1445 P-ひかりHD 2021-08-24 10:00:00
当社子会社の元役員による業務上横領等に係わる内部調査委員会の結果、再発防止策の策定及び関係者処分に関するお知らせ [pdf]
2021 年8月 24 日
各 位
会 社 名 株式会社ひかりホールディングス
(コード番号 1445 TOKYO PRO Market)
代 表 者 名 代表取締役社長 倉地 猛
問 合 せ 先 執行役員管理本部長 立川 征吾
T E L 0572-56-1212
U R L https://www.h-holdings.jp
当社子会社の元役員による業務上横領等に係わる内部調査委員会の結果、
再発防止策の策定及び関係者処分に関するお知らせ
2021 年6月 29 日付「当社連結子会社の元役員による業務上横領等の疑い及び内部調査委員会
の設置に関するお知らせ」で公表いたしました当社子会社並びに当社の元役員(以下、
「前社長」
といいます。
)による業務上横領(以下、
「本件」といいます。
)の疑いについて、内部調査委員会
において調査を進めた結果、2021 年 8 月 23 日に内部調査委員会から別紙「調査報告書」
を最終報告として受領いたしました。
当社では、内部調査委員会が認定した事実と原因分析を真摯に受け止め、2021 年8月 23
日開催の取締役会において、再発防止策及び前社長の処分を決議いたしましたので、その
概要を下記のとおりお知らせいたします。
株主様をはじめ関係者の皆様には、多大なご迷惑とご心配をおかけしております事を改
めて、深くお詫び申し上げます。当社といたしましては、二度とこのような不祥事を起こ
さぬよう、牽制機能の強化、コンプライアンス教育に努め、全社をあげて再発防止策の徹
底に取り組んでまいります。
記
Ⅰ.本件の概要と当該事実が判明した経緯について
当社代表取締役社長である倉地猛が 2021 年5月 18 日付で株式会社トライ(以下「㈱ト
ライ」といいます。
)の代表取締役社長に就任後、就任以前から㈱トライの前社長による外
注費の不正発注等の不正行為疑惑に懸念を抱いていた方から通報を受けた事により、関係
1
資料の閲覧・関係者へのインタビュー等の社内調査を進めたところ、前社長が㈱トライの
金銭を横領していた可能性が高い事が判明し、事実確認のため、2021 年6月 29 日開催の
当社臨時取締役会において、内部調査委員会(以下「当委員会」といいます。)を設け調査
を依頼したものです。調査期間は、㈱トライを連結子会社化した期の翌期首である 2016 年
9 月 1 日から前社長が辞任した 2021 年5月 18 日までの約5年間とし、保管されている帳
簿書類、証憑類(請求書、納品書、契約書、預金通帳等)等を精査すると共に、前社長が
使用していたノートパソコンのデータレビュー、前社長に近い社内外の関係者に対するヒ
アリング調査、㈱トライの主要な仕入先に対するアンケート調査等を行いました。その結
果、前社長は、代表取締役社長という立場を利用して、前社長が個人で負担すべき経費の
請求書を㈱トライへ付け替える等の方法で、個人の利得を得て会社に損害を与えていた事
実が判明しました。
2.内部調査委員会の体制
当社は、当社グループと利害関係を有していない弁護士の金井正成氏を委員長として内
部調査委員会を設置し、本件の全容解明を図るため、調査にあたる事を依頼致しました。
なお、他の委員には、調査及び評価の客観性を担保するために当社社外監査役の岩田修一
(弁護士)
、同竹尾卓朗(公認会計士)の両氏を選任するとともに、当社グループの業務に
精通している丹羽直樹(常勤監査役)、小出五輪生(コンプラインス室長)を委員に起用し
ました。
委員長 金井正成(弁護士 かない法律事務所 代表)
委 員 岩田修一(当社社外監査役/弁護士 岩田法律事務所 代表)
委 員 竹尾卓朗(当社社外監査役/公認会計士 竹尾公認会計士事務所 所長)
委 員 丹羽直樹(当社常勤監査役)
委 員 小出五輪生(当社コンプライアンス室長)
3.調査内容及び原因分析
(1)調査の期間及び対象範囲
