3254 プレサンス 2021-01-25 16:00:00
東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出について [pdf]

                                             2021 年1月 25 日

 各 位
                  会   社   名   株式会社プレサンスコーポレーション
                  住       所 大阪府大阪市中央区城見一丁目2番 27 号
                  代表者名        代表取締役社長            土井    豊
                                 (コード番号:3254 東証第一部)
                              執行役員管理本部
                  問合わせ先                         市川 京助
                              副本部長兼経理部長
                  電話番号        06-4793-1650




        東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出について


 当社は、2020 年7月8日提出の「改善報告書」について、有価証券上場規程第 503 条第
1項の規定に基づき、改善措置の実施状況及び運用状況を記載した「改善状況報告書」を、
本日、添付のとおり提出いたしましたので、お知らせいたします。


 添付書類: 改善状況報告書


                                                      以上
                      改善状況報告書
                                               2021 年1月 25 日


株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 清田 瞭 殿
                                株式会社プレサンスコーポレーション
                                代表取締役社長 土井 豊




2020 年7月8日提出の改善報告書について、有価証券上場規程第 503 条第1項の規定に基づき、改善措置
の実施状況及び運用状況を記載した改善状況報告書をここに提出いたします。
                                         目 次


1. 改善報告書の提出経緯 ................................................................ 2
 (1) 事案の経緯 ......................................................................... 2
   ① 明浄学院が保有する土地に係る取引の開始から、前社長及び元従業員の逮捕までの経緯及び
      その直後の当社の対応 ............................................................. 2
   ② 当社による調査の体制及び範囲 ..................................................... 4
   ③ 委員会からの調査報告書の受領 ..................................................... 5
 (2) 当社における原因分析等 ............................................................. 6
   ① 前社長からティー・ワイエフへの 18 億円の貸付について .............................. 6
   ② 当社が拠出した 21 億円の手付金について ............................................ 6
   A. 前社長への過度な権限集中 ......................................................... 6
   B. 各取締役や執行役員間での、業務執行に対する相互の牽制・チェック機能の不全 ......... 7
   C. 土地仕入に係るリスクに対する認識の甘さ ........................................... 7
   D. 上記を背景とした内部統制の整備・運用不足 ......................................... 7
   E. 監査体制の脆弱さ ................................................................. 8
2. 改善措置並びにその実施状況及び運用状況等 ............................................. 8
 (1) 取締役会を含む重要な会議体のあり方及び意思決定方法の見直し ......................... 8
   ① 取締役会の決議事項、報告事項の明確化、開催頻度等の運営方法の変更(取締役による相互牽
      制体制の強化) ................................................................... 8
   ② 重要な会議体(経営会議や業務執行に関係する各種委員会など、業務執行取締役や執行役員を
     中心とする合議による意思決定の場等)の新設 ....................................... 9
 (2) 社外取締役の職務執行の実効性を確保するための環境整備 ............................. 10
   ① 監査等委員会をサポートする事務局機能の拡充 ...................................... 10
   ② 代表取締役に対する監督強化 ...................................................... 11
 (3) 利益相反取引に関するルールの設計と教育 ............................................ 12
   ① 利益相反取引の定義とルールの整備 ................................................ 12
 (4) 土地仕入プロセスにおける統制活動の再設計 .......................................... 13
 (5) 内部監査の見直し .................................................................. 14
   ① 内部監査体制の強化 .............................................................. 14
   ② 監査等委員との連携強化、及び業務監査の高度化 .................................... 14
 (6) 前社長との関係の見直し ............................................................ 16
 (7) 改善措置の実施スケジュール ........................................................ 17
3. 改善措置の実施状況及び運用状況に対する上場会社の評価 ................................ 19




                                           1
1. 改善報告書の提出経緯
  (1) 事案の経緯
     2019 年 12 月に学校法人明浄学院(以下「明浄学院」といいます。)の土地売買代金に関する業
    務上横領事件について、当社の前代表取締役社長(以下「前社長」といいます。
                                       )及び元従業員
    が、明浄学院の元理事長他と共謀した疑いで大阪地検特捜部に逮捕、起訴されました(以下「本横
    領事件」といいます。)。本横領事件の経緯は以下の通りです。
     なお、以下に記載の経緯には、当社が当事者として把握している事実のほか、報道及び 2019 年
    12 月 30 日付で提出された明浄学院の第三者委員会による調査報告書(以下「報道等」といいま
    す。)により公表されている内容を含みます。
    ① 明浄学院が保有する土地に係る取引の開始から、前社長及び元従業員の逮捕までの経緯及びそ
       の直後の当社の対応
              年月日                        概要

        2015 年8月頃          元従業員とは別の仕入担当者が、明浄学院が保有する土地の情
                           報を得て仕入を検討したが、条件が折り合わず、売買契約締結
                           には至らなかった。

        2015 年8月頃以降        元従業員が新たに担当となり、明浄学院との取引の検討が再開
        12 月頃までの期間         される。

        (正確な年月は不明)

        2016 年 12 月 20 日   当社と明浄学院との間で、明浄学院が保有する土地の売買に係
                           る「協定書」を締結。
                           「協定書」には、明浄学院が、本件土地上に建てられている明
                           浄学院高等学校の校舎を解体し更地にした上で、当社に本件土
                           地を売却することを、当社と明浄学院との間で合意したこと及
                           び売却についての諸条件が記載されている。


        2017 年7月6日         明浄学院と株式会社ピア・グレース(以下「ピア・グレース」
                           といいます。)との間で、明浄学院が保有する土地(以下「本件
                           土地」といいます。)の売買契約を締結。

                           ピア・グレースと当社との間で、本件土地の売買契約を締結。
                           当社からピア・グレースに対し、本契約に係る手付金 21 億 26
                           百万円を支払う。(※1)

        2019 年1月 23 日      明浄学院高等学校の校舎建替工事は、当初 2018 年8月の着工予
                           定だったが、元従業員から着工及び竣工が大幅に遅れるとの報
                           告が前社長にあり、その後、開発事業本部、建築事業本部内で
                           も情報共有され、本件土地の引渡しが大幅に遅れるという認識
                           が社内で共有される。


        2019 年7月 20 日      明浄学院が受領した手付金 21 億円が所在不明となっているこ
                           とが報道される。

        2019 年 10 月 29 日   大阪地検特捜部が明浄学院に捜索を実施

                                  2
     年月日                           概要

2019 年 10 月 30 日   大阪地検特捜部が当社に捜索を実施

2019 年 11 月1日      副社長(当時。現社長)の土井豊(以下「土井」といいます。)
                   が、前社長と本件土地仕入の担当者であった元従業員にヒアリ
                   ングを実施。
                   前社長及び元従業員は、明浄学院にて手付金 21 億円が所在不明
                   となっていることへの関与を否定(※2)

2019 年 12 月5日      元従業員逮捕

2019 年 12 月6日      土井が、前社長に対して二度目のヒアリングを実施。
                   前社長は、明浄学院にて手付金 21 億円が所在不明となっている
                   ことへの関与を否定(※2)

