2901 J-石垣食品 2020-04-10 12:00:00
特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ [pdf]

                                                             2020 年4月 10 日
各   位
                                  会 社 名    石 垣 食 品 株 式 会 社
                                  代表者名     代 表 取 締 役 社 長 石垣 裕義
                                  (コード番号   2901 東証 JASDAQ スタンダード)
                                  問合せ先     取締役 経理総務部長 小西 一幸
                                            ( 電話 番号 0 3 - 3 2 6 3 - 4 4 4 4 )



               特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ

 当社は、2020 年2月 14 日付「2020 年3月期(第 63 期)第3四半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書の
提出に関するお知らせ」及び 2020 年3月 13 日付「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」に記載の通り、
外部より連結子会社の損益に係る帰属期間の計上誤り等が生じている可能性を指摘されたこと及びその一部に
ついて親会社関係者の指示によるおそれのある事象が判明することとなったことから、外部専門家を含めた特別
調査委員会を設置し、事実関係の解明に向けた調査を進めて頂いておりました。
 本日、同委員会より調査報告書を受領いたしましたので、下記の通りお知らせいたします。

                              記

1.特別調査委員会の調査結果
  調査結果につきましては、添付の「調査報告書(開示版)
                           」をご参照ください。なお当該報告書においては、
 個人情報及び機密保護等の観点から、部分的な非開示処置を施しております。

2.過年度決算の訂正について
   特別調査委員会の調査の結果、 2018 年3月期における連結子会社の仕入取引、 販売促進費、荷造運賃その他
 の取引に係る費用の計上時期等について訂正が必要である事実が確認されました。なお他のグループ会社にお
 ける類似事案は特段検出されていない旨の報告を受けております。
   当社は、不適切な会計処理が実施されていたと認められた取引について、連結業績等の訂正を行います。
   この訂正が業績に与える影響は、2018 年3月期連結業績に対しては営業損益が 50 百万円程度の下振れ、
 2019 年3月期連結業績に対しては営業損益が 16 百万円程度の上振れ、2020 年3月期連結業績に対しては
 営業損益が 19 百万円程度の上振れ要因となる見込みです。また訂正対象となる各期間のキャッシュ・フロー
 計算書についても損益の変動に伴って内訳に変動が生じるものの、    「営業活動によるキャッシュ・フロー」の
 値には変動が生じない見込みです。
   訂正決算につきましては、監査法人の訂正監査に係る手続き等が完了し、その内容が確定し次第、公表させ
 て頂きます。

3.特別調査委員会の調査結果を受けた今後の対応
  今回の調査結果を真摯に受けとめ、再発防止の提言に沿って再発防止策を策定の上、実行してまいります。
  なお、具体的な再発防止策等は、決定次第、あらためて公表いたします。

4.今後の予定
   当社は、2020 年3月期第3四半期報告書について、2020 年3月 13 日付「2020 年3月期(第 63 期)第3
 四半期報告書の提出期限 再延長に係る承認に関するお知らせ」に記載の通り、再延長後の提出期限である
 2020 年4月 16 日までに、監査法人の四半期レビュー報告書を受領し、提出する予定です。
   また、過年度の連結財務諸表の訂正に伴い、2018 年3月期第3四半期から 2020 年3月期第2四半期までの
 期間に係る過年度の決算短信等の訂正及び有価証券報告書等の訂正を同日までに行う予定です。

 株主の皆様はじめ、関係各位の皆様にはご迷惑とご心配おかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。

                                                                       以 上
   調査報告書

    2020 年 4 月 10 日




石垣食品株式会社     特別調査委員会
取締役会 御中




          石垣食品株式会社 特別調査委員会




              委員長     杉山   直人




              委   員   中野   陽介




              委   員   大橋   大輔
第1章 特別調査委員会による調査の概要........................................................................... 1
   1.    特別調査委員会を設置した経緯 .................................................................................. 1
   2.    当委員会の構成 ........................................................................................................... 1
   3.    社内調査委員会による調査結果及び証拠資料の引継ぎ ............................................. 2
   4.    調査期間 ...................................................................................................................... 2
   5.    調査対象期間 ............................................................................................................... 3
   6.    実施した主な調査手続 ................................................................................................ 3
   7.    本調査に関する留意事項 ............................................................................................. 4
第2章 概要 .......................................................................................................................... 6
   1.    石垣食品の概要 ........................................................................................................... 6
   2.    本件子会社の概要 ........................................................................................................ 8
   3.    石垣食品による本件子会社の連結子会社化の概要..................................................... 9
第3章 調査により判明した事実(本件子会社における損益期間帰属について) .......... 11
   1.    本件調査の概要 ......................................................................................................... 11
   2.    仕入取引の調査の結果 .............................................................................................. 12
   3.    販売促進費の調査の結果 ........................................................................................... 15
   4.    荷造運賃の調査の結果 .............................................................................................. 17
   5.    その他費用の調査の結果 ........................................................................................... 18
   6.    小括 ............................................................................................................................ 23
第4章 調査により判明した事実(関連当事者取引について)........................................ 25
   1.    本件調査の概要 ......................................................................................................... 25
   2.    本件調査の結果 ......................................................................................................... 25
第5章 調査により判明した事実(資本連結処理について) ........................................... 26
   1.    本件調査の概要 ......................................................................................................... 26
   2.    本件調査の結果 ......................................................................................................... 26
第6章 調査により判明した事実(石垣食品における損益期間帰属について) .............. 28
   1.    本件調査の概要 ......................................................................................................... 28
   2.    仕入他取引の調査の結果 ........................................................................................... 28
第7章 発生原因の分析 ...................................................................................................... 29
   1.    親会社による本件子会社に対する利益計上プレッシャー........................................ 29
   2.    本件子会社における仕入取引及び費用取引にかかる統制の不備............................. 29
   3.    子会社化に伴う会計処理負担の増加に対する対応の不備........................................ 30
   4.    本件子会社に対する石垣食品経理部門・内部監査部門等の対応の不全.................. 30
   5.    本件子会社に対する親会社からの把握及び管理の不十分........................................ 30
   6.    本件子会社及び石垣食品の経理部門担当者における経理リテラシーの不足 .......... 30
   7.    石垣食品におけるそもそものビジネスの窮境 .......................................................... 31
第8章 再発防止策の提起 .................................................................................................. 32
  1.    石垣食品経理部門・内部監査部門等による一層の関与 ........................................... 32
  2.    グループ会社の管理の強化 ....................................................................................... 32
  3.    担当者の経理リテラシーの向上 ................................................................................ 32
  4.    内部通報制度の充実と活性化 ................................................................................... 33
  5.    経営陣のコンプライアンス意識の徹底 ..................................................................... 33
別紙1 インタビュー対象者一覧 ....................................................................................... 34
第1章 特別調査委員会による調査の概要
1.    特別調査委員会を設置した経緯
     石垣食品株式会社(以下、
                「石垣食品」という。
                         )は、外部からの指摘により、連結子会社
である株式会社新日本機能食品(以下、
                 「本件子会社」という。
                           )に関連して、会計処理や関
連当事者注記に関して過去に提出した有価証券報告書に誤りがあった可能性(以下、
                                     「本件
疑義」という。
      )を認識した。
     このため、石垣食品は、2020 年 2 月 10 日以降、経理総務部長を中心として、社外取締役
である弁護士及び公認会計士が本件疑義解明にかかる検討を開始し、同月 17 日、石垣食品
取締役会において決議を行い、社内調査委員会が設置された。
     その後、社内調査委員会による調査の過程で、本件疑義のうち一部について親会社関係者
の指示・関与が考えられる事象が判明したため、石垣食品としては、社内調査委員会ではな
くより独立性を有した監査等委員である独立社外取締役及び外部専門家による特別調査委
員会が、本件子会社のみならず連結全体に対しても調査範囲を拡大した調査を行うべきと
の結論に達したことから、2020 年 3 月 13 日開催の取締役会において決議を行い、特別調査
委員会(以下、
      「当委員会」という。
               )が設置された。


     当委員会は、以下の各項目を委嘱事項として調査を実施した。
     ① 本件子会社における損益期間帰属にかかる事実調査
     ② 関連当事者取引(本件子会社社長に対する仮払金)にかかる事実調査
     ③ 石垣食品による本件子会社取得時にかかる連結上の会計処理にかかる事実調査
     ④ 本件疑義に類似する問題の有無及び事実関係の調査
     ⑤ ①乃至④を踏まえた再発防止策の提言


2.    当委員会の構成
     当初、本件疑義が外部からの指摘によるものであったこと、本件疑義の発生当時である
2018 年 3 月期において当事者ではなかった者が調査を実施することが適切であると考えら
れること、また、当初本件疑義の対象者が本件子会社社長であったため執行側からの独立性
を確保した体制で調査をするべきであったことから、社内取締役である経理総務部長に加
え、社外取締役 2 名及び石垣食品と利害関係のない外部の専門家である公認会計士を加え
て構成された社内調査委員会が 2019 年 2 月 17 日に設置された。
     その後、社内調査委員会による調査の過程で、上記 1.のとおり本件疑義のうち一部につい
て親会社関係者の指示・関与が考えられる事象が判明したため、調査手続の独立性を確保す
るため、調査委員から社内取締役を除外し、石垣食品の監査等委員である独立社外取締役及
び外部専門家により構成された特別調査委員会が同年 3 月 13 日に設置された。具体的な構
成は以下のとおりである。




                           1
     委員長      杉山 直人 (弁護士              石垣食品株式会社社外取締役(監査等委員))
     委 員      中野 陽介 (公認会計士            石垣食品株式会社社外取締役(監査等委員))
     委 員      大橋 大輔 (公認会計士            株式会社アカウンティングアドバイザリー)
(注)1.杉山直人は、石垣食品と特別な利害関係を有しておらず、調査委員としての独立
性及び中立性を有している。
(注)2.中野陽介は、石垣食品社外取締役就任前に石垣食品から外部専門家として会社評
価に関する業務受託の実績があるが、極めて限定的な取引であることから、石垣食品と特別
な利害関係を有しておらず、調査委員としての独立性及び中立性を有している。
(注)3.株式会社アカウンティングアドバイザリーは、石垣食品と特別な利害関係を有し
ておらず、大橋大輔は調査委員としての独立性及び中立性を有している。


