4572 J-カルナバイオ 2021-02-12 15:30:00
中期経営計画(2021年12月期~2023年12月期) [pdf]

                         中 期 経 営 計 画
                    (2021年12月期~2023年12月期)
                                                    2021年2月12日

 上場会社名 カルナバイオサイエンス株式会社                 (コード:4572、JASDAQグロース)
  (URL https://www.carnabio.com/ )
 問 合 せ 先 代表取締役社長 吉野 公一郎
         取締役経営管理本部長 山本 詠美                   TEL:(078)302‐7075


1. 中期経営計画の基本方針(2021年12月期~2023年12月期)
(1)基本方針
   1)複数の創薬パイプラインの導出(グローバルライセンスアウト)
   2)当社創薬パイプラインの導出価値の最大化を目指した自社臨床試験の実施
   3)創薬支援事業における安定的な収益の確保

(2)セグメント別基本方針
   1)創薬事業
    ① 当社創薬パイプラインの大手製薬企業等への新たな導出
    ② 複数の自社臨床試験を効率的に実施する開発体制の構築
    ③ 当社研究開発テーマの早期ステージアップ
    ④ 次世代の新規創薬研究パイプラインの構築

    2)創薬支援事業
     ① 北米・アジア地域を中心とした自社開発製品・サービスの売上拡大
     ② 新規製品・サービスの拡充による売上拡大


2. 前連結会計年度(2020年12月期)の総括
   当社は、創薬事業においては、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確
 立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目
 指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては、新たなキナーゼ阻害薬創製のための
 製品・サービスを製薬企業等へ提供するため、営業活動に取り組んでおります。
   当社の2つのBTK阻害剤ポートフォリオのうち、炎症性免疫疾患を対象として開発を進めている
 BTK阻害剤AS-0871については、2020年8月にオランダにおいてフェーズ1試験における被験者への
 投与を開始いたしました。健常人を対象としたフェーズ1試験の単回投与用量漸増試験(SAD)パー
 トにおいて、計画していた投与がすべて完了しており、2021年第1四半期に当該試験に関する結果
 が得られる予定です。
   イブルチニブを代表とする第1世代の共有結合型BTK阻害薬耐性の血液がんを治療標的とした次
 世代BTK阻害剤AS-1763については、臨床試験開始に必要なすべての前臨床試験が終了し、CTA申請
 (欧州における臨床試験許認可申請)       に必要な書類が2020年末に完成しました。2021年1月初旬に、
 オランダ当局に申請書類を提出しておりますので、治験準備を進め、2021年上期中に当該試験を開
 始する予定です。AS-1763については、2020年3月に、中華圏(中華人民共和国および台湾)におけ
 る開発・商業化の権利を中国バイオノバ・ファーマシューティカルズ(以下「バイオノバ社」           )に供
 与する契約を締結し、契約一時金を第1四半期に受領しております。中国においてはバイオノバ社
 が臨床試験を実施することになり、当社はバイオノバ社が実施したAS-1763に関するより多くの臨

