2433 博報堂DY 2020-12-03 15:00:00
2021年3月期 上決 決算説明会 質疑応答要旨 [pdf]

                                 博報堂 DY ホールディングス
                      2021 年 3 月期 上期 連結決算説明会 質疑応答要旨


2020 年 11 月 16 日(月)15:30-16:30
当社出席者:
代表取締役社長            水島 正幸
取締役副社長             矢嶋 弘毅
取締役専務執行役員           松崎 光正
取締役常務執行役員           西岡 正紀
執行役員                禿河 毅




売上総利益率について教えていただきたい。                 第2四半期の前年同期比で第 1 四半期に引き続き改善が
見られてが、第1四半期における改善要因が第2四半期も継続しており、この傾向が下期・通期でも続く
という見方で良いのだろうか。


改善が進んでいるのは、複数の要素がある。
第一にはコロナ禍のトップラインの減少の中でも、事業会社各社が収益確保へ努力を行ったことにあろ
う。
第二に、子会社でのコールセンター事業が上期に好調な業績を上げているが、この収益性が高いこと。
三番目は、得意先のポートフォリオがややプラスに働いたということ。すなわち、収益率の低い扱いが減
ったということもある。
下期も特に収益確保の努力を継続したいと思っている。




 (足元テレビスポットの需要が力強いという話や、インターネットメディアの回復が早いとの話もあ
 ったが)下期は種目別でどの分野の回復が早い、あるいは遅いのか。


まず業種別に申し上げると、
            「官公庁・団体」や「ゲーム・スポーツ」「金融・保険」などでは下期は前
                               、
年を上回ってくるのではないかと見ている。下期は半分近い業種で前年を超えてくると見ているが、自
動車業種もサプライチェーンの問題で厳しい展開であった状況から徐々に回復している。また、Go-To
施策の追い風が期待できる「交通・レジャー」においても、引き続き厳しい状況であることは変わらない
が、上期に比べるとそれ相応の持ち直しを見込んでいる。


種目別に見ると、上期は人が集まれないということもあり、
                          「アウトドア」
                                「SP」
                                   「PR・イベント」と
いったような種目が大変厳しかった。下期は各種 Go-To キャンペーン等で人の動きが出てきており、ス
ポーツイベント・文化イベントも完全な状態ではないものの再開にあわせ少しずつ回復していくと思わ


                                        1
れるが、それでも他の種目に比べると相対的には厳しい状況が続くと考えられる。テレビスポット・イン
ターネットのようなメディア領域については、得意先事情によるが発注も増えてくるとみている。




業績予想において、下期の売上高を前年同期比 10%の減収とみているが、全体の中で半分近い業種の中
でプラスになる可能性があることは、残り半分の業種は 10%あるいはそれ以上のマイナスという厳しい
見通しになる。明暗分かれるような状況か。


業種によってはまだマーケティング活動に入れない状況である。得意先の組合せも考慮し、上半期の 20%
ダウンから下期は 10%程度まで回復すると見込んで、通期を予想している。業種による差は当然出てく
るという前提である。




コロナが御社の経営戦略に与える影響の度合いは、
                      「費用削減は継続するものの、攻めの費用は予定通り
投下し来期に備える」という、従来の経営戦略の延長線で行けるくらいの影響度なのか、「事業モデル・
顧客そのものが大きく変わりつつあり、戦略そのものの大きな見直しが迫られる」という影響の度合い
なのか、経営者の立場でどのように認識されているのか。


コロナウイルスの今後感染拡大・ワクチン開発等の状況については現在様々な報道をみているところで
あるが、これまでの状況を踏まえると、非常に大きなインパクトがあったと認識している。また、仮に来
期になってコロナ禍が収束すれば、経済の回復とともに市場規模としてはコロナ前の数字には戻るので
はないかと考えているが、広告市場が従前と同じ形に戻るとは考えていない。


これからの戦略については、今社内でも議論中の部分もあるが、中期経営計画においては「オールデジタ
ル化の進行」を掲げており、従来の「情報のデジタル化」から「生活のデジタル化」へと変わる 5 年間の
中で、広告のみならず広告周辺領域までビジネスとして取り込んでいこうとしている。


商品の購入がダイレクト ECで増えたり、
           ・        Web のミーティングやデジタルを活用した生活が進むなど、
我々の想定以上にオールデジタル化が早く到達すると考えており、それに応じてデータマーケティング・
デジタルマーケティングの対応強化をスピード感もって行っていく。それと併せ、各得意先企業もビジ
ネスの変革が迫られている中でDXへの対応が急務になっている。DXに対応する新しいソリューショ
ン・チームもこの上期から増やしており、今後ますますテクノロジーの領域含め強化が必要だと考えて
いる。新たな得意先・媒体社のニーズに対応する体制を強化する必要があると認識している。


併せて、上半期さまざまな活動制限の中でコスト削減が実現しているが、このようなコロナのような大
きなインパクトが今後も発生するだろうということを想定して、筋肉質な企業体質に変革しなければな
らない認識でいる。グループ全体のコスト構造改革の検討を始めており、今期中に新たに着手しないと

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来期以降に間に合わないということで、緊急避難以外のコスト構造にも手を付けていかなければならな
いという認識でいる。グループ全体の提供価値を、DXが進む市場に合わせていくとともに、我々の企業
自体もDXによって、更なる経営効率の向上を図ろうと、社内で検討しているところである。




コロナ禍において、広告主・代理店全般のメディア仕入(発注)のマインド変化が見えているか、また、
ネット広告の需要が強いということだが、コロナ禍で特徴的な動き、それに向けた御社グループの対応
など、ネット広告に対する博報堂DYグループのスタンスを教えてほしい。


