1925 大和ハウス 2019-06-18 15:00:00
外部調査委員会による最終報告に関するお知らせ [pdf]

                                                          2019 年 6 月 18 日


各     位

                                          会 社 名 大和ハウス工業株式会社
                                                  (コード番号:1925 東証第一部)
                                          代 表 者 代表取締役社長 芳井敬一
                                          問合せ先 執行役員広報企画室長 中尾剛文
                                                  (TEL.   06‐6342‐1381)



            外部調査委員会による最終報告に関するお知らせ


 弊社は、2019 年 4 月 12 日公表の「戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等
について」を受け、4 月 26 日、外部調査委員会を設置し、事実関係の調査、原因分析を行ってまい
りました。5 月 31 日には中間報告を公表し、それまでの間の調査状況ならびに不適合の原因・背景
をご報告させていただきました。
 そして、6 月 17 日、弊社は、外部調査委員会より「調査報告書(以下、最終報告書)」を受領し、
本日(6 月 18 日)、国土交通省へご報告しましたので、お知らせいたします。
 調査結果の詳細につきましては、最終報告書を添付いたしますので、ご参照ください。
 なお、弊社の再発防止策等につきましては、本日(6 月 18 日)付で発表いたしました「戸建
住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等に関する原因究明・再発防止策」をご覧
ください。
 このたびは、弊社の建築基準に関する不適合等により、お客様ならびに関係者の皆様には多大
なるご心配とご迷惑をおかけすることとなり、心より深くお詫び申し上げます。



                                     記



■大和ハウス工業株式会社 外部調査委員会による「調査報告書」について(概要)
 1.本件調査の概要
    (1)外部調査委員会の調査期間
      2019 年 4 月 26 日から 6 月 17 日
 (2)建築基準に関する不適合等の調査の対象期間
      2001 年 1 月 1 日から 2019 年 3 月 15 日
 (3)調査目的
      型式適合認定を取得した仕様に合致しないという不備(①独立基礎不適合問題、②L 字
     型受柱不適合問題)ならびに③防火基準不適合問題についての事実関係の調査、原因
     分析及び再発防止に向けた提言等を行うことである。




                                    ‐1‐
(4)調査方法
  当委員会では大和ハウス工業から受領した設計要項、図面、確認申請図書、型式適合図書、
 型式適合認定チェックリスト、社内規程、社内通達等の関係書類の精査を行った。
  また、当時型式適合認定に関与していた技術本部の役職員(退職者を含む)、本件不備に
 関与していた各事業所の設計責任者及び設計者(退職者を含む)を中心に 144 名に対して、
 調査票を送付し、当時の設計業務の実情及び「本件」不備の発生の原因等調査を行った。
  さらに、上記調査票に回答した者及び技術本部の役職員(退職者を含む)のうち 28 名に
 対しては面談のうえ、ヒアリングを実施した。
  加えて、当委員会の委員において、大和ハウス工業の生産業務センターを訪問のうえ、現在
 及び当時の設計業務、設計業務フロー等についての現地調査も行った。


2.調査により確認された事実関係
  2000 年 6 月 1 日より改正建築基準法が施行され、型式適合認定・型式部材等製造者認証
 制度(予め型式適合認定・型式部材等製造者認証制度による認定・認証を受けている場合は、
 建築確認において、一定の事項についての審査が省略される制度)が導入された。もっとも、
 型式適合認定制度を利用する場合においては、型式適合認定を受けている仕様しか用いること
 ができず、その仕様から外れる場合には一般的な建築確認申請を行う必要があった。
  大和ハウス工業が型式適合認定の運用を開始したのは、2000 年 12 月であるが、その当時に
 おいて、型式適合認定制度に基づく認定・認証を受ける都度、本社から各事業所に対して社内
 通達によりその内容が周知され、また各事業所の設計責任者向けの型式適合認定制度に関する
 社内研修が実施されているほか、個々の物件の認定・認証範囲を確認するためのチェックリス
 トも配布されるなど、適法に運用させようとしていたことが認められる。


(1)独立基礎不適合問題
  ①各事業所の設計者における独立基礎の取扱い
    型式適合認定制度導入以前から、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎も便宜上使用
   されていた。各事業所の設計責任者は、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎が型式適合
   認定を取得していると誤信したまま建築確認申請を行っていた。
    誤信の理由として、型式適合認定制度を導入する以前から高さ 620mm 以外の高さの
   独立基礎が現場の状況に応じて採用・設計されていたことから、商品開発部門において、
   それができなくなるような型式適合認定の取り方をしているとは考えられなかったこと、
   技術本部から提示されたチェックリストにおいては、独立基礎のベース幅をチェックす
   るのみで、独立基礎の高さに制限が設けられているということは思いも及ばなかったこ
   と、独立基礎の上端のレベルと布基礎の上端のレベルを一致させるという基本的な設計
   方法を踏まえた型式適合認定の申請が行われているものと信じていたこと、が認められ
   る。




                     ‐2‐
  ②終息と当該問題を生じた棟数
     独立基礎不適合問題は、戸建住宅については 2013 年 12 月 27 日、賃貸共同住宅につ
   いては 2015 年 9 月 30 日に終息した。
     また、当該問題を生じた棟数は、戸建住宅においては、調査対象母数 180,130 棟に対
   して 2,153 棟。賃貸共同住宅においては、調査対象母数 79,732 棟に対して 1,610 棟、合
   計 3,763 棟であった。
  ③大和ハウス工業による再調査
    大和ハウス工業は、2019 年 4 月 12 日に本件不備が判明したことを公表したが、その
   後、当初の調査で使用した社内の基幹システムから抽出したデータの母数に漏れがあった
   ことが判明し他のデータで補完等したうえで、あらためて図面または現地確認等による
   再調査を行ったが、そのプロセスは、相当性が認められる。
  ④原因
    独立基礎不適合問題の原因として、型式適合認定制度を設計者全員に理解させるための
   効果的な運用がなされず、また、設計者も独立基礎の設計に際して、大和ハウス工業が同
   制度に基づき取得した仕様を正確に理解しないまま設計したという法令遵守体制の運用
   上の問題、事業所と本社(商品開発部門及び技術本部)とのコミュニケーションの不足、
   社内の標準的な設計ルール(設計要項)から外れた場合でも外見上は型式適合認定制度を
   利用する建物の設計図書として完成する設計図書作成のプロセスの問題、が挙げられる。


(2)L 字型受柱不適合問題
  ①各事業所の設計者における L 字型受柱の取扱い
     型式適合認定制度を導入する以前から、同社の関東エリア(特に東京都)において、
                                        2
   賃貸共同住宅の居住空間を少しでも多くとりたいという顧客の要望に応えるため、 階外
   部片廊下を支える独立柱の代わりに L 字型受柱を採用することがあった。
     関東エリアの事業所の設計者は、型式適合認定制度導入以前から採用していた L 字型
   受柱については型式適合認定を取得しているものと誤信し、建築確認申請を行っていた。
     誤信の理由としては、型式適合認定制度導入前から関東エリアでは L 字型受柱が一般
   的に採用されていたことから、商品開発部門において、それができなくなるような型式
   適合認定の取り方をしているとは考えられなかったこと、関東エリア特有の仕様のため、
   社内の標準的な設計ルール(設計要項)には記載されていないだけで、型式適合認定は
   取得していると信じていたこと等が認められる。
  ②商品開発部門における L 字型受柱の取扱い
    関東エリアの設計者有志によるプロジェクトへの参加を通じて、関東エリアにおいて
   L 字型受柱のニーズを知るに至ったものの、L 字型受柱の建築確認申請が型式適合認定
   制度を利用した建築確認申請が行われていることの認識を欠いていた。




                          ‐3‐
③設計図書作成のプロセス(チェック体制)
  L 字型受柱については、そもそも設計要項から外れた部材であって同社の標準仕様品で
 はなく、各事業所において、工場で部材生産可能となるような L 字型受柱のデータを入力
 した図面を作成し、生産業務センターに対し、2 階外部片廊下部分を支える受柱の仕様を
 L 字型受柱とするという指示を行っていた。その後、生産業務センターにおいて、標準
 仕様から外れた部材に自動的に「*」の記号が付くが、更に、設計要項に定める部材では
 ないものとして「#」の記号を付加して、工場での部材製作に必要となる情報を登録して
 いた。
  生産業務センターの担当者は、建築確認申請をなすべき者が事業所の設計責任者等で
 あったことから、当該設計が一般的な建築確認申請をすべき建物であることまで思いが
 至らず、事業所に対し、当該設計は一般的な建築確認申請をすべき物件である等の連絡又
 は助言することはなかった。このように、設計図書作成のプロセスにおいて、チェック機
 能が働いていなかった。
④終息と当該問題を生じた棟数
  L 字型受柱不適合問題は、2007 年頃、関東エリアの事業所設計責任者が、指定確認検査
 機関より、L 字型受柱の型式適合認定取得について疑問を呈されたため、商品開発部門に
 問い合わせたところ、型式適合認定を取得していない事実が判明し、その後、関東エリア
 の事業所設計責任者に知られるようになり、2008 年 3 月に終息した。
 また、当該問題を生じた棟数は、調査対象母数 259,862 棟に対して 192 棟であった。
⑤再調査のプロセス
  大和ハウス工業は、2019 年 4 月 12 日に本件不備が判明したことを公表したが、その
 後、当初の調査で使用した社内の基幹システムから抽出したデータの母数に漏れのあった
 ことが判明し他のデータで補完等したうえで、あらためて図面または現地確認等による再
 調査を行ったが、そのプロセスは、相当性が認められる。
⑥原因
  L 字型受柱不適合問題の原因として、型式適合認定制度を設計者全員に理解させるため
 の効果的な運用がなされず、また、設計者もL字型受柱の設計に際して、大和ハウス工業
 が同制度に基づき取得した仕様を正確に理解しないまま設計したという法令遵守体制の
 運用上の問題、事業所と商品開発部門とのコミュニケーションの不足、CAD システムに
 おける仕様制限の意味・重要性を十分に周知できていなかったという設計図書作成のプロ
 セスの問題、が挙げられる。
⑦L 字型受柱不適合問題が一部の設計責任者に認識されていたことについて
  2007 年頃、L 字型受柱の型式適合認定取得していないことを一部の設計責任者が認識
 していたことについては、当時の時代背景や社内制度、自己負罪となる側面が強いことか
 らすれば、道義上は別にして、法的には非難することは難しいと考えられる。また、それ
 を認識した以降は、直ちに適法な建築確認申請手続きに切り替えたと考えられるため、そ
 の限りにおいて自浄作用が働いており、設計責任者の遵法意識が特段低いものとは認めら
 れない。




                    ‐4‐
 (3)防火基準不適合問題
   ①発覚の経緯と原因に係る事実関係
     L 字型受柱不適合問題の調査を進めていた際、2 階外部片廊下を支える受柱に建築基準
    法等の防火基準に不適合のおそれのある建物があることが判明した。
     L 字型受柱を採用した建物については、一般的な建築確認申請を行い、L 字型受柱につ
    いて耐火被覆による防耐火処置を講ずることが建築基準法等の防火基準に照らして必要
    か否かを、指定確認検査機関等の厳重な審査・チェックを受けるべきであったが、型式適
    合認定を取得しているものとして建築確認申請をしたため、その必要な防火に関する審
    査・チェックを経ないまま、建築基準法等の防火基準に不適合のおそれがある建物が建築
    されることとなった。
   ②当該問題を生じた棟数
     防火基準不適合問題を生じていた棟数は 73 棟あり、また、一般的な建築確認申請を
    行ってはいたものの、大和ハウス工業が定めた標準的な仕様からも外れる 4 棟が判明した。
   ③原因
     L 字型受柱不適合問題の原因と同様である。