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の判断
において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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床試験データを収集・利用することで、AS-1763の治験を加速できると考えております。当社は、中
華圏における今後のAS-1763の開発進捗に伴い、バイオノバ社から最大で約205百万ドル(約215億
円)を受け取ることになり、さらに、AS-1763の中華圏における上市後の売上高に応じた最大2桁の
料率の段階的ロイヤリティを受け取ります。
  当社が創製し、2016年5月にシエラ・オンコロジー社(以下「シエラ社」      )に導出したCDC7阻害剤
AS-0141については、2020年6月に同剤に関する全権利を当社が再取得いたしました。AS-0141はシ
エラ社によって米国におけるIND申請(新薬臨床試験開始届)が完了しており、当社はシエラ社が実
施したすべての前臨床試験データ、原薬および治験薬等を譲り受けました。他社先行品の臨床試験
成績の解析および科学的エビデンスに基づき、       より成功確度の高い新たな開発戦略を策定し、      現在、
2021年上期中に日本国内で臨床試験を開始する準備を進めています。
  当社のもう一つの事業の柱である創薬支援事業では、      2020年12月期の売上高は1,080百万円(前年
同期比0.1%増)となり、創薬支援事業として過去最高の売上高を達成いたしました。新型コロナウ
イルスの感染拡大により、顧客である製薬企業等が研究所を閉鎖するなど研究活動が低下した影響
は一部でありましたが、期初の売上計画1,036百万円および12月8日に公表した修正計画1,050百万
円を上回ることができました。2019年6月に締結した米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリ
アド社」 との新規がん免疫療法の創薬プログラムに関するライセンス契約に関連し、
       )                                          同社による当
該プログラムの開発をサポートするため、当社の脂質キナーゼ阻害剤に関する創薬基盤技術を一定
期間、独占的に同社に供与することになっており、これに関連した売上が米国における売上を押し
上げました。   また、プロメガ社のNanoBRETTMテクノロジーを用いた細胞内でのキナーゼ阻害剤の
作用を評価する受託試験サービスが国内外で好調でした。
  以上の結果、2020年12月期の連結売上高は1,133百万円(前期比64.7%減)となりました。地域別
の売上は、連結ベースで国内売上高が277百万円(前期比7.2%増)、海外売上高は855百万円(前期
比71.0%減)となりました。損益面につきましては、営業損失が1,057百万円(前期は977百万円の
営業利益)、経常損失は1,077百万円(前期は957百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期
純損失は1,111百万円 (前期は828百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)     となりました。  なお、
前年同期からの業績の大幅な変動は、ギリアド社との上記ライセンス契約締結に伴い、前年同期に
契約一時金2,128百万円を受領したことが要因です。

  事業別の状況は以下の通りです。
① 創薬事業
  第1四半期連結会計期間において、  バイオノバ社とAS-1763の中華圏におけるライセンス契約を締
結したことにより、  契約一時金を受領いたしました。   また、前臨床試験や臨床試験への投資により、
研究開発費は1,370百万円(前年同期比15.5%増)となりました。以上の結果、創薬事業の売上高は
53百万円(前年同四半期比97.5%減) 営業損失は1,515百万円
                    、             (前年同期は577百万円の営業利益)
となりました。
② 創薬支援事業
  キナーゼタンパク質の販売、  アッセイ開発、 プロファイリング・スクリーニングサービスおよびセ
ルベースアッセイサービスの提供等により、    創薬支援事業の売上高は1,080百万円 (前年同期比0.1%
増) と過去最高の売上高を達成し、  営業利益は458百万円(前年同四半期比14.5%増)となりました。
売上高の内訳は、国内売上が277百万円(前年同四半期比7.2%増)、北米地域は658百万円(前年同
四半期比3.8%増)、欧州地域は70百万円(前年同四半期比18.5%減)、その他地域は73百万円(前
年同四半期比26.1%減)です。




本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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          <創薬支援事業 地域別売上高>                          (百万円)
                                                            <創薬支援事業 営業利益>
  (百万円)
                                                      500
  1200
           1079                1080                                               458
  1100               1050                             450
                                                             400        416
            99                  73
  1000                69
                                70                    400
            86        72
   900
                                                      350
   800
                                        その他           300
   700
                                        欧州
   600                          658                   250
           634        642
                                        北米
   500                                                200
                                        国内
   400
                                                      150
   300
                                                      100
   200
           259        264       277
   100                                                50

     0                                                  0
          19/12期      20/12期   20/12期                       19/12期      20/12期   20/12期
            実績     12/8修正計画      実績                           実績     12/8修正計画      実績



