1960 サンテック 2020-11-26 16:00:00
当社従業員による業務上横領に係わる社内調査結果、再発防止策の策定及び関係者処分に関するお知らせ [pdf]

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株式会社サンテック取締役会御中




           調査報告書




        2020 年 11 月 26 日

        株式会社サンテック

           調査委員会
                       目次
第1.調査の概要
1. 調査委員会設置の経緯
2. 調査目的
3. 調査委員会の構成
4. 調査の対象
5. 不正行為の概要
6. 調査手続の概要


第2.調査結果
1. 流用された金額
2. 当社損失計上額
3. 債権回収可能性
4. 出資金入金及び出金(流用)
5. 銀行資料から判明した資金流用状況
6. 不正行為がなぜ発生したのか(不正行為がなぜ可能であったか)原因分析
 (1)出資金請求・精算書に対する検証
 (2)現場の預金・出納管理体制
 (3)発覚遅延
7. 類似現場に対する調査報告


第3.要因分析
1.属人的要因
 (1)動機
 (2)機会
 (3)正当化
2.制度的・組織的要因
 (1)管理者による十分な検証不足
 (2)事務管理に対する重要性の意識不足


第4.再発防止策


第5.まとめ




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第1.調査の概要
1. 調査委員会設置の経緯
 株式会社サンテック(以下「当社」という。)は、竣工引渡し済の電気工事現場(以下、「当該工事現
場」という。)の最終精算が遅延していることから 当該工事現場を担当する従業員(以下、「代人」とい
う。)に連絡し、事業所に出社するよう指示したが、代人は出社することもなく連絡が途絶えた。当社は
直ちに当該工事現場の調査を実施したところ、書類の改ざんによる横領の疑いが発覚した。
 調査の結果、当該工事現場に係る JV 出資金の名目で多数回にわたり JV 口座に資金を振り込ま
せ、その JV 口座から多数回にわたり、不当に現金約 134 百万円を支出していた事実が判明した。
 当社は以上の結果を受け、コンプライアンス担当役員である八幡取締役を調査委員長に、下記を
調査目的として、調査委員会を設置した。


2. 調査目的
 調査委員会の調査(以下「本件調査」という。)の目的は、以下のとおり。
(1)当該不正事実の全容解明
(2)類似事案の有無に関する調査
(3)上記を踏まえた再発防止策の検討


3. 調査委員会の構成
 調査委員会の構成は以下のとおり。
  委員長      八幡 信孝 (取締役 コンプライアンス担当)
  副委員長     舩戸 文英 (執行役員管理ユニット長)
  委員       佐藤 正臣 (社外取締役)
  委員       関口 金男 (監査室長)
  委員       河野 直      (執行役員企画ユニット長)
  委員       井出崎 功 (取締役 上席執行役員 中国・四国地区担当支配人)
                  (再発防止策限定)
  なお、調査及びその評価の客観性を担保するため、佐藤社外取締役を委員とした。


4. 調査の対象
  広島地区 電線張替工事 1 件
  JV構成     (幹事) 当社     (構成員)他 1 社


5. 不正行為の概要
   当社JV現場所長という立場にあった代人が、JV 構成員に対し、当該工事において実際には
  必要の無い出資金の資金請求をし、また預金通帳のコピーを偽造し残高を偽りながら、
  134,090,787 円を私的に流用した。




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6. 調査手続の概要
 調査実施期間           2020 年7月 20 日から 2020 年 10 月 23 日
 調査手続の概要           関係資料による状況把握・実態解明
                   関係者合計9名のヒアリング実施(なお、ヒアリングは面談形式で実施した。)


第2.調査結果
1. 流用された金額
 一連の不正行為によって流用された金額の合計額は 134,090,787 円であり、内訳は以下のとおり。
                                                 2020 年 6 月 30 日時点   単位:円
                                     帳簿残高            実残高                  差引
  ・ JV 銀行口座残高                      130,660,665          665      130,660,000
  ・ JV手許現金                             654,059            0           654,059
  ・ 手許現金(工事仮払金)                      2,776,728            0          2,776,728
   合      計                        134,091,452          665      134,090,787


2. 当社損失計上額
 第 74 期第1四半期決算において 営業外費用 134,000,000 円を計上した。


3. 債権回収可能性
・代人については、山口県警より連絡があり、車中での死亡が報告された。
相続人は現在、相続放棄手続き中にて相続人からの債権回収は困難。
・身元保証人(実母・友人)宛、面談申し入れし、面談済み。保証債務履行を交渉中。
・東京地裁宛仮差押えの申立を行ったが、仮差押の対象とした代人名義の銀行口座は、仮差押時点
では既に本人死亡により相続財産となっていたことが後に判明した。また当該口座残高が少額であ
るため、今後回収のために必要となるであろう相続財産管理人選任手続に要する費用のほうが高く、
費用倒れとなるおそれが高いため、顧問弁護士からは仮差押さえを解除し、早期に供託金取り戻し
手続きをしたほうが合理的であるとのアドバイスをもらった。そのため仮差押え財産からの回収可能
性は見込めない。
 損害金の回収につき、あらゆる回収策を検討してきたが、代人死亡によりその回収可能性は極めて
低くなっている。


