2433 博報堂DY 2019-05-24 15:30:00
2019年3月期 通期 決算説明会資料(新中期経営計画)<解説つき> [pdf]

社長の戸田でございます。


それでは、当社グループの「新中期経営計画」についてご説明します。




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最初に、現中期経営計画の進捗状況からご説明します。




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当社グループは、ご覧の中期経営計画を2013年11月に発表し、以降、5年間積極的な事業活動を展開
してきました。
同計画に関しては、順調に進捗したことを受け、2016年11月に数値計画を上方修正しております。




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まず、戦略面の進捗についてです。


中期基本戦略の実現へ向けて掲げた「3つの成長ドライバー」は、積極的なリソースの投入により、
大きく進捗しました。


"生活者データ・ドリブン″マーケティング対応力の強化については、基盤となるデータやテクノロジ
ーの強化を行い、生活者DMPの拡充を進め、生活者データの活用実績を積み重ねてきました。
結果、当社グループの競争優位を支えるひとつの柱へと成長させることができたと考えています。


2つ目の成長ドライバーについては、M&Aを積極的に実施したことも奏功し、アジアの売上総利益の
規模は、2013年度の実績の約2.5倍近い規模まで拡大しました。体制面でも制作やPR、アクティベ
ーション、デジタルなど、サービスラインナップの拡充を図ることができました。


3つ目の専門性と先進性の継続的な取り込みについては、戦略事業組織kyuが、様々な領域のユニー
クかつ先進的な会社をメンバーに加え、数値面でも、売上総利益が大きく拡大するなど、質/量の両面
で当社グループの成長に大きく貢献しました。
さらに、国内でのM&Aも多数実行し、国内の専門機能強化も進捗しております。




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次に、数値計画の進捗についてです。
2019年3月期は、メルカリ株式売却にともなう一時的な損益の押し上げが発生したため、同影響を除外
した実質比較にて説明します。


ご覧の通り、掲げたすべての指標において、2016年11月に上方修正を行った目標水準を上回ることが
できました。
最重要指標であるのれん償却前営業利益は、メルカリ株式売却の影響を除いても589億円と計画を過達。
売上総利益は直近3ヵ年平均で二桁成長を実現し、経営効率も高い水準を維持しました。
また、のれん償却前ROEは、メルカリ株式売却の他、年金関連の一時的な押し上げ要素を除いても、
12%強と目標水準を上回る着地となりました。




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計画当初掲げた成長イメージについても、概ね想定通りの進捗となったと言えます。


主戦場である国内の広告市場が伸び悩む中、各種戦略の推進により競争力を強化し、市場シェアの拡大
と、年率+5.8%という強いオーガニック成長を実現しました。
また、機能強化のためのM&Aも積極的に実行し、数値面でも600億円規模の売総拡大に寄与しており
ます。


海外事業についても、アジアおよびkyuの事業拡大により、年率+46.4%のスピードで成長し、売総
に占める海外比率も当初計画した20%を上回る結果となりました。




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以上の現中期経営計画のレビューを踏まえ、ここからは、新しい中期経営計画について説明させていた
だきます。


なお、計画期間は、2020年3月期から2024年3月期までの5ヵ年です。




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まず、当社グループを取り巻く環境変化についてですが、一言で申し上げると、「オールデジタル化に
よる大変革時代が到来する」と考えています。


情報端末を中心に進化してきたデジタル化が、家、都市といった単位で生活全体に広がる動きや、それ
に伴うデータ量の増大、新たなインフラ/サービスの拡充、更にはデジタルテクノロジーを駆使する様
々なプレーヤーが出現するなど、まさに大変革時代を迎えている、ということです。




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この「オールデジタル化」による変革には、大きく3つの動きがあるとみています。


まず、これまでなかったサービスやインフラが整備され、情報のデジタル化が日々の生活に波及し、
生活全体がデジタル化する動きです。生活者は、身の回りの様々な場所に出現する、いわゆる「デジタ
ルタッチポイント」を通じて、情報行動、購買行動など世の中のあらゆる動きをリードするようになり
ます。つまり、生活者が中心となる社会がいよいよ本格的に到来する、ということです。


また、ビッグデータ/IoT/AI/ロボットなどのデジタルテクノロジーの進化が起点となって、これまで
の市場の垣根が融解し、産業構造の転換が進んでいきます。それに伴い、企業はこれまで以上に、先端
テクノロジーの取り込みやビジネスモデルの変革など、ダイナミックなイノベーションの必要性に迫ら
れるようになります。


さらに、オールデジタル化は、企業活動のボーダレス化を加速します。
これまで、国内企業は海外での事業拡大を目指し「グローバルシフト」を進めてきました。この動きは
今後も継続すると見ていますが、それに、オールデジタル化の流れが加わることで、企業活動の、
「国境という概念を越えた“ボーダレス化”」が、ますます加速していくとみています。




