2764 ひらまつ 2021-04-14 16:10:00
東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ [pdf]

                                             2021 年4月 14 日

各   位
                             会 社 名   株 式 会 社 ひ ら ま つ
                             代表者名    代表取締役社長兼 CEO 遠 藤 久
                                      (コード番号 2764 東証一部)
                             問合せ先    取 締 役 C F O 北 島 英 樹
                                        (TEL: 03 - 5793 - 8818)



        東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ


 当社は、過年度決算短信等を訂正した件につきまして、2021 年3月 31 日付で株式会社東京証券取引所
より、有価証券上場規程第 502 条第1項第1号に基づき、その経緯及び改善措置を記載した「改善報告書」
の提出を求められておりましたが、本日別添のとおり提出いたしましたので、お知らせいたします。


 別添書類:改善報告書
                                                       以 上




                         1
                  改 善 報 告 書
                                     2021年4月14日


株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 山道   裕己   殿




                          株式会社ひらまつ

                          代表取締役社長兼CEO   遠藤   久




 このたび、過年度決算短信及び四半期決算短信、並びに有価証券報告書及び四半期報告書(以下
 「過年度決算短信等」といいます。)の一部訂正の件について、有価証券上場規程第502条第3項
 の規定に基づき、その経緯及び改善措置を記載した改善報告書をここに提出いたします。




                      1
                                      目次


I.    経緯 ........................................................................... 3
1.    過年度決算訂正の内容 ........................................................... 3
2.    過年度決算短信等を訂正するに至った経緯 ......................................... 6
(1)   発覚までの経緯等 ............................................................... 6
(2)   調査により判明した事実の概要等 ................................................. 6
(3)   過年度訂正の処理の内容 ......................................................... 7
II.   改善措置 ....................................................................... 7
1.    不適正開示の発生原因の分析 ..................................................... 7
2.    再発防止に向けた改善措置(実施済みのものを含む。) .............................. 9
3.    改善措置の実施スケジュール .................................................... 18
III. 経営責任等の明確化について .................................................... 19
IV.   不適切な情報開示が投資家及び証券市場に与えた影響についての認識 ................ 20




                                       2
I. 経緯


1. 過年度決算訂正の内容

    当社は、当社の創業者(以下「X氏」といいます。)が経営する会社(以下「Y社」といい
  ます。)から、当社が運営する複数のホテル開発の助言に関する業務並びに経営及びレスト
  ラン運営の助言等に関する業務委託契約に基づく業務委託報酬の支払請求、当社がY社との間
  で2018年12月30日付で締結した、当社によるY社への京都所在の2つの店舗(「レストランひ
  らまつ高台寺」及び「高台寺十牛庵」を指し、以下「京都2店舗」といいます。)の事業譲
  渡(以下「本件譲渡」といいます。)に関する事業譲渡契約書(以下「本件譲渡契約」とい
  います。)の解除に基づく原状回復としての譲渡代金の返還請求並びに当社との間でX氏保有
  の当社株式200万株を当社が取得することの合意があったとする株式譲渡代金請求に関し、
  2020年9月4日付でY社より東京地方裁判所において訴訟を提起され、同年10月3日に訴状の
  送達を受けました(以下「本件訴訟」といいます。)。
    これを受け、当社は、これらのY社との取引の経緯等に関して、2020年10月23日付で、当社
  と利害関係を有しない中立かつ公正な外部専門家のみで構成される外部調査委員会を設置し、
  当社とY社又はその関係者との間の各取引(以下「本件取引」といいます。)について調査
  (以下「本件調査」といいます。)を実施し、2020年12月25日、Y社に対する京都2店舗の建
  物を含む本件譲渡に伴い当該建物を当社の貸借対照表から除外した会計処理の妥当性等につ
  いて外部調査委員会より調査報告書(以下「本報告書」といいます。)を受領し、2021年1
  月12日に過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正をい
  たしました。訂正した過年度決算短信等及び業績への影響額については、以下のとおりです。

  【訂正した過年度決算短信】

  2020年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
    (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)
  2021年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
    (自 2020年4月1日 至 2020年6月301日)

  【訂正した過年度有価証券報告書】

  第   35   期(自   2016年4月1日   至   2017年3月31日)
  第   36   期(自   2017年4月1日   至   2018年3月31日)
  第   37   期(自   2018年4月1日   至   2019年3月31日)
  第   38   期(自   2019年4月1日   至   2020年3月31日)

  【訂正した過年度四半期報告書】

  第   36   期   第3四半期(自   2017年10月1日    至   2017年12月31日)
  第   37   期   第1四半期(自   2018年4月1日     至   2018年6月30日)
  第   37   期   第2四半期(自   2018年7月1日     至   2018年9月30日)
  第   37   期   第3四半期(自   2018年10月1日    至   2018年12月31日)
  第   38   期   第1四半期(自   2019年4月1日     至   2019年6月30日)
  第   38   期   第2四半期(自   2019年7月1日     至   2019年9月30日)
  第   38   期   第3四半期(自   2019年10月1日    至   2019年12月31日)
  第   39   期   第1四半期(自   2020年4月1日     至   2020年6月30日)

                                   3
      【過年度決算短信等の訂正による連結業績への影響額】
 今回の訂正に伴う過年度の連結業績への影響額は、以下記載のとおりです。
                                                                  (単位:千円)
                          訂正前          訂正後          影響額            増減率
  会計年度           項目
                           (A)          (B)         (B-A)          (%)
             売上高          11,507,884   11,507,884         -             -
             営業利益          1,893,995    1,869,488    △24,506        △1.29%
   第35期      経常利益          1,911,907    1,887,401    △24,506        △1.28%
(平成29年3月期)   親会社株主に帰属する
                          1,115,017      966,740    △148,276        △13.30%
    通期       当期純利益
             総資産          20,143,565   19,995,289   △148,276        △0.74%
             純資産           4,337,433    4,189,156   △148,276        △3.42%
             売上高           9,185,970    9,185,970         -             -
             営業利益          1,517,457    1,521,355      3,897         0.26%
   第36期      経常利益          1,520,406    1,524,304      3,897         0.26%
(平成30年3月期)   親会社株主に帰属する
                          1,035,346    1,038,051        2,704         0.26%
  第3四半期      四半期純利益
             総資産          23,508,905   23,373,857   △135,048        △0.57%
             純資産          10,622,499   10,476,926   △145,572        △1.37%
             売上高          11,642,461   11,642,461         -             -
             営業利益          1,519,835    1,524,388      4,552         0.30%
    第36期     経常利益          1,521,284    1,525,837      4,552         0.30%
(2018年3月期)   親会社株主に帰属する
                          1,066,066    1,024,402     △41,663        △3.91%
     通期      当期純利益
             総資産          22,875,108   22,695,692   △179,416        △0.78%
             純資産          10,666,965   10,477,024   △189,940        △1.78%
             売上高           2,739,338    2,739,338         -             -
             営業利益            218,355      219,630      1,274         0.58%
    第37期     経常利益            230,191      231,465      1,274         0.55%
(2019年3月期)   親会社株主に帰属する
                            148,619      149,503            884       0.59%
  第1四半期      四半期純利益
             総資産          20,267,034   20,097,104   △169,930        △0.84%
             純資産           9,701,658    9,512,601   △189,056        △1.95%
             売上高           5,465,074    5,465,074         -             -
             営業利益            314,937      317,094      2,156         0.68%
    第37期     経常利益            330,025      332,182      2,156         0.65%
(2019年3月期)   親会社株主に帰属する
                          △159,481      △33,213       126,267        79.17%
  第2四半期      四半期純利益
             総資産          20,996,377   20,951,830    △44,546        △0.21%
             純資産           9,423,499    9,359,826    △63,672        △0.68%
             売上高           8,714,376    8,714,376         -             -
             営業利益            825,762      819,777    △5,985         △0.72%
    第37期     経常利益            743,308      737,323    △5,985         △0.81%
(2019年3月期)   親会社株主に帰属する
                            120,778       47,133     △73,644        △60.98%
  第3四半期      四半期純利益
             総資産          22,786,338   22,549,379   △236,959        △1.04%
             純資産           9,704,496    9,440,910   △263,585        △2.72%




