3023 ラサ商事 2021-08-17 16:00:00
社内調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ [pdf]
2021 年8月 17 日
各 位
会 社 名 ラ サ 商 事 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 井 村 周 一
(コード番号 3023 東証第一部)
問合せ先 常務取締役管理本部長 窪 田 義 広
( TEL: 03-3668-8231)
社内調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ
当社は、2021 年4月9日付「不適切な会計処理の可能性に係る社内調査委員会設置に関するお知らせ」に
て公表いたしましたとおり、当社連結子会社である旭テック株式会社の従業員が不適切な会計処理を行って
いた疑い(以下「本件疑義」といいます。)が判明したため、監査等委員、顧問弁護士及び社外公認会計士を
委員とする社内調査委員会を立ち上げて調査を開始いたしました。さらに、2021 年 5 月 19 日付「社内調査委
員会の構成の一部変更ならびに調査状況に関するお知らせ」にて公表いたしましたとおり、不正調査事案の経
験豊富な外部弁護士を3名追加し、本件疑義の事実関係等について徹底した調査を進めてまいりましたが、本
日、社内調査委員会より調査報告書を受領いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。
記
1.社内調査委員会の調査報告の内容
本件事案は、当社連結子会社である旭テック株式会社の従業員が、自らの担当する特定の取引先との取
引において、赤字工事の発覚を免れるために、工事番号を付け替えることにより売上及び売上原価を先送
りするなど不適切な会計処理をしていたもので、その詳細な内容は、添付の「調査報告書」のとおりです。
なお、当該調査報告書につきましては、個人情報及び機密情報保護等の観点から、個人名等、部分的な非
開示措置を施しておりますことをご了承ください。
2.再発防止策等について
当社は、社内調査委員会による調査結果及び再発防止策に係る提言を真摯に受け止め、具体的な再発防止策
を策定の上、実行してまいります。
なお、再発防止策の具体的内容につきましては、決定次第、あらためてお知らせいたします。
3.今後のスケジュール
当社は、社内調査委員会の調査結果に基づき、過年度の連結財務諸表に与える影響額を確定させた上で、
2021 年6月 30 日付「2021 年3月期有価証券報告書および 2022 年 3 月期第1四半期報告書の提出期限延長に
係る承認申請書提出のお知らせ」にて公表いたしましたとおり、延長承認された提出期限である 2021 年8月
27 日までに、第 119 期(2021 年3月期)有価証券報告書、第 120 期(2022 年3月期)第1四半期報告書及び
過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を関東財務局に提出するとともに、同日付で 2021 年3月期決算短信、
2022 年3月期第1四半期決算短信及び過年度の訂正決算短信について開示させていただく予定でございます。
株主の皆様、お取引先様、その他すべてのステークホルダーの皆様に多大なるご心配とご迷惑をお掛けいたしま
すことを深くお詫び申し上げます。
以 上
令和3年8月17日
ラサ商事株式会社 御中
調 査 報 告 書
社内調査委員会
委員長 弁護士 佐 藤 恭 一
委 員 弁護士 柿 本 輝 明
委 員 社外取締役監査等委員 柿 原 康一郎
委 員 取締役常勤監査等委員 朝 倉 正
委 員 公認会計士 藤 田 裕
委 員 弁護士 岸 見 直 幸
委 員 弁護士 江 黒 早耶香
目次
第1 調査の概要........................................................................................................... 1
1 調査開始及び社内調査委員会設置の経緯 ............................................................... 1
2 当委員会の構成........................................................................................................ 1
3 当委員会の目的........................................................................................................ 1
第2 調査手続の概要及び調査の方法 ........................................................................... 2
1 調査の基本方針........................................................................................................ 2
2 調査実施期間 ........................................................................................................... 2
3 調査対象期間 ........................................................................................................... 2
4 調査の方法 ............................................................................................................... 3
5 調査の前提と限界 .................................................................................................... 4
第3 当社の概要等 ....................................................................................................... 4
1 当社の概要 ............................................................................................................... 4
2 設立からの経緯・沿革............................................................................................. 5
3 当社の企業統治体制及び組織構成 .......................................................................... 5
4 当社グループの主要な経営指標等の推移 ............................................................... 6
5 当社グループの概要 ................................................................................................ 7
第4 工事番号の付替えによる不適切な会計処理 ......................................................... 8
1 不正な会計処理の前提となった背景事実 ............................................................... 8
2 甲との取引の類型及び現場における業務フロー .................................................. 11
3 不適切な会計処理の方法 ....................................................................................... 12
4 未成工事支出金に係る当社の認識及び取組み ...................................................... 15
5 不正会計処理が発覚した経緯................................................................................ 15
6 本件事案への関与者及び不正の組織性についての検討........................................ 16
7 甲構内の工事からの撤退 ....................................................................................... 17
第5 類似事案の有無について ....................................................................................17
1 類似事案の有無に関する調査方法 ........................................................................ 17
2 類似事案の有無に関する調査結果 ........................................................................ 19
第6 会計上の影響と分析 ...........................................................................................23
1 本件事案による会計上の影響................................................................................ 23
2 当社の過年度連結財務諸表に対する影響 ............................................................. 24
第7 発生原因の分析...................................................................................................26
1 組織体制に関する問題点 ....................................................................................... 26