メディアにおいては、運用型広告の比率がどんどん高まっているのは間違いなく、市場全体でみるとデ
ジタル広告に対する運用型広告の割合が約 75%となっている。これはテレビスポットやほかのメディア
にも影響を及ぼしてくると考えている。いろいろな会社が「運用型テレビスポット広告」を提案し始めて
いるが、動画マーケティングでは、いままでのような予約型広告から運用型広告へのシフトがより加速
していくのではと考えている。その意味では、我々グループは運用型のモデルにより対応した組織・シス
テムの体制を、デジタルだけでなく(テレビなどの)動画マーケティングを通じて作っていくことを考え
ている。


もう一つは宣伝費だけでなく販促費をどう取り込んでいくかということで、ブランドフィーに加え販売
促進費をデジタルで取り組むものを強化していくべきだと考えている。プラットフォーマーとの関係と
ともにこれをどのように取り込んでいくかが成長市場での課題となる。




7-9 月の人件費が一段と下がっているように見えたが、下期以降、トップラインが徐々に戻っていくと
想定されるなかで人件費はどういった考え方でコントロールされていくのか。


人件費に関しては、第 1 四半期に比べて第 2 四半期のマイナス幅が大きかった。
第 1 四半期には定時入社者等の増加要素があった一方、中途採用に関しては実質凍結をしているので、
第 2 四半期以降については伸びが緩やかになっていることがまず挙げられる。
もう一つは、業績に応じたインセンティブで、業績見合いに応じて修正をしたため第 2 四半期の削減が
大きく見えている。


通期について、基本的にはこれまで同様トップラインと連動して費用コントロールする方針である。人
件費も当然同じであるので、一旦上期と同程度の削減をする方向で業績予想を開示している。しかし、当
然収益の上振れ・下振れに応じて再度検討する可能性があると考えている。なお、業績予想では、構造改
革は外数としている。
さらに、来期については、今期どういう形で年度決算が決着するかまだ不透明であるので、具体的な水準
について現時点で言えないものの、来期は来期で業績に連動した形でまたコストコントロールを行うこ


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とになる。




ここ最近、インターネット広告代理店や様々な会社で「DX支援」という言葉がよく使われてきている
が、御社のなかでもDX支援といわれる業務は拡大してきているだろうか。また、このビジネスが拡大
すると、御社の収益などにどういった影響が出てくると考えているか。


コロナでECが非常に増えていたり、在宅でのコミュニケーションが増加したりしていること等により、
生活者の生活が変わる中で様々な消費行動が変わってきている。各企業・サプライチェーンなどのビジ
ネスにおいてもDXを進めるニーズが高まる中で、「DX」は流行語のような扱いを受けており、「普通
の」デジタル化を含めて「DX」が加速しているのが、国内のマーケティングの現状である。
我々も博報堂はじめ各事業会社がDXに関するソリューションの開発、専門チームの組成などの手法で
得意先企業のDX支援をしながらビジネスを進めている。具体的には、顧客接点の非接触、非対面ソリュ
ーションを 55 個束ねた「GOGODX」は、イベントで集まれなくなったものをオンラインにしていく
ソリューションの提供、店舗のバーチャル化、セールス等のリモート化など、リアル・アナログでやって
きたことをデジタルのソリューションとしても提供していこうという試みである。コロナ禍でリアルに
は難しいイベントがデジタル・オンラインで実現するということなので、我々の他のビジネスにも影響
を与えている。
そのほか「hakuhodo DXD」という組織の立ち上げ、デジタルベースでの動画制作など多数のプロジェ
クトが進行している。


今後もDXが進み、競合他社も含めたくさんのソリューションが出てくると思うが、我々も今まで培っ
てきたクリエイティビティを発揮し、新たな提案を準備して業績のプラスになるよう活動していく。




海外事業について、損益取込が 3 カ月ずれているのである程度の状況が見えていると思う。決算上の第 2
四半期に対して次の第 3 四半期については、他の広告会社で不透明感があるようだが、海外の足元の業
績動向についてはどのように見ているか。


世界経済の状況はIMF等で統計が出ているが、エリアごとに状況が異なることはご存じかと思う。
我々が大きくビジネス展開しているのは kyu 中心の北米と博報堂中心の中国・ASEAN 地域であるが、エ
リアにより好不調がある。海外全体について第 3 四半期(7-9 月)は速報ベースに基づくと、第 2 四半期
(4-6 月)が底で、 3 四半期には持ち直しつつあるものの回復には程遠い状況であり、
           第                               上半期(1-6 月)
と下半期(7-12 月)を比べると、第 4 四半期がまだ不透明な状況であるが、オーガニックに限ると現段
階では(1-3 月のコロナ禍影響が極めて小さかったことにより)下半期のほうが落ち込み幅でいうと大き
いのではないかと見ている。
エリア別には、中華圏では得意先の活動も活発となっているので数字を戻しているが、ご存じの通り北


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米はまだ非常に厳しく、ASEAN もオーガニックではいまだ難しい状況にある。一方、下期より M&A で
損益の取込が始まる会社(台湾の Growww Media、kyu の Godfrey Dadich など)の影響もあり、売上総
利益が押し上げられる。上半期の売上総利益は全体で前年同期比 8%減だったが、下期は M&A の効果も
含めて上半期並みになるものと捉えていただければと思う。




コスト構造を筋肉質に、という構造改革の話があったが、どのような時間軸で考えているのかについて
も教えていただきたい。


コスト構造改革については、社内で検討中であり「なるべく早くいろいろなものを」とのみお答えするに
留める。
何か決定した場合は速やかに発表する予定である。
                                                          以   上




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