4295 フェイス 2021-06-23 16:00:00
株主提案に対する対応についての当社見解に関するお知らせ [pdf]
2021 年6月 23 日
各 位
会 社 名 株式会社フェイス
代 表 者 名 代表取締役社長 平 澤 創
(コード番号 4295 東証第一部)
執行役員
問 合 せ先 鈴木千佳代
最高財務責任者
T E L (03)5464-7633(代表)
株主提案に対する対応についての当社見解に関するお知らせ
当社は、当社の株主であるアールエムビー・ジャパン・オポチュニティーズ・ファンド,エル・ピー(以下
「RMB 社」といいます。)より、2021 年 6 月 25 日開催予定の当社第 29 期定時株主総会(以下「本株主総
会」といいます。)において、当社が保有する日本コロムビア株式会社(以下「日本コロムビア」といいま
す。)の普通株式の現物配当(株式分配型スピンオフ)の実施に関する株主提案(以下「本株主提案」と
いいます。)について、法令上の要件を満たしておらず、株主提案議案としては不適法であると判断した
ため、本株主総会の議題及び議案とはしない旨を 2021 年 5 月 18 日付でお知らせしておりました。
その後、2021 年 6 月 11 日付「当社株主による仮処分命令申立ての却下決定に関するお知らせ」に記
載のとおり、当社は、RMB 社より、2021 年 5 月 24 日付で、本株主総会の招集通知等に本株主提案の議
題並びに議案の要領及び提案理由に関する記載等を求める旨の株主提案権侵害排除請求仮処分命令
申立て(以下「本申立て」といいます。)を受けておりましたが、2021 年 6 月 7 日付で京都地方裁判所より
本申立てを却下する決定(以下「本却下決定」といいます。)を得ております。
この度、本却下決定の内容も踏まえ、下記のとおり、当社の見解を改めてご説明いたします。
記
1. 本却下決定を受けた当社の判断
RMB 社は、2021 年 6 月 10 日付プレスリリースにおいて、「京都地方裁判所は本提案の株主提案とし
ての適法性を認めました」などと上記の理由中の判断を殊更に強調し、当社の「取締役会の遵法精神お
よび同社のコーポレートガバナンス体制に根本的な瑕疵があることの証左」であるなどと主張しております。
しかしながら、2021 年 6 月 11 日付「当社株主による仮処分命令申立ての却下決定に関するお知らせ」
においてお知らせしたとおり、まずもって、RMB 社による本申立てに対しては、裁判所は、「却下」、すな
わち、本株主総会の招集通知等に本株主提案の議題並びに議案の要領及び提案理由に関する記載等
を命じないとの判断をしたものです。本却下決定において、本申立てに係る「被保全権利の存在は一応
認められるというべきである」との裁判所の判示があることは事実ですが、民事保全手続という仮の判断に
おける理由中の判断の一文脈に過ぎないことに加え、前述のとおり、本申立ては結論として却下されたた
め、当社には、当該理由中の判断の是正を求め民事保全手続内で不服申立てを行う機会がありません
でした。そして、本却下決定には、他に本株主提案が「株主総会決議により直ちに効力の生じるものでな
い」と判示していることとの関係をどのように理解するべきかなど、慎重な検討を要する点も多く存在しまし
た。このような状況を踏まえ、当社は、弁護士と慎重に協議のうえで、念のため、本株主提案を本株主総
会の議題及び議案としないと判断した当社の対応の適法性に関し改めて検証を行いましたが、取締役及
び監査役の全員が、当社の対応に違法性はないとの判断で一致しております。
当社としては、引き続き、当社の主張の正当性について理解を求めていく意向です。なお、当社は、本
株主総会における手続の適正、公正を客観的に担保するため、2021 年 6 月 17 日付で、京都地方裁判
所に対し株主総会検査役選任申立てを行っておりますので、併せてお知らせいたします。
2. 判断の理由
本株主提案が、法令上の要件を満たしておらず、株主提案議案として不適法であると判断した理由は、
2021 年 5 月 18 日付「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」に記載のとおりですが、
以下のとおり、敷衍してご説明いたします。
(1) 本株主提案は配当議案として法定の要件を満たさないこと
本株主提案は、当社が保有する日本コロムビアの株式について、いわゆる株式分配型スピンオフ
(以下「本スピンオフ」といいます。)を求める内容であると理解できます。
本株主提案は配当議案であるところ、会社法第 454 条第 1 項に基づき、剰余金の配当を株主総会
で決議するためには、①配当財産の種類及び帳簿価格の総額、②株主に対する配当財産の割当て
に関する事項、並びに③配当がその効力を生じる日(以下「効力発生日」といいます。)を定めなけれ
ばなりません。これは、配当が分配可能額の範囲内にあるか否かを判断する基準となる日であるため
