4575 M-CANBAS 2020-09-24 15:00:00
CBP501フェーズ1b試験膵臓癌速報データの公表およびMSS直腸大腸癌新規組入れ打ち切りのおしらせ [pdf]

                                                        2020年9月24日
各 位
                        会 社 名           株 式 会 社   キ   ャ    ン    バ   ス
                        代表者名              代表取締役社長         河 邊   拓 己
                                            (コード番号:4575 東証マザーズ)
                        問 合 せ先     取締役最高財務責任者兼管理部長 加登住 眞
                                                      IR@canbas.co.jp


                   CBP501フェーズ1b試験膵臓癌速報データの公表
                  およびMSS直腸大腸癌新規組入れ打ち切りのおしらせ


 当社がかねてから米国で実施しているCBP501フェーズ1b臨床試験拡大相のうち膵臓癌について、拡大相評価可
能症例10例目までのデータから有効性の速報値(未監査)がまとまりました。
 併せて、この速報値を含む諸状況を総合的に判断し、CBP501フェーズ1b試験拡大相のうちMSS直腸大腸癌*1
について10月以降の新規症例組入れを打ち切る旨を本日決定しましたので、お知らせします。


【膵臓癌有効性速報データについて】


 CBP501フェーズ1b臨床試験、膵臓癌評価可能14例 (用量漸増相4例、拡大相10例)


 部分奏効(PR)*2 ・・・ 1例 7%
 4ヶ月を超える病勢安定(SD)・・・ 6例 43%
 無増悪生存期間(PFS)の中央値 2.5ヶ月
 全生存期間(OS)の中央値 5.0ヶ月


 ※ 白血球数<10,000/uL*3 の患者(11症例)では、PFSの中央値3.0ヶ月、OSの中央値5.9ヶ月


 2020年6月1日公表の中間解析結果同様に、用量漸増相で観察された部分奏効(PR)は拡大相試験においては得
ることができませんでした。
 しかしながら、症例の大半(12/14、86%)が3次治療以降という多数の既治療歴*4 のある症例において長期間の
病勢安定(SD)が高率で観察され、将来の承認申請時に最も重要視される全生存期間(OS)も同種の臨床試験を上回
っていることから、きわめて有望で次相臨床試験に進む礎となる力強い結果であると当社は考えています。



【MSS直腸大腸癌新規組入れ打ち切りについて】


 CBP501フェーズ1b試験拡大相のうちMSS直腸大腸癌については、これまでの評価可能症例は4例です。
 現在も組入れ努力が続けられており、本日時点で、組入れ前・組入れ途上の段階が数例あります。
 試験開始当初は膵臓癌同様に拡大相で10症例のデータ収集を予定していましたが、現時点で組入れ途上の症例
によって拡大相で6名程度まで組入れできる可能性があり、用量漸増相と合わせて9例*5 程度のデータが収集できる
と考えられることから、本臨床試験の目的は概ね達成可能と考えています。
 また、上記のとおり良好な膵臓癌速報データを獲得できたことから、当社の全社的な臨床開発戦略、開発パイプライ
ン・開発する適応症の優先順位付け、足もとの患者登録動向、新型コロナウイルス感染症の拡大状況、治験薬の有効
期限等を総合的に考慮して、MSS直腸大腸癌については10月以降の新たな患者組入れを打ち切る旨を本日決定し
ました。
 これにより、2018年12月に開始したCBP501・シスプラチン・ニボルマブ(オプジーボ)の3剤併用による臨床試験
(フェーズ1b拡大相)は、膵臓癌に関しては2020年6月に患者組入れ完了しているのに続き、MSS直腸大腸癌につい
ても2020年10月に新規組入れを終了して、今後は現在の登録患者をフォローした後に臨床試験終了となります。


 今後当社はCBP501について、MSS直腸大腸癌よりも膵臓癌を適応癌腫とする開発を優先します。
 また、次相臨床試験(フェーズ2試験もしくはフェーズ2・3ピボタル試験)の内容については、提携パートナー候補先
や関連機関等とも協議し、大まかな開発スケジュールとともに、2021年2月〜5月を目処に公表する予定です。