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そのような環境変化の中、当社グループの強み、競争力の源泉は何か。


それは、当社グループのポリシーでもある「生活者発想」を起点に、「生活者データとテクノロジー」
の活用基盤と、未来をつくる「クリエイティビティ」、それに、多様な個性や機能をつなぎ動かす
「統合力」を融合することができること。
そして、生活者、企業、メディアをはじめ、あらゆるプレーヤーとパートナー関係を構築し、チーム一
体となって協働できること。
その事こそが、他社が持ちえない当社グループの競争力の源泉であり、オールデジタル化する社会でこ
そ活かされる強みであると考えています。




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以上を踏まえ、


博報堂DYグループは、


生活者発想を基軸に、
クリエイティビティ、統合力、データ/テクノロジー活用力を融合することで、
オールデジタル時代における企業のマーケティングの進化と、イノベーション創出をリードする。
そのことで、生活者、社会全体に新たな価値とインパクトを与え続ける存在になる。


ことを中期基本戦略とします。


未来をデザインし、社会実装を進め、
生活者一人ひとりが自分らしく活きいきと生きられる「生活者中心の社会づくり」に貢献していきたい
と考えています。




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次に、当社の描く中期基本戦略の実現へ向けて設定した「3つの成長基盤」の強化について、ご説明し
ます。


1つ目は、「広義デジタル領域でのリーディングポジションの確立」
2つ目は、「ボーダレス化する企業活動への対応力強化」
3つ目は、「外部連携によるイノベーションの加速」です。


これら3つの成長基盤に、M&Aのみならず、データやテクノロジー、システムインフラや人材など
幅広く投資を積極化し、スピーディーかつ着実な成長を目指します。




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1つ目の「広義デジタル領域でのリーディングポジション確立」についてです。


オールデジタル時代を見据えると、インターネットメディアのみならず、新たに生成されるデジタルタ
ッチポイントも含めた広義のデジタル領域に対応できる機能、体制を兼ね備えた「同領域でのリーディ
ングポジションを確立」することが必須となります。
そのために、ご覧の3つの戦略施策を進めていきます。




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まずは、 "生活者データ・ドリブン″マーケティングの高度化についてです。


オールデジタル化を見据え、テクノロジー/データ・システム/ソリューションを常時アップデートし続
けることが必要となります。
また、如何に統合的かつ効率的に運用できるかという観点のみならず、クリエイティビティとの掛け算
により、新たな市場や生活者価値の創造に繋がるような、より高付加価値なソリューションの提供が求
められるフェーズへと移行しつつあります。
同領域には、引き続き、リソースを積極投入し、機能強化を進めるとともに、クリエイティビティとの
掛け算による"生活者データ・ドリブン″マーケティングの高度化を推進していきます。




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次に、多様化するデジタルタッチポイントへの対応についてです。


オールデジタル時代においては、4マスメディアやアウトドアメディアなど従来のオフラインメディア
のデジタル化によって新たな市場が生まれることはもとより、AIスピーカーやコネクテッドカー、
スマートストアなど、リアル空間に新たなデジタルタッチポイントが次々と出現します。
多様化し、拡大する各種デジタルタッチポイントにおけるメディア開発やマーケティングへの活用、
ビジネス開発などに積極的に取り組み、これらを推進するための機能強化、対応体制の整備を進めてま
いります。




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もうひとつの戦略施策である「成長するインターネットメディア領域での体制の拡充」についてです。


多様な得意先ニーズに応じた最適なサービス提供体制を整備することが重要であると考えています。
当社グループは、すでに博報堂/大広/読売広告社などの総合広告会社という強いサービスラインを保持
していますが、さらにインターネットメディア領域での機能/体制の強化を図っていきます。
加えて、高度なデジタルソリューション提供を行い、いわゆるインターネット専業の市場に対応する
「次世代型デジタルエージェンシー」の機能拡充にも注力します。
また、両輪となるフロントラインを支える総合メディア事業会社もデジタルトランスフォーメーション
を進め、オールデジタル時代に適した次世代の形へと進化させていきます。


昨年10月のD.A.コンソーシアムホールディングスグループの完全子会社化や、博報堂DYデジタルと
DACの経営統合などの取り組みは、本戦略施策の推進を目的としたものです。




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次に、「ボーダレス化する企業活動への対応力強化」についてです。


環境認識で言及した通り、国境という概念を越えた企業活動のボーダレス化は、オールデジタル化の流
れにより、一層加速しています。
当社グループは、ご覧の3つの要素を起点に、海外事業の強化を行い、ボーダレス化する企業活動への
対応体制の拡充を図っていきます。