2019 年 12 月 16 日   前社長逮捕

2019 年 12 月 17 日   取締役会にて、土井を代表取締役副社長に選定。

2019 年 12 月 23 日   前社長辞任。
                   取締役会にて、土井を代表取締役社長に選定。

                   当社におけるガバナンス上の問題点についての調査・検証を行
                   うため、外部経営改革委員会(以下「委員会」といいます。
                                             )を
                   設置。

2020 年3月 31 日      委員会による調査の概要、調査によって判明した当社のガバナ
                   ンス上の問題点について記載した調査報告書(以下「調査報告
                   書」といいます。)を受領。

2020 年4月7日         2017 年7月6日付で締結された土地売買契約を当社、明浄学
                   院、ピア・グレースの三者間で合意解除。

2020 年4月9日         土地売買契約の合意解除に伴い、当社がピア・グレースに支払
                   った手付金 21 億 26 百万円のうち、21 億円が明浄学院から返金
                   される。

※1 この手付金 21 億円は、民法第 557 条に定める解約手付の性質を有するものでなく、将来
   当社がピア・グレースに売買代金の残代金を支払う際に充当することを企図したもので
   あり、締結した売買契約書にもその旨明記しております。
   「協定書」では、明浄学院高等学校が立地する土地の全部を売買の対象としておりまし
   たが、売買契約書では、売買の対象をその約半分に変更し、残る土地に明浄学院高等学
   校の校舎を建て替えた上で引渡しを行うよう定められました。
   なお、当社と明浄学院との直接取引としなかった理由は以下の通りです。
   ・当社が支払う手付金が高額となるため、保全のために手付金に対して本件土地に抵当
   権を設定することを予定しておりました。
    ・本件土地の引渡し期日は 2020 年6月 30 日で、売買契約締結日以降、長期間を要する
    中、当社が抵当権者として本件土地の登記事項証明書上に現れることは、当社が存続中
                            3
     の学校そのものを取得したかのようなあらぬ誤解を生む可能性があるため、元従業員の
     提案で、従来から接触があったピア・グレースを介在させ、ピア・グレースが明浄学院
     から本件土地を取得した後、ピア・グレースから当社が取得するという取引といたしま
     した。
  ※2 前社長からは、以下の内容を確認しております。
    ・明浄学院は、2017 年7月6日の当社との土地売買契約締結前に、既存の校舎を解体し
    更地にする工事代金及び別の場所に新しい校舎を建設する工事代金として 18 億円を必
    要としていたこと。
    ・当初は当社からの貸付を模索したが、外部の企業・法人に対して貸付を実施すること
    はできないため、前社長個人の貸付として、大阪市内に本社を置く不動産会社の株式会
    社ティー・ワイエフ(以下「ティー・ワイエフ」といいます。なお、当時、ピア・グレ
    ースとティー・ワイエフは、同じ人物が代表取締役を務めていました。)に 18 億円の振
    り込みを行ったこと。
    ・前社長は、ティー・ワイエフが、前社長から借り入れた資金をもって、明浄学院に貸
    付を行う前提であり、明浄学院元理事長個人への貸付を行うという認識がなかったこ
    と。
    ・明浄学院は、土地売買代金の一部で 18 億円をティー・ワイエフへ返済し、ティー・
    ワイエフは明浄学院からの返済金を原資として前社長へ返済する予定であり、前社長と
    しては、当社からピア・グレースを介して明浄学院に支払われる手付金の一部を原資と
    して、明浄学院からティー・ワイエフを通して返済されるものと想定していたこと。
    ・前社長は、貸し付けた 18 億円の返金を既に受けていること。(返金があったことの確
    認のみで、その詳細については確認ができておりません。)


② 当社による調査の体制及び範囲
   前社長及び元従業員の逮捕を受け、当社は、外部専門家を起用の上、当社におけるガバナン
  ス上の問題点についての調査・検証を行う必要があると判断し、外部経営改革委員会(以下
  「委員会」といいます。
            )を、2019 年 12 月 23 日に設置いたしました。委員会にて行った調
  査・検証(以下「本件調査・検証」といいます。
                       )の概要は以下の通りです。
  a. 本件調査・検証の期間
    2019 年 12 月 23 日から 2020 年3月 31 日まで
  b. 本件調査・検証の体制
    委員会は以下の3名で構成されております。
    委員長 松山 遙 (日比谷パーク法律事務所 弁護士)
     委員 木目田 裕 (西村あさひ法律事務所 弁護士)
     委員 平尾 覚 (西村あさひ法律事務所 弁護士)
    委員及びその所属する法律事務所は、本件調査・検証以前に当社から法律事務の委任を
    受けたことがなく、当社との間に利害関係はありません。
    委員会は、本件調査・検証を実施するに当たり、日比谷パーク法律事務所に所属する弁
    護士1名及び西村あさひ法律事務所に所属する弁護士7名を調査補助者として任命しま


                              4
    した。また、委員会は、フォレンジック調査を行うため、フォレンジックベンダーを調
    査補助者として起用しました。
  c. 本件調査・検証の方法 委員会により、当社取締役会等の会議体の議事録、当社の各種
    社内規程類、本件土地の売買取引に関係する契約書や稟議書等の関係資料の精査、関係
    者(当社及び当社子会社の役職員)27 名が保有するメールデータ等のデジタル・フォレ
    ンジック調査、関係者(当社及び当社子会社の役職員及び元役員)42 名に対するヒアリ
    ング、当社及び当社子会社役職員 689 名に対するアンケートによる調査、委員会設置時
    点(2019 年 12 月 23 日)における当社取締役・執行役員についての反社会的勢力等に関
    する風評情報の有無に関する調査・検証を実施しました。
  d. 本件調査・検証の限界 本横領事件が刑事事件として捜査されているため、本件土地の
    売買取引(以下「本件取引」といいます。)に係る多数の証拠資料が当社から押収されて
    います。委員会は、大阪地方検察庁から証拠品の一部の仮還付を受け、確認を行いまし
    たが、全ての証拠品を確認することはできておりません。
    また、委員会は、本件調査・検証期間中、勾留状態にあった前社長に対し、接見禁止命
    令の一部解除を受けた上で、複数回にわたり接見を行い、ヒアリングを実施しております
    が、1回当たりの接見時間は 20 分に制限されており、資料等を提示した上でのヒアリン
    グを実施することはできず、十分な事実確認には至っておりません。 元従業員について
    は、保釈後に元従業員の刑事事件の弁護人を通じてヒアリングを打診したものの、ヒアリ
    ングを実施することはできず、委員会が送付した質問書に対する簡易な回答を得るにとど
    まっております。
    こうした調査・検証の限界がある中、当社は、当社の内部管理体制・ガバナンス体制を
    検証するために実施できた手続きの範囲で、当社のガバナンス上の問題点が指摘された調
    査報告書を受領することとなりました。
   以上のことから、外部経営改革委員会および調査補助者による調査・検証は、独立性および
  専門性に問題ないものと考えております。