本件調査は、2021 年8月 23 日を報告のための基準日とし、㈱トライを連結子会社化し
た期の翌期首である 2016 年 9 月 1 日から前社長が辞任した 2021 年5月 18 日までの約5
年間を調査対象期間としました。また、本件調査の過程で明らかとなった同様の不正行為
を行う事が可能な立場にあった役職員に対してもヒアリングを行い、資金の流出状況を調
査しましたが、共謀・組織的関与は認められませんでした。
(2)本件不正行為の概要
当委員会からの調査結果によると、前社長による不正行為の態様として、以下の3つの
類型が認められました。
2
① 私的流用 ②請求書日付の改竄 ③横領
(3)原因分析
本件不正事案は前社長が1人で行った不正行為であります。前社長は、2013年に㈱トラ
イの代表取締役社長に就任以降、同社の代表者であるという立場を利用して、取引業者に
対して請求書の改竄を指示して、私的な経費を㈱トライに付替え、前社長が利得を得ると
ともに㈱トライに損害を与えた不正行為であり、前社長が㈱トライを半ば私物化していた
事が原因であると報告を受けました。このような事が起きた背景には、㈱トライ内におい
て、前社長により、役職員の不正行為を防ぐための牽制機能が無効化されていた事、すな
わち「経営者による内部統制の無効化」が原因の1つであると考えられます。また、前社
長による㈱トライの私物化を抑止する事ができなかった点については、親会社である当社
における前社長に対する監視・監督が不十分であった事が原因の1つであると考えており
ます。当社グループでは、各子会社の経理業務を当社が行う事で、一定の牽制機能を働か
せて、ガバナンスを保っております。しかし、㈱トライについては2016年に当社の連結子
会社となって以降も、前社長の強い要求により、㈱トライの経理担当者1名と前社長との
非常に閉鎖された環境の中で経理業務が行われており、その体制を許容してしまう事で牽
制機能が十分に効かない状況を作ってしまった事は否めません。
4. 再発防止策
2021年7月6日付で当社が開示した「連結子会社の再編(完全子会社間の合併)及び商号
変更に関するお知らせ」に記載の通り、㈱トライと当社の連結子会社で同一セグメント(電
気通信工事事業)に属する株式会社ネットを2021年9月1日付で合併する予定です。今回
の組織再編は事業基盤の強化の他に、三様監査を実効的なものにする事も企図しておりま
す。新会社であるエムエイトアイ株式会社(以下「M8I㈱」といいます。
)には経理部門
を置かず、当社で経理実務を行う体制を取る事で牽制機能を強化していきます。
今回の不正事案は「社長案件」という地位を乱用した請求・支払処理を行っていた事に
起因しております。また、この「社長案件」について㈱トライの役職員の多くが問題意識
さえ有していなかった事も前社長の不正事案に拍車をかけました。この事から、当社は、
本日開催の取締役会においてさらに以下の再発防止策を決議いたしました。今後は再発防
止に向けて上記対応に加え、着実に取り組んでまいります。
・監査役の常駐
当面、㈱トライ(2021年9月1日以降はM8I㈱)に当社の監査役1名を常駐させます。
日常的なモニタリングが機能せず不正事件が発生してしまった事を踏まえると、事後監
査にとどまらず、監査役による牽制機能及び事務指導をコンプラインス室と連携し強化
を図ります。
・コンプライアンス教育
㈱トライ(2021 年 9 月 1 日以降は M8I㈱)の全役職員が業務の適正を確保するため、
3
「ひかりホールディングス行動規範」や「コンプライアンス・リスク管理規程」を周知
し、今後各月発行している「ひかりホールディングスメールマガジン」でコンプライア
ンスを全社員に啓蒙するだけでなく、定期的にコンプライアンス室が主導し研修を行う
と共に、あらゆる社内会議において内部統制の重要性を広めるようにコンプライアンス
教育の充実を図ります。
・内部通報制度の見直し
当社は従前から内部通報制度を整備していたものの、子会社レベルでは違法・不正行
為等の予防措置としては実効性に乏しかったと指摘を受けました。今後は通報窓口とし