                              4
                          訂正前          訂正後          影響額        増減率
  会計年度           項目
                           (A)          (B)         (B-A)      (%)
             売上高          10,948,899   10,948,899         -         -
             営業利益            740,959      732,826     △8,132    △1.10%
    第37期     経常利益            663,490      653,775     △9,714    △1.46%
(2019年3月期)   親会社株主に帰属する
                              75,393        △838     △76,232   △101.11%
     通期      当期純利益
             総資産          21,873,498   21,673,152   △200,345    △0.92%
             純資産           9,655,251    9,389,078   △266,172    △2.76%
             売上高           2,550,142    2,550,142         -         -
             営業利益             36,027       35,379      △647     △1.80%
    第38期     経常利益             20,473       19,825      △647     △3.16%
(2020年3月期)   親会社株主に帰属する
                               6,013        5,563       △449    △7.47%
  第1四半期      四半期純利益
             総資産          20,500,172   20,337,319   △162,853    △0.79%
             純資産           9,534,298    9,267,676   △266,622    △2.80%
             売上高           5,004,512    5,004,512         -         -
             営業利益             50,398       49,211    △1,187     △2.36%
    第38期     経常利益             35,842       34,655    △1,187     △3.31%
(2020年3月期)   親会社株主に帰属する
                              11,213       10,390       △823    △7.35%
  第2四半期      四半期純利益
             総資産          23,311,643   23,184,775   △126,867    △0.54%
             純資産           9,529,708    9,262,712   △266,996    △2.80%
             売上高           7,890,555    7,890,555         -         -
             営業利益            289,659      288,661      △997     △0.34%
    第38期     経常利益            264,013      263,015      △997     △0.38%
(2020年3月期)   親会社株主に帰属する
                          △1,411,724   △1,499,823    △88,098    △6.24%
  第3四半期      四半期純利益
             総資産          21,830,608   21,652,826   △177,781    △0.81%
             純資産           8,116,391    7,762,120   △354,271    △4.36%
             売上高           9,887,175    9,887,175         -          -
             営業利益           △24,090      △49,279     △25,188   △104.56%
    第38期     経常利益           △39,451      △70,563     △31,112    △78.86%
(2020年3月期)   親会社株主に帰属する
                          △1,953,721   △2,097,115   △143,393    △7.34%
     通期      当期純利益
             総資産          21,592,283   21,383,446   △208,837    △0.97%
             純資産           7,590,596    7,181,030   △409,566    △5.40%
             売上高             656,325      656,325         -         -
             営業利益          △671,356     △694,596     △23,239    △3.46%
    第39期     経常利益          △675,782     △699,022     △23,239    △3.44%
(2021年3月期)   親会社株主に帰属する
                          △1,364,677   △1,393,822    △29,144    △2.14%
  第1四半期      四半期純利益
             総資産          23,043,357   22,786,604   △256,753    △1.11%
             純資産           6,182,895    5,744,183   △438,711    △7.10%




                              5
2. 過年度決算短信等を訂正するに至った経緯


(1) 発覚までの経緯等

    当社は、2016年7月以降、Y社との間で、当社が運営する複数のホテル開発の助言に関する
  業務並びに経営及びレストラン運営の助言等に関する業務委託契約を締結しておりましたが、
  2019年12月、Y社に対し、一連の業務委託契約につき2020年3月末をもって解約する旨通知し
  ました。かかる通知以降、Y社との間で、同契約に基づく未払い報酬債権の存否及び当社との
  間でX氏保有の当社株式200万株を当社が取得することの合意の有無等について協議を行って
  おりました。
    当社は、本件譲渡及び本件譲渡契約と同日に締結された2つの業務委託契約(以下「本件
  業務委託契約」といいます。)を含むY社との取引の経緯を含めた妥当性の検証を、2020年6
  月26日に就任した当社代表取締役社長兼CEO及び取締役CFO(以下「新経営陣」といいます。)
  主導の下、当社内部で進めて参りましたが、本件訴訟が提起されたこと等も踏まえ、より独
  立性を高めた調査を行うために、2020年10月23日付で、当社と利害関係を有しない中立かつ
  公正な外部専門家のみで構成される外部調査委員会を設置することといたしました。