③ 委員会からの調査報告書の受領
   当社は、2020 年3月 31 日に、本件調査・検証の結果を記載した調査報告書を受領いたしま
  した。なお、調査報告書に記載された当社の問題点に係る評価について、当社として異議はあ
  りません。
   調査報告書に記載があった当社ガバナンス上の問題点の要点は以下の通りと当社は考えてお
  ります。詳しくは、2020 年3月 31 日付で公表しております「外部経営改革委員会からの調査
  報告書の受領について」をご確認お願いいたします。
   ・前社長が個別案件を直接把握し、判断を行う業務遂行体制
   ・相互牽制・チェック体制の不備
   ・極端な縦割り体制と競争を助長する風土
   ・経営課題を議論する場の不存在
   ・取締役会等の形骸化
   ・監査体制の脆弱さ
   ・社内ルールの不備

                      5
     ・取締役のリスク感度の低さ
     ・利益相反・競業取引に関するルールの不備


(2) 当社における原因分析等
   当社は、調査報告書を踏まえ、本事案の内容及び関係者の関与状況は以下の通りであると認識し
  ております。
  ① 前社長からティー・ワイエフへの 18 億円の貸付について
     上記の通り、前社長は、明浄学院が当社との土地売買契約締結の前に、校舎の建て替え等を
    行うための資金として 18 億円を必要としていることを認識しておりました。前社長は、ティ
    ー・ワイエフに 2016 年3月 22 日及び同年4月 25 日の2度に分けて計 18 億円を振り込み、個
    人的に貸付を行いました。前社長へのヒアリングによると、売買契約締結前の取引先に対し、
    当社が貸付を行うことが可能かを具体的な案件指定のない一般論として当時の管理本部長に確
    認したところ、不可能であるとの回答であったためとのことです。また、前社長は、ティー・
    ワイエフが、前社長から借り入れた資金をもって、明浄学院に貸付を行うという認識だったと
    のことです。
  ② 当社が拠出した 21 億円の手付金について
     当社は、2017 年7月6日に約 21 億円の手付金を拠出しました。その際、社内では稟議決裁
    を行いましたが、前社長や元従業員から、前社長が個人的に明浄学院側に 18 億円を貸し付け
    ているという事実の報告はありませんでした。
     報道等によると、当社が 2017 年7月6日に拠出した約 21 億円の手付金は、その日のうち
    に、ピア・グレースから明浄学院を経由して明浄学院の元理事長に渡り、その後、株式会社サ
    ン企画(以下「サン企画」といいます。
                     )等を経由してティー・ワイエフに送金され、うち 18
    億円がティー・ワイエフから前社長に送金されたとされています。
     なお、18 億円の返金があったという事実を当社も前社長へのヒアリングによって確認して
     おりますが、その日付や返金元等の具体的な内容までは確認ができておりません。


  上記の通り、当社では、前社長が個人として取引先に貸付を行っていた事実を、前社長が逮捕さ
  れる直前まで把握できておりませんでした。この前社長の行為は、当社が 21 億円という高額の手
  付金を支払おうとする相手方が、前社長自身の債務者であり、前社長自身と当社の利益相反を内在
  する関係にさせるものでした。当社は、このような事実を前社長から報告されず、把握しないまま
  に稟議決裁を終えて高額の手付金を支払ったもので、適正な牽制をする機会を失ったことは非常に
  問題であったと考えております。
  当社は、調査報告書の内容を踏まえ、認識いたしました体制不備の原因についての検討の結果、
  当社の業務の適正を確保するために必要な体制上の主な問題点は、以下の5点に集約されると考
  えております。
  A. 前社長への過度な権限集中
     当社では、前社長個人の能力に依存した業務遂行体制となっておりました。例えば仕入業務
    においては、仕入担当者が当該物件仕入の可否について直接前社長に内諾を取った後に稟議決
    裁を行うことが創業以来、常態化しており、適正な牽制が働き難い状況が生じておりました。



                          6
   本件土地の売買契約締結においても、他の一般的な土地売買取引と比べると、手付金の金額
  が約 21 億円と高額な上に一括で支払わなければならない、土地の引渡し期日が約3年後と長
  期であるといった特徴が見られましたが、稟議回覧時には既に前社長の内諾が得られていたこ
  ともあり、各稟議決裁者は、前社長の内諾があることを確認するにとどまり、明浄学院側から
  校舎建替に伴い発生する費用の具体的な見積や支出スケジュールを取り寄せるなどのより入念
  な調査や、当社のリスクを低減するために関係者間の協議を行うことはありませんでした。
  こうした体制は、仕入業務だけでなく、想定販売価格の設定、さらには当社の経営方針の決
  定等においても同様でした。全社的に前社長へ依存し、前社長に過度な権限集中が生じており
  ました。
B. 各取締役や執行役員間での、業務執行に対する相互の牽制・チェック機能の不全
   前社長が個別案件を直接把握し、判断を行う業務遂行体制となっていたため、各取締役や執
  行役員間での、業務執行に対する相互牽制・チェック体制が十分ではありませんでした。
   本件土地取引でいえば、その進捗状況については、前社長及び開発部門や建築部門の主な役
  職員が参加して月1回開催される「部会」にて、元従業員から報告がされていましたが、他事
  案の報告案件が多岐にわたり、それらを前社長に報告し判断を仰ぐことに時間が割かれていた
  ことから、本件土地取引に関し、売買契約締結前からの十分なリスク情報の共有や他の仕入担
  当者も交えた複数の視点からの報告内容に対する確認やリスク低減策の検討がおろそかにな
  り、牽制機能を働かせることができませんでした。
   また、取締役会においても、時間的制約や多数の報告事項があったことから、前社長をはじ
  め、各業務執行取締役や執行役員の業務執行に対して十分な相互監督機能を果たす前提となる
  情報共有、相互理解がなされず、有意義な議論がなされていませんでした。社外取締役でもあ
  る監査等委員には、そもそも本件取引に関する情報の共有がなされておらず、社外の視点から
  意見を述べることが難しい状況でした。
C. 土地仕入に係るリスクに対する認識の甘さ
   上記 A にも記載の通り、本件取引は、他の一般的な土地売買取引と比べると、手付金の金
  額が約 21 億円と高額な上に一括で支払わなければならない、土地の引渡し期日が約3年後と
  長期であるといった特徴が見られましたが、稟議決裁を行うまでの時点において、校舎建替に
  伴い発生する費用の具体的な見積や支出スケジュールを取り寄せるなどのより入念な調査や、
  例えば、支出スケジュールと実際の工事の進捗に応じて分割して約 21 億円を払う対応とする
  等のリスク低減策を関係者間で協議することはありませんでした。
  また、本件取引開始前に、明浄学院関係者に逮捕歴がある等のネガティブな風評があること
  を前社長、管理本部長及び建築事業本部長は把握しておりましたが、信用調査の結果、不審な
  記事が見当たらなかったため、元従業員への口頭での確認を除き、それ以上の踏み込んだ調査
  は実施しませんでした。本来であれば、一部の役員及び担当者以外の関係者にも情報を共有
  し、取引を進めるか否かの協議を行い、複数の視点からリスクを検討した上での判断が必要で
  した。
D. 上記を背景とした内部統制の整備・運用不足
土地仕入業務においては、稟議決裁を行うことを除き、相互牽制に必要となるルールを策定して
  いませんでした。また、取締役が利益相反取引や競業取引を行うことは取締役会規則にて制限
  しておりましたが、例えば、当社取引先と取締役個人が取引を行う等、利益相反・競業取引の
                     7
      リスクを内在する行為までを制限対象とすることの検討、明確化及び周知が不十分であるな
      ど、運用が徹底されておりませんでした。
    E. 監査体制の脆弱さ
    当社の内部監査部門は1名のみで構成されておりました。当社の事業規模を考慮すると、人員は
      不足しており、また、監査等委員会との連携に必要な体制も構築されていませんでした。その
      ため、内部監査機能が十分に発揮できておらず、監査等委員が十分な監査機能を発揮するのに
      必要な情報を十分に提供できておりませんでした。