     委員長は各委員が互選するものとし、杉山直人が委員長として選任された。また、本調査
にあたっては、当委員会の直属として、複数の公認会計士やデジタル・フォレンジック調査
専門会社に所属する専門家数名の補助を受けた。
     さらに、石垣食品及び石垣食品グループ会社の資料等の収集、ヒアリングの日程調整その
他の事務のため、石垣食品の役職員若干名を当委員会の事務局として選任し、これらの事務
に当たらせた。


3.    社内調査委員会による調査結果及び証拠資料の引継ぎ
     当委員会は、調査の一環として、当委員会の設置までに行われた社内調査委員会の調査結
果を入手するとともに調査資料及び保全データを引継ぎ、当該調査結果、調査資料及び保全
データを当委員会の調査のために利用することが調査の迅速性及び実効性にとって有効か
つ現実的であると判断し、内容を吟味の上、当委員会の調査に利用することとした。
     なお、社内調査委員会から引継ぎを受けた調査結果やデータは、当委員会の証拠資料とし
て利用するものであり、当委員会の調査結果は、社内調査委員会の調査結果に左右されるも
のではない。


4.    調査期間
     当委員会は、2020 年 3 月 13 日から同年 4 月 9 日まで本調査を実施した。なお、以下の期
日に合計 5 回の特別調査委員会を開催した。
 第1回            2020 年 3 月 19 日
 第2回            2020 年 3 月 25 日
 第3回            2020 年 3 月 27 日
 第4回            2020 年 4 月 2 日
 第5回            2020 年 4 月 9 日




                                  2
5.    調査対象期間
     本調査の対象期間については、本件子会社が石垣食品により連結子会社化された 2017 年
10 月末が属する月であり、費用計上の期間帰属の誤りが発見されている 2017 年 10 月から
直近決算月である 2019 年 12 月まで(以下、
                         「本調査対象期間」という。)とすることが合理
的であると判断した。


6.    実施した主な調査手続
     当委員会は、上記 3.のとおり社内調査委員会の調査結果を引き継いだが、引継ぎ時点で完
了していた手続き及び結果は改めて再検討し、さらに当委員会は、必要に応じて追加的な手
続きを実施するとともに原因分析及び再発防止策の立案を含む最終的な調査結果の報告の
ため調査を行った。本調査の具体的な内容は、以下のとおりである。


 ① 会計データ等の関係資料の確認・精査、分析的手続き
       当委員会は、本件取引に関連する各種証遷資料等の関連資料の閲覧及び検討を行っ
      た。また、各種会議体の議事録及び社内規程等の関連資料についても当委員会が必要
      と認める範囲で閲覧及び検討を行った。


 ② 資金関係資料の確認・精査
       当委員会は、関連当事者注記の誤りが認識された本件子会社の資金取引について、
      本調査対象期間における本件子会社が有するすべての銀行口座の 1 千万円以上の入
      出金の相手先・内容を当該銀行口座の通帳及び本件子会社の総勘定元帳等の関連資料
      により、把握及び検討を行った。


 ③ 調査対象者を含む関係者に対するインタビュー
       当委員会は、本件疑義に関する認識を有している可能性のあった本件子会社の代表
      取締役社長及び顧問会計事務所、並びに当時の石垣食品の取締役及び当時の経理責任
      者に対し、インタビューを実施した。また、当委員会は、主に、本件疑義に対する関
      与·認識の有無を確認し、原因分析及び再発防止策を検討する観点から、上記含む石
      垣食品の取締役に対し、インタビュー(以下、これらの役職員に対するインタビュー
      を「本件インタビュー」と総称する。)を実施した。


 ④ デジタル・フォレンジック調査(対象:本件子会社)
       当委員会は、損益期間帰属や関連当事者注記の誤りが認識された本件子会社の代表
      取締役社長について、会社貸与 PC を保全し、2017 年 10 月以降におけるメールデー
      タ及びファイルデータを保全するとともにそのレビューを実施した。




                          3
     加えて、本調査の進展に伴って追加で実施が必要と認められた「本件疑義に類似する問題
の有無及び事実関係の調査」として、追加的な手続きとして以下を実施することとした。


 ⑤ デジタル・フォレンジック調査(対象:石垣食品)
       当委員会は、本調査の過程で石垣食品による本件子会社に対する一部の会計処理指
      示や目標利益達成へのプレッシャーの存在の可能性が窺われたため、石垣食品の代表
      取締役社長及び石垣食品の当時の経理責任者についても調査が必要と判断し、当時各
      人により使用されていた会社貸与 PC を保全し、2017 年 10 月以降におけるメール
      データ及びファイルデータを保全するとともにそのレビューを実施した。


 ⑥ 役職員向けアンケート
       当委員会は、ヒアリング対象者を除く、石垣食品の役職員、本件子会社の役職員及
      び従業員、その他の子会社の役職員に対して、不適切な会計処理への関与の有無に係
      るアンケート調査を実施した。なお、本調査の目的に照らして、退職者も含め、調査
      対象期間における石垣食品及び本件子会社の経理担当者もアンケート対象者とした。
      回答結果は以下のとおりである。
      ・ 石垣食品の役職員向けアンケートにおいて、対象者6名から回答を得た。このう
      ち、自己又は他の関係者が不適切な会計処理に関与したとの認識を示した回答は存在
      しなかった。
      ・ 本件子会社の役職員及び従業員向けアンケートにおいて、対象者16名から回答
      を得た。このうち、自己又は他の関係者が不適切な会計処理に関与したとの認識を示
      した回答は存在しなかった。
      ・ その他の子会社(2社)の役職員向けアンケートにおいて、対象者4名から回答
      を得た。このうち、自己又は他の関係者が不適切な会計処理に関与したとの認識を示
      した回答は存在しなかった。


7.    本調査に関する留意事項
     本調査は、上記 4.で記載の限られた時間の中で、上記 6.記載の調査方法に基づき実施
されたものであり、当委員会が収集できたもの以外の関係資料等が存在し、又はヒアリン
グで得られた情報等の中に事実と異なる内容が含まれる可能性を否定できず、おのずと本
調査には一定の限界がある。また、当委員会は強制力を伴う調査手段を有するものではな
く、本調査は、あくまでも関係者の協力による任意の情報提供や資料提出に基づく調査と
して実施されたものである。さらに、本調査は上記 1.記載の委嘱事項①から⑤を中心に行
われたものであり、本調査対象期間に起こり得るあらゆる不正の有無を網羅的に調査した
ものでない。そのため、当委員会は、調査結果が完全であることを保証するものではない




                          4
が、本調査により、調査の目的を果たすための一定の合理的な基礎を得たものと判断して
いる。
 また、本調査は、関係する当事者の責任追及を目的とするものではなく、あくまでも本
件疑義の経緯や原因の究明を行うことを目的としている。なお、本調査は、石垣食品の社
内検討のために行われたものであり、当委員会は、石垣食品以外の第三者に対して責任を
負うものではない。




                   5
第2章 概要
1.   石垣食品の概要
(1) 概略
     会社名           石垣食品株式会社
     上場市場          東京証券取引所 JASDAQ 証券コード 2901
     決算日           3 月 31 日
     代表者役職氏名       代表取締役社長 石垣裕義
     本店所在地         東京都千代田区飯田橋 1 丁目 4 番 1 号 九段ウィズビル 6 階
     設立            1957 年 10 月 10 日
     資本金           566,205 千円(2019 年 3 月 31 日現在)
     従業員数          単体 10 名 連結 69 名
     事業内容          麦茶等嗜好飲料及び業務用乾燥具材類、
                   その他食品の開発・製造・輸入・販売


(2) 沿革
     1957 年 10 月   前代表取締役石垣敬義が資本金 100 万円で設立し、食料品の輸
                   出入及び製造販売の業務を開始
     1964 年 6 月    千葉県船橋市三山町に船橋工場を建設し、無菌香辛料等の製造
                   販売を開始
     1965 年 6 月    濃縮水出し麦茶を完成し”ミネラル麦茶”と命名して製造販売
                   を開始
     1983 年 10 月   スマイル株式会社を吸収合併し、同社工場を以降当社浮間工場
                   として使用開始
     1985 年 11 月   社団法人日本証券業協会に株式を店頭登録(資本金 1 億 5,075
                   万円)
     1986 年 12 月   千葉県香取郡多古町に成田空港工場を建設
     1987 年 8 月    日清製粉株式会社へ第三者割当増資(資本金 4 億 1,325 万円)
     1991 年 1 月    中華人民共和国山東省に合弁会社ウェイハン石垣食品有限公司
                   を設立
     1993 年 2 月    中華人民共和国山東省に独資会社チンタオ石垣食品有限公司を
                   設立
     2004 年 12 月   日本証券業協会への店頭登録を取消し、ジャスダック証券取引
                   所に株式を上場
     2005 年 12 月   ウェイハン石垣食品有限公司を 100%子会社化
     2009 年 1 月    チンタオ石垣食品有限公司を譲渡



                                      6
  2009 年 3 月      船橋工場を廃止し、成田空港工場へ統合
  2010 年 4 月      ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併に伴い、大阪
                  証券取引所 JASDAQ(現 大阪証券取引所 JASDAQ(スタンダ
                  ード)
                    )に上場
  2010 年 6 月      株式会社神戸物産、高島順氏へ第三者割当増資(資本金 4 億
                  6,275 万円)
  2012 年 6 月      減資(資本金 3 億円)
  2013 年 3 月      東京都千代田区飯田橋に本社を移転
  2013 年 7 月      東京証券取引所と大阪証券取引所の現物市場統合に伴い、東京
                  証券取引所 JASDAQ(スタンダード)に上場
  2017 年 10 月     株式会社新日本機能食品を連結子会社化
  2019 年 1 月      株式会社エムアンドオペレーションを連結子会社化


