3103 ユニチカ 2020-03-19 17:00:00
(開示事項の経過)当社グループの製品の一部における品質管理上の不適切事案の調査結果と再発防止策に関する最終報告 [pdf]
2020 年 3 月 19 日
各 位
会 社 名 ユ ニ チ カ 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 上埜 修司
( コ ー ド 番 号 3103 東 証 第 一 部)
問合せ先 経営企画部長 杉澤 滋
(TEL 0 6 - 6 2 8 1 - 5 6 9 5)
(開示事項の経過)当社グループの製品の一部における品質管理上の
不適切事案の調査結果と再発防止策に関する最終報告
当社及び当社子会社(以下、
「当社グループ」
)が製造、販売しました製品において、品質管理上の
不適切な事案が発生したことにより、お客様をはじめ関係者の皆様に対し、多大なるご心配とご迷惑
をおかけしたことを改めて深くお詫び申し上げます。
事案の内容や再発防止の取組につきましては、当社ホームページ及び2019年11月1日付「当
社製品の一部における品質管理上の不適切事案に関するお詫びとお知らせ」でお知らせしましたが、
全ての事案に関してお客様へのご説明が終了し、外部の弁護士による外部調査委員会(以下、
「調査委
員会」
)を立ち上げ、当事者、関係者からの聴取を行うなど原因究明と再発防止策の検討、策定、実行
を進めてまいりました。今般、調査委員会から「調査報告書」
(以下、
「報告書」
)が提出されましたの
で、その概要・再発防止策につきまして下記の通りご報告いたします。
記
1.調査の概要
(1) 外部調査委員会の構成
当社グループから独立した、弁護士5名
委員長:森信静治 委員:吉村信幸、瀬川武生、奥野弘幸、城之内太志
(2) 調査期間
2019年2月12日から2020年1月31日
(3) 調査方法
① 当社グループから提出された報告書等の資料の精査
調査委員会は当社グループからの報告書、製品の品質検査に関する記録、マニュアル、組織
図、当事者、関係者の履歴等、調査のために必要と判断した資料を幅広く収集し、内容を精
査しました。
② ヒアリング
調査委員会は当社本社、当社事業所、当社子会社において当事者、関係者からのヒアリング
を行いました。
③ 現場での確認
1
調査委員会は現地に行き、製造現場、測定室、測定機器等を見分しました。
2.調査対象部門、項目及び概要
(1)不適切事案の対象部門、子会社/主な項目
① 日本エステル㈱ 製造部 第2課 / ポリエステル短繊維の捲縮数、捲縮率、熱収縮、繊維長
② 当社 不織布事業部 / 不織布の伸度、熱収縮率
③ 日本エステル㈱ 製造部 第1課 / ポリエステル樹脂の水分率
④ テラボウ㈱ / ナイロン樹脂の強度、耐衝撃性、粘度
(2) 不適切行為の概要
・ 測定数値等の改ざん(提出する成績書の数値を改ざんするなどし、合格品として出荷)
・ 測定数値等のねつ造(測定や検査をせず虚偽の数値を記載するなどし、合格品として出荷)
・ 測定数値の選別 (実測した数値の中で良い数値のみを採用し、合格品として出荷)
3.事案判明の端緒
① 日本エステル㈱ 製造部 第2課 / 当社によるアンケート調査
② 当社 不織布事業部 / 当社によるアンケート調査
③ 日本エステル㈱ 製造部 第1課 / 当社による品質監査
④ テラボウ㈱ / テラボウ㈱による社内調査
4.発生原因・背景(報告書からの要約)
(1)規格厳守の意識の欠如
① 製品規格※1 を外れていても、外れている数値が用途との関係であまり重視されていない項
目のものであれば、実質的に顧客に迷惑をかけることがないと考えていた。
② 過去の実績値と比べて同程度の数値であり、自社の製品規格を満足し、同用途で使用され
ている対象顧客以外での納入規格※2 内でもあったことから、品質自体に問題がなく、少々
数値が外れていても構わないだろうという意識が根底にあった。
③ 実績値と比べて同程度の数値であり、苦情は一切発生していなかったので、納入規格を多
少外れても問題ない、あるいは、納入規格を外れた場合に少々数値を修正しても問題ない
だろうという甘い認識が根底にあった。
※1 品質に関する社内基準
※2 品質に関するお客様に対して保証する基準
(2)検査体制の不備
① 管理職の承認を義務付けていなかったため、検査成績書※3 の発行は、規格外れとなっても