2. 改善措置並びにその実施状況及び運用状況等
  当社では、前社長が取引先に対して貸付を行っていた事実を、前社長が逮捕される直前まで把握でき
  ていませんでした。本来であれば、取締役は当社の潜在的な取引先への貸付に関してより慎重な判断を
  行うべきであり、また、当社としてもそのような事実を早期に把握し、取締役や監査等委員による相互
  のチェック・監督をより働かせることができていれば、利益相反を内在する行為として取締役会で協議
  し、手付金の支払いを否決することなどによって、本事件が発生した可能性を低減できたのではないか
  と考えております。
   上記の趣旨及び原因分析に基づき、以下の改善策を策定しました。


  (1) 取締役会を含む重要な会議体のあり方及び意思決定方法の見直し
  改善報告書に記載した改善策
   当社の事業運営が、創業者でもあった前社長の能力に依存する部分が大きく、経営判断のスピー
  ドに強みがあった反面、組織として適正な事業遂行を担保する体制への移行が十分ではなかったこ
  とを省み、取締役会を含めた当社の重要な会議体のありかた、及び意思決定の方法について見直
  し、代表取締役社長の一存ではなく、議論、協議を重ねた上での合議を重視する運用をしていくこ
  とにしました。
    ① 取締役会の決議事項、報告事項の明確化、開催頻度等の運営方法の変更(取締役による相互
    牽制体制の強化)
    a. 取締役会での議論の充実・検討を行う時間を確保するため、2020 年1月より、取締役会の
       開催頻度を従来の月1回から2回としました。取締役会の資料は3営業日前までに事前配
       布しております。
    b. また、上記開催頻度の変更を踏まえて、取締役会で議論・検討すべき事項を明確にするた
       め、取締役会における決議・報告・協議事項を再設計いたしました。具体的には、 2020 年
       5月 26 日開催の取締役会にて取締役会規則を改定し、「総合的な経営内容」といった抽象
       的な表現になっていた取締役会での報告事項に関する規定の項目を明確に規定し、また、
       取締役会における決議・報告・協議事項(例えば、規程の改定、制度導入や運用方法の決
       定、当社の販売状況の報告、各取締役の目標に対する進捗報告、当社内の課題や情報共
       有、中長期的な成長戦略に関する議論、人材の確保・育成等の重要な経営課題に関する議
       論など)の年間計画を策定・決議し、議論すべき内容と時期を明確にしており、本年は法
       定の決議事項に加え、再発防止策の完遂とともに中長期的な経営課題に関する協議、それ
       に基づく経営計画の立案を中心とした年間計画として、運用を開始しております。



                          8
② 重要な会議体(経営会議や業務執行に関係する各種委員会など、業務執行取締役や執行役員を中
  心とする合議による意思決定の場等)の新設
  a. 業務執行取締役を含む当社グループの経営幹部が集まり、当社グループ共通の重要事項の
       共有・徹底や、当社グループ子会社の業務執行の報告を行う「グループ経営会議」を 2020
       年4月に設置し、本年は取締役会を上記2(1)①b のとおり議論、協議の場としていくた
       め、従来の取締役会で多くの時間を要していたグループ会社の業務の執行状況報告を本会
       議体に移管し、グループ会社の業務の執行状況報告を行う場として運用を開始し、毎月1
       回開催しております。 グループ経営会議の資料は、開催の3営業日前までに事前配布して
       おります。
  b.   従来の土地仕入業務においては、同業他社との競争を勝ち抜くために意思決定のスピード
       を重視する一方、社内での情報共有が不十分でした。すなわち、本件でいえば、前社長と
       元従業員の行動を会社として情報共有できていなったことが、本事件の大きな要因となっ
       たと考えております。また、当社事業においては、土地仕入段階における検討が、物件の
       収益性やトラブルの発生防止の観点からも重要であるため、土地仕入・想定販売価格等の
       意思決定に関する審議(代表取締役社長、第一開発事業部長、第二開発事業部長、建築事
       業本部長、管理本部長を議決権者としてその半数以上の反対により、案件を却下する権限
       を有します)および土地仕入の進捗報告を行う場として、代表取締役、開発事業本部、建
       築事業本部など関連する部署の責任者・担当者からなる土地仕入業務のプロジェクト会議
       として「物件仕入会議」を 2020 年5月 12 日に設置いたしました。なお、本会議を経て、
       最終的な意思決定は、取締役会(20 億円以上の物件)もしくは代表取締役社長(20 億円
       未満)となっております。その後、2020 年5月 21 日には第1回目となる本会議を開催
       し、過去に仕入れた物件(1件)を事例としてリスク評価チェック表によるリスク分析を
       行い、判断に必要な資料や審議における判断基準の擦り合わせを行っており、対象物件が
       あればすぐに本会議を開催できる体制を整備しております。物件仕入会議の資料について
       は、開発事業本部内に設置された物件仕入会議運営事務局が2営業日前までに作成、配布
       し、会議で補足説明を行い、各出席者で質疑応答を行います。


実施・運用状況
  ① 取締役会の開催頻度等の運営方法の変更、決議事項、報告事項の明確化(取締役による相互牽
       制体制の強化)
        2020 年 1 月から、取締役会の開催を毎月 1 回から毎月2回に増やすとともに 1 回あたりの
       時間も長く取ることで、以前より詳細に説明・検討・議論することが可能となりました。ま
       た、代表取締役社長である土井が取締役会における各取締役の発言の機会を増やすなど、議論
       の活性化を促すことにより、質疑応答や議論が充実しております。これらにより、協議を重ね
       たうえでの意思決定が行われており、リスクチェック機能及び相互牽制の強化も図られていま
       す。
        取締役会で議論・検討すべき事項を明確にするため、決議・報告・協議事項(例えば、規程
       の改定、各取締役の目標に対する進捗報告、当社内の課題や情報の共有、中長期的な成長戦略
       に関する協議、人材の確保・育成等の重要な経営課題に関する議論など)の内容及びその時期