(3) 業績推移
     (ア) 連結経営指標
                                                            (単位:百万円)
                  2014/3   2015/3       2016/3   2017/3   2018/3    2019/3
    売上高              601      520          451      405     1,389     2,721
    経常損益             ▲77      ▲73          ▲86      ▲53       10      ▲236
    親会社に帰属す          ▲68      ▲74         ▲170      ▲54      ▲97      ▲274
    る当期純損益
    包括利益             ▲57      ▲64         ▲172      ▲52      ▲40      ▲272
    純資産額             329      265           93       40      254       201
    総資産額             405      374          239      191     1,541     1,475


     (イ) 単体経営指標
                                                            (単位:百万円)
                  2014/3   2015/3       2016/3   2017/3   2018/3    2019/3
    売上高              596      517          449      403      386       370
    経常損益             ▲30      ▲31          ▲52      ▲46      ▲40       ▲79
    当期純損益            ▲21      ▲85         ▲165      ▲58      ▲98      ▲101
    純資産額             349      264           99       42      255       372
    総資産額             418      342          225      196      507       540




                                    7
2.   本件子会社の概要
(1) 概略
     会社名           株式会社新日本機能食品
     決算日           7 月 31 日
     代表者役職氏名       代表取締役社長 I 氏
     本店所在地         東京都渋谷区神宮前 1 丁目 5 番 8 号 神宮前タワービルディン
                   グ 14 階
     設立            2002 年 8 月 2 日
     資本金           50,000 千円(2019 年 3 月 31 日現在)
     従業員数          13 名
     事業内容          美容・健康商材を中心としたインターネット小売販売事業及び
                   卸売事業


(2) 沿革
     2001 年 8 月    I 氏が健康食品の企業向けインターネット販売事業として創業
     2002 年 8 月    代表取締役 I 氏が岡山市中区祇園 789 に有限会社新日本機能食
                   品開発研究所を設立(資本金 300 万円)
     2005 年 1 月    本店を岡山市築港栄町 29-21 へ移転
     2006 年 10 月   登記上本店を新宿区愛住町 7-3-201 号に移転
     2010 年 8 月    商号を株式会社新日本機能食品に変更
     2012 年 8 月    東京本店(登記上本店)を渋谷区桜丘町 26-1 セルリアンタワー
                   15 階に移転
     2014 年 6 月    ドバイに営業拠点を設置
     2015 年 9 月    岡山市南区築港栄町 29-22 に倉庫を開設
     2017 年 10 月   石垣食品株式会社による連結子会社化
     2018 年 2 月    東京本店(登記上本店)を渋谷区神宮前 1 丁目 5 番 8 号神宮前
                   タワービルディング 14 階に移転




                                    8
3.   石垣食品による本件子会社の連結子会社化の概要
(1) 本件子会社の連結子会社化の経緯
     石垣食品は 2014 年 3 月期以降、2017 年 3 月期まで連結決算において 4 期連続して営業
損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、2018 年 3 月期は営業利益又
は営業キャッシュ・フローがプラスを計上できない場合は JASDAQ 市場の上場廃止基準に
抵触し上場廃止が免れない状況であったが、2018 年 3 月期中において石垣食品グループの
既存の事業だけでは同期における営業利益の計上又は営業キャッシュ・フローのプラス化
は実現が困難な見通しであったため、M&A により新規事業を取得又は営業利益を計上して
いる会社を連結子会社とすることにより、その実現を図ることを計画した。
     M&A の相手先を探す過程において、上場会社の子会社となることを望んでいたインタ
ーネットによる通信販売業者である本件子会社が候補に浮上し、2017 年 10 月末に本件子会
社株式の 51%を石垣食品が取得し連結子会社とする方向で本件子会社株式のすべてを保有
する本件子会社社長と交渉していたが、その一方で本件子会社の株式を取得するまでに一
定の期間をおくことにより同社と石垣食品の関係性を深める必要性があったこと、また石
垣食品の株式取得資金のワラント行使による資金調達が想定よりも遅れていたこともあり
2017 年 10 月末における本件子会社株式の取得は困難となったため、同年 10 月 31 日に取締
役会決議を行ない同日付で石垣食品と本件子会社社長との間で株式譲渡契約を締結し、本
件子会社社長から石垣食品への本件子会社株式 510 株(発行済株式総数の 51%)の譲渡(譲
渡価格は 306 百万円)は 2018 年 3 月 31 日に行うこととした。
     また、同契約第 6 条において、本件子会社の株主である本件子会社社長が今後の株主総
会におけるすべての議案に対して賛成の意思表示をする(企業会計基準第 22 号「連結財務
諸表に関する会計基準」第 7 条(2)①の「自己の意思と同一の内容の議決権を行使するこ
とに同意している者」に該当)こと及び石垣食品取締役及び従業員が本件子会社の取締役に
選任されることにより本件子会社の取締役会の構成員の過半数を占めることが定められ、
「連結財務諸表に関する会計基準」第 7 条(3)により石垣食品が本件子会社の意思決定機
関を支配しているものとして(いわゆる実質支配力基準)2017 年 10 月 31 日以降本件子会
社は石垣食品の子会社に該当することとなった。
     株式譲渡契約の締結を受け、石垣食品では同日付で「株式会社新日本機能食品の株式の
取得(子会社化)に関するお知らせ」とのタイトルでプレスリリースを行い、同日付取締役
会において本件子会社の株式を取得し子会社化することを決議した旨、及び当該決議に基
づき 2018 年 3 月 31 日付で株式の取得を予定している旨の開示を行っている。
     なお、2017 年 10 月 30 日付で本件子会社と本件子会社社長との間で債務弁済契約が締結
され、本件子会社社長が本件子会社に対し同日時点で 127 百万円の支払義務を負っており
同債務の弁済は石垣食品の本件子会社社長に対する債務により弁済される旨が定められて
いる。
     また、2017 年 10 月 31 日付で本件子会社と石垣食品との間で金銭消費貸借契約が締結さ



                             9
れ、石垣食品が本件子会社に対して 2018 年 3 月 31 日まで毎月末に 50 百万円ずつ合計 300
百万円の貸し付け(利息は年 1%、弁済期間は 2018 年 3 月 31 日)を行う旨も定めている。


(2) 本件子会社の連結子会社化に係る会計処理
 上記の本件子会社株式に係る株式譲渡契約の締結を受け、石垣食品では 2017 年 11 月以
降本件子会社を連結子会社とし同社の業績を連結財務諸表に取り込むとともに、2018 年 3
月 31 日の本件子会社株式取得時には同時点の本件子会社の純資産額の取得持分相当額と株
式取得価額 306 百万円の差額 380 百万円をのれんとして計上し、2018 年 4 月以降償却期間
8 年間で償却費を計上している。
 なお、本件子会社の連結子会社化による 2018 年 3 月期連結損益計算書に対するインパク
トは、売上高から当期純損益の各項目には本件子会社の 2017 年 11 月から 2018 年 3 月まで
の損益が反映されるものの、本件子会社は実質支配力基準により連結子会社化しており石
垣食品の本件子会社株式の持分比率は 2018 年 3 月 31 日の株式譲渡までは 0%のため本件子
会社の当期純損益はすべて非支配株主に帰属する損益として連結財務諸表から控除され、
親会社株主に帰属する当期純損益にあたえる影響はゼロである。




                         10
第3章 調査により判明した事実(本件子会社における損益期間帰属について)
     本調査の結果、本件子会社における損益期間帰属にかかる疑義について判明した事実は
以下のとおりである。


1.    本件調査の概要
     第 1 章 1.に記載のとおり外部からの指摘により、石垣食品の 2018 年 3 月期連結損益計算
書に含まれる本件子会社の損益1において、売上原価や販売促進費などにかかる期間帰属の
誤りの可能性が認識された。具体的には、以下の類型が認識された。


① 仕入取引の一部について、2018 年 3 月納品分が同年 5 月に仕入計上されている。また、
      2017 年 11 月納品分が同年 10 月に仕入計上されている。
② 販売促進費の一部について、2018 年 3 月分が同年 4 月に費用計上されている。
③ 荷造運賃の一部について、2017 年 11 月及び 12 月分が同年 10 月に計上されている。
④ 支払手数料の一部について、2018 年 1 月以降の費用分が 2017 年 10 月に見越計上され、
      同年 12 月に同額が戻入計上されている。


     これら各種の計上誤りの可能性が認識されたところ、いずれも 2018 年 3 月期の連結営業
利益を増加させる方向の会計処理であった。当委員会は勘定科目の特性やリスク、金額的重
要性などに鑑みて、調査対象取引とかかる期間及び手法について以下のとおりに設定する
こととした。
      調査対象取引       調査対象期間                  調査手法
       売上原価        2017 年 10 月~   会計元帳における記帳日と、実際の仕入日
       (仕入)        2019 年 12 月           (納品日)との照合
      販売促進費                       会計元帳における記帳日と、実際の締め日
                       同上
                                       (入金日及び発生日)との照合
       荷造運賃                       会計元帳における記帳日と、実際の締め日
                       同上
                                         (発生日)との照合
      その他経費            同上                会計元帳等のレビュー


     なお、本調査上、時間的及び地理的な制約が存在したことから、一定のカバレッジを満た


1
     本件子会社の 2017 年 11 月 1 日から 2018 年 3 月 31 日(5 か月間)の損益が、石垣食品
の 2018 年 3 月期の連結損益計算書に取り込まれている。
     なお、本件子会社の財務諸表は石垣食品側で必要な連結調整を経て連結財務諸表に取り
込まれているが、本調査で判明した不適切な会計処理についてはいずれも連結調整はなさ
れずに石垣食品の連結財務諸表に含まれている。


                                  11
せるように検証範囲を決定したうえで調査を実施することとするとともに、本件子会社の
社長及び取締役並びに顧問会計事務所へのインタビューも併せて実施している。




2.    仕入取引の調査の結果
     上記 1.の方針に基づいて仕入取引にかかる期跨ぎ処理の調査を行った結果、期間帰属に
関して以下の不適切な会計処理が発見された。