担当者のみの判断で修正が可能であり、複数の者によるチェックができていなかった。
② 管理職のチェックが行われているが、納入規格に対して検査成績書のデータが規格から外
れていないかを確認しているだけであった。
※3 製品の検査結果を示すもの
(3)組織体質
① 作り直しのための材料準備や納期遅れなどを避けたいという意識が強かった。
② 社内では出荷が可能になるよう製品規格を通すことだけを意識していた。
③ 不正行為が強く非難される行為であることの認識が欠如または著しく減退していた。
④ 少数の者が長期にわたり品質管理業務を担当していたことで、他の者のチェックが行き届
2
かなかったり、過剰な権限を有するようになり、不正をしやすい環境となっていた。
5.再発防止策
当社は、調査委員会からの提言も踏まえ、社外役員が出席する経営会議、取締役会での討議を重
ね、以下のとおり、再発防止策を策定いたしました。なお、既にその一部については実施段階にあ
りますが、すべての施策について確実に実行に移してまいります。
また、再発防止策の実施に先立ち、当社社長がグループ会社を含めた全社の役員、従業員に対し
て、メッセージ発信や直接的な対話の場をもち、率先して品質保証を含めたコンプライアンスや規
範意識の全社的な理解浸透に向けて取り組んでおります。
(1) グループガバナンス体制の強化と行動基準等の見直し(実施中)
① 内部統制基本方針を見直すとともに、それに関連するリスクマネジメントやコンプライア
ンスに係る規程を改定し、グループ会社を含めたガバナンス体制の強化を図ります。
② 当社グループの全役員、従業員が認識し行動するための規範となる行動基準等を、より理解
しやすいものとなるよう見直し、あらためて徹底を図ります。
(2) 組織・仕組みの改善
① 品質保証委員会の設置(実施済み)
当社社長を委員長とする品質保証委員会を設置し、再発防止策の遂行状況や有効性を評価
し、必要に応じて指示することにより、当社グループの品質保証体制の再構築と強化に努め
ます。
② 品質管理組織の見直し(実施済み)
一部のグループ会社では製造部門の中に品質保証部門が設置されているケースがありまし
たが、品質保証部門を製造部門から分離、独立させる形としました。
③ 品質管理関係者の人事ローテーションの活性化(課題)
長期にわたって同一の業務を担当することから生じる、周囲の任せきり、無関心、不正の継
続等の弊害を避けるため、人材の流動化を図ります。
④ ISO9001の取得(実施中)
グループ会社の中でISOを取得していない部門、会社では、ISO9001を取得して品
質管理、品質保証体制の強化を進めます。
(3)教育
① 品質とコンプライアンスに係る教育(実施中)
品質保証と規格を順守する意義と重要性、及び関係法令やお客様との契約順守の意義と重
要性について、外部講師による講習会も含め、毎年1回以上研修を実施し、従業員の意識改
革を行います。
② 管理職による教育(実施中)
規格に関する数値の改ざん及びねつ造等の不正は、あってはならない重大なコンプライア
ンス違反行為であることについて、各部門における管理職により、品質・コンプライアンス
教育を行います。
③ 品質保証ガイドラインの策定(実施済み)
2019 年 4 月に品質保証ガイドラインを策定し、当社グループ内に周知しました。
(4)規格の見直し(実施中)
① 納入規格の見直し
3
縦割りではなく部署をまたいで相互に意見交換をする会議を設けるなど、意見を言いやす
い組織風土を醸成していきます。また、営業部門、品質保証部門及び製造部門が協働し、
製造工程能力に見合った納入規格及びその製品の用途に必要な適正な検査項目に改定し
ていくよう、お客様への要請等を行っていきます。
(5)試験、検査結果の信頼性向上
① 改ざん防止のためのシステム高度化促進(実施中)
試験結果の取り込みや検査成績書への反映などについて、人が介在する機会を最小化すべ
く、可能な限り自動化することに加え、コンピュータのアクセス権設定の義務化、入力履
歴がトレースできるシステムの構築など、数値の改ざんを生じさせない管理システムを早
期に構築する予定です。自動化が困難で手入力を介さざるを得ない試験においては、管理
職による実測値と検査データ及び検査成績書との整合性確認をより厳格に行う体制とし
ます。
② 品質管理監査の実施(実施中)
当社技術開発本部内に設置した品質保証室による品質管理監査を 2019 年 8 月から開始し
