2433 博報堂DY 2020-06-10 12:00:00
2020年3月期 通期 決算説明会 質疑応答要旨 [pdf]

                   博報堂 DY ホールディングス
            2020 年 3 月期 通期 連結決算説明会 質疑応答集


                                 2020 年 5 月 25 日(月) 13:30~14:30
(当社説明者)
  代表取締役社長     水島   正幸
  取締役副社長      矢嶋   弘毅
  取締役専務執行役員 松崎     光正
  取締役常務執行役員 西岡     正紀
  執行役員        禿河   毅


  2020 年度の市場全体の成長率についてどのように考えているか。また 2021 年度のイメージも可能
  な範囲で教えてほしい。


水島:
 現時点で一年間を見通すことは非常に難しいことを前提としたうえで、過去を振り返って傾向のみお
話ししたい。過去のリーマンショック等の影響をみると、広告市場は名目GDP以上の振れ幅で動く可
能性が高い。そのため足元は厳しい数字となり、年間を通じてもマイナス成長となる可能性が高いと考
えている。具体的な数字については当社としても測りかねており、お伝えすることはできない。
 2021 年度についてはコロナウイルスの影響次第となるが、多くの企業において経済活動が正常化する
と考えており、従来のペースに戻るのではないかと期待している。




  コスト削減について。現時点で考えている規模感と内容について教えてほしい。


西岡:
 コロナ禍の経済環境においてコストコントロールは重要になってくると考えているが、収束への道筋
が明確ではない現状では具体的な数字をお伝えできないため、コントロールの方針についてお話しする。
 コロナ影響がいつまで続くかについてはさまざまなシミュレーションを行っているが、第 1 四半期で
底を打ち V 字回復するという楽観的な前提だけではなく、終息が長引くことも視野に入れてコストコン
トロールをすべきと考えている。中計で掲げている成長のための戦略的な費用を極力確保するため、リ
ーマンショック時と同様に活動費用の削減を中心とした不要不急のコストを削減する計画については既
に各社立案済みである。この活動費用の削減の規模は 15~20%程度であり、そのうえで今後さらにコン
トロールが必要かどうか判断したい。ここでいう削減の対象はいわゆる「その他費用」の一部を指してお
り、人件費は含まれない。金額的なイメージとしては数十億円というレベルである。
 今後、コスト削減のレベルを上げる必要がでてくる可能性もあると考えており、トップラインの状況に
よっては戦略的費用投下もタイミングやスピードを調整することも検討する。

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海外事業のコロナウイルスの影響について、3 月までと 4 月以降、地域別に状況を教えてほしい。


水島:
 海外は第 1 四半期が 1 月から 3 月となっており、第 1 四半期は中華圏とアセアンでの影響が中心であ
った。欧米は感染拡大の影響が深刻化する 4 月以降に本格的な影響が出てきている。中華圏およびアセ
アンは博報堂グループの規模が大きく、拠点の状況を見ていると、第 1 四半期の既存拠点の売上総利益
は、二桁のマイナスとなっている拠点もある状況。また北米は kyu の規模が大きいが、第 1 四半期の売
上総利益は前年並みだったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた第 2 四半期以降は業績への
影響が出てくる見通しである。各拠点では、すでに各種コスト削減に着手しているが、これまで培った競
争力の減退を避けるため極力雇用を維持しながら削減に邁進している。
 各拠点の稼働状況について、中国では全拠点で活動を再開しているが、当局からソーシャルディスタン
ス要請を受けているため、事務所内の人口密度の抑制などをおこなっている。全人代も開催され社会活
動の正常化への期待が高まっているが、民間のイベントが元通り開催できるようになるまでにはまだ時
間を要すると考えている。中国では自動車関連の仕事が多いが工場の全面再稼働にも時間がかかってお
り、7 月以降には正常化すると考えている。第 2 四半期から徐々に動き出すのではと考え活動している。
その他、香港・台湾・韓国などは通常勤務に戻っており、特に比率が大きい台湾は、コロナ影響が限定的
だったため比較的堅調であるが、イベント系の業務は中止になるものも多い状態。香港は解除されたも
ののストがまた始まってしまった。アセアン・インドはロックダウンが解除されておらず、これから。欧
米はこわごわと再スタートを切った状況であり、少しずつ回復していくと考えている。