(1) 2018 年 3 月末仕入カットオフエラー(A 社からの仕入 15,183 千円)
(実際の仕訳(単位:千円))
     ① 伝票日付 4/3(入力日付 4/5)   前渡金      16,397   /普通預金   16,397
     ② 伝票日付 5/3(入力日付 4/11) 仕入        15,183   /買掛金    16,397
                            仮払消費税 1,214
     ③ 伝票日付 5/3(入力日付 6/26) 買掛金       16,397   /前渡金    16,397


     (a) 会計処理にかかる結論
     対象取引の実際の入荷は 2018 年 3 月下旬であり同年 3 月末の棚卸資産にも計上されて
いる取引であるため、本来は同月に仕入計上すべきであったものの、後述する要因により
同年 5 月に仕入計上されていたものであり、訂正が必要であると判断する。


     (b) エラーの原因の検討
     当該会計処理については、本件子会社社長と本件子会社の経理担当者との間で、仕入計
上時期を 2018 年 3 月から 4 月にずらすことが意図されていたことが窺えるメールでのや
りとりが検出された。当該メールの内容に基づけば、当該仕入取引を 3 月度の仕入明細か
ら除外して 4 月度の仕入明細に移し変える意図的なエクセルファイルの加工処理がなされ
ている状況が窺われたため、仕入計上を翌連結会計年度に先送りすることを意図したもの
であるとして、当委員会としては恣意的に費用計上の月ずれ操作をしていたものと認定す
ることが適当であると判断した。
     そもそも実際の入荷は 2018 年 3 月 26 日で 3 月末の棚卸資産にも計上されている取引で
あり、また 4 月 3 日の支払時点においても請求書は到着していたため、その時点において
該当商品が入荷済みであるという認識を事実誤認して前渡金処理(上記仕訳①)を行い、
仕入計上を 5 月度に行うこと(上記仕訳②)は通常は合理的には想定できない処理である
と考えられる。なお、最終的に上記③の仕訳では 6 月の支払処理の整理時期において、通
例では用いられない前渡金 16,397 千円が消し込まれることなく貸借対照表に残り続けてい
る異常に経理担当者が気づき、買掛金との相殺処理を行ったものと考えられる。




                                12
 (c) 会計監査への対応
 まず、上述の仕入先明細エクセルファイルの加工については、監査法人向けに提出する
資料を巡るやり取りのメールで検出されたことから、会計監査により当該会計処理が発見
されることを回避するために行われたものであるとして認定することが適当であると判断
した。
 また、当該仕入先に対する買掛金は会計監査による残高確認手続きの対象となっていた
ところ、本件子会社においては上記の会計処理を行っていたことによって、仕入先におけ
る本件子会社に対する売掛金の認識額と本件子会社における仕入先に対する買掛金の認識
額との間にはおのずと差異が発生することとなるが、かかる残高確認手続きに関するメー
ルでのやりとりが検出された。当該メールにおいては、本件子会社の経理担当者は本件子
会社社長から指示を受ける形で、会計監査による残高確認手続きが行われること及びその
確認金額については当社残高の一部分であることを仕入先担当者に対してメールで伝達し
口頭でも別途フォローする旨が記載されていた。その結果として、上記取引にかかる買掛
金相当が除外された金額ベースで「一致」した残高確認状が監査法人宛てに返送されるこ
ととなった。このような経緯に照らすと、当委員会としては、本件子会社による仕入先に
対するこのようなコミュニケーションが、会計監査により当該会計処理が発見されること
を回避するために行われたものであるとして認定することが適当であると判断した。




(2) 2017 年 10 月末仕入カットオフエラー
(B 社からの仕入 4,938 千円、C 社からの仕入 5,049 千円)
(実際の仕訳(単位:千円))
① 伝票日付 10/31(入力日付 12/10)仕入        4,938 / 買掛金 5,333
                       仮払消費税 395
② 伝票日付 10/31(入力日付 12/10)仕入        5,049 / 買掛金 5,453
                       仮払消費税 403


 (a) 会計処理にかかる結論
 対象取引の実際の入荷は 2017 年 11 月であり同年 10 月末の棚卸資産には計上されていな
い取引であるため、本来は同年 11 月に仕入計上すべきであったものの、後述する要因によ
り同年 10 月に仕入れ計上されていたものであり、訂正が必要であると判断する。


 (b) エラーの原因の検討
 担当者へのヒアリング等により、実際の仕訳処理については以下のように確認を行っ
た。なお、処理誤りの詳細な原因までは究明できなかったが、伝票の入力時期は石垣食品
による連結子会社化に際した月次決算の開始や様々な会計処理の整理を行っていた時期で



                             13
もあり、入荷・支払の処理の手続きが従来手続きでは間に合わなかった点が多く、かつ通
常の経理スタッフとは異なる者による入力であったことなどから、処理ミスや何らかの別
の取引との混同等が起きてしまった可能性があるとのことであった。
 なお、連結取込期間(2017 年 11 月以降)における本件子会社の損益改善を意図する恣
意性の有無については、そのような意図を示すメール等の客観的資料は検出されておら
ず、また下記(3)の連結取込期間の損益を悪化させる案件が発見されていることからも、当
委員会としては恣意性のあるものとは認定していない(下記(3)も同様の取扱いである)
                                        。


(3) 2017 年 10 月末仕入カットオフエラー(D 社からの仕入 3,331 千円)
(実際の仕訳(単位:千円))
① 伝票日付 11/14(入力日付 11/21) 仕入        3,331   / 買掛金 3,598
                       仮払消費税        267


 (a) 会計処理にかかる結論及びエラーの原因の検討
 対象取引の実際の入荷は 2017 年 10 月であり同年 10 月末の棚卸資産にも計上されてい
る取引であるため、本来は同年 10 月に仕入計上すべきであったものの、後述する要因に
より同年 11 月に仕入れ計上されていたものであり、訂正が必要であると判断する。
 なお、エラーの原因や当委員会による認定については上記(2)取引と同様である。


(4) 評価
 これら仕入取引のうち上記(2)及び(3)の会計処理については、石垣食品及び本件子会社そ
れぞれの社長指示等の特段の事実は発見されておらず、また利益を増加させる方向とは逆
方向の会計処理もなされていることなどからも、当委員会としては当該会計処理が意図的
に行われたものではないと判断した。
 しかし、上記(1)の会計処理については、本件子会社内部での意図性を窺わせるメールが
確認されたことから、意図的に行われたものと認定せざるを得ないと判断した。また、本
件子会社による各種の会計監査に対する偽装行為が、当該会計処理の適時な発見を阻害し
たものとして認定することも適当であると判断した。
 加えて、意図的か否かは問わず、大量の商品販売を生業としたビジネスの基幹である仕
入計上プロセスにかかる内部統制の不備であり、また経営として最も重視すべき指標の一
つである粗利率が大幅に変動していたにも関わらず誤った会計処理を検知するような分析
的なレビューが行われていなかったことについても、内部統制の不備があったものと認定
することが適当であると判断した。




                              14
3.    販売促進費の調査の結果
     上記 1.の方針に基づいて販売促進費にかかる期跨ぎ処理のレビューを行った結果、期間
帰属に関して以下の処理が発見された。


(1) 2018 年 3 月末費用カットオフエラー(E 社販売手数料)
(実際の仕訳(単位:千円))
     ① 伝票日付 4/2(入力日付 4/6)   販売促進費 12,672 /普通預金 13,686
                            仮払消費税    1,013
※     実際は販売促進費等の手数料控除後ベースで売上が入金される取引であるため、費用
部分のみを抜粋したものである。


     (a) 会計処理にかかる結論
     対象取引が属する販売手数料の計算期間は 2018 年 3 月度(3 月 13 日~23 日)であり E
社からの決済も同月内になされて売上も同月に計上されているため、本来は費用も同月に
計上すべきであったものの、後述する要因により同年 4 月に計上されていたものであり、
訂正が必要であると判断する。


     (b) エラーの原因の検討
     まず、本件子会社の E 社小売販売にかかる資金の流れであるが、E 社との窓口となって
いる本件子会社の子会社(石垣食品の孫会社に相当する。以下、
                            「孫会社」という。)の口
座に販売促進費等の手数料控除後の売上が E 社から入金され、その後数日以内に当該孫会
社の口座から本件子会社の口座へ資金移動されるフローとなっている。ここで、孫会社へ
の入金時点においては一旦預り金として処理され、それが資金移動された時点で本件子会
社においてかかる販売促進費等が費用計上されることとされていた(なお、売上は入金タ
イミングと関係無く発生ベースで計上されている。以下、この費用計上方法を「入金基
準」という。。
     )
     ここで、上記対象取引の会計処理については、本件子会社社長と経理担当者との間にお
ける、資金移動タイミングを 2018 年 3 月から 4 月にずらすことが意図されていたことが
窺えるメールでのやりとりが検出された。当該メールに基づけば、上記で説明した本件子
会社の「入金基準」という当時の会計処理方法を利用し、一旦 E 社から窓口会社である孫
会社の口座に入金された金額を、本件子会社へ資金移動するタイミングを敢えて期跨ぎの
4 月度(4 月 2 日)に遅らせることで「入金基準」による費用計上タイミングを翌連結会
計年度とすることを意図したものであるとして、当委員会としては恣意的な費用月ずれ操
作をしていたものと認定することが適当であると判断した。


     なお、上記取引の前月である 2018 年 2 月 27 日に本件子会社へ資金移動された同種取引



                               15
について、計算対象期間は同年 2 月 9 日~23 日であったところ、実際の入金に基づき 2 月
度の販売促進費として一旦は会計処理されていたところ、当該取引を 2 月度ではなく 3 月
度の販売促進費として処理するよう後日(3 月 27 日)に本件子会社社長から経理担当者へ
指示しているメールも検出された。この会計処理指示の意図を明らかにすることはできな
かったものの、当委員会としては、このような事後的な 2 月度会計処理の修正処理は、上
記 3 月度販売促進費の期ずれ処理の伏線になっていた可能性があるものと判断した。


(2) 2019 年 3 月末費用カットオフエラー(E 社販売手数料)
(実際の仕訳(単位:千円))
 ① 伝票日付 4/1(入力日付 6/25) 販売促進費 17,441 /普通預金 18,836
                      仮払消費税    1,395


