2503 キリンHD 2020-02-14 15:30:00
株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ [pdf]

                                                             2020 年2月 14 日
各       位
                                     会   社   名   キリンホールディングス株式会社
                                     代表者名        代表取締役社長          磯崎 功典
                                                 (コード番号 2503)
                                     本社所在地       東京都中野区中野四丁目 10 番2号
                                     問合せ先        コーポレートコミュ
                                                                  堀    伸彦
                                                 ニケーション部長
                                                 (03-6837-7015)



                 株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ

      当社は、当社の株主(以下「提案株主」
                       )の代理人である Independent Franchise Partners, LLP(以
下「FP」)より、2020 年3月 27 日開催予定の第 181 回定時株主総会(以下「本定時株主総会」
                                                   )におけ
る議案について株主提案(以下「本株主提案」)を行う旨の書面(以下「本株主提案書面」)を受領して
いましたが、本日開催の当社取締役会において、本株主提案について反対することを決議しましたので、
下記のとおりお知らせします。

                                    記

I.     本株主提案の内容及び理由
      1. 議題
        (1) 自己株式の取得の件
        (2) 取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額改定の件
        (3) 取締役の報酬額改定の件
        (4) 取締役2名選任の件
      2. 議案の要領及び提案の理由
          別紙1に記載のとおりです。


       (注)以下、上記1.(1)の議題に係る株主提案を「自己株式取得株主提案」と、上記1.(2)の議題
        に係る株主提案を「株式報酬額改定株主提案」と、上記1.(3)の議題に係る株主提案を「金銭報
        酬額改定株主提案」と、1.(4)の議題に係る株主提案を「取締役選任株主提案」といいます。


II.    本株主提案に対する当社取締役会の意見
      1.自己株式取得株主提案について
        (1) 自己株式取得株主提案の概要
            自己株式取得株主提案は、会社法第 156 条第1項の規定に基づき、本定時株主総会の終結の
          時から1年以内に、当社普通株式を株式総数3億株、取得金額の総額金 6,000 億円(ただし、
 会社法により許容される取得価額の総額(会社法 461 条に定める「分配可能額」)が、当該金額
 を下回るときは、会社法により許容される取得額の上限額)を限度として、金銭の交付をもっ
 て取得することを提案するものです。
  なお、自己株式取得株主提案は、2019 年 11 月7日開催の当社取締役会において決議された
 自己株式取得(取得対象株式の種類:当社普通株式、取得し得る株式の総数 6,000 万株(上限)、
 株式の取得価額の総額 1,000 億円(上限)
                       、取得期間:2019 年 11 月8日~2020 年 11 月7日)に
 追加して、自己株式を取得することを提案するものです。
(2) 当社取締役会の意見
  取締役会としては、自己株式取得株主提案に反対します。
(3) 反対の理由
  自己株式取得株主提案は、当社の発行済株式総数(914 百万株)の約3割という大規模な自
 己株式取得を提案するものです。当社取締役会は、以下の理由からこの提案に反対します。
  自己株式取得株主提案は、ビール事業に注力すべく、
                         「協和キリン株式会社(医薬事業)
                                        、協
 和発酵バイオ株式会社(バイオケミカル事業)及び株式会社ファンケル(スキンケア事業)な
 どの非中核事業を売却する」ことを想定した上で、特に「協和キリン株式会社及び株式会社フ
 ァンケルの株式」を売却することで獲得する資金を自己株式取得の原資とすることを前提とし
 ています。
  一方、当社は 2019 年から長期経営構想「キリングループ・ビジョン 2027」
                                         (KV2027)を掲
  「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界の CSV 先進企業となる」ことを目指してい
 げ、
 ます。創業以来培ってきた発酵・バイオの技術をベースとしながら、酒類事業、飲料事業など
 の食領域と医領域を一層強化し、収益性の向上と資本効率の更なる改善を進めるとともに、ヘ
 ルスサイエンス領域において、健康を軸とした社会課題の解決につながる新たな事業の育成・
 強化に取り組んでいます。特に、株式会社ファンケルとの資本業務提携を通じて、研究開発や
 素材、チャネル、ブランド等、両社の強みをバリューチェーンで有機的に結合し、シナジーを
 早期に創出するため、機能横断で様々な協働取り組みを展開しています。さらに、平準化 EPS
 (年平均成長率5%以上) ROIC
             と   (2021 年度グループ全体で 10%以上)を重要成果指標とし、
 成長と財務規律の両立に配慮した経営を行っており、こうした企業活動こそが、キリングルー
 プの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると考えています。また、当社は株主還
 元の重要性を認識しており、2019 年度からは、平準化 EPS に対する連結配当性向を 30%以上
 から 40%以上に引き上げています。それに加え、2018 年と 2019 年にそれぞれ総額 1,000 億円
 の自己株式取得を発表しているとおり、株主還元の更なる充実に向けた追加的施策も機動的に
 実施しています。
  こうした当社の取り組みと、自己株式取得株主提案を両立するには、大規模な負債調達など
 が必要となりますが、これは当社の財務規律を著しく毀損し、事業リスクを高めるものと考え
 ています。
  また、自己株式取得株主提案は、本定時株主総会の終結の時から1年以内に自己株式取得を
 完了するものです。取得方法として市場取引による自己株式取得を想定した場合は、当社の平
 均出来高や売買代金等を勘案すると完了まで1年を大幅に超過する期間を要するほか、公開買
 付けによる場合も、大規模な自己株式取得を実現するため相当のプレミアムを支払う可能性が
  あるなど、いずれの場合を想定しても非現実的な提案と考えています。
    以上の理由から、当社取締役会は、自己株式取得株主提案に反対します。