【代表取締役コメント】


 今回公表した膵臓癌速報データおよびMSS直腸大腸癌新規組入れ打ち切り決定について、当社代表取締役社長
河邊拓己は次のようにコメントしています。


 「今回の速報値のとおり、CBP501フェーズ1b試験は3次治療以降の膵臓癌で良好な結果を得ることができました。
 膵臓癌は、多くの患者さんが新薬の登場を望まれている疾患領域であるため、次相のフェーズ2試験もしくはフェー
ズ2・3試験においては、想定症例集積数は多くなるものの、今までのスピード感よりも速いものになると想定していま
す。
 MSS直腸大腸癌に関しては、当初の目標組入れ数には達しないものの本臨床試験の目的は概ね達成できると判
断し、外部からの注目度が高く医療現場ニーズも高い膵臓癌を適応症とする開発の優先順位を上げ、経営資源の集
中を図ることとしました。
 また、現在の当社の最優先課題である提携パートナー獲得活動においても、適応癌腫が一旦絞られることによって
論点の分散が抑えられ、今回の施策は悪影響よりも好影響が大きいと判断しています。
 当社は、引き続き臨床開発を進展させることにより、製薬バリューチェーンに高い付加価値をもたらし、中期的な企
業価値の向上に努めます」



 本件による2021年6月期業績への影響として開発費の減少が見込まれますが、その金額は比較的軽微な範囲に
とどまるものと現時点で見込んでいます。
 他に何らかの影響が生じる場合には速やかに公表します。
                                                        以上
《注》


  *1   MSS直腸大腸癌
       MSSとはマイクロサテライト安定。直腸大腸癌の大半を占めるマイクロサテライト安定直腸大腸癌(大腸癌全体の85%
       程度 であり、ステージIVに限れば95%以上)においては、抗PD-1抗体単独の奏効率はほぼゼロとされています。


  *2   部分奏効(PR)
       標的病変の長径と短径の和(径和)が、治療前に測定した径和に比べ30%以上小さくなったものをいいます。


  *3   白血球数
       CBP501は、白血球数異常高値(異常の定義は統一されていないが概ね10,000/uL以上)を投与対象から除外するこ
       とによって効果をより強く引き出せます。この絞り込みは、日米欧ほか主要国で既に用途特許として成立しています。
       今回の試験でも、白血球数10,000未満の正常値の症例において良い傾向が見られました。
       これは用途特許の有効性を示す結果であるとともに、CBP501の作用メカニズムに関する当社想定の正しさの傍証のひ
       とつでもあります。


  *4   既治療歴
       CBP501のフェーズ1b試験は、既治療歴のある(初回治療で効果がなかった/効果がなくなった)患者さんを対象として
       います。さらに、実際に組入れられているのは3回目以降治療の患者さんが大部分です。
       癌は初回治療に最も良く反応(奏効)し、2回目・3回目と進むにしたがってさまざまな抵抗性を獲得して反応しにくくなるこ
       とがわかっています。
       具体的数字で示すと、2015年から2017年の間に北京のある病院で免疫チェックポイント阻害抗体単独あるいは他の
       治療法との組み合わせの治療を受けた膵臓癌患者の全生存期間について、
       「初回治療の場合 7.0ヶ月」「2回目治療の場合 5.1ヶ月」「3回目以降治療の場合 2.8ヶ月」(いずれも中央値)
       と報告している論文があります。
       これほどの違いがあることから、臨床試験データの評価においては、対象患者群の既治療歴を十分に考慮する必要が
       あるとされています。


  *5   組入れ症例数と評価可能症例数
       組入れ後に被験者の都合などで臨床試験を離脱されるケースは少なくありません。
       また、膵臓癌と同様にMSS直腸大腸癌でも2回めのCT測定ができず「評価不能」となるケースもあります。
       したがって、必ずしも最終的な評価可能症例数が用量漸増相と合わせて9例に到達するわけではありません。