 (a) 会計処理にかかる結論
 対象取引が属する販売手数料の計算期間は 2019 年 3 月度(3 月 8 日~23 日)であるた
め、本来は同月に費用計上すべきであったものの、後述する要因により同年 4 月に計上さ
れていたものであり、訂正が必要であると判断する。


 (b) エラーの原因の検討
 当該期の会計処理は後述のとおり、従前の方法(入金基準)から、実際の発生額を日割
りで各月に按分して費用計上する方法に変更している。
 ヒアリングに基づけば、この際、本件子会社の経理担当者としては日割り計算を行うた
めに「期跨ぎ」の請求書の処理には注意が払われており、実際 2019 年 3 月 22 日~同年 4
月 5 日分の請求書については適切に日割り計上の対象であることを認識して処理されてい
たものの、2019 年 3 月 8 日~同月 22 日分の請求書については「期跨ぎ」ではなかったこ
とから日割り計上の対象であることが認識から漏れてしまい、結果として費用計上が翌連
結会計年度になってしまったとのことであった。この点、経理処理の要請を踏まえれば当
然に当該取引も 2019 年 3 月度の費用計上の対象とすべきであるものであり経理処理の観
点からは落ち度は認められるものの、その恣意性の意図を示すメール等の客観的資料は検
出されていないことから、当委員会としては恣意性のあるものとは認定していない。


(3) 入金基準から発生主義への修正
 上記のような各期における販売促進費にかかる複数のエラーが認められたところ、そも
そもの入金基準が適切であったかどうかを当委員会として検証することが必要であると判
断した。ここで、本件子会社における販売促進費の会計処理の変遷を確認したところ、以
下のような経緯を経ていることが確認された。




                          16
        期間              会計処理             会計処理を採用した根拠
 2019 年 2 月まで   入金基準(E 社の売上金は販売        正確性や客観性を重視して、入
                手数料が相殺されて入金される         金時の実額を以て費用計上する
                ため、そのタイミングで費用計         ことが適切と判断されていたこ
                上を行う)                  とによる。
 2019 年 3 月~    発生主義(実際の発生額を日割         実際の発生額による客観的な計
     現在         りで各月に按分して費用計上す         上が実務上可能となったことに
                る)                     よる。


     このような変遷の過程や根拠を含めて、収益と費用の対応関係を精査した結果、2019 年
2 月以前に適用していた入金主義による費用計上方法は、現在採用している発生主義によ
る費用計上方法に訂正することがより適当であると判断した。この場合、上記(1)及び(2)に
かかるカットオフエラーの訂正も、この発生主義による訂正、具体的には日割りに基づく
費用の期間配分処理を行うことに包含される形で訂正することがより合理的であると当委
員会は判断した。




4.    荷造運賃の調査の結果
     上記 1.の方針に基づいて荷造運賃の期跨ぎ処理の調査を行った結果、期間帰属に関して
以下の処理が発見された。


(1) 2017 年 10 月末費用カットオフエラー(F 社荷造運賃)
(実際の仕訳(単位:千円))
     ① 伝票日付 10/31(入力日付 11/27) 荷造運賃 4,629 /未払費用 5,000
                             仮払消費税 371
     ② 伝票日付 11/30(入力日付 11/27) 未払費用 5,000 /普通預金 5,000
     ※ 2017 年 11 月度~2018 年 1 月度(一部)の役務提供分にかかる費用計上無し


     (a) 会計処理にかかる結論
     対象取引は 2017 年 11 月以降の倉庫役務提供であるため、本来は同年 11 月以降に費用計
           後述する要因により同年 10 月に計上されていたものであるため、
上すべきであったものが、
2017 年 11 月以降の役務提供の発生に応じた費用として訂正が必要であると判断する。


     (b) エラーの原因の検討
     上記の会計処理については、石垣食品の元経理責任者と本件子会社社長との間で意図さ
れたメールでのやりとりが検出された。当該メール及びヒアリングからは、石垣食品の元


                               17
経理責任者が本来は 2017 年 11 月以降の費用計上が適切であることを認識していたにも関
わらず同年 10 月度での費用計上を本件子会社へ指示していたこと、及び本件子会社社長
においても同様の認識を有していたにも関わらず特段の異議を唱えることなく不適切な会
計処理を是認していたことが確認された。


     (c) 会計監査への対応
     本件子会社社長と本件子会社取締役との間で、監査法人による期末監査に際して、当該
会計処理について、適当な理由を模索するための協議や「監査を通すための書類」を取引
先に作成依頼しているメールも確認され、実際に本来とは異なる名目を付してバックデー
トで作成された架空の請求書の存在も確認された。さらに、2017 年 11 月及び 12 月の荷造
運賃の計上額が過少でないかとする監査法人からの質問に対しては、
                              「値引を受けた」旨
の虚偽の回答を行うなどして、会計監査においても発見することができないような対応が
図られていたことも確認された。
     当委員会としては、本来とは異なる名目が付されたバックデートでの架空の請求書の作
成や監査法人に対するこのようなコミュニケーションが、会計監査により当該会計処理が
発見されることを回避するために行われたものであるとして認定することが適当であると
判断した。


     (d) 評価
     上記エラーについては、メールでのやりとり等から、当委員会としては本件子会社のみ
ならず石垣食品の元経理責任者が恣意的な費用月ずれ操作をしていたものと認定すること
が適当であると判断した。特に、本来は親会社経理責任者として子会社に対して適切な経
理指導や不適切な会計処理の防止・発見が求められる立場であるにも関わらず、逆に本件
子会社側の不適切な経理処理を容認する結果となってしまっていることについては、親会
社側の子会社経理への統制不足も指摘せざるを得ないと判断した。
     さらに、本件子会社による各種の会計監査に対する偽装行為が、当該会計処理の適時な
発見を阻害したものとして認定することも適当であると判断した。




5.    その他費用の調査の結果
     上記 1.の方針に基づいて月次推移レビューや期末前後月の異常仕訳の有無の確認を行っ
た結果、期間帰属に関して以下の処理が発見された。


(1) 2017 年 10 月末支払手数料(社宅家賃)の計上誤り
(実際の仕訳(単位:千円))
     ① 伝票日付 10/31(入力日付 4/13) 支払手数料 1,300   /未払費用   1,300



                              18
 ② 伝票日付 12/31(入力日付 4/13) 未払費用    1,300   /支払手数料 1,300
 ③ 伝票日付 12/31(入力日付 4/13)   敷金等   1,281   /普通預金   1,281


 (a) 会計処理にかかる結論
 対象取引は社宅に関して入居以降の前払賃料や敷金、礼金など入居時に一般的に求めら
れる支払であり、本来 2017 年 10 月に費用計上すべきでないものの、後述する要因により
同月に費用計上されていたものであり、計上を取り消す訂正が必要であると判断する。


 (b) エラーの原因の検討
 上記の会計処理については、石垣食品の元経理責任者と本件子会社社長との間で意図さ
れたメールでのやりとりが検出された。当該メール及びヒアリングからは、本件子会社社
長が 2017 年 12 月下旬以降に契約・居住する社宅について、石垣食品の元経理責任者が本
来は同月以降の費用計上が適切であることを認識していたにも関わらず同年 10 月度での
費用計上を指示していたこと、及び本件子会社社長においても特段の異議を唱えることな
く不適切な会計処理を是認していたことが確認された。
 なお、1,300 千円に近似する金額が社宅に関して当時支払われた事実は契約書や出金状
況等により確認することができたものの、その支払の内容は入居以降の前払賃料や敷金、
礼金など入居時に一般的に求められる項目であり、そもそもすべてが費用性の支出でもな
く、かつ計上時期自体も不適切である。


 (c) 評価
 上記エラーについては、メールでのやりとり等から、当委員会としては本件子会社のみ
ならず石垣食品の元経理責任者が恣意的な費用月ずれ操作をしていたものと認定すること
が適当であると判断した。特に、本来は親会社経理責任者として子会社に対して適切な経
理指導や不適切な会計処理の防止・発見が求められる立場であるにも関わらず、逆に本件
子会社側の不適切な経理処理を容認する結果となってしまっていることについては、親会
社側の子会社経理への統制不足も指摘せざるを得ないと判断した。




(2) 2017 年 10 月末及び 12 月末の商品評価損の計上誤り
(実際の仕訳(単位:千円))
 ① 伝票日付 10/31(入力日付 1/15) 商品評価損 7,438     /商品     7,438
 ② 伝票日付 11/1 (入力日付 1/15) 商品      7,438   /商品評価損 7,438
 ③ 伝票日付 12/31(入力日付 1/15) 商品評価損 12,481    /商品     12, 481
 ④ 伝票日付 1/1 (入力日付 1/15)    商品    12, 481 /商品評価損 12, 481
 ※ 入力日付が 2018 年 1 月 15 日となっているのは、連結後初決算の対応時期のため



                            19
    ※ 2018 年 3 月末決算:評価損計上無し
    ※ 2019 年 3 月末決算:単体は計上無いものの連結上は計上有り(13,669 千円)


    (a) 会計処理にかかる結論
    下記の論拠により、2017 年 10 月末及び同年 12 月末に計上された商品評価損の計算方法
が不適切であったものとして、計上を取り消す訂正が必要であると判断する。


    (b) 会計処理の概要
    まず、上記仕訳のとおり、石垣食品による連結子会社化前の期間である 2017 年 10 月末
付けで商品評価損を 7,438 千円計上し(翌月首に洗替え法により戻入)、同年 12 月末付け
で 12,481 千円計上し(同)、2018 年 3 月末以降は本件子会社単体では評価損が計上されて
いない2。これにより、結果的に 2017 年 11 月から 2018 年 3 月の期間では、その期首に計
上されていた評価損 7,438 千円について売上原価内での戻入益が発生している。


    ここで、3 か月滞留した商品はゼロ円まで評価減するというルールがあるが、具体的な
計算方法は 2017/10 及び 2017/12 において以下のとおりであった。
    (計算方法)3 か月間出荷ゼロをゼロ円まで評価減


