4572 J-カルナバイオ 2019-02-08 15:30:00
中期経営計画(2019年12月期~2021年12月期) [pdf]

                              中 期 経 営 計 画
                        (2019年12月期~2021年12月期)
                                                                      2019年2月8日

 上場会社名 カルナバイオサイエンス株式会社                          (コード:4572、JASDAQグロース)
  (URL https://www.carnabio.com/ )
 問 合 せ 先 代表取締役社長 吉野 公一郎
         取締役経営管理本部長 山本 詠美                                  TEL:(078)302‐7075


1. 中期経営計画の基本方針(2019年12月期~2021年12月期)
(1)基本方針
   1)複数の創薬パイプラインの導出(グローバルライセンスアウト)
   2)当社創薬パイプラインの導出価値の最大化を目指した自社臨床試験の開始
   3)創薬支援事業における安定的な収益の確保

(2)セグメント別基本方針
   1)創薬事業
    ① 当社創薬パイプラインの大手製薬企業等への新たな導出
    ② 自社で臨床試験を実施するための研究開発体制の構築
    ③ 当社研究開発テーマの早期ステージアップ
    ④ 次世代の新規創薬研究パイプラインの構築
    ⑤ 革新的新薬を継続的に生み出す新規コア技術の開発

    2)創薬支援事業
     ① 年間売上高10億円を目指した販売体制の再構築
     ② 国内、北米地域を中心とした自社製品、サービスの売上拡大
     ③ 新規タンパク質製品の発売に基づく売上拡大


2. 前連結会計年度(2018年12月期)の総括
    前連結会計年度における世界経済は、米中の貿易摩擦の影響や欧州における経済の減速感などから
   不透明な状況で推移しました。わが国における経済は、雇用環境の改善により堅調に推移していたも
   のの、年度末における株式市場の低迷や消費増税への懸念などから不透明な状況が現れてまいりまし
   た。
    当 社 グ ル ー プ が 属 す る 製 薬 業 界 に お き ま し て は 、 分 子 標 的 薬 の 米 国 FDA ( Food and Drug
   Administration)による新薬の承認数は2017年度において46件と前年度比で2倍以上となり、そのう
   ち低分子の分子標的薬の承認数は60%を超える等、当社が研究開発を行っている低分子のキナーゼ阻
   害薬を含めた分子標的薬の研究開発は依然活況を呈しています。さらに、FDAにより承認された上記新
   薬のうちBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けたものが3分の1を超えており、非常
   に有効性の高い新薬の承認が相次いでおります。特に、がん領域において免疫チェックポイント阻害
   薬の相次ぐ承認、がん種の拡大、それらに加えて免疫チェックポイント阻害薬とキナーゼ阻害薬との
   併用療法による治験が活発に行われており、がんを標的とした分子標的薬の研究開発は新たな段階に
   突入しております。
    このような状況下、当社グループは、当社のキナーゼ阻害薬の創薬に係る創薬基盤技術を駆使して
   開発したがんを標的とするCDC7阻害剤AS-141 (Sierra Oncology社(以下「Sierra社」という)の開発