2 当社によるガバナンス上の問題点 ........................................................................ 28
3 不十分なコンプライアンス教育 ............................................................................ 29
4 内部統制機能に関する問題点................................................................................ 29
第8 再発防止策の提言 ...............................................................................................29
1 牽制機能を果たし得る組織への転換 ..................................................................... 29
2 当社によるグループ内部統制機能の強化 ............................................................. 31
3 コンプライアンス意識の涵養及び研修等を通じた指導........................................ 32
4 内部統制を強化するための施策 ............................................................................ 32
第9 結語 ....................................................................................................................33
第1 調査の概要
1 調査開始及び社内調査委員会設置の経緯
ラサ商事株式会社(以下「当社」という。)は、2021 年 3 月 19 日、当社連結子会社
である旭テック株式会社(以下「旭テック」という。)第一工事事業部担当部長 A(以
下「A」という。)の申告により、旭テックの売上及び売上原価を先送りにするなど不適
切な会計処理をしていた疑いがあること(以下「本件事案」という。
)を認知した。
これを受け、当社は、同日、当社リスクマネジメント委員会による社内調査チームを
組成して社内調査に着手したが、より厳格な調査を行うとともに、調査の客観性及び信
頼性を高めるため、同年 4 月 9 日、不正調査の専門性を有する弁護士及び公認会計士
を含む社内調査委員会(以下「当委員会」という。
)を設置した。
2 当委員会の構成
当委員会の構成員は以下のとおりである。
委員長 佐藤 恭一 (弁護士 シティユーワ法律事務所)
委 員 柿本 輝明 (弁護士 柿本法律事務所)
委 員 柿原 康一郎 (当社社外取締役監査等委員)
委 員 朝倉 正 (当社取締役常勤監査等委員)
委 員 藤田 裕 (公認会計士 辻󠄀・本郷監査法人)
委 員 岸見 直幸 (弁護士 シティユーワ法律事務所)
委 員 江黒 早耶香 (弁護士 シティユーワ法律事務所)
上記委員会の構成員のうち、シティユーワ法律事務所に所属する弁護士 3 名が当委
員会に加わったのは 2021 年 5 月 19 日である。なお、当委員会設置時点で調査委員に
就任した森脇幸治(前当社社外取締役監査等委員)は、任期満了により当社監査等委員
を退任したことに伴い同年 6 月 29 日付けで調査委員を辞し、同様に中村佳幸(公認会
計士 中村佳幸公認会計士事務所)は、業務の都合等により、同年 7 月 13 日に調査委
員としての活動を停止した。
また、補助者として、シティユーワ法律事務所所属の弁護士 2 名、辻󠄀・本郷監査法人
所属の山下大輔公認会計士、辻󠄀・本郷ビジネスコンサルティング株式会社所属の公認不
正検査士 1 名及び中小企業診断士 2 名、株式会社 KPMG FAS 所属の公認会計士等の
不正調査の専門家 6 名が調査に携わっている。
3 当委員会の目的
当委員会の目的は
①本件事案の事実関係調査
②類似事案の有無の調査
1
③本件事案の会計上の影響の検討
④本件事案の発生原因の分析及び再発防止策の提言
である。
第2 調査手続の概要及び調査の方法
1 調査の基本方針
本件事案は、旭テックの第一工事事業部担当部長である A が、甲(以下「甲」とい
う。)との取引において、赤字工事の発覚を免れるために、工事番号を付け替えること
により売上及び売上原価を先送りにするなど不適切な会計処理をしていた疑いがあっ
たところ、同人以外にも、旭テックに所属する役員・社員が本件事案に関与している可
能性を否定できなかったため、同社の関係者、同社の取引先等を対象に広くヒアリング
を実施することにした。
本件疑義の事実解明のみならず、類似事案の有無や当社による旭テックをはじめと
する当社グループ会社の内部統制を幅広に検証することにより、十分な原因分析を行
うとともに実効性のある再発防止策を検討するべく、調査対象を旭テックに限定せず、
当社グループ全社(当社、旭テックを含む連結子会社 3 社及び持分法適用会社 1 社)
とした。
また、本件事案を解明するため、当社及び旭テックに現存する資料を精査するととも
に、甲との取引を担当していた A、A の上司である同社会長 B(以下「B」という。
)と
同社代表取締役 C(以下「C」という。、同社総務・経理部の D 課長(以下「D」とい
)
う。)及び E 課員(以下「E」という。、後記のとおり、類似事案の調査に関連して、
)
旭テック第一工事事業部担当部長である F(以下「F」という。、当社常務取締役兼管
)
理本部長兼旭テック社外取締役(2019 年 10 月 6 日から 2020 年 3 月 31 日まで当社経
G
理部長を兼任) (以下「G」という。 及び当社経理部長である H
) (以下「H」という。)
に関しては、当社又は旭テックが貸与しているパソコン(以下「PC」という。)及び携
帯電話等についてデジタル・フォレンジック調査を実施することとした。
さらに、同種事案及び類似事案を調査する目的から、社内向けのアンケートを実施す
るとともに、臨時通報窓口を設置することとした。
2 調査実施期間
当委員会が本報告書に係る調査に要した期間は、2021 年 4 月 9 日から同年 8 月 16
日までである。
3 調査対象期間
本件事案に関する調査対象期間は、2008 年(A による不正経理が開始された時期)
から 2021 年 3 月 19 日(A が本件事案を申告した日)までである。
2
また、類似事案に関する調査対象期間は、当社の連結業績に与える影響の有無を確認
当社が旭テックを子会社化する旨決定した 2014 年 12 月 15 日から 2021
する観点から、
年 3 月 19 日までとした。
4 調査の方法
当委員会による本件事案及び類似事案の調査(以下「本調査」という。)は、以下の
方法で行った。なお、調査の重複・非効率を避けるため、社内調査段階における調査の
一部を利用した。
(1)社員及び取引先等のヒアリング
2021 年 4 月 6 日から同年 8 月 13 日までの間に、①旭テックの工事担当者、②総務・
経理部の経理担当者及び役員、③当社の役職員、④取引先その他外部関係会社の役員及
び社員等合計 29 名に対して延べ 46 回のヒアリングを実施した。
詳細は別紙のとおり。
(2)取引関連資料の精査・取引データの分析
当委員会は、調査にあたり、旭テックから、本件事案に関係する取引先との取引デー
タ、並びに注文書、検収書、請求書(明細含む。
)及び会計伝票(会計処理に関する資
料含む。)等の取引関連書類・証憑の提出を受け、また、これらの資料を精査・分析し
た。
(3)デジタル・フォレンジック
当委員会は、本件事案及び類似事案に関連する社員及び経理部門のコミュニケーシ
ョン関連データ及びドキュメントデータの解析を行うため、旭テックの A、B、C、D、
E 及び F、当社の G 及び H のメールサーバーのデータ、会社貸与 PC、クラウド環境
上のデータ保管領域及び会社貸与携帯電話を保全し、当該データをレビューした。
前記 8 名のレビュー対象者のメールサーバーデータ及び PC データ等については、
データプロセッシングを実施し、専用のレビュー環境にデータをアップロードした。
これらアップロードしたメール及びドキュメント(26 万 4403 件)は専用のレビュ
ー環境においてインデックス処理(全文検索のための下処理)を施した上で、本件事案
に関する疑義に関連するキーワード及び一般不正キーワードによる検索のほか、特定
該当したメール 万 0783 件)
期間における特定者とのやり取り等による検索を行い、 (3
及びドキュメント(1811 件)をレビュー対象として、分析及び検討を行った。
上記のレビュー対象メール、ドキュメント及びデータ(以下「メール等」という。)
について、関連するメール等の抽出基準等を明記したレビュープロトコルに従って、レ
ビューアーが一定のタグ付け(「重要事項」「参考事項」等による区分)をしてレビュ
、
ー作業を実施した。
3
その結果、本件事案に関連するメール等として 224 件を抽出し、このうち重要と認
められたメール及びデータ等については、当委員会が実施するヒアリングにおける事
実確認の参考資料とするなどして活用した。
(4)社内アンケート
同種事案及び類似事案の調査を目的として、2021 年 4 月 19 日から同月 27 日までの
間及び同年 6 月 2 日から同月 14 日までの間の 2 回にわたり、当社及び子会社の役員の
ほか、課長以上の社員合計 110 名を対象として、売上及び売上原価の先送りを含む不
正会計について、実行・関与又は見聞きしたことの有無等に関して回答を求める記名式
のアンケート調査を実施し、対象者全員から回答を得た。アンケート調査の実施に当た
っては、当委員会の委員及び調査補助者のみが閲覧可能な方法による回答を指定し、対
象者全員から回答を得た上で、必要に応じてフォローアップの調査を実施した。
(5)臨時通報窓口
前記(4)と同様の目的から、当社及び子会社の役員及び社員全員を対象として、2021
年 6 月 1 日から同月 15 日までの間、シティユーワ法律事務所所属の弁護士 2 名を通報
先とする臨時通報窓口を設置し、メール及びポータルサイトへの案内文の掲示を通じ
て周知した。
5 調査の前提と限界
本報告書は、当社グループの関係者及び取引先に対して任意での協力を求め、それに
より得られた資料・情報等に依拠して、可能な限り適切と考える調査及び分析を行った
結果をまとめたものであるが、調査実施者には強制力を伴う調査権限がないため調査
には限界が存在した。後日、重要な情報等が開示又は提供されていないことが明らかと
なった場合には、本報告書における事実認定や評価が変更される可能性があることを
留保する。
第3 当社の概要等
1 当社の概要
会社名 ラサ商事株式会社
設立 1939 年 1 月
事業内容 資源・金属素材関連事業、産機・建機関連事業、環境設備関連事業、プ
ラント・設備工事関連事業、化成品関連事業及び不動産賃貸関連事業
上場市場 東京証券取引所市場第一部
決算日 3 月末日
4
代表者 代表取締役社長 井村周一
資本金 2,076,921 千円(2021 年 3 月 31 日現在)