2.株式報酬額改定株主提案及び金銭報酬額改定株主提案(以下両提案を総称して「役員報酬株主提
  案」
   )について
 (1) 役員報酬株主提案の概要
  ① 株式報酬額改定株主提案の概要
    株式報酬額改定株主提案は、譲渡制限付株式付与のための金銭報酬債権を付与するため、譲
  渡制限付株式制度の対象となる社外取締役を除く取締役に対する報酬額を、基本報酬及び賞与
  の報酬額年額とは別に、年額 12 億円以内と設定することを提案するものです。なお、具体的な
  支給時期及び配分については、指名・報酬諮問委員会での審議のうえ、取締役会において決定
  するとされています。
  ② 金銭報酬額改定株主提案の概要
    金銭報酬額改定株主提案は、株式報酬額改定株主提案が承認可決されることを条件として、
  当社の取締役に対する基本報酬及び賞与に係る報酬額を、年額6億円(うち社外取締役分は年
  額 8,000 万円以内)以内と設定することを提案するものです。なお、具体的な支給時期及び配
  分については、指名・報酬諮問委員会での審議のうえ、取締役会において決定するとされてい
  ます。
 (2) 当社取締役会の意見
    取締役会としては、役員報酬株主提案に反対します。
 (3) 反対の理由
    役員報酬株主提案は、現行の譲渡制限付株式報酬制度(以下「現行制度」
                                    )が維持されること
  を前提として、株式報酬額を大幅に増額するとともに、金銭報酬額を大幅に減額することを提
  案するものですが、当社としては、本定時株主総会にお諮りする予定の信託型報酬制度及び業
  績連動型株価連動報酬制度(両制度を総称して以下「新制度」)の方が適切であると考えてお
  り、以下の①②③の観点より、受け入れるべきではないと判断します。
  ① 新制度の妥当性の観点
    当社の現行制度は 2017 年に導入しましたが、導入から約3年が経過し、その間の運用体制
  や課題等に鑑み、報酬制度の安定的で効率的な運営及び当社の取締役等の中長期的な業績向上
  と企業価値増大へのインセンティブ確保を目的とし、今般、新制度の導入を、提案しました。
    当社の現行制度は、業績評価期間の初めに業績目標の上限値を達成した場合に相当する株式
  数を付与し、実際の業績に応じて譲渡制限解除割合が減じる一方の仕組みであるところ、新制
  度は目標(基準値)を 100%として、下限値を 50%、上限値を 150%とし、目標達成度に応じて
  ポイントを付与し、一定期間の後に1ポイントを1株として株式を付与する仕組みです。新制
  度は、業績への連動性の点において、現行制度と実質的な相違はなく、新制度を導入した場合
  には、業績結果に応じた形で付与株式数を決定するという点において、インセンティブとして
  現行制度より判りやすい仕組みが実現可能となります。当社は、こうした観点を踏まえて検討
  を行い、指名・報酬諮問委員会の審議を経て今回の提案に至っています。今回当社よりご提案
  する新制度の内容については、本日発表の「取締役等に対する業績連動報酬制度の改定に伴う
報酬等の額及び内容改定並びに社外取締役の報酬額改定に関するお知らせ」を併せてご参照く
ださい。
② 業績連動報酬の比率と報酬水準の設定の妥当性の観点
