3863 日本紙 2021-05-14 15:10:00
日本製紙グループ 2030ビジョン及び中期経営計画2025を策定 [pdf]
2021 年 5 月 14 日
各 位
会社名 日本製紙株式会社
代表者名 代表取締役社長 野沢 徹
(コード番号 3863、東証 第1部)
問い合わせ先 経営企画部長 上野 隆
(電話 03-6665-1002)
日本製紙グループ 2030 ビジョン及び中期経営計画 2025 を策定
日本製紙株式会社(本社:東京都千代田区、社長:野沢 徹)は、この度、2030 年に当社が目指
す姿及び達成に向けた経営課題を明らかにしたガイドラインである「2030 ビション」を策定しました
のでお知らせいたします。
また、2030 ビジョン実現に向けた前半の 5 年間に実行する計画を「中期経営計画 2025(2021~
2025 年度)」と位置付け、「事業構造転換の加速」をテーマに掲げ、取り組んでまいります。
■2030 ビジョン・中期経営計画 2025 について
当社グループが 2030 年に目指す姿は、『木とともに未来を拓く総合バイオマス企業』として「安定
した利益を生み出す複数の事業で構成され、再生可能な木質資源を多様な技術・ノウハウによって
最大活用し、循環型社会の形成に貢献する製品を幅広く提供することで利益の拡大につなげ、豊
かな暮らしと文化の発展を実現する企業グループ」です。
2030 ビジョンと中期経営計画 2025 の位置づけ
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サステナビリティ経営の推進
2030 ビジョンでは、社会・環境の持続可能性と企業の成長をともに追求するサステナビリティ経
営を推進していきます。そのための起点は、当社グループの社会的存在意義を表している企業グ
ループ理念です。当社は、この理念の「目指す企業像」に掲げる 4 要件を満たすため、社会的課題
の解決にかかわる活動テーマを抽出し、当社の重要課題として位置付けました。これらに取り組む
ことは、2030 年に向けて持続可能な社会の構築を目指す SDGs の達成に貢献することになります。
2030 ビジョン基本方針と目標
◆基本方針 『成長事業への経営資源のシフト』
『CO2 削減、環境課題等の社会情勢激変への対応』
◆目標 「売上高 1兆 3,000 億円」
・生活関連事業 50%以上(新規事業 650 億円を含む)
・海外売上高比率 30%以上
「生活関連事業の売上高営業利益率 7%以上」
「ROE 8.0%以上」
「GHG 排出量(2013 年度比) 45%削減」
成長分野の事業規模拡大と木質資源をベースとした新製品の開発を進め、需要減退の継続が
予測される洋紙事業のリソースを新しい分野に転換していくとともに、フレキシブルな人材再配置を
進めていきます。さらに、2050 年カーボンニュートラルの実現に向け、非化石燃料の混焼率拡大に
加えて新たなバイオマス燃料の開発を進め、脱石炭を軸としたエネルギー構成の見直しを進めてい
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きます。また、当社グループは森林価値の最大化と木質資源を利用した製品の拡大によって、事業
基盤の強化とともにカーボンニュートラル社会の構築に貢献します。育種・増殖技術の活用によっ
て森林の生産性向上を図ることで 2030 年までに海外植林地での「CO2 固定効率の 30%向上」を目
指し、生物多様性の保全や水資源の確保等による公益的機能の発揮、国内社有林の活用を通じ
た林業の活性化にも取り組んでいきます。
総合バイオマス企業としての事業展開
当社グループは 3 つの循環、『持続可能な森林資源の循環』、『技術力で多種多様に利用する木
質資源の循環』、『積極的な製品リサイクル』を軸に、木質資源の特性を活かしたそれぞれの循環
を強化させることによって、循環型社会構築への寄与と事業成長の両立を実現していきます。
持続可能な森林資源の循環
当社は国内外に保有している約 17 万 ha の植林地や社有林を通じた森林価値の最大化を追求
します。ブラジル・アムセル社の植林地をフィールドとして独自の育種・増殖技術を開発しました。ゲ
ノム情報を利用した選抜育種や挿し木技術を活用した苗木の増殖により、アムセル社の植林地の
