4390 ips 2021-11-17 15:30:00
当社子会社のInfiniVAN, Inc.が、フィリピンにて、海底ケーブルの陸揚局などの建設・運営・保守の許可を受けたことのお知らせ [pdf]

                                                       2021 年 11 月 17 日
各 位
                                   会社名    株式会社アイ・ピー・エス
                                   銘柄名    株式会社IPS
                                   代表者名   代表取締役          宮下 幸治
                                          (コード番号:4390 東証第一部)
                                   問合せ先   経営企画室長          赤津 博康
                                                (TEL. 03-3549-7719)

   当社子会社の InfiniVAN, Inc.が、フィリピンにて、海底ケーブルの陸揚局などの
            建設・運営・保守の許可を受けたことのお知らせ

 当社子会社である InfiniVAN, Inc.注1(以下、「InfiniVAN」という。)がフィリピン共和国国家通信委員会
(以下、「NTC」という。)に申請していた、海底ケーブルの陸揚局注 2 ならびに関係するバックホール注 3 回線設
備の建設・運営・保守について、本日、申請に対する許可を確認しましたので、お知らせいたします。


                               記

1.経緯
   1   2020 年 8 月、InfiniVAN は、海底ケーブルの陸揚局ならびに関係するバックホール回線設備の建設・
       運営・保守に必要な許可や免許の発行を、NTC に申請しました。
   2   申請後の聴聞会では、それら設備を既に保有している通信事業者グループの複数の企業から、喫緊
       の需要がない、などの様々な異議や反対意見が出されました。その後、NTC の審査部門による技術面
       や財務面などの検討が続きました。
   3   2021 年 10 月、NTC が、「InfiniVAN の提案する陸揚局により、高速なブロードバンドデータサービ
       スやインターネットアクセスサービスでフィリピンに公益がもたらされ、新たな陸揚局の選択肢が
       加わることで事業者間の競争が促進され、冗長性が増してネットワークの強靭化が期待できる。」
       という理由で、InfiniVAN の申請に対して許認可上の支障はないとの決議をしました。
   4   その後、InfiniVAN の顧問弁護士による確認を行っておりましたが、本日、確認が完了したと回答が
       ありました。

2.陸揚局許可の意義、及び今後の見通し
   海外の有力 OTT※4 にとってはこれまで、陸揚局が寡占化して選択肢が限定されているため、フィリピン国
  内の通信事業者との交渉が難航し、国際海底ケーブルやコンテンツサーバーの国内上陸が困難であった
  り、上陸できたとしても通信事業者の料金が高額すぎて自由度の高いサービスを享受できておりませんで
  した。当社グループの InfiniVAN が、陸揚局を所有することはすなわち、海外の有力 OTT 等がフィリピン
  国内に国際サービスを展開する上で避けることの出来ない、国際的な海底ケーブルとフィリピン国内通信
  網との重要な結節点を持つことになるため、 今後当社グループが OTT 等との通信契約交渉を進めるうえ
  で、非常に有利になると判断されます。したがって今回の許可取得は、事業構想を実現するうえで非常に
  重要なステップが達成できたと考えております。
   InfiniVAN はフィリピン国内における通信インフラの整備を進めてきておりますが、今後、国際海底ケー
  ブルの陸揚局やマニラ首都圏など市中までのバックホール回線設備の建設も進めてまいります。さらに当
  社グループは OTT と協業し、国内に設置された OTT のコンテンツサーバーと国内各地の通信事業者、ISP、
  CATV 事業者との中立的な、フィリピン国内での相互接続点設置を進めることで、フィリピンにおける通信
  事業者としての強力なポジションを確立していきます。5G 時代の大容量トラフィックを効率的に取り扱え
   るコンテンツ配信網を実現することで、他社との差別化を図るとともに、フィリピンの SDGsや通信環境改
   善など経済発展への貢献を目指します。
    なお、陸揚局の建設などの規模の大きな設備投資に際しては、国際海底ケーブル・陸揚局・バックホー
   ル回線などの提供内定先顧客を予め確保したり、他の企業や事業者と建設パートナーシップを結ぶなどし
   て、当社グループの財務負担や保有資産規模などのリスクを回避しつつ、投資の適正化を図りながら進め
   てまいります。
    陸揚局やバックホール回線設備に関係する設備投資が今期(2022 年 3 月期)の連結業績に与える影響
   は、軽微と予測されます。今後開示すべき事項が生じました場合は、速やかに開示いたします。



(用語の説明)
※1:InfiniVAN, Inc.
      2015 年に設立され、2016 年フィリピン共和国法 10898 号によりフィリピン国内で通信事業を営むことができる特権(フランチャイ
    ズ)を持つ通信事業者。同法は、同社が、固定通信のほか無線通信サービスも提供することができる旨定めております。加えて 2017
    年にはルソン島地域の、2018 年にはビサヤ、ミンダナオ地域の通信事業の適格を取得しております。