4. 出資金入金及び出金(流用)
  代人が JV 出資企業に出資金請求し、出資金合計 465 百万円を JV 企業から出資させ、累計
 133.66 百万円を 16 回に渡り不正に引き出した。


5. 銀行資料から判明した資金流用状況
   調査期間       2019 年 7 月 2 日~2020 年 8 月 11 日、約 1 年 1 か月
   調査結果       代人は上記不正に引き出した資金を代人名義の個人銀行口座に入金し、その口
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         座を利用してギャンブルに費消したことが確認された。
         上記 JV 口座から不正に引き出した金員のほとんどがそのまま損失となり、最終の
         上記個人口座に残っていた残高は 7,966 円であった。


6. 不正行為がなぜ発生したのか(不正行為がなぜ可能であったか)原因分析
 本件不正行為に関する直接的な原因は以下の 2 つの原因に集約することができる。
(1)出資金請求・精算書に対する検証
 ・当社及びパートナーが出資を行うという JV の形態を巧みに利用して、実際には必要の無い出資
 金の請求を、代人の上席である管理者が十分に検証することなく承認し、請求金額がそのまま JV
 口座に入金されていた。
 ・代人が行った JV 工事に関する各種支払いについて、代人の作成した精算書及び証票書類を管
 理者が十分検証することなく承認をしていた。
(2)現場の預金・出納管理体制
  代人が多額の現預金の出納・管理を行っているという状況に対して、管理者による検証が不十
 分であったこと等から、長期間、JV 口座預金残高報告の不正を発見することが出来ず、多数回に
 わたる代人の個人口座への資金流用を阻止することが出来なかった。


以下 詳細に報告する。
① 出資金を請求する「支払依頼書」の検証
  2019 年 4 月からの「支払依頼書」を確認したところ、JVからの出資金請求に際して、以下のことが
判明した。
  代人が作成した出資金請求の書類について、その妥当性を検証し承認を行う代人の上席である
 技術工務グループのグループマネージャー(GM)及び工事部長の承認印は押印されていたが、そ
 れら管理者は適切な検証を行うことなく、その出資金要求を承認していた。その結果、帳簿上で精
 算すればよい経費分に対する出資金までも代人の請求通り JV 口座に入金されていた。


② 出資金請求に対する承認体制(JV 事務局サイド)
  次に JV の出資金請求に対する当社側の JV 事務局としての対応を検証した。
 当JVの出資金請求手続きにおいて必要な出資金請求書に関して、事務局並びに運営委員長に
 よる検証が不十分であったこと等から、実際には必要の無い出資金の請求を是正することができな
 かった。


③ 精算チェックの検証
  当 JV の支払いの流れを検証した。
 工事に係る各種支払の流れは、代人が支払した後、証票書類(領収書その他証憑明細書)をJV精
 算書とともに支社に送り、工事部グループマネージャー、技術工務グループマネージャー、工事部
 長(以下、これらを「管理者等」という)がチェックするフローとなっていた。しかしながら、これらの者
 は、代人作成の証票書類(領収書その他証憑明細書)を承認しており、検証が不足していた。
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④ 現場代理人の現預金の出納・管理体制
  当JVは出資金方式を採用しており、スポンサーである当社とパートナー企業で共同のJV名義の
 口座を作成、当該口座に出資金を出資し、その口座から資材料、労務費、現場経費などの支払い
 を行なっていた。
  代人が現場預金通帳と印鑑を保持し、銀行口座からの出金・振込と出納簿の記帳等の事務処理
 までを実質的に一人で行なう状態であったことに対して、支社として適正かつ十分な管理が行えて
 いなかったため、不正な出金(振込)を行ない、帳簿に虚偽記載しその不正を隠蔽することを可能な
 らしめた。
 結果として、残高報告の不正を長期間発見できなかったとともに、16 回にわたる不正引き出しを阻
 止することができなかった。


⑤ 通帳の偽造・残高証明書の検証未実行
  毎月現場から精算書とともに送られてくる現金残高確認書、預金残高確認書、現場出納帳及び
 預金通帳のコピーについて、管理者等が照合・検証していた。
  しかし、代人は JV 口座からの不正な出金を隠すため、通帳コピーを精巧に真似て偽造していた
 ため、管理者等はそれを見抜けなかった。
  第 1 四半期、第2四半期、第3四半期は、預金通帳コピーを広島支社管理部にて会計数値との
 一致を確認後本社に送付し、本社管理部会計グループにて会計数値と預金通帳残高を照合して
 いるが、広島支社管理部・本社管理部とも通帳コピーが偽造されていることを見抜けなかった。
  また、第 4 四半期においては、銀行残高証明書を取り寄せ、確認することになっていたが、2020
 年3月の当 JV 銀行口座においては、広島支社管理部・本社管理部とも銀行残高証明書による検
 証が漏れていた。なお、後記記載の通り、本件発覚後改めて他の現場の残高証明書の不備の有無
 について検証を行ったが、他現場での不備は発見されなかった。