    上記の計算方法では例えば期末日に大量に新規に仕入れたアイテムでも出荷はゼロであ
るので評価損対象となってしまうなどの、計算方法の非合理性が認められた。また、2017
年 10 月末及び同年 12 月末に用いられた在庫データを当委員会が検証したところ、データ
母集団と会計上の簿価とが大きく異なるという正確性を欠いたデータが用いられていたこ
とも判明した。さらに、改めて正しい方法で計算したところ、2017 年 10 月末及び同年 12
月末の計算結果は上記計上額よりも相当に小さい金額であると見積もられた。
    上記の論拠、及び 2017 年 10 月末の連結子会社化前に損失を積み増しておき 2018 年 3
月期中に取り消すことで戻入益を計上する結果となっている点は、経済実態の観点からは
不適切であると判断した。


    (c) エラーの原因の検討
    2017 年 10 月末及び同年 12 月末の計算に用いられた商品評価損ルール設定の経緯や使用
データについての詳細、とりわけ評価損対象商品の抽出基準において直近 3 か月間の出荷
がゼロの商品のみを対象としてしまっていたこと(この抽出方法では例えば 1 か月前に新
たに仕入れた品も対象となってしまう)
                 、及び不正確なデータを利用していたことについ
て、石垣食品の元経理責任者などに対するインタビューを実施したものの、特段の恣意性


2
    2019 年 3 月期以降は、石垣食品の連結修正で商品評価損の計上が行われている。


                              20
は無いとの回答であった。


 (d) 評価
 上記の会計処理については、石垣食品及び本件子会社それぞれの社長指示等を示すメー
ル等の客観的資料は検出されていないことから、当委員会としては恣意性のあるものとは
認定していない。




(3) 2018 年 3 月末棚卸資産の計上誤り
(実際の仕訳(単位:千円))
 ① 伝票日付 3/31(入力日付 4/11) 商品 2,076 / 売上原価 2,076
 ※該当金額分のみを抽出しているため、全体の仕訳額とは一致しない
 ※仕入自体は翌期 4 月に計上されているため、2018/3 期の利益が過大となっている


 (a) 会計処理にかかる結論
 対象取引の実際の入荷は 4 月であったものであり、本来 2018 年 4 月に仕入・商品計上す
べきであった仕ものの、後述する要因により同年 3 月には仕入計上は伴わず商品のみ計上
されていたものであり、訂正が必要であると判断する。


 (b) エラーの原因の検討
 本件子会社の棚卸資産にかかる経理処理は、月末実地棚卸数量に翌月初入荷数量を加算
することで実地棚卸金額として確定する方法を採用している。この方法に則る限り、2018
年 4 月 2 日に入荷していた当該在庫を 3 月末の棚卸資産に計上することは適当である。し
かし、適当であるのは仕入も同年 3 月に計上されている場合に限られるが、本件では仕入
取引は翌連結会計年度である 4 月計上されていたため、期間帰属の誤りとなってしまった
ものと考えられる。


 (c) 評価
 上記の会計処理については、当委員会としては石垣食品及び本件子会社それぞれの社長
指示等を示すメール等の客観的資料は検出されていないことから、当委員会としては恣意
性のあるものとは認定していない。




(4) 2017 年 10 月末コーポレートカード利用経費の計上誤り
(実際の仕訳(単位:千円))
 ① 伝票日付 10/31(入力日付 12/18) 費用(仕入)2,085 /未払費用(買掛金)2,085


                           21
 ※利用分が 11 月 1 日以降分の金額のみを集計


 (a) 会計処理にかかる結論
 2017 年 11 月を利用日とするコーポレート利用取引は、本来 2017 年 11 月に費用計上すべ
きであったものの、後述する要因により同年 10 月に費用計上されていたものであり、訂正
が必要であると判断する。


 (b) エラーの原因の検討
 本件子会社の経理処理方針として、通常は支払月の前月に発生したものとして費用計上
(例:カード利用期間 2 月 20 日~3 月 19 日・支払:4 月 10 日の場合、費用は 3 月計上)
していたところ、買収に伴う会計処理の精査により 2017 年 10 月末の連結決算にあたり保
守的に経費を計上したものであるとの説明を受けた。すなわち、対象取引となっている利
用期間:2017 年 10 月 20 日~11 月 19 日、支払:12 月 10 日のカード利用決済分につい
て、通常の処理であれば費用計上月は 11 月度にされていたところ、連結決算の初度対応の
観点及び 10 月度利用分も利用額に含まれていたことなどから、そのすべてを 10 月度に前
倒しで費用計上していたとのことであった。
 この点、上記の会計処理については、石垣食品の元経理責任者による本件子会社の顧問
会計事務所に対する指示を窺わせるメールでのやりとりが検出された。当該メール及びヒ
アリングに基づけば、上記の締め日のコーポレートカード利用経費について、石垣食品の
元経理責任者が本来は 11 月以降の費用計上が適切であることを認識していたにも関わらず
同年 10 月度での費用計上を指示していたこと、及び本件子会社社長においても特段の異
議を唱えることなく不適切な会計処理を是認していたことが確認された。


 (c) 評価
 当委員会としては、本件子会社のみならず石垣食品が恣意的な費用月ずれ操作をしてい
たものと認定することが適当であると判断した。




                           22
6.    小括
     (a) 内部統制の評価
     本件子会社においては本章で検討してきたとおり、主として 2018 年 3 月期において、一
部で恣意的な費用月ずれ操作が行われていたものと認められるほか、仕入や棚卸資産、各種
費用処理についての多くの誤った会計処理が行われていることが判明しているが、これら
の多くは本件子会社における会計処理にかかる適切なチェックがなされていなかったとい
う内部統制の不備に起因しているものと認められた。具体的に言えば、仕入取引や経費取引
を実際の証憑に基づいて正確・適時・網羅的に会計記帳をするよう業務プロセスを構築し、
かつ経理又は経営責任者が総括的なレビューをすることなどにより損益の全体的な適切性
をチェックする体制を構築する必要があったにも関わらず、その整備は不足していたもの
と評価せざるを得ない。また、親会社の経理責任者は子会社の経理内容を適切にチェックす
ることもまた当然に要求されるところであるが、不適切な会計処理を含む子会社財務デー
タを適切な注意が払われることなく連結決算に利用していたことなどから、必要なチェッ
ク体制の整備が不足していたものと評価せざるを得ない。
     また、上記のとおり内部統制の整備面や運用面において各種の不備が認められたところ、
そもそも、一部の取引については会社の内部統制を逸脱するような行為もみられたことか
ら、本件子会社において業務プロセスや決算統制といった個別プロセスのみならず統制環
境等の全社的な内部統制が実効性を伴っていなかったものと評価せざるを得ない。
     なお、2019 年 3 月期以降の会計処理の誤りは 2018 年 3 月期に比して相対的に減少してい
ると言えるものの、この事実を以てその以前の期における内部統制の不備が根本的に改善
したとまで言える根拠を当委員会としては確認できていない。


     (b) 本件子会社における期間帰属に関して発見された会計処理の訂正影響
     当委員会の調査により判明した各年度の各種会計処理誤りによる石垣食品の連結損益計
算書にあたえる影響額は、下表のとおりである。なお、石垣食品による過年度有価証券報告
書等の訂正作業においては、当委員会による調査以外の自主的な点検等により発見された
会計処理の誤りの訂正も含まれる可能性があるため、下表の訂正額が石垣食品による訂正
額と一致を保証するものではない。


・2018 年 3 月期においては、本件子会社が石垣食品に連結子会社化された時点(連結期首)
                        、及び 2018 年 3 月期末における過
での過大費用計上にかかる期ずれ(訂正により費用増)
少費用計上にかかる期ずれ(訂正により費用増)の影響額のそれぞれの合計となる。
・2019 年 3 月期においては、2018 年 3 月期末における過少費用計上にかかる期ずれ(訂正
により費用減)2019 年 3 月期末における過少費用計上にかかる期ずれ
       、                           (訂正により費用増)
の影響額のそれぞれの合計となる。
・2020 年 3 月期(進行期)においては、2019 年 3 月期末における過少費用計上にかかる期



                            23
ずれ(訂正により費用減)の影響額となる。




図表    連結営業利益にあたえる影響額(△:損失)                                    (単位:千円)
 項         内容         2018/3 期        2019/3 期     2020/3 期      備考
2-1   仕入(A 社)          △15,183           15,183                 ※1
2-2   仕入(B 社・C 社)        △9,988
2-3   仕入(D 社)              3,332
3-1   販売促進費(18/3 末)    △10,959           21,974                 ※1
3-2   販売促進費(19/3 末)                    △17,442        17,442
4     荷造運賃               △4,630                                 ※1,2
5-1   支払手数料(社宅)          △1,300                                 ※1,2
5-2   商品評価損              △7,438
5-3   棚卸資産計上             △2,076            2,076
5-4   コーポレートカード          △2,085                                 ※1,2
                 合計    △50,328           21,792        17,442   ※3
※1:本件子会社による恣意性(意図性)を認定
※2:石垣食品による恣意性(意図性)を認定
※3:期間帰属の誤りであれば各期間の影響額の合計はゼロとなるが、本件子会社の連結取
り込みの期間に限れば上記のとおり各期間の連結営業利益に対する影響額の合計はゼロと
ならない。




                                 24
第4章 調査により判明した事実(関連当事者取引について)
     本調査の結果、関連当事者取引にかかる疑義について判明した事実は以下のとおりであ
る。


1.    本件調査の概要
     第 1 章 1.に記載のとおり外部からの指摘により、2018 年 1 月において、石垣食品の子会
社である本件子会社及び本件子会社社長との間で行われた資金授受(以下、
                                 「本件仮払行為」
という。)について、本件子会社における会計記帳無く実施され、2018 年 3 月期有価証券報
告書における関連当事者注記の漏れが認識された。そのため、本件仮払行為については、ヒ
アリング、預金通帳や会計記帳の分析などにより、事実確認を実施した。