て顧問弁護士等の社外第三者を加える事、通報窓口をグループ全体に再度周知徹底する
事、通報者の不利益防止を担保する事等を「ひかりホールディングスメールマガジン」
で、内部通報制度の仕組みを周知徹底させ実効性の高い運用を図ります。
5. 関係者の処分
今回の不正事案をおこした前社長は既に㈱トライ並びに、当社取締役を辞任しておりま
すので、当社として処分を行う事はいたしませんが、不正事案を収束させるため、前社長
との間で本日開催の取締役会で「和解合意書」を締結する事を決定いたしました。
6. 業績に与える影響
不正事案が行われた期間の当社の過年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼしていない
ため、過年度の連結財務諸表の訂正は行わず、当連結会計年度(2021年8月期)の連結財務
諸表に影響額を反映する事としております。
以 上
4
株式会社ひかりホールディングス取締役会御中
2021年8月23日
調 査 報 告 書
内部調査委員会
委員長 金井 正成
委 員 岩田 修一
委 員 竹尾 卓朗
委 員 丹羽 直樹
委 員 小出 五輪生
目 次
第1 本件調査の概要 ………………………………………………………………… 4
1.本件調査に至った経緯 ………………………………………………………… 4
2.本件調査の目的 ………………………………………………………………… 4
3.本件調査の体制 ………………………………………………………………… 4
第2 本件調査の方法 ………………………………………………………………… 5
1.本件調査の範囲 ………………………………………………………………… 5
2.本件調査の基準日 ……………………………………………………………… 5
3.関係資料の確認・精査 ………………………………………………………… 5
4.ヒアリング調査 ………………………………………………………………… 5
5.アンケート調査 ………………………………………………………………… 5
第3 調査の結果判明した事実 ……………………………………………………… 7
1.㈱トライの概要等 ……………………………………………………………… 7
2.本件不正行為について ………………………………………………………… 7
(1)本件不正行為の態様 ………………………………………………………… 7
(2)調査内容及び結果 …………………………………………………………… 7
(3)当社の連結財務諸表に対する影響 ………………………………………… 12
第4 本件横領事案が発生した原因・背景 ………………………………………… 13
1.前社長による㈱トライの私物化 ………………………………………………… 13
2.㈱トライにおける牽制機能の無効化 ………………………………………… 13
3.ひかりホールディングスにおける前社長に対する不十分な監視・監督 … 13
第5 再発防止策 ……………………………………………………………………… 15
1.牽制機能の強化 ………………………………………………………………… 15
(1)㈱トライにおける内部統制の見直し ……………………………………… 15
(2)当社主導による経理業務の問題改善 ……………………………………… 15
2.コンプライアンス教育 ………………………………………………………… 15
3.ひかりホールディングスにおける子会社管理体制の強化 ………………… 16
(1)当社グループ内部監査部門の強化 ………………………………………… 16
(2)組織再編によるガバナンスの強化 ………………………………………… 16
2
【主な用語・定義】
用語 正式名称・意味・定義
当社 株式会社ひかりホールディングス
㈱トライ 当社の連結子会社である株式会社トライ
前社長 ㈱トライ社の前代表取締役社長
当委員会 2021年6月29日に当社の取締役会が設置する事を決議した内部調査
委員会
本件不正行為 前社長が㈱トライの資産を私的流用、横領等していた行為
