1925 大和ハウス 2019-05-31 16:00:00
外部調査委員会による調査の状況に関するお知らせ [pdf]
2019 年 5 月 31 日
各 位
会 社 名 大和ハウス工業株式会社
(コード番号 1925 東証第一部)
:
代 表 者 代表取締役社長 芳井敬一
問合せ先 執行役員 広報企画室長 中尾剛文
(TEL. 06‐6342‐1381)
外部調査委員会による調査の状況に関するお知らせ
弊社は、2019 年 4 月 12 日公表の「戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に関する不適合等に
ついて」を受け、4 月 26 日、客観的な調査に基づく原因究明等のため、社外監査役と社外の専門家で
構成される外部調査委員会を設置し、事実関係の調査(関係者の聴取、関係書類の調査等)
、原因分析を
行ってまいりました。
本日、外部調査委員会より、調査状況についての中間報告を受けましたので、別添のとおりお知らせ
いたします。
中間報告の概要は、下記のとおりです。なお、別添及び下記の内容については、外部調査委員会によ
る中間報告のため、弊社としてコメントする立場にはありませんので、ご了承願います。
今後も弊社は外部調査委員会の調査に全面的に協力してまいります。なお、外部調査委員会による
再発防止策を含めた最終報告書につきましては、6 月中を目処に作成されることとなっております。
弊社は委員会より最終報告書を受領次第、速やかにお知らせいたします。
このたびは、弊社の建築基準に関する不適合等により、お客様ならびに関係者の皆様には多大なる
ご迷惑とご心配をおかけしたことを、心より深くお詫び申し上げます。
記
■大和ハウス工業株式会社 外部調査委員会による調査の状況について(概要)
1.本件調査の概要
(1)調査目的
型式適合認定を取得した仕様に合致しないという不備(①独立基礎不適合問題、②L 字型受柱
不適合問題)ならびに③防火安全性基準不適合問題についての事実関係の調査、原因分析を行う
ことである。
(2)調査方法・資料の精査
当委員会では、当時型式適合認定に関与していた役職員(退職者を含む)を中心に、116 名に対
して、調査票を送付し、当時の業務の実情および不備発生の原因等調査を行った。また、27 名に
対しては面談のうえ、ヒアリングを実施した。あわせて、受領した設計要項、設計業務規程、社
内通達等の関係資料の精査を行った。
‐1‐
2.現在の調査状況
大和ハウス工業では、2000 年 12 月より、改正建築基準法施行(2000 年 6 月 1 日)に基づく型
式適合認定制度を導入し、型式適合認定を予め取得、個々の建築確認の簡略化を図っていた。同社
が型式適合認定制度を用いて建築確認申請を行う場合において、同社が型式適合認定において取得
している仕様しか用いることができず、その仕様から少しでも外れている場合、一般的な建築確認
申請を行う必要があった。
(1)独立基礎不適合問題
同社では、型式適合認定制度導入以前の戸建住宅・賃貸共同住宅の独立基礎は、高さ 620mm の
独立基礎を用いることとされていたが、高さ 620mm 以外の独立基礎も採用されていた。
しかしながら、型式適合認定制度導入後、各事業所の設計責任者は、高さ 620mm 以外の独立基
礎の型式適合認定を取得しているものと誤認した可能性があり、そのことが今回発覚した独立基
礎不適合問題発生という事態を生じさせた原因の一つであると思料される。
2001 年 9 月、技術本部長名で各事業所の設計責任者へ発信した型式適合認定に関する社内通達
発信時点でも、高さ 620mm 以外の独立基礎は型式適合認定を取得していないことを周知させる
ことができなかった。この時点で独立基礎不適合問題を発見し、終息することができなかったのか
ということが問題であり、今後の調査が必要である。
(2)L 字型受柱不適合問題
同社では、型式適合認定制度導入以前、関東地区(特に東京都)において、賃貸共同住宅の居住
2
空間を少しでも多くとりたいという顧客の要望に応えるため、 階外部廊下を支える独立柱の代わ
りに L 字型受柱を採用することがあった。それにより、2 階外部廊下を建築面積に含めずに建蔽
率を計算することができ、賃貸共同住宅の居住面積をより大きくすることができた。
しかしながら、 L
同社は型式適合認定制度導入に際し、 字型受柱の型式適合認定を取得していな
かった。また、関東地区(特に東京都)の事業所の設計責任者は、型式適合認定制度導入以前から
採用していた L 字型受柱については型式適合認定を取得しているものと誤認して、同社が型式適
合制度を取得していることを前提とした建築確認申請を行った可能性がある。そして、そのことが