                            9
    を明確にした年間計画を 2020 年 5 月に作成し、それに沿った運用を行うことで、事前準備の
    充実やタイムリーな検討を促しております。
     取締役会資料の事前配布に関しては、以前から会議の 3 日前の配布を行っており、その運用
    を継続しております。
     以上の改善により、取締役全員が経営課題や事業運営に関する情報・認識を共有して議論を
    行い、リスクチェック機能及び取締役間の相互牽制を強化する体制を再整備し運用しておりま
    す。
  ② 重要な会議体(経営会議や業務執行に関係する各種委員会など、業務執行取締役や執行役員を
    中心とする合議による意思決定の場等)の新設
     新設のグループ経営会議は、プレサンスコーポレーション取締役(社外取締役含む。、監
                                           )
    査等委員及び執行役員並びに子会社取締役(代表者として1~2名)等が出席し、2020 年4
    月 23 日の第 1 回開催以降、毎月1回開催し、これまで計9回開催されております。グループ
    経営会議では、従来の取締役会で時間を要していたグループ会社の業務執行状況の報告等を移
    管するとともに、当社グループ共通の重要事項の共有・周知徹底、グループ会社個々の課題に
    ついての協議・対応指示並びにノウハウの共有等の時間を増やし、当社グループ全体の課題解
    決に向けた取り組みを強化しています。
     土地仕入業務のプロジェクト会議として新設した物件仕入会議は、代表取締役社長、関係部
    署の管掌取締役及び担当責任者が出席し、2020 年5月 21 日の第 1 回開催以降、これまで計
    22 回開催され 62 件の案件を審議しております。週 1 回の開催を原則としますが、必要に応じ
    て適宜開催することで経営に必要なスピードと慎重な意思決定を両立させております。主管部
    署である開発事業本部が作成した収支計画・リスク評価チェック表・マンション間取り等の設
    計プラン等の議題案件に関する情報に基づき、出席者は質疑応答を通じて不明点を解消すると
    ともに、複数関連部署それぞれの見地からリスク要因の確認及びその低減策の合理性を相互チ
    ェックし、トラブルの発生を防止しています。また、物件仕入会議では、一定以上の粗利を確
    保できるようにするため、土地仕入価格及び想定販売価格の妥当性の検証も併せて行い、当該
    物件のリスクだけでなく収益性も審議しております。
     物件仕入会議は、議決権者の半数以上の反対で案件を却下する権限を有しており、決裁者に
    よる最終的な意思決定の諮問機能を果たしております。なお、2021 年1月 25 日現在、物件仕
    入会議の権限により却下とした仕入案件はありません。


(2) 社外取締役の職務執行の実効性を確保するための環境整備
改善報告書に記載した改善策
 社外取締役(監査等委員を含む)に対して、事業活動に関する十分な情報・知識提供が実施され
ておらず、取締役の職務執行や会社経営に対する監督が十分に発揮できなかったことを省み、社外
取締役が職務執行の監督を行うに必要十分な体制を構築いたします。
① 監査等委員会をサポートする事務局機能の拡充
   監査等委員への十分な情報提供や内部監査との連携強化のため、監査等委員会をサポートする
  事務局機能を内部監査課に持たせ、内部監査結果をはじめとする社内情報を適時に監査等委員
  でもある社外取締役に提供する仕組みを構築いたします。2020 年5月以降、監査等委員会と内


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  部監査課との協議の場を毎月1回設け、実施しております。また、常勤の監査等委員と内部監
  査課は隣接した座席の配置となっており、すぐサポートできる体制としております。
② 代表取締役に対する監督強化
  a. 監査等委員の情報収集及び取締役の職務執行の監督強化のため、監査等委員会は代表取締
       役との面談を毎月実施することとし、2020 年5月以降、継続して実施しております。ま
       た、監査等委員会の監査計画では、2021 年3月期の重点監査ポイントとして、再発防止策
       の実行状況の監査が挙げられており、代表取締役を含む取締役全員に対する職務執行監査
       を実施しております。
  b.   上記の面談以外に、2020 年4月に新設したグループ経営会議、同年5月に新設した「物件
       仕入会議」にも監査等委員が参加し、情報収集とともに事業運営における監査等委員によ
       る監督を強化しています。
  c.   2020 年6月 26 日開催の株主総会において、若旅孝太郎氏を社外取締役として選任してお
       ります。若旅氏は当社の株式 31.91%(議決権所有割合)を所有する株式会社オープンハ
       ウスの企画本部及び管理本部の責任者として豊富な経験と幅広い見識を有しており、当社
       の経営及びコーポレートガバナンスの強化に活かします。


実施・運用状況
  ① 監査等委員会をサポートする事務局機能の拡充
        監査等委員に提供される社内情報の量の拡大と質の向上を図るため、内部監査課に監査等
       委員会をサポートする事務局機能を持たせ、内部監査課は、監査等委員会と毎月 1 回の定例協
       議を 2020 年5月 26 日以降計9回実施し、内部監査計画の内容及びその進捗状況、内部監査結
       果(例えば、指摘事項、改善指示事項、不備の改善状況など)
                                  、資本業務提携先である株式会
       社オープンハウスと実施した決算及び内部統制に関する打合せ内容等を内部監査課から監査等
       委員へ報告を行っております。また、上述の定例協議の他、監査等委員からの内部監査結果等
       に関する質問への対応、監査等委員による部門ヒアリングの設定、監査等委員会と代表取締役
       との面談に関する議題・検討テーマの提議及び議事録の作成などのサポート機能も強化してお
       ります。

  ② 代表取締役に対する監督強化
        2020 年5月 12 日以降、計9回実施された監査等委員会と代表取締役の面談の場では、改善
       策の進捗状況、内部統制システムの整備状況、経営理念・経営方針、株式会社オープンハウス
       との業務提携内容、経営組織体制を含む経営課題等、多岐に亘るテーマで情報共有や意見交換
       を行っております。また、監査等委員は代表取締役に対して、会計や労務に関する専門知識に
       基づいた広い知見から、会社法や労働施策総合推進法等の改正への対応に関する課題提起(例
       えば、取締役の個人別の報酬等に係る決定方針、障害者雇用など)や他社事例の共有等の提言
       も行っております。さらに、監査等委員は取締役及び執行役員全員との面談も行い、それぞれ
       が管掌する分野のリスク管理や課題への対応状況等について、職務執行監査を 2020 年 9 月 8
       日から 2021 年 1 月 12 日までに計 10 回実施しております。職務執行監査の結果として、法
       令、定款違反等の問題となる事項はありませんでした。
        また、監査等委員3名は 2020 年4月に新設以降の全てのグループ経営会議に出席し、経営
       状況の情報収集とともに業務執行内容の監督を行っております。さらに、常勤監査等委員は
                            11
      2020 年5月に新設以降の全ての物件仕入会議に出席し、仕入れに関する情報収集と案件のリ
      スクについて注意・確認しております。
          社外取締役の若旅孝太郎氏は、2020 年6月の就任以降、全ての取締役会、グループ経営会
      議等の重要会議に出席し、財務政策・人事採用等について、豊富な経験と幅広い見識に基づい
      た助言・意見具申を継続的に行っております。また、若旅氏は 2020 年7月から監査等委員会
      と代表取締役との面談にも同席し、株式会社オープンハウスでの事例や業務執行内容の情報提
      供を行っております。


