゴリは「体外診断用医療機器」に該当する。
一般に、体外診断用医療機器に求められる試験内容は医薬品と大きく異なり、医薬品よりも簡易で症例数も少ない臨床研究
等で薬事申請・承認申請実施が可能となるケースが多い。