4575 M-CANBAS 2020-08-04 15:35:00
免疫応答に着目したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)新規治療薬の開発に向けた助成金採択のおしらせ [pdf]

                                                        2020年8月4日
各 位
                     会 社 名            株 式 会 社   キ   ャ    ン   バ    ス
                     代表者名              代表取締役社長          河邊   拓己
                                         (コード番号:4575 東証マザーズ)
                     問 合 せ先    取締役最高財務責任者兼管理部長 加登住 眞
                                                    IR@canbas.co.jp


      免疫応答に着目したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)新規治療薬の開発に向けた
                       助成金採択のおしらせ


 このたび、当社の共同研究先である静岡県公立大学法人静岡県立大学(以下「静岡県立大学」)創薬探索セン
ターと当社とで構成するコンソーシアムによるCOVID-19新規治療薬の開発に関して、公益財団法人静岡県産
業振興財団の助成を受けることが決定いたしましたので、お知らせします。


【助成事業の内容】
  「令和2年度医療機器産業基盤強化推進事業助成金」
  助成対象事業: 免疫応答に着目したCOVID-19治療薬の開発
  助成対象者: 静岡県立大学・キャンバスコンソーシアム2020
  助成額: 当コンソーシアムに対し概算6,000千円 (令和2年度分)
  研究開発実施予定期間: 2020年8月から2022年末まで(予定)


 静岡県立大学と当社が従来から共同で探索研究中のIDO/TDO二重阻害剤(PCT/JP2018/038648)は、ト
リプトファンが分解されキヌレニン※1 が産生される反応の速度を決定づける酵素であるIDOとTDOを特異的に
阻害する、免疫系抗癌剤の候補化合物群です。


 一方、COVID-19患者では血清中のキヌレニンレベルが有意に亢進しており、このことが病状の悪化に関与
していることが示唆されています。
 このことから、IDO/TDO二重阻害剤は、新型コロナウイルス感染の重症化と並行して体内に蓄積されるキヌ
レニンの産生を抑制することで、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の感染進行に必要なACE2-B0AT1複合
体の形成を抑制し感染の進行を抑え、サイトカインストーム※2 の発症に重要な役割を果たしているマクロファー
ジの機能を正常化し、ウィルス排除に重要なTh1細胞の機能を改善する作用が想定されます。
 さらに、IDO/TDO二重阻害剤は、炎症性サイトカインであるIL-6の産生を抑える作用が動物実験レベルで確
認されており、サイトカインストームによる肺炎の重症化を防止する作用を発揮することも期待されます。


 今回の共同事業では、静岡県立大学で新規化合物のデザインと合成ならびにin vitro評価を、キャンバスで
はサイトカインストームマウスモデル等での薬効評価と非臨床POC獲得ならびに特許の出願・管理を、それぞれ
担当します。まず初年度(令和2年度。2021年3月まで)に、これまでに得られているIDO/TDO二重阻害剤に関
する知見を活かし、ツール化合物として適した化合物を選定しラボスケールでの原末製造とマウスモデルでの評
価を実施します。
 今回の助成額概算6,000千円は、2022年末まで予定している研究開発実施予定期間のうち令和2年度
(2021年3月まで)の研究開発に対応するものであり、次年度以降の助成については未定です。


 なお、本件による2021年6月期業績への影響は現時点で見込んでおりませんが、何らかの影響が生じる場
合には速やかに公表します。
                                                                 以上
《注》


※1    キヌレニン


      生体内において、必須アミノ酸であるトリプトファンからナイアシンを生合成するキヌレニン経路において産
      生される主要な代謝物のひとつ。


      ①癌に対する免疫反応に関与していることや、癌への免疫反応阻害作用が報告されています。
      キヌレニンは、



      ②COVID-19患者およびインフルエンザ重症患者などでは、血清中のキヌレニンレベルが有意に亢進して
      また、


      おり、このことが病状の悪化に関与していることが示唆されています。


      キャンバスは従来、上記①の観点から、静岡県立大学と共同で、IDO/TDO二重阻害剤を抗癌剤候補化合
      物として探索研究を続けており、さまざまな知見が蓄積されています。
      そして今回、②の観点などに基づき、この知見をCOVID-19新規治療薬研究開発に活かすことができるこ
      とから、静岡県立大学と共同での研究の開始に至ったものです。



※2    サイトカインストーム


      血中サイトカイン(炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン(IL)-6、TNF-αなどや、ウィルス等の
      増殖を抑制するインターフェロン類など)の異常上昇が起こり、時に死に至ることもある免疫反応。
      感染症や薬剤投与などが原因で起きることが知られており、COVID-19患者やインフルエンザ重症患者な
      どでのサイトカインストーム発生例が報告されています。


      サイトカインストームは、今回のCOVID-19患者での発生例によって広く知られるようになりましたが、癌領
      域では従来から、がん悪液質(がん特有の体重減少、代謝異常も伴って浮腫や胸水・腹水なども発生)の原
      因になっているともされ、研究の対象となっていました。
      また近年では、免疫系抗癌剤・CAR-T細胞治療でのサイトカインストーム発現も多いことがわかっており、そ
      の対応が必要になることから、癌治療領域での注目度が上がっています。
      そのため、この研究によって得られる知見や成果がキャンバスの抗癌剤研究開発にフィードバックされるこ
      とも期待されます。