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の判断
において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 コード:SRA141)の導出に成功しております。導出先であるSierra社は、SRA141の米国におけるIND申
 請(新薬臨床試験開始届)に関係する一連のプロセスを成功裏に完了しており、大腸がんを対象とし
 た治験開始(フェーズ1/2)に向けた準備を進めています。当該フェーズⅠ試験においてSRA141が最初
 の患者に投与されたときに、マイルストーンとして4百万ドルが当社に支払われます。その後も、本
 プログラムの進捗に応じたマイルストーンが当社に支払われます(マイルストーン総額で最大270百
 万ドル)。また上市後は、売上高に応じた一桁の段階的ロイヤリティが当社に支払われます。
  さらに当社の2つのBTK阻害薬プログラムが前臨床試験段階にあり、欧米での治験申請に向けた研
 究開発を積極的に進めております。リウマチなどの免疫炎症疾患を標的としたBTK阻害剤AS-0871につ
 いては、早期の臨床試験開始を目指して、外部機関と連携しながらGLP基準での安全性試験等の前臨床
 試験を実施しております。さらに、イブルチニブ耐性の血液がんを治療標的とする次世代BTK阻害剤
 AS-1763については、最優先テーマとして開発を進めるため、独エボテック社のINDiGOプラットフォー
 ムを活用して前臨床試験を進めております。
  加えて、第1四半期において大日本住友製薬株式会社(以下「大日本住友製薬」という)と、アン
 メット・メディカル・ニーズの高い精神神経疾患領域の革新的な治療薬に関する共同研究ならびに開
 発および事業化に関する契約を締結し、第2四半期連結会計期間において契約一時金を売上計上して
 おります。現在、同社と緊密に連携を取りながら着実に共同研究を進めています。
  また、当社のもう一つの事業の柱である創薬支援事業においては、欧州とアジア地域において売上
 が大きく拡大しており、特に中国における創薬関連のビジネス分野の伸張は目覚しく、中国での売上
 が急拡大しております。さらに日本、米国においては既存顧客の深耕や新規顧客の開拓を戦略的に行
 っており、顧客特注案件に柔軟に対応する体制を構築し、売上の拡大に取り組んでまいりました。
  以上の結果、前連結会計年度の売上高は754百万円(前期比14.8%増)となりました。地域別の売上
 では、国内売上高は338百万円(前期比3.9%減)、海外売上高は416百万円(前期比36.4%増)となり
 ました。損益面につきましては、営業損失が1,144百万円(前期は699百万円)、経常損失は1,159百万
 円(前期は711百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,210百万円(前期は737百万円)となり
 ました。
  事業別の状況は以下の通りであります。

 ①創薬事業
  創薬事業の売上高では、第1四半期において、大日本住友製薬と精神神経疾患領域の革新的なキナ
 ーゼ阻害薬の共同研究契約を締結し、契約一時金を売上高に計上いたしました。また、ブロックバス
 ターの可能性がある2つのBTK阻害薬プログラムについて、早期の臨床試験開始に向けて積極的に先
 行投資を行い、前臨床試験を実施してまいりました。その他の創薬プログラムについても、早期のス
 テージアップを目指して、研究開発に注力してまいりました。さらに、自社臨床試験の実施に向けて
 第3四半期には研究開発本部に臨床開発部を新設し、開発体制の基盤整備に取り組んでまいりました。
  以上により創薬事業における売上高は50百万円(前期は売上計上なし)、営業損失は1,261百万円
 (前期は841百万円)となりました。

 ②創薬支援事業
  キナーゼタンパク質の販売、アッセイ開発、プロファイリング・スクリーニングサービス及びセル
 ベースアッセイサービスの提供等により、創薬支援事業の売上高は、704百万円(前期比7.2%増)、
 営業利益は117百万円(前期比17.7%減)となりました。
  売上高の内訳は、国内売上が288百万円(前期比18.1%減)、北米地域は249百万円(前期比18.5%
 増)、欧州地域は94百万円(前期比44.9%増)、その他地域が71百万円(前期比146.5%増)でありま
 す。




本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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   なお、国内の売上高減少は、主に小野薬品工業株式会社向けの売上が減少したことによるものであ
  ります。北米地域での売上増は、主にプロファイリング・スクリーニングサービス及びキナーゼタン
  パク質製品の売上の増加によるものであります。欧州での売上の大幅な増加は、キナーゼタンパク質
  製品の販売増によるものであります。その他地域での著しい売上の増加は中国における創薬ビジネス
  の成長により、キナーゼタンパク質製品の需要が高まっていることによるものであります。なお、営
  業利益の減少は、売上高が増加したものの、積極的な新製品開発のための研究開発費が増加したこと
  によるものであります。


  (百万円)     創薬支援事業 地域別売上高                              (百万円)        創薬支援事業 営業利益
   800               750                                200
                     43       703      704
   700      657
                     80        70       71
            29
   600      65                 94       94              150
                                                                          150
                                                                 142
   500               260                        その他
            210
                                                                                   119      117
   400                        249      249      欧州
                                                        100
                                                北米
   300
                                                国内
   200                                                   50
            352      366
                              288      288
   100


     0                                                    0
          2017/12期 2018/12期 2018/12期 2018/12期                  2017/12期 2018/12期 2018/12期 2018/12期
           <実績> <当初計画> <修正計画> <実績>                              <実績> <当初計画> <修正計画> <実績>