3.原因分析
 (1)法令遵守体制の運用上の問題
    大和ハウス工業において型式適合認定制度の運用を開始した当時、一応の法令遵守体制を
   構築していたものの、その法令遵守体制の実際の運用において、型式適合認定制度を設計者
   全員に理解させるという大事な目的を達成するための効果的な運用がなされず、また、設計
   者も独立基礎及び L 字型受柱の設計に際して、大和ハウス工業が同制度に基づき取得した仕
   様を正確に理解しないまま設計したことが、本件不備を生じさせた原因の一つである。
 (2)事業所と本社(商品開発部門及び技術本部)のコミュニケーション不足
    事業所と本社のコミュニケーション不足を一つの原因として、本件不備が生じている。
   この点、各事業所の設計者それぞれが建築士資格を有する専門家であるため、有資格者と
   して独立基礎及び L 字型受柱の設計に際して、大和ハウス工業が型式適合認定制度に基づ
   き取得した仕様を正確に理解して設計する必要があったことは当然であるものの、型式適
   合認定制度について全社的な統括をするべき立場にあった当時の技術本部が、型式適合認
   定制度の下における建築基準法等の法令に従った申請手続きなどの法令遵守について周知
   徹底することが出来ずに、結果として個々の設計者に委ねる運用となってしまったこと
   が、主たる原因であり、その責任は大きい。
 (3)設計図書作成のプロセスの問題
    技術本部が各事業所及び生産業務センターに対して、CAD システムにおける仕様制限の
   意味・重要性を十分に連絡・説明できていなかったのではないかと考えられる。
    すなわち、設計図書作成のプロセスにおけるチェック体制を技術本部が周知徹底できて
   いなかったことが、建築基準に関する不適合問題の原因の一つであるということができる。




                      ‐5‐
4.再発防止に向けた提言
 (1)全社的な法令遵守体制の再構築
    建築基準法の改正等に限らず、大和ハウス工業が事業を行う上で遵守しなければならな
   い法律をはじめとする法令(規則等を含む)は数多くある。遵守しなければならない法令
   の内容について、全社隅々に至るまで、徹底的に周知する体制を再構築すべきである。
    本件不備においても、技術本部から各事業所の設計責任者に対する社内通達や研修会は
   行われていたが、研修会に参加した設計責任者は所属する事業所の設計者を集めて型式適
   合認定制度についての勉強会等を開催することを怠る事業所があり、各事業所の設計者に
   型式適合認定制度の具体的内容が周知・徹底されていなかった。
    今回の型式適合認定制度に限らず、大和ハウス工業としては各事業所の設計者の一人
   一人に至るまで、確実に法律及び関連する法令(社内規則も含む)の内容を理解させる
   ための体制を再構築する必要がある。
 (2)双方向の情報伝達機能の強化
    本件不備においては、事業所と本社(技術本部と商品開発部門)とのコミュニケーショ
   ンがあまりにも不足していた。言うまでもないことであるが、事業所と本社が一体となっ
   て、初めて大和ハウス工業の事業が成り立つのであるから、事業所と本社との間のコミュ
   ニケーションが十分に行われることが必要である。
    しかしながら、大和ハウス工業のように巨大な組織になると、意図的にコミュニケー
   ションを図ろうとしないと、自然にコミュニケーションが不足してしまうため、技術本部が
   中心となって、意見交換会や交流会を制度化するなど、情報伝達機能を強化する仕組みを
   導入する必要がある。
 (3)設計図書作成におけるチェック体制の構築
    今回の建築基準に関する不適合問題について、設計図書のシステム上、一見してわから
   ない仕組みになっており、且つ、担当者がその重要性を理解していなかった。
    これらの原因を解消するため、設計図書作成のシステムを改めて構築し直し、チェック
   機能を強化すべきである。
    型式適合認定制度を利用するに際しての社内運用上のグレーゾーンを極力排除し、また
   法令に違反することがないかのチェック体制はダブルチェック体制にする等、設計業務の
   適正化を担保するための簡明な業務遂行フローを整備することが望ましい。
    さらに、各担当者の知識やスキルのみに頼るのではなく、近時、建築業界に取り入れられ
   始めている建築系情報統合システム BIM
                      (ビルディング インフォメーション モデリング)
                             ・         ・
   を導入するなど、システムの面から、事業所の設計業務を確実にサポートすることも検討
   すべきである。
    加えて、事前のチェック体制だけでなく、各事業所における設計業務及び施工が法令を
   遵守し適正に行われているか否かを事後的にチェックする仕組みとして本社部門による監
   査体制も検討すべきである。
    なお、当該監査部門は、本社部門の中でも商品開発部門や技術本部とは切り離された、
   例えば社長直轄の部門として、型式適合認定制度をはじめとする建築関係法令等に特化す
   ることで、チェック機能を強化すべきであろう。


                       ‐6‐
5.本件不備のあった建物の安全性の確認
 (1)独立基礎不適合建物の安全性の確認
    大和ハウス工業は、社内で①構造計算による安全性の確認、②基礎部分の実験による安全
   性の確認を行い、その後、第三者機関である一般財団法人日本建築センターによる安全性の
   確認を行っている。
 (2)追加調査に伴い追加された独立基礎不適合物件の安全性の確認の状況
    大和ハウス工業が 2019 年 5 月 13 日に公表した調査母数の増加に伴い、独立基礎につい
   て 1,885 棟が新たに不適合建物として追加となった。同社では、(1)で確認された方法に基づ
   き、社内で安全確認を実施している。
    また、追加される 1,885 棟についても、継続して第三者機関である一般財団法人日本建築
   センターに対して安全性の確認を依頼する予定としている。
 (3)L 字型受柱不適合建物の安全性の確認
    大和ハウス工業は、社内で構造計算による安全性を確認後、第三者機関である一般財団
   法人日本建築センターによる安全性の確認を行っている。
 (4)防火基準不適合建物に対する改修工事
    防火基準不適合建物における防火安全に関する改修工事の方法では、標準仕様である 2 階
   外部片廊下を支える独立柱に要求される防火基準を満たすために、①耐火被覆材(繊維混入
   けい酸カルシウム板) L 字型受柱を囲うように配置し、
             で                直接、接着固定し、②その外側に、
   不燃材料の仕上げ材を取り付ける仕様を標準とした。
    また、2 階外部片廊下を直接支える梁にあっては、1 階廊下の天井を仕上げている材料
   (軒天)と同材料(不燃材)で覆う仕様を標準とした。
    防火基準不適合建物は全部で 77 棟であったが、2019 年 6 月 10 日までに全ての改修工事
   が完了した。


 6.結語
   当委員会が調査を進めるなかで、驚きを禁じ得なかったことは、日本を代表するハウス
  メーカーである大和ハウス工業が、型式適合認定制度の在り方について、あまりにも迂闊に
  集団的な誤信を起こしてしまった経緯である。
   その事実、原因は本報告書に述べたとおりであるので、改めて繰り返さないが、大和ハウス
  工業は、本件不備により社会的信頼を損なったことを虚心坦懐に受け止めて、今後の改革に
  活かしていただくことを期待する。


                                                以   上




                    報道関係者のお問合せ先
            広報企画室   広報グループ       06(6342)1381
                    東京広報グループ     03(5214)2112




                        ‐7‐
大和ハウス工業株式会社 御中




      調   査 報    告 書




           令和元年6月17日

           大和ハウス工業株式会社 外部調査委員会

                   委員長 桑野 幸徳

                   委 員 長谷川 健

                   委 員 渡辺   徹
目次
第1章 本件調査の概要......................................................... 1
 第1 外部調査委員会設置の経緯............................................... 1
 第2 委嘱事項 .............................................................. 1
 第3 当委員会の構成......................................................... 2
 第4 当委員会の独立性及び日弁連ガイドライン等への準拠 ....................... 2
   1   当委員会の独立性....................................................... 2
   2   日弁連ガイドライン等への準拠........................................... 3
 第5 調査の期間 ............................................................ 3
 第6 調査の対象 ............................................................ 3
   1   独立基礎不適合問題..................................................... 3
   2   L 字型受柱不適合問題 ................................................... 4
   3   防火基準不適合問題..................................................... 4
 第7 調査の方法・限界....................................................... 4
   1   本件調査の方法......................................................... 4
   2   本件調査の限界......................................................... 6
第2章 調査により確認された事実関係........................................... 6
 第1 独立基礎不適合問題に係る事実関係 ....................................... 6
   1   改正建築基準法の内容................................................... 6
   2   型式適合認定制度を導入した際の法令遵守体制 ............................. 7
   3   各事業所の設計者における独立基礎の取扱い ............................... 9
   4   設計図書作成のプロセス(チェック体制) ................................ 10
   5   独立基礎不適合問題の終息と当該問題を生じた棟数 ........................ 13
   6   独立基礎不適合問題の原因.............................................. 15
 第2 L 字型受柱不適合問題に係る事実関係 .................................... 17
   1   改正建築基準法の内容.................................................. 17
   2   型式適合認定制度を導入した際の法令遵守体制 ............................ 17
   3   各事業所の設計者における L 字型受柱の取扱い ............................ 17
   4   商品開発部門における L 字型受柱の取扱い ................................ 20
   5   設計図書作成のプロセス(チェック体制) ................................ 21
   6   L 字型受柱不適合問題の終息と当該問題を生じた棟数 ...................... 22
   7   L 字型受柱不適合問題の原因 ............................................ 23
   8   L 字型受柱不適合問題が一部の設計責任者に認識されていたことについて .... 25
 第3 防火基準不適合問題に係る事実関係 ...................................... 27
   1   発覚の経緯 ........................................................... 27


                                    i
   2   原因に係る事実関係.................................................... 27
   3   防火基準不適合問題を生じた棟数 ........................................ 28
   4   防火基準不適合問題の原因.............................................. 28
第3章 原因分析 .............................................................. 28
 第1 法令遵守体制の運用上の問題............................................ 28
 第2 事業所と本社(商品開発部門及び技術本部)とのコミュニケーション不足 .... 29
   1   独立基礎不適合問題について............................................ 29
   2   L 字型受柱不適合問題及び防火基準不適合問題について .................... 30
   3   小括 ................................................................. 31
 第3 設計図書作成のプロセスの問題.......................................... 31
   1   独立基礎不適合問題について............................................ 31
   2   L 字型受柱不適合問題及び防火基準不適合問題について .................... 31
第4章 再発防止に向けた提言................................................... 32
 第1 全社的な法令遵守体制の再構築.......................................... 32
 第2 双方向の情報伝達機能の強化............................................ 33
 第3 設計図書作成におけるチェック体制の構築 ................................ 33
   1   システム構築によるチェック機能の強化 .................................. 33
   2   監査体制の強化........................................................ 34
 第4 大和ハウスにおける再発防止策の検討状況 ................................ 34
第5章 本件不備のあった建物の安全性の確認 ..................................... 35
 第1 特に必要と認めた調査事項の追加........................................ 35
 第2 独立基礎不適合建物の安全性の確認 ...................................... 35
   1   大和ハウスによる安全性の確認.......................................... 35
   2   第三者機関による安全性の確認.......................................... 36
   3   追加調査に伴い追加された独立基礎不適合建物の安全性の確認の状況 ........ 36
 第3 L 字型受柱不適合建物の安全性の確認 .................................... 37
   1   大和ハウスによる安全性の確認.......................................... 37
   2   第三者機関による安全性の確認.......................................... 37
 第4 防火基準不適合建物に対する改修工事 .................................... 37
 第5 小括 ................................................................. 38
結 語 ........................................................................ 38
別紙図1(独立基礎).......................................................... 39
別紙図2(L 字型受柱) ........................................................ 40