本店所在地 東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目 11 番 5 号
社員数 282 名(2021 年 3 月 31 日現在の連結での人数。ラサ商事株式会社単
体では 196 名)
グループ会社 イズミ株式会社(化成品)
旭テック株式会社(プラント・設備工事)
ラサ・リアルエステート株式会社(不動産賃貸)
会計監査人 八重洲監査法人
2 設立からの経緯・沿革
1939 年 1 月 ラサ工業株式会社の製品を販売する目的でラサ商事株式会社を設立
1950 年 2 月 本社を東京都中央区日本橋茅場町に移転
1984 年 7 月 大平洋機工株式会社に出資し、ラサ商事株式会社の関連会社とする
1998 年 11 月 本社を東京都中央区日本橋箱崎町に移転
2006 年 2 月 東京証券取引所市場第二部に上場
2007 年 3 月 東京証券取引所市場第一部に上場
2011 年 10 月 東京都中央区日本橋蛎殻町に自社ビル建設、本社を移転
2012 年 1 月 イズミ株式会社の株式を取得
2014 年 3 月 イズミ株式会社を株式交換により子会社化
2014 年 12 月 旭テック株式会社を子会社化
2015 年 2 月 ラサ・リアルエステート株式会社を新設分割により設立し、ラサ商事株
式会社の不動産賃貸関連事業を承継
3 当社の企業統治体制及び組織構成
監査等委員会設置会社である当社の企業統治体制は、取締役会、監査等委員会、指名・
報酬委員会、内部監査室の機関から構成されており、2021 年 8 月現在、取締役会には
監査等委員でない取締役 6 名と監査等委員である取締役 3 名
(うち 2 名が社外取締役)
で構成されている。また、社長直轄の内部監査室を設置しており、各年度で内部監査計
画を策定し、日常業務の適正性、合理性、効率性を監査するべく、原則として年1回、
グループ会社を含めた全部門を対象に監査を実施している。また、当社の監査制度は、
監査等委員会、会計監査人及び内部監査室が適切に連携を取り、合理的かつ効果的な監
査体制の構築を目指している。
2020 年 3 月期の有価証券報告書によれば、当社の組織構成は、
以下のとおりである。
5
株 主 総 会
選任・解任 選任・解任 選任・解任
取 締 役 会
答申 監査等委員会
取締役 取締役
指名・報酬委員会
(監査等委員を除く) (監査等委員) 連携
諮問
監査・監督
選定・解職
代表取締役社長
指示
事前審議 事前審議
経 営 会 議 各種委員会 連携
内部統制委員会 内部監査室 会計監査人
指導・監督
人権啓発推進委員会
リスクマネジメント委員会
その他委員会
監査
各 部 門
グループ会社
取締役/執行役員
監査
4 当社グループの主要な経営指標等の推移
(単位:百万円)
決算年月 2015/3 2016/3 2017/3 2018/3 2019/3 2020/3
売上高 28,034 30,523 29,937 29,076 31,755 29,264
経常利益 1,443 1,492 1,639 2,057 2,264 2,234
当期純利益 847 944 1,058 1,518 1,630 1,698
純資産額 11,421 12,045 12,672 15,411 15,607 16,713
6
5 当社グループの概要
当社グループの事業分野及び概要は以下のとおりである。
国内メーカー、 官公庁、国内外メーカー、
国内外ユーザー 国内外メーカー 国内素材メーカー
エンジニアリング会社等 エンジニアリング会社等
賃貸 販売 設計、施工 販売 販売、施工 設計、施工、販売
メンテナンス メンテナンス メンテナンス
当
ラサ・リアルエステート 旭テック株式会社
社 イズミ株式会社 ※1 当社
株式会社 ※1 ※1
グ
ル
プラント・設備工事
ー 不動産賃貸関連 化成品関連 資源・金属素材関連 産機・建機関連 環境設備関連
関連
プ
(主要商品) (主要商品)
仕入 仕入 総販売 仕入 仕入 総販売 仕入
代理店契約 代理店契約
※1 連結子会社 国内素材 国内外 国内外機械・電気・素材メーカー等
国内材料卸会社等
※2 持分法適用会社 メーカー 原料生産会社 (大平洋機工株式会社) ※2
7
第4 工事番号の付替えによる不適切な会計処理
1 不正な会計処理の前提となった背景事実
(1)旭テックの概要
旭テックは、1988 年 8 月に千葉県市原市内で設立され、石油精製、石油化学プラン
トの設計、施工、メンテナンス工事、大規模インフラ設備(建築施設の冷暖房、地域冷
暖房、ごみ焼却場、下水処理場)の設計、施工、メンテナンス工事等を業務内容として
おり、2014 年 12 月に当社の完全子会社となった。これ以降、当社は、旭テックに対
し、常勤取締役、社外取締役、監査役、総務・経理部長等を派遣しており、2020 年 5
月には当社出身の C が代表取締役社長に就任した。
2021 年における旭テックの組織体制は以下のとおりである。
取締役会
取締役会長
代表取締役社長
安全衛生管理室
管理部
第一工事事業部 工事部
技術部
営業推進部
第二工事事業部 工事部
工場
総務・経理部
(2)当社による旭テックの管理体制
当社は、上記のとおり、旭テックに役職員を派遣して経営及び実務に従事させている
ほか、当社の内部監査室による年に 1 回程度の監査、グループ連絡会による情報共有
を通じた管理体制を構築している。
8
(3)旭テックの主要な経営指標等の推移
(百万円)
決算年月 2015/3 2016/3 2017/3 2018/3 2019/3 2020/3
売上高 2,200 3,590 4,501 3,853 5,037 5,307
経常利益 107 253 277 189 267 348
当期純利益 198 156 189 120 174 228
純資産額 1,380 1,446 1,636 1,758 1,932 2,159
※2014 年 12 月に当社の子会社となることが決定されたため、決算期が 7 月から 3 月に変
更され、2015 年 3 月期の対象は 8 か月間である。
第 32 期(2020 年 3 月期)における工種別及びプラント種別売上高集計
(円)
工種別売上高 全体 4,823,194,539
配管工事 3,675,046,266
動機械仕上工事 771,415,324
鋼構造物工事 371,622,949
塗装工事 5,110,000
(円)
プラント種別 全体 4,998,049,632
売上高 石油精製・石油化学プラント・
LNG他 2,418,451,933
発電設備 1,427,590,867
大規模インフラ設備
(地域冷暖房他) 848,929,000
下水処理場 223,239,832
食品、薬品、クリーンルーム内
プラント他 79,838,000
9
2015年3月時点における旭テックの社員は39名、売上は約22億円であったが、主要
顧客である京葉臨海コンビナートの新設、増改修、定期修繕の受注及びエネルギー関
連への取組みを強化したことに加え、製紙業界への参入を果たしたことなどから、業
績が向上し、2021年7月時点での社員は71名、2020年3月期の売上は約53億700万円と
なった。
(4)業績給制度
旭テックにおいては、係長以下の社員については、通常一般にみられる月給・賞与制
を採用しているところ、課長職以上の管理職については年俸・業績給制を選択できるよ
うにしていた。かかる業績給は、前年度の個人的実績をベースに設定されたノルマを達
成したことを前提に、工事粗利のうち目標超過額の 3 割を支給するものであった。そ
のため、大規模工事案件の担当であれば、業績給を含めて数千万円を得ることも可能な
制度設計であり、代表取締役よりも高額の報酬を得ている管理職も存在していた。他方、
ノルマを達成できなかった場合には、目標到達までの差額の 3 割を精算金として支払
うことになっており、支払えない場合は旭テックからの貸付として借用書を作成する
などしていたため、ときに該当する従業員に過大な負担を強いる場合もあった。なお、
借用書は、B が代表取締役に就任した 2011 年に廃止されている。
2014 年 12 月に当社が旭テックを買収した後は、上記のような投機的ないしは射幸
的ともいうべき業績給は改善を要するものと判断し、工事粗利のうち目標超過額の 3
割、目標未達の場合の 3 割については、各 1 割となった。
(5)特定取引先及び本件事案に関係する会社について
ア 甲
甲は、各種プラントの機械設備・電気制御設備・受配電設備の企画・設計・建設、メ
ンテナンス等を業務内容としている。旭テックに対しては、プラントの機械設備のメン
テナンス等の業務を発注しており、甲構内に常設の事務所を設置させている。
イ 旭テックの協力会社
旭テックは、元請会社から発注を受けると、協力会社に業務を発注して工事管理をす
る業態であり、2020 年 12 月 31 日当時、甲からの発注に対応していた協力会社は 7 社
存在した。
(6)旭テックにおける金属精錬業の売上について
2016 年 3 月期から 2020 年 3 月期に旭テックにおける金属精錬業の売上高は以下の
表のとおりである。
10
(単位:百万円)
決算年月 2016/3 2017/3 2018/3 2019/3 2020/3
売上高 348 350 311 326 324
2 甲との取引の類型及び現場における業務フロー
(1)取引の類型
ア 建設工事
甲の設備に関する大規模な資材工事を行う。建設業としての受注のため注文書が発
行され、受注金額は受注時に確定する。
イ 金属精錬業
各種設備の小規模な修繕メンテナンスや部品交換等を行う保全工事であり、旭テッ
クは甲構内に常設した事務所を拠点としてこれらの作業にあたっている。
(2)金属精錬業の特徴と業務フロー
ア 金属精錬業の特徴
金属精錬業は、甲構内において修繕等が必要になった都度甲から発注を受けること
に特徴があるものであるが、慣例として正式な注文書は発行されず、甲の現場担当者
が作成する作業指示書や口頭でのやり取りを通じて受発注が成立していた。また、金
属精錬業は、一時間当たりの報酬額が定められた単価契約であり、甲から旭テックに
支払われる単価、旭テックから協力会社に支払う単価がそれぞれ決められていた。旭
テックは、甲から依頼書が来ると、見積もりを取らずに直ちに協力会社に業務を発注
していたため、受注成立時には受注金額が確定せずに、協力会社による作業完了後、
実績として発生した工数を基に甲と交渉を行い、時間単位で受注金額が確定する。
他方、協力会社に支払う外注費は、事前に取り決められた単価に基づき、実際の稼働
時間に応じて日単位で支払を行うため、甲との交渉内容によっては、甲からの受注金額
が協力会社に対する支払金額を下回り、旭テックにとって赤字工事となる可能性を含
んでいた。
金属精錬業においては、甲からの依頼に機動的に対応する必要があったため、作業発
生の有無に関わらず協力会社を現場に常駐させておく必要があり、甲から依頼がなけ
れば、協力会社を待機させておくことに伴う費用も旭テックが負担する必要があった。
イ 金属精錬業の業務フロー
A が関与していた当時の受注から売上計上までの具体的な業務フローは下記のとお
りである。
①甲から工事内容が記載された「安全衛生対策書」を工事担当者が受領することで施
工依頼を受注し、工事担当者は受注工事を管理する「保全工事リスト」に、工事件
11
名、工事番号、受注日等の基本情報を入力する。