   (注)上記グラフの当初計画は2018年2月9日公表の値、修正計画は同年12月20日公表の修正値であります。




3. 事業別経営方針
   当社グループの事業別の中期経営計画策定の背景、今後の見通し及びその前提条件は以下のとおり
  であります。

 1)創薬事業
   当社は、引き続き、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていな
  い疾患を中心に、特にがん、免疫炎症疾患を重点領域とした画期的な新薬の開発を目指してまいりま
  す。創薬事業のセグメント別基本方針は1ページに記載のとおりでありますが、当社創薬パイプライ
  ンの研究開発を着実に進展させ、その成果に基づく製薬企業等への導出活動に積極的に取り組むこと
  で、当社事業価値の最大化を目指します。
   特に、2つのBTK阻害薬プログラム、すなわちリウマチ等の免疫炎症疾患を治療標的としたAS-0871
  およびイブルチニブ耐性の血液がんを治療標的とした次世代BTK阻害剤AS-1763では、早期の臨床試験
  開始に向けて前臨床試験を鋭意実施しております。また2018年7月に臨床開発部を新設し、2019年2
  月には米国で臨床試験を実施する拠点として、米国サウスサンフランシスコに臨床開発オフィスを新
  設するなど、着実に自社臨床試験開始に向けた準備を進めておりますが、今後も引き続き体制整備を
  行ってまいります。
   また、Sierra社に導出したCDC7阻害剤SRA141(AS-141)については、同社によって、米国でのIND申

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 請が完了し、臨床試験開始の準備が進められています。今後、フェーズⅠ試験において最初の患者に
 SRA141が投与された場合、当社はマイルストーン収入として4百万ドルを受領することになります。
 なお、本SRA141(AS-141)の臨床試験が開始された場合、当社において初めての臨床試験段階の医薬
 品候補化合物となり、当社の創薬事業は新たな段階に入ることになります。
  また上記に加えて、2018年3月に、大日本住友製薬と、精神神経疾患を対象としたキナーゼ阻害剤
 の創薬プログラムに関する共同研究ならびに開発および事業化に関する契約を締結しております。す
 でに獲得済みの契約一時金および研究マイルストーンとして、当社は最大8千万円を受領する契約と
 なっており、さらに大日本住友製薬が本プログラムの臨床開発・販売への移行を決定した場合、当社
 は、開発段階、販売額目標達成に応じた開発・販売マイルストーンとして総額で最大約106億円を受け
 取ることができる契約内容となっています。また、販売後においては、大日本住友製薬より販売額に
 応じた一定のロイヤリティを受け取る契約となっています。
  当社創薬事業においては、現在前臨床試験を実施している2つのBTK阻害薬プログラムを着実に進
 展させ、その後の自社臨床試験開始に向けて、鋭意準備を進めてまいります。また、その他の研究段
 階の創薬パイプラインについても、早期のステージアップを目指して研究に取り組んでまいります。

 ①創薬パイプライン
               標的                                      研究開発・事業ステージ                          パートナー/
    化合物                     対象疾患
              キナーゼ                   Discovery     Preclinical   PhaseⅠ   PhaseⅡ   PhaseⅢ   共同研究先
   SRA141
   (AS-141)   CDC7          がん                     IND申請完了                                  Sierra Oncology


   AS-0871    BTK           免疫炎症疾患

                            血液がん
   AS-1763    BTK
                            がん免疫
                            がん                                                              国立がん研究セ
   低分子化合物     Wnt-signal                                                                    ンター
                            がん免疫

   低分子化合物     キナーゼ          精神神経疾患                                                          大日本住友製薬

              TGFβ          血液がん
   低分子化合物                                                                                   広島大学
              signaling     がん免疫

   低分子化合物     キナーゼ          免疫炎症疾患


   低分子化合物     N/A           マラリア                                                            北里大学


   低分子化合物     DGK           がん免疫

                                                                                            国立がん研究セ
   低分子化合物     undisclosed   がん                                                              ンター