                                      ii
第1章 本件調査の概要
第1 外部調査委員会設置の経緯
      平成 8 年 12 月 20 日、大和ハウス工業株式会社(以下「大和ハウス」という。)の内
     部通報制度を利用した内部通報により、本件調査(後に定義する。)にかかる問題等が
     指摘されたことから、大和ハウス内において、社内調査が開始された。
      その後、大和ハウスは、過去に建築した戸建住宅・賃貸共同住宅の一部に使用され
     た独立基礎1と呼ばれる基礎及び賃貸共同住宅の一部に使用された 2 階外部片廊下部分
     を支える L 字型受柱2に関して、建築基準法に基づき予め型式適合認定3を受け、型式部
     材等製造者認証4(以下、型式適合認定と併せ、単に「型式適合認定」ということがあ
     る。)を取得した仕様に合致していないおそれがあることを認識するに至った。もっと
     も、それらの独立基礎と L 字型受柱を用いたと考えられる物件が多数に及んだことか
     ら、社内調査に時間を要し、平成 31 年 2 月 18 日、大和ハウスより国土交通省に対し、
     独立基礎と L 字型受柱に関して、建築基準に関する不適合等が生じていた可能性があ
     る旨報告がなされた。
      また、同報告に際し、国土交通省より大和ハウスに対し、事案の詳細及び影響範囲
     等についてさらに調査を行うように指示がなされ、大和ハウスにおいて社内調査を行
           L
     ったところ、 字型受柱に関する防火基準についても建築基準に適合しないおそれがあ
     ることが判明し、平成 31 年 3 月 26 日、大和ハウスより国土交通省に対し、その旨、
     報告がなされた。
      そして、平成 31 年 4 月 12 日、大和ハウスは「戸建住宅・賃貸共同住宅における建
     築基準に関する不適合等について」を公表した。
      かかる経緯を経て、平成 31 年 4 月 26 日、大和ハウスの取締役会において、戸建住
     宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等について、さらに客観的な調査
     を行い、原因等を究明するため、社外監査役(独立役員)及び大和ハウスと利害関係
     を有しない弁護士のみを委員とする外部調査委員会(以下「当委員会」という。
                                        )を設
     置することを決定し、同日、当委員会が設置された。


第2 委嘱事項
      当委員会が大和ハウスから委嘱を受けた事項(以下「委嘱事項」という。
                                      )は、以下
     のとおりである。
     (1) 本章第 6 において定義する各不備(以下、これらの不備をまとめて「本件不備」

1   建物の外周部分の基礎(連続布基礎)と連結せず、独立して設置される基礎をいう。別紙図 1 参照。
2   別紙図 2 参照。
3   建築基準法に基づく業務で、標準的な仕様書で建設されるプレハブ住宅などの型式について、一定の建
    築基準に適合していることを予め審査し、認定するもの。
4   型式適合認定を受けた部材等の製造者について、その部材等を適切な品質管理のもと認定型式どおりに
    製造できる者であるかどうかを審査し、認証するもの。


                          1
    ということがある。
            )に係る事実関係の調査
  (2)上記(1)で確認された事実関係の原因分析及び再発防止に向けた提言
 (3)上記のほか、当委員会が特に必要と認めた事項として、本件不備のあった建物の
   安全性の確認


第3 当委員会の構成
   当委員会の委員は、以下のとおりである。


    委員長 桑野 幸徳(大和ハウス 社外監査役(独立役員)
                              )
    委 員 長谷川 健(加藤・西田・長谷川法律事務所 弁護士)
    委 員 渡辺    徹(北浜法律事務所・外国法共同事業 弁護士)


   当委員会は、委嘱事項に関する調査(以下「本件調査」という。
                               )の実施に際し、弁
 護士細川健夫(加藤・西田・長谷川法律事務所)
                      、弁護士谷明典(北浜法律事務所・外
 国法共同事業)のほか、加藤・西田・長谷川法律事務所の弁護士 1 名と北浜法律事務
 所・外国法共同事業の弁護士 8 名を調査補助者として任命し(以下、併せて「調査補
 助者」という。、当委員会の調査の補助に当たらせた。
        )
   なお、桑野委員長は、大和ハウスから東京証券取引所に独立役員として届出をされ
 ている社外監査役である。また、当委員会の委員 2 名及び調査補助者は、いずれも日
                               (平成 22 年 7 月
 本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」
 15 日、改訂同年 12 月 17 日。以下「日弁連ガイドライン」という。
                                     )に準拠して選任
 されており、本件調査以前に大和ハウスから法律事務の委任を受けたことはなく、同
 社との間に利害関係はない。さらに、長谷川委員及び渡辺委員が所属する法律事務所
 と大和ハウスとの間にも、本件調査の受任時点において、利害関係はない。


第4 当委員会の独立性及び日弁連ガイドライン等への準拠
 1 当委員会の独立性
   当委員会の委員 3 名、調査補助者及び所属する法律事務所は、上記第3のとおり、
 本件調査以前に大和ハウスから法律事務の委任を受けたことはなく、同社との間に利
 害関係はないことを確認している。
   また、当委員会が独立性を確保し実効的な調査を行うため、当委員会は大和ハウス
 との間で、本件調査の調査体制等に関し、概ね以下の事項を合意した。
    ① 大和ハウスは、本件調査に協力し、その役職員に対して、優先的な協力を業
      務として命令すること。
    ② 当委員会の委員及び調査補助者は、大和ハウスから独立した立場で中立・公
      正かつ客観的な調査を行い、同社の役職員が行う補助は、事務作業に限定す


                     2
           ること。
         ③ 本件調査の調査報告書の起案権は、当委員会に専属し、大和ハウスは、当委
           員会に対し、調査報告書の提出前にその内容の全部又は一部の開示を求めな
           いこと。
         ④ 当委員会は、本件調査により判明した事実が大和ハウスの現経営陣に不利に
           なると考えられる場合であっても、調査報告書に記載し、また、本件調査に
           対し、同社の役職員の協力が十分でない場合等にはその状況を調査報告書に
           記載することができること。
         ⑤ 大和ハウスは、当委員会から調査報告書を受領した際は、原則として、遅滞
           なくステークホルダーに開示すること。


    2 日弁連ガイドライン等への準拠
       当委員会は、本件調査の独立性・客観性を確保するため、当委員会の運営・本件調
     査の実施・調査報告書の作成等について、可能な範囲において日弁連ガイドラインに
     準拠している。また、当委員会は、日本取引所自主規制法人「上場会社における不祥
               (平成 28 年 2 月 24 日公表)の「②第三者委員会を設置する場
     事対応のプリンシプル」
     合における独立性・中立性・専門性の確保」を踏まえて、本件調査を実施している。


第5 調査の期間
       当委員会は、平成 31 年 4 月 26 日から令和元年 6 月 17 日までの期間(以下「本件調
     査期間」という。)に、本件調査を行った。


第6 調査の対象
       本件調査の対象は、平成 13 年 1 月 1 日5から平成 31 年 3 月 15 日までの間(以下「本
     件調査対象期間」という。
                )における、以下の1から3の問題である。


    1 独立基礎不適合問題
       平成 31 年 4 月 12 日に大和ハウスが公表した、同社の建築にかかる戸建住宅・賃貸
     共同住宅において、建物を支える基礎のうち、独立基礎と呼ばれる基礎の仕様が、建
     築基準法に基づき予め型式適合認定を受け、型式部材等製造者認証を取得した仕様に
     合致しないという不備(以下、第 2 章第 1 の 5(2)記載の独立基礎の対象を含み、か
     かる不備に関する問題を「独立基礎不適合問題」という。)


5   後記のとおり、大和ハウスが型式適合認定制度の導入を開始したのは、平成 12 年 12 月 11 日であり、同
    年同月中に、型式適合認定制度に基づく建築確認申請を行い、当該建築確認申請にかかる確認済証を取
    得した上で、建物の建築工事に着手し、建物を完成させて引渡しまで行うことは事実上不可能であるた
    め、本件調査対象期間の始期は平成 13 年 1 月 1 日としている。


                              3
    2 L 字型受柱不適合問題
      平成 31 年 4 月 12 日及び令和元年 5 月 13 日に大和ハウスが公表した、同社の建築に
     かかる賃貸共同住宅において、2階外部片廊下を支える L 字型受柱の仕様が、型式適
     合認定を取得した仕様に合致しないという不備(以下、かかる不備に関する問題を「L
     字型受柱不適合問題」という。
                  )


    3 防火基準不適合問題
      平成 31 年 4 月 12 日及び令和元年 5 月 13 日に大和ハウスが公表した、 字型受柱不
                                                 L
     適合問題にかかる賃貸共同住宅のうち、主要構造部を準耐火構造6として建築する必要
     のある建物において、当該 L 字型受柱の部分につき防火基準に適合しないおそれのあ
     るものが存在したという不備(以下、かかる不備に関する問題を「防火基準不適合問
     題」という。)


第7 調査の方法・限界
    1 本件調査の方法
    (1) 大和ハウスの不適合対策本部等の調査結果・調査資料の利用
      当委員会は、大和ハウスの不適合対策本部等の調査結果・調査資料を収集した。
      なお、当委員会は、これらの調査結果・調査資料をあくまで参考資料として使用す
     るものであって、本件調査結果に何ら影響を及ぼすものではない。


    (2) 客観的資料の確認
      当委員会は、以下の文書を含む各資料の精査を行った。
       ア 大和ハウスから提供された設計要項
       イ 大和ハウスから提供された平面図、立面図、伏図等の図面
       ウ 大和ハウスから提供された確認申請図書
       エ   大和ハウスから提供された型式適合図書
       オ 大和ハウスから提供された型式適合認定チェックリスト
       カ 全社設計業務規程等の社内規程
       キ   型式適合認定に関する社内通知・通達


    (3) 調査票による調査
      当委員会は、本件不備発生当時に型式適合認定に関与していた技術本部の役職員(退



6   建築基準法等で求められる防耐火基準による。


                            4
     職者を含む。、本件不備に関与していた各事業所の設計責任者及び設計者7(退職者を
          )
     含む。
       )を中心に、144 名に対し調査票を送付し、当時の設計業務の実情及び本件不備
     発生の原因等の調査を実施した。
      調査票の概要は、以下のとおりである。
        ア 当時の役職・担当業務
        イ   型式適合認定制度に関する理解度
        ウ   型式適合認定制度に関する社内研修会等への参加状況
        エ   各事業所における型式適合認定制度に関する勉強会等の開催状況
        オ   当時の建築確認申請における型式適合認定制度の利用状況及びその認識
        カ 型式適合認定への不適合となる設計を行った原因


    (4) ヒアリング
      当委員会は、委員が直接面談のうえ、以下の建築士に対するヒアリングを実施した。
        ア   本件不備に関与していた各事業所の設計責任者及び設計者:19 名
        イ   型式適合認定制度導入時における取締役技術本部長:1 名
        ウ   型式適合認定制度導入時における商品開発担当執行役員:1 名
        エ   型式適合認定制度導入時における商品開発部長:1 名
        オ   型式適合認定制度導入時における商品開発部次長:1 名
        カ   型式適合認定制度導入時における設計推進部長:1 名
        キ   型式適合認定制度導入後における取締役技術本部長:1 名
        ク   型式適合認定制度導入後における設計推進部長:1 名
        ケ   現取締役技術本部長:1 名
        コ   現取締役技術本部品質保証部門担当:1 名
      なお、同ヒアリングには、大和ハウス関係者は同席していない。