(2) 調査により判明した事実の概要等

    当社では、2017年1月26日付で、代表取締役2名と社外取締役3名で構成されるガバナン
  ス委員会を設置し、Y社を含む関連当事者との取引などについてガバナンス委員会で審議し、
  取締役会に対して答申等を行う運用としておりました。しかしながら、ガバナンス委員会の
  設置に係る社内規程は制定されておらず、社内における位置付けは曖昧でした。
    本件譲渡の対象となった京都2店舗は2017年9月の開業以来赤字が継続しており、赤字が
  継続した場合、将来において減損損失の計上が必要となる可能性がある中、本件譲渡当時の
  当社経営陣(当時の代表取締役社長陣内孝也及び同副社長服部亮人を指し、以下「当社旧経
  営陣」といいます。)は、減損損失の計上回避を含む当社の損益改善のため京都2店舗を簿
  価譲渡することとし、2018年12月30日付で、Y社との間で本件譲渡契約を締結しました。本件
  譲渡は、2018年12月19日に開催された取締役会において、ガバナンス委員会における検証を
  経ることを条件として承認されていますが、本件譲渡契約はガバナンス委員会の承認前に締
  結されていました。
    当社旧経営陣は、本件譲渡に係る代金の支払原資の供与という当社旧経営陣の目的により、
  2018年12月30日付で、Y社との間で、新規ホテル開業に際しての基本コンセプトのデザインや
  総合監修業務等をY社に対して委託すること、及び、新規ホテル開業に際してのホテルオペレ
  ーションの構築業務及びそれらの総合監修業務等をY社に対して委託することを内容とする、
  本件業務委託契約を締結しましたが、同契約については、ガバナンス委員会での検討及び取
  締役会での承認の手続は採られませんでした。また、当社旧経営陣において、本件業務委託
  契約につき、業務の実態に見合った金額か否かの検討を行わないまま、業務委託報酬を定め
  た経緯がありました。なお、かかる本件業務委託契約締結の経緯については、会計監査人に
  は開示されておりませんでした。その後、2019年1月下旬頃になって、当社旧経営陣は、本
  件業務委託契約について、ガバナンス委員会の委員に個別に説明をしましたが、委員から、
  反対の意思が表明され、その結果、ガバナンス委員会において、本件業務委託契約について
  承認が得られませんでした。なお、当該事実はガバナンス委員会議事録には記載されていま
  せん。
    当社旧経営陣は、Y社との間で、本件譲渡の代金を将来的に条件付きで280百万円減額する
  旨の覚書(以下「本件覚書」といいます。)も2018年12月30日付で締結しておりましたが、
  本件覚書につき、上記の2018年12月19日付で開催された取締役会において説明もされておら
  ず、ガバナンス委員会及び取締役会における承認等の手続も採られておりませんでした。ま

                      6
  た、当社旧経営陣は、本件覚書の存在を会計監査人に開示しておらず、本件覚書の存在を秘
  匿して財務諸表を作成した経緯もあったことが判明いたしました。

   当社は、これらを含む本件調査の結果も踏まえ、本件譲渡を売却取引として会計処理した
  点において当社旧経営陣による不正な財務報告があったと認識しております。当社としては、
  本件調査の結果も踏まえ、会計上正当な売却取引があったとは認められないことから、本件
  譲渡については売却取引として会計処理するのは適切ではないと判断しました。
   さらに、会計監査人から固定資産の減損の兆候判定において使用する各店舗の損益の算定
  にあたって実施されている店舗間の費用の振替に関する質問を受けて追加社内調査を実施し
  た結果、閉店済みの名古屋及び福岡の2店舗について閉店前の会計期間において人件費の不
  正な振替が行われており、店舗に係る固定資産の減損を回避していることが判明いたしまし
  た。

(3) 過年度訂正の処理の内容

  ① 本件譲渡を売却取引処理せず固定資産として貸借対照表に計上し減損処理

   当社は、当社旧経営陣が本件覚書の存在を会計監査人に秘匿して財務諸表を作成した経緯
  等に照らして、当社旧経営陣による不正な財務報告があったと認識しており、その結果とし
  て、2019年3月期に係る財務諸表において、本件譲渡を売却取引処理せず、当社の固定資産
  として貸借対照表に計上(金 1,200 百万円)したうえで、回収可能価額まで減損処理する訂
  正を行いました。

  ② 店舗の固定資産の減損損失

   固定資産の減損の兆候判定において使用する各店舗の損益の算定を訂正し、閉店済みの名
  古屋及び福岡の2店舗の減損損失計上時期を、名古屋の店舗につき2018年3月期から2017年
  3月期に、福岡の店舗につき2019年3月期から2018年3月期にそれぞれ修正し、その後の減
  価償却費の計上等を訂正いたしました。

  ③ ホテルの開発に係る業務委託料の費用処理

   2017年3月期第2四半期において、THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島につきY社との
  間で締結した業務委託契約に関し、2016年9月における業務委託報酬(支出額 25 百万円)
  が建設仮勘定として資産計上されていましたが、当該業務委託報酬の支払は業務実施時に費
  用処理を行うべきであることが確認されましたので、訂正を行いました。

  ④ 店舗で使用する備品の資産計上又は消耗品費

   レストランひらまつ高台寺等で使用されている和食器は、2017年9月以降、順次納品され、
  納品後店舗にて使用を開始したものの、本来であれば、納品の都度、什器備品として資産計
  上又は消耗品費として会計処理すべきであるところ、2020年4月に資産計上(計金 19 百万
  円)して会計処理をしておりましたので、当該会計処理を納品の時期に行うこととして、訂
  正を行いました。


II. 改善措置


1. 不適正開示の発生原因の分析

                           7
 当社は、X氏が1983年6月に設立した有限会社ひらまつ亭(以下「ひらまつ亭」といいま
す。)をその前身とする企業です。ひらまつ亭は1994年12月に株式会社である当社へと組織
変更しておりますが、X氏は、ひらまつ亭設立から2016年6月24日付当社第34期定時株主総会
終結の時まで、長年に亘り、当社の代表取締役社長を務めておりました。また、X氏は、当社
の株式を2020年3月時点で12.16%保有する当社の大株主でもありました。
 一方、X氏に依存していた当社において、当社旧経営陣は、X氏が当社の代表取締役社長を
退任して当社の経営を引き継ぐまで、経営判断に係る経験を十分に積んでおらず、経営者と
しての資質が不足していたと考えております。
 本件の不適正開示は、本件譲渡に係る会計処理に関し、当社旧経営陣による不正な財務報
告があったことに起因して、本件譲渡を売却取引処理せず、当社の固定資産として貸借対照
表に計上(金 1,200 百万円)することとし、2019年3月期に係る財務諸表等の訂正に至った
ものですが、当該訂正に至った原因としては、まず、当社旧経営陣において、上述の経営者
としての資質が不足していたため、適正な財務諸表を作成し、上場会社として投資家に適切
な開示を行うとの根本的な原則の重要性への意識が欠如していたことが挙げられます。次に、
かかる当社旧経営陣の行為を抑止・監視するためのルールが整備されておらず、本来であれ
ば、取締役会、監査役会及びガバナンス委員会での審議や決議による牽制機能をもって、当
社旧経営陣による逸脱行為を未然に抑止・防止すべきところ、当該機能が十分に働いていな
かったことも、本件の不適正開示の原因になったと考えています。

 以下では、不適正開示の原因となった本件譲渡に至る当社旧経営陣の問題点の分析と、こ
れを監視・モニタリングする牽制機能を定めたルールの欠如の点について整理いたします。

