4552 JCRファーマ 2020-04-21 16:00:00
J-Brain Cargoを利用した新薬‐スライ症候群、サンフィリッポ症候群B型‐開発着手のお知らせ [pdf]

                                         2020 年 4 月 21 日
各     位




                   会 社 名 J C R フ ァ ー マ 株 式 会 社
                   代表者名 代 表 取 締 役 会 長 兼 社 長 芦 田     信
                                (東証第 1 部 コード番号 4552)
                   問合せ先 上席執行役員経営企画本部長 本 多           裕
                                    (TEL 0797-32-1995)

    J-Brain Cargo®を利用した新薬‐スライ症候群、サンフィリッポ症候群 B 型‐
                        開発着手のお知らせ

 当社は、独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した新薬の開発として、
新たにスライ症候群治療酵素製剤〔開発番号:JR-443(血液脳関門通過型遺伝子組換え β-
グルクロニダーゼ)、サンフィリッポ症候群 B 型治療酵素製剤〔開発コード:JR-446(血
         〕
液脳関門通過型遺伝子組換え α-N-アセチルグルコサミニダーゼ) の開発に着手することを
                                   〕
決定しましたのでお知らせいたします。

 今回、当社が新たに着手するスライ症候群(ムコ多糖症 VII 型)は、ハンター症候群同
様、ライソゾーム病の一種であるムコ多糖症に分類され、ムコ多糖を体内で分解する酵素
(β-glucuronidase)の欠損により発症する疾患です。全身の組織にヘパラン硫酸、デルマ
タン硫酸、コンドロイチン硫酸が蓄積し、骨変形、関節拘縮などの症状のほか、重症患者に
は中枢神経障害が認められます。
 同じくムコ多糖症の一種であるサンフィリッポ症候群 B 型(ムコ多糖症 IIIB 型)は、ム
コ多糖を体内で分解する酵素(α-N-acetylglucosaminidase)の欠損により発症する疾患で
す。全身の組織にヘパラン硫酸が蓄積し、症状として特に中枢神経障害が急速に進行し、こ
のため神経発達は 2、3 歳をピークとし、その後退行していきます。
 どちらも国内で承認されている治療酵素製剤は無く、新しい治療薬の開発が望まれてい
ます。

 JR-443 および JR-446 を用いた動物試験において、静脈内投与された薬剤の脳への移行
および脳内に蓄積したムコ多糖の減少作用を確認いたしました。       今後、具体的な開発計画を
策定し、3 年以内の臨床試験開始に向けて準備を進めてまいります。

 当社は、J-Brain Cargo®を適用したライソゾーム病治療薬の開発を順次行っております。
今後も、希少疾病治療薬のスペシャリティファーマとして、      より多くの患者の皆さんの治療
に貢献できるよう研究開発を加速してまいります。
 なお、本件に関する 2021 年 3 月期の連結業績への影響は軽微であります。

                                             以   上

【語句の説明】
ライソゾーム病
厚生労働省指定難病。小児慢性特定疾病。ライソゾームと呼ばれる細胞内小器官内で、加水
分解酵素や酵素のトランスポーターである膜タンパク等が遺伝子的に欠損または変化する
ことによって、酵素活性が低下して分解できなくなった基質がライソゾーム内に蓄積し、そ
の結果、細胞や組織に障害が生じる疾患群。症状は蓄積する物質によって様々であり、その
多くの疾患で中枢神経症状を伴う。

ムコ多糖症(Mucopolysaccharidosis;MPS)
ライソゾーム病の一種。グリコサミノグリカン(GAG)というムコ多糖の分解に必要な酵
素の欠損または活性低下により、GAG が細胞内に過剰蓄積することで全身に様々な症状が
発現する疾患。GAG には主に、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロ
イチン硫酸、ヒアルロン酸があり、        欠損する酵素の種類により蓄積する物質が異なるため、
蓄積物質や臨床症状から 7 タイプの病型に分類される。




スライ症候群(ムコ多糖症 VII 型)
ムコ多糖を体内で分解する酵素(β-glucuronidase)の欠損により発症する常染色体劣性遺
伝性疾患。ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸が蓄積する。症状として骨
変形、関節拘縮の他、肝腫大、角膜混濁、心臓弁膜症、中枢神経障害が認められることもあ
る。治療法として、対症療法および原因療法があり、原因療法として造血幹細胞移植が考慮
されることもあるが、病態の進行を完全に阻止することはできない。

サンフィリッポ症候群(ムコ多糖症 III 型)
ムコ多糖を体内で分解する酵素の欠損により発症する常染色体劣性遺伝性疾患。欠損する
酵素の種類により、4 つの亜型(A 型、B 型、C 型、D 型)に分類される。ヘパラン硫酸が
蓄積し、症状として特に中枢神経障害が急速に進行し、神経発達は 2、3 歳をピークとして
その後退行し、7~8 歳までに言語は消失する。進行すると、睡眠障害、肝脾腫、けいれん発
作の症状がみられる。造血幹細胞移植が考慮されるが効果は明らかではない。