2.    本件調査の結果
     本件仮払行為は、2018 年 1 月 30 日付で本件子会社の中国銀行福浜支店の普通預金口座か
ら現金として 1 億円が引き出され、同日付で本件子会社社長の個人口座に入金されたもの
であり、本件子会社の会計処理上は普通預金から現金への振替として処理されている。
     当該 1 億円については、当初の想定では 2017 年 10 月 31 日に実行予定であった本件子会
社社長保有の本件子会社株式の石垣食品への譲渡が第 2 章 3.に記載の理由により 2018 年 3
月 31 日に変更されたことから、早期に株式譲渡対価の受領を望んでいた本件子会社社長の
要望に基づき石垣食品の代表取締役社長も了承のもと、本件子会社から本件子会社社長へ
支払われたものである
     本件子会社から本件子会社社長への当該 1 億円の支払いの本件子会社における会計処理
については、石垣食品及び本件子会社社長ともに仮払金として経理処理する予定であった
が、当該 1 億円の原資が 2018 年 10 月 31 日付の金銭消費貸借契約に基づく石垣食品から本
件子会社への貸付金であり、石垣食品からの資金が本件子会社を経由して本件子会社社長
へ支払われた事実が石垣食品から本件子会社社長への株式譲渡代金の支払いと誤認される
可能性を本件子会社社長が懸念し、2018 年 3 月 31 日には本件子会社株式の譲渡代金により
仮払処理も精算予定であったことから、1 月 30 日時点では本件子会社社長への仮払処理は
せず預金から現金への振替処理とした。なお、現金として処理されていた当該 1 億円は、石
垣食品から本件子会社社長へ支払われた本件子会社株式譲渡代金により 2018 年 3 月 30 日
付で石垣食品からの借入金等と相殺する形で精算されている。
本件子会社の会計処理上、本件子会社社長への仮払処理は行われなかったため、2018 年 3
月期有価証券報告書の関連当事者注記においては、当該 1 億円の支払・精算は仮払金の発
生・回収として開示されなかったが、取引の実態は関連当事者注記に開示された他の仮払
金の発生・回収の取引と同様に本件子会社社長に支払われ、その後回収されたものである
ため、当該 1 億円についても仮払金の発生・回収として開示するよう訂正が必要なものと
判断する。



                            25
第5章 調査により判明した事実(資本連結処理について)
     本調査の結果、資本連結処理にかかる疑義について判明した事実は以下のとおりである。


1.    本件調査の概要
     第 1 章 1.に記載のとおり外部からの指摘により、2017 年 10 月 31 日に株式譲渡契約が締
結され直ちに連結子会社化し、2018 年 3 月 31 日に資金決済及び株式取得(議決権比率 51%)
が行われた際の連結上の会計処理(以下、
                  「本件資本連結処理」という。
                               )について、外部専
門家の意見を確認することが求められた。
     本件資本連結処理の経緯及びその内容は第 2 章 3.に記載のとおりであり、本件子会社株
式取得に係るのれんについては株式を取得した 2018 年 3 月 31 日に計上され翌 4 月から償
却費が計上されているが、この会計処理は株式譲渡契約を締結した 2017 年 10 月 31 日から
同契約に定めた株式譲渡日である 2018 年 3 月 31 日までの期間においては石垣食品と本件
子会社の関係性を深めていく過程において当初の想定にない事象が発覚した場合等におい
ては石垣食品側から株式譲渡の実行をキャンセルする余地があったこと、また本件子会社
側の都合により株式譲渡の実行がキャンセルされる可能性も否定できない状況にあったこ
とを勘案すると石垣食品による本件子会社株式取得が実行されない可能性があったため、
同契約第 6 条による本件子会社の子会社化と本件子会社株式取得は会計制度委員会報告第
7 号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」第 7 条 3 項でいう一つの企業
結合等を構成する一体の取引には該当しないとする石垣食品の判断に基づき行われたもの
である。
     その一方で、本件子会社の子会社化と本件子会社株式取得は一つの企業結合等を構成す
る一体の取引として「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」第 7 条 4 項
を適用し、のれんを計上した 2018 年 3 月 31 日に 2017 年 10 月 31 日にのれんが計上されて
いたものとしてのれんを算定し 2017 年 11 月以降ののれん償却費を計上するという会計処
理も考えられるため、当委員会では本件資本連結処理の妥当性について調査・検討を行っ
た。


2.    本件調査の結果
     本件子会社の子会社化に関わった当時の石垣食品取締役及び経理担当者に対するインタ
ビュー及び関連するデジタル・フォレンジック調査を行ったところ、本件子会社を連結子会
社としてその業績を石垣食品連結財務諸表に取り込むことを計画した当初から連結子会社
化は同社の株式取得を前提としており、2017 年 10 月 31 日付の株式譲渡契約の締結及び支
配力基準による本件子会社の子会社化から 2018 年 3 月 31 日の株式取得までを「ディール
      (2017 年 10 月 12 日付の石垣食品取締役のメール)と表現していること等か
の一連の流れ」
ら勘案すると、石垣食品の資金繰りの状況等により実行時期がずれたものの、支配力基準に
よる子会社化と株式取得は当事者の意識としては一連の取引として計画・想定していたこ



                             26
とをうかがわせるものである。また、支配力基準による子会社化と株式取得の 2 つの取引は
いずれも 2017 年 10 月 31 日付の株式譲渡契約に基づくものであり、同日付の契約締結に係
るプレスリリースにおいて本件子会社の子会社化だけでなく株式取得についても決定事項
として記載されている点、同契約締結に係る石垣食品の意思決定は同日の取締役会決議で
なされているものの 2018 年 3 月 31 日における株式取得については取締役会で決議されて
いない点も 2 つの取引が一体のもの認識されていたことを示す根拠となりうるものである。
 上記の点を踏まえ、支配力基準により本件子会社を子会社化した以降 2018 年 3 月 31 日
における本件子会社株式取得まではその実行可能性が不透明であったとしても結果として
当初の想定どおり株式取得がなされたのであれば、支配力基準による子会社化と株式取得
の 2 つの取引は一体の取引としてみなすのが自然であり、
                           「連結財務諸表における資本連結
手続に関する実務指針」第 7 条 4 項を適用し、2018 年 3 月 31 日に 2017 年 10 月 31 日にの
れんが計上されていたものとしてのれんを算定し 2017 年 11 月以降ののれん償却費を計上
するのがより妥当な会計処理であるとする意見が外部専門家の委員からは出されている。
 しかしながら、当委員会によるヒアリング等により、株式譲渡契約日の 2017 年 10 月 31
日から株式譲渡日である 2018 年 3 月 31 日までの期間における株式譲渡実行に係る不確実
性については関係者が一様に認識していた実感であることが確認され、また株式譲渡契約
上も株式譲渡のキャンセルは可能な状況であったことを踏まえると、本件資本連結処理を
行った当時における本件子会社の子会社化と本件子会社株式取得は一体の取引ではないと
した石垣食品の判断については一定の合理性があり、それを覆さなければならないような
事実関係は本調査により検出されていないため、当委員会としては、
                              「連結財務諸表におけ
る資本連結手続に関する実務指針」第 7 条 4 項を適用しない現行の本件資本連結処理につ
いては、訂正が必要となるような不適切な会計処理とまでは言えないものと判断する。




                             27
第6章 調査により判明した事実(石垣食品における損益期間帰属について)
     本調査の結果、石垣食品における損益期間帰属について判明した事実は以下のとおりで
ある。


1.    本件調査の概要
     上記の当委員会における調査の過程で、本件子会社の会計処理に対する石垣食品による
一定の関与が認識された。そのため、当委員会は勘定科目の特性やリスク、金額的重要性な
どに鑑みて、石垣食品における調査対象取引とかかる期間及び手法について以下のとおり
に設定することとした。
     調査対象取引     調査対象期間                調査手法
 売上原価(仕入)        2017 年 3 月    会計元帳における記帳日と、実際の仕入日
                ~2019 年 12 月        (納品日)との照合
      その他経費         同上              会計元帳等のレビュー


     なお、調査の実施にあたっては時間的に著しい制約が存在したことから、一定のカバレッ
ジを満たせるように検証範囲を決定したうえで調査を実施することとするとともに、親会
社の代表取締役及び経理担当者へのインタビューも実施している。


2.    仕入他取引の調査の結果
     上記方針に基づいて仕入他経費処理の期跨ぎ処理のレビューを行った結果、石垣食品に
おける期間帰属に関して特段の問題点は識別されなかった。




                               28
第7章 発生原因の分析
     本調査の結果、主に本件子会社において上記の会計処理の問題点が認められたところ、発
生原因の分析結果としては、一部恣意的な費用月ずれ操作が認められたものの、問題の多く
は、本件子会社及び石垣食品の担当者等の意識不足や関連部門の体制不備によるミスが不
適切な会計処理が原因となっているものといえるが、その背景には、石垣食品における長期
にわたるビジネス上の窮境やこれに起因する本件子会社に対する利益計上プレッシャーな
どの問題も存在していたものと考えられる。具体的には、以下のとおりと評価する。


1.    親会社による本件子会社に対する利益計上プレッシャー
     本件子会社は、連結子会社化された 2018 年 3 月期において、親会社である石垣食品よ
り利益計上のプレッシャーを受けていたことが、デジタル・フォレンジック調査により検
出されたメールで確認された。当該プレッシャーは、当時、4 期連続営業損失を計上して
いる中で 5 期目となる当該期に営業利益を計上しないと JASDAQ 市場の定めにより上場廃
止になる虞があったことや、目標利益を達成した場合には本件子会社社長に対して特別賞
与を支給する計画であったことなども背景にあったことが確認された。
     なお、石垣食品の連結損益計算書に取込まれる本件子会社における 2017 年 11 月から
2018 年 3 月までの 5 か月間の期間として、石垣食品により要求された営業利益の予算は
6200 万円(当初 5000 万円)とされており、この数値や達成の意義などは本件子会社の役
員のみならず全従業員に周知・共有がなされていたところ、2018 年 3 月下旬における本件
子会社内部で行われていた営業利益予測結果は約 3700 万円であり要求された予算には大
きく届かない水準であったものの、当委員会による調査手続きにより恣意性が確認された
会計処理を含む複数の誤った会計処理の積み重ねによって、最終の営業利益は約 6700 万
円とまでなり予算を達成する結果となった。
     たしかに、連結子会社化された当初よりなされていた利益額のコミットメントの進捗を
モニタリングしているという意味においては、親会社として石垣食品が異常なプレッシャ
ーをかけていたとまでは言えないと考えられるものの、子会社として親会社からのこのよ
うな利益計上プレッシャーの存在が、本件子会社をして不合理な会計処理による利益計上
に繋がったものと認められる。