本件調査 当委員会が2021年6月29日から2021年8月23日の間に実施した調査
手続
3
第1 本件調査の概要
1.本件調査に至った経緯
2021年6月29日付で当社が開示した「当社連結子会社の元役員による業務上横領等
の疑い及び内部調査委員会の設置に関するお知らせ」に記載の通り、当社代表取締役
社長である倉地猛氏が2021年5月18日付で㈱トライの代表取締役社長に就任後、㈱ト
ライの前社長による外注費の不正発注等の不正行為疑惑に懸念を抱いていた方から
通報を受けた事により、関係資料の閲覧・関係者へのインタビュー等の社内調査を進
めたところ、前社長が㈱トライの金銭を横領していた可能性が高い事が判明した。そ
のため、2021年6月29日開催の当社臨時取締役会において、当委員会を同日付けで設
置し、より詳細な調査を開始する事を決議した。
2.本件調査の目的
本件調査の目的は、以下の事項に関する調査及び検討を行う事である。
(1) 本件不正行為に関する事実関係の解明
(2) 本件不正行為による当社連結財務諸表等への影響額の確認
(3) 本件不正行為が生じた原因の分析と再発防止策の提言
(4) 類似取引、事例の有無の確認
(5) その他、内部調査委員会が必要と認めた事項
3.本件調査の体制
当委員会は、以下の5名で構成されている。
委員長 金井正成(弁護士 かない法律事務所 代表)
委 員 岩田修一(当社社外監査役/弁護士 岩田法律事務所 代表)
委 員 竹尾卓朗(当社社外監査役/公認会計士 竹尾公認会計士事務所 所長)
委 員 丹羽直樹(当社常勤監査役)
委 員 小出五輪生(当社コンプライアンス室長)
金井正成は、当社グループ外部の第三者であり、当社グループと利害関係を有して
いない。岩田修一と竹尾卓朗は、当社社外監査役であり、特別な利害関係を有しない。
丹羽直樹、小出五輪生は、当社グループの業務に精通している事から委員に起用した。
4
第2 本件調査の方法
1.本件調査の範囲
当委員会は、関連資料・データの保存期間等を踏まえ、2016年9月1日から2021
年5月18日までを本件調査の対象とした。
2.本件調査の基準日
当委員会は2021年6月29日に設置された。本件調査の報告のための基準日(以下
「基準日」という。)は、2021年8月31日とし、基準日までに3回の委員会を開催し
た。
3.関係資料の確認・精査
当委員会は、本件不正行為疑義に関して、㈱トライの帳簿書類、証憑類(請求書、
納品書、契約書、預金通帳等)等、本件の事実関係の把握に必要と認める範囲で関係
する資料等を収集し、その内容を精査・検証した。請求書等の調査を進める中で不自
然な経費支払が散見されたため、本件調査の端緒となった外注費に限らず、経費支出
全般について調査した。
また、前社長が業務上用いていたノートパソコンに保存されていたメールデータ
(メール本文及びその添付ファイル)について、データレビューを実施した。
4.ヒアリング調査
当委員会は本件の事実関係、原因・背景等を明らかにするため、2021年6月29日
から同年7月30日にかけて、㈱トライの関係者合計4社5名に対してヒアリング調
査を実施した。㈱トライの関係者には、疑義のある請求書等を発行した取引先を含
む。
また、上記の他、当委員会は、本件不正疑義の会計的な影響額等を確定するために、
当社の会計監査業務を行う監査法人コスモスに対する質問等を適宜実施した。
5.アンケート調査
当委員会は、㈱トライの主要な仕入先に対して、本件不正疑義への関与の有無、そ
の内容及びその原因、本件不正疑義以外の不適切な取引の有無及びその内容等を尋ね
る書面アンケート調査を実施した。その結果として、17件の情報を得た。
6.前提事項
当委員会による調査及びその結果には、次の通り限定及び限界がある。
・当委員会による調査は当社グループの誠実な協力の下で行われたが、当委員会の調
査に強制力はなく、事実関係の調査には自ずと限界があり、当委員会の行った事実
5
認定は当社グループの役職員の任意の供述や当社グループ及びその取引先等から
提出を受けた資料に依拠せざるを得ず、過去の事実関係の全てを網羅したものでも
ない。