 当社の業績連動報酬の報酬総額に占める比率は、業績目標達成時に概ね 50%程度となるよう
に設計しています。具体的には、代表取締役社長は、基本報酬:業績連動報酬の基準額=45:
55(うち、賞与 32、株式報酬 23)の比率とし、他の取締役はこれに準じて役位及び職責を考慮
して決定します。
 上記業績連動報酬の比率は、比較対象を主に国内における当社と同規模程度の企業又は国内
の同業他社とし、業績目標達成時にそれらの比較対象と比較して遜色のないものとなるように
設計したものであり、外部調査機関の役員報酬調査データによる報酬水準・業績連動性の客観
的な比較検証を行った上で、社外取締役が過半数を占める指名・報酬諮問委員会の審議を経て
決定しているものです。
 また、株式報酬の水準については、現行制度の取締役(社外取締役を除く)に対する報酬額
は年額2億 5,000 万円以内となっていますが、新制度においては、年額6億円(対象者は、委
任契約の執行役員を含み、社外取締役を除く)とし、業務執行を担う役員の中長期的な業績向
上と企業価値増大へのインセンティブの確保を図っています。
 ただし、今後もマーケットの状況を踏まえ、当社における適切な報酬水準、および適切な業
績連動報酬の比率の在り方については、指名・報酬諮問委員会で定期的、継続的に審議を行い、
然るべき対応を取っていきます。
③ 取締役の報酬額(基本報酬及び賞与)の妥当性の観点
 当社の取締役の報酬額は、2017 年3月 30 日開催の第 178 回定時株主総会において、基本報
酬および賞与の報酬額年額を9億 5,000 万円以内(うち社外取締役分は年額 8,000 万円以内)
としています。これは、高業績時の賞与の実支給額の上振れ、取締役の将来的な人員増の可能
性等を見越して設定したものです。
 今般、社外取締役3名の増員(現在の社外取締役は4名)を提案することを踏まえ、取締役
の報酬額の総額を維持することを前提に、社外取締役の報酬額の年額1億 5,000 万円以内への
変更を提案します。
 社外取締役の大幅な増員に伴い、社外取締役の報酬額のみが増額される結果、社外取締役を
除く取締役にかかる報酬枠が実質的に減少することとなります。従いまして、取締役の報酬額
の総額(基本報酬及び賞与の報酬額年額)を減少させ、かつ社外取締役の報酬額を変更しない
株主提案については、今般当社よりご提案する取締役会の新体制および報酬制度の変更を実施
するうえで重大な支障を生じさせかねないものです。なお、社外取締役の報酬額の改定に関す
る詳細につきましては、本日発表の「取締役等に対する業績連動報酬制度の改定に伴う報酬等
の額及び内容改定並びに社外取締役の報酬額改定に関するお知らせ」を併せてご参照ください。
 以上より、当社取締役会が提案する新制度および報酬額の改訂提案の方が適切であると考え
ています。
ご参考:取締役の報酬額の比較(現行の報酬額、会社提案、株主提案)
              現行の報酬額                   会社提案                   株主提案
 基本        年額 9 億 5,000 万円      年額 9 億 5,000 万円        年額6億円
 報酬    (うち社外取締役分 8,000 万円)    (うち社外取締役分 1 億 5,000 万円) (うち社外取締役分 8,000 万円)
 及び

