2372 アイロムG 2019-12-11 14:00:00
新規ゲノム編集技術による遺伝子改変キット「GenoTune(TM)」販売開始のお知らせ [pdf]

                                                2019 年 12 月 11 日
 各   位

                                会 社 名     株式会社アイロムグループ
                                代 表 者 名   代表取締役社長 森 豊隆
                                (コード番号     2372 東証第一部)
                                問 合 せ 先
                                役     職   取締役 社長室担当
                                氏     名   小島 修一
                                電     話   03-3264-3148

            新規ゲノム編集技術による遺伝子改変キット
              「GenoTuneTM」販売開始のお知らせ

 当社の 100%子会社である株式会社 ID ファーマ(以下、「ID ファーマ」という)は、同社が開
発した新規の安全・精密なゲノム編集技術を用いた遺伝子改変キット「GenoTuneTM」(ジェノチュ
ーン、以下「GenoTune」という)の販売を開始いたしますので、下記のとおりお知らせいたします。
本技術については、厚生労働省が主催するジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット 2019
(JHVS2019、※1)にてプレゼンテーションを行い、ベンチャー・アワードを受賞しております。

                           記

1.GenoTune および新規ゲノム編集技術について
 GenoTune に用いられているゲノム編集技術は、2019 年3月 27 日付「CRISPR-Cas9法の課題
を克服する安全なゲノム編集法の新規技術開発のお知らせ」において開示した、ID ファーマが開発
した新規の安全・精密なゲノム編集技術(以下、「本新規ゲノム編集技術」という)であります。
 GenoTune は、染色体を切断するのではなく、ドナープラスミドを切断し、デザイン DNA に置
換することが特徴(※2)です。
 ゲノム編集技術は、遺伝性疾患の原因遺伝子の変異を遺伝子配列レベルで正常型に修復すること
によって、遺伝性疾患を根本的に治療する基盤技術であるとみなされており、世界的に技術開発が
進められています。その中で最も盛んに用いられているのが、CRISPR-Cas9法(※3)を用いた
方法ですが、この方法には染色体に過度な切断を導入してしまう可能性があるという安全上の課題
が指摘されています。GenoTune は、染色体切断ではない方法によりゲノム編集を行うことで、安
全・精密に標的遺伝子を改変することができ、染色体の破壊や遺伝子編集操作で使用するベクター
のランダム挿入などを回避することが可能となります。
 このたび、ID ファーマは、本新規ゲノム編集技術を用いた遺伝子改変キット「GenoTuneTM」を
開発し、12 月 12 日に販売を開始いたします。

2.今後の見通し
 GenoTune については、医学、薬学、農学および分子生物学等において利用されることが期待さ
れます。従来技術よりも安全で精密にゲノム編集を行うことにより、遺伝子の変異に起因する遺伝
性疾患の遺伝子修復治療法の開発、アレルゲン物質を除去した農作物および畜産酪農動物の作出、
遺伝子レベルでのドメイン機能解析等、皆様が安心・安全に使用可能なゲノム編集製品の創出に寄
与してまいります。

3.業績に与える影響
 本製品発売による 2020 年3月期の業績への影響は軽微であり、業績予想に変更はありません。
具体的な販売件数が確定し、当期の業績予想に変更が生じる場合には、速やかにお知らせいたしま
す。


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※1.JHVS2019 およびベンチャー・アワードについて
 JHVS2019 は、アカデミア等で発見された優れたシーズの実用化を
促進し、医療系ベンチャーを育てる好循環(エコシステム)の確立を
図るための施策に取り組む厚生労働省が、その施策を加速させるため
に開催されました。(開催期間:2019 年 10 月 9 日〜11 日)
 サミットでは医療系ベンチャーがブースの出展やプレゼンテーショ
ン等を行うことにより、大手企業、金融機関、研究機関等のキーパー
ソンとのマッチングやネットワーキングを促進し、実用化に向けたス
テップアップの場となることが期待されています。
 ID ファーマは、出展した 100 社を超える 企業の中から将来有望なベ
ンチャー企業として「ベンチャー・アワード」を受賞し、厚生労働省
より表彰されました。

※2.GenoTune の特徴
 ① 本新規ゲノム編集技術では、ヒトゲノムには存在しない特定の短鎖 DNA 配列「I-SceI 認識配
   列」を、あらかじめ正常型遺伝子配列を運ぶドナープラスミド(※4)に挿入し、遺伝子導
   入時に、I-SceI 酵素を用いて、ドナープラスミド上の「I-SceI 認識配列」のみを切断し、正
   常型遺伝子配列をゲノムに導入する方法であるため、従来のゲノム編集法でみられるような
   過度な染色体切断が起こりません。
 ② 本新規ゲノム編集技術では、染色体上の変異型遺伝子配列を、正常型に置換することによっ
   て修復しますが、修復後、ドナープラスミドの骨格部分が染色体に残らないように工夫して
   います(置換式遺伝子修復法)。また、I-SceI 酵素は、その遺伝子を ID ファーマの基盤技術
   であるセンダイウイルスベクター(※5)に搭載して発現し、発現後にはセンダイウイルス
   ベクターとともに細胞から消えますので細胞内に留まることはありません。
                            本製品に関するお問い合わせ先
                    株式会社 ID ファーマ
                    TEL : 029-877-5155
                    担当 : 原 勇 (isamu-hara@idpharma.jp )


※3.CRISPR-Cas9法
  CRISPR-Cas 9 ( clustered regularly interspaced short palindromic repeats / CRISPR
associated proteins9)とは、ゲノム DNA 配列の特定の場所を切断して、ノックアウト等の遺伝
子改変ができる遺伝子編集技術です。同技術はその高効率性から、現在多くの生物種におけるゲ
ノム編集に広く利用されていますが、染色体に過度な切断を導入してしまう可能性があるという安
全上の課題が指摘されています。

※4.ドナープラスミド
 染色体上の変異遺伝子と相同な正常型遺伝子配列が挿入されており、ゲノム編集等を行う際に、
正常型遺伝子をゲノムに運び込むために使用するプラスミドです。

※5.センダイウイルスベクター
 センダイウイルスベクターは、ID ファーマが実用化したベクター技術です。センダイウイルスの
骨格を利用した本ベクターは動物細胞全般に高い効率で細胞に感染し、搭載遺伝子を強く発現する
ことができます。また、RNA 型のウイルスベクターであり、細胞の核内に取り込まれないので、染
色体を傷つけることがありません。さらに、細胞内に長くとどまることなく消失する安全なベクタ
ーであります。

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