    (5) 生産業務センターの現地調査
      当委員会の委員において、大和ハウスの生産業務センター8を訪問のうえ、現在及び
     当時の、事業所及び生産業務センターにおける CAD システムを使用した設計業務、同
     フロー等につき、調査を実施した。


7   各事業所には、建築士事務所を開設しており、事業所の設計部門の設計責任者が、当該事業所の建築士
    事務所における管理建築士となっている。各事業所の設計者は、各事業所に所属しており、上記建築士
    事務所の所属建築士となっている。
8   本件調査期間当時の呼称は、
                「生産設計センター」等であり、工場部材の生産をするための業務を担う部
    署をいう。集合住宅事業においては、現在の呼称は「生産設計・仕切部」であるが、各地区毎の生産業
    務センターの役割は基本的に共通である。なお、生産業務センターは、型式適合認定制度が導入された
    当時は、工場に所属する部署であり、その後、事業所との連携を強化する目的で、本社部門である住宅
    事業推進部設計施工推進部に所属する部署となり、現在に至っている。


                            5
     2 本件調査の限界
        当委員会は、当委員会において必要と考える調査を行ったが、本件調査は強制的な
      調査権限等に基づく調査ではなく、あくまで調査対象者の任意の協力の下に行われる
      調査であること、本件調査において依拠する情報等が、原則として大和ハウスより提
      供された関係資料や大和ハウスの役職者・設計責任者等に対するヒアリングから得ら
      れたもののみであったこと、本件調査においては重要な情報については全て当委員会
      に開示されていることを前提としているが、そのような前提が常に成り立つ訳ではな
      いこと、また本件調査は時間的に限られた中での調査であったこと等による、調査の
      限界があったことを付言する。
        また、当委員会による事実認定は、上記のような限界の下での調査結果に基づくも
      のであり、当委員会に開示され又は当委員会が収集したもの以外の関係資料等が存在
      し、役職者・設計責任者等に対するヒアリングで得られた情報の中にも事実と異なる
      内容が含まれている可能性も否定できず、仮に、後日そのような事実が発覚した場合、
      当委員会による事実認定及び調査・検討結果は変更される可能性がある。
        さらに、本件調査は委嘱事項(1)から(3)に関し行われたものであり、本件調査
      対象期間における他の不適合を含め、大和ハウスにおけるあらゆる問題の有無を網羅
      的に調査したものではなく、当委員会においてそれを保証するものでもない。


第2章 調査により確認された事実関係
第1 独立基礎不適合問題に係る事実関係
     1 改正建築基準法の内容
        平成 12 年 6 月 1 日より、改正建築基準法が施行され、型式適合認定・型式部材等製
      造者認証制度が導入された。
        型式適合認定制度とは、建築物(の部分)が、構造耐力、防火・避難など一連の規
      定に適合することをあらかじめ国土交通大臣(指定認定機関が指定されている場合は
      同機関)が認定することにより、建築確認において、一連の規定の審査が省略される
      という制度である9。また、型式部材等製造者認証制度とは、規格化された型式の建築
      物(の部分)を製造・新築する者として国土交通大臣(指定認定機関が指定されてい
      る場合は同機関)が認証し、建築確認において、認証にかかる型式に適合するものと
      みなされ、一連の規定の審査において認証にかかる型式との照合が省略されるという
      制度である10。
        もっとも、型式適合認定制度を利用する場合においては、型式適合認定を取得して


9    建築基準法第 68 条の 10
10   建築基準法第 68 条の 11


                           6
      いる仕様しか用いることができず、その仕様から少しでも外れる場合には一般的な建
      築確認申請を行う必要があった。
       したがって、実際に設計に用いる部材が型式適合認定を取得しているか否かは、設
      計業務において重要な確認事項であったといえる。


     2 型式適合認定制度を導入した際の法令遵守体制
     (1) 型式適合認定制度が導入された当時の法令遵守体制構築義務の在り方
       型式適合認定制度が導入された平成 12 年当時、商法の下では、現在の会社法が定め
      ている、業務の適正を確保するための体制(いわゆる内部統制システム)11は法定され
      ていなかったものの、「健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質
      等に応じて生じる各種のリスク・・・の状況を正確に把握し、適切に制御すること、
      すなわちリスク管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理
      体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する。」と解されていた12。
       法令遵守は、その違反が直ちに企業価値を毀損することにつながるという意味にお
      いて、最も留意が必要なリスク管理項目であるから、平成 12 年当時であっても、会社
      が営む事業の規模、特性等に応じて法令遵守体制を構築する義務があったと言える。
       大和ハウスは、ハウスメーカーとしての特性上、建築基準法を遵守することは必須
      であったから、建築基準法を遵守させる体制、本件に即して言えば、型式適合認定制
      度を適法に運用させるための体制を構築する義務があった。
       この点、大和ハウスは、次に述べる体制により、型式適合認定制度を適法に運用さ
      せようとしていたことが認められる。


     (2) 社内通達
       型式適合認定の申請は、年 4 回の申込受付があり、商品開発部門が現場である各事
      業所における要望等も吸い上げつつ、順次行われ、その申請により取得される都度、
      以下のように社内通達により周知されていた。
       平成 12 年 12 月 11 日、常務取締役技術本部長が事業部長・所長、工場長、住宅・集
      合住宅営業所長、住宅・集合住宅設計責任者(以下、併せて「各部署の長」という。)
      に対し、「改正建築基準法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律にかかる認定・認
      証書の配布の件」と題する社内通達を発し、同月 14 日、設計責任者に対し、第 1 回目
      の型式適合認定申請により取得した認定・認証書を配布した。
       平成 13 年 6 月 18 日、取締役技術本部長が各部署の長に対し、
                                         「第 3 回申込分建築基
      準法及び品確法に関する認定・認証書配布の件」と題する社内通達を発し、第 3 回目


11   会社法第 362 条第 4 項第 6 号・会社法施行規則第 100 条
12   大阪地裁平成 12 年 9 月 20 日判決(大和銀行株主代表訴訟事件第一審判決)


                               7
      の型式適合認定申請により取得した認定・認証書を配布した。なお、第 2 回申込分は
      型式適合認定の申請は行っていない。
       平成 13 年 9 月 21 日、常務取締役技術本部長が各部署の長に対し、
                                           「第 4 回申込分認
      定・認証書及び深基礎・偏心布基礎等関連資料送付の件」と題する社内通達を発し、
      第 4 回目の型式適合認定申請により取得した認定・認証書を配布した。
       平成 14 年 1 月 11 日、常務取締役技術本部長が各部署の長に対し、
                                           「第 5 回工業化住
      宅性能評定13及び住宅金融公庫設計登録住宅承認の件」と題する社内通達を発し、第 5
      回目の型式適合認定申請により取得した認定・認証書を配布した。
       平成 14 年 5 月 2 日、取締役技術本部設計部門担当が各部署の長に対し、
                                             「第 6 回工
      業化住宅性能評定及び住宅金融公庫設計登録住宅承認の件」と題する社内通達を発し、
      第 6 回目の型式適合認定申請により取得した認定・認証書を配布した。また、この通
           旧工業化住宅認定制度の有効期限は同月 31 日までであることから、
      達において、                                全て、
      型式適合認定制度への運用に切り替えるよう指示されていた。
       以上のとおり、型式適合認定申請により取得した認定・認証書を取得するたびに配
      布するとともに、平成 14 年 5 月 31 日以降は全て型式適合認定制度に切り替えるよう
      指示していた。


     (3) 設計責任者に対する研修会
       平成 13 年 4 月 19 日、同月 20 日、同月 23 日及び同月 24 日、設計推進部が主催す
      る全国設計責任者の研修会が開催された。その研修会では、型式適合認定制度におい
      ては、年 4 回くらいのペースで認定・認証書の社内配布が行われること、ダイワハウ
      ス G・ダイワハウス T14という商品の単位で型式適合認定を取得しているのではなく、
      型式適合認定を取得した部材を用いて商品がつくられていること等、大和ハウスにお
      ける型式適合認定制度の具体的な内容が研修対象となっていた。
       また、平成 14 年 5 月 31 日まで旧工業化住宅認定制度と型式適合認定制度のどちら
      で運用するかについては、各事業所の裁量に委ねることも伝えられていた。
       平成 14 年 2 月から 3 月にかけて、技術本部地区推進部長が主催して、設計責任者を
      対象者とする「新認定・認証制度研修会」が全国 6 カ所に分けて開催されることとな
      り、同年 2 月 14 日に北信越ブロック、同月 15 日に関東ブロック、同月 18 日に九州ブ
      ロック、同月 22 日に近畿ブロック、同年 3 月 8 日に中部ブロック、同月 11 日に中四
      国ブロックにて開催された。


13 「工業化住宅性能評定」という言葉が用いられているが、これは、型式適合認定を行っている㈶日本建
   築センターが用いている言葉に平仄を合わせたものに過ぎず、いわゆる旧工業化住宅認定制度とは異な
   るものであることが、同通達において記載されている。
14 ダイワハウス G は鉄鋼系軸組構造の住宅の商品名であり、ダイワハウス T は鉄鋼系ラーメン構造の住宅
   の商品名である。


                              8
   その研修会では、型式適合認定制度においては、予め決められた設計ルールに則っ
  て設計される住宅(又は部品)を対象にしていること、最新の通達で配布される認定・
  認証書のみを用いて運用すること、認定・認証上登録されている仕様しか運用できな
  いこと、例え安全側であっても、登録されていない仕様での運用はできないこと等が
  改めて伝えられた。


 (4) 型式適合認定チェックリストの配布
   平成 14 年 7 月 11 日、取締役技術本部設計部門担当が各部署の長に対し「個々の物
  件の認定・認証範囲を確認する為のチェックリストを後日配布する」と通知し、後日、
  技術本部住宅系設計推進部から認定・認証内容に関するチェックリスト(以下「型式
  適合認定チェックリスト」という。
                 )が配布された。もっとも、型式適合認定チェック
  リストにおいて、独立基礎についてのチェック欄では、ベース幅のみがチェック対象
  となっており、その高さはチェック対象となっていなかった。


 3 各事業所の設計者における独立基礎の取扱い
 (1) 平成 12 年 12 月 10 日までの独立基礎の取扱い
   大和ハウスにおいては、型式適合認定制度を導入する以前の時期(平成 12 年 12 月
  10 日まで)においても、通常、高さを 620mm とする独立基礎を用いることとされて
  いた。
   しかし、地盤の表層改良15を行った場合、地盤がフラットになるため、建物の外周部
  分の基礎(連続布基礎、以下「布基礎」という。
                       )と高さを合わせて施工することが便
  宜であること等の理由から、布基礎と同じ高さである 725mm の独立基礎も多く採用さ
  れていた。ほかにも、凍結深度16が設定された地域や高低差がある敷地で独立基礎を用
  いる場合等で、通常の高さ 620 mm 以外の高さの独立基礎も採用されていた。


 (2) 平成 12 年 12 月 11 日から平成 14 年 5 月 31 日までの独立基礎の取扱い
   大和ハウスにおいては、平成 12 年 12 月 11 日から型式適合認定制度を導入したもの
  の、平成 14 年 5 月 31 日までは旧工業化住宅認定制度も有効とされていた。また、大
  和ハウスにおいて、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5 月にかけて順次 5 回、型式適合認
  定を取得したが、いずれの制度を用いるかは各事業所の裁量に委ねられていたことか
  ら、一定程度の事業所では、平成 14 年 5 月 31 日までは、型式適合認定制度を利用せ
  ずに建築確認申請が行われていた。
   このような状況において、独立基礎についても、平成 14 年 5 月 31 日までは、一定