 賞与

(金銭

報酬)

           譲渡制限付株式報酬制度          信託型株式報酬制度              譲渡制限付株式報酬制度
株式         年額 2 億 5,000 万円      年額6億円                  年額 12 億円
報酬     (社外取締役を除く)             (委任契約の執行役員を含む。          (社外取締役を除く)
                              社外取締役を除く)


  (注)役員報酬株主提案の提案理由において、現行の譲渡制限付株式報酬制度に係る事項について
      の十分な情報開示がなされていないとの指摘がありましたが、この点についての補足説明は、別
      紙2に記載のとおりです。




 3.取締役選任株主提案について
      (1) 取締役選任株主提案の概要
           取締役選任株主提案は、以下の取締役候補者2名を社外取締役に選任することを提案するも
       のです。

                         ニコラス・E・ベネシュ氏
               候補者名
                         菊池 加奈子 氏

      (2) 当社取締役会の意見
           取締役会としては、取締役選任株主提案に反対します。
      (3) 反対の理由
           純粋持株会社である当社は、グループ全体戦略の策定と推進、各事業のモニタリング、グル
       ープ連携によるシナジー創出の推進等の役割を担っており、2019 年からは、長期経営構想
       KV2027 を掲げ、
                 「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界の CSV 先進企業となる」こと
       を目指しています。
           こうした中、当社は、KV2027 の実現を効果的、効率的に図ることができるガバナンス体制
       を構築しています。当社取締役会は、KV2027 の実現のために必要な、知識、経験、能力、見
       識等を考慮して、多様性を確保しながら、全体としてバランスよく適正な人数で構成するとと
       もに、透明性の高いガバナンス体制となっています。また、客観的な経営の監督の実効性を確
       保するため、現在の取締役会の構成は、社内取締役5名、社外取締役4名であり(社外取締役
       比率は 44%)、議長は社外取締役が務めています。
 さらに、昨年の取締役会の実効性評価の結果を踏まえ、強化方針として取り上げられたテー
マ等も勘案し、取締役会に求められるスキルセットの見直しを行った結果、新たな社外取締役
候補者として4名を会社提案として上程することにしました。本定時株主総会で現在の社外取
締役が1名退任しますので、結果、社外取締役3名の増員となり、社内取締役5名、社外取締
役7名の体制となります(社外取締役比率は 58%に上昇)。今回新たに当社より提案する社外
取締役候補者の詳細は、本日発表しました「役員の異動について」をご参照ください。
 提案株主から推薦された候補者2名につきましても、当社の指名・報酬諮問委員会の委員長
及び委員を務める取締役2名と面談したうえで、指名・報酬諮問委員会において、候補者の資
質・実績・専門性に加え、当社取締役会の全体構成における役割・機能等の観点から検討・審
議を行い、取締役会に答申を行っています。当社取締役会はその答申を踏まえ、検討・審議を
行った結果、以下の理由により、株主提案の2名の候補者を選任する必要はないと判断しまし
た。
① 当社の提案する新取締役会の体制(以下「新取締役会体制案」 は下記表のとおりであり、
                              )
  高い監督機能を有しているとともに、ダイバーシティも強化されていること
      社内取締役       5名
      社外取締役       7名     うち独立社外取締役7名
                         うち女性取締役2名
                         うち外国人取締役2名
       合   計      12 名   独立社外取締役比率 58%
                         女性取締役比率 16%、外国人取締役比率 16%
② 当社は、新取締役会体制案の検討にあたって、当社の取締役会に求められるスキルセット
  を総合的に考慮しており、その結果決定した新取締役会体制案は、当社の持続的成長と中
  長期的な企業価値向上に資する必要かつ十分な体制であること(当該スキルセットに即し
  た新取締役会体制案に係るスキルマトリックスは別紙3に記載のとおり)
③ 食領域、医領域及びヘルスサイエンス領域においてグローバルに展開する当社の事業内容
  や、企業規模を鑑みた取締役会の適正規模の観点から、合計 12 名という新取締役会体制
  案は適切であること
 以上から、当社取締役会としては、新取締役会体制案が KV2027 実現のために最適な体制で
あると確信しており、取締役選任株主提案による候補者2名を社外取締役として選任する必要
はなく、取締役選任株主提案に反対します。




                                             以   上
<別紙1>


キリンホールディングス株式会社(以下「当社」といいます。)は、当社の総株主の議決権の 100 分の
1 以上の議決権又は 300 個以上の議決権を 6 か月前から引き続き有する株主である NORTHERN
TRUST CO.(AVFC) SUB A/C NON TREATY(以下「提案者」といいます。
                                               )から、会社法第 303 条第
2 項に基づき、2020 年 3 月下旬開催予定の当社の第 181 回定時株主総会(以下「本定時株主総会」と
    )において、下記第 1 に記載する議題(以下「本議題」といいます。
いいます。                               )を株主総会の目的とす
ることについて請求を受けるとともに、本議題について、提案者が下記第 2 に記載する議案(以下「本
        )を提出することから、会社法第 305 条第 1 項及び会社法施行規則第 93 条に基づ
議案」といいます。
き、本議案の要領を株主に通知することについて請求を受けました。


                         (提案者による提案内容)


第 1 提案する議題
1   自己株式の取得の件
2   取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額改定の件
3   取締役の報酬額改定の件
4   取締役 2 名選任の件