・当委員会設置の目的は上記第1の2の通りであり、本報告書は当該目的以外の目的
に用いられる事を予定していない。
・当委員会による調査は、当社取締役会からの委嘱を受けて、当社グループのために
行われたものであり、当委員会は、当該調査及びその結果について、当社グループ
以外の第三者に対して責任を負わない。
6
第3 調査の結果判明した事実
1.㈱トライの概要等
㈱トライは、電気通信工事を主たる目的として1991年1月に設立され、情報通信
設備工事、システム設計・施工・保守・点検等を行なっている。2016年3月に当社
の連結子会社である株式会社ネットが㈱トライの株式を取得し同社を連結子会社化
した。現在、本社がある愛知県を中心に、広島県にも営業所を設け、中部圏だけで
はなく、岡山・広島エリアも商圏として活動している。また、ITベンダーや無線機
メーカー等から一次請けとして工事を受託しサービスを提供している。前社長は
2004年に㈱トライの取締役に就任し、2013年に同社代表取締役社長に就任した。
2.本件不正行為について
(1)本件不正行為の態様
本件調査の結果、前社長による不正行為の態様として、以下の3つの類型が認めら
れた。
① 私的流用
② 請求書日付の改竄
③ 横領
(2)調査内容及び結果
前社長は、代表取締役社長という立場を利用して、前社長が個人で負担すべき経費
の請求書を㈱トライへ付け替える等の方法で、個人の利得を得て会社に損害を与えて
いた事等が判明した。
(ア)A社との取引についての調査内容及び結果
A社は㈱トライの自動車及び部品の販売並びに整備等を行う自動車ディーラーで
ある。A社の請求書を精査したところ、請求書がA社の共通様式と異なるもの、㈱ト
ライの所有ではない自動車に係る整備作業等が発見された。左記について、A社の
顧客対応部署に問い合わせたところ、㈱トライの営業担当者X氏が請求書の改竄、
偽造を行った事を認めた。A社は、過去5年間の㈱トライとA社との全取引の中で同
様の不正行為の有無内容について調査する事を約し、2021年7月21日付で、A社よ
り「調査報告書」を受領した。当該報告書及びA社の顧客対応部署責任者、㈱トラ
イを主に担当する支店長に対して対面でヒアリングを行った結果より、主に以下の
不正行為が認められる。
・㈱トライのA社への対応は主に前社長が行っており、A社への支払は㈱トライの経
理部門による銀行振込でなく、㈱トライ名義のクレジットカードによる決済により
行われていた事を背景に、前社長は、自身及び家族の所有する自動車の整備費用や
車検代、タイヤ料金等の個人的な支出を、㈱トライに負担させていた。
7
・前社長は、数年間に渡って㈱トライを担当していたA社の営業担当者X氏に対し、
A社にとって㈱トライが有力な販売先であるという優越的地位を濫用し、個人的な
支出を㈱トライに対して請求するように指示した。X氏は、A社の請求書発行システ
ムから出力される同社の正式な請求書様式に似せた請求書を表計算ソフトで作成
し、A社内での承認を経ずに㈱トライへ請求書を提出していた。
・同様の私的流用は、2016年3月から2021年2月までの間に計37件、1,346,590円
行われている。㈱トライの会計期間ごとの件数・金額は以下の通りである。
<①私的流用の件数・金額>
会計期間 件数 金額(税込)
2017年8月期 5件 48,900円
2018年8月期 8件 194,699円
2019年8月期 11件 498,285円
2020年8月期 6件 181,948円
2021年8月期 7件 422,758円
合 計 37件 1,346,590円
・前社長は、㈱トライの月次・年次決算の損益を意図的に操作する目的で、A社の
営業担当者X氏に対し、㈱トライに対する請求書を本来あるべき請求日とは異なる
日付で発行させていた。㈱トライの会計期間ごとの件数・金額は以下の通りである。
<②請求書日付の改竄>
金額 会計影響額
実際の計上期 あるべき計上期 件数
(税抜) (税抜)
2017 年8月期 2017 年8月期 11 件 749,130 円 -円
2018 年 8 月期 1件 32,400 円 -円