  (注)上記グラフの会社計画は2020年12月8日公表の修正値です。



3. 事業別経営方針
   当社の事業別の中期経営計画策定の背景、今後の見通しおよびその前提条件は以下のとおりで
  す。

 1)創薬事業
   当社は、アンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患
  を中心に、特にがん、免疫炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指しています。当
  社の研究部門が創製した医薬品候補化合物の知的財産権に基づく開発・商業化の権利
  を 製 薬 会 社 等 に 導 出( ラ イ セ ン ス ア ウ ト )し 、そ の 対 価 と し て 契 約 一 時 金 、一 定 の 開 発
  段階を達成した際のマイルストーンペイメント収入、新薬の上市後の売上高に応じた
  ロ イ ヤ リ テ ィ 収 入 を 獲 得 す る ビ ジ ネ ス モ デ ル で す 。臨床試験の初期段階(フェーズ2a)ま
  でのいずれかの段階で当社の創薬パイプラインを製薬企業等に導出することを基本方針として
  います。これまでは前臨床段階までにある創薬パイプラインを導出しておりましたが、当社自身
  で臨床試験を実施する社内体制が構築できたため、今後は戦略的に早期導出品と自社臨床開発品
  に区分し、パイプラインの価値最大化を目指します。
   当社が保有するBTK阻害剤ポートフォリオであるAS-0871とAS-1763、およびCDC7阻害剤AS-0141
  については、    自社臨床開発品として位置付けており、             自社臨床試験でヒトでの安全性、         薬物動態、
  さらに効果などを確認したのち、導出活動を行う予定です。本目標を達成するために、複数の自
  社臨床試験を効率的且つ確実に推進するための開発体制をさらに強化していく予定です。また、
  持続的な成長を目指して、現在、探索段階にある複数の創薬プログラムを早期にステージアップ
  させ、早期導出品のパイプラインを充実させることで戦略的に導出活動を行ってまいります。さ
  らに、将来の大きな飛躍のため、次世代の新規創薬研究パイプラインを構築し、画期的な新薬を
  継続的に生み出す研究を推進いたします。
   当社は2020年12月までに複数の創薬プログラムを製薬企業等(大日本住友製薬、ギリアド社、
  バイオノバ社)     に導出しており、     今後、  開発段階の進展によるマイルストーンペイメント収入                (総
  額 最大で約790億円、1ドル105円で換算)の獲得および上市後の売上高に応じたロイヤリティ
  収入を得ることができます。これらに加えて、新たな導出による契約一時金収入およびマイルス


本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 トーンペイメント収入を得るため、引き続き導出活動を行ってまいります。
  当社の主な創薬の研究開発パイプラインおよびその状況は以下のとおりです。

 ①創薬の研究開発パイプライン
  <がん領域>




  <がん以外の疾患領域>




 *2020年2月7日発表の中期計画(2020年12月期~2022年12月期)からの主な変更
 ・CDC7阻害剤AS-0141:シエラ社から全権利を再取得
 ・BTK阻害剤AS-1763:前臨床試験が完了し、CTA申請済み
 ・Wnt-Signalを標的としたプログラム:中止
 ・CDK1を標的としたプログラム:探索段階のプログラムとしてパイプライン表に追加
 ・BTK阻害剤AS-0871:フェーズ1試験を開始
 ・STINGを標的としたプログラム:探索段階のプログラムとしてパイプライン表に追加

 ・CDC7阻害剤 AS-0141
  AS-0141は、当社が創製した選択的で強力にCDC7キナーゼを阻害する経口投与可能な低分子
 化合物です。様々ながん種の細胞の増殖を強く阻害し、各種ヒト腫瘍移植動物モデルにおいて優
 れた抗腫瘍効果を示しています。2016年にシエラ・オンコロジー社に開発権をライセンスし、そ
 の後、同社が米国においてIND申請を完了させました。シエラ社の開発方針変更に伴い、2020年
 6月に同剤に関する全権利を当社が再取得し、シエラ社が実施したすべての前臨床試験データ、
 原薬および治験薬等を譲り受けました。他社先行品の臨床試験成績の解析および科学的エビデン
 スに基づき、より成功確度の高い新たな開発戦略を策定し、現在、2021年上期中に日本国内で臨
 床試験を開始する準備を進めています。

 ・ギリアド社に導出した低分子阻害薬の創薬プログラム
  2019年6月に米国のギリアド社と、当社の創薬部門が創製した新規がん免疫療法の低分子阻害
 薬およびその創薬プログラムの開発・商業化にかかる全世界における独占的な権利を供与する契
 約を締結いたしました。契約一時金として20百万ドル(約21億円)を2020年12月期に受領してお
 り、当社は今後、開発状況や上市などの進捗に応じて追加的に最大で450百万ドル(約472億円、
 1ドル105円換算)のマイルストーンペイメントを受け取ることになり、さらに、本プログラムに
 より開発された医薬品の上市後の売上高に応じたロイヤリティを受け取ります。


