4572 J-カルナバイオ 2021-07-12 10:00:00
BTK阻害剤AS-0871 第I相単回投与用量漸増試験結果に関するお知らせ [pdf]

                                                          2021年7月12日
 各    位
                                     会 社 名   カルナバイオサイエンス株式会社
                                     代表者名    代表取締役社長     吉野 公一郎
                                                   (コード番号:4572)
                                     問合せ先    取締役経営管理本部長 山本 詠美
                                                  (TEL: 078-302-7075)


       BTK阻害剤AS-0871 第I相単回投与用量漸増試験結果に関するお知らせ

 当社が免疫・炎症疾患を対象として開発を進めているBTK阻害剤AS-0871に関し、健康成人を対象と
した第I相臨床試験の単回経口投与用量漸増試験において被験者への全ての投与が完了しておりまし
たが、7月9日に、当該臨床試験の治験報告書を受領いたしましたので、その結果について概要をお知
らせいたします。
 AS-0871は当社が創製したブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's tyrosine kinase, BTK)を標的と
する非共有結合型BTK阻害剤であり、その高いキナーゼ選択性から、免疫・炎症疾患を対象として開発
を進めています。
 AS-0871の第I相臨床試験は単回経口投与用量漸増試験としてオランダで実施され、延べ53名の健康
成人男女によるプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験において、初回投与量 5 mgから最大用量 900
mgまでの安全性および忍容性が確認されました。全ての用量において、重篤な有害事象はなく、報告さ
れた有害事象のすべては軽度で、一過性のものでした。また、血中薬物濃度(CmaxおよびAUC)は用量
依存的に増加し、100 mg以上の用量において血中濃度半減期は約7時間から9時間と比較的良好な消
失プロファイルを示しました。副次的に評価した薬力学の試験では、AS-0871の投与量依存的に好塩基
球およびB細胞の活性化が抑制され、100 mg以上の用量で、強い阻害活性が持続的に観察されました。
好塩基球は、アレルギー疾患の発症に重要なヒスタミンやロイコトリエンのような化学伝達物質の放
出に関与しています。またB細胞は、リウマチや全身性エリトマトーデスのような自己免疫疾患におい
て、異常なBCRシグナルによる自己抗体の産生に関わっていると考えられています。今回の臨床試験の
結果から、AS-0871は、経口投与において、B細胞および好塩基球の作用を抑制するのに十分な血中薬物
濃度を示したことから、免疫・炎症疾患の治療に効果が期待できることが示されました。
 これらの結果から当社では、2021年下期に予定されているAS-0871の新製剤を用いた第I相臨床試験
の反復経口投与用量漸増試験の準備を進めてまいります。
 なお、本件が2021年12月期の連結業績予想に与える影響はありません。




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<結果概要>

   安全性および忍容性:5 mgから900 mgまでにおいて忍容性に問題はなく、報告された有害事象は
    すべて軽度

                    :Cmax 980 ~ 5746 ng/mL, AUClast 7086 ~ 64105 ng・h/mL, 半減期
    薬物動態(100 ~ 900 mg)
    7.3 ~ 9.0 h

   薬力学的作用(100 ~ 900 mg)
                       :好塩基球およびB細胞活性化抑制率を下図に示す




                                                                          以上


BTKについて
ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton's tyrosine kinase, BTK)はTecチロシンキナーゼファミリーに
属するキナーゼで、主にB細胞や骨髄球系細胞の単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、肥満細胞
などに発現しています。B細胞においては、B細胞抗原受容体(BCR)シグナル伝達で重要な役割を担っ
ており、リウマチや全身性エリトマトーデスのような自己免疫疾患において、異常なBCRシグナルによ
る自己抗体の産生に関わっていると考えられています。さらにBTKは骨髄球系細胞のFcγ受容体のシグ
ナル伝達も調節しており、リウマチ症状を悪化させるIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生
にも関わっています。BTKはアレルギー疾患においても、好塩基球やマスト細胞に発現するFcɛ受容体

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を制御し、疾患の発症に重要なヒスタミンやロイコトリエンのような化学伝達物質の放出にも関与し
ています。これらのことから、BTKは自己免疫疾患やアレルギー疾患の治療標的分子として注目されて
います。
AS-0871について
AS-0871は当社が創製した新規なBTK阻害剤で、非共有結合型の経口投与可能な低分子化合物です。人
の血液を用いた実験で、AS-0871はB細胞や好塩基球の活性化を強力に阻害し、TNF-α、IL-17、MCP-1、
IL-4やIL-6などの炎症性サイトカインの産生を抑制することが示されています。AS-0871はリウマチモ
デルであるコラーゲン誘導関節炎モデルや、アレルギー性皮膚炎モデルであるIgE依存性皮膚炎モデル
において、優れた治療効果を示しています。AS-0871はキナーゼ選択性が極めて高いことから、安全性
が重視される免疫・炎症疾患を対象に研究開発を進めています。




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