4552 JCRファーマ 2021-10-18 16:00:00
血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤(開発番号:JR-141)欧州医薬品庁よりPRIME指定のお知らせ [pdf]

                                        2021 年 10 月 18 日
各   位




                  会 社 名 J C R フ ァ ー マ 株 式 会 社
                  代表者名 代 表 取 締 役 会 長 兼 社 長 芦 田     信
                             (東証第 1 部 コード番号 4552)
                  問合せ先 執 行 役 員 管 理 本 部 長 本 多       裕
                                   (TEL 0797-32-1995)

    血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤(開発番号:JR-141)
          欧州医薬品庁より PRIME 指定のお知らせ

 当社は、独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用したムコ多糖症 II 型(ハ
ンター症候群)治療酵素製剤〔国際一般名:pabinafusp alfa 開発番号:JR-141(血液脳
関門(以下、  BBB)通過型遺伝子組換えイズロン酸-2-スルファターゼ) について、
                                       〕       この度、
欧州医薬品庁(EMA)より PRIME の指定を受けましたのでお知らせいたします。
 EMA の PRIME とは、アンメットメディカルニーズを対象とした医薬品の開発支援を強
化するためのスキームです。    有望な医薬品の開発者との交流を深め、   早期に対話を行うこと
で、開発計画の最適化と評価の迅速化を図り、    これらの医薬品をより早く患者の皆さんに届
けることを目的としています。

 ハンター症候群はライソゾーム病の一種であり、中枢神経症状など幅広い症状を呈しま
す。
 JR-141 は、ハンター症候群の欠損酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼに血液脳関門
通過技術 J-Brain Cargo®を適用させた分子であり、マンノース-6-リン酸受容体を介した作
用に加え、当社独自の BBB 通過技術 J-Brain Cargo®によりトランスフェリン受容体を介
して BBB を通過させることで、中枢神経症状に対する作用が期待できます。

  現在、米国・ブラジル・欧州において JR-141 のグローバル臨床第 3 相試験開始に向けた
準備を進めています。
 今回の PRIME 指定により、JR-141 は欧州での製造販売承認申請時に迅速審査の対象に
なる可能性があります。

 当社は、JR-141 に続いて、J-Brain Cargo®を適用した他のライソゾーム病治療酵素製剤
の開発を順次行っております。   希少疾病領域のスペシャリティファーマとして、       より多くの
患者の皆さんの治療に貢献できるよう取り組んでまいります。

 なお、本件に関する今期(2022 年 3 月期)の当社連結業績への影響はございません。
PRIME (PRIority MEdicines)について
欧州医薬品庁(EMA)が、アンメットメディカルニーズを対象とした医薬品の開発支援を
強化するために開始したスキームです。             有望な医薬品の開発者との交流を深め、  早期に対話
を行うことで、     開発計画の最適化と評価の迅速化を図り、          これらの医薬品をより早く患者さ
んの皆さんに届けることを目的としています。             PRIME によって早期かつ積極的な支援を受
けることで医薬品の申請を迅速に行うことが可能となり、また迅速審査の対象になる可能
性があります。PRIME に指定されるには、初期の臨床データに基づいて、アンメットメデ
ィカルニーズのある患者の皆さんにベネフィットをもたらす可能性があることを示す必要
があります。



JR-141 について
JR-141 は、マンノース-6-リン酸受容体を介した作用に加え、当社独自の血液脳関門通過技
術「J-Brain Cargo®」によりトランスフェリン受容体を介して血液脳関門(以下、BBB)
を通過させることによる中枢神経系症状に対する作用を期待し、分子設計の段階から非臨
床、 臨床にいたるまで必要なエビデンスを構築しながら開発を進めて参りました。       非臨床試
験においては、トランスフェリン受容体への親和性だけでなく、JR-141 が BBB を通過し
神経細胞へ到達することを電子顕微鏡下において確認し、        また、脳の各組織中への酵素取り
込み、蓄積基質の減少を確認いたしました 1,2。これらの結果に基づき実施した臨床試験に
おいては、中枢神経系症状に対する有効性の代替評価指標である脳脊髄液中のヘパラン硫
酸濃度において、非臨床試験にて得られた結果と矛盾しない結果を得ております。また、中
枢神経症状への作用と考えられる結果も得ております 3,4,5,6。
日本においては、     「イズカーゴⓇ点滴静注用 10 ㎎」の販売で厚生労働省より承認を取得し、
2021 年 5 月より販売しています。
また、2021 年 9 月に、武田薬品工業株式会社と特定地域における独占的な共同開発および
ライセンス契約を締結しました。両社は JCR が実施するグローバル臨床第 3 相試験の終了
後、本治療薬を一日でも早く患者の皆さんにお届けできるよう協力してまいります。



ムコ多糖症 II 型(ハンター症候群)について
ライソゾーム病の一種であり、遺伝子異常により全身の細胞においてライソゾーム内の特
定の加水分解酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)が欠損又は働きが低下することでムコ
多糖(グリコサミノグリカン)が過剰蓄積する X 染色体連鎖劣性遺伝性疾患です。発症頻
度は男児約5万人に1人とされており、現在日本では約 250 症例と推測されています(当
社調べ)。主な症状として、関節拘縮や骨変形、肝臓・脾臓の肥大、呼吸障害、弁膜疾患等、
幅広い 症状が挙げられますが、特に中枢神経症状が課題となっています。



参考文献
1: Sonoda, et al. A blood-brain-barrier-penetrating anti-human transferrin receptor antibody fusion
protein for neuronopathic mucopolysaccharidosis II. Molecular Therapy. 2018;26(5):1366-1374.
2: Morimoto, et al. Clearance of heparin sulfate in the brain prevents neurodegeneration and
neurocognitive impairment in MPS II mice. Mol. Ther. 2021.
3: Okuyama, et al. Iduronate-2-sulfatase with Anti-human Transferrin Receptor Antibody for
Neuropathic Mucopolysaccharidosis II: A Phase 1/2 Trial. Mol Ther. 2020; 27(2): 456-464.
4: Okuyama, et al. A Phase 2/3 Trial of Pabinafusp Alfa, IDS Fused with Anti-Human Transferrin
Receptor Antibody, Targeting Neurodegeneration in MPS-II. Mol Ther. 2021; 29(2): 671-679.
5: Giugliani, et al. Iduronate-2-sulfatase fused with anti-human transferrin receptor antibody,
pabinafusp alfa, for treatment of neuronopathic and non-neuronopathic mucopolysaccharidosis II:
Report of a phase 2 trial in Brazil. Mol Ther. 2021.
6: Giugliani, et al. Enzyme Replacement Therapy with Pabinafusp Alfa for Neuronopathic
Mucopolysaccharidosis II; an Integrated Analysis of Preclinical and Clinical Data. Int. J. Mol. Sci.
2021, Volume 22, Issue 20, 10938.


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