2372 アイロムG 2019-03-27 16:00:00
CRISPR-Cas9法の課題を克服する安全なゲノム編集法の新規技術開発のお知らせ [pdf]

                                                 平成 31 年3月 27 日
 各   位

                              会 社 名     株式会社アイロムグループ
                              代 表 者 名   代表取締役社長 森 豊隆
                              (コード番号    2372 東証第一部)
                              問 合 せ 先
                              役     職   執行役員
                              氏     名   小島 修一
                              電     話   03-3264-3148



            CRISPR-Cas9法の課題を克服する
         安全なゲノム編集法の新規技術開発のお知らせ

  当社の 100%子会社である株式会社 ID ファーマ(以下、「ID ファーマ」という)は、CRISPR-
Cas9 法の課題を克服する安全なゲノム編集技術を開発し、平成 31 年3月 21 日に神戸市で開催され
た日本再生医療学会総会で発表いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。

                          記

1.新規の安全なゲノム編集技術の概要
 遺伝子修復技術は、遺伝性疾患の原因遺伝子の変異を遺伝子配列レベルで正常型に修復すること
によって、遺伝性疾患を根本的に治療する基盤技術であるとみなされており、現在世界的に技術開
発が進められています。その中で最も盛んに用いられているのが、CRISPR-Cas9法(※1)を用い
た方法ですが、この方法には染色体に過度な切断を導入してしまう可能性があるという安全上の課
題が指摘されています。
 ID ファーマが開発したゲノム編集技術は、同社の基盤技術であるセンダイウイルスベクター(※
2)を用いた方法であり、①過度な染色体切断を抑える、②遺伝子修復操作で使用したベクターを
細胞内に残さない、という“ゲノムに優しい技術“です。
 ID ファーマは本技術の将来的な臨床適用を目的にさらなる研究を進めてまいります。また、アカ
デミアや企業等との共同研究等により、一日でも早い実用化を目指してまいります。

2.業績に与える影響
 本技術の新規開発による平成 31 年3月期(平成 30 年4月1日~平成 31 年3月 31 日)の業績へ
の影響は軽微と見込んでおります。また、当期の業績予想に変更はありませんが、変更が生じる場
合は、速やかにお知らせいたします。



【参考】新規の安全なゲノム編集技術の特徴
 ① 本ゲノム編集技術では、ヒトゲノムには存在しない特定の短鎖 DNA 配列「I-SceI 認識配列」
   を、あらかじめ正常型遺伝子配列を運ぶドナープラスミド(※3)に挿入し、遺伝子導入時
   に、I-SceI 酵素を用いて、ドナープラスミド上の「I-SceI 認識配列」のみを切断し、正常型
   遺伝子配列をゲノムに導入する方法で、従来のゲノム編集法でみられるような過度な染色体
   切断は起こりません。
 ② 本ゲノム編集技術では、染色体上の変異型の遺伝子配列を正常型に修復しますが、修復後、
   ドナープラスミドの骨格部分が染色体に残らないように工夫しています。また、I-SceI 酵素
     は、その遺伝子をセンダイウイルスベクターに搭載して発現するので、発現後にはセンダイ
     ウイルスベクターとともに細胞から消えますので細胞内に留まることはありません。

     本技術がさまざまな分野、特に、遺伝子の変異に起因する遺伝性疾患の再生医療や細胞療法
     の分野で用いられ、従来技術よりも安全で確実なゲノム編集が行われることによって、遺伝
     性疾患治療の早期実現に向けて、研究開発等が進んでいくことが期待されます。

※1 CRISPR-Cas9法
 CRISPR-Cas9 ( clustered regularly interspaced short palindromic repeats / CRISPR
 associated proteins9)とは、DNA を切断してゲノム配列の任意の場所の切断、削除、置換、
 挿入等ができる遺伝子編集技術です。同技術はその高効率性から、現在あらゆる生物の細胞に
 おけるゲノム編集に広く利用されていますが、染色体に過度な切断を導入してしまう可能性が
 あるという安全上の課題が指摘されています。

※2 センダイウイルスベクター
 センダイウイルスベクターは、ID ファーマが実用化したベクター技術です。センダイウイルス
 の骨格を利用した本ベクターは動物細胞全般に高い効率で細胞に感染し、搭載遺伝子を強く発現
 することができます。また、RNA 型のウイルスベクターであり、細胞の核内に取り込まれないの
 で、染色体を傷つけることがありません。さらに、細胞内に長くとどまることなく消失する安全
 なベクターであり、弊社の iPS 細胞作製キット CytoTuneⓇ-iPS に用いられ、現在、全世界で多
 くの企業やアカデミアの研究開発に使用されています。

※3 ドナープラスミド
 染色体上の変異遺伝子と相同な正常型遺伝子配列が挿入されており、遺伝子編集等を行う際に、
 正常型遺伝子をゲノムに運び込むために使用するプラスミドです。

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