今回発覚したL字型受柱不適合問題の発生という事態を生じさせた原因の一つであると思料され
る。
2007 年頃、関東地区の事業所設計責任者が、建築確認検査機関より、L 字型受柱の型式適合認
定取得について疑問を呈され、同社の商品開発部門に照会した結果、型式適合認定を取得していな
い事実が判明し、その後、関東地区の事業所設計責任者に認知され、2008 年引渡以降、L 字型受
柱不適合問題は終息した。同社が型式適合認定制度導入時に、かかる不適合問題をなぜ防止するこ
とができなかったのか、また、2007 年当時の内部統制システムによって、コンプライアンス違反
を覚知し、その時点で是正することができなかったという点についても、今後、調査を進めていく
必要がある。
(3)防火基準不適合問題
同社が上記(2)の L 字型受柱不適合問題の調査を進めていた際、2 階外部廊下を支える受柱に
防火基準に不適合のおそれのある物件があることが判明した。
‐2‐
本来、L 字型受柱を採用した建物については、一般的な建築確認申請を行い、L 字型受柱につい
て耐火被覆による防耐火処置を講ずることが建築基準法・消防法及び関係条例の防火基準に照ら
して必要か否かを、指定確認検査機関の厳格な審査・チェックを受けるべきであったが、型式適合
認定を取得しているものとして建築確認申請をしたため、防火基準に不適合のおそれがあるが建
物が建築されることとなった。
かかる防火基準不適合問題についても、今後、調査を進めていく必要がある。
(4)型式適合性等のチェックに係る体制
同社では、今回の不適合問題以前に過去に 3 回(2014 年、2015 年、2016 年)不適合問題を発
生させ、2016 年 4 月に仕様監理部を設置し、現在、新規仕様及び変更仕様に関する技術情報を一
元管理し、不適合を防止する体制となっている。
しかしながら、今回の不適合問題が発生した 2000 年から 2013 年時点では、同部署は存在せ
ず、型式適合認定については、各事業所の設計者が自らチェックシート等に基づく管理体制を執
っていたが、実際には今回の不適合問題が発生していることから、今後、これらのチェックに係
る体制についても実際に機能していたか等についても、調査を進めていく必要がある。
3.現時点における考え得る本件不備の原因・背景
これまでの委員会の調査によれば、今回の不適合問題が発生した原因ならびに背景には、型式適
合認定制度を導入した当時、同社の役職員に型式適合認定制度を用いて建築確認申請を行うために
は、型式適合認定を取得している仕様しか用いることができず、その仕様から少しでも外れている
場合は一般的な建築確認申請を行う必要があることについての理解・認識が不十分な者が少なから
ずいたと思われる。この点についてもさらに調査が必要である。
4.今後の方針
外部調査委員会は、今後、不適合問題が発生した経緯を改めて確認し、型式適合認定のチェック
体制等を重ねて調査し、今回の不適合問題の原因の特定に努める。また、6 月中を目処に、原因分
析に加え、再発防止策の提言を同社に行う予定である。
以 上
報道関係者のお問合せ先
広報企画室 広報グループ 06(6342)1381
東京広報グループ 03(5214)2112
‐3‐
令和元年 5 月 31 日
外部調査委員会による調査の状況について
大和ハウス工業株式会社 御中
大和ハウス工業株式会社 外部調査委員会
委員長 桑野 幸徳
委 員 長谷川 健
委 員 渡辺 徹
大和ハウス工業株式会社(以下「大和ハウス」という。
)からの依頼により、大和ハウス
外部調査委員会(以下「当委員会」という。 が行っている調査
) (以下「本件調査」という。)
の現時点における状況につき、下記のとおり、報告いたします。
なお、本書面は、報告日現在における当委員会の調査の状況及び事実に対する理解を記
載したものであって、終局的なものではなく、今後の調査により更に判明する事実があり
得ることに加え、記載されている事実等についても今後の調査の過程で修正の可能性があ
ることを申し添えます。
記
第 1 本件調査の概要
1. 外部調査委員会設置の経緯
平成 31 年 4 月 12 日、大和ハウスは「戸建住宅・賃貸共同住宅における建築基準に
関する不適合等について」を公表した。
その後、平成 31 年 4 月 26 日、大和ハウスの取締役会において、戸建住宅・賃貸共
同住宅における建築基準に関する不適合等について、客観的な調査に基づく原因究明
等のため、社外監査役(独立役員)及び大和ハウスと利害関係を有しない弁護士のみ
を委員とする外部調査委員会を設置することを決定し、同日、当委員会が設置された。
2. 調査の目的及び範囲
当委員会の調査の目的は、以下の各不備(以下、これらの不備をまとめて「本件不
備」ということがある。