15 軟弱な地盤の土にセメント系固化材を混合させた上で、ローラーで転圧しフラットに固めた地盤。
16 寒冷地では地表から下の一定の深さまで凍結するため、凍結しない深さまで基礎を掘り下げる必要があ

   るところ、特定行政庁は当該寒冷地において凍結する深さを示している。


                             9
 程度の事業所において、型式適合認定制度を利用せずに建築確認申請を行い、通常の
 高さ 620 mm 以外の高さの独立基礎を採用していた。


(3) 平成 14 年 6 月1日以降の独立基礎の取扱い
  大和ハウスは、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5 月にかけて順次 5 回、型式適合認定
 を取得したものの、高さ 620 mm 以外の高さの独立基礎については、型式適合認定を
 取得していなかった。
  そのため、地盤の表層改良を行った場合、凍結深度が設定された地域の場合及び敷
 地内に高低差がある場合において、平成 14 年 6 月1日以降、型式適合認定から外れた
 高さ 725mm 他の独立基礎を用いる際には、本来、一般的な建築確認申請を行わなけれ
 ばならなかった。しかしながら、各事業所の多くの設計者は、型式適合認定制度への
 全面的な移行に際して、商品開発部門において当然、型式適合認定を取得しているで
 あろうと誤信したまま、型式適合認定を取得していることを前提に建築確認申請を行
 っていた。
  独立基礎につき上記のような誤信が生じた理由としては、主として以下のようなも
 のが認められた。
  ①型式適合認定制度を導入する以前から高さ 620mm 以外の高さの独立基礎が現場
 の状況に応じて採用・設計されていたことから、型式適合認定制度導入に際し、商品
 開発部門が高さ 620mm 以外の高さの独立基礎の採用 設計ができなくなるような型式
                            ・
 適合認定の取り方をしているとは考えられなかった。
  ②技術本部から提示された型式適合認定チェックリストの記載では、独立基礎に関
 してはベース幅をチェックするようにという体裁になっており、型式適合認定を取得
 したもの以外のベース幅は選択できないということは理解していたが、独立基礎の高
 さに制限が設けられているということは思いも及ばなかった。
  ③独立基礎の上端(部材の上面)のレベルと布基礎の上端のレベルを一致させると
 いうことは、基本的な設計方法であり、現場の状況に応じて両者の上端のレベルを合
 わせるため、独立基礎の高さを調整して設計するのは当然であって、型式適合認定制
 度が導入されたからといって、この基本的な設計方法が選択できなくなるなどという
 ことは考えられなかった。商品開発部門の型式適合認定申請も、この基本的な設計方
 法を踏まえて手続きがなされているものと信じていた。


4 設計図書作成のプロセス(チェック体制)
  大和ハウスの設計業務の現場において、型式適合認定から外れた高さ 725mm 他の独
 立基礎を用いた建物が、誤って型式適合認定に合致した建物として設計されたことと、
 大和ハウスにおいて設計業務に使用されていた CAD システムとの関係は以下のとおり
 であると認められる。


                        10
     (1) 事業所及び生産業務センターにおける役割分担
       大和ハウスにおける事業所及び生産業務センターの役割分担は、概ね以下のとおり
      とされていた。
       事業所では、顧客と打合せのうえ、設計者において建物の基本設計図書17を作成し、
      生産業務センターに対しサーバへのデータアップロードの形で送付する。
       一方、生産業務センターでは、事業所から送付された基本設計図書に基づき、その
      後の工場での部材生産などのために必要な基礎伏図18・梁伏図19等の実施設計図書20へ
      加工するとともに、同図書を事業所に返送する。
       その後、事業所において、返送された実施設計図書に基づき、当該建物の建築工事
      に着手する。
       なお、事業所の設計者は、生産業務センターのサーバへのデータアップロード作業
      と並行して、指定確認検査機関等に対する建築確認申請を行うが、その際、商品開発
      部門の社内承認手続き等を経る必要はなく、各事業所の設計者の判断において、建築
      確認申請を行うこととされていた。


     (2) 事業所における設計図書作成の体制
       事業所においては、基本設計図書の作成を、事業所の CAD を用いて行う。
       各事業所の CAD にかかるシステムの構築及び社内の標準的な設計ルール(設計要項)
      の変更に伴うアップデート等は、商品開発部門が主導し、各事業所に対して適時行わ
      せていた。
       そして、型式適合認定を利用する予定の建物の基本設計図書の作成にあたっては、
      事業所の CAD 上に、予め型式適合認定を取得したものとして設定されている仕様(大
      和ハウスにおける標準仕様)の中からプルダウン形式で建物の柱、梁等の部材を選択
      し、基本設計図書を作成するシステムとなっていた。
       今回問題となっている独立基礎についても、事業所の設計者において、社内の標準
      的な設計ルール(設計要項)に従って、大和ハウスの標準仕様の中から適切な独立基
      礎を選択する運用となっていたが、  事業所の CAD 上のプルダウンにおいては、
                     その際、
      ベース幅は複数の中から選択可能となっていたものの、その高さは 620mm 一種類だけ
      が設定されており、それ以外の高さを選択することは出来なかった。
       したがって、事業所における基本設計段階で、事業所の CAD システム上登録されて
      いる大和ハウスの標準仕様である独立基礎を選択していれば、その選択は社内の標準


17   配置図、平面図、立面図、仕様書等の建物の基本的な設計図面等をいう。
18   建物の基礎全体の形状、設置位置等を平面的に記載した図面のことをいう。
19   建物の各階の梁全体の設置位置等を平面的に記載した図面のことをいう。
20   工場での部材生産、施工の実施に必要となる設計図面等をいう。


                            11
  的な設計ルール(設計要項)に合致し、かつ、型式適合認定に合致した設計となるシ
  ステムが用意されていた。
   また、大和ハウスでは、CAD システム上で型式適合認定を遵守する方策だけでなく、
  技術本部から事業所に対し型式適合認定チェックシートによる確認をするよう指示が
  あり、事業所においては、型式適合認定チェックシートによる確認が行われていたが、
  本章第 1 の 2(4) に記載のとおり、そもそも、独立基礎の高さは、型式適合認定チェッ
  クシートのチェック項目となっていなかった。
   なお、大和ハウスの標準仕様である独立基礎の部品番号は「GFB-●●(●●には
  選択された独立基礎のベース幅が記載される。」
                       ) と記載され、その独立基礎の高さは、
  本来、型式適合認定を取得した独立基礎として登録されている高さ(高さ 620mm)と
  なることが前提とされていた。


 (3) 生産業務センターにおける設計図書作成の体制
   生産業務センターでは、事業所から送付された基本設計図書に基づき、次工程とし
  て、工場での部材生産等を行うために、実施設計図書へ加工する。その際、生産業務
  センターでは、まず、事業所よりサーバにアップロードされた基本設計図書のデータ
  を生産業務センター専用の CAD にて取り込む。
   その後は、生産業務センター専用の CAD システム上、柱、梁等の工場生産及び工事
  現場における建築工事に必要な実施設計図書が作成される。
     事業所の CAD システムと生産業務センターの CAD システムは、
   なお、                                 全く別の CAD
  システムである。
   生産業務センターで作成される実施設計図書においては、CAD システム上、各部位
  (窓、外壁、内壁、独立基礎等)には部材番号(今回問題とされる独立基礎には「GFB
  -●●」との部材番号)が設定され、当該部材番号には標準仕様の図面や詳細情報が
  紐付いている。


(4)独立基礎の標準仕様の変更・編集
   生産業務センターにおいては、事業所の設計者からの要請に基づき、別途、生産業
  務センター専用の CAD 上で標準仕様の仕様(長さ、高さ、形状等)を変更・編集する
  こともできる。
   この部材の仕様を生産業務センター専用の CAD 上で変更した際、生産業務センター
  専用の CAD システムは、工場での部材の生産指示を主目的とした CAD システムであ
  ることから、事業所の CAD システムと異なり、部材番号に紐付いている詳細情報との
  自動照合が行われ、それが合致しない場合、標準仕様として工場に登録されている部
  材とは別の部材であること、すなわち、社内の標準的な設計ルール(設計要項)から
                「*」等の記号により、生産業務センター専用の CAD
  外れた仕様になっていることが、


                      12
 上、自動的に表示される仕組みとなっている。
  この点、独立基礎についても、型式適合認定を取得している部材であり、生産業務
 センターの CAD システム上、部材番号(今回問題とされる独立基礎には「GFB-●●」
 との部材番号)が設定されており、当該部材番号には標準仕様の図面や詳細情報が紐
 付いている。しかし、独立基礎は工事現場で作られるもので工場出荷品ではないため、
 独立基礎の仕様を生産業務センター専用の CAD 上で変更しても、標準仕様とは別の部
 材であること、すなわち、社内の標準的な設計ルール(設計要項)から外れた仕様に
 なっていることを示す、
           「*」等の記号が自動的に表示される仕組みとはなっていない。
     「GFB-●●」の独立基礎の型式適合認定を取得した高さ 620mm の仕様を
  例えば、
 高さ 725mm に変更・編集した後も、その部材番号は仕様変更前の「GFB-●●」の
 まま表示されることとなる。
  したがって、生産業務センター専用の CAD 上、独立基礎が社内の標準的な設計ルー
 ル(設計要項)から外れた、標準仕様とは別の仕様になっているにもかかわらず、同
 CAD 上は、型式適合認定を取得した「GFB-●●」の独立基礎が採用されているかの
 ような設計図書、すなわち外見上は型式適合認定制度を利用する建物の設計図書とし
 て完成することになる。
  この CAD システム上の問題が、大和ハウスの設計者の一部が高さ 725mm の独立基
 礎が型式適合認定を取得しているものと誤認した原因の一つであると考えられる。


5 独立基礎不適合問題の終息と当該問題を生じた棟数
(1) 独立基礎不適合問題の終息
  表層改良においては薬剤を使用し地面を固めるため、表層改良地盤では植樹が育ち
 にくいなどの不便がある等の理由から、表層改良以外の工事方法が採用されることが
 多くなり、独立基礎そのものの採用が急速に減少し、それに伴い独立基礎不適合問題
 も減少した。
  しかし、各事業所の設計者において、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎は型式適合
 認定を取得していないことを認識していなかったことから、少ないながらも独立基礎
 は採用され続け、独立基礎不適合問題が終息したのは、戸建住宅については平成 25 年
 12 月 27 日、賃貸共同住宅については平成 27 年 9 月 30 日になってからである。


(2) 独立基礎不適合問題を生じた棟数
  独立基礎不適合問題を生じた棟数は、戸建住宅において調査対象母数 18 万 130 棟に
 対して 2153 棟、賃貸共同住宅において調査対象母数 7 万 9732 棟に対し 1610 棟、合
 計、調査対象母数 25 万 9862 棟に対して 3763 棟であった。
  なお、大和ハウスは、平成 31 年 4 月 12 日に本件不備が判明したことを公表した後、
 当初の調査で使用した社内の基幹システム「D-smart」(以下、単に「D-smart」とい


                        13
う。)から抽出したデータの母数に漏れのあったことが判明し、他のデータで補完等し
たうえで改めて調査(以下、
            「再調査」という。
                    )を進めたところ、L 字型受柱不適合問
題及び防火基準不適合問題の各対象物件数の訂正があったとして、同年 5 月 13 日にま
ずこれを公表した。
 上記の独立基礎不適合問題を生じた棟数は、大和ハウスによる再調査の結果による
ものであるが、その再調査のプロセスは、以下のとおりであり、その相当性が認めら
れる。