  ① X氏に過度に依存した事業運営、経営陣の経営能力及び責任感の不足

     当社旧経営陣は、経営判断に係る経験を十分に積んでいなかったため、店舗開発
    や人材育成のほか会社経営自体についても、当社にはX氏退任後の当社の経営を担
    うに足りる者が存在しなかったことが本件の根本的な背景要因であったと認識して
    おります。当社旧経営陣は、上場会社の役員としての十分な経験や知識を有してお
    らず、また、ガバナンスやコンプライアンスに関する意識や知識も乏しかったこと
    から、本件譲渡の当時行われようとしていることの適否や合法性の確認を十分行っ
    ておりませんでした。
     また、当社従業員の多くは当社とY社がそれぞれ独立した企業であることの意識
    が希薄でした。加えて、Y社との取引は、独立の企業間の取引であるにも拘らず、
    当社旧経営陣は、独立の企業間で通常行うべき条件交渉を行う意識も希薄でした。
    当社旧経営陣及び役職員が会社経営を真剣に考える意識や責任感がなかったこと、
    また持続的な成長のための経営者の経営能力の醸成が行われていなかったことが真
    因であると認識しています。

  ② 経営陣に対するけん制の不足

     経営トップである当社旧経営陣が、当社の意思決定機関である取締役会やガバナ
    ンス委員会に対して、関連当事者との契約の一部を意図的に上程しないという取扱
    いを行っていました。当社としては、上記のような当社旧経営陣による逸脱行為の
    結果、ガバナンス委員会や取締役会における監督機能が無効化されていたことが本
    件の不適正開示を生じさせた原因の一つであると認識しています。
     取締役会の運営についても、明確な組織図が存在しなかったことから、事務局を
    当時の執行役員1名が兼務で行っていた状況で、取締役会資料の質の向上や提出の
    早期化及び取締役会の運営の適正化がなされず、社外取締役を含む取締役会による
    監督機能が十分に果たされていたとはいえない面がありました。
     ガバナンス委員会についても、取締役会と同様の問題が生じていました。加えて、
                    8
        ガバナンス委員会の目的に照らした適正な人員構成が検討されておらず、実質的に
        取締役会と同一の人員構成となっており、実益のある審議がなされる体制が十分に
        担保されていませんでした。
         監査役会についても、常勤監査役に監査に係る知見が不足していたことにより、
        利益相反行為に対する牽制機能が不十分となっていました。

    ③ 内部統制の不備(意思決定プロセスにおけるルールの欠如)

         本件取引当時の当社の決裁権限は、2010年当時に制定した社内規程が改訂されて
        おらず、必ずしも規程と実態が合致していなかった結果、明確なルールに基づく事
        業運営が行われておりませんでした。
         また、明確な組織図もなく、当社職員において自己の上司が不明確であったこと
        や、1万円以上の取引に係る案件が全て代表取締役社長決裁であったことにより、
        決裁手続きの遅延が発生し、その結果、事後稟議が常態化していた等、経営の意思
        決定プロセスが適切に履践されていなかった上、それに対する監督機能も十分に働
        いていなかったことから、関連当事者との取引における内部統制システムの欠陥が
        生じていたものと認識しています。
         さらに、財務諸表を作成しそれを開示に反映させるプロセスについても、事後的
        に会計仕訳を入れることが可能であり、その仕訳の作成・承認の経緯が判明しない
        業務プロセスでの運用がなされており、恣意的な会計操作が容易に発見されづらい
        との問題が生じていました。

2. 再発防止に向けた改善措置(実施済みのものを含む。)

   当社は、2019年8月9日付で、アドバンテッジアドバイザーズ株式会社との間で、当社グ
  ループの経営、財務、マーケティング、人事等に関するアドバイス業務を同社に委託する経
  営アドバイスに関する事業提携契約を締結し、同社の助言により、構造改革を推進してきま
  した。また、当社は、外部調査委員会による調査を実施する以前から、新経営陣が中心とな
  って推進してきた内部統制拡充の活動の結果、正しいことを正しく行うという代表取締役社
  長兼CEOの経営方針の下、事業運営を進めてきました。
   一方で、当社は内部統制体制の課題も多く、本報告書で指摘された再発防止に係る提言を
  真摯に受け止め、以下の再発防止策に向けた改善措置を策定しました。

    ①   Y社との各種業務委託契約の解約(上記1.①に対応)

         当社は、Y社との取引解約を含む取引条件の検討のため、2019年12月に社内プロ
        ジェクトを組成し、検討を進めた結果、同月、Y社との各種業務委託契約を解約す
        ることとし、その旨を通知しました。
         前述の通り、上記通知以降、当社及びY社間の協議を経て本件訴訟に至りました
        が、本件訴訟については、2021年3月1日付で和解が成立し、Y社から当社への京
        都2店舗に関する事業(不動産及び動産を含む。)の返還及び当社がY社に対して
        金1億7000万円を支払うこと等を合意し、円満に当事者間の紛争が解決しておりま
        す。

    ②   新経営陣の招聘(上記1.①に対応)

         当社旧経営陣は、自らの経営能力の不足を認識し、当社が再建していくためには、
        経営陣の刷新が避けて通れないと判断し、自らは退任することとし、株式会社クイ
        ーンズ伊勢丹の再建等で実績のある遠藤久を代表取締役社長兼CEOとして、タリー
        ズコーヒージャパン株式会社の代表取締役として経営経験のある北島英樹を取締役
                      9
    CFOとして招聘し、2020年6月に開催された当社の定時株主総会において、経営陣
    の刷新を図りました。

③   役職員の意識改革と内部通報制度の見直し(上記1.①②に対応)

     新経営陣が2020年6月26日の就任直後から行ったことは、当社の企業文化の改善
    となります。即ち、当社は、レストランやホテル等の現場でのサービスに関する品
    質や水準及びそれに従事する者の専門性を向上させるだけではなく、当社の全役職
    員において、当社全体の経営方針、法令等遵守の意識及び上場会社として重視すべ
    き適切な財務諸表の作成及び投資家に対する適正な開示といった基本原則を共有す
    ることが重要との考えです。かかる認識を共有する企業文化を育てることで、当社
    の経営を適切に担う次世代の人材の育成を目指すことを課題と位置付けております。
    かかる企業文化の改善は即効性のある対策を講じることが容易ではないことから、
    当社は、以下のとおり、複数の手法を講じております。

    ア. 内部通報制度の見直し・周知

     新経営陣の取締役就任直後の2020年7月に全役職員に対して、コンプライアン
    ス重視の経営姿勢を明確にする旨の宣言を行い、内部通報制度の再周知を行いま
    した。
     なお、内部通報制度は、一般的なハラスメント・苦情等の防止を主な目的とし
    て設計していたことから、取締役CFO、人事部及び法務部に窓口を置いておりまし
    たが、会計不正や不適正開示に係る通報の実効性を高めるため2021年5月より外
    部弁護士も窓口に追加し、改めて周知を行う予定です。