)について、事実関係の調査、原因分析及び再発防止策の提言
を行うことである。また、当委員会は、本件調査が完了した後、その結果を踏まえ、
最終報告書を作成する予定である。
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(1)平成 31 年 4 月 12 日に大和ハウスが公表した、同社の建築にかかる戸建住宅・賃
貸共同住宅において、建物を支える基礎のうち、独立基礎1と呼ばれる基礎の仕様
が、建築基準法に基づき予め型式適合認定2を受け、 3
型式部材等製造者認証(以下、
型式適合認定と併せ、単に「型式適合認定」という。)を取得した仕様に合致しな
いという不備(以下、かかる不備に関する問題を「独立基礎不適合問題」という。)
(2)平成 31 年 4 月 12 日及び令和元年 5 月 13 日に大和ハウスが公表した、同社の建
2階外部片廊下を支える L 字型受柱の仕様が、
築にかかる賃貸共同住宅において、
型式適合認定を取得した仕様に合致しないという不備(以下、かかる不備に関す
る問題を「L 字型受柱不適合問題」という。)
(3)平成 31 年 4 月 12 日及び令和元年 5 月 13 日に大和ハウスが公表した、L 字型受
柱不適合問題にかかる賃貸共同住宅のうち、主要構造部を準耐火構造4として建築
する必要のある建物において、当該 L 字型受柱の部分につき防火基準に適合しな
いおそれのあるものが存在したという不備(以下、かかる不備に関する問題を「防
火基準不適合問題」という。)
3. 調査体制
(1)委員
当委員会の委員は、以下のとおりである。
委員長 桑野 幸徳(大和ハウス 社外監査役(独立役員))
委 員 長谷川 健(加藤・西田・長谷川法律事務所 弁護士)
委 員 渡 辺 徹(北浜法律事務所・外国法共同事業 弁護士)
なお、桑野委員長は、大和ハウスから東京証券取引所に独立役員として届出をされ
ている社外監査役である。長谷川委員及び渡辺委員は、本件調査以前に大和ハウスか
ら法律事務の委任を受けたことはなく、同社との間に利害関係はない。また、長谷川
委員及び渡辺委員が所属する法律事務所と大和ハウスとの間にも、本件調査の受任時
点において、利害関係はない。
1 建物の外周部分の基礎(連続布基礎)と連結せず、独立して設置される基礎をいう。
2 建築基準法に基づく業務で、標準的な仕様書で建設されるプレハブ住宅などの型式について、一定の建
築基準に適合していることを予め審査し、認定するもの。
3 型式適合認定を受けた部材等の製造者について、その部材等を適切な品質管理のもと認定型式どおりに
製造できる者であるかどうかを審査し、認証するもの。
4 建築基準法第 27 条、同法第 62 条及び各地域の条例等で求められる防耐火基準による。
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(2)調査補助者
本件調査については、当委員会からの委嘱を受け、加藤・西田・長谷川法律事務所
の弁護士細川健夫、北浜法律事務所・外国法共同事業の弁護士谷明典および同所の弁
護士計 8 名が、当委員会の調査を補助している。なお、本件調査を補助する弁護士ら
は、いずれも本件調査以前に大和ハウスから法律事務の委任を受けたことはなく、同
社との間に利害関係はない。
4. 調査方法
当委員会が現時点までに実施した調査及び今後実施予定の調査は以下のとおりである。
(1)本件不備の関係者に対する調査票による調査、ヒアリングの実施及び現地調査
ア 調査票による調査
当委員会は、現時点までに、当時型式適合認定に関与していた技術本部の役
職員(退職者を含む。、本件不備に関与していた設計の責任者・担当者(退職
)
者を含む。)を中心に、116 名に対し調査票を送付し、当時の設計業務の実情及
び本件不備発生の原因等の調査を実施した。
イ ヒアリング
27 名に対し、当委員会の委員が面談のうえ、ヒアリングを実施した。なお、
同ヒアリングには、調査補助者以外、大和ハウス関係者は同席していない。
ウ 生産業務センターの現地調査
当委員会の委員において、大和ハウスの生産業務センター(当時の呼称は「生
産設計センター」)を訪問のうえ、現在および当時の、事業所および生産業務セ
ンターにおける CAD システムを使用した設計業務、同フロー等につき、調査を
実施した。
(2)資料の精査
当委員会は、現時点までに、以下の文書を含む各資料の精査を行った。
ア 大和ハウスから提供された設計要項
イ 大和ハウスから提供された平面図、立面図、伏図等の図面
ウ 大和ハウスから提供された型式適合認定チェックリスト
エ 全社設計業務規程等の社内規程
オ 型式適合認定に関する社内通達等