本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 ・BTK阻害剤 AS-1763
   イブルチニブを代表とする第1世代の共有結合型BTK阻害薬は、慢性リンパ性白血病(CLL)を
 含む成熟B細胞腫瘍の有効な治療薬として幅広く使われていますが、これらBTK阻害剤に対する薬
 剤耐性が深刻な問題となってきています。近年、耐性患者においてC481S変異したBTKが高頻度に
 見い出され、この変異が第1世代BTK阻害剤の共有結合を妨げ阻害活性を低下させることが主な
 薬剤耐性の原因と考えられています。このような背景からBTK C481S耐性変異に対する新しい治
 療方法の開発が非常に望まれています。当社が創製した非共有結合型AS-1763は野生型BTKだけで
 なく、変異型BTKにも高い阻害効果を示すことから、第1世代の共有結合型BTK阻害薬耐性患者を
 対象とした次世代型BTK阻害剤として開発を進めています。2021年1月にCTA(欧州における臨
 床試験許認可申請)の申請書類をオランダ当局に提出しております。2021年上期中に健康成人を
 対象としたフェーズ1試験を開始する計画です。AS-1763の開発を加速することを目的として、
 2020年3月に、中華圏(中華人民共和国および台湾)における開発・商業化の権利を中国バイオ
 ノバ社に供与する契約を締結しております。バイオノバ社が中国において臨床試験を実施するこ
 とで、当社はバイオノバ社が実施したAS-1763に関するより多くの臨床試験データを収集・利用
 することができ、AS-1763の臨床開発を加速できると考えております。当社は、中華圏における
 今後のAS-1763の開発進捗に伴い、バイオノバ社から最大で約205百万ドル(約215億円)を受け
 取ることができ、さらに、AS-1763の中華圏における上市後の売上高に応じた最大2桁の料率の
 段階的ロイヤリティを受け取ります。

 ・大日本住友製薬との共同研究プログラム
  2018年3月に大日本住友製薬株式会社と精神神経疾患を標的とした共同研究契約を締結し、現
 在、順調に共同研究を進めています。本共同研究により見出されたキナーゼ阻害剤については、
 同社が、  がんを除く全疾患を対象とした臨床開発および販売を全世界で独占的に実施する権利を
 有します。その対価として、当社は契約一時金および研究マイルストーンとして、最大8千万円
 を受領し、その後の研究開発の進展に伴い、進捗に応じて追加的に最大で約106億円のマイルス
 トーンペイメントおよび売上高に応じたロイヤリティを受け取ることができます。

 ・BTK阻害剤 AS-0871
  BTKは血液がんだけでなく、自己免疫疾患やアレルギー疾患の治療標的分子としても注目され
 ていますが、これまでに同適応疾患を対象として承認されたBTK阻害薬はありません。AS-0871は
 当社が創製した非共有結合型BTK阻害剤で、 BTKに対して非常に高い選択性を示すことから、   現在、
 炎症性免疫疾患を対象に開発を進めています。
  AS-0871の臨床試験はオランダで実施しており、2020年8月にフェーズ1試験における被験者
 への投与を開始しました。健常人を対象としたフェーズ1試験の単回投与用量漸増試験(SAD)
 パートにおいて、計画していた投与がすべて完了しており、     2021年第1四半期に当該試験に関す
 る結果が得られる予定です。この試験結果を基に、2021年下期から新製剤を用いたフェーズ1試
 験の反復投与用量漸増試験(MAD)パートを開始する計画にしており、2022年上期に同試験の
 終了を予定しています。

 ・その他の探索段階にある創薬研究プログラム
  Wnt-Signalを標的としたプログラムに関しては、開発の難易度等の判断から中止いたしました。
 しかしながら、当該プログラムの研究から非常に興味深い知見・化合物が見出されましたので、
 今後、新たな創薬研究プログラムとして研究を継続してまいります。また、上記以外の創薬研究
 プログラムにつきましても、画期的な新薬創製に向けて様々な創薬研究プログラムを実施してお
 ります。これらの創薬プログラムにつきましても、早期ステージアップを目指して研究を継続し
 てまいります。