(会社法第 461 条第 1 項)、配当議案の内容として、具体的かつ明確に定められなければならない不
可欠な要素であると考えられます。とりわけ、本件における日本コロムビア株式のように、時間による価
値の変動があり得る財産の現物配当においては、その価値(配当財産の帳簿価額)を算出する時点を
画する基準となる日という意味においても、効力発生日の定めは殊更に重要であると言えます。
しかしながら、RMB 社の 2021 年 4 月 27 日付「株主提案権行使書」に基づく本株主提案は、効力発
生日を「追って定めるものとする」とするのみで、効力発生日としての具体性及び明確性を明らかに欠
いており、法定の要件を満たしていません。このような不完全な配当議案が仮に可決されたとしても、株
主への具体的な剰余金配当請求権が発生する日も決まらず、当該議案に係る配当が分配可能額規
制の下で適法に実施できるかどうかも定まらず、適法な剰余金の配当の決議とはなり得ないものと考え
られます。
次に、本株主提案は、産業競争力強化法(以下「産競法」といいます。)第 33 条第 1 項に基づき、株
主に金銭分配請求権を与えない現物配当に係る株主総会決議要件を普通決議に緩和するための特
例(以下「本スピンオフ特例」といいます。)の適用を前提として、株主総会普通決議による承認を求め
るものですが、当社は、産競法に定める認定事業者(同法第 30 条第 1 項)には該当しておらず、特定
剰余金配当に関する認定計画(同法第 28 条第 1 項)も存在していません。したがって、本株主提案に
係る株主総会決議に本スピンオフ特例は適用されず、本株主提案は、法令上認められない決議を求
めるものと言わざるを得ません。
この点、本株主提案には、「産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を経済産業大臣より
受けること」(以下「計画認定条件」といいます。)、及び、「日本コロムビアの普通株式につき株式会社
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東京証券取引所(中略)の上場承認を得られること」が「配当の条件」とされております。本株主提案に
対する株主総会決議を前提として本スピンオフを実行しうるか否かは、産競法上の事業再編計画の認
定を受けることができるか、日本コロムビア株式について東証の上場承認を受けられるかといった不確
定要素に大きく左右されるものであり、RMB 社により事業再編計画や日本コロムビア株式の上場の詳
細が具体的に明らかにされていない以上、現時点では条件成就の蓋然性を判断することは不可能で
す。事業再編計画の記載事項は非常に多岐にわたり、生産性及び財務内容の健全性の向上を示す
数値目標など、経営目標や経営計画に属する事項の記載も求められています。そのため、計画の認
定を受けるにあたっては、業務執行者による計画内容の専門的な検討及び分析が不可欠です。このよ
うな事情から、本株主提案に付された条件の内容は、株主がその内容を最低限判断し得る程度の具
体性及び明確性すら欠いており、無効であると考えております。
さらに、計画認定条件については、次のような問題もあります。すなわち、仮に本株主提案が普通決
議を可決するに足る株主総会での賛成票は得たものの、特別決議を可決するに足る賛成票は得られ
なかった場合、株主総会後の事情によって、決議の可決否決が初めて確定することになりかねません。
そして、計画認定条件には、条件成就の期限が定められていないため、前述の配当の効力発生日の
具体的な定めがないことと相まって、条件成就の有無が半永久的に確定しないという不安定な状況を
生じさせかねないものです。他方、仮に条件が成就した場合には、それがどれだけ遠い将来の時点で
あっても、その時点の当社及び当社の株主を、本株主総会の意思が拘束することになりかねません。こ
のように、計画認定条件が付された本株主提案は、配当の効力発生日の具体的な定めがないことも勘
案すれば、本株主総会における決議の法的効力及び当該決議を前提とする法律関係の安定性を害
するものとして、許容されないものと考えられます。
(2) 本株主提案は、当社取締役会に株主総会への付議を義務付けられる内容でないこと
本株主提案は、本スピンオフ特例の適用を前提とする現物配当議案として提案されています。しか
しながら、形式こそ現物配当議案ですが、その実質は、日本コロムビアをフェイス・グループから分離さ
せるとともに、その株式を新たに上場させるという事業再編の実施を求める提案に他なりません。そして、
このような事業再編は、取締役会による高度な経営判断に基づく意思決定及び当該決定に基づく業
務執行がなければ実現がおよそ不可能なものです。
すなわち、当社が、本スピンオフ特例の適用を受けて本スピンオフを実現するためには、事前に取
引に関する多面的な検討を行ったうえで、実施のための手続を順次経る必要がありますが、その準備