2018 年 8 月期
2019 年 8 月期 1件 64,107 円 +64,107 円
2018 年 8 月期 1件 64.107 円 △64,107 円
2019 年 8 月期
2019 年 8 月期 1件 71,181 円 -円
2020 年 8 月期 3件 626,482 円 -円
2020 年 8 月期
2021 年 8 月期 1件 100,000 円 +100,000 円
2021 年 8 月期 2020 年 8 月期 1件 100,000 円 △100,000 円
合 計 - - - -円
(イ)B社との取引についての調査内容及び結果
B社は㈱トライの工事用部品の仕入先である。㈱トライは、年1回程度開催され
る社内のゴルフコンペの賞品としてB社より家電製品を調達しているが、その際に、
㈱トライの従業員から家電製品の個人的な購入申込みを受付け、あわせて調達して
いた。B社の請求書及び関係証憑を精査したところ、㈱トライが営む事業と関係が
8
ない請求内容であると疑われたため、社内関係者に対してヒアリング等を行った結
果、以下の不正行為が認められた。
・家電製品の購入申込を行った従業員から購入代金を徴収していたが、㈱トライの
現金出納簿にその入金記録がないため、6回の購入分、計1,897,409円を前元社長が
着服したと判断している。
<③横領の件数・金額>
会計期間 件数 金額(税込)
2017年8月期 3件 1,050,239円
2018年8月期 1件 304,560円
2019年8月期 1件 250,560円
2020年8月期 1件 292,050円
合 計 件 1,897,409円
(ウ)C社との取引についての調査内容及び結果
C社は外装等の工事を行う建設業者である。C社の請求書及び関係証憑を精査した
ところ、㈱トライと関係がない請求内容であると疑われたため、同社の代表者に対
して対面でヒアリングを行った結果、以下の不正行為が認められた。
・C社は、前社長より前社長の自宅ガレージの工事を依頼され、1,430,000円(税込)
で請負工事を行った。
・前社長より、上記の工事代金の一部を㈱トライへ請求する事を指示され、C社の
代表者はこれに従った。前社長よりC社に対して、請求内容を「Y社 基礎工事
979,000円」とする等、詳細な指示がなされている。
・㈱トライの会計期間ごとの件数・金額は以下の通りである。
<①私的流用の件数・金額>
会計期間 件数 金額(税込)
2021年8月期 1件 979,000円
合 計 1件 979,000円
9
(エ)D社との取引についての調査内容及び結果
D社は㈱トライの自動車の整備等を行う自動車整備業者である。D社の請求書及
び関係証憑を精査したところ、㈱トライと関係がない請求内容であると疑われたた
め、同社の代表者に対して対面でヒアリングを行った結果、以下の不正行為が認め
られた。
・前社長は、自身及び家族の所有する自動車の整備費用や車検代、タイヤ料金等の
個人的な支出を、㈱トライに負担させていた。
・前社長より、個人的な支出を㈱トライへ請求する事を指示され、D社の代表者は
これに従った。
・同様の私的流用は、2019年7月から2020年9月までの間に計4件、748,107円行
われている。㈱トライの会計期間ごとの件数・金額は以下の通りである。
<①私的流用の件数・金額>
会計期間 件数 金額(税込)
2019年8月期 1件 257,319円
2020年8月期 2件 344,772円
2021年8月期 1件 146,016円
合 計 4件 748,107円
・㈱トライの社用車をD社が廃車処理した際に、前社長に対して現金を支払った旨
をヒアリングにより確認したが、㈱トライの現金出納簿に入金記録がないため、前
社長が受領した現金を着服したと判断している。㈱トライの会計期間ごとの件数・
金額は以下の通りである。
<④横領の件数・金額>
会計期間 件数 金額(税込)
2020年8月期 2件 100,000円
合 計 2件 100,000円
10
(カ)E社との取引についての調査内容及び結果
