4569 キョーリンHD 2020-01-06 15:00:00
米国aTyr社との新規免疫調節薬に関するライセンス契約締結について [pdf]
2020 年 1 月 6 日
各 位
会 社 名 キョーリン製薬ホールディングス株式会社
代 表 者 名 代表取締役社長 荻原 豊
(コード番号 4569 東証第 1 部)
問 合 せ 先 グループ経営企画統轄部 部長 谷藤 功典
電 話 番 号 03-3525-4707
米国 aTyr社との新規免疫調節薬に関するライセンス契約締結について
キョーリン製薬ホールディングス株式会社の子会社である杏林製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締
)と米国 aTyr Pharma,Inc.(本社:米国カリフォルニア州、Chief Executive
役社長:荻原 茂、以下「杏林製薬」
Officer & President:Sanjay S. Shukla、以下「aTyr社」)は、aTyr社が創製した新規免疫調節薬「ATYR1923」
(以下「本剤」
)について、この度、ライセンス契約を締結いたしました。
本契約に基づき、杏林製薬は間質性肺疾患を対象とする本剤の日本における開発、販売に関する独占的権利を取
得し、aTyr社に契約一時金(8百万米ドル)及び開発から発売までの進展に応じたマイルストンペイメントを支
払います。また発売後には、正味売上高に対する一定率のロイヤリティ及び販売マイルストンを支払います(販売
マイルストンを含むマイルストンペイメントは、最大167百万米ドル)
。
融合タンパク製剤である本剤は、Neuropilin-2 受容体(ニューロピリン-2、以下「NRP2」
)に結合すること
で過剰な免疫細胞の活性化を抑制する作用を有し、ファースト・イン・クラスの治療薬として肺サルコイドーシス
等の炎症疾患への効果が期待されます。現在、米国においては、aTyr社が肺サルコイドーシスを対象にP1b/2a
臨床試験を実施中です。
杏林製薬は、特定領域に経営資源を集中するフランチャイズ・カスタマー戦略(重点領域:呼吸器科、耳鼻科、
泌尿器科)を推進しており、重点領域である呼吸器科領域での製品ラインナップの拡充を図り、当領域での更なる
プレゼンス向上を目指します。
2020年3月期の連結業績予想への影響につきましては、本契約により杏林製薬がaTyr社に支払う契約一時金を当
期の販売費及び一般管理費(研究開発費)に計上する予定であり、適時開示すべき事項が発生した場合には、速や
かに公表いたします。
以 上
【参考資料】
◆ aTyr Pharma,Inc. について
設 立:2005 年
代 表 者:Chief Executive Officer &President Sanjay S. Shukla
従 業 員:42 人(2019 年 3 月 15 日現在)
概 要:aTyr 社は新規の免疫調節メカニズムに基づく革新的な医薬品の探索・開発を行うバイオ医薬品企業です。
aTyr 社は tRNA シンテターゼの細胞外機能やシグナル経路など、新たに生物学的な機能を見いだした領域に
特化した研究開発を行っています。aTyr 社は新たな治療標的として可能性を持つ 20 種類あるすべてのヒト
tRNA シンテターゼ及びそれらの細胞外分泌分子に対するグローバルな知的財産権を構築しています。
詳細については、https://www.atyrpharma.com/をご覧ください。
◆ 杏林製薬株式会社について
設 立:1923 年 12 月
代 表 者:代表取締役社長 荻原 茂
売 上 高:99,736 百万円(2018 年度)
従 業 員:1,567 人(2019 年 3 月 31 日現在)
概 要:患者さんや医療に携わる方々から信頼され、社会に存在意義を認められる健康貢献企業を目指して、特定領
域におけるプレゼンス向上とグローバルな自社新薬の創製に取り組んでいます。営業においては呼吸器科、耳
鼻科、泌尿器科を中心とするユーザーに重点化する フランチャイズ・カスタマー 戦略の展開、創薬において
は選択と集中を進め、重層的なプログラム開発への取り組みと共に外部創薬テーマの積極的な探索・導入を行
なう等、ファースト・イン・クラス創薬に向けた活動を展開しています。
● ATYR1923 の特徴及び作用機序
「ATYR1923」はヒト抗体のFc領域にNRP2へ選択的に結合するヒスチジンtRNAシンテターゼ免疫調節ドメイン
を融合させた融合タンパク製剤であり、肺の炎症病態において自然免疫反応及び獲得免疫反応を下方制御させる作用
が期待されます。aTyr社は「ATYR1923」を主力臨床開発候補品として、現在、肺サルコイドーシス患者を対象とし
たPOC試験(Ph1b/2a)を実施中です。このPh1b/2a試験は「ATYR1923」の安全性・容認性、ステロイド減量作用、
免疫毒性及び薬物動態を評価するための最初の患者対象、プラセボ含有の反復投与試験です。
* NRP2(Neuropilin-2)の作用について
NRP2はリンパ管の発達や炎症反応の調節に重要な役割を果たす細胞表面受容体です。近年、NRP2は様々な免疫
細胞において特に炎症状態など細胞が活性化した状態でその発現が増大し、細胞遊走、貪食作用、細胞間相互作用と
いった多様な免疫機能に関連することが示唆されています。またaTyr社は肺サルコイドーシス患者の肺病変におい
てNRP2の発現を確認しており、病態との関連を示唆するデータを保有しています。
● 肺サルコイドーシスとは
サルコイドーシスは原因不明の炎症性疾患であり、1 つから複数の臓器における肉芽腫、炎症細胞の集積がみられ
ることが特徴で、主に 50 歳以下で発症し、そのピークは 20〜39 歳です。この疾患は通常、肺、皮膚、またはリンパ
節で始まり、ほかの臓器にも影響を及ぼします。
サルコイドーシスで最も侵されやすい器官は肺で肺サルコイドーシスと呼ばれ、患者の 90%以上が罹患しています。
その病態の予後は良性または自己寛解型から慢性型や進行性のため死に至る重症なパターンまで様々です。さらに肺
サルコイドーシスは肺間質組織の急速な線維化を引き起こす免疫関連疾患である間質性肺疾患の主病態です。有病率
は国によってさまざまですが、現在米国では約 20 万人が罹患しています。一方、日本においては肺サルコイドーシス
の難病受給者証保持者数は 15,047 人(2017 年度)となっており、2018 年度の患者数は約 10 万人と推計されていま
す。現在、治療にはステロイドや免疫抑制剤が使用されていますが、強い副作用が課題となっており、安全性の高い
効果的な治療薬が求められています。