2.    本件子会社における仕入取引及び費用取引にかかる統制の不備
     本件子会社においては、一部で恣意的な費用月ずれ操作が行われていたものと認められ
るほか、仕入や棚卸資産、各種費用処理についての多くの誤った会計処理が行われている
ことが判明しているが、これらの多くは本件子会社における会計処理にかかる適切なチェ
ックがなされていなかったという体制面の不備に起因していると認められる。さらに、一
部の取引については会社の内部統制を逸脱するような行為もみられ、内部統制が実効性を
伴っていなかったものと認められる。



                          29
3.    子会社化に伴う会計処理負担の増加に対する対応の不備
     本件子会社においては、そもそも請求書の処理が煩雑で、平時でも受領した請求書の所在
が不明になることが多々あるような状況であったことに加え、石垣食品の子会社となるこ
とで、連結取込による会計処理の負担が複雑化したり、一時的に増加したりすることが容易
に予想されるとともに、実際にもそのような状況が生じていたにもかかわらず、このような
会計処理負担の増加に対する準備や対応が十分になされておらず、このことが、本件におけ
る会計処理のミスや遅れの原因の一つとなったものと認められる。


4.    本件子会社に対する石垣食品経理部門・内部監査部門等の対応の不全
     本調査で判明した問題の背景として、本件子会社の会計処理に対する石垣食品経理部門
による把握や指導が不十分又は不適切だったことが挙げられる。また、本調査では、当時の
石垣食品経理責任者が本件子会社による不適切な会計処理の是正を指導するどころか、こ
れを容認していたような状況も認められたが、このような場面で業務運営の適正性を担保
するための仕組みとして、内部監査部門の存在があるところ、本件においては、石垣食品内
部監査部門が十分に機能していたことを示すような事実は確認されていない。このように、
本件子会社に対する石垣食品経理部門・内部監査部門等の対応が不十分又は不適切だった
ことが本件の発生原因の一つと考えらえる。


5.    本件子会社に対する親会社からの把握及び管理の不十分
     本件においては、当時、親会社である石垣食品の側で、本件子会社の業務活動や会計処理
に関する実態や情報を十分に把握して管理することができていたとは認められず、その結
果として、本件子会社における会計処理上のミスや混同等を適時かつ適切に指摘するなど
して是正や指導をする等の対応をとれていなかったことが、本件において問題の拡大を招
いた原因の一つと考えられる。また、本件では石垣食品から本件子会社に対して役員の過半
数を送っていたという事実があったにもかかわらず、上記のような状況が生じていたもの
であり、親会社からの役員派遣がその実態を伴ったものとして機能していなかったという
点で、親会社側の管理責任も看過できないところと考えられる。


6.    本件子会社及び石垣食品の経理部門担当者における経理リテラシーの不足
     本件においては、本件子会社の会計処理に対する石垣食品経理部門による関与が不十分
又は不適切だったばかりか、当時の石垣食品経理責任者が本件子会社による不適切な会計
処理を容認するような指示がなされていた状況も認められた。企業における会計処理が適
正に行われるためには、実際にこれを行う経理部門担当者が職務遂行のために必要かつ十
分な知識を有しているというだけでなく、法令遵守に向けた意識を強くもって処理にあた
ることが必要といえるが、当時の本件子会社及び石垣食品の経理部門担当者においてこれ



                       30
らが十分だったとは認められず、このことも本件の原因の一つと考えられる


7.    石垣食品におけるそもそものビジネスの窮境
     石垣食品は、2014 年 3 月期から 2017 年 3 月期まで連続して営業損失及び営業キャッシ
ュ・フローのマイナスを計上しており、2018 年 3 月期にプラスを計上できない場合には上
場廃止を免れない状況にあったものであり、このような、そもそものビジネスの窮境を何と
か乗り切らなければならないという石垣食品経営陣の強い危機感や焦燥感が、子会社に対
する利益計上のプレッシャーにもつながり、また、本件子会社を連結子会社とするにあたっ
ての各種の会計処理において不備や不適切な処理を発生させてしまうことになった大きな
背景事情になっているものといえる。




                            31
第8章 再発防止策の提起
     本件疑義が生じた原因は、前章で記載した石垣食品及び石垣食品グループの問題点から
発生したものと認められた。
     したがって、今後、不適切な会計処理の再発を防止し、もって石垣食品グループの将来の
健全な経営によりステークホルダーに対する責任を果たしていくためには、上記の発生原
因を念頭にした対策が検討されなければならない。以下、具体的な対策の一例を記載するこ
ととする。


1.    石垣食品経理部門・内部監査部門等による一層の関与
     上記のとおり、本件では、本件子会社に対する石垣食品経理部門・内部監査部門等の対応
が不十分又は不適切だったことが原因の一つと考えらえる。このような状況を踏まえれば、
本件の再発防止のためには、石垣食品の経理部門、内部監査部門、及び、これらの補助者等
が、子会社の会計処理についても、より一層の注意を払い、適時かつ適切に関与できるよう
な体制を整えておくことが不可欠である。また、このためには、子会社の側においても、必
要な会計関連資料を適時に提出できるよう、その整理に十分に留意して準備しておく必要
がある。


2.    グループ会社の管理の強化
     上記のとおり、本件では、石垣食品において本件子会社の状況や情報を十分に把握し管理
することができていなかったという問題状況が認められる。このような状況を踏まえれば、
本件の再発防止のためには、子会社から親会社に対する業務内容等の定期的な報告を義務
付けし、重要案件については事前報告と協議を実施し、子会社の取締役会においては、関連
する情報の開示や資料の提示などの事前準備を徹底させたうえで、業務運営に必要な議論
を慎重かつ十分に行うとともに、担当者レベルでの日常的な連絡や情報交換を密に行うな
どを通じて、石垣食品として、常日頃からグループ会社の管理を強化するよう努めることが
重要である。なお、管理強化は親会社側の人的負担やコストを増大させることにもなるた
め、まずは、子会社の規模や管理能力も考慮し、子会社の経営の自主性及び独立性を尊重し
つつ、現実的で実効性のある管理の程度や方法を検討することが必要である。


3.    担当者の経理リテラシーの向上
     上記のとおり、本件では、当時の本件子会社及び石垣食品の経理部門担当者において、職
務遂行のための知識や法令遵守の意識が十分とはいえなかったことが原因の一つと考えら
れる。このような状況を踏まえれば、本件の再発防止のためには、経理部門担当者の経理リ
テラシーの向上を図ることが必須であり、そのためには、石垣食品として、経理部門担当者
の知識を補充するとともに、不適切な処理等がもたらす結果や影響の大きさ等につき日常
的に危機意識の喚起を行い、コンプライアンスへの意識を向上させるために必要な研修等



                       32
の機会を継続的に付与するよう努めるなどすることが必要である。


4.    内部通報制度の充実と活性化
     上記のとおり、本件では、経理部門による不十分又は不適切な経理処理につき、内部監査
部門が十分に機能していたとは認められない状況があるが、そもそも石垣食品の人的規模
を考えれば、内部監査部門担当者も兼任する他業務との関係等から必ずしも十分な機能が
期待できないのが実情といえる。このような状況を踏まえれば、本件の再発防止のために
は、実効性ある内部通報制度を整備して活性化することにより、自浄作用を通じて、問題の
早期発見と是正を促すことが重要と考えられる。この点、実際には社内窓口や社外窓口の整
備は難しいとも思われるが、その場合は社外取締役弁護士を窓口に利用する方法も考えら
れる。


5.    経営陣のコンプライアンス意識の徹底
     本件における再発防止策としては、上記のように種々の制度改革的な施策が考えられ、こ
れらを実現することにより、再発防止に向けて大きな効果が期待できるものと考えらえれ
る。しかしながら、制度を実現するのは人であり、石垣食品や本件子会社のような規模の会
社にあっては、企業活動のすべての局面において人的要素が大きな比重を占めている。そう
である以上、単に制度を整備するだけでは不適切な会計処理等の問題を防止できないこと
はいうまでもなく、経営陣においては、これらの制度改革的施策が実効性を発揮できるよ
う、高いコンプライアンス意識を保持しうるよう自らの意識改革に努めることが求められ
る。


6. 企業風土の改善
     上記のとおり、本件では、本件子会社の会計処理において一部恣意的な費用月ずれ操作が
行われていたと認められるほか、石垣食品の経理責任者からこれを容認するような指示が
なされていた状況が認められるにもかかわらず、関係者において、そのような行動の不適切
性が十分に認識されていなかったように見受けられる。これは、そのような行動を容認する
企業風土によるものともいえるところ、そのような企業風土は長年に亘って培われたもの
であり、経営陣の考え方に起因するところも大きいため、一般にその改善は困難な問題とい
える。しかしながら、本件の再発防止のためには、上記のような各種施策を着実に実施して
いくことを通じて、企業風土自体を不適切な行動を容認しないようなものに変えていくこ
とが重要である。
                                          以上




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別紙1 インタビュー対象者一覧


     対象者(敬称略)   役職
1.   石垣 裕義      石垣食品株式会社代表取締役社長
2.   齋藤 茂樹      石垣食品株式会社元取締役
3.   小泉 正明      石垣食品株式会社元取締役(監査等委員)
4.   H氏         石垣食品株式会社元経理責任者
5.   I氏         株式会社新日本機能食品代表取締役社長
6.   J氏         株式会社新日本機能食品取締役
7.   K氏         G 社(顧問会計事務所)
8.   L氏         仁智監査法人社員
9.   M氏         仁智監査法人代表社員




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