生産性は大きく向上しています。この技術を他の森林にも展開することで単位面積当たりの CO2 固
定量の増大を図り、森林経営の生産性を向上させます。
技術力で多種多様に利用する木質資源の循環
木質資源を利用した様々な製品を新たに開発し、社会全体でより多くの CO2 を固定することも進
めます。これまでのパルプ・紙製品を中心とした活用に加え、当社技術力によって CNF「セレンピア
🄬
」・機能性素材「ミネルパ 🄬」等のバイオマス素材の拡販および新たなバイオマス燃料の開発にも取
り組むことで、事業成長を実現するとともに木質資源を通じた炭素の循環を図ります。同時に日本
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製紙クレシアの長持ち製品や軽量化が可能となる CNF 強化樹脂によって輸送時の CO2 発生量抑
制にも繋げます。
積極的な製品リサイクル
木質資源をベースとした新製品をはじめ、これまで再資源化が困難であった未利用古紙の活用
にも積極的に取り組みます。まず、普及が進んでいる紙カップ・紙パック製品の回収スキームを構
築し、さらに、ワンウェイプラスチックに代わるバリア性の紙素材にも展開し、環境負荷の極小化を
進めます。
中期経営計画 2025(2021 年度~2025 年度)
2030 ビジョンの前半 5 年間として位置付けた中期経営計画 2025 のテーマは『事業構造転換の
加速』です。事業構造転換に不可欠な新規事業・新素材の早期戦力化および需要動向を見据えた
洋紙事業の生産体制見極めには 5 年という期間が必要と考え、同計画の実行期間をこれまでの 3
年間から 5 年間に変更しました。
中期経営計画 2025 における今後 5 年間は、当社グループを成長軌道に乗せるための不退転の
5 年間であり、成長分野の各事業においてスピード感を最重要視し、需要動向を見極めて適切な投
資を進め、さらなる事業構造転換に邁進いたします。
中期経営計画2025 テーマおよび目標
◆テーマ 『事業構造転換の加速』
◆目標 「売上高 1 兆 1,000 億円」
「営業利益 早期に 400 億円以上」
「EBITDA 安定的に 1,000 億円」
「D/E レシオ 1.5 倍台」
「ROE 5.0%以上」
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事業構造転換の加速には、安定的に成長投資へ資金を振り向けるため EBITDA 1,000 億円が必
要と考えており、そのために営業利益 400 億円以上を早期に達成します。
また、洋紙事業の各生産拠点に有するリソースを最大活用することで、投資効率の向上を図ると
ともに当社グループ従業員の技術・ノウハウも継承していきます。
パッケージ
紙パック事業においては、四国化工機株式会社との資本業務提携を活かした国産新型充填機
や新製品開発を加速させます。新型コロナウイルスによる社会変容によって高まった「高衛生」「多
機能」ニーズに対して、口栓付き多機能紙容器無菌充填システム「NSATOM 🄬」や学校給食用ストロ
ーレス紙パック「School POP 🄬」等の拡販により対応していきます。
海外事業では、洋紙事業の収益悪化への対応が急務である豪州の Opal において、シナジー効
果の発現とパッケージ事業への更なるシフトを進め、中期経営計画 2025 期間の前半に安定的な収
益基盤の確立を目指します。また、北米の日本ダイナウェーブパッケージングにおいては、ドライパ
ルプマシン新設や抄紙機ドライエンド工程改造等の投資による KP 拡販体制の効果を最大限発揮し
利益拡大を図ります。欧州の十條サーマルを始めとする他の海外拠点においても、環境配慮型製
品の開発・市場投入や当社グループとの連携強化により、事業の拡大・安定化を加速させます。
家庭紙・ヘルスケア
家庭紙・ヘルスケア事業では、2021 年 4 月よりトイレットロールの全製品を「長持ちロール」へシフ
トしました。省スペース化や持ち運びの便利さだけではなく、包装フィルムや芯のゴミ減少や輸送効
率向上による CO2 削減にも寄与します。お客さまのより快適な生活を実現するための製品を数多く
送り出すとともに、さらなるコスト競争力強化に努め、新たなライフスタイルを牽引する高付加価値、