(3)発覚遅延
  本件不正行為が長期にわたり発見できなかったのは、外部への支払いは滞りなく実行予算通り
 に支払われており、支払先からのクレームはなかったこと、及び横領された該当資金は帳簿上で精
 算できる経費充当分で現金支出が不要であったことが、遅延の原因であると考えられる。


7. 類似現場に対する調査報告
  本件不正行為発覚後、改めて類似現場に対する以下調査を全社ベースで行った。
(1)代人が現場代人を務めた現場の 2017 年 7 月(受注時)から 2020 年 6 月までの工事精算書の収
  集及びチェック
  ・対象 5 件は領収書及び請求書等に改ざんや捏造の兆候が見られないため、問題は無かった。
(2)2020 年 6 月末時点で銀行残高証明書を取得した対象現場 34 件
  ・対象 34 件は帳簿残高と銀行残高証明書に差異は無いため、問題は無かった。
(3)2020 年 3 月末時点で銀行残高証明書を取得した対象現場 4 件
                                                      5
  ・対象 4 件は帳簿残高と銀行残高証明書に差異は無いため、問題は無かった。
(4)2020 年 6 月末時点で現金 50 万円以上の現金実査した現場対象 5 件
  ・対象 5 件は帳簿残高と現金有り高に差異は無いため、問題は無かった。


第3.要因分析
1. 属人的要因
(1)動機
  既述の通り、当 JV 口座から引き出された資金は、ほぼ全額がギャンブルにつぎ込まれており、代
 人の個人的な遊興費流用であったと認められる。
(2)機会
  代人は、一人で現場預金通帳及び印鑑を保有し、出納・帳簿作成・会計報告まで実質的に一人
 で行っており、帳簿の改ざん及び通帳コピーの偽造により、当社の監視が及ばないところでの不正
 が可能な環境にあった。
(3)正当化
  代人死亡により定かではないが、遊興資金を一時的に借りているだけであり、いずれギャンブル
 で取り返して返済すればよい、ばれなければよいだろう、という身勝手な論理で正当化し、流用に及
 んだと推察される。


2. 制度的・組織的要因
(1)管理者による十分な検証不足
   代人から提出された JV 出資金請求・精算書に対して、管理者による十分な検証がなされず、代
 人に不正の機会を与え、または助長させ、かつ長期にわたるその不正を発見できず、損害の拡大
 を招いた。
(2)事務管理に対する重要性の意識不足
  広島支社電力工事部において、「事務と工事が会社の両輪である」という事務管理に対する重要
 性の意識が十分に浸透していなかった。また、必要な書類に決裁者の印鑑があればよいという形式
 主義なところがあった。


第4.再発防止策
 当座の対策として、以下の再発防止策を実行した。
 ・2020 年 9 月1日付で広島電力工事部の組織を変更し、モニタリング機能、牽制機能を強化した体
 制にした。
 ・当社の全ての現場において、預金通帳の現物チェック、銀行残高証明書とのチェックの頻度、回
 数を増やし、預金管理のモニタリング機能を強化した。


第5.まとめ
 本件不正行為は 代人一人による特殊な事案であり、他類似案件を調査したところ他に不審な事
案は見当たらず、内部統制の仕組みに問題はなかったと判断する。
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 しかしながら、広島支社電力工事部管理者において内部統制の仕組みを有効に機能させず、会社
に損失を招いた点は誠に遺憾である。調査委員会として、現在構築している内部統制の仕組みをより
有効に機能するものにするために、上記再発防止策を講じるだけでなく、それを永続的に機能させる
ため、以下提言する。


 ・事務規程の充実
  調査を進める過程で、事務規程による明文化が不十分と評価した箇所があった。事務の標準化
  が出来ていないところが今回の不祥事の遠因とも言え、今後事務規程の更なる充実を求める。
 ・コンプライアンス教育の充実
  組織を強化、規程の充実をしても、最後はそれを運用する人が内部統制の核心を理解し、それ
  を行動に移す必要がある。今後毎月発刊している社内啓蒙紙「SEC news」でコンプライアンスを
  全社員に啓蒙するだけでなく(すでに本不祥事案件は記事とし再発防止徹底済)、従業員一人
  一人にその自覚を促すよう半期に 1 回開催される全国所長会議や管理セミナーはもちろんのこ
  と、あらゆる社内会議において内部統制の重要性を広めるよう要望する。
 ・業務監査の充実
  内部統制の仕組み自体に問題はなかったと判断したものの、一部所において日常的なモニタリ
  ングが機能せず不正事件が発生してしまったことを踏まえると、日常的モニタリングの不備を発見
  するための独立的モニタリングの更なる強化が必要であると考える。監査室によって行なわれて
  いる業務監査及び内部統制監査における監査内容を見直し、事後監査にとどまらず、監査によ
  る牽制機能及び事務指導を強化することを要望する。
                                              以上




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