 ・CDC7阻害剤(SRA141(AS-141))
  2016年5月に、Sierra社と、全世界を対象としたAS-141(Sierra社の開発コード:SRA141)の開発・
 商業化に関するライセンスを供与する導出契約を締結いたしました。契約に基づいてSierra社は、契
 約一時金として既に受領した90万ドル(約1億円)、さらに開発状況、承認、上市などの進捗に応じ
 て最大270百万ドル(約300億円)の目標達成報奨金(マイルストーン)、上市後の売上高に応じた一
 桁の段階的ロイヤリティを当社に支払うことになっています。
  当社が、Sierra社にAS-141を導出した背景には、同社CEOのグローバー博士をはじめとする元YM
 BioSciences社(Gilead社が買収)の優秀なマネジメントチームに加えて、同社の開発陣の中に、タル
 セバ®やアバスチン®などの代表的な分子標的薬の開発を率いたケレンケ博士がおり、優れた開発実績
 を有していることが主な理由であります。加えて、今後自社でがん領域の臨床試験を実施していくに
 あたり、典型的な米国型バイオベンチャーであるSierra社と協働することによってそのノウハウを蓄
 積できることから、当社創薬パイプラインの価値向上に大いに役立つと考えております。

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

                                                 -4-
  現在、SRA141
          (AS-141) 同社において、
                  は、      IND申請が成功裏に完了し、臨床試験の開始に向けて着々
 と準備が進められており、当社はSRA141のフェーズⅠ開始に伴うマイルストーンが2019年度に獲得で
 きるものと考えております。


 ・BTK阻害剤(AS-0871)
  BTKを標的キナーゼとした阻害薬は、すでに血液がんの領域でブロックバスターとなっているイブ
 ルチニブが上市されており、さらに現在複数の製薬企業等において開発が進められていることから高
 い注目を集めておりますが、当社が創製したAS-0871は、自社化合物ライブラリーから独自のアッセイ
 系を用いて生み出されたBTK阻害剤であり、その高いキナーゼ選択性から、リウマチ等の免疫炎症疾患
 の治療薬として研究開発を進めております。臨床試験に進めるにあたり課題であったフォーミュレー
 ションの問題も解決済であり、各種GLP試験を開始し、GMP基準に基づく化合物の合成も進めておりま
 す。このAS-0871は、すでに抗がん剤として上市されている共有結合型非可逆的BTK阻害薬のイブルチ
 ニブとは異なり、BTKとは共有結合しない非共有結合型で可逆的な阻害様式を示す化合物であり、より
 安全性が重要視されるリウマチなどの免疫炎症疾患を標的として、欧州での2019年のCTA(臨床試験許
 認可)申請に向けて前臨床試験が進められています。


 ・BTK阻害剤(AS-1763)
  BTK阻害剤AS-1763(旧化合物番号:CB-1763)は、上記AS-0871のバックアップ化合物として研究を
 進めてまいりましたが、血液がんにも高い効果を示すことから、まずは抗がん剤として開発する方針
 としております。B細胞性リンパ腫の治療薬として、イブルチニブは高い治療効果を示していますが、
 一部の患者においてBTK遺伝子に変異が生じてイブルチニブへの耐性が生じることが報告されており、
 イブルチニブに耐性が生じた変異型BTKにも効果を示す次世代型BTK阻害薬が求められています。当社
 が創製したAS-1763は野生型BTKだけでなく、変異型BTKにも高い阻害効果を示すことから、イブルチニ
 ブ耐性患者を対象とした次世代型BTK阻害剤として開発を進めております。このAS-1763は、AS-0871と
 同様にキナーゼ選択性に優れており、また非共有結合型可逆的阻害剤であることから、免疫炎症疾患
 (リウマチ等)の治療薬としても研究開発を進めてまいります。現在、独エボテック社のINDiGOプロ
 グラムを活用して、2019年の米国におけるIND申請に向けて前臨床試験を進めてまいります。


 ・その他のプログラム
  広島大学との共同研究であるTGFβシグナル阻害薬については、白血病幹細胞を標的とした白血病
 の完治療法や、新しいがん免疫療法の確立を目的として、早期のステージアップを目指して共同研究
 を継続してまいります。
  大日本住友製薬と精神神経疾患を標的とした共同研究は、キナーゼを標的とした画期的な新薬の開
 発を目指して引き続き研究に取り組んでまいります。
  北里大学北里生命科学研究所との共同研究である新規マラリア治療薬の研究も、日本初の抗マラリ
 ア薬を目指して共同研究を継続していきます。
  新たながん免疫領域の医薬品開発を目指してDGK阻害剤の研究を進めており、当社が開発したDGKア
 ッセイパネルを駆使することで他社との差別化を図り、画期的な創薬研究成果につなげてまいります。
  上記以外の創薬プログラムにつきましても、画期的な新薬創製に向けて早期ステージアップを目指
 してまいります。