    イ. 研修

     当社による各種研修については、現在人事制度(等級制度、評価制度、及び報
    酬制度)の改訂を2022年4月までに完了できるように進めており、この中で人材
    開発制度を設け、階層別教育として、コンプライアンス研修を全社の人材開発計
    画に組み込む予定となっています。
     また、2021年3月26日の取締役会において、取締役会・監査役会、内部統制推
    進体制・業務プロセス等の再設計内容を踏まえ、役員・管理職・各部門従業員等
    の関係者全員に対し、内部統制に係る継続的な知識・スキル・意識の獲得・向上
    のための教育・コミュニケーション計画の策定を決議いたしました。かかる教
    育・コミュニケーション計画の一環として、再発防止研修を実施します。なお、
    再発防止研修は、前述の人材開発計画に盛り込み、階層別教育として継続的に実
    施する予定です。

        (再発防止研修の内容)
        ⚫ 研修対象者:①本社社員及び店舗管理職 ②店舗社員
        ⚫ 研修目的:全社員の意識の中に「正しいことを正しく行う」ことを定
          着化させる
          ➢ ルールを守る事の重要性(上記①②共通)
          ➢ 再発防止策の内容 (主に上記①を対象)
          ➢ 店舗における内部統制の重要性(①のうち店舗管理職及び②を対
            象)
          ➢ 内部統制に関する基礎知識 (主に②を対象)
        ⚫ 研修ゴール:
          ➢ 「正しいことを正しく行うこと」の重要性を再確認する
                  10
            ➢ 内部統制を理解し、自分の役割と為すべき事を見直す
        ⚫   研修形式:
            ➢ Zoom(座学+ワークショップ)
            ➢ アンケートも実施
        ⚫   実施単位:研修対象者①は、約30名×4回×2時間。
                   研修対象者②は、研修対象者①の研修内容をビデオ撮影し
                   たものを視聴し、e-learning方式で受講。
        ⚫   実施時期:上記①を対象として毎年4月、上記②を対象として毎年4
                   月中旬~5月末

    ウ. 当社幹部の教育・育成

     2020年7月に、部長職以上の経営幹部を集めて2日間の経営合宿を行い、企業
    文化、安全、危機管理、法令順守、モラル並びに役割及び責任についての研修を
    実施しました。また、これに引き続き、2020年7月、コーポレート本部所属の全
    社員を対象にコーポレート合宿を行い、決算作業の早期確定化に向けた課題の確
    認、勤務時間を含む働き方の在り方その他のコンプライアンス問題を含む当社の
    重要な経営課題についての研修を実施しました。経営合宿及びコーポレート合宿
    は、定期的に開催されることが定まっているものではありませんが、重要な課題
    が生じた場合には今後も開催する方針です。
     また、2021年2月以降、本社部長職以上の経営幹部によるマネジメント会議を
    隔週で開催し、不適正開示の原因や再発防止策の検討その他内部統制を含む経営
    課題を経営幹部自ら検討する場も設けており、内部統制の改善に向けた意識の共
    有を継続させるために、今後も同様に開催する方針です。

    エ. 双方向コミュニケーション

     代表取締役社長兼CEOが、店舗管理職及び本社スタッフに対して定期的に内部統
    制の重要性を浸透させるため、2020年7月より2021年2月にかけては、全店舗を
    訪問しての双方向コミュニケーションを、また、2021年2月以降は、月2回の全
    店をTV会議システムで接続した全社朝礼を実施しています。

④   取締役会及び監査役会による監督機能の再設計(上記1.②に対応)

     当社は、取締役会及び監査役会の監督機能を次のとおり再設計しています。

    ア. 取締役会への付議議題の明確化

     取締役会において、重要な意思決定や主要な経営指標のモニタリングが適時適
    切に実施されるよう、取締役会に付議されるべき議題・プロセスを明確化し、こ
    れらを明確化したコーポレートカレンダーを作成することにより、重要な議案の
    上程・決議の抜け漏れを防止することにいたしました。
     具体的には、中期経営計画、決算、人事、危機管理、ガバナンス、定例報告等、
    取締役会が取締役の業務執行の監督を行うために必要な議案について、いつの取
    締役会でこれを付議するかを明確にいたしました。
     当社は、既に、コーポレートカレンダーを2021年3月に制定して、これに基づ
    く運用を実施しております。

    イ. 取締役会の人員構成の見直し

                    11
     取締役会の人員構成につき、半々となっていた社内取締役及び社外取締役の構
    成比率(但し、2021年3月26日付で中谷一則が取締役を辞任したことにより、社
    内取締役が欠員状態となり、本日現在、社外取締役が過半数となっています。)
    を見直し、当社は、2021年2月26日開催の取締役会に、社外取締役が過半数とな
    るよう変更することにより、監督機能の強化を図ることを報告し、同年3月26日
    開催の取締役会において決定いたしました。当該決定に基づき、2021年3月期に
    関する定時株主総会(2021年6月開催予定)において、社外取締役を追加選任す
    ることにより対応する予定です。
     また、取締役会の議論の活性化のため、適正な取締役会の構成を事前に明確化
    した上で取締役・監査役候補者の選任を行うよう、取締役・監査役候補者指名プ
    ロセスの変更を行うことを決定いたしました。具体的には、後述2.⑤イ.をご覧
    ください。

    ウ. 取締役会事務局の新設

     従来は、法務部内に設置していた取締役会事務局を経営戦略室に移管して、取
    締役会事務局機能を強化することといたしました。
     まず、取締役会事務局を経営計画に関する事項を所管する経営戦略室に移管す
    ることにより、経営に近い立場で取締役会を機動的に運営することを可能にしま
    した。また、従前は、取締役会事務局の担当は実質的に1名(前執行役員で、現
    法務部職員)であったのに対して、室長以下3名の経営戦略室の体制の下、事務
    局機能の人的リソースを確保・強化いたしました。
     これらの取締役会事務局機能の強化策は、2021年4月より実施しております。

⑤   ガバナンス委員会の強化(上記1.②に対応)

    ア. ガバナンス委員会の人員構成の見直し

     従前ガバナンス委員会は、社内規程では制定しておりませんでしたが、関連当
    事者間取引などについて審議し、取締役会に対して答申等を行う組織として組成
    し、2020年6月以前は、代表取締役2名と社外取締役3名で構成され、2020年7
    月以降は代表取締役社長兼CEO及び取締役CFO並びに社外取締役で構成されており、
    委員長は代表取締役社長兼CEOが務めていました。
     かかるガバナンス委員会の人員構成を2021年3月期に係る定時株主総会終結時
    から変更し、独立社外取締役及び代表取締役社長兼CEOがガバナンス委員会を構成
    し、委員長を独立社外取締役とすること、オブザーバとして独立社外監査役及び
    社外有識者を参画させることにより、ガバナンス委員会による監督機能を強化す
    ることにいたしました。
     なお、上記人員構成や組織上の位置付けは、2021年3月にガバナンス委員会規
    程を制定することで明文化しております。