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 ②創薬研究の基本戦略
  当社の創薬研究は、アンメット・メディカル・ニーズが高いがんおよび免疫炎症疾患を重点領
 域としており、有望テーマへ研究リソースを重点的に投入し、創薬の成功確率の向上と研究期間
 の短縮に努めながら、当社が培ってきたキナーゼに関する創薬基盤技術などを利用して、新規性
 の高い画期的な医薬品候補化合物の創出を目指しています。
  当社の創薬事業は、製薬企業出身者が中心となって、当社のコア技術であるキナーゼ創薬基盤
 技術を中心に、様々な創薬標的に対する低分子医薬品の創薬研究を実施しており、次々と独自の
 新たなパイプラインを生み出すことができることが大きな特長となっています。2019年に実施し
 た本社創薬ラボの拡張・拡充により研究環境のさらなる整備を行ったことから、これまで社内で
 の実施が難しかった実験も行えるようになり、より画期的な研究成果が期待されます。また、大
 学等アカデミアとの共同研究も積極的に推進しており、新しいコア技術の開発や新規創薬テーマ
 の発掘のための研究を行なってまいります。

 ③ 導出活動
  当社は、臨床試験の初期段階(フェーズ2a)までのいずれかの段階で当社の創薬パイプライン
 を製薬企業等に導出することを基本方針としております。導出契約は、導出時の研究開発のステ
 ージが高くなるほど収益性が高くなることが見込まれますが、その反面、導出に至るまでの開発
 リスクは高まり、必要な研究開発費は多額になります。反対に、前臨床段階など早期に導出する
 ことを想定した場合、ヒトに対する臨床データがなく、臨床開発リスクが考慮されるために、導
 出先製薬企業等から獲得する収益は低くなる可能性があります。
  当社が創出した医薬品候補化合物が臨床試験を経て上市する成功確率を高めるためには、臨床
 試験段階のパイプラインを複数保有することが重要です。これまでの複数の製薬企業(ジョンソ
 ン・エンド・ジョンソン社、シエラ社、ギリアド社、バイオノバ社)への導出実績や国際的学術
 科学雑誌への研究成果の掲載、さらには当社が独自に研究開発中の創薬パイプラインへの注目度
 の高まり等を受けて、海外メガファーマや国内製薬企業等との協議の機会が多くなっております。
  当社は、自社で臨床試験を実施し、創薬パイプラインの価値を最大限に高めたうえで導出する
 ことを中期的な経営の基本方針として掲げていますが、競合状況や導出先製薬企業との頻回な面
 談による情報収集により、当社にとって最大価値を生み出せるよう戦略的かつ臨機応変に導出交
 渉に取り組んでまいります。

 ④ 臨床開発体制の確立
  当社が創出した医薬品候補化合物の臨床試験を自社で実施することが可能となりましたが、今
 後も次々とステージアップする複数の医薬品候補化合物の臨床試験を実施する体制はいまだ不
 十分であると認識しております。自社開発品であるAS-0871、AS-1763およびAS-0141の臨床試験
 が確実に実施でき、さらに将来の医薬品候補化合物の開発が滞りなく実施できるよう、引き続き
 臨床開発体制の強化を進めてまいります。
  上記開発体制を構築してさらなる事業の発展を目指していくうえで、開発を推進、管理する人
 員の確保、臨床試験を推進するための資金の獲得が必要となります。当社は、創薬支援事業およ
 び創薬事業における営業キャッシュ・フロー収入を投じる予定でありますが、必要に応じて資本
 市場等から資金を調達し、当社事業の拡充に取り組んでまいります。
  以上の取り組みを通して、複数の臨床試験段階のパイプラインを有する創薬ベンチャーとして
 飛躍的な成長を実現し、当社の企業価値を高めてまいります。

 ⑤ 創薬事業の業績予想の前提条件
  当社は、製薬企業と情報交換を継続的に行い、各パイプラインの導出の時期を見極めながら導
 出活動を行っておりますが、導出一時金収入等の時期および対価を予想することは困難です。ま

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 た、導出済みの創薬プログラムの開発状況に応じて受領するマイルストーンペイメント収入もそ
 の時期には不確定予想が含まれることから、創薬事業の売上は連結業績予想に含めておりません。
 一方、2020年に開始したAS-0871の第I相臨床試験に加え、AS-1763 およびAS-0141の臨床試験開
 始を計画していること、加えて前臨床試験へも積極的に先行投資を行うことから、2021年12月期
 の創薬事業の研究開発費は1,809百万円を計画しており、同事業の営業損失は2,019百万円と予想
 しております。