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5. 当委員会による本件調査の独立性・客観性を確保するための措置等
当委員会は、本件調査の独立性・客観性を確保するため、日本弁護士連合会「企業等
不祥事における第三者委員会ガイドライン」(平成 22 年 7 月 15 日、改訂同年 12 月 17
日。以下「日弁連ガイドライン」という。)に可能な範囲において準拠し、また、日本取
(平成 28 年 2 月 24 日
引所自主規制法人「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」
公表)の「②第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保」を
踏まえて調査を行っている。当委員会がとった措置は具体的には以下のとおりである。
当委員会は、本件調査に当たり、日弁連ガイドラインに可能な範囲において準拠する
ことを大和ハウスとの間で合意した。
当委員会の委員及び調査補助者は、上記 3 のとおり、大和ハウスから法律事務の委任
を受けたことはなく、同社との間に利害関係はないことを確認した。
当委員会は、本件調査の調査体制等に関し、大和ハウスとの間で、①大和ハウスは本
件調査に協力し、その役職員に対して、優先的な協力を業務として命令すること、②当
委員会の委員及び調査補助者は、大和ハウスから独立した立場で中立・公正かつ客観的
な調査を行い、同社の役職員が行う補助は、事務作業に限定すること、③本件調査の調
査報告書の起案権は、当委員会に専属し、大和ハウスは、当委員会に対し、調査報告書
の提出前にその内容の全部又は一部の開示を求めないこと、④当委員会は、本件調査に
より判明した事実が大和ハウスの現経営陣に不利になると考えられる場合であっても、
調査報告書に記載し、また、本件調査に対し、同社の役職員の協力が十分でない場合等
にはその状況を調査報告書に記載することができること、⑤大和ハウスは、当委員会か
ら調査報告書を受領した際は、原則として、遅滞なくステークホルダーに開示すること
などを合意した。
第 2 現在の調査状況
1. 独立基礎不適合問題
(1)問題の概要
大和ハウスが建築した戸建住宅・賃貸共同住宅の一部において、独立基礎につき型
式適合認定を取得した仕様(底面からの高さ(以下「高さ」という。
)620mm)とは異
なる仕様(高さ 725mm 他) で設計が行われた住宅があり、
5 これらの住宅については、
本来、一般的な建築確認申請6を行わなければならなかったところ、型式適合認定を取
得しているものとして建築確認申請を行った。
5 高さ 620 ㎜の独立基礎と高さ 725 ㎜の独立基礎については、別紙図 1 を参照。
6 建築物を建設する際に特定行政庁へ申請する手続きのことで、建築基準法第 6 条に規定されている。
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(2)発覚の経緯
平成 28 年 12 月 20 日になされた内部通報の中に、独立基礎不適合問題及び L 字型
受柱不適合問題が含まれており、大和ハウスにおいて社内調査を行った結果、独立基
礎不適合問題及び L 字型受柱不適合問題が生じていた可能性があることが判明し、平
成 31 年 2 月 18 日に大和ハウスより国土交通省に対しその旨報告がなされた。
(3)原因にかかる事実関係
これまでの当委員会のヒアリング等の調査によれば、大要、次の事実関係が判明し
ている。
ア 型式適合認定制度の導入
平成 12 年 6 月 1 日施行の改正建築基準法により、従来の旧工業化住宅認定制
度にかわって型式適合認定制度が導入された78。これにより、戸建住宅・賃貸
共同住宅について建築材料や主要構造部分等について包括的に「建築基準法に
基づく関係法規に適合する」ということを型式として予め認定してもらうこと
が可能となり、型式適合認定を取得していれば、個々の建築確認の簡略化が可
能となった。もっとも、型式適合認定制度を用いて建築確認の簡略化を行うた
めには、型式適合認定を取得している仕様しか用いることができず、その仕様
から少しでも外れている場合は一般的な建築確認申請を行う必要があった。
イ 型式適合認定制度導入前の状況
大和ハウスにおいては、型式適合認定制度導入以前においても、通常、高さ
を 620mm とする独立基礎を用いることとされていたが、地盤の表層改良9を行
った場合、地盤がフラットになるため、建物の外周部分の基礎(連続布基礎、
以下「布基礎」という。
)と高さを合わせて施工することが便宜であること等の
理由から、布基礎と同じ高さである 725mm の独立基礎も多く採用されていた。
ほかにも、凍結深度10が設定された地域や高低差がある敷地で独立基礎を用いる