 ア   再調査の対象期間の設定
     大和ハウスは、本件不備に関する再調査の対象物件を抽出するに際し、当初の
  調査と同様に、その対象を平成 13 年 1 月 1 日から平成 31 年 3 月 15 日までに完
  成、引渡済の建物(売上計上済の建物)とした。
     平成 12 年 6 月 1 日に建築基準法が改正されて型式適合認定制度が開始されたも
  のの、大和ハウス社内において型式適合認定制度の運用を開始したのは、平成 12
  年 12 月 11 日付の社内通達以降であること、さらに同月中に、型式適合認定制度
  に基づく建築確認申請を行い、当該建築確認申請に関する確認済証を取得した上
  で、建物の建築工事に着手し、建物を完成させて引渡しまで行うことは事実上不
  可能であると考えられることから、再調査の対象期間の開始日を平成 13 年 1 月 1
  日としたことは相当である。


 イ   調査対象物件の抽出
     大和ハウスは、再調査を行うにあたり、その対象物件を以下のとおり抽出して
  いる。
     まず、D-smart から、上記アの再調査の対象期間中に行われた取引の中で、①
  売上計上日が平成 13 年 1 月 1 日から平成 31 年 3 月 15 日までに該当するもの、
  ②型式適合認定制度の対象である鉄骨系の戸建住宅または賃貸共同住宅に該当す
  るもの、③型式適合認定制度を利用して建築確認申請が行われる新築に関する取
  引に該当するもの、という各条件を全て満たす物件を抽出した。
     そして、その抽出した物件データと経理部門が D-smart から独立して保有する
  会計データ(会計売上明細)上の物件データを突合させた。
     さらには、D-smart の登録内容に不備が疑われるものや会計データとの突合に
  より除外された物件のデータを技術本部の担当者が個別に精査した。
     以上のとおり、D-smart から抽出したデータを、それ以外の独立した別システ
  ムのデータと突合し、さらには担当者が個々のデータの精査まで行っていること
  からすると、調査対象物件の抽出は網羅的に行われていると考えられ、相当であ
  る。


                       14
  ウ   独立基礎不適合問題の対象物件の特定
      大和ハウスは、上記イで抽出した調査対象物件から独立基礎不適合問題の対象
   物件を特定するにあたり、社内に保管している竣工図面の基礎伏図・基礎断面図
   により、独立基礎の採用の有無、また独立基礎を採用している場合は型式適合認
   定どおりの仕様になっているかどうかを個別に確認して、対象物件を特定した。
      なお、竣工図面が社内にない場合は、顧客が保管している竣工図面を用いて上
   記と同様に個別に確認して対象物件を特定した。また、竣工図面が社内にも顧客
   においても保管されていない場合は、顧客の了解のもとに、実地確認をもって対
   象物件を特定した。
      調査対象とした全ての物件について、図面または現地確認が行われていること
   から、独立基礎不適合問題の対象物件の特定は網羅的に行われたと考えられ、相
   当である。


6 独立基礎不適合問題の原因
(1) 法令遵守体制の運用上の問題
  本章第 1 の 2 に記載のとおり、①大和ハウスは、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5
 月まで合計 5 回、設計責任者に対し、型式適合認定を取得する毎に社内通達を発し、
 かつ、平成 14 年 5 月の通達においては、平成 14 年 5 月 31 日以降は全て型式適合認定
 制度に切り替えるよう指示していた。
  また、②平成 13 年 4 月及び平成 14 年 2 月・3 月、全国の設計責任者に対し、型式
 適合認定制度の研修会を行って、その制度の内容について周知させていた。さらに、
 ③平成 14 年 7 月には、型式適合認定チェックリストも配布していた。
  以上の事実によれば、平成 12 年から平成 14 年にかけての法令遵守体制において、
 型式適合認定制度を適法に運用させるための体制は一応構築されていたと認められる。
  もっとも、①各通達及び②研修会はいずれも設計責任者を対象とするものであるこ
 とからすると、各設計責任者はその部下である設計者に対し、適宜、勉強会等を開催
 して、型式適合認定制度の内容・趣旨を理解させることが求められていたと考えられ
 る。
  しかし、かかる勉強会等を開催することを、大和ハウスが各設計責任者に必ずしも
 義務付けてはいなかったため、勉強会等が開催された事業所もあれば、開催されてい
 なかった事業所もあった。そのため、設計者全員が正確に型式適合認定制度を理解し
 ておらず、型式適合認定制度を導入する以前から採用されていた高さの独立基礎につ
 いては、当然に型式適合認定を取得しているものと誤信する設計者を多く生じさせる
 に至った。
  このように、大和ハウスにおいて型式適合認定制度の運用を開始した当時、一応の


                        15
 法令遵守体制を構築していたものの、その法令遵守体制の実際の運用において、型式
 適合認定制度を設計者全員に理解させるという大事な目的を達成するための効果的な
 運用がなされず、また、設計者も独立基礎の設計に際して、大和ハウスが同制度に基
 づき取得した仕様を正確に理解しないまま設計したことが、独立基礎不適合問題を生
 じさせた原因の一つである。


(2) 事業所と本社(商品開発部門及び技術本部)とのコミュニケーション不足
  大和ハウスは、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5 月まで合計 5 回、型式適合認定を取
 得していたが、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎の型式適合認定を取得していなかっ
 た。その結果として、合計 3763 棟の独立基礎不適合問題を生じさせている。
  本章第 1 の 2(2) に記載のとおり、型式適合認定の申請は、商品開発部門が現場であ
 る各事業所における要望等も吸い上げつつ行っていたが、具体的には、事業所から商
 品開発部門になされた問い合わせやリクエストを基に追加の申請等を検討するものの、
 それを受けて、採用するか否か等は、商品開発部門が各事業所の関与なしに決定する
 仕組みとなっていた。
  しかし、型式適合認定制度を導入する以前から、各事業所においては、高さ 620mm
 以外の高さの独立基礎を継続して採用しており、型式適合認定制度導入後においても、
 当然、型式適合認定を取得しているであろうと誤信していた。他方、商品開発部門に
 おいては、商品開発部門に建築現場の状況によっては高さ 620mm 以外の高さの独立基
 礎による施工が必要な場合があるとの事業所からの声が届いていなかったため、高さ
 620mm 以外の高さの独立基礎についての型式適合認定の申請に至らなかったものと
 考えられる。
  このように、各事業所と商品開発部門とのコミュニケーションが不足していたこと
 により、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎の必要性を商品開発部門が認識することが
 できなかったことが、独立基礎不適合問題を生じさせた原因の一つである。
  また、本章第 1 の 2(4)に記載のとおり、技術本部から型式適合認定チェックリスト
 が配布されたものの、型式適合認定チェックリストにおいて、独立基礎についてのチ
 ェック欄では、ベース幅のみがチェック対象となっており、その高さはチェック対象
 となっていなかった。
  このように、型式適合認定チェックリストにおいて、独立基礎についてはベース幅
 だけがチェック対象となっていて、高さがチェック対象となっていなかったことも、
 ベース幅さえ型式適合認定チェックリストに合致していれば、高さ 620mm 以外の高さ
 の独立基礎も型式適合認定を取得した部材であると事業所の設計者を誤認させた一因
 であった。
  この独立基礎の高さがチェック項目から漏れていたことについても、各事業所が型
 式適合認定制度を導入する以前より、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎を採用する場


                       16
  合が少なからずあるという実情を技術本部が認識していなかったことから、独立基礎
  の高さがチェック項目から漏れてしまったものと考えられる。
   このように、各事業所と技術本部とのコミュニケーションが不足していたことによ
  り、高さ 620mm 以外の高さの独立基礎の必要性を技術本部が認識することができなか
  ったことが、独立基礎不適合問題が発生した原因の一つである。
   以上のとおり、事業所と本社(商品開発部門及び技術本部)との間のコミュニケー
  ションが不足していたことが独立基礎不適合問題の原因として挙げられる。


 (3) 設計図書作成のプロセスの問題
   大和ハウスでは、型式適合認定制度の運用開始に合わせて、型式適合認定制度を利
  用する建物の設計についての社内の標準的な設計ルール(設計要項)を改定していた。
  この点、独立基礎についても、生産業務センターの CAD システム上、部材番号が設定
  されていた。しかし、独立基礎は、工事現場でつくられるもので工場出荷品ではない
  ため、独立基礎の仕様を生産業務センター専用の CAD 上で変更しても、標準仕様とは
  別の部材であることが表示されないシステムとなっていた。
   したがって、生産業務センター専用の CAD 上、独立基礎が社内の標準的な設計ルー
  ル(設計要項)から外れた、標準仕様とは別の仕様になっているにもかかわらず、同
  CAD 上は、型式適合認定を取得している独立基礎が採用されているかのような設計図
  書、すなわち外見上は型式適合認定制度を利用する建物の設計図書として完成するこ
  とになった。
   この CAD システム上の問題が、大和ハウスの設計者の一部が高さ 725mm 他の独立
  基礎が型式適合認定を取得しているものと誤認した原因の一つであると考えられる。


第2 L 字型受柱不適合問題に係る事実関係
 1 改正建築基準法の内容
   本章第 1 の 1 に記載のとおりである。


 2 型式適合認定制度を導入した際の法令遵守体制
   本章第 1 の 2 に記載のとおりである。


 3 各事業所の設計者における L 字型受柱の取扱い
 (1) 平成 12 年 12 月 10 日までの L 字型受柱の取扱い
   大和ハウスにおいては、型式適合認定制度を導入する以前においても、関東エリア
  (特に東京都)において、限られた敷地面積の中で賃貸共同住宅の居住空間を少しで
                           2
  も多くとりたいという顧客の要望が強かったことから、 階外部片廊下を支える独立柱
  の代わりに L 字型受柱を採用することがあった。


                            17
   なぜなら、独立柱を採用すると、独立柱が立っている 2 階外部片廊下部分を建築面
                       L
 積に含めて建蔽率を計算しなければならないが、 字型受柱を採用すると、当該 2 階外
 部片廊下部分の外側から約 1m幅分を建築面積に含めないで建蔽率を計算することが
 できる結果、賃貸共同住宅の居住空間をより大きくすることが出来たからである。


(2) 平成 12 年 12 月 11 日から平成 14 年 5 月 31 日までの L 字型受柱の取扱い
   大和ハウスにおいては、平成 12 年 12 月 11 日から型式適合認定制度を導入したもの
 の、平成 14 年 5 月 31 日までは旧工業化住宅認定制度も有効とされていた。また、大
 和ハウスにおいては、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5 月にかけて順次 5 回、型式適合
 認定を取得していたが、いずれの制度を用いるかは各事業所の裁量に委ねられていた
 ことから、多くの事業所では、平成 14 年 5 月 31 日までは、型式適合認定制度を利用
 せずに建築確認申請が行われていた。
   このような状況において、L 字型受柱についても、平成 14 年 5 月 31 日までは、多
 くの事業所において、型式適合認定制度を利用せずに建築確認申請を行っていた。


(3) 平成 14 年 6 月 1 日以降の L 字型受柱の取扱い
   大和ハウスは、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5 月にかけて順次 5 回、型式適合認定
 を取得していく中で、L 字型受柱の型式適合認定を取得していなかった。
   そのため、L 字型受柱を用いる際には、本来、一般的な建築確認申請を行わなければ
 ならなかった。
   しかしながら、関東エリアの事業所の多くの設計者は、型式適合認定制度を導入す
 る以前から採用していた L 字型受柱については、当然に型式適合認定を取得している
 ものと誤信したまま、型式適合認定を取得していることを前提に建築確認申請を行っ
 ていた。