(3) 利益相反取引に関するルールの設計と教育
  改善報告書に記載した改善策

   当社前社長が、当社の取引先に対して個人的に多額の金銭を貸付けた行為については、利益相反状
  況を内在する蓋然性が高かったと調査報告書で指摘されております。当社としても、取引先に対し個
  人的に多額の金銭を貸付ける行為が、利益相反を内在するという認識をすべての役職員が持ち、それ
  を回避するための適切なルールを策定していれば、金銭を貸付ける行為自体を抑制し、貸付け行為に
  対するリスク認識を持ってルールに基づく相互チェックが実施できた可能性があり、ひいては本事件
  の発生可能性を低減できたと考えております。
   改めてコンプライアンス重視に向けた取り組みを実施してまいります。
  ① 利益相反取引の定義とルールの整備
     利益相反取引に該当する可能性のある取引を改めて明確化し、当該取引を実施する場合の申請・
   承認プロセスの策定と運用を厳格化します。
     a. 取締役及び執行役員については、2020 年5月 26 日に取締役会規則及び執行役員規程を改定
     し、役員就任時及び半年に1回の頻度で利益相反に関する誓約書の提出、利益相反取引の有無を
     把握・モニタリングをするための確認書の提出を義務化し、2020 年6月までに第1回目の誓約
     書及び確認書の提出を実施、完了しております。次回の提出は 2020 年 10 月を予定しておりま
     す。
     b. 上記施策を実施する上での理解・周知のため、利益相反取引に関する取締役会への申請・承
     認するための新規申請書、申請フロー、提出を求める誓約書、確認書について、2020 年5月 26
     日開催の利益相反取引に関する研修にて周知済みであります。なお、新規申請書には利益相反取
     引に該当する取引を例示し、明確にしており、抜け漏れを防止する書式としております。今後、
     当該研修は毎年5月に実施します。



  実施・運用状況
    ① 利益相反取引の定義とルールの整備
          2020 年5月 26 日に取締役会規則及び執行役員規程を改定し、役員就任時及び半年に1回の
      頻度で利益相反に関する誓約書の提出、利益相反取引の有無を把握・モニタリングをするため
      の確認書の提出を義務化しております。利益相反取引の定義に変更はありませんが、利益相反
      取引に該当する可能性のある取引は研修資料の中で明確化しております。
          また、利益相反の可能性がある新たな取引を検討する場合は、取締役会への事前申請と取締
      役会の事前承認の取得を取引開始条件としております。


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     2020 年5月 26 日に取締役及び執行役員への利益相反取引に関する研修を実施し、全員が受
    講しました。研修では、総務部法務リスク管理課が主管部署となり、利益相反取引・競業取引
    規制の趣旨及びどういった行為が利益相反取引・競業取引に該当するかを、具体例を交えて説
    明しました。また、当社の諸規則等に基づく利益相反取引・競業取引に関するルール(利益相
    反・競業に該当する可能性のある取引を開始する場合には事前の申請・承認を義務化等)を説
    明しました。今後は毎年 5 月に利益相反取引に関する研修を継続的に実施します。
     2020 年6月までに第1回目の誓約書及び確認書の提出を実施、完了し、役員就任後の利益
    相反取引は発生していなかったことが、2020 年6月 26 日開催のグループ経営会議で報告され
    ております。また、取締役及び執行役員からの2回目の誓約書及び確認書提出を、2020 年 10
    月に予定通り完了しており、利益相反の可能性が問われるような取引はありませんでした。次
    回の提出は 2021 年4月を予定しております。なお、本改善策の実施・運用開始後に、取締役
    及び執行役員から新規の利益相反取引の申請はありません。


(4) 土地仕入プロセスにおける統制活動の再設計
改善報告書に記載した改善策
  当社事業において、同業他社との競争を勝ち抜くために好条件の土地を仕入れることは極めて重
  要な要素となります。土地仕入は、物件ごとの事情により条件や価格が大きく異なるため、経営判
  断が非常に難しく、一般的には時間を要します。当社では土地の仕入について、スピードを重視す
  る観点から担当者と前社長とで直接報告・相談しながら業務を進めておりました。その結果、業務
  面において縦割りの組織となり、仕入業務に関し、社内で十分な情報共有がなされず、相互牽制・
  チェック体制が整えられていなかったことが、本事件の大きな要因となったと考えております。そ
  のため、仕入時の合議体を設置し、特定の役職者による裁量の範囲を限定し、一定の手順、基準に
  従った運用を行うため、会議体の運用に係る要領の作成や規程の改定などを行うこととしました。
  一方で、土地仕入後のマンション建設においては測量調査などの事前準備を担当する開発事業部と
  建設の工程管理を行う建築事業部、販売においては、お客様への販売を担当する営業本部と契約を
  担当する業務課のように複数の部署、それに付随して多くの担当者が関わること、また、過去の他
  物件との比較などから、異常な取引があれば容易に発覚できるという業務体制であり、特に土地仕
  入プロセスにおける相互牽制・チェック体制を整備することで、事業全体の業務の適正性が確保で
  きるようになると考えています。
  ① 上記2(1)②に記載の通り、2020 年5月 12 日に新たに設置されたプロジェクト会議「物件仕
    入会議」において、想定収支や物件仕入に係るリスクの有無、程度について複数部署でのチェ
    ックを行う体制を構築しております。同時に、当該プロジェクト会議が適切に運営されるため
    の運営要領「物件仕入会議要領」の策定、購買管理規程の改定、購買業務フロー図の改定、物
    件仕入に係るリスクの有無、程度を客観的に評価するためのチェックリストの作成等を行い、
    土地仕入に係る統制を見直しております。
  ② 「物件仕入会議」のスムーズな運用開始を確保するため、2020 年5月 21 日には会議の運営方
    法、及び改定された規程やフロー図の内容・運用ルールについて関係する従業員を対象とした
    説明会を開催し、周知徹底を行っております。