②工事担当者は、甲と施工日を調整して「安全衛生対策書」に追記し、協力会社へ施
工を外注し、協力会社をして工事を実施させる際に現場管理をする。
③工事完了後、工事担当者は、工事実績を「保全工事リスト」に入力し、工事実績に
基づき実質的な見積書となる「検収依頼リスト」に甲へ請求する際の根拠となる稼
働時間を入力し、甲に提出する。
④工事担当者は、「検収依頼リスト」に基づき甲と交渉して金額を確定させた後に工
事の概要及び作業時間が記載された「作業依頼書」を甲から受け取り、工事完了日
を記入して押印の上、甲に提出する。
⑤A は甲が作成した「検収通知」を受領すると、旭テック管理用の工事番号を「検収
通知」に手書きし、経理担当者に提出する。
⑥経理担当者は、A が「検収通知」に記載した工事番号に基づいて、工事管理システ
ム上で完成工事としての処理を行う。
(3)月次工番
旭テックにおいては、新規受注時に、工事ごとに受注伝票を起票して工事番号を採番
したうえで工事現場の管理を行う個別工番と、工事ごとに請求書を作成せずに 1 か月
単位でまとめて計算する単一の工事番号で管理する月次工番等が存在していた。この
うち、甲から発注される金属精錬業においては、小規模でかつ受注件数が多く(多い月
では数十件程度)、個別工番にすると事務処理が煩雑になるため、月次工番を採用して
いた。このような月次工番においては、甲の検収通知書にも個別の工事名称は記載され
ておらず、
「保全工事」等といった一般的名称が付されているにとどまり、他の工事と
識別可能となるように記載されていなかった。工事担当者である A は、金属精錬業の
収支及び旭テックの未回収額を把握することが可能であったが、他方、旭テックの経理
担当者は、工事ごとの詳細な内容までは把握しておらず、甲からの振込がどの工事に対
応するかを A に確認しなければ、消し込みの対象となる未収金を把握することができ
なかった。
金属精錬業においては、同一の工事番号において複数の工事が管理されていたこと
と、甲との交渉は A に委ねられていたこととが相俟って、旭テックは甲からの振込が
どの工事に対応するかを把握できておらず、もっぱら A による自己申告に依拠してお
り、内容が真実であるかの検証もしていなかった。
3 不適切な会計処理の方法
(1)甲との取引において未成工事支出金が増加した経緯
甲との取引のうち、金属精錬業に係る工事においては、甲から旭テック、旭テックか
ら協力会社に対し、個別の単価契約に基づいて報酬がそれぞれ支払われていたところ、
12
甲から受領する報酬よりも協力会社へ支払う報酬の方が高額となり、金属精錬業は元
より赤字傾向にあった。
A は、金属精錬業において多数の赤字工事が発生していることが旭テックに発覚す
れば、自身の責任問題に発展する可能性があるため、赤字工事の発覚を免れたいと考え
た。そこで、A は、甲の金属精錬業では月次工番を採用していたことにより工事番号の
付替えが発覚しにくかったことに加え、旭テックの経理担当者が工事番号と甲からの
入金の関連性を十分に理解しておらず、自身が両者の対応関係の照合を全面的に任さ
れていたことを利用し、2008 年頃から工事番号及び売上の付替えを繰り返すようにな
った。
その結果、実態としては甲の金属精錬業では赤字工事が多数存在していたにもかか
わらず、甲から工事代金の入金を受けると、工事番号を付け替えて別の工事に充当する
ことにより、赤字工事の存在が隠ぺいされた。また、2015 年頃からは受注数と売上が
減少傾向になったことに伴い、新規工事に基づく甲からの入金も減少したため、工事番
号を付け替えて別の工事に充当するための原資が徐々に不足していき、完成工事とし
て計上できずに未成工事支出金が増加し続けることとなった。 A
この点、 が甲の担当を
引き継いだ 2007 年頃には未成工事支出金はほぼ存在しなかったものの、その後、金属
精錬業の受注が増えるにつれて増加していき、B が旭テックの代表取締役に就任した
2011 年頃には約 1 億円にまで達した。
(2)未成工事支出金の削減の不奏功
A は、甲からの回収が奏功していないことなどから、未成工事支出金が増加している
可能性があることは認識していたが、正確な金額は把握しておらず、未成工事支出金の
増加を解消するための施策を講じることもなかった。また、A は、甲との取引において
設定していたノルマを達成しているかを、少なくとも 1 年に一度は確認していたが、
利幅の大きい建設工事では利益が出ていたことから、金属精錬業と建設工事を合算し
た収支でノルマが達成できていれば問題なしと判断し、金属精錬業単体での収支の確
認と検討を十分に行っていなかった。
B は、代表取締役に就任した 2011 年 8 月に甲との取引において未成工事支出金が存
在していることを認識し、回収の見込みを A に尋ねた。これに対し、A は、未成工事
支出金を確認してありのままを B に報告すれば、長期間にわたって回収できていない
ことが露見するおそれがあると考え、未成工事支出金はまだ甲に請求していないもの
であるが回収できるなどと虚偽の説明をした。A は、甲から回収できると B に伝えて
いたため、甲担当者との交渉においても旭テックへすみやかに支払うように働きかけ
を行い、甲から支払を受けたものについても、古い時期の工事の支払から順次充当する
などしていたが、回収予定から 1 年以上経過しても甲から支払を受けられない状態は
改善されず、結局、未成工事支出金を削減することはできなかった。
13
このような実情に鑑み、B は、A に対し、甲から回収できていないことが理由で完成
工事として処理できず未成工事支出金が滞留している工事をリスト化するように指示
した。しかし、A は、上記の事情により甲から回収できる金額を正確に把握できておら
ず、業務が多忙であったことなどを理由に、過去の未回収分を検証しなかった。また、
甲担当者と協議するなどして旭テックが回収できる金額を正確に把握することは可能
A
であったと認められるが、 はその労を惜しみ、他の業務で収益を上げた方が効率的で
あるなどと考え、甲からの回収に時間と労力を割くことを諦めた。
(3)不適切な会計処理に及んだ動機
旭テックにおいては、年俸制を選択した社員には前年度の粗利をベースにノルマが
設定されていたところ、ノルマを達成できない場合には翌年度の基本給が減額された
上で高額の精算金を支払うことになっており、収入を維持するにはノルマを達成する
必要があった。この点、A も年俸制を選択しており、ノルマを達成するのは当然であ
り未達は許容されないような社内の雰囲気を感じていたため、自身に課せられたノル
マは必達の課題であると認識しており、かかる認識をもとにたとえ不適切な会計処理
に及んでもノルマを達成したいと考えた。
(4)工事番号の付替え操作及び売上計上時期の先送り
A は、未成工事支出金のうち回収できないものが出るおそれがあること、又は回収
不能なものがあることを認識していたが、かかる不都合な事実が発覚することを恐
れ、甲からの受注を管理する工事番号を付け替えることにより、売上の計上時期を不
正に先送りしていた。
本来であれば、A は、月末に甲から検収通知書が交付されると、甲担当者が記載し
た工事内容ごとに旭テックが管理用に付けた工事番号のどれに該当するかを手書きで
記入して、経理担当者へ検収通知書を回付して会計処理を依頼する必要があった。
しかし、A は、検収通知書に工事番号を書き入れる際に、甲担当者が記載した工事
内容との対応関係をあえて無視し、古い工事番号に係る入金であるかのように装うべ
く、古い工事番号から順に充当されるように対応関係を手書きで書き入れ、経理担当
にはこのような不正な工事番号の付替えをしていることは伏せたままで会計処理に回
し、売上計上時期を先送りする操作をしていた。
経理担当者は、金属精錬業の工事番号には複数の工事が含まれていたことに加え、
甲が注文書及び請求書を作成していない場合があったため、独自に検証する手段がな
く、A により手書きされた工事番号を正しいものとした処理をしていた。
かかる手口により、甲からの入金と工事番号の対応関係を無視して、古い工事番号の
ものから順に入金を受けたかのように処理させることで、見かけ上は古い工事番号に
係る代金は甲から回収できているかのように装っていたが、実際には甲から回収でき
14
ていないものが含まれていた。そのため、このような不正な処理を繰り返すうちに、古
い工事番号は回収済みになったものの、若い工事番号には甲から回収できるはずのな
いものが多数含まれることになった。
2015 年頃、B は、甲の金属精錬業に関する支払の有無をリスト化するように A に指
示し、工事名のほか、依頼日、着工日、完了日、下請会社への支払の有無、甲への請求
の有無が記載されたリストを作成して管理するように改めた。
そして、A は、このようなリストを作成して整理していくうちに、甲から回収できる
ものはほぼ回収しており、回収できない金額が約 2 億 4000 万円にまで達していたこと
を認識した。しかし、A は、このような不正な処理をしていたことやノルマを達成でき
ないことへの非難を避けたいとの思いから、旭テックには申告しなかった。
4 未成工事支出金に係る当社の認識及び取組み
旭テックにおける未成工事支出金の滞留は、2016 年 8 月頃以降の当社取締役会にお
いて複数回報告されており、甲との取引において回収が遅延する傾向にあることや未
成工事支出金が増えたことなどに関しても情報共有されていた。しかしながら、この報
告内容は B が指示して A に報告させた内容を深堀りするようなものではなく、
「未成
期間が長い」「改善申入れをしたら多少短縮が見られた」「再度、検収早期化をお願い
、 、
している」等の内容にとどまり、甲への信用力と相俟って、A の報告に疑いを持つ者が
いたとは認められない。
ただし、当社は、未成工事支出金の増加及び滞留を許容していたわけではなく、可能
な限り甲からの回収を促進する方針であったものの、この時点では A による不正行為
が明るみに出ていたわけではなかったため、甲との交渉を A に委ねることに異を唱え
る者はいなかった。
5 不正会計処理が発覚した経緯
(1)八重洲監査法人からの指摘
2020 年 7 月に当社会計監査人に就任した八重洲監査法人は、当社に対し、旭テック
の財務諸表及び内部統制監査において、甲の未成工事支出金の残高が売上に比して過
大であることや、発注書が発行されないまま施工している工事が存在することなどを
指摘した。当社は、旭テックをして、甲との取引実態に関して調査させることとし、こ
れを受け、B 及び C(以下「B ら」ということがある。
)は、A に対し、甲の現場にお
ける未成工事支出金が増加した理由などを調査するように指示した。
A
これに対し、 は、未成工事支出金のうち回収不能なものが多数含まれていることが
発覚するのを免れるため、甲が発行した検収通知と旭テックにおける工事番号を照合
するための対照表(以下「対照表」という。
)を偽造し、当初想定より工事が長期化し
ていることや甲の都合により支払が遅延していることが原因であるものの、回収する
15
ことは可能である旨虚偽の説明をし、自ら作成した内容虚偽の対照表を B に提出した。
すると、A は、B から、甲がその内容を了承した証跡とするために、対照表に甲担当者
の押印をもらうように指示されたため、甲に許可を得ることなく同社担当者名義のゴ