 ②創薬研究の基本戦略
  当社の創薬研究は、アンメット・メディカル・ニーズが高いがん及び免疫炎症疾患を重点領域とし
 ており、有望テーマへ研究リソースを重点的に投入し、創薬の成功確率の向上と研究期間の短縮に努
 めながら、当社が培ってきたキナーゼに関する創薬基盤技術などを利用して、新規性の高い画期的な
 医薬品候補化合物の創出を目指しております。

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

                           -5-
  当社の創薬事業は、製薬企業出身者が中心となって、当社のコア技術であるキナーゼ創薬基盤技術
 を駆使して、創薬標的に対するハイスループットスクリーニングを行い、独自の新たなパイプライン
 を生み出すことができることが大きな特長となっており、近時実施している本社創薬ラボの拡張・拡
 充により研究環境のさらなる整備を行ったことから、今後の画期的な研究成果が期待されます。また、
 大学等との共同研究も積極的に推進しており、新しいコア技術の開発や新規創薬テーマの発掘のため
 の研究を行なってまいります。

 ③導出活動
  当社は導出の基本方針を、臨床試験の初期段階(フェーズⅡa)までの何れかの段階で製薬企業等
 に導出することとしております。導出契約においては、研究開発のステージが高くなるほど高収益が
 見込まれますが、その反面、導出に至るまでに必要な研究開発費は多額になります。それとは反対に、
 早期に導出することを想定した場合、試験データが高次レベルではないため、その後の開発リスクが
 高まることにより、導出先製薬企業等から獲得する収益はその分低くなる可能性があります。
  当社が創出した医薬品候補化合物が臨床試験を経て上市する成功確率を高めるためには、臨床試験
 段階のパイプラインを複数保有することが重要です。これまでの複数の製薬企業(ヤンセン・バイオ
 テック社及びSierra社)への導出実績や国際的学術科学雑誌への研究成果の掲載、さらには当社の創
 薬パイプラインの標的分子への注目度の高まり等を受けて、国際的なイベントにおける製薬企業等と
 の面談の機会が多くなっております。
  当社は、従前は早期に大手製薬企業等へ導出することを基本方針としておりましたが、現在は当社
 で臨床試験を実施し創薬パイプラインの価値を最大限に高めたうえで導出することを中期的な経営
 の基本方針として掲げています。それと並行して、医薬品開発の競合状況や導出先製薬企業とのタイ
 ミングを見計らいながら、当社にとって最大価値を生み出せるよう戦略的かつ臨機応変に導出交渉に
 取り組んでまいります。

 ④臨床開発体制の確立
  当社創薬研究の研究開発体制は、継続的に新薬候補化合物を創出できる研究技術レベルに達しまし
 たが、一方で臨床候補化合物の選択後にレギュラトリーサイエンスに基づいて前臨床試験および臨床
 試験を推進する開発体制はいまだ不十分であると認識しております。2018年7月に、新たに臨床開発
 部を設立し、2019年2月には米国サウスサンフランシスコに米国で臨床試験を実施するための臨床開
 発オフィスを新設しました。引き続き、自社開発品であるAS-0871およびAS-1763の臨床試験が速やか
 に開始できるよう、臨床開発体制の構築を進めてまいります。
  上記開発体制を構築して更なる事業の発展を目指していくうえで、開発を推進、管理する人員の確
 保、臨床試験を推進するための資金の獲得が必要となります。当社は、当社創薬支援事業および創薬
 事業における営業キャッシュ・フロー収入を投じる予定でありますが、必要に応じて資本市場等から
 資金を調達し、当社事業の拡充に取り組んでまいります。
  以上の取り組みをとおして、複数の臨床試験段階のパイプラインを有する創薬ベンチャーとなり、
 当社の企業価値を高めてまいります。

 ⑤創薬事業の業績予想の前提条件
  当社は、上記の取り組みを通じて、2019年12月期における創薬事業の売上高予想を440百万円、営業
 損失を1,802百万円といたします。
  売上高予想については、当社がSierra社に導出したCDC7キナーゼを標的とするがん疾患領域の医薬
 品候補化合物AS-141
            (SRA141)の臨床試験(フェーズⅠ)が開始することに伴うマイルストーンを2019
 年12月期中に受領することを前提としております。また、製薬企業等との契約交渉を伴う導出一時金
 等の収益は、不確定要素が含まれていることから、売上予想には含めておりません。
  創薬事業の研究開発費については、当社企業価値の飛躍的向上を目指し、当社創薬パイプラインの
 前臨床試験、自社臨床試験へ積極的に先行投資を行うことから、前期実績比878百万円増(81.0%増)
 の1,963百万円を計画しております。