                        13
実施・運用状況
  ① 想定収支や物件仕入に係るリスクの有無、程度について複数部署でチェックを行う体制の構
    築、土地仕入に係る統制の見直し
      2020 年 5 月 26 日の取締役会で、物件仕入会議運営要領を新しく制定し、それに伴い購買管
    理規程を新しい担当・役割・手順等を反映した内容に改定しております。上記2(1)実施・運
    用状況②に記載の通りの新たな土地仕入ルールおよびプロセスに則り、2021 年1月 21 日まで
    に計 22 回の物件仕入会議を開催して 62 件の仕入案件を審議し、土地仕入に係る統制を強化し
    ております。物件仕入会議では、代表取締役社長、関係部署の管掌取締役及び担当責任者が出
    席し、それぞれの視点から仕入案件をチェックしています。具体的には、土地仕入れの管掌部
    署である開発事業本部長が案件の定性リスク及び収益性を、建築事業本長が建築に係るリスク
    及び建築コストを、管理本部長が法務・反社・与信に係るリスクに重点をおいて案件の内容を
    チェックすることにより、相互牽制を強化した土地仕入れの業務体制を構築・運営しておりま
    す。
      物件仕入会議の運用開始後、新規プロセスの浸透や資料作成の完成度と習熟度を上げるた
    め、物件仕入会議運営要領で定められた付議基準では審議を必要としない案件も審議対象に含
    め、運用回数を増やして物件仕入会議を開催しております。これにより、物件仕入会議の運営
    を早期に充実させて、情報共有・相互牽制・リスクチェック体制の早期強化を図り、土地仕入
    れプロセスにおける新たに設計した統制活動を浸透させ、業務の適正性を確保しております。
  ② 物件仕入に関係する従業員を対象とした運用ルール等の説明会の開催
      「改善報告書に記載した改善策」のとおり、物件仕入会議の運営方法、物件仕入にかかる規
    程及び運用等に関し、2020 年5月 21 日に関係する従業員を対象とした説明会を実施しており
    ます。


(5) 内部監査の見直し
改善報告書に記載した改善策
会社事業が拡大する中、1名で内部監査を実施しており、当該人員にかかる業務量の多さから効果
的な内部監査が実施できていませんでした。これは前社長が事業全体の管理、監督を行ない、把握
できているとの認識から、会社として内部監査の充実化を軽視してしまった結果だと考えておりま
す。本事件に関わる土地取引については、手付金の大きさ、土地引き渡しまでの旧校舎の解体が当
初計画から大幅に遅れていたことなどその異常性について内部監査でチェックできたポイントがあ
ったにも関わらず指摘できていなかったことから、客観的視点での監査の必要性を再認識し、監査
等委員による監督強化の観点とあわせ、内部監査の体制・監査等委員との連携強化、及び手続き・
手法の高度化が重要と考え推進しております。
① 内部監査体制の強化
   a. 内部監査体制強化のため、従来1名であった内部監査人員を増強することとし、2020 年3
     月末までに新たに2名の人員を採用し、現在合計3名体制にしております。
   b. 内部監査計画について複数の視点からその妥当性を検証し内部監査の独立性を強化するた
     めに、内部監査計画を従前の社長承認から取締役会決議に変更するよう、2020 年5月 26
     日の取締役会にて取締役会規則の改定を行っております。
② 監査等委員との連携強化、及び業務監査の高度化
                         14
  a. 上記2(2)①に記載の通り、内部監査担当に監査等委員会の事務局機能を持たせるととも
    に、監査等委員会と内部監査課との協議の場を月に1回設けることで監査等委員との連携
    を強化しております。
  b. 今後、監査等委員との協議を行うとともに、より多くの情報を収集して監査手続きに反映
    させるため、会計監査人と監査等委員会と内部監査課との三者による面談を新たに年4回
    実施します。内部監査の実施項目・手法についても、想定されるリスクに応じたテーマ監
    査を行うなど、より実効性ある手続きの実施に向けて改善を進めてまいります。なお、
    2020 年6月 26 日開催の取締役会にて、三者協議を経た 2020 年度の内部監査計画が承認
    可決され、実行に着手しております。


実施・運用状況
  ① 内部監査体制の強化
     2020 年3月に2名の人員を新たに採用し、合計3名体制で内部監査業務をおこなっており
    ます。新たに採用した内部監査課担当2名の内1名は、上場会社で約 32 年の経理及び約6年
    の内部監査の業務経験を有しており、もう1名は、上場会社で約 30 年の経理及び約5年の内
    部監査の業務経験を有しております。
     内部監査の独立性及び有効性を高めるために、2020 年5月 26 日に取締役会規則について内
    部監査計画の承認権限を代表取締役社長から取締役会決議へ改正し、2020 年6月 26 日開催の
    取締役会で内部監査計画を承認しました。
     また、内部監査計画の実効性を高めるために、改善策の実施及び改善状況のモニタリングに
    ついて、内部監査計画を策定する段階で会計監査人および監査等委員と協議をおこなっており
    ます。


  ② 監査等委員との連携強化、及び業務監査の高度化
     上記(2)社外取締役の職務執行の実効性を確保するための環境整備の実施・運営状況①に
    記載の通り、監査等委員会と内部監査課の協議を、2020 年5月 26 日以降、毎月 1 回、計9回
    実施しており、内部監査課は監査等委員から業務監査と内部統制監査(J-SOX)との統合の検
    討等の助言を受けるなど、監査等委員会と内部監査課の連携を強化しております。また、当社
    社外取締役や監査等委員を含む取締役及び執行役員並びにグループ子会社の取締役等が出席し
    て毎月1回開催される内部統制委員会に、監査等委員全員と内部監査課が毎回出席し、内部監
    査および改善策の運用状況に関する監査状況の報告等を行い、情報共有ならびに意見交換を図
    っております。さらに、会計監査人と監査等委員会と内部監査課との三者による面談を、2020
    年5月、8月、11 月の計3回実施し、2021 年2月にも予定しております。上述のように内部
    監査計画の内容や、監査等委員会の監査方針及び監査計画、内部監査計画の進捗状況等を三者
    間で共有するとともに、疑問点・不明点・課題の確認並びに意見交換を行うなど、連携を強め
    て内部監査を進めております。
     2021 年3月期は、特に改善策の運用状況に重点を置いた内部監査を実施し、2020 年9月末
    時点において改善策の対象である内部統制不備が治癒した状況を内部監査課が確認しておりま
    す。また、主管部署が内部統制状況を自己点検する新たな手続きを導入し、内部監査課がその
    結果について現地監査を行い期末に監査報告するという一連の監査要領を、内部統制監査手続
                        15
       書に整理しております。この新しい手続きによって、統制活動の整備・運用状況がより的確に
       検証できるようになり、内部監査を高度化する改善を行っております。


(6) 前社長との関係の見直し
  改善報告書に記載した改善策
  当社と前社長との関係については、2019 年 12 月 23 日付で当社の取締役を辞任したことにより、前社
  長による当社の業務執行への関与はなくなりました。加えて、2020 年5月8日付で公表した「株式会
  社オープンハウスによる当社普通株式の取得完了並びに主要株主及び主要株主である筆頭株主並びに
  その他の関係会社の異動に関するお知らせ」に記載の通り、前社長及び前社長の財産保全会社である
  株式会社パシフィックと株式会社オープンハウスとの間で、株式譲渡契約が締結され、譲渡が完了し
  ております。この結果、前社長及び株式会社パシフィ ックは、4,621,700 株(議決権所有割合
  7.15%)となり当社の筆頭株主に該当しなくなりました。なお、当該譲渡完了後、前社長から事業運
  営に関する要請はありません。また、今後前社長から事業運営に関する要請があった場合には他の株
  主様と同様のコミュニケーション、ご説明は行うものの、それ以外の対応は予定していません。