    イ. ガバナンス委員会の諮問事項の追加

     従前のガバナンス委員会の諮問事項は、関連当事者間取引などの取引に限られ
    ていたところ、ガバナンス委員会の諮問事項に、取締役及び監査役候補者の指名
    並びに取締役の報酬プロセスを検討する役割を2021年4月から追加し、取締役の
    選解任プロセスの透明性確保に向けてガバナンス委員会の役割を強化いたしまし
    た。
     まず、取締役・監査役の候補者指名プロセスについては代表取締役社長兼CEOの
    諮問により、ガバナンス委員会が取締役及び監査役の選任基準の合理性を審議し、
                    12
    取締役会に対して答申し、取締役会は、この答申を受けて、適正な取締役構成や
    各取締役・監査役に求められる資質・要件を決定します。
     代表取締役社長兼CEOは、取締役会が決定した適正な取締役構成を充足する取締
    役・監査役候補者を選定して、ガバナンス委員会に諮問し、ガバナンス委員会で
    上記選任基準に照らし相当であるか、独立役員として選任される者については、
    東京証券取引所が定める上場規則等に定める独立役員としての要件を充足するか
    等の観点から、取締役・監査役の各候補者の適性を審査し、取締役会に答申しま
    す。
     そのうえで、取締役会は、ガバナンス委員会の答申を受けて、取締役・監査役
    候補者を決定し、株主総会に付議することといたします。
     なお、監査役については、監査役候補者の決定に先立ち、監査役会の同意を求
    めることとしています。
     当該取締役・監査役候補者指名プロセスは、2021年6月開催の定時株主総会に
    おける取締役・監査役の選任議案の策定から運用いたします。
     続いて、取締役の報酬プロセスに関しては、代表取締役社長兼CEOが取締役の報
    酬基準(取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を含みま
    す。)を策定し、ガバナンス委員会での審議を求め、同委員会において、当該基
    準の合理性の審議(取締役の選任基準との整合性、他社報酬動向との比較検討、
    当社の業績との整合性及び当社の従業員給与水準との整合性)を行って取締役会
    に答申し、取締役会は、これを受け当該報酬基準を決議するものとします。
     当該取締役の報酬プロセスは、2021年6月開催の定時株主総会後から運用いた
    します。

⑥   監査役監査における定期的な確認(上記1.②に対応)

      監査役会は、2022年3月期の監査役監査の計画を立案し、不適正開示の再発防止
    の観点から、重点監査項目を次のように決定しました。
     (ア)不適正開示の再発防止策実行に伴う内部統制システムへの影響と経営者の対
        応
     (イ)関連当事者間取引に関する経営者の対応及び開示状況
     (ウ)減損の兆候がある店舗に関する経営者及び会計監査人の評価
      また、取締役会へ出席し、取締役会で報告及び決議すべき事項が適切に行われて
    いることにつき、監査役監査において確認いたします。
      さらに、2021年4月より、監査役会事務局を、後述2.⑦イ.に記載する内部統制
    推進室内に設置し、必要なリソース等の配置を行うことで、より実効的な監査役監
    査を実施いたします。
      なお、EY新日本有限責任監査法人等で監査経験のある桑原清幸が常勤監査役とし
    て招聘され、2020年6月に開催された当社の定時株主総会において監査役として選
    任されました。

⑦   内部統制・内部監査に係る組織体制の見直し(上記1.③に対応)

    ア. 内部統制推進部署の責任者の招聘

     当社は、ガバナンス体制の構築やY社との取引の解約を含む取引条件の検討のた
    め、総合商社や大手電子部品メーカー等で法務部門の経験のある人材を、2020年
    4月、法務部長として招聘しました。
     そのほか、2020年8月以降、人事部長、総務部長、内部監査室長、経営戦略室
    長等の内部統制の肝となる各部署に外部より人材を順次招聘しました。

                  13
    イ. 内部統制及びリスクマネジメント推進体制の強化

     内部統制及びリスクマネジメントに係る各施策の設計及び関係部門への周知、
    本社各部門における統制活動の設計支援、並びにリスク事案が発生した場合の再
    発防止策のレビュー及び危機管理委員会(詳細は以下参照)への報告を行って、
    内部統制及びリスクマネジメントの推進を行い、当社の内部統制の質を向上させ
    ることを目的として、内部統制を推進する運営組織として、2021年4月より「内
    部統制推進室」を設置し、室長として外部より人員を採用すると同時に、社内よ
    り1名配員いたしました。
     また、2021年4月に、危機管理委員会(2020年11月設置)の下部組織として危
    機管理推進会議を設置し、危機管理活動として当社の業務遂行等に当たり想定さ
    れる様々な危機的事項の発生の事前予防、発生した場合の対応及びその後の再発
    防止を行う体制としました。
     危機管理委員会と危機管理推進会議の主な役割は以下のとおりです。

     ⚫   危機管理委員会
         代表取締役社長兼CEOを委員長とし、取締役CFO、経営戦略本部長、営業統括
         本部長、コーポレート本部長、法務部長、人事部長を委員とする取締役会の
         諮問機関として半期ごと(2021年度については四半期ごと)に開催し、危機
         管理計画、危機管理の状況、その他危機管理に関する重要な事項を審議・承
         認し、必要に応じて危機管理推進会議に対して活動改善を指示します。

     ⚫   危機管理推進会議
         当社のリスク対応の運営組織として月次で開催し、各部署の内部統制推進要
         員を会議メンバーとして活動を行う機関であり、内部統制の課題を含む当社
         の危機管理計画案を策定し、モニタリングを担います。

⑧   重要リスクの特定と対応(内部統制の整備と運用)及びモニタリングに係る全社的
    な体制・手法・プロセス(上記1.③に対応)

    ア. 重要リスクの特定及び対応方法等の再構築

      重要リスクが顕在化し、企業価値が毀損することを防止するとともに当社の持
    続的な成長を支えるために、3つのディフェンスライン(Three Lines of Defense)
    の考え方に基づき、重要リスクの特定と対応(内部統制の整備と運用)及びモニ
    タリングに係る全社的な体制・手法・プロセスを再構築いたします。
      当社は、かかる再構築の一環として、上記⑦記載の措置を既に一部実施し、
    2021年3月26日の取締役会において、危機管理委員会及び危機管理推進会議を中
    心に、会社の業務遂行等に当たり想定されるリスクを識別し、一定の基準に基づ
    きリスクを特定した上で、リスクに応じた対応策(内部統制の整備と運用)を立
    案することを決定いたしました。
      今後実施する事項として、具体的には、上記リスクの中から特に重要なものを
    識別した上で、危機管理計画を作成し、2021年9月に、取締役会で承認する予定
    です。当社では、リスクマネジメントの一環として、危機管理計画の中で重要リ
    スクを継続的に見直していく方針です。