※2:陸揚局
     海底ケーブルの両端の終端地点に置かれる局舎。当該地点において陸上の通信網に接続される。

※3:バックホール
     末端のアクセス回線と中心部の基幹通信回線網をつなぐ中継通信回線のこと。陸揚局に関係するバックホール回線とは、陸揚局か
    ら基幹通信網までを結ぶ中継通信回線のこと。

※4:OTT
         Over The Top。インターネット上の動画配信・音声通話・ソーシャルメディアなどのサービスや提供事業者の総称。




                                                                      以上
(別紙)
                   陸揚局などの所有を進める背景と、今後の構想




1.       フィリピンでの、InfiniVAN による陸揚局所有の意義



 フィリピンでは長年に渡り、既存の2つの国内通信事業者グループの企業のみが、国際海底ケーブルの陸揚局の建設・運
営・保守を行っております。他の事業者の参入が果たされず、寡占状態となっておりました。
 インターネットのトラフィックが急増しているフィリピンでは、通信インフラの増強が強く求められております。しかし
ながら、陸揚局を持つ国内通信事業者と、フィリピン国外の通信事業者や OTT との交渉がなかなか折り合わず、後者による
フィリピン国内への通信回線やサーバーの導入が進んでおりません。
 その結果今日においても、動画コンテンツなど大きな容量のデータのほどんどは、香港やシンガポールなどの海外にある
IX 注 5 や PoP 注 6 の先にあるサーバーまで、フィリピン各地のエンドユーザーのところから遠路はるばる取りに行くという、
ネットワーク構造になっております。
 このネットワーク構造により、中継回線の容量の逼迫、インターネットの速度遅延や低い安定性によるエンドユーザーの
満足度低下、フィリピンに関係する国内外通信回線の料金の高止まりなどが起こっており、トータルで見たフィリピンの通
信ネットワークの非効率が温存されております。
 InfiniVAN が新たに陸揚局を所有することにより、これらの問題の解決につながること期待されています。今般の決議に
おいても「高速なブロードバンドデータサービスやインターネットアクセスサービスでフィリピンに公益がもたらされ、新
たな陸揚局の選択肢が加わることで通信事業者間の競争が促進され、冗長性が増してフィリピン全体の通信ネットワークが
強靭化される」ことへの期待が、NTC から言及されております。


※5:IX
     Internet Exchange (Point)。インターネットサービスプロバイダーやデータセンター事業者などが、通信トラフィックや、その通
     信トラフィックのインターネット上の経路情報を交換するための相互接続点。


※6:PoP
     Point Of Presence。ユーザーの通信トラフィックが OTT のサーバーやインターネットに接続する際の、最寄りの接続点。
2.今後の構想

 2021 年 10 月 8 日に公表しました「フィリピン通信事業 説明資料」に示す今後のビジョンに沿って、事業を進めてま

いります。


OTT とパートナーシップを結び、OTT の所有する国際海底ケーブルを InfiniVAN の陸揚局に収容し、InfiniVAN の国内回
線と接続し、国内の CDN 注 7 を構築します。当社グループの差別化をはかるとともに、5G 時代の大容量高速通信を安定的
に実現する、フィリピン全体の通信ネットワークへの寄与を目指します。


 フィリピンは世界有数の OTT サービスの利用大国であり、今後の大きな経済成長も見込まれるため、OTT 各社は積極的
にフィリピン国内への進出を目指しております。
 当社グループは、「フィリピン全体のユーザーメリットの拡大を志向し、品質力や技術力を発揮できる日系通信事業者」
という強みを活かして、OTT とのパートナーシップの締結を目指しております。
 パートナーシップが締結されれば、まず InfiniVAN が陸揚局を建設・所有します。次いで OTT の所有する国際海底ケーブ
ルが同陸揚局に収容され、InfiniVAN が構築する国内中継回線、並びに OTT のコンテンツサーバー(フィリピン国内に設
置)が接続されます。同サーバーの近くには、他の通信事業者、ISP、CATV 事業者などが中立的に接続できる IX や PoP が
設置されます。
 さらなる展開としては、InfiniVAN の国内広域バックボーン回線注 8 を経由し、別の地域にも同様にコンテンツサーバー、
IX や PoP が設置されます。大容量トラフィックが地域内で折り返されるようになり、キャッシュ注 9 したデータの活用によ
る効率的なコンテンツ配信網、つまりフィリピン国内 CDN が実現します(下記図)。


図:フィリピン国内 CDN のイメージ
 国内 CDN は、OTT につながりやすい大容量・高速ネットワークで、当社グループの中長期な他社との差別化につながり
ます。OTT 関連のトラフィックの効率的な取り扱いを求める他の通信事業者、ISP、CATV 事業者などの中継回線が、各地
域の IX や PoP に接続しに集まってくる形態に、国内のネットワーク構造は進化していくと見込まれます。
 この国内 CDN 構想の実現により、フィリピントータルで見た、ネットワークコストの低減、通信品質の向上、高度な 5G
サービスの実用化などへの寄与が想定されます。当社グループの事業拡大だけではなく、フィリピンの国や地域の SDGs や
経済発展に、大いに資するものと考えております。