2)創薬支援事業
  当社の創薬支援事業は、当社の創薬基盤技術に基づくキナーゼ関連製品およびサービスの高い
 品質を強みとし、その創薬基盤技術を基にして顧客の要望に的確に応える学術サポートを通じて
 世界的なシェアを拡大し、安定的な収益を獲得することを基本方針としています。この獲得した
 収益を創薬事業に投じることで研究開発のスピードアップに寄与することが、創薬支援事業の重
 要なミッションです。
  地域別には、市場規模が大きくバイオベンチャーが次々誕生するなど成長を続ける北米での中
 期的かつ持続的な売上増、また日本国内での売上の維持拡大が重要と考えており、急成長してい
 るその他地域の中国での売上拡大とともに注力してまいります。
  製品別では、当社のみが販売している機能性キナーゼタンパク質製品のビオチン化タンパク質
 や変異体キナーゼタンパク質の品ぞろえを強化いたしました。また、プロメガ社のNanoBRETTMテ
 クノロジーを用いて細胞内でのキナーゼ阻害剤の作用を評価する受託試験サービスについても、
 ターゲットとなるキナーゼ数を追加し、サービスを拡大させています。これら新製品、サービス
 を顧客に積極的に提案するとともに、顧客ニーズに合致した新製品、サービスをさらに開発し提
 供することで売上の拡大に取り組んでまいります。
  さらに、当社の顧客はがんの研究グループの比重が高いとの認識から、免疫炎症、中枢神経等、
 他の疾患領域の研究者へも引き続き拡販を図り、売上の拡大を目指します。
  地域別の販売戦略の基本方針は、以下の通りです。

 a.国内地域
   国内での当社のシェアは高いとの認識から、売上拡大には既存顧客とのコミュニケーション
  頻度を増やし、当社の創薬基盤技術を駆使したソリューションとして、当社製品・サービスの
  提案を行うことが重要と認識しております。最新の研究動向を分析し、顧客へ的確なアプロー
  チを行うことで、潜在ニーズを掘り起こし、安定的な売上の確保、収益性の向上を図ります。

 b.北米地域
   北米で次々と設立され創薬研究を開始する創薬バイオベンチャーを当社製品・サービスの継
  続的な顧客とするため、関係構築を図るとともに、大手製薬企業個々のニーズに応じたきめ細
  やかな対応をさらに進めて顧客基盤を強固にし、中期的な売上拡大を目指します。また、北米
  地域においては引き続きセルベースアッセイサービスの需要が高まっており、NanoBRETTMテク
  ノロジーを用いた受託試験サービスについて顧客への訴求を図ることにより、売上増に加え利
  益率向上にも取り組んでまいります。

 c.欧州地域
   当社の販売代理人であるデンマークのキナーゼロジスティックス社を中心に、既存顧客への
  販促活動を引き続き行い、売上拡大を図ります。

 d.その他地域
   中国では、新型コロナウイルス感染拡大により需要が停滞しましたが、創薬ビジネスの中長
  期的な拡大は継続すると考えており、販売代理店である上海ユニバイオ社との関係強化を通じ

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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     て売上拡大を目指してまいります。
     当社は、2021年12月期の創薬支援事業の売上高を前期比14.6%減の923百万円、営業利益を
   54.7%減の207百万円と計画しています。新型コロナウイルスの影響が不透明であることを考慮
   し、保守的な計画としております。なお、創薬支援事業における研究開発費は、新規製品・サー
   ビスの開発および既存製品・サービスの品質向上を目的として、    171百万円を計画しております。



(百万円)    <創薬支援事業 地域別売上計画>                        (百万円)   <創薬支援事業 営業利益計画>

  1200                                             500
          1079     1080                                             458
  1100                                             450
           99       73                                     400
  1000
                    70       923                   400
           86
   900                       80      その他           350
   800                       80
                                     欧州
                                                   300
   700                               北米
   600              658              国内            250
           634
                                                                             207
   500                       489
                                                   200
   400
                                                   150
   300
                                                   100
   200
           259      277      273
   100                                              50