ム印を偽造するなどした上、対照表に押印することにより、甲も了承しているように装
った。B らは、甲と直接交渉して支払を求めることも検討したものの、甲との関係の悪
化を恐れてこれを行わず、A の説明を信じて継続的に改善を図るよう指示をしていた。
その結果、B らは、未成工事支出金に滞留リスクはあるものの、甲の現場では年間約
3 億円の売上があり、全体の収支が赤字にならないのであればメリットがある旨判断し
た。しかし、その後も未成工事支出金の滞留は十分に解消されることがなかったため、
B らは A に対して更なる改善を求めたところ、A は、甲との間では未成工事支出金に
係る支払遅延を解消するべく継続的に交渉しているなどと虚偽の説明を繰り返し、交
渉経過を記録した甲名義の書類を偽造して提出するなどしていた。
(2)当社の対応
当社監査等委員は、このように未成工事支出金に係る問題が遅々として解決しない
ことに業を煮やし、2021 年 2 月に開催された 2 度の取締役会において、2021 年 3 月
下旬までに甲担当者と交渉するなどして解決するように要請した。これを受け、C は、
A の説明によれば甲の事情により未成工事支出金に関する問題が一向に解決しないも
のと理解し、A から提出された書類等を根拠に甲に対して支払を求めることで未成工
事支出金を圧縮しようと考え、甲担当者と面会する日程を調整するように指示した。A
は、実際には甲担当者との間では何ら調整していなかったものの、2021 年 3 月 16 日
に甲担当者と面会する約束を取り付けたなどと虚偽の説明を行った。
A は、甲担当者と C を面会させるとこれまでの説明が虚偽であったことが発覚する
などと考え、面会予定日の前日である 2021 年 3 月 15 日に、B らや旭テック関係者に
告げずに逃走した。B らは、A と連絡が取れなくなったことで警察に A の捜索願を届
C A
け出た。 は、 から甲担当者との面会を設定していると聞いていた日時に甲を訪問し
たものの、面会は設定されていないことが判明し、当該甲担当者は他の予定があるとい
う理由で面会は実現しなかった。その後、A は、警察により発見され、未成工事支出金
が増加した原因は工事番号を付け替えたことが原因であることや、甲との交渉経緯を
記録した書類は偽造したものであるなどを自認した。
6 本件事案への関与者及び不正の組織性についての検討
本件調査においては、関係者のヒアリング及びデジタル・フォレンジックを実施して、
A 以外の関与者の有無や組織的な不正の存否を検証したものの、B をはじめいずれの
ヒアリング対象者も、本件不正を認識したのは A が自認した以降であり、組織的に関
与した事実は全くないなどと述べており、デジタル・フォレンジック調査によってもこ
16
れと齟齬するメール等は発見されなかった。そのため、本件事案において、売上及び売
上原価を先送りしたのは A の判断であり、かかる不正行為は、取引先である甲及び協
力会社の各担当者にも告げずに、独断で秘密裏に行われていたものであり、旭テックの
代表取締役以下の役員、A の上長である事業部長、A の部下が知るところではなかっ
た。
A
この点、 は、甲との取引において多額の未回収金が存在することや赤字工事が存在
することが発覚することを免れるために本件不正に及んだが、これらは全て 1 人の判
断でやったことである旨述べ、本件事案の関与者の存在や組織的な不正を否定してい
るが、かかる A の説明は、本件調査の過程で入手した各種資料とも整合的である。
そのため、本件事案は、A が単独で不適切な会計処理を行っていたもので、他に事情
を知悉して関与していた者はおらず、旭テック全体として、あるいは当社が関与するな
どして組織的に行われたものとは認められない。
7 甲構内の工事からの撤退
上記のとおり、本件事案は A による単独の不正行為であったものの、長年にわたっ
て甲構内における工事は、旭テックにとって採算を取ることや協力会社のマネジメン
トなどといった難度の高いものであった。旭テックは、本件事案を発生させたことへの
反省の意味合いで、甲に対して構内における工事受注を辞退する旨を申し入れ、甲から
了承を得た。そして、甲構内における受注済みの工事を全て完成させた上で、2021 年
6 月末、常設していた事務所から退去し、業務に支障を生じさせることなく円満に甲構
内における工事から撤退した。
第5 類似事案の有無について
1 類似事案の有無に関する調査方法
(1)本件事案の整理
本件事案は、工事番号の付替えによる売上及び売上原価の先送りであるが、本件事案
において甲から受注していた業務のうち、常用工事である金属精錬業においては月次
工番が採用されていたため、同一の工番に複数の工事が包含されていたことに加え、甲
が発注した工事内容は、工事担当者のみが管理しており経理担当者に共有されていな
かったことから、その実態の有無や売上計上時期の妥当性について、表面上のチェック
ではその問題が検知されづらかった点が特徴として挙げられる。
(2)類似事案の調査
① 類似事案の調査における検討要素
上記の本件事案の特徴を踏まえ、類似事案の有無の調査においては、本件事案と同
様に同一工事番号で複数の工事を管理する月次工番又は年次工番を採用している案
17
件、旭テックが現場に常駐している案件、年俸制社員のうち借用書提出者が担当する
案件、A が担当する甲以外の案件という観点での検討に加え、売上の実在性、期間配
分の適切性、評価の妥当性の観点から、以下のような属性に区分し、調査対象取引と
して不適切な会計処理の有無を調査した。
No. 属性内容
1 月次工番及び年次工番を採用している案件
2 常駐工事案件
3 借用書提出者が担当する案件
4 A が担当する甲以外の案件
5 2021/3 期末甲未成工事
6 売上高が注文金額を超過している工事
7 直接工事原価が注文金額を超過している工事
8 未成工事支出金の滞留が懸念される工事
9 売上高がマイナスの工事
10 直接工事原価がマイナスの工事
11 粗利マイナスの工事(赤字工事)
12 乙付替え操作工事
13 No.12 以外の乙工事
14 F が担当する乙以外の工事
15 丙活用工事
16 粗利が異常値である案件 ※1
17 その他上記以外の属性 ※2
※1 2015 年 3 月期から 2021 年 3 月期までの売上高及び粗利について、年度別、得意
先別、担当者別に分析を行い、想定される利益率と乖離しているなど異常が確認
された場合に、他の属性と同様に関連証票を精査する。
※2 上記属性の他、A が年俸制社員であることから、「年俸制社員が担当する工事」
という属性も考えられるが、2015 年 3 月期から 2021 年 3 月期における年俸制社
員の売上高は、旭テックの同会計年度の通算売上高の約 90%を占めることから、
当該属性は「その他」に集約して評価した。
② アンケート調査
本件事案と同様に、月次工番が採用されている現場では、工事番号の付替えが行わ
れていた可能性があり、さらに、常駐している現場においては、取引先の都合により
検収時期が先延ばしになる傾向がある上、経理担当者との連携不足によりその全て
18
を事後的に検知することは難しいと想定されるため、当社及び旭テックを含む子会
社の役員及び課長職以上の社員に対するアンケートを広範囲に実施した。アンケー
トでの質問内容の概要は以下のとおりである。
1 不適切な取引(売上計上時期の操作、売上又は原価等の過大又は過少計上、不正
な資金移動、書類の偽造・改ざん等)又は法令に抵触するような取引への関与、
見聞きしたこと
2 取引先から個人的に金銭(リベート、寄付金、協賛金、協力金等名称のいかんを
問わず。
)又はそれに類するものの受領、取引先に対してその交付の要求
3 取引先との間で契約書を締結せず、又は取引に関連する注文書を受領せずに取
引を開始したこと、上司等の事前の承認
4 取引先の取引において未収金が回収不能になっていることを認識しながら放置
したこと、又は上司・同僚には未収金が回収できると虚偽の報告をしたこと
(3)その他全般的な類似事案の調査
① 臨時通報窓口の設置・運用
シティユーワ法律事務所所属の弁護士 2 名を通報先とする臨時通報窓口を 2021 年
6 月 1 日から同月 15 日まで設置・運営し、当社と子会社の役員及び社員全員を対象
として情報提供を募った。
② デジタル・フォレンジック調査
当委員会は、 A
本件事案の解明に加え、 が関与する他の取引先との取引において類
似の不適切な処理を行っていないかを把握する観点からも、デジタル・フォレンジッ
ク調査を実施することとした。
③ A の預金口座の取引明細情報のレビュー
当委員会は、本件事案に関与した A から任意に提供を受けた本人名義の預金口座
の取引明細をレビューし、関係先からのキックバックやリベートの振込みやそれ以
外に説明のつかない入出金がないか否かの確認を行った。
2 類似事案の有無に関する調査結果
(1)社内アンケートにより発覚した類似事案
ア 調査対象とした経緯
当委員会が実施したアンケート調査において、2019 年 3 月期の旭テックにおける売
上原価の計上が適切でなかった旨を指摘する回答があったため、本件調査における類
似事案として事実関係を調査することとした。
19
イ 調査の結果判明した事実
(ア)当社経理部決算課は、2020 年 3 月期第 1 四半期決算を控え、2019 年 3 月期の資料
確認と作業手順の引継ぎをすべく、2019 年 5 月中旬頃以降旭テックを数回にわたって
訪問していた。同年 6 月 27 日、同課 I は、旭テックから提供を受けた資料を検討して
いたところ、2019 年 3 月期末における未成工事支出金の金額が、勘定奉行における会
計データと工事管理システムのデータ間で差異があることを発見し、検証の結果、会計
データは 15 億 413 万 9632 円であり、工事管理システム上のデータである 15 億 5707
万 7051 円より 5293 万 7419 円少ないことが判明した。
(イ)I は、この点に気付くと、直ちに当社経理部長代理(当時)であった H、旭テックの
J 総務・経理部長(以下「J」という。
)と K に報告し、工事管理システムにおける未成
工事支出金の金額が決算時のものと合致しないことを 4 名で確認したが、かかる差異
の原因は不明であった。また、旭テックにおいては未成工事支出金以外にも会計上の未
解決課題があったため、I は、H の指示により、未解決課題の一覧表を作成し、その内
容を旭テックと共有した。
当社は、旭テックに出向させていた J らに対し、未解決課題の原因調査及び解決に
取り組むように要望し、これ以降複数回にわたって協議の場を持つなどしていたが、未
成工事支出金の差異に関しては解明が進まなかった。そのため、同年 10 月 18 日時点
においても未成工事支出金の差異は解決しておらず、当社が作成していた未解決課題
を記載していた一覧表には、
「引き続き調査」
「直接工事原価(未成)額が変更されてい
る(46 千万円増加により未成工事支出金が 52 千円増加)(注「46 千万円」とあるの
」
は「46 百万円」「52 千円」とあるのは「52 百万円」の誤記である。
、 )などと記載され
ており、同月 23 日に開催された取締役会においても議題として取り上げられることは
なかった。
同月末頃、B が未成工事支出金に差異が生じた原因を調査したところ、2019 年 3 月
