2191 J-テラ 2020-10-23 13:10:00
学校法人麻布獣医学園 麻布大学と共同研究契約を締結 [pdf]
2020 年 10 月 23 日
各 位
会 社 名 テ ラ 株 式 会 社
代表者名 代 表 取 締 役 社 長 平 智 之
(コード番号: 2191)
問合せ先 執行役員 / 管理本部長 玉 村 陽 一
(電話:03-5937-2111)
学校法人麻布獣医学園 麻布大学と共同研究契約を締結
—自然発症のがんをターゲットとした PD-1Low 腫瘍浸潤リンパ球療法の共同開発―
当社は、2020 年 9 月 14 日(月曜)開催の取締役会において、学校法人麻布獣医学園 麻布大学1(所在地:
)との間で、免疫チェックポイント PD12の発現を抑制する培養法、及び、
神奈川県相模原市、以下「同大学」
腫瘍浸潤リンパ球療法の開発のための基礎研究及び前臨床研究に係る共同研究契約3(以下、
「本契約」
)を締
結することを決議し、10 月 22 日に契約を締結しましたので、お知らせ致します。なお、当社は、本契約に基
づき、関連研究費の負担等を行います。
今回の共同研究の目的の一つである腫瘍浸潤リンパ球療法(以下、
「TIL 療法」
)は、養子免疫療法と呼ばれ、
米国国立がん研究所4の Steven A. Rosenberg 博士によって開発された、がん免疫細胞療法です。日本では、
慶應義塾大学医学部のチームが研究開発を行っています5。当社が、すでに日米で研究が行われている TIL 療
法の開発に着手する背景は以下の通りです:
① TIL 療法は、高い腫瘍縮小効果を示す6ため、がん免疫細胞療法の中でも期待されている療法である。
② しかしながら、同療法は、がん組織に浸潤し、患者に特異的ながん抗原をターゲットとしているリン
パ球(以下、TIL)を回収する必要があることから、TIL がない患者には利用できないため、対象となる
患者が限定される。
③ 同療法は IL-27と呼ばれる医薬品との併用療法であるため時間とコストがかかる。
④ 同療法には他人の血液が必要となる。
⑤ 同療法には他の再生医療等製品と比較して煩雑な作業が必要となる。
⑥ TIL が、がんに抑制されると抗がん効果が著しく低減する。
以上のような状況により、同療法は 1990 年代に開発されたにも関わらず、未だに薬事承認されておりませ
ん8。当社と致しましては、同療法の将来性を見込み、上述の課題解決を目的として同大学との研究開発を行
う契約を締結した次第です。
2018 年のノーベル賞受賞者である本庶佑博士の発見した「オプジーボ」はこのがんによる抑制(上記⑥)
を解除するがん免疫療法(以下、
「免疫チェックポイント阻害薬」
)です。しかし、オプジーボが効果を示すた
めにも、TIL が患者の体内に存在していることが前提と考えられています。
当社の樹状細胞ワクチン療法は、体内に TIL を生み出すことができるため、TIL が存在しない患者の方々に
もオプジーボを使用することができます。この結果、TIL を既に持っている患者に対しては、TIL 療法とオプ
ジーボを併用し、TIL が存在していない患者には樹状細胞療法とオプジーボを併用することが現時点での最善
のがん免疫療法になり得ると考えております。一方、医薬品情報9の通り、オプジーボには自己免疫疾患等を
引き起こすリスクがあります。現状では、TIL とオプジーボとの併用が最善でありますが、もし将来的に本研
究開発が進めば、TIL 単独でもオプジーボ併用と同じ効果を期待できる可能性もあります。
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今回、本研究開発のパートナーとして、学校法人麻布獣医学園 麻布大学・獣医学部・生化学研究室及び小
動物外科学研究室を選択した理由は 2 つあります。ひとつは、同研究室が、T 細胞を患者の体の外で処理する
ことにより、がんが T 細胞を抑制しないメカニズムを発見し、特許出願10(以下、
「本技術」
)を行った点です。
もうひとつは、本技術を TIL 等の養子免疫療法に応用でき、免疫チェックポイント阻害薬を併用しなくても、
TIL 療法の効果を高める可能性が期待できる点です。当社は、本技術を高く評価し、2019 年 1 月 29 日に同大
学と共同出願人となり特許権者11となっています。
また、日本でも世界でも、マウスの実験を経て、薬の開発を行っていますが、これはがんを移植することで
作製した人工的なものです。これに対し、獣医学部を持つ同大学の研究室では、自然発症でがんを患ったイヌ
やネコの治療にあたっています。このため、人工的なマウスの実験と異なり、ヒトに近い状態で薬の治療効果