場合等で、通常の高さ 620 ㎜以外の高さの独立基礎も採用されていた。
ウ 型式適合認定制度導入後の状況
7 建築基準法第 68 条の 10 ないし同法第 68 条の 24。
8 改正前の旧建築基準法第 38 条に基づく工業化住宅認定制度も、改正建築基準法の施行後 2 年間(平成
14 年 5 月 31 日まで)は有効とされた。
9 軟弱な地盤の土にセメント系固化材を混合させた上で、ローラーで転圧しフラットに固めた地盤。
10 寒冷地では地表から下の一定の深さまで凍結するため、 凍結しない深さまで基礎を掘り下げる必要があ
るところ、特定行政庁は当該寒冷地において凍結する深さを示している。
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① 独立基礎不適合の発生
型式適合認定制度が始まり、大和ハウスにおいて同制度の導入を開始した
平成 12 年 12 月当時、大和ハウスでは、独立基礎については高さ 620 ㎜のも
のしか型式適合認定を取得していなかった。
そのため、地盤の表層改良を行った場合、凍結深度が設定された地域の場
合及び敷地内に高低差がある場合において、当時、型式適合認定から外れた
高さ 725mm 他の独立基礎を用いる際には、本来、一般的な建築確認申請を行
わなければならなかった。
しかし、各事業所の設計者の多くは、大和ハウスにおいて型式適合認定制
度導入以前から採用していた高さ 725mm の独立基礎について、大和ハウスと
して型式適合認定制度導入に際して当然に型式適合認定を取得しているもの
と誤信していた可能性がある。そして、そのことが今回発覚した独立基礎不
適合問題発生という事態を生じさせた原因の一つであると思料される。
この点につき、大和ハウスにおいて型式適合認定制度の運用開始前の準備
段階及び運用開始後において、当時の大和ハウスの中で全国の事業所の型式
適合認定制度の運用状況を把握していたはずの戸建住宅・賃貸共同住宅の商
品開発部門(以下、単に「商品開発部門」という。)と戸建住宅・賃貸共同住
宅の設計業務の実務を行っていた事業所とのコミュニケーションの状況及び
戸建住宅・賃貸共同住宅の設計業務に関与する部門における建築基準法等の
法令遵守体制などにつき、今後、調査を進めていく必要がある。
② 大和ハウスの型式適合認定制度移行への取り組み状況
他方、型式適合認定制度への移行については、大和ハウスの技術本部が各
拠点の設計責任者等に対して社内通達を出す等して周知を図っていた。特に、
平成 13 年 9 月 21 日に常務取締役技術本部長名で出された社内通達において
は、型式適合認定制度において運用上特に注意すべき点として、独立基礎に
関する直接の記載ではないものの、
「基礎の取扱いについて 認定・認証上登
録されている仕様しか運用できない。例え安全側であっても、登録されてい
ない仕様での運用はできない。」との記載がある。
この記載等の存在から、独立基礎においても、型式適合認定を取得してい
る仕様以外の仕様で、型式適合認定を取得しているものと誤解して建築確認
申請を行うという運用がされる可能性について、技術本部も認識し得たので
はないかとも思料される。しかし、実際には、当該社内通達の前後において、
大和ハウスは各事業所の設計者に対し、高さ 620 ㎜以外の独立基礎は型式適
合認定を取得しておらず運用できないということを周知させることができな
かった。
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③ 今後の調査・検討
この点につき、大和ハウスが、平成 13 年 9 月の時点で、なぜ独立基礎不
適合問題を発見し終息させることができなかったのかという点が問題であ
り、今後、調査を進めていく必要がある。
なお、表層改良においては薬剤を使用し地面を固めるため、その後植樹が
育ちにくいなどの不便がある等の理由から、表層改良以外の工事方法が採用
されることが多くなり、独立基礎の採用が急速に減少し、それに伴い独立基
礎不適合問題も減少した。なお、独立基礎不適合問題が終息した経緯につい
ては、更に調査が必要である。
2. L 字型受柱不適合問題
(1)問題の概要
大和ハウスが建築した 2 階建て賃貸共同住宅の一部において、 階外部片廊下部分を
2
支える受柱に型式適合認定を取得した仕様の柱(独立柱)とは異なる仕様の柱(L字
型受柱)11が採用される設計が行われた建物があり、当該賃貸共同住宅については、本
来、型式適合認定を取得している前提で建築確認申請を行うのではなく、一般的な建
築確認申請を行わなければならなかったところ、型式適合認定を取得しているものと
して建築確認申請を行った。
(2)発覚の経緯
発覚の経緯は、上記 1(2)と同様である。