高収益品へのシフトを進め企業ブランドの向上を目指します。
ケミカル
ケミカル事業では、自動車部材の軽量化ニーズや包装材料のモノマテリアル化に対応した機能性
コーティング樹脂の増産対策工事が 2021 年 9 月に完了し、今後の需要増加に対応していきます。
また、リチウムイオン電池や食品用途等で利用される高機能性セルロース(CMC)の設備増強も
2021 年 12 月に完了予定であり、工事効果の早期発現に向け、さらに幅広い用途で海外市場も視
野に入れて、拡販を進めていきます。需要動向を見据えたタイムリーな投資の継続と研究開発リソ
ースの拡充により、お客様のニーズに的確に応える体制も確立します。
エネルギー・木材
2023 年 1 月に国内最大級(75MW)のバイオマス専焼発電である勇払エネルギーセンターが稼働
予定です。国の電力政策を注視しながら、カーボンニュートラル社会の構築に向けたバイオマス燃
料の利用拡大を進めると共に、当社グループの持つ国産材集荷網や海外のバイオマス燃料調達
機能をフル活用した燃料供給ビジネスの拡大も図ります。
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新素材・新規事業
新素材・新規事業においては、CNF「セレンピア 🄬」の量産化に向けた製造技術を確立し、事業化
に目途を付けます。また、セルロースを起点とした機能性素材「ミネルパ 🄬」、さらにはバイオコンポ
ジット等の新たな製品も幅広く世の中に提供していきます。
そのために、これら新素材の事業化戦略を担う「バイオマスマテリアル事業推進本部」を新たに
設置し、研究開発本部との連携や既存事業の人材再配置を含めた開発・製造・販売体制の強化を
進めます。加えて、事業化に向けた投資計画の立案のみならず、スピードアップに不可欠な共同開
発企業との外部連携や行政・大学等の研究機関を交えた枠組み作りも積極的に進めます。
紙・板紙
紙・板紙事業は、少子化やデジタル化の進展に伴う構造的な需要減少が続く塗工紙の需要動向
を見据え、2022 年 5 月末をもって石巻工場 N6 マシンの停機を決定致しました。2023 年度後半を目
途に家庭紙事業への展開を図ることを前提に、同工場の事業構造転換を進めます。
一方では、紙の持つリサイクル性や生分解性という特長を生かして新たなニーズを発掘し、既存
設備やリソースを最大限活用することで環境に優しく豊かな暮らしに貢献する製品を創り出していき
ます。紙製バリア素材「シールドプラス 🄬」や、紙だけでパッケージができるヒートシール紙「ラミナ 🄬」
に加え、生分解性樹脂とのハイブリッド型紙容器や発泡スチロールに代わる段ボールケース等の
開発を進め、「紙でできることは紙で。」をテーマに様々な用途への展開を図ります。紙化を進める
それらの新製品を、既存商流の活用やお客様と直接的にコンタクトするプロモーション活動の展開
によって、より多くのお客様へ新たな価値を速やかに届ける体制を整えます。
その他の重要課題として、国内の人口減少や少子高齢化をはじめとした人材を取り巻く環境変化
があります。「事業構造転換に即した人材配置」に加えて、働き甲斐や働きやすさ、女性活躍を含め
たダイバーシティを推進し「従業員と企業の双方が成長していける関係の構築」、「定年延長を視野
に入れた高年齢者雇用への対応」、「無事故・無災害の安全な職場づくり」など、企業の社会的責任
を果たすべく、2021 年度中にこれらの課題への対策を取りまとめ、翌年度以降に実行していきます。
2030 ビジョンの目標達成には、中期経営計画 2025 期間中の成長分野伸長に加え、新素材・新
製品開発の促進や的確な顧客ニーズの取り込みが不可欠です。投資活動は財務規律も十分に考
慮して進めていきますが、事業構造転換の加速に必要な投資は機を逃さず行っていきます。また、
資金のみならず当社グループの人材・資産を含む各リソースを成長分野に振り向けることで、グル
ープ全体の事業価値最大化を目指した施策を実行していきます。
当社グループは、ステークホルダーへの多様な価値提供を実現し永続的に社会から必要とされ
る企業を目指し、グループの総合力を結集して各施策の速やかな実行により持続可能な社会の構
築に貢献していきます。
以 上
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