期にいったん完成処理をして売上計上した 2 工事につき、2019 年 4 月中旬頃、客先か
らの要望に応じるなどして未成工事に戻していたことが判明した。また、かかる処理に
おいて、工事管理システム上は売上を取り消し、売上原価を未成工事支出金に戻したも
のの、会計システムである勘定奉行では、売上は取り消したのみで売上原価を未成工事
支出金に戻す処理を失念し、2019 年 3 月期に売上原価のみ計上していたことが判明し
た。なお、上記 2 工事は、2020 年 3 月期に完成し、遅くとも 2019 年 4 月頃までに工
事管理システム上の未成工事支出金の差異は解消されたものの、勘定奉行における売
上原価は誤って 2019 年 3 月期に計上したままになっていた。
(ウ)同年 11 月中旬頃、未成工事支出金の差異は課題として解決したことにする旨の方針
が決まり、I らがまとめていた旭テックにおける経理課題項目の一覧からも未成工事支
出金の差異を外すことになった。かかる方針は、遅くとも 2019 年 11 月 18 日までに
20
は、当社経理部決算課との間で確認されており、同課の了解の下で、未成工事支出金の
差異の課題は解決したこととして取り扱うことになった。これを受け、J は、同月 18
日に開催された旭テックの取締役会において、G ら出席取締役及び監査役の面前にお
いて、未解決課題のうち未成工事支出金を含む経理上の課題はほぼ解決した旨報告し、
同日付けの取締役会議事録において、
「ラサ商事の経理部から指摘されている課題につ
いて、
『仮受金』に関する1点のみが未解決として残っているが、その他の課題は解決
済みである。同社決算課担当者との共通認識ではあるが、正式には文書化の上、同社に
報告したい」と記載した。J は、かかる取締役会議事録について、同月 19 日以降に G
を含む出席取締役及び監査役に確認を求め、その全員から異議なく了承されたため、G
らの押印を得て完成した。
(エ)このようにして、未成工事支出金の差異は、2019 年 10 月 18 日時点では当社及び旭
テック双方にとって未解決課題として認識されていたにもかかわらず、同年 11 月 18
日の旭テック取締役会の時点では解決済みとされた。調査の結果、本来であれば同一会
計年度に計上すべき売上と売上原価につき、売上は 2020 年 3 月期に計上し、売上原価
は 2019 年 3 月期に計上したことにより、それぞれの計上時期を異にしていたものであ
ったことが判明した。
そのため、未成工事支出金の差異は、2019 年 11 月 18 日時点で課題として解決済み
と判断されるべきではなかったものの、当社及び旭テックがこのような判断に至った
のは、旭テックから報告を受けた当社の G 及び H らが、所謂期ずれの問題であるなど
と捉えてその重要性への認識が希薄であったこと、並びに旭テックにおいては、当社か
ら了承を得たことで課題から外すことになった際に、主体的に判断せずに当社の意向
に従ったためであることが関係各証拠から認められる。他方、当委員会による類似事案
の調査においては、社内アンケートで判明したものと同様の不適切な会計処理は確認
されなかったことに照らせば、当社及び旭テックは、2019 年 3 月期の未成工事支出金
の差異に関しては判断を誤ったものの、このように必要な処理を看過したり、不適切な
処理をすることが常套化していたとは認められない。更に付言すれば、本件は、当社と
は全く関係のない当時の会計監査人の不祥事により、当社は新たに会計監査人を選定
することを余儀なくされていたため、適時に会計監査人に本件の処理を相談するのが
困難であった状況などが相俟って偶発的に発生したものと考えられる。
ウ 当社は、社内アンケートによる問題提起及び当委員会による調査結果を受け、2019 年
3 月期における未成工事支出金の差異を訂正すべき課題であると認め、本件事案等と併
せて訂正することとした。
(2)資料の精査により発見した不正の兆候
ア 当委員会は、当社から提出を受けた旭テックの取締役会議事録等の資料を精査して
21
いたところ、2020 年 3 月 18 日付けの取締役会議事録において、丁の管理する乙セン
ター(以下「乙」という。
)における工事に関して、F が懲戒処分に処せられているこ
とが判明した。
イ 乙の現場は、元々は B が開拓した現場であり、2011 年頃に F が担当を引き継いだ。
F は、乙の業務は、配管業者の丙(以下「丙」という。)とその下請けの L(以下「L」
という。)に担当させており、旭テックはその監督という立場であった。F は、乙の現
場に行くのは月1回程度であり、それ以外の場面では丙と L に任せきりにしていた。L
は、F が乙の担当になる前から丙と連携しており、丙社長の信用も厚かったため、下請
業者である L の指揮下に丙の社員がいるという歪な構造であった。
B は、乙は旭テックの社員が常駐していない現場であったことから、F に対し、作業
日報、請求書や見積書などの書面を確認するよう指示していたが、業務多忙であった F
は十分な確認をするのを怠っていた。また、乙における現場管理が不十分であったため、
客先からの発注書の欠落、工事原価の付替えが起きていたにもかかわらず、これに気づ
かず赤字工事が増加していった。
ウ 2020 年 3 月頃、B が 2020 年 3 月期の帳票類を確認していたところ、乙における工
事原価に別の工番の工事原価が混入されていることを発見し、直ちに担当者である F
に指示して工事原価が混入した経緯などを調査させることとした。F は、L にかかる経
緯を尋ねたものの、明確な返答はなかったため、工事管理システムでその他疑義のある
工事番号がないかを検証した。すると、2019 年 8 月 31 日から 2020 年 3 月 31 日まで
に売上計上された 3 件の工事につき、2 件については他の工事に原価が付け替えられ、
残りの 1 件については売上の付替えが行われていたことが判明した。
F は、L に対して更に事情を確認しようとしたものの、L と連絡が取れなくなり、ど
のような経緯で工事番号を付け替えたのかの回答を得られなかった。しかし、F は、L
に対して赤字を出さないようにと再三にわたって要求していたところ、2020 年 3 月期
は丁と戊の合併により工事の発注自体が抑制されていた時期でもあり、全体の収支が
赤字となることは避けられない情勢であったことに鑑みれば、赤字の発覚を免れるた
めに L の独断により売上及び工事原価を付け替えていたと認められた。
B は、工事番号の付替えは L によるものであったとしても、作業日報、請求書や見
F
積書などの書面を十分に確認していれば、 がこれを早期発見して問題を解決すること
は容易かつ可能であると考え、乙の担当から F を外すとともに、譴責処分とした。こ
れに加え、2020 年 4 月以降は、乙の現場責任者から L を外したことで、同様の事象が
生じることのないように努めた。
エ 当委員会は、B 及び F へのヒアリングを通じて上記経緯を確認したものの、実態を
22
解明するには L のヒアリングを実施することが必要であると考え、直接あるいは当社
及び旭テックを通じて L にヒアリング実施を申し入れたものの、理由は不明であるが
拒否された。
他方、工事番号の付替えが 2020 年 3 月期だけに生じているかを検証する必要があっ
たことから、関係資料を精査したところ、当該会計年度以外にも赤字が発生した期が存
在したものの、サンプルテストを実施したところ、工事番号の付替えなどの異常性は確
認できなかった。
また、2020 年 3 月期に旭テックにとって多額の赤字を発生させた経緯につき、L と
F が共謀して旭テックへ過大に請求して丙へ支払わせた上で、 がキックバックを得て
F
F
いた可能性を排斥できなかったため、 から口座の取引明細の提出を受けて検証したも
のの、キックバックを得ていたと認める取引は存在しなかった。
そのため、乙においては、旭テックによる調査結果のとおり、2020 年 3 月期に赤字
の発覚を恐れた L が工事番号を付け替えていたものの、把握済みの 3 件以外には類似
の不正処理がなされた事実は確認できず、かつ、旭テックが組織的に不正会計に及んで
いたとも認められなかった。
(3)上記以外の類似事案に関する検討
本件事案に類似する事案の有無については、上記のとおり、社内アンケート及び資料
の精査により覚知した会計上の課題に関する調査、A 及び F が使用している口座の取
引明細の解析等を行ったものの、上記に記載した以外には、他の類似事案や不適切な会
計処理の存在を示す兆候は検出されなかった。
第6 会計上の影響と分析
1 本件事案による会計上の影響
(1)本件事案における会計上の問題点
A は、甲からの検収通知に記載された工事内容と異なる工事番号を記載して経理担
当に回付する方法により、赤字工事を黒字工事に見せかけるように偽装し、赤字工事に
ついては、甲からの検収通知に記載のある他の工事番号に係る売上を充当することで
工事売上高を増加させ、損失計上を回避していた。
本来であれば、売上を超える原価が発生していたとしても、甲より検収を受けたので
あれば、旭テックの売上計上基準に従って完成処理し、会計上も検収金額に基づく工事
売上高と工事管理システムで集計された完成工事原価を仕訳した上で、損失を確定さ
せるべきであった。しかしながら、A は、自身の業績に影響を及ぼす赤字工事の損失確
定を回避するために、このような付替えを行っていた。
その結果、付け替え元の工事については、完成工事として工事売上高及び完成工事原
価を認識し損益を確定するべきところ、他の赤字工事に売上が付け替えられているた
23
め完成処理できず、玉突き的に他の工事の売上を付け替えるまでは、未成工事支出金と
して、貸借対照表に翌期以降に完成する工事として繰越処理していたのである。
このような操作は、本来、完成工事として処理されるべきであるにもかかわらず、未
成工事支出金にかかる工事売上及び完成工事原価の計上時期が先送りにされており、
不適切である。よって、甲より検収を受けた工事について、検収通知に記載のある工事
内容に対応する適切な工事番号に組み替えることにより、工事売上高及び完成工事原
価の計上時期を修正する。
(2)社内アンケートにより発覚した事案による会計上の影響
前記第 5 2(1)のとおり、
2019 年 3 月期において未完成の工事であるにもかかわらず、
工事原価のみが費用計上されており、収益と費用の計上時期が対応していない。よって、
当該工事が完成するまでは、未成工事支出金として資産計上する処理が適切であるか
ら、工事原価から未成工事支出金に振り替える処理を行う。
(3)資料の精査により発覚した事案による会計上の影響
前記第 5 2(2)のとおり、 により売上高及び工事原価の付替えが行われていたのであ
L
るが、かかる修正は 2020 年 3 月期に行われていたものの、調査の結果、四半期を跨ぐ
工事原価の付替えが確認されたため、完成工事原価の計上時期を修正する。なお、売上
高についても工事番号の付替えが確認されたが、同月内の操作であったため、計上時期
の修正は不要である。
(4)上記に関連する会計上の影響
以上の影響により、未成工事支出金にかかる回収可能性を再検討したうえで、工事損
失引当金、棚卸資産評価損の計上額を修正する。また、諸税金及び税金費用についても
修正が必要である。
2 当社の過年度連結財務諸表に対する影響