第 2 議案の要領及び提案の理由等
1   自己株式の取得の件
(1) 議案の要領
     会社法第 156 条第 1 項の規定に基づき、本定時株主総会終結の時から 1 年以内に、当社普通株式を
    株式総数 300,000,000 株、取得価額の総額金 600,000,000,000 円(ただし、会社法により許容される
    取得価額の総額(会社法 461 条に定める「分配可能額」
                               )が、当該金額を下回るときは、会社法によ
    り許容される取得額の上限額)を限度として、金銭の交付をもって取得することとする。。
                                            )
     本議案は、2019 年 11 月 7 日開催の当社取締役会において決議された自己株式取得(取得対象株式
    の種類 当社普通株式、
       :       取得し得る株式の総数 60,000,000 株
                         :            (上限) 株式の取得価額の総額 100,000
                                          、          :
          、取得期間:2019 年 11 月 8 日~2020 年 11 月 7 日)に追加して、自己株式を取得す
    百万円(上限)
    ることを提案するものである。


(2) 提案の理由
     現経営陣は、2019 年中期経営計画において、食領域(酒類・飲料事業)、医領域(医薬事業)、医
    と食をつなぐ事業を当社グループの事業領域であるとしていますが、このような事業の多角化は、株
    主が期待する結果をもたらしておらず、市場から評価されていません。
     すなわち、当社の株価は、2018 年 4 月には概ね 3,000 円以上で推移していた(終値での最高値は、
    2018 年 4 月 18 日の 3,194 円)にもかかわらず、その後の 18 か月で約 25%下落するに至っていま
    す。この当社の株価の下落時期は、当社による 2019 年 2 月の協和発酵バイオ株式会社(バイオケミ
    カル事業)の買収及び 2019 年 8 月の株式会社ファンケル(スキンケア事業)の株式 33%の総額 2,500
    億円超での取得の時期と一致しています。詳細については、https://www.abetterkirin.com で説明し
    ていますが、要するに、当社の企業価値は、コングロマリットであること及び資本の配分を理由とし
    て、当社の各事業の価値の合計から 50%以上もディスカウントされて評価されていると提案者は考
    えております。このディスカウントは、中核である飲料事業と関連しない事業を高値で買収したため
    のものであり、また、シナジーが欠如した無関係な事業を集積したことに対する明確なコングロマリ
    ット・ディスカウントです。
     投資家から預かる資金を運用する機関投資家としては、このような当社の経営を放置することは、
    提案者のフィデューシャリー・デューティーに抵触するとも言い得る状況にあります。
     当社は、主要事業である日本、オーストラリア、ミャンマー及びフィリピンのビール事業に注力す
    ることにより、企業価値を最大化することができると提案者は考えております。そのため、当社の取
    締役会は、協和キリン株式会社(医薬事業)
                       、協和発酵バイオ株式会社(バイオケミカル事業)及び
    株式会社ファンケル(スキンケア事業)などの非中核事業を売却するとともに、経営資源をビール事
    業に集中的に投下することによって、中長期的な企業価値を最大化させ、また、株主還元を強化する
    ことを約束するべきであると提案者は考えております。
     当社が保有する協和キリン株式会社及び株式会社ファンケルの株式の市場価値は、現時点におい
    ておおよそ 876,000,000,000 円であることから、提案者は、これら株式の売却により当社が受領する
    資金の一部を、600,000,000,000 円を上限として、自己株式の取得のために用いるよう求めます。
     非中核事業の売却の具体的な時期、株主還元の手法及び株主還元の時期については、当社の経営陣
    が適切に判断することを期待しますが、本議案は、当社の経営陣に対し、ビール事業に注力するべき
    であるとのメッセージを送るとともに、当社の株主の意思を明確に示すため、本議案により、当社の
    経営陣に対し、株主還元の手法としての自己株式取得を行うための選択肢を付与するものです。


2   取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額改定の件
(1) 議案の要領
     譲渡制限付株式付与のための金銭報酬債権を付与するため、譲渡制限付株式報酬制度(以下「本制
    度」といいます。)の対象となる社外取締役を除く取締役(以下「対象取締役」という。)に対する報
    酬額を、基本報酬及び賞与の報酬額年額とは別に、年額 12 億円以内と設定する。具体的な支給時期
    及び配分については、指名・報酬諮問委員会での審議のうえ、取締役会において決定する。