ています。当社グループ内の品質保証部門に対し、継続して実施します。
(6)実態の早期把握
① 内部通報の拡充(課題)
内部通報窓口の利用を促すとともに、アンケートを実施するなど、積極的に現場の声を把
握するよう努めます。
6.関係者の処分
今般の調査結果、社内調査、規程に基づき、未処分の関係者に対し、厳正な処分をいたします。
7.業績への影響
お客様へのご説明は全て終了しましたが、
製品の使用が停止となった事案はございません。
今後、
業績に重大な影響が見込まれる場合には速やかに開示いたします。
8.おわりに
本事案を単に品質管理体制の不備とするのではなく、組織風土や役員・従業員の意識、ガバナン
ス全般の問題と捉え、当社グループの品質に関する規程等を新たに策定し、また、行動基準等も見
直し、今後はそれらを周知徹底してまいります。当社グループの全役員、従業員が一丸となり、不
退転の決意で、再発防止に努めてまいりますので、何卒ご理解とご支援を賜りますようお願い申し
上げます。
以 上
4
(添付資料)
調査委員会による【原因・背景】と【提言】
Ⅰ.報告書に記載された、事案発生の原因・背景、提言は以下のとおりです。
(報告書からの抜粋)
1.日本エステル㈱ 製造部 第2課
【原因・背景】
・製品規格内にするために製品の製造方法自体を修正すると糸質が変わってしまい、他の項目で規格
外れになってしまう怖れがあるので避けたい。
・作り直しのための材料準備や納期遅れなどを避けたい。
・製品規格を外れていても、外れている数値が用途との関係であまり重視されていない項目のもので
あれば、実質的に顧客に迷惑をかけることがないと考えていた。
・品質保証係は製造部長、課長の下にあることから、どうしても製造部門の製造状況に配慮する影響
が否定できなかった。
【提言】
・顧客に対する正確な情報提供を損ねる安易な数値の改ざんが重大な意味を持つことにつき、認識を
深めるための研修を行う必要がある。
・製品規格等を設けた趣旨の認識。
(今一度これら規格の意味を再認識する必要がある。
)
・当面の利益よりも品質を重視する意識を全従業員がもつべき。
・過剰な営業ノルマがあるとすればそれを排除する必要もある。
・銘柄統合の結果、製品規格が納入規格を満たさなくなったものや、同一製品であるが顧客ごとに納
入規格が異なるものなどは、実情に合わせた製品規格や納入規格の見直しが必要となる。物性に影
響があるか等も含め検討する必要があるが、真実の数値に基づく検討であるので行ってしかるべき。
・実際の測定値と外部に出す試験成績表の数値との間に齟齬がないか、これをチェックする手順と人
的配置を行う必要がある。
・測定した数値を一旦入力すると、糸質台帳、出荷判定書、試験成績書等には自動的に反映するシス
テムを構築することも不正を防ぐ一つの方法であると考える。
2.ユニチカ㈱ 不織布事業部
【原因・背景】
・不適合品の出荷には顧客の承諾を得なければならないという意識が希薄であり、顧客との交渉を誰
が行うべきかについて部署内で全く決まりがなかったことが顧客に黙って不適合品を納入すること
につながった。
・品質管理規程上、管理職の承認を義務付けていなかったため、検査成績書の発行は、規格外れとな
っても担当者のみの判断で修正が可能であり、複数の者によるチェックができていなかった。
・過去の実績値と比べて同程度の数値であり、自社の製品規格を満足し、同用途で使用されている対
象客以外での納入規格内でもあったことから、品質自体に問題がなく、少々数値が外れていても構
わないだろうという意識が根底にあった。
・管理職のチェックが行われているが、納入規格に対して検査成績書のデータが規格から外れていな
いかを確認しているだけであった。したがって、規格外れとなっても担当者のみの判断で修正が可
能であり、複数の者によるチェックができていなかった。
5
・製造条件を変更した以降の実績値と比べて同程度の数値であり、苦情は一切発生していなかったの
で、納入規格を多少外れても、あるいは、納入規格を外れた場合に少々数値を修正しても問題ない
という甘い認識が根底にあった。
・とにかく社内では出荷が可能になるよう製品規格を通すことだけを意識していた。
・各不正行為の大きな原因として、多かれ少なかれ不正行為が強く非難される行為であることの認識
が欠如または著しく減退していることにあると言わざるを得ない。
【提言】
・規格に関する数値の改ざん(及びねつ造)等の不正はあってはならない、重大なコンプライアンス