を検証することができます。これは国際的にみても最先端の試みです。当社は、同大学との共同研究を通して、
自然発症でがんを患ったイヌやネコに対する TIL 療法の効果を研究し、人工的にがんを発症させたマウスでは
得られない情報を得られることを期待しております。
同時に同大学との協力は、日本国内の優れた若手研究者をサポートするという意味合いも持っております。
テラは複数の研究員を擁しております。彼らは国内外の大学及び研究所に所属していた経験がありますが、資
金不足により希望の研究を継続することが難しいこともありました。少額資金の準備不足で有望な研究を諦め
る若手研究者が多数存在する可能性があることは、日本にとって大きな損失であると認識しております。この
ような思いから、今回の共同研究も研究費及び特許出願の費用等を当社が負担いたします12。
なお、本件が 2020 年 12 月期の連結業績に与える影響は軽微であり、本共同研究の進展について公表すべき
事項が生じた場合には、速やかにそれを開示いたします。
以上
1 学校法人麻布獣医学園 麻布大学は、2020 年に創設 130 周年を迎えた獣医系大学として二番目に長い歴史を持つ大学。
獣医学部と生命・環境科学部があり、人・動物・環境に関する教育・研究を実施している。
2 PD1 は Programmed cell death 1 の略語であり、免疫細胞上の免疫チェックポイント分子である。PD1 と一部のがん細
胞等に多く発現する PD-L1 及び PD-L2 とが結合することで、免疫細胞によるがん細胞ヘの攻撃が回避されてしまう。
3 共同研究契約: 「イヌでの TIL 治療の確立」及び、 「糖脂質 GlcCer による T 細胞制御機構の解明」
4 National Cancer Institute, https://www.cancer.gov/
5 UMIN000011431「進行期悪性黒色腫に対する骨髄非破壊的前処置および低用量 IL-2 位併用の短期培養抗腫瘍自己リン
パ球輸注療法の feasibility 試験」 (UMIN での慶大の登録情報)
6 子宮頸癌における腫瘍縮小効果(Objective tumor regression)が 28%、悪性黒色腫における完全緩解(Complete
regression)が 24%。 (以下、出所)
Goff S. L.et al.: Journal of Clinical Oncology 2016; 34: 2389-2397
Stevanović S. et al.: Clinical Cancer Research 2019; 25: 1486-143
7 一般に、細胞が他の細胞に情報を伝えるために使用しているタンパク質をサイトカインと呼んでいます。この中でも白
血球と白血球の間で働いているタンパク質をインターロイキンと呼びますが、IL-2 はインターロイキンの仲間で免疫に関
わっていることから、人工的に製造した IL-2 は、がん免疫療法等に利用されてきました。IL-2 は T 細胞を増やし、元気
にする働きがあることから主に T 細胞を利用している TIL 療法にも併用薬として使用されています。
8 NCT03108495「Phase 2 clinical trial for recurrent, metastatic or persistent cervical carcinoma(子宮頸癌) (C-145-
04) NCT02360579「Phase 2 clinical trial, enrolling patients that have been diagnosed with Stage IIIc or IV
」;
metastatic melanoma(悪性黒色腫) (C-144-01)(米国で行われている TIL 治験の情報)
」
9 小野薬品工業株式会社 医薬品情報 添付文書情報 2020 年 2 月改訂(第 1 版)ページ3~5
(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067807.pdf)
10 PCT/JP2019/041627 「グルコシルセラミド合成酵素遺伝子欠損 T 細胞の使用およびその治療的利用」
11 WO/2020/085414 「出願人 学校法人麻布獣医学園及びテラ株式会社;出願日 2019 年 10 月 24 日」 (出願情報)
12 同様の若手研究者へのサポートとして、2019 年 12 月 9 日付公表の学校法人総持学園・鶴見大学との共同研究、2020
年 8 月 11 日付公表の国立大学法人旭川医科大学の「ステルスがん抗原」等の例があります。
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