と実行のためには、相当の長期間を要することが想定されます。また、スピンオフには、実行会社にお
ける組織規模の縮小や経営基盤の不安定化等の将来的なリスクも大きく、分離される会社とのシナジ
ーが消失するおそれがある等の潜在的なデメリットも存在します。そのため、当社が株式分配型スピン
オフを行うには、前述のような当社及び当社の株主の皆様に生じうる影響を慎重に検討したうえで、実
行の是非を判断する必要があります(なお、当社は本スピンオフの実行に反対しており、その理由は、
2021 年 5 月 18 日付「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」に記載のとおりです。)。
このように、本スピンオフは、高度な経営判断に基づく意思決定と専門的な業務執行が要求される「事
業再編」であり、証券会社、監査法人、法律事務所、証券取引所、財務局、保管振替機構等の関係者
及び関係機関との綿密な連携を前提として、当社取締役会における各種リスクの検討分析に基づく意
思決定、そして実現に向けた業務執行者による周到な準備がなければ、実行はおよそ不可能です。そ
して、事業再編計画の作成及び申請についても、業務執行者による内容の専門的な検討及び分析を
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必要とする点は、前述のとおりであり、日本コロムビア株式の上場の準備及び申請についても同様のこ
とが言えます。これら当社取締役会の経営判断に基づく意思決定及びそれに基づく業務執行がなけ
れば、本株主提案に付された前述の条件の成就の余地はないという意味で、本株主提案は、配当議
案に付された「条件」の形式をとりながら、実質的には、(その具体的内容は明らかではないにせよ)当
該条件の内容である事業再編計画の作成及び申請並びに日本コロムビア株式の上場の準備及び申
請をも、直接的に当社に求める株主提案であると理解すべきと考えられます。
ところで、会社法第 303 条及び第 305 条に基づき株主が提案しうる議題及び議案は、株主総会の権
限事項に限られ、取締役会の権限事項である業務執行の決定を求める株主提案は認められないと考
えられます(会社法第 295 条第 2 項、第 305 条第 6 項)。この点、取締役会設置会社において会社法
が予定する株主総会と取締役会との権限分配秩序の下で、株主が業務執行の決定に属する事項を実
現するためには、①株主総会の取締役選解任の権限を通じて株主総会の意思を取締役会に反映させ
るか、②株主総会の権限事項である定款変更を提案し、業務執行の決定に属する内容を定款に定め
ることを通じて取締役会にその遵守を求める方法が考えられます。しかしながら、前述のとおり、本株主
提案は、その付された条件とともに全体を合理的に解釈すれば、業務執行の決定に属する事項(事業
再編計画の作成及び申請並びに日本コロムビア株式の上場の準備及び申請)を不可欠の要素とする
事業再編の実施を直接的に求めるものであるにもかかわらず、上記①又は②のいずれの方法にもよっ
ておらず、会社法が予定する権限分配秩序に整合しないものと言わざるをえません。加えて、本株主
提案が株主総会で可決されたとしても、前述のとおり、本株主提案に係る本スピンオフの具体的な内
容がおよそ明らかではないため、会社に対し、本株主提案に係る議案に付された条件の成就に向けた
行為を法的に義務付ける効果を有するものとは解されません。そうであれば、このような議案は、性質
上、会社側の発議によってのみ株主総会に付議されることが適切であるというべきです。
以上から、当社は、本株主提案に係る議案の内容は、会社側の発議によってのみ株主総会に付議
されることが適切であり、本株主提案に係る議題及び議案を会社として株主総会に付議する法的義務
を負わないと解するのが妥当であると考えております(なお、いずれにしても本株主提案は配当議案と
して法定の要件を満たさないため、当社がかかる法的義務を負わないことは、上記(1)に述べたとおりで
す。)。かかる考え方に基づき、当社は、2021 年 5 月 18 日付「株主提案に対する当社取締役会意見に
関するお知らせ」に記載のとおり、本株主提案を「経営上のご提言」として受け止めております。
3. 今後の対応
当社としては、RMB 社からの経営上のご提言は貴重なご意見と受け止めつつ、本株主総会において
会社提案に係る議案につき株主の皆様のご賛同を得て、フェイス・グループにおける音楽業界の変革期
に対応する創造力を一層強化し、フェイス・グループ全体の更なる企業価値向上に努めていきたい所存
ですので、今後より一層のご理解とご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
以 上
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