(3)原因にかかる事実関係
これまでのヒアリング等によれば、大要、次の事実関係が判明している。
ア 型式適合認定制度の導入
まず、平成 12 年 6 月 1 日施行の改正建築基準法により、従来の旧工業化住宅
認定制度にかわって型式適合認定制度が導入されたが、型式適合認定制度を用
いて建築確認の簡略化を行うためには、型式適合認定を取得している仕様しか
用いることができず、その仕様から少しでも外れている場合は一般的な建築確
認申請を行う必要があったことについては、上記 1(3)アと同様である。
イ 型式適合認定制度導入前の状況
11 独立柱と L 字型受柱については別紙図 2 を参照。
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大和ハウスにおいては、型式適合認定制度導入以前においても、関東(特に
東京都)において、限られた敷地面積の中で賃貸共同住宅の居住空間を少しでも
多くとりたいという顧客の要望が強かったことから、2 階外部片廊下を支える独
立柱の代わりにL字型受柱を採用することがあった。なぜなら、独立柱を採用す
ると、独立柱が立っている 2 階外部片廊下部分を建築面積に含めて建蔽率を計算
しなければならないが、L 字型受柱を採用すると、当該 2 階外部片廊下部分の外
側から約 1m幅分を建築面積に含めないで建蔽率を計算することができる結果、
賃貸共同住宅の居住空間をより大きくすることが出来たからである。
ウ 型式適合認定制度導入後の状況
① L字型受柱不適合の発生
型式適合認定制度導入に際し、大和ハウスはL字型受柱について型式適合
認定を取得していなかった。そのため、賃貸共同住宅の居住空間をより大き
くしてほしいとの要望を受けた各事業所の設計者は、型式適合認定を取得し
ていないL字型受柱を用いる際は、本来、一般的な建築確認申請を行わなけ
ればならなかった。
しかし、各事業所の設計者の多くは、大和ハウスにおいて型式適合認定制
度導入以前から採用していたL字型受柱について、大和ハウスとして型式適
合認定制度導入に際して当然に型式適合認定を取得しているものと誤信して、
型式適合認定を取得していることを前提とした建築確認申請を行った可能性
がある。そして、そのことが今回発覚したL字型受柱不適合問題の発生とい
う事態を生じさせた原因の一つであると思料される。
② 今後の調査・検討
この点につき、1 (3)ウ①の独立基礎不適合問題につき指摘したとおり、大
和ハウスにおいて型式適合認定制度の運用開始前の準備段階及び運用開始後
における、当時の商品開発部門と戸建住宅・賃貸共同住宅の設計業務の実務
を行っていた事業所とのコミュニケーションの状況及び戸建住宅・賃貸共同
住宅の設計業務に関与する部門における建築基準法等の法令遵守体制などに
つき、今後、調査を進めていく必要がある。
他方、関東の事業所に配属された設計責任者の一部の者が、平成 19 年頃、
L字型受柱を採用した物件について、型式適合認定を取得していることを前
提とした建築確認申請を行った際に、指定確認検査機関からL字型受柱につ
き型式適合認定を取得していることにつき疑問が呈されたため、大和ハウス
の商品開発部門に問い合わせたところ、L字型受柱は型式適合認定を取得し
ていないとの回答をうけ、L字型受柱は型式適合認定を取得していないこと
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を認識した。その後、関東の設計責任者の情報交換等によって、次第にL字
型受柱が型式適合認定を取得していないことが、関東の設計責任者に知られ
るようになり、その後は、一般的な建築確認申請が行われるようになった結
果、 字型受柱不適合問題は平成 20 年に引き渡された建物を最後に終息した。
L
しかしながら、上記のような経緯により、関東の設計責任者の多くが、建
築基準法に定められた本来の建築確認申請手続きに違反して賃貸共同住宅の
建築確認申請をしていたことを認識するに至り、また、その問い合わせを受
けた商品開発部門の担当者もその違法性を認識する機会があったにもかかわ
らず、大和ハウスの内部統制システムにより、それまでのコンプライアンス
違反が覚知され、是正が図られることはなかった。
この点、平成 19 年当時の大和ハウスの内部統制システムがどのように整
備・運用されていたのか、なぜ内部統制システムによって、コンプライアン
ス違反を覚知し是正することができなかったのかという点についても、今後、
調査を進めていく必要がある。
3. 防火基準不適合問題
(1)問題の概要
大和ハウスが建築した L 字型受柱不適合問題にかかる賃貸共同住宅のうち、主要
構造部を準耐火構造として建築する必要のある建物において、型式適合認定を取得