(4) 平成 15 年 6 月 17 日付「TG 型パネル系キャンチ廊下設計要項」の制定
   平成 12 年頃、大和ハウスの関東エリア 25 営業拠点の設計者有志が住宅商品の改善
 を検討するプロジェクトを立ち上げ、同プロジェクトは「改善ワーキング」と呼ばれ
 ていた(以下「本件改善ワーキング」という。 。本件改善ワーキングは、関東エリア
                      )
 の各営業拠点の持ち回りで、 か月に 1 回程度開催されていた。
              3                 関東エリアの設計者は、
 同エリアでは従前から使用されていた L 字型受柱は当然型式適合認定を取得している
 ものと誤信しており、型式適合認定が取得されているにもかかわらず、技術本部が作
 成している社内の標準的な設計ルール(設計要項)では L 字型受柱が標準仕様として
 採用されていないことに不便を感じていた。
   社内の標準的な設計ルール(設計要項)で採用されている部材は、標準仕様として
 部材の記号番号が付けられ、物件毎に個別に部材の設計をしたり、工場に仕様を連絡


                            18
 する必要がないにもかかわらず、標準仕様として設定されていない部材は、「別注品」
 と呼ばれ、物件毎に部材の設計をしたり、工場に別注品の仕様を連絡する必要があり、
 L 字型受柱の設計業務の煩雑さが関東エリアの設計者の間で問題視されるようになっ
 た。
  そして、本件改善ワーキングの中で、この問題解決のため「関東地区キャンチ廊下 プ
 ロジェクトチーム」
         (以下「本件プロジェクトチーム」という。
                            )が結成され、L 字型受
 柱につき関東エリアで使用するための社内の標準的な設計ルール(設計要項)を作成
 することとなった。本件プロジェクトチームは、工場の担当者を交えて、又、時々、
 商品開発部門の担当者を招いて助言を受けて、技術的な考察、議論を重ね、L 字型受柱
 の仕様及びその施工方法等を詳細に定め、平成 15 年 6 月 17 日付で「TG 型パネル系キ
 ャンチ廊下設計要項」(以下「キャンチ廊下設計要項」という。)を制定し、関東エリ
 アにおいて同設計要項が運用されることとなった。
  関東エリアの設計者の間では、キャンチ廊下設計要項は、社内の標準的な設計ルー
 ル(設計要項)の不十分な部分を関東エリアのニーズに合わせて補完する設計要項で
 あると位置づけられており、同設計要項で定めた仕様の L 字型受柱も当然型式適合認
 定の範囲内と認識されていた。
  また、本件プロジェクトチームの関心は、専ら、構造上安全であること、工場生産
 において加工が容易であること、工事現場で施工が容易であること等、会社と顧客の
 ためにより良い商品の開発を追い求めるところにあり、建築確認申請の方法について
 は議論をしていなかった。
  さらに、               L
      本件改善ワーキングの設計者は、 字型受柱は型式適合認定を取得している
 ものと誤信していたので、キャンチ廊下設計要項制定後、商品開発部門に対し、L 字型
 受柱について型式適合認定申請手続きをするよう特段の働きかけや要請をすることは
 なかった。


(5) 誤信の理由
  L 字型受柱につき上記のような誤信が生じた主な理由としては、以下のようなものが
 認められた。
  ①型式適合認定制度を導入する以前から関東エリア(特に東京都)の狭小な敷地条
 件に合わせる形でL字型受柱が一般的に採用されていたことから、型式適合認定制度
 導入に際し、商品開発部門が、L字型受柱の採用ができなくなるような型式適合認定
 の取り方をしているとは考えられなかった。
  ②賃貸共同住宅の敷地が狭小なことの多い関東エリア(特に東京都)では、L字型
 受柱の需要が多いという地域的な特性があった。関東エリアの設計者の多くは、L字
 型受柱の仕様は、ある意味で関東エリア特有の仕様であり、全国的な標準仕様でない
 ため、社内の標準的な設計ルール(設計要項)に掲載されていないだけで、型式適合


                      19
 認定は取得されているものと誤信した。
  ③関東エリアでは、平成 12 年頃から、本件改善ワーキングにおいて、定期的に関東
 エリアにおける設計業務に関する改善策、建物の品質向上案等について勉強会を開催
 していたが、その場における各設計者間の情報交換においても、L字型受柱を採用し
 ている建物が型式適合認定制度から外れた仕様であるとの話題が出たことはなく、他
 の事業所においてもL字型受柱について型式適合認定制度を利用した建築確認申請を
 しているのであるから、自己の所属する事業所においても型式適合認定制度を利用し
 た建築確認申請を行ったとしても何ら問題がないと誤信することとなった。
  ④本件プロジェクトチームが、平成 15 年にL字型受柱が型式適合認定を取得してい
 ることを前提として、L字型受柱によるキャンチ廊下について、部材の仕様、施工方
 法等にかかるキャンチ廊下設計要項を制定して以降、関東エリアにおいて同設計要項
 に基づく運用がなされることとなり、関東エリアの設計者は、益々、同設計要項に従
 ってL字型受柱を採用した建物は、型式適合認定に合致するものと誤信した。
  ⑤商品開発部門の担当者も、本件プロジェクトチームによるキャンチ廊下設計要項
 を制定するための検討会に参加した際に意見を述べたりしていたが、その際、商品開
 発部門から、本件改善ワーキングに参加していた設計者らに対し、L字型受柱が型式
 適合認定制度から外れた仕様であるとの説明はなかったため、誤信が解けることはな
 かった。


4 商品開発部門における L 字型受柱の取扱い
(1) 商品開発部門による型式適合認定の申請手続とその取下げ
  商品開発部門の担当者は、時々、本件プロジェクトチームに招かれてキャンチ廊下
 設計要項策定のために意見を述べたり、関東エリアの設計者の意見を聞いたりする機
 会があり、関東エリアのニーズを知るに至り、商品開発部門は、平成 15 年 10 月に L
 字型受柱につき型式適合認定の申請手続きを行った。
  しかし、その後、商品開発部門は、L 字型受柱の代わりに、2 階の床梁を持ち出して
 キャンチ部を構成する「持ち出し梁形式」の一仕様のみの申請に切り替えるという方
 針を採ることになり、L 字型受柱の型式適合認定の申請手続を自ら取下げた。


(2) 商品開発部門の認識について
  当委員会のヒアリングにおいて、関東エリアの事業所の設計責任者の一人は、平成
 18 年頃、商品開発部門から L 字型受柱採用の賃貸共同住宅については一般的な建築確
 認申請で行うようにとの話があったかも知れないと供述している。そのため、商品開
 発部門が、            L
      関東エリアの事業所では、 字型受柱について型式適合認定制度による建築
 確認申請が行われていることについて認識していたか否かについて問題となる。
  この点、他の当時の関東エリアの複数の設計責任者らに対するヒアリングの結果で


                     20
は、商品開発部門から L 字型受柱採用の賃貸共同住宅については一般的な建築確認申
請で行うようにとの指示を受けた事実は否定されている。
 また、平成 18 年頃に、商品開発部門から関東エリアの事業所に宛てた L 字型受柱採
用の賃貸共同住宅については一般的な建築確認申請で行うことを指示する社内通達・
通知等の客観的な証拠も見当たらなかった。
 さらに、商品開発部門は L 字型受柱の型式適合認定の申請手続を自ら取下げている
    L
ところ、 字型受柱について型式適合認定制度による建築確認申請が行われていること
について認識していたとすれば、自らその申請手続を取下げることはしないと考えら
れる。
 よって、当委員会は、商品開発部門は、L 字型受柱の建築確認申請が型式適合認定制
度による建築確認申請として行われていることについての認識を欠いていたと認定し
た。


5 設計図書作成のプロセス(チェック体制)
 L 字型受柱については、そもそも社内の標準的な設計ルール(設計要項)から外れた
部材であって、大和ハウスの標準仕様品ではなく、生産業務センター独自では L 字型
受柱を設計することはできない。
 そこで、事業所において、工場で部材生産可能となるような L 字型受柱のデータを
入力した図面を作成し、生産業務センターに対し、2 階外部片廊下部分を支える受柱の
仕様を L 字型受柱とするという指示を行ったうえで、当該データを生産業務センター
へ送付し、その後、生産業務センターにおいて、L 字型受柱のデータを入れて対応して
いた。
 その際、L 字型受柱は、工場で製作される部材であることから、本章第 1 の 4(4)
に記載のとおり、生産業務センター専用の CAD 上では、標準仕様から外れた部材には
自動的に「*」等の記号がつくが、さらに、社内の標準的な設計ルール(設計要項)
に定める部材ではないものとして「#」の記号を付加して、工場での部材製作に必要と
なる情報を登録していた。
 生産業務センター専用の CAD 上で、L 字型受柱の部材には、自動的に「*」等の記
号がつくか、
     「#」の記号が付加されていたことからすれば、この「*」又は「#」の記
号が L 字型受柱の部材に付加されることによって、生産業務センターの担当者におい
て、      L
  少なくとも、 字型受柱の部材が標準仕様とは別の部材であることを覚知する契機
となり得た。
 しかし、生産業務センターの担当者は、建築確認申請をなすべき者が事業所の設計
責任者等であったことから、当該設計が一般的な建築確認申請をすべき建物であるこ
とまで思いが至らず、事業所の設計責任者等に対し、当該設計は一般的な建築確認申
請をすべき物件である等の連絡又は助言することはなかった。


                   21
  このように、設計図書作成のプロセスにおいて、チェック機能が働いていなかった
     L
 ことが、 字型受柱を採用している建物について一般的な建築確認申請が行われなかっ
 たことの原因の一つである。


6 L 字型受柱不適合問題の終息と当該問題を生じた棟数
(1) L 字型受柱不適合問題の終息
  関東エリアの事業所に配属された設計責任者の一部の者が、平成 19 年頃、L 字型受
 柱を採用した物件について、型式適合認定を取得していることを前提とした建築確認
 申請を行った際に、指定確認検査機関から L 字型受柱が型式適合認定を取得している
 ことにつき疑問を呈されたため、                 L
                商品開発部門に問い合わせたところ、 字型受柱は型
                      L
 式適合認定を取得していないとの回答を受け、 字型受柱は型式適合認定を取得してい
 ないことを認識した。
  その後、関東エリアの設計責任者の情報交換等によって、次第に L 字型受柱が型式
 適合認定を取得していないことが、関東エリアの設計責任者に知られるようになり、
 その後は、                        L
      一般的な建築確認申請が行われるようになった結果、 字型受柱不適合問題
 は平成 20 年 3 月に引き渡された建物を最後に終息した。


(2) L 字型受柱不適合問題を生じた棟数
  L 字型受柱不適合問題を生じた棟数は、調査対象母数 25 万 9862 棟に対し 192 棟で
 あった。
  なお、大和ハウスは、平成 31 年 4 月 12 日に本件不備が判明したことを公表した後、
 当初の調査で使用した D-smart から抽出したデータの母数に漏れのあったことが判明
 したため、                           L
      他のデータで補完等したうえで改めて調査を進めたところ、 字型受柱不適
 合問題及び防火基準不適合問題の各対象物件数の訂正があったとして、同年 5 月 13 日
 にこれを公表したが、その再調査のプロセスは、以下のとおりであり、その相当性が
 認められる。


  ア   再調査の対象期間の設定
      大和ハウスは、本件不備に関する再調査の対象物件を抽出するに際し、当初の
   調査と同様に、その期間を平成 13 年 1 月 1 日から平成 31 年 3 月 15 日までとし
   た。
      平成 12 年 6 月 1 日に建築基準法が改正されて型式適合認定制度が開始されたも
   のの、大和ハウス社内において型式適合認定制度の運用を開始したのは、平成 12
   年 12 月 11 日付の社内通達以降であること、さらに同月中に、型式適合認定制度
   に基づく建築確認申請を行い、当該建築確認申請に関する確認済証を取得した上
   で、建物の建築工事に着手し、建物を完成させ引渡しまで行うことは事実上不可