違反行為であることについての徹底的な再教育が必要である。
・不正が発生することを前提として、他の者が早期に発見ないし可能な限り阻止するための仕組みが、
手続き、組織面で構築される必要がある。
・少数の者が長期に亘って同一の業務を担当するということは他の者のチェックが行き届かなくなっ
たり、過剰な事実上の権限を有するようになったりしがちであるから極力避けるべきである。
・製品規格については、暫定値から正式な規格値を決定する手続きにおいて製造の実力に見合った数
値及びその製品の用途に必要な検査項目の適正な設定がなされるべきであり、その後の規格値変更
についても適当な手続きが設けられるべきである。
・必要に応じて納入規格等の変更について顧客の理解を得るよう努力する姿勢を持つことは、不正の
原因を根本的に解消するという意味で重要である。
3.日本エステル㈱ 製造部 第1課
【原因・背景】
・不正行為を行っているという認識自体欠けていたものと断定できる。
・対象会社の従業員全体において、数値、規格、コンプライアンスに対する意識が極めて希薄であっ
たことがうかがえ、非常に問題がある。
【提言】
・測定していない数値を記入すること自体がコンプライアンス違反であり、社会的に強い非難の対象
となる行為であるという意識を従業員全体が持たなければならない。
・定期的に営業部と製造部との間で、規格に関する意見交換をする機会を設ける等、縦割りでなく、
部署を跨いで相互に意見を言い出しやすい企業風土を醸成すべきである。
4.テラボウ㈱
【原因・背景】
・製品規格ないし納入規格に対する認識が低く、規格値から逸脱した場合でも、それが僅差である場
合には、許容されるばらつきの範囲であると勝手に解釈して、顧客における加工後の使用上は問題
ないと判断していた。
・実際には工程能力が低く暫定規格の上下限に近い数値で逸脱した状況が発生することになったにも
関わらず、規格値の見直しや工程の改善を行わないまま、製造が行われたことが検査成績書の改ざ
んにつながった。
・規格外の製品を出荷すること、ないし「検査成績書」を改ざんすることが、社会的に強い非難に当
たる行為であることの認識が欠如または著しく減退していることにある。
・
「特別採用品」のルールの認識・遵守が徹底されておらず、グループ内の独自の判断で、規格外の製
6
品が出荷され、「検査成績書」の改ざんが行われることとなった。
【提言】
・不正の抑止力となり、現実に不正が発生した場合にそれを早期に発見できる組織作りや仕組みづく
りが必要となる。
・必要に応じて納入規格の変更について理解を得るよう努力する姿勢を持つことも重要である。
・末端の社員に至るまで、このような不正行為はあってはならないことであり、そのような考え方が
行動規範の最上位に位置するものだということを強く認識してもらう必要がある。
Ⅱ.その他、報告書以外での提言等
【原因・背景】
・納入規格の項目に本来お客様にとっても不要と思われる項目が散見されたが、取引開始にあたり提
出する納入規格書、仕様書に多くの項目が織り込まれた背景には、
“管理項目を増やして他社の参入
を防ぎたい”との背景があった。
・いろいろな部門で同じような不正行為が連綿と受け継がれた背景には、慣行を重んじる、また、で
きるだけ波風を立てたくないという組織風土、体質がある。
【提言】
・売上優先から品質優先にする。
・危機意識を持つこと。
・素材メーカーの甘さを捨てること。一素材の欠陥が莫大な金額の損害を招き、倒産することもあ
る。
・今般の不適切事案、再発防止策は公表されるわけで、残念ではあるがむしろいい機会と捉え、グル
ープを挙げて再発防止に取り組んでいることをお客様にご理解いただき、検査項目の見直し、削減
等のお願い、実行を進めてください。担当者任せにせず、会社として対応し、膿を出し切ること。
・品質保証部門の独立体制はすでに進めており良い事では有るが、総じて品質保証部門は製造部門や
営業部門に比べ声が弱い、声をあげにくい部門。単に品質保証部門のコンプライアンス意識の欠如
とするのではなく、会社として品質保証部門を応援する必要がある。
・時代は変わっている。歴史ある素材メーカーであるがゆえに生じた、品質に対する甘さ、価値観を
一新すること。
・品質監査はグループ全体で繰り返し実行すること。
以 上
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