4 月のインターネット売上高は開示された 3 社合算ベースでプラスに出ている。中計進捗の説明でも4
マスからデジタルへの流れが加速するとあったが、21 年 3 月期のインターネットメディアに関してど
のような見方をしているか。5 月 6 月は 4 マス同様に厳しくなるのか。


水島:
 4 月のインターネットメディアのプラス成長については(運用型広告の収益認識時期を確定ベースとし
ている)当社グループの会計ルールの影響があり、3月分の出稿の多くを 4 月に計上している事情があ
るため、出稿という観点でみると月がずれて見えることを大前提としてご理解いただきたい。
 大きな流れとしてはテクノロジーやデバイスの発達にともなって接触シーンの多様化やコンテンツの
分散などから、テレビ広告からインターネット広告へ移行する傾向があると認識している。そのなかで
コロナウイルスの影響で加速するものがいくつかあると考える。在宅での生活が進む中でデジタル前提
での生活者行動が定着し、デジタルを優先する動きが浸透しつつある。これにともなってマーケティン
グ指標も今後さらにデジタルを活用したものに変化していくと考える。
 一方で外出自粛によってテレビの視聴率が向上したことはテレビ業界にとってポジティブな状況であ

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り、マスメディアとデジタル両方の良い面が見つけられるのではないかとも考えている。従前から進め
ていたが、今後はテレビとデジタルを掛け合わせたプランニングを競争力強化のために活用し、これを
テコに短期的にも中期的にもシェアアップを狙いたい。特に最近は web の動画広告が増えているため、
デジタルのクリエイティブ体制を強化したいと考えている。




広告需要が低迷している局面において、中計で掲げている積極的な投資が優先されるのか、短期業績と
して(中計数値目標である)のれん償却前営業利益の改善に主眼を置くのか、そのバランスについて教え
てほしい。


松崎:
 現時点では中計の戦略通りM&Aを含めた機能強化の投資を行っていくという方向性に変わりはない。
しかしながらコロナウイルスの影響の大きさ、時間軸での回復の度合を注視しつつトップラインとのバ
ランスを取りたいと考えている。




irep は非常に好調であったが、その背景について説明いただきたい。


松崎:
 irep はインターネット専業広告会社と競合対峙する会社だが、以前より運用力に定評があり、運用型
広告が主流となっている現状において高い競争力を保持している。また市場シェアの高いメディアであ
るグーグルとの良好な関係の中で、同社の媒体ないしソリューションへの深い理解をベースに、運用力
の強化を継続している点も得意先から非常に高い評価を得ている。
 さらに、当社の 100%子会社となってから、HDY グループ内のデータやツール、ソリューション、幅
広い商材、マーケティングのノウハウや人材をといったグループリソースの活用を進めており、競争力
がさらに向上したと考えている。クリエイティブ領域においても irep ならではの手法が生まれはじめ、
次世代型デジタルエージェンシーへの変化も順調だと考えている。引き続き博報堂などの総合広告会社
のデジタル基盤強化と並行して、irep に積極的にグループリソースを投入し、競争力強化に注力したい。




kyu の傘下のグループ会社で前期の実績、およびコロナの影響下で、特筆すべき動きがあれば教えてほ
しい。


松崎:
 kyu のグループ会社もコロナの影響を受けている。基本的に kyu は北米が主戦場なので、ロックダウン
により第 2 四半期(4 月-6月)から大変厳しい見通しとなっており、各社とも積極的なコスト削減に取
り組んでいる。

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 前期の実績で最も調子が良かったのはデジタルエージェンシーの Kepler グループである。コロナ影響
に関しては、IDEO や SY Partners をはじめコンサルティングモデルの会社が多く、現在はプロジェクト
自体が中止・延期になるケースもあるが、一方で”With コロナ”“After コロナ”を見据えた変革の提案の
ニーズもあり、
      「経済と社会を動かすクリエイティビティの源になる」というパーパスを掲げる kyu とし
ては大きなビジネスチャンスであると考えている。さらにこのコロナ禍でも、例えば IDEO のチームが
得意の”Design Thinking”でフェイスマスクのプロトタイピングを行い、病院に寄付するなど、社会貢献
にも取り組んでいる。まずは競争力を維持するために雇用の維持を念頭に置き、必要最低限のコストに
留められるようコスト削減施策に取り組み、潜在的なニーズは高いので、状況が好転したら反転攻勢を
狙いたいと考えている。