本調査における当社グループの会計上の影響額は以下のとおりである。また、四半期
毎の影響額は、各四半期末の累積額を記載している。
なお、下記における「甲案件」は本件事案、
「アンケート案件」は社内アンケートに
より発覚した事案、
「乙案件」は資料の精査により発覚した事案のことをそれぞれ意味
する。
(単位:百万円)
勘定科目 2015/3 2016/3 2017/3 2018/3
売上高 -133 1 -19 13
売上原価 -171 -43 75 71
24
期首未成工事支出金 -418 -248 -205 -280
内)甲案件 -418 -248 -205 -280
内)アンケート案件 - - - -
期末未成工事支出金 -248 -205 -280 -351
内)甲案件 -248 -205 -280 -351
内)アンケート案件 - - - -
内)乙案件 - - - -
売上総利益 38 44 -94 -58
(単位:百万円)
勘定科目 2019/3
第 1 四半期 第 2 四半期 第 3 四半期 第 4 四半期
売上高 42 8 1 -17
売上原価 55 16 45 -83
期首未成工事支出金 -351 -351 -351 -351
内)甲案件 -351 -351 -351 -351
内)アンケート案件 - - - -
期末未成工事支出金 -406 -367 -396 -268
内)甲案件 -406 -367 -396 -321
内)アンケート案件 - - - 53
内)乙案件 - - - -
売上総利益 -13 -8 -44 65
(単位:百万円)
勘定科目 2020/3
第 1 四半期 第 2 四半期 第 3 四半期 第 4 四半期
売上高 44 -11 55 -13
売上原価 187 129 236 -19
期首未成工事支出金 -268 -268 -268 -268
内)甲案件 -321 -321 -321 -321
内)アンケート案件 53 53 53 53
期末未成工事支出金 -455 -398 -505 -249
内)甲案件 -453 -394 -500 -249
内)アンケート案件 - - - -
内)乙案件 -2 -4 -5 -
25
売上総利益 -143 -140 -181 6
(単位:百万円)
勘定科目 2021/3
第 1 四半期 第 2 四半期 第 3 四半期
売上高 -2 38 95
売上原価 113 288 390
期首未成工事支出金 -249 -249 -249
内)甲案件 -249 -249 -249
内)アンケート案件 - - -
期末未成工事支出金 -362 -537 -639
内)甲案件 -362 -537 -639
内)アンケート案件 - - -
内)乙案件 - - -
売上総利益 -115 -250 -295
なお、上記影響額には、本調査と同時に実施されている過年度訂正監査において確認さ
れた監査修正を含んでいない。また、諸税金及び税金費用に関する影響も考慮していない。
第7 発生原因の分析
本件事案及び本件調査で判明した事象の発生を防げなかった背景には、以下の原因
が考えられる。
1 組織体制に関する問題点
(1)過度に業績と連動させた年俸制とノルマ達成の厳格化
旭テックは、年俸制を選択した工事担当者に対しては、前年度の粗利等を基準とした
ノルマを個々に設定していたところ、2014 年 12 月頃まではノルマを達成した場合に
は、前年度の基本給から昇給するとともに粗利の 3 割が賞与となる一方、ノルマ未達
の場合には、次年度の基本給が減額され、さらに、ノルマとの差額の 3 割を負債として
負わせるという極めて特殊な業績連動型の給与制度(以下「業績給」という。)を採用
していた。なお、当社は、旭テックを子会社化した同月頃から業績給の見直しに着手し、
業績連動の割合を 1 割まで減らした上、将来的な業績給の廃止と固定給への統一を図
ったものの、従前の給与から減額される者が生じるなどの事情があり、直ちに業績給を
廃止することはできなかった。その結果、営業担当者は目標必達という非常に強いプレ
ッシャーにさらされ、不適切な方法を用いてでも目標を達成しようとするインセンテ
ィブが生じたものと考えられる。
26
(2)業務の属人化と旭テックにおける会計基準遵守の不徹底
旭テックでは、工事管理フローを策定するなどして工事部、営業推進部及び総務・経
理部の役割分担を定め、必要に応じて取締役等と協議する運用を目指していたものの、
工事担当者は、各工事現場の割り振りを受けた後は、特段の事情がない限り上司等の決
裁を受けることなく、独自の判断で協力会社への発注を差配するなど広範な裁量を与
えられており、とかく業務が属人化する傾向にあった。本件事案及び類似事案の調査を
通じ、工事担当者が単独で現場を管理していた場合や現場監督を外注して工事担当者
が現場に常駐していなかった場合など、一部の例外的な場合を除いて不正な会計処理
は確認されなかった。他方、不正な会計処理に及んでいた一部の社員は、会計的な知識
を十分に持ち合わせないまま業務に従事していたため、会計基準の遵守は徹底されて
おらず、このような事実が不正な会計処理が繰り返された土壌を形成した要因である
と指摘できる。これらの背景には、株式会社の財務報告を適切に報告するという、大前
提とも言うべき視点や意識が欠けていたことが指摘でき、日々の業務におけるコンプ
ライアンス遵守よりもノルマ達成等個人の利益を追求する傾向が存在した。
(3)管理部門を軽視する傾向と社内における牽制機能の形骸化
工事担当者は、発注元となる会社担当者とは緊密に連携を取る一方で、旭テックの経
理担当には、工事内容の詳細まで共有していないなど管理部門を軽視する傾向が存在
した。これにより工事内容に関して慢性的な情報不足に陥っていた経理部門は、適切な
会計処理を指摘し得るだけの材料を持ち合わせていなかったため、本来果たすべき牽
制機能が形骸化しており、工事担当者による不適切な会計処理を防ぐことができなか
った。
(4)当社及び当社取締役会による不十分な子会社管理とリスク顕在化を最小限に抑える
ための取組みの不足
当社及び当社取締役会は、本来であれば、旭テックを含む子会社において不正が行わ
れることのないように、監視・監督を行うなどして適切に管理する役割が期待されてい
たところ、子会社の管理に対する意識が希薄であったことも相俟って、子会社における
問題点を積極的に把握しようと努めて適切にガバナンスを及ぼすという、本来求めら
れる役割を十分に果たしていなかった。
また、リスク顕在化を最小限に抑えるための取組みが不足しており、2019 年末頃に
は、 A
当社監査等委員から未成工事支出金の滞留を指摘されたことを受け、 に事情を確
認させたものの、同一の工事に関して旭テックと甲で異なる工事名称が付されている
のは甲の意向によるものであるなどとの A の説明に疑念を抱かず、甲への確認を怠る
など、適切にリスク管理を図る視点が欠けていたことが、本件疑義の発覚を遅らせた。
27
2 当社によるガバナンス上の問題点
(1)グループ内部統制の機能の不奏功
当社は、子会社 3 社及び持分法適用会社 1 社を束ねる役割を有するところ、実情は
それぞれ業態の異なる子会社等のやり方に委ねる部分が多く、例えば、建設業である旭
テックについては業界特有の事情を考慮し、内部監査室による内部監査を通じて改善
を要請するといった管理にとどまっていた。この点、当社は、代表取締役や総務・経理
部長といった責任ある役職に当社社員を派遣するなどして統制を図ろうとしていたも
のの、短期間で交代するなど継続的に関与することが困難であったため、グループ内部
に対する統制機能を十分に効かせることができなかった。また、内部監査報告書で指摘
した事項についても、当社が子会社とする以前の旭テックのやり方を改める姿勢に欠
ける場面があり、組織及び個人に対してガバナンスを効かせる体制が必ずしも十分で
はなかった。
(2)管掌部門による指導・牽制が十分でなかったこと
当社における子会社の管掌部門は管理本部であり、部門長である管理本部長等によ
る指導・牽制を通じて、子会社に対して適切にガバナンスを効かせることが期待されて
いた。しかし、当社は、旭テックにおいて 2019 年 3 月期の未成工事支出金に差異が生
じていたことを認識しながら、問題を解決するための施策を講じなかったものであり、
管掌部門によるガバナンスが十分であったとは評価し難い状況にあった。
(3)適切な財務報告の重要性に係る意識の醸成が不十分であったこと
本来、上場会社のグループ会社の社員には、適切な会計処理及び財務報告が必須であ
ることを理解して行動すべき規範意識や会計リテラシーが要求されている。特に、ノル
マ達成のプレッシャーを受けている状況下では、ときに不適切な行為に及ぶことがあ
ることに鑑み、これを防止するためには、適切に財務報告をすることが重要であるとの
規範意識や会計リテラシーを保持することが重要である。
当社は、2006 年 2 月に東証二部に上場したことを契機に、適切な財務報告の重要性
をより意識してきたが、旭テックを含む子会社においては、当社のグループに参入した
ことでかかる意識が十分に醸成されることはなかった。このため、適時開示を意識した
適切な会計処理が喫緊の課題として取り扱われることもなく、また限られた人的リソ
ースの中で、専門的な会計知識を十分に有しない者を経理担当に任命することを余儀
なくされていた。その結果、会計基準の遵守に対する意識や感度が希薄となり、会計年
度をまたいだいわゆる「期ずれ」による会計処理を行うことについて、問題意識が共有
されることもないままに、不適切な会計処理が看過されていた。
28
3 不十分なコンプライアンス教育
当社では、これまでコンプライアンスマニュアルに基づき、不正行為及び不適切な会
計処理をテーマに含めた一般的なコンプライアンス研修を実施してきていたものの、
近年はハラスメント関連の研修を実施しており、不正行為及び不適切な会計処理に関
するコンプライアンス研修を実施する機会がなかった。本件事案等の発生及び適切な
財務報告の重要性に係る意識の醸成が不十分であったことは、当社のコンプライアン
ス教育が必ずしも十分ではなかったことも遠因となっていると考えられる。
4 内部統制機能に関する問題点
(1)内部監査上の問題点
内部監査室が実際に行っていた年に 1 度の定期監査では、規程に沿った運用がなさ
れているかを確認し、不備があれば指摘するなど相応の役割を果たしていたものの、未
成工事支出金が増加傾向にあることや売上計上時期の恣意性が否定できないことに着
目した監査までは実施できておらず、会計不正を防ぐことができなかった。
(2)内部通報制度の運用面に関する課題
当社は、社内の総務部及び社外の顧問弁護士を窓口とした通常の指揮命令系統から
独立した通報窓口を設置しているが、本件不正行為に関する情報が各通報窓口に寄せ
られることはなかった。内部通報制度の存在は、これまでも当社のポータルサイト等で
周知し、同制度を利用した際の匿名性の維持や、不利益な取扱いをしないことの仕組み
については、コンプライアンス通報・相談窓口カードの携帯、新入社員研修説明の実施
等を通じて周知を図っていたものの、匿名性の維持など通報者保護の仕組みをより一
層周知すべきであった。
内部通報制度は、不正の早期発見には有効な制度であり、また、内部通報制度が活用
されていること自体が、不正に対する牽制機能を有するものと考えられることから、上
記のような状況は、本件不正行為を未然に防ぐことができず、また、発覚が遅延した遠