(2) 提案の理由
     本制度に係る対象取締役の報酬額については、平成 29 年 3 月 30 日開催の第 178 回定時株主総会
    において、基本報酬及び賞与の報酬額年額 9 億 5,000 万円(うち社外取締役分は年額 8,000 万円以
    内)以内とは別に、年額 2 億 5,000 万円以内を金銭報酬債権として支給することが決議されました。
     本制度においては、中期経営計画に掲げる主要な経営指標その他の取締役会が定める指標について、
    譲渡制限期間の初年度における目標達成度合いに応じて、割当株式の全部又は一部について、譲渡制
    限期間が満了した時点で譲渡制限を解除するものとしているものの、対象取締役による株式保有を促
    進する観点から、付与する譲渡制限付株式の一定割合については、目標達成度合いにかかわらず、原
    則として譲渡制限期間が満了した時点において譲渡制限が解除されるものとしており、具体的な譲渡
    制限解除割合は 33%~100%の間で変動するものとしているとのことです。
     そして、2019 年度においては、業績評価指標を ROIC と平準化 EPS の 2 つとし、それぞれを均等
    に評価するとのことです。
     中長期的な業績と連動し、また、取締役と株主の価値共有を促進する報酬体系は望ましいものとい
    えるものの、当社の取締役の報酬体系においては、基本報酬及び賞与の報酬額が年額 9 億 5,000 万円
    (うち社外取締役分は年額 8,000 万円以内)以内であるのに対して、譲渡制限付株式に係る報酬額は
    年額 2 億 5,000 万円以内となっています。提案者は、このような基本報酬と譲渡制限付株式報酬の比
    率は、適切ではないと考えております。すなわち、当社においては、業績連動報酬である譲渡制限付
    株式報酬の占める割合は、報酬総額の 2 割に留まっていますが、これは、グローバル企業おける一般
    的な水準に比べると著しく低いと言わざるを得ません。また、本制度に基づく報酬については、2018
    年度の支給実績が 99 百万円(対象員数 5 名)で、取締役ごとの支給実績としては、磯崎功典代表取
    締役社長が 43 百万円、西村慶介代表取締役副社長が 26 百万円という情報のみが開示されています。
     すなわち、提案者は、本制度に関しては、以下の事項について十分な情報開示がなされていないと
    考えています。
     ① 個別の取締役ごとに設定された目標の内容
     ② パフォーマンス目標の達成度合いごとにいかなる割合の割当株式について譲渡制限が解除され
         るのか
     ③ パフォーマンス目標の達成度合いにかかわらず譲渡制限が解除される割当株式の割合及び当該
         割合の決定時期、
     ④ 上記①から③の決定手続の詳細


     したがって、株主としては、個別の取締役ごとの報酬とパフォーマンスが計画目標に見合ったもの
    となっているかの評価を十分に行うことができず、そのためにかかる報酬制度の是非を決定するため
    の十分な情報が提供されていない状況にあります。
     特に、目標達成度合いにかかわらずに譲渡制限が解除される割当株式の割合は 33%~100%の間で
    変動するものとされている事実は、最適なものとはいえません。このため、本制度の基本的な考え方
    は、中長期的な業績と連動し、また、取締役と株主の価値共有を促進するというものであるにも関わ
    らず、この割合が決定される方法如何によっては、この基本的な考え方が没却されてしまう可能性も
    否定できません。更に言えば、提案者は、譲渡制限が解除される割当株式の割合は、報酬とパフォー
    マンスを真に整合させるためにこそ、0%から 100%の間で変動させることが通常であると考えてお
    ります。
     以上より、本制度の効果をより一層促進するため、対象取締役の報酬額を年額 12 億円以内と増額
    するとともに、上記①から④については、決定次第、速やかに公表することにより、株主が取締役及
    びそのパフォーマンスの評価を適切に行うことができる環境を整備することを求めるものでありま
    す。


3   取締役の報酬額改定の件
(1) 議案の要領
     当社の取締役に対する基本報酬及び賞与に係る報酬額を、年額 6 億円(うち社外取締役分は年額
    8,000 万円以内)以内と設定する。具体的な支給時期及び配分については、指名・報酬諮問委員会で
    の審議のうえ、取締役会において決定する。なお、本議案は、上記 2 に記載する対象取締役に対する
    譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額改定の件に係る議案が、承認可決されることを条件とする。


(2) 提案の理由
        当社の取締役の報酬額については、平成 29 年 3 月 30 日開催の第 178 回定時株主総会において、
    基本報酬及び賞与の報酬額年額 9 億 5,000 万円(うち社外取締役分は年額 8,000 万円以内)以内、ま
    た、同株主総会において、対象取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額は、年額 2 億
    5,000 万円以内を金銭報酬債権として支給することが決議されました。
        しかし、上記 2 に記載のとおり、当社の対象取締役に対する報酬体系においては、基本報酬及び賞
    与として支給される報酬額と譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額の割合は、取締役と株主の価値創
    出の共有を促進するためには不十分であると言わざるを得ません。
        そのため、対象取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度に係る報酬額を増額するとともに(上記 2)、
    対象取締役に対する基本報酬及び賞与として支給される報酬額を改定(減額)し、当社の取締役に対
    する基本報酬及び賞与に係る報酬額を、年額 6 億円(うち社外取締役分は年額 8,000 万円以内)以内
    と設定することを提案するものであります。