コロナの影響でデジタル化が加速するのでは、との説明があったが、今後、どのような形で加速すると
考えているかメディア動向のイメージを教えてほしい。


水島:
 テレビにおいては、先ほど申し上げた通り、コンテンツの分散もあるので、全体としては微減傾向と認
識しているが、インターネットメディア市場においては、既にテレビと同等規模まで成長・拡大している
ということもあり、従来のように経済状況にかかわらず右肩上がりで大きく伸長するようなステージで
はないと認識している。その中で、コロナによる生活様式の変化が、それぞれのメディアに影響を与える
のではないかと思っている。テレビの視聴率が上がっているという話も申し上げたが、在宅によって、ど
ういう形でその時間を使うか、楽しみにするかというと、やはりコンテンツ消費が非常に大きい。その中
で、インターネットによるコンテンツももちろんあるし、テレビによるコンテンツもあるということで、
新たなコンテンツをどちらに放流するかというのは、それぞれの業界の力の入れ方によって変わってく
ると思うし、相互に乗り入れていくことも必然だと思うので、我々の立場としてはともに良い形で伸び
ていただきたいと考えている。また、なんとかそこに当社グループが貢献すべく、活動していきたい。




売上総利益率に関してだが、メルカリ除きで国内は上昇、海外は下降となった背景を聞かせてほしい。
また、コロナ影響下、今期の方向感を教えてほしい。


西岡:
 まず、日本国内関しては決算説明の中でも触れた通り、従来から制作業務のグループ内製化を強く進
め、売上総利益率を改善させてきた。グループ内製も無限に増えていくわけではなく、高止まりをしてい
るという状況であるが、そういった中で、グループ内の広告会社、制作会社双方が収益率を高め、連結の
売上総利益率を高める傾向が続いている。制作会社でも原価管理などの力をつけているともいえるし、
広告会社では意識した収益率の向上に加えて、一部に報酬体系の変化もある。
 海外では、フィーベースで仕事をしている会社も多く、いわゆる広告事業とも違う形態のビジネスも多

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いので、売上総利益率に着目するというよりは、売上総利益の額に注目している。売上総利益の額が、昨
年度で M&A の押上げ含めて 6%増加というところを見ていただければよいかと思っている。




    コロナ影響によるテレビ広告からウェブへの広告予算移行について、(当社が)得意とするナショナル
    クライアントでより加速することになると思うが、その他にネット広告専業会社よりも競争上優位だと
    考える点はあるか。


水島:
    コロナに関しては“With コロナ”、”After コロナ”等と言われるが、いずれにしてもライフスタイルが細
かく変化していくとみている。この生活者の変化にマーケティング活動がどのように対応していくかが、
今後各企業のマーケティング活動において非常に大きなポイントとなると考えている。そのような環境
では、生活者視点に立った提案に強みを持っている当社グループに競争優位性がでてくると考えている。
実際、After コロナを見据えた情報提供・提案のニーズをいただいており、多くのナショナルクライアン
トと在宅リモート下でも Web 会議等を使って情報交換・提案活動を行っている。マーケティング活動に
おいては、
    「デジタルだけ」
           「テレビだけ」ということだけではなく、店舗・商品の開発やイノベーション
といった、統合的な活動が非常に重要だと考えている。その意味では、多岐にわたるサービスを持ち、統
合マーケティングの実績もある当社グループが競争力を持っていると考えている。社会全体でコロナ影
響を大きく受けている状況であるが、日本の各企業に貢献していきたいと考えている。




    海外だけでなく国内においても、例えば、コンサルティング会社との競争が厳しくなっていると聞く
     が、現状と対抗策について教えてほしい


水島:
    コンサル業界との競争環境についてということであるが、いろいろ広告キャンペーンでの競合プレゼ
ンに、最近コンサル企業と接する場面が増えてはいる。ただし、まだコンサル企業がマーケティング全体
を請け負うような話は聞いていない。最近はデジタル・トランスフォーメーション含め企業活動の大き
な変革期ということであるので、そういう領域からコンサルとして入り、その中で当社がマーケティン
グを担当するという組み合わせが増えてきているというのが最近の状況である。
    我々としては、本業である広告周辺については、クリエイティビティの強化を第一に掲げており、アウ
トプット・エグゼキューションという面では長年培ってきたクリエイティビティや、多くのメンバーの
アウトプットに自信を持っている。本業においては絶対に負けてはいけないと一層強化し対抗している
ほか、新しい提案ができるように、川上の領域、システムの領域での体制を強化、アライアンスチームの
組成、新会社設立などの体制強化を行っている状況である。


                                                      以   上

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