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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2)創薬支援事業
  当社グループの創薬支援事業は、当社の創薬基盤技術に基づくキナーゼ関連製品及びサービスの高
 い品質を強みとし、その創薬基盤技術を基にして顧客の要望に的確に応える学術サポートを通じて、
 世界的なシェアを拡大し、安定的な収益を獲得することを基本方針としています。この獲得した収益
 を創薬事業に投じることで研究開発のスピードアップに寄与することが、創薬支援事業の重要なミッ
 ションです。
  創薬支援事業の基本方針は1ページに記載のとおりでありますが、引き続き創薬支援事業において
 年間10億円の売上を継続して計上可能な事業基盤の構築を目指してまいります。
  地域別には、市場規模が大きい北米での売上増およびシェア拡大、また売上が低迷している国内の
 てこ入れが重要と考えており、急成長しているその他地域の中国での安定的売上確保とともに注力し
 てまいります。
  製品別では、2018年度に、当社のオンリーワン製品である機能性キナータンパク質製品であるビオ
 チン化タンパク質の製品数を増加するとともに、プロメガ社のNanoBRETTMテクノロジーを用いて細胞
 内でのキナーゼ阻害剤の作用を評価する受託試験サービスを開始いたしました。これら新製品、サー
 ビスを顧客に積極的に提案するとともに、顧客ニーズに合致した新製品、サービスをさらに開発し提
 供することで売上の拡大に取り組んでまいります。
  さらに、当社の顧客はがんの研究グループの比重が高いとの認識から、免疫炎症、中枢神経等、他
 の疾患領域の研究者へも引き続き拡販を図り、売上の拡大を目指します。
  地域別の販売戦略の基本方針は、以下の通りです。

 a.国内地域
    国内での当社のシェアは高いとの認識から、さらなる売上拡大には既存顧客への訪問頻度を増や
  し当社の創薬基盤技術を駆使したソリューションとして、当社製品・サービスの提案を行うことが
  重要と認識しており、最新の研究動向を分析し、顧客へ的確なアプローチを行うことで、潜在ニー
  ズを掘り起こし、売上の拡大、収益の向上を図ります。

 b.北米地域
    在米子会社であるCarnaBio USA, Inc.の経営体制ならびに販売体制を強化し、北米で次々と設立
  され創薬研究を開始する創薬バイオベンチャーを、当社製品・サービスの継続的な顧客とする関係
  構築を図るとともに、大手製薬企業個々のニーズに応じたきめ細やかな対応をさらに推し進め、売
  上拡大を目指します。また、北米地域においてセルベースアッセイサービスの需要が高まっている
  ことから、自社サービスとして提供を開始したNanoBRET®について顧客への訴求を図ることにより、
  売上増に加え利益率向上にも取り組んでまいります。

 c.欧州地域
    当社の販売代理人であるデンマークのキナーゼロジスティックス社を中心に、既存顧客への販促
  活動を引き続き行い、売上拡大を図ります。また、新たな販売代理店を設置するなど、販売体制の
  強化も行ってまいります。

 d.その他地域
    中国での創薬ビジネスの高まりを受けて売上が急拡大していることから、販売代理店である上海
  ユニバイオ社との関係強化を通じて、さらなる売上拡大を目指してまいります。


  当社は、上記の取り組みを通じて、2019年12月期における創薬支援事業の売上高予想を前期実績比
 13.5%増の800百万円、営業利益を22.9%増の144百万円といたします。なお、創薬支援事業における
 研究開発費は、新規製品・サービスの開発及び既存製品・サービスの品質向上を目的として、48百万

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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  円を計画しております。



  (百万円)    創薬支援事業 地域別売上計画                    (百万円)   創薬支援事業 営業利益計画
                              800            150
   800
                               80                    142               144
                     704
   700      657
                      71      100
            29
   600                                                        117
            65        94               その他   100
   500
            210               300      欧州
   400               249
                                       北米