していた 2 階外部片廊下を支える独立柱(耐火被覆あり)に代わり、型式適合認定
を取得していなかったL字型受柱(耐火被覆無し)を採用したため、本来、主要構
造部を準耐火構造として建築する必要がある前提で、一般的な建築確認申請を行わ
なければならなかったところ、型式適合認定を取得していることを前提とした建築
確認申請が行われた結果、当該L字型受柱の部分につき防火基準に適合しないおそ
れがある建物が存在した。
(2)発覚の経緯
L字型受柱不適合問題を調査する過程において、平成 31 年 2 月 18 日に大和ハウ
スより国土交通省に対し、L字型受柱不適合問題が生じていた可能性がある旨報告
した際、国土交通省より事案の詳細及び影響範囲等について調査するよう指示があ
った。
同指示に基づき、大和ハウスにおいて改めて社内調査を進めていたところ、平成
31 年 3 月 8 日、2 階外部片廊下を支える受柱に防火基準に不適合のおそれのある物
件があることが判明し、さらに調査を進めた結果、同月 26 日、大和ハウスより国土
交通省に対し、2 階外部片廊下を支える受柱が建築基準法・消防法および関係条例の
防火基準に不適合のおそれがある物件が判明したとの報告がなされた。
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(3)原因にかかる事実関係
2(3)イでも述べたとおり、建蔽率の制限が厳しかった関東地方(特に東京都)
を中心に、賃貸共同住宅において 2 階外部片廊下を支える独立柱に代わり、L字型
受柱が一定数採用されていたが、このL字型受柱には、独立柱と異なり、耐火被覆
が存在しなかった。また、型式適合認定を取得していないL字型受柱を用いる際は、
本来、一般的な建築確認申請を行わなければならなかったにもかかわらず、型式適
合認定を取得していることを前提とした建築確認申請が行われていた。
そして、建築基準法・消防法および関係条例の防火基準との関係では、建物の主
要構造部を構成するL字型受柱を採用した建物については、一般的な建築確認申請
を行い、L字型受柱について耐火被覆による防耐火処置を講ずることが建築基準
法・消防法及び関係条例の防火基準に照らして必要か否かについて、指定確認検査
機関等の厳重な審査・チェックを受けるべきであったのに、当該L字型受柱につい
ても型式適合認定制度の特例による建築確認申請をしたため、その必要な防耐火に
関する審査・チェックを経ないまま、建築基準法・消防法および関係条例の防火基
準に不適合のおそれがある建物が建築されることとなった。
4. 型式適合性等のチェックに係る体制
大和ハウスにおいては、平成 26 年から平成 27 年の「戸建住宅・賃貸住宅用の防火
シャッター雨戸ならびに防火ドア・防火サッシにおける不適合施工」 平成 28 年の
、 「賃
貸住宅等における小屋裏界壁パネルの国土交通大臣認定の仕様に関する不適合」等を
受け、平成 28 年 4 月に仕様監理部(平成 29 年に部昇格)を設置し、新規仕様および
変更仕様に関する技術情報について一元管理し、不適合を防止する体制となっている。
もっとも、本問題が発生した平成 12 年から平成 25 年時点では、同部署は存在せず、
型式適合認定を取得しているか否かについては、まずは各事業所の各設計者において、
チェックシート等に基づき自らチェックし、不明な点があれば商品開発部門に問合せ
を行うという体制になっていた。また、工場部材の生産をするための業務を担う生産
設計センター(現「生産業務センター」)においても、業務の過程において設計要項と
呼ばれる社内ルールに沿った設計になっているかの図面チェックがなされていた。
しかし、実際に本件不備が生じていることから、これらのチェック体制が実際に機
能していたのか等の問題につき、今後、調査を進めていく必要がある。
第 3 現時点における考え得る本件不備の原因・背景
1.型式適合認定制度の運用が開始された平成 12 年の時点
これまでの調査によれば、次の事実が認められる。
改正建築基準法の施行後、大和ハウスにおいて戸建住宅・賃貸共同住宅につき型式
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適合認定制度の運用が開始された平成 12 年 12 月時点において、型式適合認定制度導
入については、大和ハウスの技術本部が各事業所の設計責任者等に対して社内通達を
出す等して周知を図っていた。
しかし、各事業所の設計担当者の中には、型式適合認定制度を用いて建築確認の簡
略化を行うためには、型式適合認定を取得している仕様しか用いることができず、そ
の仕様から少しでも外れている場合は一般的な建築確認申請を行う必要があることに
ついての理解・認識が不十分な者が少なからずいたと思われる。そして、型式適合認