これまで、中核事業会社を中心に「国内外一体運営」を掲げ、得意先のグローバルシフトへの対応を進
めてきました。さらに、kyuの機能拡充の他、アジアでの専門企業の買収なども進め、「専門性と先進
性」を起点とした海外事業の強化も進めてきました。
引き続き、M&Aも含め、積極的なリソースの投下を行い、これらの取り組みを継続、強化していきま
す。


また、 "生活者データ・ドリブン″マーケティングの有効性は、万国共通であると考えています。
海外においても、生活者データやソリューション基盤の構築を進めるべく、積極的な投資と外部企業と
のアライアンスを強化し、
メディアのみならず、CRM/デジタルプロモーション/EC対応など、幅広くデジタルアクティベーショ
ン領域の実行体制を整備していきます。




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3つ目は「外部連携によるイノベーションの加速」です。


オールデジタル化に伴い、企業は先端テクノロジーの取り込みやビジネスモデルの変革など、ダイナミッ
クなイノベーションの必要性に迫られるようになります。
そして、これからの時代のイノベーションには、当社グループの持つ生活者発想、クリエイティビティ、
生活者データの活用力のみならず、得意先や媒体社、コンテンツホルダーなど当社グループの取引先の持
つ各種リソースや、先進的な外部企業のテクノロジーを統合していくことが重要であると考えています。
多様な外部企業との連携基盤を構築し、提供サービスのイノベーションのみならず、自社のイノベーショ
ンも加速していきます。


なお、具体的な施策として、新中計の期間内に100億円規模のベンチャー投資を行う、コーポレート・
ベンチャーキャピタル・ファンドを組成する他、グループ各社においても上記のような各種取り組みを進
めています。




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その他、主要な対処すべき課題として「SDGsへの取り組み」と「働き方改革」があると認識していま
す。
これらのテーマは、新中計の計画期間に留まらず、継続的に注力すべきテーマであると考えています。


各テーマについて、上記の方針に則り、積極的に取り組みを進めてまいります。




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ここまで、具体的な成長戦略についてご説明してきましたが、この戦略に基づく、中期経営目標につい
てご説明します。


最重要指標であるのれん償却前営業利益は、計画期間の最終年度である2024年3月期に「950億円」
の規模まで拡大する計画とします。
これは、M&Aに伴い発生するのれん等を償却する前の営業利益であり、投資事業も含めた数値です。


また、重点指標として、投資事業を除いた主力事業ベースで、
売総は期間年平均+7%以上の伸びを実現し、のれん償却前営業利益の成長率は、売総の伸長率を上回
る+8%以上。
のれん償却前オペレーティング・マージンは、2023年度時点では、現状より改善し、20%以上の高
水準を目指します。
そして、のれん償却前ROEは、欧米企業との比較でも遜色のない15%程度の水準を、2023年度時点
での目標水準とします。


なお、株主還元については、安定/継続的な配当をベースに、業績動向やキャッシュフローなどの財務
状況を勘案し、株主への適切な利益還元を意識した経営を行っていきます。


※中期経営目標/重点指標の前提条件
新中期経営計画の計画期間内における国内経済(名目GDP)、および広告市場は、ともに年率+1.5
%程度の成長を前提に、上記数値計画を設定。
前提条件に大きな変動が発生した場合は、計画を見直す可能性があります。




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最後に、新中計期間の成長イメージについて説明します。


投資事業を除く、調整後売上総利益は、多少の上下の振れを伴いながらも、基本的には5ヵ年を通じて
継続的に高い成長を見込んでいますが、
中期的にこの大きな成長を達成するためには、計画期間の前半で、「デジタル人材の拡充」「働き方改
革」「データ/テクノロジー基盤強化」などへの先行投資が必要だと考えています。
先行投資のフェーズでも増益は担保しつつ、計画期間の後半に強い利益の伸びを実現してまいります。


なお、調整後のれん償却前オペレーティング・マージンは一時的に低下することになりますが、先行投
資の効果発現後の2023年度には、現状より改善する想定です。




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また、ご説明した戦略の推進に基づく「インターネットメディア事業」と「海外事業」の定量的な成長
イメージについても、触れさせて頂きます。


インターネットメディア事業は、面を拡大していくことを計画しています。規模感としては、5ヵ年で
現状の2倍以上、実額では5000億円以上の水準を目指します。


海外事業は、これまでの5ヵ年で急拡大してきましたが、引き続き、M&Aも含め大幅に成長させる想定
であり、売上総利益規模を現状の2倍以上とすることを目指します。さらに、のれん償却前オペレーテ
ィング・マージンの継続的な改善を図り、利益ある成長を実現していきたいと考えています。




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以上が、当社グループの新中期経営計画になります。


足元の経済環境は、米中通商問題の激化や中国の成長鈍化など、景気の下押しリスクが高まっており、
先行き不透明感が強まっていますが、
この新しい中期経営計画に則り、積極的な事業展開を行い、大きな成長を実現してまいります。


ありがとうございました。




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