4575 M-CANBAS 2020-12-17 15:20:00
CBP501フェーズ1b臨床試験の投与終了ならびにMSS直腸大腸癌に対する有効性速報データ公表のお知らせ [pdf]

                                                     2020年12月17日
各 位
                              会社名      株 式 会 社 キ ャ ン バ ス
                              代表者名            代表取締役社長 河邊 拓己
                                         (コード番号:4575 東証マザーズ)
                              問合せ先         取締役最高財務責任者 加登住 眞
                                                   IR@canbas.co.jp



                 CBP501フェーズ1b臨床試験の投与終了ならびに
               MSS直腸大腸癌に対する有効性速報データ公表のお知らせ



 当社がかねてから米国で実施しているCBP501フェーズ1b臨床試験拡大相において、膵臓癌に続きMSS直腸
   *1
大腸癌 についても投与を終了しました。
 これにより、MSS直腸大腸癌の有効性速報データが下記のとおり取りまとまりましたので、 お知らせします。



【MSS直腸大腸癌有効性速報データ】

 CBP501フェーズ1b臨床試験、MSS直腸大腸癌評価可能11例 (用量漸増相4例、拡大相7例)

          *2
 部分奏効(PR) ・・・ 1例 9%
 4週を超える病勢安定(SD)・・・ 3例 27%
 病勢コントロール率 36% (4/11)
 無増悪生存期間(PFS)の中央値 1.4ヶ月
 全生存期間(OS)の中央値 11.8ヶ月

 ※ 白血球数<10,000/uL*3 の患者(9症例)では、PFSの中央値2.0ヶ月、OSの中央値11.8ヶ月

 用量漸増相で観察された部分奏効(PR)は、拡大相試験においては得ることができませんでした。
 しかしながら、症例の大半が3次治療以降という多数の既治療歴*4 のある症例において、同種の臨床試験と同
等もしくはやや上回る良好な結果を得ることができました。

 また、大腸癌で新たに1症例について、治療前後のCD8発現T細胞に関する生検*5 のデータが獲得でき、癌を
攻撃する免疫細胞であるCD8発現T細胞のほぼいない「免疫コールド」の状態を改善し「免疫ホット」にしてい
ることがわかりました。
 この変化は、既に観察終了した被験者数例でも見られており、一貫性のあるものです。
 CBP501の作用メカニズムと考えられる「CBP501+プラチナ系抗癌剤が『免疫コールド』を『免疫ホット』
に変え、免疫チェックポイント抗体を効きやすくする」の傍証を追加で獲得できたことは、2020年9月24日に
公表した膵臓癌に関する速報データ同様に、次相臨床試験に進む礎となる力強い成果であると当社は考えてい
ます。

 現在は、既に投与を終えた被験者(膵臓癌・MSS直腸大腸癌)の投与後の生存フォローアップ観察を実施し
ています。
 生存フォローアップ観察が完了するまでフェーズ1b臨床試験自体は継続しますが、これによって次相以降の
臨床試験のスケジュールが変動することはありません。

 なお、2020年9月24日公表資料に記載したとおり、今後当社はCBP501について、MSS直腸大腸癌よりも
膵臓癌を適応癌腫とする開発を優先します。
 また、次相臨床試験(フェーズ2試験もしくはフェーズ2・3ピボタル試験)の内容については、提携パート
ナー候補先や関連機関等とも協議し、大まかな開発スケジュールとともに、2021年2月∼5月を目処に公表す
る予定です。

【代表取締役コメント】

 今回公表したフェーズ1b臨床試験の投与終了およびMSS直腸大腸癌速報データについて、当社代表取締役社
長河邊拓己は次のようにコメントしています。

 「諸事情により2020年10月以降の新規組入れを打ち切ることとなりましたが、打ち切り決定の時点で想定
していたよりも多くの症例へ投与でき、作用メカニズムの検証を含む一定の成果を得ることができたことを大
変嬉しく思っています。
 既に公表しているとおり当社は、経営資源の集中を図る目的で当面は膵臓癌を適応症とする開発にフォーカ
スすることとしており、その判断は正しいと認識しています。
 ご承知のようにMSS直腸大腸癌もアンメット・メディカル・ニーズの大きな領域であり、これまでのCBP501
臨床試験で好感触を得られている卵巣癌・悪性胸膜中皮腫など他の癌腫と同様に、財務上の条件など状況が整
い次第、順次開発の対象としていく予定です。
 当社は、引き続き臨床開発を進展させることにより、製薬バリューチェーンに高い付加価値をもたらし、中
期的な企業価値の向上に努めます」



 本件による2021年6月期業績への影響としては、組入れ打ち切り決定時の想定よりもフェーズ1b試験終了ま
での期間が若干長期化したことによる開発費の増加が見込まれますが、その金額は比較的軽微な範囲にとどま
るものと現時点で見込んでいます。
 他に何らかの影響が生じることとなった場合には速やかに公表します。

                                                          以上

《注》

*1 MSS直腸大腸癌
MSSとはマイクロサテライト安定。直腸大腸癌の大半を占めるマイクロサテライト安定直腸大腸癌(大腸癌全体の85%程度
であり、ステージIVに限れば95%以上)においては、抗PD-1抗体(オプジーボなど)単独の奏効率はほぼゼロとされてい
ます。


*2 部分奏効(PR)
標的病変の長径と短径の和(径和)が、治療前に測定した径和に比べ30%以上小さくなったものをいいます。


*3 白血球数
CBP501は、白血球数異常高値(異常の定義は統一されていないが概ね10,000/uL以上)を投与対象から除外することによ
って効果をより強く引き出せます。この絞り込みは、日米欧ほか主要国で既に用途特許として成立しています。
今回の試験でも、白血球数10,000未満の正常値の症例において良い傾向が見られました。これは用途特許の有効性を示す結
果であるとともに、CBP501の作用メカニズムに関する当社の仮説の正しさの傍証のひとつでもあります。


*4 既治療歴
CBP501のフェーズ1b試験は、既治療歴のある(初回治療で効果がなかった/効果がなくなった)患者さんを対象としてい
ます。さらに、実際に組入れられているのは3回目以降治療の患者さんが大部分です。
癌は初回治療に最も良く反応(奏効)し、2回目・3回目と進むにしたがってさまざまな抵抗性を獲得して反応しにくくなる
ことがわかっています。
具体的数字で示すと、2015年から2017年の間に北京のある病院で免疫チェックポイント阻害抗体単独あるいは他の 治療
法との組み合わせの治療を受けた膵臓癌患者の全生存期間について、「初回治療の場合 7.0ヶ月」「2回目治療の場合 5.1
ヶ月」「3回目以降治療の場合 2.8ヶ月」(いずれも中央値) と報告している論文があります。
これほどの違いがあることから、臨床試験データの評価においては、対象患者群の既治療歴を十分に考慮する必要があると
されています。


*5 治療前後のCD8発現T細胞に関する生検
被験者の癌組織を治療前・治療後の2度採取し、これを組織染色してCD8発現T細胞の割合を確認したものです。
侵襲性の高い検査のため、同意が得られた被験者にのみ実施しています。本試験では、被験者に配慮しつつ、薬剤メカニズ
ムを検証でき得る形を工夫し、この方法を採用しました。