    イ. 内部監査の強化

     当社は、これまでに内部統制の重要な不備が検出されなかったことや当社旧経
    営陣その他の役職員から特段の問題提起がなされなかったことから、内部監査計
                 14
    画書の更新や見直しを行っておらず、内部監査手続は監査担当者の知識と経験に
    委ねられていました。
     当社は、より深度ある内部監査を実施し、再発防止策の徹底を図るため、リス
    クアプローチの考え方に基づき、内部監査計画書及び内部監査手続書を見直すこ
    とにいたしました。
     2021年6月までに具体的な内部監査手続を立案し、2022年3月期の監査計画を
    作成します。また、2021年9月に、危機管理委員会にて審議した特定リスクも考
    慮した上で、内部監査手続の見直しを実施してまいります。
     内部監査のプロセス改善の詳細につきましては、下記のとおりとなります。

     なお、当社は、2020年8月に、コンサルティング会社や上場会社で、14年の内
    部監査経験を有する者を内部監査室長に招聘しました。

            ⚫   2021年6月 :2021年度内部監査計画、内部監査手続書の作成
            ⚫   2021年7月~:2021年度内部監査実施
            ⚫   2021年9月 :危機管理計画に基づく内部監査手続の見直し
            ⚫   2021年10月~:見直し後の内部監査手続の追加実施
            ⚫   2022年2月 :2022年度の重要リスクの識別、対応策の立案、
                          2022年度内部監査重点項目の特定
            ⚫   2022年3月 :2022年度内部監査計画の作成

⑨   購買・決算・財務報告プロセスの再設計

    ア. 関連当事者間取引検討プロセスの再設計(上記1.①③に対応)

     当社の関連当事者間取引について当社の内部統制が有効に機能していなかった
    ことも踏まえ、今後、当社が関連当事者間取引を行う場合でも有効な機能を構築
    するため、次のとおり業務プロセスを再設計しました。
     当該業務プロセスの追加は、2021年2月に実施し、同年3月に運用テストを行っ
    たうえで、同月26日より、ガバナンス委員会規程又は業務記述書により明確化しま
    した。
     当社は、以下に記載するルールを徹底し、運用してまいります。

      i.        関連当事者間取引における報告ルールの明確化

                 2021年3月26日にガバナンス委員会規程を制定し、役員及び従業員は、
                後述する関連当事者チェックリストに掲載されている者と取引を行うと
                きには、2021年4月より経営戦略室に設置した後述ivのガバナンス委員
                会事務局に事前に報告することとしました。
                 また、稟議担当部署(内部統制推進室)、出金担当部署(財務部)及
                び押印担当部署(総務部)の各長は、稟議申請、請求書、押印依頼書等
                で関連当事者間取引に該当する取引が行われようとしていることを認識
                したときにも、事前にガバナンス委員会事務局に報告することとしまし
                た。
                 当該手続の導入により、当社の役員により関連当事者間取引が取締役
                会等の牽制機関による審査なしに実行されることがないよう、当社のガ
                バナンス委員会事務局で、同委員会の招集、必要な議案の上程等の対応
                を講じることができる体制といたしました。

      ii.       関連当事者間取引の一元管理
                         15
          ガバナンス委員会事務局は、関連当事者間取引の認識・把握漏れがな
        いことを確認するために関連当事者チェックリストを整備いたしました。
        さらに、稟議手続きにおいて内部統制推進室長、押印手続において総務
        部長、出金手続において財務部長、会計手続において経理部長がそれぞ
        れ当該関連当事者間取引を確認する仕組みを導入することで、関連当事
        者間取引の網羅的把握のより実効的な運用を図ります。正式な運用は
        2021年4月から行いますが、既に同年2月15日のガバナンス委員会以降、
        関連当事者間取引の認識・把握漏れがないことを確認するため、試験的
        な運用を行っています。

  iii. 取締役CFOによる確認プロセス

         当社は、関連当事者間取引については、当社の適正な財務諸表の作成
        や、その適正な開示と密接に関連することを認識し、関連当事者との取
        引の実施を行うためには、業務記述書に取締役CFOの確認を求めるプロ
        セスも追加することといたしました。これにより、財務部門の長である
        取締役CFOが、財務諸表の作成に際して、関連当事者間取引が実行され
        たことを把握できることとなり、財務諸表における適正な開示や、当社
        の会計監査人との情報共有・連携を確保するための措置を講じられるこ
        ととなります。

  iv.   ガバナンス委員会と取締役会の役割分担の明確化

         本件取引当時は、ガバナンス委員会事務局は設置されておらず、議
        案・資料の作成や招集についても、実質的に1名(前執行役員で、現法
        務部職員)のみが行っていました。本件取引に際しガバナンス委員会の
        審議が奏功しなかったのは、審議の充実化に向けた準備が不足していた
        ことにあります。これを是正し、ガバナンス委員会による関連当事者間
        取引の検証・監視機能を強化するため、2021年4月より経営戦略室にガ
        バナンス委員会事務局を設置しております。
         ガバナンス委員会事務局は、関連当事者間取引が行われようとしてい
        ることを認識した場合、主管部署と協議の上、取引概要や取引の必要性
        等を取りまとめて、上述ⅲ.の取締役CFOの確認を経て、ガバナンス委員
        会委員長に報告することとしました。これを受け委員長は、当該報告を
        受けたときは遅滞なくガバナンス委員会を招集し、関連当事者間取引の
        適正性について審議を行い、取締役会に答申するものとし、ガバナンス
        委員会事務局が同委員会の議事録の作成等を行うこととしました。なお、
        取締役会においては、当該答申を受けて、職務権限規程に基づき、関連
        当事者間取引を決議し、又は報告を受けることとなります。

イ. 減損兆候判定・店舗間の損益振替処理ルールの明確化(上記1.③に対応)