                        22
   能であると考えられることから、再調査の対象期間の開始日を平成 13 年 1 月 1 日
   としたことは相当である。


  イ   調査対象物件の抽出
      大和ハウスは、再調査を行うにあたり、その対象物件を以下のとおり抽出して
   いる。
      まず、D-smart から、上記アの再調査の対象期間中に行われた取引の中で、①
   売上計上日が平成 13 年 1 月 1 日から平成 31 年 3 月 15 日までに該当するもの、
   ②型式適合認定制度の対象である鉄骨系の戸建住宅または賃貸共同住宅に該当す
   るもの、③型式適合認定制度を利用して建築確認申請が行われる新築に関する取
   引に該当するもの、という各条件を全て満たす物件を抽出した。
      そして、その抽出した物件データと経理部門が D-smart から独立して保有する
   会計データ(会計売上明細)上の物件データを突合させた。
      さらには、D-smart の登録内容に不備が疑われるものや会計データとの突合に
   より除外された物件のデータを技術本部の担当者が個別に精査した。
      以上のとおり、D-smart から抽出したデータを、それ以外の独立した別システ
   ムのデータと突合し、さらには担当者が個々のデータの精査まで行っていること
   からすると、調査対象物件の抽出は網羅的に行われていると考えられ、相当であ
   る。


  ウ L 字型受柱不適合問題の対象物件の特定
      大和ハウスは、上記イで抽出した調査対象物件から L 字型受柱不適合問題の各
   対象物件を特定するにあたり、まず、新生産システム(工場部材管理システム)
   から L 字型受柱の部材が出荷されている物件を抽出して対象物件を特定した。L
   字型受柱は、独立基礎と異なり、全て工場にて製作されていることから、工場の
   出荷履歴を追うことにより特定することが可能となるためである。もっとも、新
   生産システム(工場部材管理システム)は平成 15 年 1 月に導入したことから、平
   成 14 年 12 月以前に引渡した物件については、社内に保管している竣工図面から
   L 字型受柱の採用の有無を確認して対象物件を特定した。なお、竣工図面が保管さ
   れていない物件については、現地等での目視確認により対象物件を特定した。
      調査対象とした全ての物件について、新生産システム(工場部材管理システム)、
                                 L
   竣工図面又は現地等での目視による確認が行われていることから、 字型受柱不適
   合問題の対象物件の特定は網羅的に行われたと考えられ、相当である。


7 L 字型受柱不適合問題の原因
(1) 法令遵守体制の運用上の問題


                        23
  本章第 1 の 6(1) に記載のとおりである。


(2) 事業所と商品開発部門とのコミュニケーション不足
  大和ハウスは、平成 12 年 12 月から平成 14 年 5 月まで合計 5 回、型式適合認定を取
        L
 得していたが、 字型受柱の型式適合認定を取得していなかった。その結果として、192
 棟の L 字型受柱不適合問題を生じさせている。
  本章第 1 の 2(2) に記載のとおり、型式適合認定の申請は、商品開発部門が現場であ
 る各事業所における要望等も吸い上げつつ行われていたが、具体的には、事業所から
 商品開発部門になされた問い合わせやリクエストを基に追加の申請等を検討するもの
 の、それを受けて、採用するか否か等は、商品開発部門が各事業所の関与なしに決定
 する仕組みとなっていた。
  そして、各事業所においては、型式適合認定制度を導入する以前から、L 字型受柱を
 継続して採用しており、当然、型式適合認定を取得しているであろうと誤信していた。
 他方、            L
    商品開発部門においては、 字型受柱について事業所から型式適合認定取得が必
 要であるとの声も受けておらず、L 字型受柱における関東エリアにおける採用状況等
 (建築確認申請の方法を含む。
              )の設計業務の実情に関する情報についての十分な認識
         L
 もなかったため、 字型受柱の型式適合認定取得について、高度な必要性を認識するこ
 となく、結局L字型受柱の型式適合認定取得には至らなかったものと考えられる。
  このように、各事業所と商品開発部門とのコミュニケーションが不足していたこと
     L
 により、 字型受柱の型式適合認定取得について、高度な必要性を商品開発部門が認識
                L
 することができなかったことが、 字型受柱不適合問題を生じさせた原因の一つである。
  もっとも、平成 15 年になって、商品開発部門の担当者は、時々、本件プロジェクト
 チームに招かれてキャンチ廊下設計要項策定のための意見を述べたり、関東エリアの
 設計者の意見を聞いたりする機会があり、関東エリアのニーズを知るに至り、商品開
 発部門は、平成 15 年 10 月に L 字型受柱につき型式適合認定の申請手続きを行った。
 この点については、商品開発部門と事業所とのコミュニケーションが、一定程度機能
 していたことがうかがえる。
  しかし、その後、商品開発部門は、L 字型受柱の代わりに、2 階の床梁を持ち出して
 キャンチ部を構成する「持ち出し梁形式」の一仕様のみの申請に切り替えるという方
           L
 針を採ることになり、 字型受柱の型式適合認定の申請手続を自ら取り下げるに至るが、
 その事実を事業所に連絡することはなかった。           L
                      商品開発部門としては、 字型受柱につ
 いてはもともと型式適合認定を取得していない以上、事業所においては一般的な建築
 確認申請が行われていると考えていたことから、型式適合認定の申請を取下げた事実
 を伝える必要性を認めなかったことによる。
  結局、当初の段階において事業所と商品開発部門との間のコミュニケーションが不
 足していたことが、L 字型受柱不適合問題を生じさせた原因であり、また、早期に当該


                       24
 問題を是正できなかった原因でもある。


(3) 設計図書作成のプロセスの問題
  L 字型受柱は、工場で製作される部材であることから、生産業務センター専用の CAD
 上では、標準仕様から外れた部材には自動的に「*」等の記号がつくが、さらに、社
 内の標準的な設計ルール(設計要項)に定める部材ではないものとして「#」の記号を
 付加して、工場での部材製作に必要となる情報を登録していた。このように、「*」又
 は「#」の記号が L 字型受柱の部材に付加されることによって、生産業務センターの担
 当者において、少なくとも L 字型受柱の部材が標準仕様とは別の部材であることを覚
 知する契機となり得た。
  しかし、生産業務センターの担当者においては、自動的に付加された「*」の記号
 又はさらに付加された「#」の記号が、型式適合認定制度導入後は、設計責任者等に対
 し、当該建物については型式適合認定制度を利用して建築確認申請を行うということ
 に疑義があるという警告をするという重要な意味を有するものであるということの認
 識が不十分であった。
  また、建築確認申請をなすべき者が事業所の設計責任者等であったこともあり、生
 産業務センターの担当者が、当該設計にかかる建物は、一般的な建築確認申請をすべ
 き建物であるということまで思いが至らず、事業所の設計責任者等に対し建築確認申
 請の方法について連絡又は助言することはなかった。
  以上より、L 字型受柱の問題については、大和ハウスの CAD システムにおいて型式
 適合認定と異なる仕様の設計を、一定程度制限するシステムとしては機能していたも
 のの、少なくとも L 字型受柱不適合問題に関して、生産業務センターの担当者がその
 CAD システムの折角の機能を生かし切れていなかったと言わざるを得ない。
  他方、長きにわたり L 字型受柱不適合問題が継続したことからすると、そもそも、
 技術本部が各事業所及び各生産業務センターに対して、CAD システムにおける仕様制
 限の意味・重要性を十分に連絡・説明できていなかったのではないかと考えられる。
 すなわち、設計図書作成のプロセスにおけるチェック体制を技術本部が周知徹底でき
 ていなかったことも、L 字型受柱不適合問題の原因ということができる。


8 L 字型受柱不適合問題が一部の設計責任者に認識されていたことについて
(1) 問題の所在
  L 字型受柱不適合問題においては、独立基礎不適合問題と異なり、関東エリアの事業
 所に配属された設計責任者の一部の者が、平成 19 年頃、L 字型受柱は型式適合認定を
 取得していないことを認識した。その後、関東エリアの設計責任者の情報交換等によ
 って、次第に L 字型受柱が型式適合認定を取得していないことが、関東エリアの設計
 責任者に知られるようになり、一般的な建築確認申請が行われるようになった結果、L


                     25
 字型受柱不適合問題は平成 20 年 3 月に引き渡された建物を最後に終息したという経緯
 がある。
  つまり、     L
      それまで、 字型受柱について型式適合認定を取得している前提で建築確認
 申請を行っていた設計責任者は、遅くとも平成 20 年 3 月頃までには、過去において建
 築確認申請手続に違反していたことを認識していたことになる。
  しかし、かかる設計責任者のうち、内部通報を行ったものはいなかった。このこと
 をどのように評価するか問題となる。


(2) 平成 19 年当時の内部通報制度
  大和ハウスは、平成 19 年当時、内部通報制度について、以下のような体制をとって
 いた。
  まず、リスク管理規程においては、法令違反等のリスク情報を認識した社員は、原
 則として、直属の上司に連絡することが定められていたが、その連絡方法が妥当でな
 い場合のために、リスク管理委員会事務局あてのリスク情報ホットライン(電話・電
 子掲示板)が定められ、さらに、緊急事態の場合は事業所長及びリスク管理委員会事
 務局に連絡することが定められていた。
  次に、
    「企業倫理ヘルプライン・内部通報者保護規程」において、役職員がその法令
 違反行為を発見した場合、企業倫理ヘルプライン窓口に電話、電子メール、WEB(社
 内のイントラ)又は郵送等によって、通報・相談をすることができると定められてい
 た。


(3) 内部通報が行われなかったことの評価
  大和ハウスのリスク管理規程においては、内部通報が義務であるとの定め方はされ
 ておらず、かつ、「企業倫理ヘルプライン・内部通報者保護規程」においては、通報又
 は相談は従業員の権利として定められており、義務であるとの定め方はされていない。
  この点、違法性を認識した従業員が内部通報を行うことを義務として規定する内部
 通報規程は、近時でこそ見受けられるようになってきたが、平成 19 年当時はほとんど
 存在しなかったのではないかと考えられる。平成 19 年は、業務の適正を確保するため
 の体制(いわゆる内部統制システム)が明文化された会社法が施行されて 1 年を経過
 したばかりの頃であることを踏まえると、内部統制システムの一環として内部通報規
 程を整備するべきであるという議論はなされていたものの、内部通報を義務化すべき
 であるという議論はほとんどなされていなかった。このような時代背景に鑑みれば、
 平成 19 年当時に大和ハウスが内部通報を義務化していなかったこと自体に問題がある
 とは言えない。
  また、L 字型受柱を採用した建物の建築確認申請手続違反を認識した設計責任者は、
 過去において自ら建築基準法に違反して建築確認申請を行っていた者であったという


                        26
      特殊性がある。つまり、これらの設計責任者は、自ら内部通報した場合、法律上、就
      業規則上又は道義上、何らかの制裁を受けるおそれが高いため、自己負罪となる側面
      が強い。自己に不利益な供述を強要されないという自己負罪拒否特権21の趣旨からすれ
      ば、これらの設計責任者が誰も過去の建築確認申請手続違反にかかる内部通報に踏み
      切らなかったことについて、道義上は別にして、法的には非難することは難しいと考
      えられる。
       なお、 字型受柱不適合問題はその違法性が認識されてから約 1 年間ほどで終息した
          L
              L
      ことからすれば、 字型受柱を採用した建物の建築確認申請手続違反を認識した設計責
      任者は、直ちに適法な建築確認申請手続に切り替えたと考えられるため、その限りに