定制度についての理解・認識が不十分である各事業所の設計者の多くは、型式適合認
定制度導入前に採用されていた独立基礎 L 字型受柱は当然に型式適合認定を取得して
・
いるものと誤信して、型式適合認定を取得していることを前提とした建築確認申請が
行われていた可能性が高い。
これらの事実からすると、まず、大和ハウスの技術本部が各事業所に向けて型式適
合認定制度の周知を図っていたとしても、その周知の方法等が十分なものであったか
については、更なる調査・検討を要する問題である。
2. 型式適合認定制度の運用開始後の平成 13 年及び平成 14 年の時点
第 2 の 1(3)ウのとおり、平成 13 年 9 月 21 日に常務取締役技術本部長名で出され
た社内通達においては、型式適合認定制度において運用上特に注意すべき点として、
独立基礎に関する直接の記載ではないものの、
「基礎の取扱いについて 認定・認証上
登録されている仕様しか運用できない。例え安全側であっても、登録されていない仕
様での運用はできない。
」との記載がある。この記載等の存在から、独立基礎において
も、型式適合認定を取得している仕様以外の仕様で、型式適合認定を取得しているも
のと誤解して建築確認申請を行うという運用がされる可能性について、商品開発部門
も認識し得たのではないかとも思料される。
この時点で、その可能性について認識し、適切な措置を講じることができれば、本
件不備の発生も未然に防止できた可能性もあり、これらの点からも当時の商品開発部
門の認識、その他の事情について更に調査・検討を要する問題である。
なお、型式適合認定制度導入に伴い、平成 14 年 2 月には、全国 4 ヵ所で、設計責任
者等に対する型式適合認定制度の説明会も開催されていた。
また、平成 14 年 7 月 11 日に取締役名で出された社内通達においては「個々の物件
の認定・認証範囲を確認する為のチェックリストを後日配布する。」との記載がある。
この点、後日配布されたチェックリストにおいて、独立基礎についてのチェック欄で
は、ベース幅の長さのみがチェック対象となっており、その高さはチェック対象とな
っていなかったことから、当該チェックリストだけでは独立基礎不適合問題を解消さ
せるには不十分であったと思われる。この点については更なる調査・検討が必要であ
る。
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3.L字型受柱が型式適合認定を取得していないことを認識するに至った平成 19 年の時
点
第 2 の 2(3)ウのとおり、平成 19 年頃、関東の設計責任者の多くが、建築基準法
に定められた本来の建築確認申請手続きに違反して賃貸共同住宅の建築確認申請をし
ていたことを認識するに至り、また、その問い合わせを受けた商品開発部門の担当者
もその違法性を認識する機会があったにもかかわらず、これまでの調査の限りにおい
ては、大和ハウスの内部統制システムにより、それまでのコンプライアンス違反が覚
知され、是正が図られた形跡は認められなかった。
この点に関しても、当時の大和ハウスの中の戸建住宅・賃貸共同住宅に係る型式適
合認定制度の運用にかかわっていた部門全体における建築基準法等の法令遵守体制な
どについて、更に、調査・検討が必要である。
第 4 今後の方針
当委員会の現時点における調査の状況は以上のとおりである。
当委員会としては、今後、更に調査を進め、本件不備が発生した経緯を改めて確認
し、型式適合認定のチェック体制等を重ねて調査し、本件不備の原因の特定に努める。
また、本件不備の再発防止等の観点からも調査を進め、本年 6 月中を目処に、本件
不備の原因分析に加え、再発防止策の提言を大和ハウスに行う予定である。
以 上
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別紙図1(独立基礎)
型式適合認定を取得してる 型式適合認定を取得していない
独立基礎の仕様 独立基礎の仕様
底面からの高さが620㎜となっている。 底面からの高さが725㎜他となっている。
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別紙図2(L 字型受柱)
型式適合認定を 型式適合認定を
断面形状
断面形状
取得している 取得していない 10mm
9mm 4.5mm
3.2mm 75mm
60mm 150mm
114.3mm
2階外部片廊下を 7mm 125mm
2階外部片廊下を 75mm
60mm
6.5mm
150mm
125mm
支える柱 支える L 字型受柱
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