 本件では、固定資産の減損の兆候判定に関して、内部統制が有効に機能してい
なかったため、次のプロセス等を導入いたしました。
 これらプロセスの追加は、2021年2月に実施し、同年3月に運用テストを行っ
たうえで、同月26日より、業務記述書により明確化しましたので、引続き、運用
してまいります。

  i.    会計システムの仕訳入力統制・月締処理
                 16
             2021年2月に、会計システムのアクセス制限の見直しを行い、不要な
            アカウントを削除しました。また、毎月の月次決算後に、会計システム
            の月締処理を行い、月締処理後の数値変更ができないようにしました。

      ii.   経理部門への教育

             2021年3月に、関連当事者間取引及び減損兆候判定・店舗間の損益振替
            処理ルールの変更点(詳細は上述⑨ア.及びイ.参照)について経理部内で
            共有し周知しました。今後も会計基準やルール変更等が発生した場合に、
            経理部門を対象とした研修や勉強会等を実施してまいります。

      iii. 店舗間振替処理時の人事部によるダブルチェック

              2021年2月以降、他店舗へのヘルプ等、工数の店舗間振替処理が必要
            な場合には、人事部内において、入力担当者とは別の担当者がチェック
            (ダブルチェック)することとしました。

      iv.   月次損益計算書及び減損判定資料の承認

              月次損益計算書について、2021年2月以降、毎月、取締役CFOが確認し
            た上で翌月の取締役会にて報告することとしました。また、減損判定資
            料(減損処理の必要性を検討する資料)について、四半期ごとに、取締役
            CFOが確認した上で取締役会にて報告することとしました。

      v.    業務記述書への記載

             上記ⅰからⅳについて、業務記述書に記載し、J-SOX監査の一環として、
            運用状況を確認することで運用の徹底を図ります。

⑩   社内規程の見直しと運用システムの構築(上記1.③に対応)

     2020年7月に組織・業務分掌・職務権限の仕組み構築、稟議プロセスの明確化の
    ための組織・業務分掌規程、職務権限規程、稟議規程等の規程類の改訂、2020年8
    月には押印手続きの明確化のための印章管理規程の改訂、懲戒手続きを明確化のた
    めの懲戒規程の制定、2020年10月には危機管理委員会の組成を含むリスク管理体
    制・手法の見直しに伴い危機管理規程を制定していますが、2021年3月の詳細な再
    発防止策の策定に伴うプロセス変更を社内規程に反映させるため、2021年4月に開
    催予定の取締役会において、職務権限規程、組織・業務分掌規程、危機管理規程等
    の規程改訂を行います。
     また、当社では、各社内規程は、社内共有フォルダに格納して、役職員の閲覧に
    供する方法で周知しています。なお、社内規程の周知性をより高めるために、総務
    部においてイントラネット等の社内コミュニケーションツールの作成等の検討を行
    っており、2021年9月までに、実施する予定です。




                       17
3. 改善措置の実施スケジュール
                       2021                                 2022
        改善措置            年                                    年
                        4月     5月   6月   7月   8月   9月   ‥    3月
① Y社との各種業務委託契約の解約
② 新経営陣の招聘
③ 役職員の意識改革と内部通報制度の
  見直し
  ア.内部通報制度の見直し・周知
  イ.研修                 4月実施
  ウ.当社幹部の教育・育成
  エ.双方向コミュニケーション
④ 取締役会及び監査役会による監督機
  能の再設計
  ア.取締役会への付議議題の明確化
  イ.取締役会の人員構成の見直し
   ➢ 人員構成の見直し
   ➢ 取締役・監査役候補者指名プロセ
     スの運用
  ウ.取締役会事務局の新設         4月実施
⑤ ガバナンス委員会の強化
  ア.ガバナンス委員会の人員構成の見
    直し
  イ.ガバナンス委員会の諮問事項の追    4月実施
    加
⑥ 監査役監査における定期的な確認
⑦ 内部統制・内部監査に係る組織体制
  の見直し
  ア.内部統制推進部署の責任者の招聘
  イ.内部統制及びリスクマネジメント
    推進体制の強化
   ➢ 危機管理委員会の設置
   ➢ 危機管理推進会議の設置       4月実施
⑧ 重要リスクの特定と対応(内部統制
  の整備と運用)及びモニタリングに
  係る全社的な体制・手法・プロセス
  ア.重要リスクの特定及び対応方法等
    の再構築
   ➢ 全社的な体制・手法・プロセスの
     再構築
   ➢ 危機管理計画の作成
  イ.内部監査の強化
   ➢ 内部監査計画の作成
   ➢ 見直し後の内部監査手続の追加実
     施
          :実施・運用              :検討・準備




                       18
                         2021                                 2022
             改善措置         年                                    年
                          4月     5月   6月   7月   8月   9月   ‥    3月
 ⑨ 購買・決算・財務報告プロセスの再
   設計
   ア.関連当事者間取引検討プロセスの
     再設計
    i.関連当事者間取引における報告ル
      ールの明確化
    ⅱ.関連当事者間取引の一元管理
    ⅲ.取締役CFOによる確認プロセス
    ⅳ.ガバナンス委員会と取締役会の
      役割分担の明確化
   イ.減損兆候判定・店舗間の損益振替
     処理ルールの明確化
    ⅰ.会計システムの仕訳入力統制・
      月締処理
    ⅱ.経理部門への教育
    ⅲ.店舗間振替処理時の人事部によ
      るダブルチェック
    ⅳ.月次損益計算書及び減損判定資
      料の承認
    ⅴ.業務記述書への記載
 ⑩ 社内規程の見直しと運用システムの
   構築
    ➢ 職務権限規程、組織・業務分掌規
      程、危機管理規程等の規程改訂
    ➢ イントラネット等の社内コミュニ
      ケーションツールの作成
            :実施・運用              :検討・準備


III.     経営責任等の明確化について

        当社旧経営陣は、2020年6月26日付で取締役を退任し、執行役員となっておりましたが、
       本件取引の責任を明確化するとの考えにより、2021年1月14日付で執行役員を辞任いたしま
       した。
        緊急対策本部は、本件取引の背景及び経緯に係る事実認定並びに原因分析を踏まえ、外部
       委員を中心とした責任明確化ワーキンググループを設置し、当社旧経営陣を含む、当社の本
       件取引当時の取締役、監査役、及び執行役員の本件取引における関与の程度及び認識等を評
       価し、責任の所在の明確化及び適切な人事処分等を行うため調査及び検討を行ってまいりま
       した。
        その結果、当社旧経営陣及び前取締役1名(中谷一則)については、本件取引の一部に関
       して、善管注意義務違反が認められることから、当社は同3名との間で、善管注意義務違反
       と相当因果関係が認められうる当社の損害について同3名が当社に対して連帯して賠償する
       旨の和解を行いました。また、当時の執行役員3名については、本件取引の一部が社内規程
       に違反して行われていたことの認識があったことを認定し、前執行役員2名を就業規則に基
       づき懲戒処分の対象とし、現執行役員1名を厳重注意(懲戒不相当)としました。なお、当
       社の前常勤監査役には、本件取引に関する監査に不十分な点が認められましたが、損害賠償
       責任までは認められないことが認定されましたので、責任追及の対象としておりません。
                         19
IV. 不適切な情報開示が投資家及び証券市場に与えた影響についての認識

   当社は、この度、不適切な会計処理の結果、過年度決算を訂正することとなり、関係者の
  皆様には多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。
   今後このような事案を二度と起こさないように、前述Ⅱ.改善措置に述べました再発防止策
  を全役職員一丸となって確実に実行し、上場会社としての信頼の回復に努めてまいります。

                                      以上




                    20