  実施・運用状況
     2020 年 11 月 13 日開示の「株式会社オープンハウスによる当社株券に対する公開買付けに関する
    意見表明、及び同社との資本業務提携契約の変更等に関する合意書の締結に関するお知らせ」にあ
    るとおり、株式会社オープンハウスは前社長の財産保全会社である株式会社パシフィック(所有株
    式数 4,621,700 株、議決権所有割合 7.13%、以下「パシフィック」という。
                                              )および前社長(所
    有株式数 183,200 株、議決権所有割合 0.28%   2020 年 5 月に持株会の退会処理が完了したた
    め、持株会名義から個人名義へと振り替えたことに伴う取得)と公開買付応募契約をそれぞれ締結
    し、パシフィック及び前社長が所有する当社株式の全て(所有株式数の合計 4,804,900 株、議決
    権所有割合 7.41%)について本公開買付けに応募する旨の同意を得ています。なお、本日時点に
    おけるパシフィック及び前社長の当社株式の保有状況について、当社では把握しておりません。
     また、2019 年 12 月から現在に至るまで、前社長から事業運営に関する要請を含めた一切の要請
    はありません。




                             16
(7) 改善措置の実施スケジュール
  → 施策検討・準備 ⇒ 実施・運用開始及び継続的改善
                                           2020 年                      2021
            改善措置                                                        年
                               4   5   6   7   8   9    10   11   12    1
                               月   月   月   月   月   月    月    月    月     月

取締役会を含む   取締役会での議論の充実・検討を
重要な会議体の   行う時間を確保するため、2020 年
あり方及び意思   1月より、取締役会の開催頻度を      ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒   ⇒    ⇒    ⇒ ⇒
決定方法の見直   従来の月1回から2回に変更。
し
          取締役会で議論・検討すべき事項
          を明確にするため、取締役会にお
                               →   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒   ⇒    ⇒    ⇒ ⇒
          ける決議・報告事項を再設計。

          業務執行取締役を含む当社グルー
          プの経営幹部が集まり、当社グル
          ープにおける業務上の重要事項や      ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒   ⇒    ⇒    ⇒ ⇒
          課題について共有・議論をするグ
          ループ経営会議を設置。

          土地仕入・販売価格等の意思決定
          に関する審議および土地仕入の進
          捗報告を行う場として、代表取締
          役、開発事業本部、建築事業本部 →        ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒    ⇒    ⇒    ⇒

          など関連する部署の責任者・担当
          者からなる物件仕入会議を設置。

社外取締役の職   監査等委員への十分な情報提供や内
務執行の実効性   部監査との連携強化のため監査等委
を確保するため   員会をサポートする事務局機能を内
の環境整備     部監査課に持たせ、内部監査結果を →       ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒    ⇒    ⇒    ⇒
          はじめとする社内情報を適時に監査
          等委員でもある社外取締役に提供す
          る仕組みを構築。

          監査等委員の情報収集及び取締役の
          職務執行の監督強化のため、代表取 →       ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒    ⇒    ⇒    ⇒
          締役との面談を毎月実施。

          グループ経営会議、物件仕入会議に
          監査等委員が参加し、情報収集とと
                               ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒    ⇒    ⇒    ⇒
          もに事業運営における監査等委員に
          よる監督を強化。


                        17
                                         2020 年                      2021
            改善措置                                                      年
                             4   5   6   7   8   9    10   11   12    1
                             月   月   月   月   月   月    月    月    月     月

利益相反取引及   取締役及び執行役員については、役
び競業取引に関   員就任時及び半年に1回の頻度で利
するルールの設   益相反取引及び競業取引に関する誓 →     ⇒   ⇒                ⇒
計と教育      約書の提出を義務化。


          取締役及び執行役員に関する利益相
          反取引及び競業取引の有無を把握・
          モニタリングするための確認書提出 →     ⇒   ⇒                ⇒
          を義務化。


          取締役及び執行役員に対する利益相
          反取引及び競業取引に関する研修を
          毎年5月に実施。           →   ⇒
          同様の研修を、同時期に従業員に対
          しても実施。

土地仕入プロ  新設の物件仕入会議において、複数
セスにおける統 部署でのチェックを行う体制を構
制活動の再設計 築。
        当該会議が適切運営されるための運
        営要領の策定、購買管理規程の改
                         →       ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒   ⇒    ⇒    ⇒ ⇒
        定、購買業務フロー図の改定、物件
        仕入に係るチェックリストの作成
        等、土地仕入に係る統制の見直しを
        実施。


内部監査の見直 内部監査体制強化のため、従来1名
し       であった内部監査人員を、2020 年
          3月末時点で新たに2名の人員を採 ⇒     ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒    ⇒    ⇒    ⇒

          用して増強。

          内部監査計画について複数の視点
          からその妥当性を検証し内部監査
          の独立性を強化するために、内部
                             →   ⇒
          監査計画を取締役会決議事項に追
          加。




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                                         2020 年                     2021
            改善措置                                                     年
                             4   5   6   7   8   9   10   11   12    1
                             月   月   月   月   月   月   月    月    月     月

  内部監査の見直 監査等委員会と内部監査課との協議
  し       の場を月に1回設けることで監査等
                             →   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒   ⇒    ⇒    ⇒    ⇒
          委員との連携を強化。


          今後の内部監査の計画は、監査等委
          員会との協議を行うとともに、より
          多くの情報を収集して監査手続きに
          反映させるため、会計監査人と監査 →     ⇒           ⇒            ⇒
          等委員会と内部監査課との三者によ
          る面談を年4回実施


  前社長との関係 保有株式の処分
  見直し                        ⇒   ⇒                        ⇒    ⇒    ⇒



3. 改善措置の実施状況及び運用状況に対する上場会社の評価
  当社は、前社長による利益相反取引を内在する蓋然性の高い土地売買取引があったことから、財務報
  告に係る内部統制の開示すべき重要な不備を公表する事態となったことを、重く受け止めております。
  当該取引の発覚後、速やかに、原因究明、ガバナンス体制の再構築および土地仕入業務の統制活動の再
  設計ならびにそれらの運用を実施しております。改善措置については、当初スケジュール通りに実施し
  ており、今後も、再発防止に向けた改善策の運用の徹底及び必要な改善に継続的に取り組み、ガバナン
  スの向上に努めてまいります。なお、前期末に認識した財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不
  備については、当社は 2020 年9月末時点において、改善措置の実施及び運用により是正を完了したと
  評価しており、当該状況については会計監査人がその有効性を評価中です。




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