4   取締役 2 名選任の件
(1) 議案の要領
        ニコラス・E・ベネシュ氏及び菊池加奈子氏を社外取締役に選任する。


(2) 提案の理由
        上記 1 の自己株式の取得の件の「(2) 提案の理由」において述べたとおり、現在当社が進めている
    事業の多角化は、株主が期待する結果を達成しておらず、市場から評価されていません。その結果、
    現在、当社の企業価値は、50%以上もディスカウントされて評価されていると提案者は考えておりま
    す。このような状況において、当社の現在の社外取締役 4 名(うち、真に独立性があると提案者が判
    断するものは 3 名)による経営のモニタリングは、株主価値を保護する観点から十分なものとはなっ
    ていません。
        よって、提案者は、ニコラス・E・ベネシュ氏及び菊池加奈子氏を取締役候補者として推薦します。
    提案者は、この 2 名は、当社の取締役に相応しい多くの資質を持っていると考えております。
        候補者らの略歴は下記のとおりですが、各人の推薦理由をまとめると以下のとおりです。


        ニコラス・E・ベネシュ氏:ベネシュ氏は、卓越した学術的知見を持ち、世界中における投資銀
         行業務、M&A、およびアドバイザリー業務から得た、金融と法律の分野における著しい経験を
         有しています。同氏はまた、取締役の研修に特化した、日本における唯一公益社団法人として
         認定を受けた団体である公益社団法人会社役員育成機構の設立者でもあります。現在、同氏は
         日本の上場企業 2 社の役員を務めており、コーポレートガバナンスとビジネス倫理に強い関心
         を有していたことから、日本発のコーポレート・ガバナンス・コードの策定に向けて自由民主
         党に提案を行い、また、金融庁を含む関係者に支援を行いました。
    菊池加奈子氏:同氏は、世界中の様々な地域におけるグローバルな製薬会社
     (GlaxoSmithkline、Novartis、Bausch&Lomb、および現在の雇用主である UCB)におい
     て、豊富な経験を有しています。薬剤師である一方、同氏は、勤務先において、その企業のコ
     マーシャル、事業開発、企画経営機能の役割に焦点を合わせてきました。提案者は、同氏の学
     歴と実務経験の両方が当社にとって貴重であると信じています。これに加え、同氏は、性別の
     多様性(必要であることは明らかでしょう)を当社の取締役会にもたらすことができます。


(3) 取締役候補者の氏名・略歴等


氏名               略歴、地位及び担当                               所有する当社
                 (重要な兼職の状況)                              株式の数
ニコラス・E・ベネシュ      1983 年   モルガン・ギャランティー・トラスト・カンパ          0株
(生年月日:1956 年 4            ニー・オブ・ニューヨーク(米国)入社、米国
月 16 日)                   カリフォルニア州弁護士会入会
                 1984 年   ニューヨーク州弁護士会登録
                 1990 年   ジェーピー・モルガン・セキュリティーズ・ア
                          ジア    ヴァイス・プレジデント
                 1994 年   株式会社鎌倉    専務取締役
                 1997 年   株式会社ジェイ・ティ・ピー設立       代表取締役
                          (現任)
                 2000 年   株式会社アルプス(地図作成業) 取締役、内
                          閣府対日投資会議専門部会外国人特別委員
                 2006 年   株式会社ライブドアホールディングス        社外
                          取締役
                 2007 年   株式会社セシール    社外取締役
                 2009 年   公益社団法人会社役員育成機構        代表理事(現
                          任)
                 2010 年   金融庁主宰コーポレートガバナンス連絡会議
                          メンバー
                 2013 年   国際大学大学院国際経営学研究科        客員教授
                 2013 年   一橋大学    非常勤講師
                 2016 年   株式会社 IMAGICA GROUP   社外取締役(現
                          任)
                 2019 年   株式会社アドバンテスト取締役(現任)
氏名               略歴、地位及び担当                           所有する当社
                 (重要な兼職の状況)                          株式の数
菊池加奈子            1992 年    マリオンメレルダウ株式会社入社           0株
(生年月日:1962 年 8   1997 年    ボシュロム・ジャパン株式会社   ビジョンケア
月 1 日)                     本部マーケティング部次長
                 1999 年    ボシュ&ロム・インコーポレーテッド(米国)
                           グローバルストラテジーディレクター
                 2004 年    ノバルティスファーマ株式会社    オンコロジ
                 -2013 年   ー事業部、眼科事業部、OTC 事業部で事業部長
                           職を歴任
                 2013 年    グラクソ・スミスクライン株式会社   取締役
                 2017 年    グラクソ・スミスクライン株式会社   代表取締
                           役社長
                 2018 年    ユーシービージャパン株式会社    代表取締役
                           社長(現任)