   300                                 国内     50

   200
            352               320
                     288
   100

     0                                         0
          2017/12期 2018/12期 2019/12期               2017/12期 2018/12期 2019/12期
            <実績>     <実績>     <計画>                  <実績>     <実績>     <計画>



4. 財務戦略及び設備投資計画

 1)財務戦略
   当社グループの財務戦略は、長期にわたる研究開発を行うための強固な財務基盤を保つために、手
  元資金については高い流動性と厚めの資金量を確保及び維持することを基本方針としております。先
  行投資が必要な創薬事業の研究開発資金に、創薬支援事業で獲得したキャッシュ・フロー及び創薬事
  業で獲得した契約一時金、マイルストーン収入およびロイヤリティ収入を充当し、当社創薬パイプラ
  インのステージアップを図り、当社事業価値を高めていくという経営方針に基づいて財務戦略を策定
  しております。
   現在、行使価額修正条項付き第16回新株予約権及び行使価額将来設定型第17回新株予約権を用いた
  資金調達を実施しておりますが、2019年1月末日までに第16回新株予約権により累計で975百万円の
  資金を調達いたしました。引き続きこれら新株予約権の行使進展による資金調達を行ってまいります
  が、当社は2019年12月期に自社臨床試験を開始するべく準備を進めており、そのための短期的、中期
  的な資金確保が重要と認識しております。当社は、今後の創薬事業および創薬支援事業からの収益確
  保に取り組むとともに、新たな資金調達の検討を進め、必要な資金確保に努めてまいります。
   また、銀行等からの借入についても、財務状況や借入金の返済状況等を総合的に勘案し、適宜実施
  することといたします。


 2)設備投資計画
   当社創薬事業における研究開発機能の強化を目的とした薬理用研究施設の拡張ならびに本社施設
  のIT設備や空調設備の更新・修繕等により、総額43百万円の設備投資を計画しております。




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判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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5. 2019年12月期の業績予想
  当社グループの2019年12月期の連結業績予想は以下の通りであり、その前提条件等は3.事業別経営
 方針及び4.財務戦略及び設備投資計画に記載のとおりであります。

                                                                            (%表示は対前期増減率)
                           売上高                    営業利益             経常利益               当期純利益
                       百万円               %    百万円          %
    創薬支援事業                 800      13.5          144    22.9
    創 薬 事 業                440     780.0     △1,802        ―

    全 社(連結)            1,240        64.3     △1,658        ―    △1,671       ―   △1,693         ―

  なお、研究開発費は、3.事業別経営方針に記載の方針に基づいて、全社で2,011百万円(対前期比
 76.3%増)を計画しております。
  また、2020年以降の業績目標の数値は、当社ビジネスモデルの特性上現時点で見積もることは難しい
 ことから、記載しておりません。


   (百万円)      全社 連結売上計画                                   (百万円)      全社 連結営業利益計画
   1400
                                 1,240                      -100
   1200
                                                            -300
                                                                     -699
   1000                           440                       -500
                                                                             -1,144

    800              754                                    -700
            657       50                     創薬                                        -1,658
                                                            -900
    600
                                             創薬支援         -1,100
    400                           800
            657      704                                  -1,300

    200
                                                          -1,500

      0                                                   -1,700
          2017/12期 2018/12期 2019/12期                               2017/12期 2018/12期 2019/12期
           <実績>     <実績>     <計画>                                    <実績>     <実績>     <計画>


                                                                                                以   上


本開示資料は、投資者に対する情報提供を目的として将来の事業計画等を記載したものであって、投資勧誘を目的としたものではありま
せん。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は投資者ご自身の判断において行われるようお願いいたします。
また、当社は、事業計画に関する業績目標その他の事項の実現・達成等に関しその蓋然性を如何なる意味においても保証するものではな
く、その実現・達成等に関して一切責任を負うものではありません。
本開示資料に記載されている将来に係わる一切の記述内容(事業計画に関する業績目標も含みますがそれに限られません。)は、現時点
で入手可能な情報から得られた当社の判断に基づくものであり、将来の経済環境の変化等を含む事業計画の前提条件に変動が生じた場合
その他様々な要因の変化により、実際の事業の状態・業績等は影響を受けることが予想され、本開示資料の記載内容と大きく異なる可能
性があります。




本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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