※7:CDN
     Content Delivery Network。Web サイト上のコンテンツを迅速にエンドユーザーに届けるための仕組み。



※8:国内広域バックボーン回線
     InfiniVAN では、当社グループの事業構想に則り、ルソン島地域、ミンダナオ島、パナイ島での光ファイバー回線網の敷設を進めて
     おります。また、これら地域をつなぐ国内海底ケーブルの建設を構想し、現在海洋調査を行っております。


※9:キャッシュ
     一度使ったデータをサーバーや端末などに一時的に保存しておき、次回以降の閲覧の速度アップに役立てる技術。



※10:Telco
     通信事業者。




3.スケジュール

 InfiniVAN による陸揚局の建設等のスケジュールは、少なくとも翌会計年度(2023 年 3 月期)以降ですが、現時点では未
定です。パートナーシップの進捗などを考慮しながら、検討を進めてまいります。
4.補足説明



(補足1)OTT の通信インフラ領域への進出の背景
~膨張を続ける自社サービス関連のトラフィックへの対応が、OTT にとっての大きな課題~


 動画サービスを例にあげます。通信機器の世界的大手であるエリクソン社のレポート※11 によれば、現在、全世界の携帯端
末上のデータトラフィックの 66%は、動画によるものです。更に、2026 年にはその割合が 76%に上昇する見通しです。フ
ィリピンの通信業界内でも、インターネットトラフィック全体の内の 60%以上が、動画よるものだと言われております。
 スマートフォンで撮影や視聴をする動画は、高解像度化が進行しています。サムスン社やシャープ社の 5G スマホには、
既に 8K 動画の撮影や視聴が可能なものがあり、「最高の画質の動画を撮りたい、視たい、投稿して視てもらいたい。」と
いうユーザーニーズが拡大しています。
 それに応えるために、世界的に有名な動画投稿サービスの中にも、8K 動画の配信が可能なものが複数出てきています。
8K 動画を視聴するには実測ダウンロード速度で 100mbps が推奨されており、SD(通常の DVD)画質と比べて、約 100 倍
の速度が必要となります。更に、ユーザーがライブ配信を行う場合は、高速なアップロード速度も、求められることになり
ます。
 この様な環境や方向性の中、OTT が快適な顧客体験を提供し続けるには、国や地域単位での通信インフラのたゆまない増
強が必須になります。逆に言えば、インターネットの速度や安定性が落ちると顧客が離れ、競合事業者の取り組み次第で
は、その地域のビジネスを一気に大きく失ってしまい、将来のシェアの回復が難しくなってしまいます。
 世界的な OTT にとっては、他の事業者任せではなく、OTT 自らがより直接的に通信インフラの整備に関わり、膨張を続
ける自社サービスへの需要(トラフィック)に対応するのが、合理的との判断になってきております。


※11:エリクソン社のレポート
      「Ericsson Mobility Report(2021 年 6 月)」
(補足2)昨今の、OTT と各国内通信事業者の関係接近
~両者のパートナーシップによる、通信インフラの構築案件が増加~


 先進国から途上国までの幅広い地域において、OTT と各国通信事業者とのパートナーシップによる、通信インフラの構築
案件が増加しております(下記表)。


表:過去1年程度以内に公表された、OTT と通信事業者のパートナーシップ案件の抜粋(当社調べ)

       公表年月          地域             その地域の通信事業者による、OTT への提供内容

     2021 年 10 月   アフリカ     OTT やクラウド事業者もサーバーを設置できる陸揚局

      2021 年 7 月   アフリカ     約 2,000km の長距離回線ならびに都市の通信回線建設

                            国内ネットワーク上のメッシュソリューションと、地中海を通る海底ケー
      2021 年 1 月   アフリカ
                            ブルのキャパシティ

     2020 年 12 月   ヨーロッパ    OTT の海底ケーブルが接続されるキャリア中立データセンター

     2020 年 10 月    アジア     国内 7,500 か所以上の Wi-Fi スポットの強化、信頼性の高いネットワーク



 各国内は、ライセンスを持つ通信事業者が通信インフラの建設や運用を担います。
 OTT は国際海底ケーブルの建設(基本、公表されている。単独またはコンソーシアム注 12。)と、さらには各国内の通信
インフラに対する財務的・技術的な支援を行っている模様です。OTT が所有する部分の国際海底ケーブルは、主に自社サー
ビスの為に利用していると考えられます。


※12:コンソーシアム
    互いに力を合わせて目的に達しようとする組織や人の集団。共同事業体。




                                                                    以 上




社名:株式会社アイ・ピー・エス
証券コード:4390

所在地:東京都中央区築地 4 丁目 1 番 1 号 東劇ビル 8 階

代表者:代表取締役 宮下 幸治


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