                                                            以上
<別紙2>
役員報酬株主提案の提案理由において、現行の譲渡制限付株式報酬制度に係る以下の事項についての十
分な情報開示がなされていないとの指摘がありました。


  ① 個別の取締役ごとに設定された目標の内容
  ② パフォーマンス目標の達成度合いごとにいかなる割合の割当株式について譲渡制限が解除さ
    れるのか
  ③ パフォーマンス目標の達成度合いにかかわらず譲渡制限が解除される割当株式の割合及び当
    該割合の決定時期
  ④ 上記①から③の決定手続の詳細


上記の指摘について、以下のとおり補足説明します。


  ① について
    譲渡制限付株式報酬制度においては、個別の取締役ごとに設定される目標はなく、対象者全員
   に対し同じ目標が適用されます。
  ② について
    2019 年度の実績に関しましては、2019 年度に係る有価証券報告書にて開示を予定しています。
  ③ について
    指名・報酬諮問委員会で審議のうえ、取締役会の決議によって、各年度の譲渡制限付株式報酬
   の業績評価指標及びその値等を決定する際、目標の達成度合いにかかわらず譲渡制限が解除され
   る割当株式の割合についても併せて審議・決定を行っており、当該割合は各年度とも 33%と決定
   されています。また、当該割合については 2017 年度に係る有価証券報告書以降の有価証券報告
   書にて開示しています。
  ④ について
    上記の内容のほか報酬制度の決定手続に関する事項については、2019 年度に係る有価証券報
   告書にて開示予定です。
<別紙3>取締役、執行役員の専門性と経験(スキルマトリックス)


       取締役候補者の専門性と経験は、次のとおりです。
                                                                専門性と経験
                                                                  法務              ブランド戦略               R&D
         候補者                          ESG               人事・労務
          番号       氏 名       企業経営
                                    サスティナビリティ
                                                財務・会計
                                                        人材開発
                                                                コンプライアンス   SCM    マーケティング     海外事業    新規事業
                                                                 リスク管理              営業               ヘルスサイエンス

          1    磯崎    功典       ●        ●                          ●                 ●          ●

          2    西村    慶介       ●                          ●                                     ●

          3    三好    敏也                ●                 ●                          ●

          4    横田乃里也                   ●         ●       ●                 ●                   ●

          5    小林    憲明                                                    ●                   ●        ●

          6    荒川    詔四       ●                                            ●                   ●

          7    森     正勝       ●                  ●                                             ●

          8    柳     弘之       ●                                            ●        ●          ●

          9    松田千恵子                   ●         ●                ●

          10   塩野    紀子       ●                                                     ●          ●        ●

          11   ロッド・エディントン     ●                                                                ●

          12   ジョージ・オルコット              ●         ●                                             ●

        当社は、執行役員制度を導入しています。本定時株主総会終結後に開催される取締役会におい
         て選任予定である取締役を兼務しない副社長執行役員及び常務執行役員の専門性と経験は、次
         のとおりです。
                                                                専門性と経験
                                                                  法務             ブラ ン ド 戦 略            R&D
                                      ESG               人事・労務
        地 位        氏 名       企業経営               財務・会計           コンプライアンス   SCM   マーケティング      海外事業    新規事業
                                    サスティナビリティ           人材開発
                                                                 リスク管理              営業               ヘルスサイエンス
    副   社長執
               小川        洋                               ●        ●
    行   役 員
    常   務執行
               溝内    良輔                ●                                            ●          ●
    役     員
    常   務執行
               吉村    透留                                                    ●                   ●        ●
    役     員
    常   務執行
               坪井    純子                ●                                            ●
    役     員
    常   務執行
               前原    正雄                                                    ●                   ●
    役     員
    常   務執行
               布施    孝之       ●        ●                                            ●
    役     員
    常   務執行
               堀口    英樹       ●                                                     ●          ●
    役     員
    常   務執行
               南方    健志       ●                                            ●                   ●        ●
    役     員