     0                                               0
          19/12期   20/12期   21/12期                        19/12期   20/12期   21/12期
            実績       実績       計画                            実績       実績       計画




4. 財務戦略

 1)研究開発費
   2021年12月期の研究開発費は連結ベースで1,981百万円(前年同期比34.4%増)を計画しており
 ます。2021年は、BTK阻害剤AS-0871の第I相臨床試験の継続、BTK阻害剤AS-1763およびCDC7阻害剤
 AS-0141の第I相臨床試験における投与開始を計画しており、研究開発費は前年比で507百万円増加
 する見通しです。臨床試験に使用する製剤の準備コストが2021年に集中するため、本中期経営計画
 (2021年12月期~2023年12月期)においては2021年12月期が研究開発費のピークとなる見込みです。
 2)設備投資計画
  創薬研究および創薬支援事業に用いる機器の新設および更新、情報システムの更新費用として総
 額21百万円の設備投資を計画しています。
 3)財務戦略
  当社の財務戦略は、長期にわたる研究開発を行うための強固な財務基盤を保つために、手元資金
 については高い流動性と厚めの資金量を確保および維持することを基本方針としております。先行
 投資が必要な創薬事業の研究開発資金に、創薬支援事業で獲得したキャッシュ・フローおよび創薬
 事業で獲得した契約一時金、マイルストーンペイメント収入およびロイヤリティ収入を充当し、当
 社創薬パイプラインの拡充および着実な進展を図り、当社事業価値を高めていくという経営方針に
 基づいて財務戦略を策定しております。
  現在、2019年7月29日に発行した行使価額修正条項付き第18回新株予約権による資金調達を進め
 ており、2020年12月末までの累計で2,173百万円の調達を行いました。2021年12月期末の現金及び
 預金は4,299百万円と十分な資金を有しておりますが、臨床試験の推進には短期的、中期的な資金

本書は、投資勧誘を目的としたものではありません。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は、投資者ご自身の
判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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 確保が重要と認識しております。今後の創薬事業および創薬支援事業からの収益確保に取り組むと
 ともに、新たな資金調達の検討を進め、必要な資金確保に努めてまいります。また、銀行等からの
 借入についても、財務状況や借入金の返済状況等を総合的に勘案し、適宜実施することといたしま
 す。


5. 2021年12月期の業績予想
  当社の2021年12月期の連結業績予想は以下の通りであり、その前提条件等は3.事業別経営方針
 および4.財務戦略に記載のとおりです。

                                                            (%表示は対前期増減率)
                    売上高             営業利益             経常利益         当期純利益
               百万円           %     百万円        %
    創薬支援事業      923       -14.6      207   -54.7
    創 薬 事 業         -        -    △2,019      -

    全 社(連結)     923       -18.5   △1,811      -    △1,816    -   △1,825   -



  なお、研究開発費は、3.事業別経営方針に記載の方針に基づいて、連結ベースで1,981百万円
 (前年同期比34.4%増)を計画しております。
  また、2022年以降の業績目標の数値は、当社ビジネスモデルの特性上現時点で見積もることは難
 しいことから、記載しておりません。




                                                          以 上
本開示資料は、投資者に対する情報提供を目的として将来の事業計画等を記載したものであって、投資勧誘を目的としたものではありま
せん。当社の事業計画に対する評価および投資に関する決定は投資者ご自身の判断において行われるようお願いいたします。
また、当社は、事業計画に関する業績目標その他の事項の実現・達成等に関しその蓋然性を如何なる意味においても保証するものではな
く、その実現・達成等に関して一切責任を負うものではありません。
本開示資料に記載されている将来に係わる一切の記述内容(事業計画に関する業績目標も含みますがそれに限られません。)は、現時点
で入手可能な情報から得られた当社の判断に基づくものであり、将来の経済環境の変化等を含む事業計画の前提条件に変動が生じた場合
その他様々な要因の変化により、実際の事業の状態・業績等は影響を受けることが予想され、本開示資料の記載内容と大きく異なる可能
性があります。




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判断において行われるようお願いいたします。また本資料最終頁末尾の留意事項を必ずご参照下さい。

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