因と考えられる。
第8 再発防止策の提言
1 牽制機能を果たし得る組織への転換
(1)業績給制度の撤廃と評価基準の見直し
旭テックにおいては、工事担当者の業績に連動した給与制度を採用していたところ、
かかる制度が役職員のモチベーション増強に役立つ側面があったことは否定しないが、
むしろ、ノルマ未達による負債を負うことを回避するために工事完成時期を恣意的に
操作する動機となっていたことに鑑み、業績給の撤廃を含めた見直しが必要と思われ
る。また、人事の評価基準については、粗利などといった会社の利益に直結する要素の
29
みならず、決められた手順や内規に従って適切に業務を遂行したことなどをも要素に
含めることにより、利益至上主義に陥ることのないような制度設計が望まれる。
この点、旭テックにおいては、粗利と連動した業績給の廃止を検討するとのことであ
り、再発防止に向けた自助努力の一環であると評価できる。
(2)部署外からの牽制と適時の異動及び恣意性を排除した会計方針の策定
旭テックにおいては、取引先との交渉や協力会社への発注などを含め工事担当者に
広範な裁量が認められていたところ、工事内容の詳細は旭テック社内においても当該
工事に関与した者にのみ共有されていたため、部署外からの牽制が効かせられない状
況にあった。そこで、部署外からの牽制を効かせるべく、業務フローを明確にすること
で、工事担当者以外にも案件の状況を適時に認識できる環境を整備し、必要になった都
度上長に報告することとして、特に工事の完成時期や請求の時期が当初の予定と異な
る事態となった場合には、必ず書面にて報告させることなどを通じて、工事担当者が独
断で決められる状況を改める必要がある。そして、業務が属人化していたことが本件不
正を長期間継続することを許容した要因の一つであることを踏まえ、定期的な部署異
動や担当替えを通じて、取引先との過度の癒着やなれ合いを防ぐ必要がある。
旭テックの経理規程によれば、同社における収益の認識基準は、工事完成基準及び検
収基準とされているところ、工事の完成・未成の判断を工事担当者が判断する運用が一
部で確認されており、恣意性を完全には排除できないものであったが、件外調査におい
ては、上記で検討した以外には不適切な会計処理は確認できなかった。しかしながら、
恣意的な要素が介入する余地を残せば、再発防止の阻害要因にもなりかねないため、会
計処理の原則及び手続方針をより客観的なものに改めるとともに、かかる会計方針の
遵守を徹底する必要がある。
(3)管理部門の強化及び牽制機能の拡充
建設業を業務内容とする旭テックにおいては、管理部門に比して営業担当の工事担
当者の発言力が強い傾向にあった。かかる状況が工事担当者による不正行為の温床に
なった反省に立ち、管理部門に営業部門の業務内容を把握する権限を与えるとともに、
必要に応じて改善を働き掛ける権限をも与えるなどといった方策を講じることにより、
管理部門の権限を強化して牽制機能を拡充することが考えられる。特に、今般の事案に
おいては、経理部門が主体的に情報を得ることが困難であったが故に、工事担当者の不
正行為を看破できなかったため、情報共有を徹底させる必要がある。また、経理部門な
どに適切な人材を配置しつつその定着化を図り、適切な会計処理や財務報告の重要性
を強く意識させ、再発防止に向けた取組みを継続することが必要である。
(4)当社及び当社取締役会による監視・指導機能の強化及び子会社管理部門の創設
30
当社の取締役会においては、子会社管理のために有効な施策等が審議されたことは
ほとんどなかったように見受けられる。取締役会による子会社に対する監視指導機能
を強化することで、子会社における実情を把握するように努める必要があり、さらに、
これまで些末な問題であるとして取締役会で報告されていなかったような事項につい
ても、不正の痕跡を発見するという危機管理の観点から、グループ連絡会での検討事項
を報告させるなどといった取扱いに改めることが考えられる。また、本件疑義が発覚し
た経緯は、監査等委員から未成工事支出金の滞留につき問題提起されたことに端を発
したものであるところ、子会社に調査や問題解決を委ねるのではなく、当社が主体的に
問題解決に取り組む姿勢を打ち出すことが必要である。
また、当社のグループ会社には、子会社 3 社及び持分法適用会社 1 社が存在すると
ころ、これまでは子会社管理に特化した部門は存在しなかったこと、管理本部による指
導・監督にはおのずと限界があることに鑑み、子会社管理部門を創設することが考えら
れる。このような子会社管理部門は、継続的な財務分析等により各社の実態を探り、グ
ループ連絡会や子会社の経営陣と緊密な連携を取ることを通じて問題点を逐次把握す
るように努める必要がある。また、一旦問題を認知した場合には、これが拡大する前に
有効な施策を講じることを通じて、当社及びグループ会社のコンプライアンス体制を
強化することを目指すべきである。
2 当社によるグループ内部統制機能の強化
(1)グループ内部統制の重要性に係る意識改革
当社は、既存の資源・金属素材関連事業、産業機械及び建設機械関連事業とのシナジ
ー効果を期待して、業態を異にするイズミ、旭テック、ラサ・リアルエステートを子会
社とし、持分法適用会社である大平洋機工を含めてラサ商事グループを構成している
ところ、業態を異にするグループ各社の管理を徹底して統率する旨の意識が希薄であ
った。他方、グループ各社においても、ラサ商事の統率下にある旨の意識は乏しかった
と思われ、ラサ商事グループに参画する以前の経営方針は変更せずに、従前どおりのや
り方を維持していた。その結果、グループ各社が足並みを揃えてラサ商事グループとし
ての強みを発揮するまでには至っておらず、グループ各社に内部統制を及ぼすことが
著しく困難になっていた。そこで、今後は、グループ各社が最低限共有すべき事項を明
確にし、特に、当社においては、連結決算を組む子会社の管理の重要性を認識し、他方、
子会社においては、上場会社と連結決算を組んでいる旨の意識を強くすることで、かり
そめにも不適切会計に及ぶことのないように意識改革を果たす必要がある。
(2)管掌部門による適切な指導教育体制の徹底
上記のように意識改革を遂げた上で、新たに創設する子会社管理部門が、ラサ商事グ
ループを統括する管掌部門として、子会社に対する適切な指導教育体制を構築する必
31
要がある。
(3)適切な財務報告の重要性に係る意識の醸成
当社及び旭テックの一部には、計上すべき会計年度にずれが生じているなど不適切
2
な会計処理を認識していながらも、 期以上を通算すれば計上した数字に差異がなくな
るため、いわゆる「期ずれ」が生じていても些末な問題であるとの認識の下、上場会社
又は上場会社のグループ会社として適切に財務状況を報告することの重要性を理解し
ていなかった者もいた。このような会計面での規範意識の乏しさが、本件事案を引き起
こした一因であるとの反省に立ち、適切な財務報告を行うことの重要性を強く意識さ
せる必要がある。
3 コンプライアンス意識の涵養及び研修等を通じた指導
当社では、かつては不適切会計処理等を含むコンプライアンス研修を実施したこと
があったものの、ここ数年はハラスメント関連を題材とした研修が実施されており、会
計不正等に関する研修は実施されていなかった。そこで、コンプライアンスに関する問
題を統括する総務部が中心となり、内部監査室と連携を図るなどして、不正行為等の防
止に向けたコンプライアンス研修を継続的に実施することにより、コンプライアンス
意識の涵養を図り、不正行為等が厳しく処分されることにつき指導することが有効で
あると思料する。研修の実施にあたっては、グループ各社の特性や実情を考慮し、各社
における過去の事例を題材として活用するなどして、再発防止に向けた教訓とするこ
とを検討すべきと思われる。
4 内部統制を強化するための施策
(1)内部監査室による監査及びこれに連動した指導体制の強化
内部監査室に求められる役割は、不正行為の防止及び早期の発見であるところ、これ
までの内部監査では、取引の実態把握までには至っていなかったために、本件不正行為
を防止又は発見することができなかった。そこで、今後の内部監査においては、サンプ
ルチェックなどを通じて、適切な会計処理を行っていることの検証に重点を置いた監
査を実施することが必要と思われる。また、上記記載の牽制機能の仕組みが構築された
場合は、それらの運用が有効に実施されていることを確認することが有用であろう。さ
らに、上記記載の子会社管理部門による管理が有効に機能していることを確認するこ
とも考えられる。当社は、2021 年 7 月、内部監査室に経理に精通した社員を 1 名増員
しており、牽制機能の強化や実効性担保に向けた体制強化を図る施策として評価でき
る。
(2)内部通報制度の実効性の確保
32
これまでも社内及び社外に通報窓口を設置して内部通報制度は存在しており、現に
通報を受けて対応に当たった実績はあったものの、不正行為の防止及び発見のために
十分に機能していたとはいい難い。そこで、これらの内部通報制度を周知する際に、通
報者の匿名性を守るほか、通報により社内で処分を受けることがないように保護する
ことを伝えることにより、内部通報制度を実効性のあるものにする必要がある。また、
当社のポータルサイトに上記のとおり内部通報者が保護されることを明示した情報を
分かりやすく掲示するほか、本部及び支店の掲示板に同様の情報を記載した書面を貼
付し、あるいは定期的に内部通報に係る研修を実施するなどして、全社員が目にするこ
とが容易であって、かつ、理解しやすい方法により、内部通報制度の存在を改めて全社
員・役員に周知すべきである。
第9 結語
企業経営においては、ノルマを設定してこれを達成させるために一定程度のプレッ
シャーを与えることはやむを得ないところであるが、かかる姿勢を推し進めると、本件
のように売上及び売上原価の操作といった不適切な事象を引き起こす虞がある。この
ような実情に鑑みると、グループ各社を統べる当社の経営者は、グループ全体に対し、
企業経営においては、適切な会計処理を行い、財務報告の信頼性を維持することが何よ
り優先されるべきことを、明確に、かつ、強い姿勢で発信する必要がある。
また、当社がリーダーシップを発揮することにより、的確、かつ、十分な再発防止策
を講じることを通じて、経理担当者のみならず、全ての役員・社員が適切な会計処理に
対する意識を強く持ち、本件調査の過程で判明した不適切な会計処理が繰り返される
ことがないよう、内部統制を及ぼすことのできる組織を構築することを期待したい。
以上
33
別紙
29 名実施(延べ 46 回)
対象者 役 職 実施回数
1 M ラサ商事 1回
2 N ラサ商事 1回
3 G ラサ商事 2回
4 O ラサ商事 1回
5 P ラサ商事 1回
6 Q ラサ商事 1回
7 R ラサ商事 1回
8 H ラサ商事 3回
9 J ラサ商事 2回
10 I ラサ商事 2回
11 B 旭テック 6回
12 C 旭テック 3回
13 S 旭テック 1回
14 F 旭テック 1回
15 A 旭テック 4回
16 T 旭テック 1回
17 U 旭テック 1回
18 V 旭テック 2回
19 W 旭テック 1回
20 D 旭テック 2回
21 E 旭テック 1回
22 X 甲 1回
23 Y1 己1 1回
24 Y2 己2 1回
25 Y3 己3 1回
26 Y4 己4 1回
27 Y5 己5 1回
28 Y6 己6 1回
29 Y7 己7 1回