E社は内装工事等を行う建設業者であり、㈱トライと数回の取引実績がある。E社
の請求書及び関係証憑を精査したところ、㈱トライと関係がない請求内容であると
疑われたため、同社の代表者に対して対面でヒアリングを行った結果、以下の不正
行為が認められた。
・㈱トライにおける2回目のトイレ工事を行った際に、前社長の自宅トイレ工事を
追加で依頼され、施工した。前社長より、当該工事代612,700円を㈱トライへ請求す
る事、請求内容は㈱トライにおける内装工事とする事(前社長より詳細な内訳を指
示された)を指示され、E社の代表者はこれに従った。㈱トライの会計期間ごとの件
数・金額は以下の通りである。
<①私的流用の件数・金額>
会計期間 件数 金額(税込)
2020年8月期 1件 612,700円
合 計 1件 612,700円
11
(3)当社の連結財務諸表に対する影響
上記(2)より、当社の連結財務諸表に対する影響額は以下の通りとなる。なお、
影響額に付した符号について、
「+」は修正する事によって利益が増加する事を、
「△」
は修正する事によって利益が減少する事を表している。
会計期間 影響額(税抜) 遡及修正
2017年8月期 +1,017,722円 不要と判断している。
2018年8月期 +526,384円 不要と判断している。
2019年8月期 +867,526円 不要と判断している。
2020年8月期 +1,483,154円 不要と判断している。
過年度計 +3,894,786円 -
2021年8月期 +1,316,158円 -
合計 +5,210,944円 -
上記より、2017年8月期から2020年8月期までの各期の影響額は、当社の過年度
の連結財務諸表に重要な影響を与えていないと判断したため、当連結会計年度(2021
年8月期)の連結財務諸表に影響額を反映する事とする。
12
第4 本件不正行為が発生した原因・背景
1.前社長による㈱トライの私物化
本件不正行為は、上記「第3(2)
」に記載の通り、前社長が1人で行った不正
行為である。前社長は、2013年に㈱トライの代表取締役社長就任以降、同社の代表
者であるという立場を利用して、取引業者に対して請求書の改竄を指示して、私的
な経費を㈱トライに付替え、前社長が利得を得るとともに㈱トライに損害を与えた
不正行為であり、前社長が㈱トライを半ば私物化していたと言わざるを得ない。
2.㈱トライにおける牽制機能の無効化
上記1記載の前社長による㈱トライの私物化が可能となったのは、㈱トライ内に
おいて、前社長により、役職員の不正行為を防ぐための牽制機能が無効化されてい
た事、すなわち「経営者による内部統制の無効化」が原因の1つであると考えられ
る。
前社長が不正行為を主導的に行う事ができた「機会」がいかにして醸成されたか
を考えるにつき、前社長は、2004年に取締役、2013年に代表取締役社長に就任し、
2021年5月18日に辞任するまでの年月において、㈱トライのトップの地位にあり、
同社の業務全体を取り仕切っていた。前社長の技術・営業の実務における知識・経
験・スキルは社内でも随一であり、業務面での実力に加えて、強力で時に高圧的な
リーダーシップを取りながら、面倒見が良いという一面もあった。こうした事情に
より、同社の運営ひいては経営全般に関して社内で前社長に意見できる者はなかっ
た。㈱トライが当社の連結子会社となって以降も、当社経理部員の間では、前社長
に意見できる者はいないという風土が醸成されていった。
㈱トライにおいて、通常の支払業務は、各事業部長の承認を経て社長が承認する
という業務フローが構築されているが、本件不正事案に関しては、前社長が部長承
認を経ずに請求書を直接経理担当者に渡し、支払処理を指示していた。経理担当者
が、部長承認を経ていない事を前社長に確認した際は、前社長は代表者自身が確認
した請求書は適正であり、部長の承認は不要である趣旨の返答を行い、改めて経理
担当者に対して支払処理を高圧的に指示している。
㈱トライにおいては、請求・支払処理における内部統制は概ね有効に機能してい
たものの、上記のいわゆる「社長案件」については、他の役職員は関知し得ないブ
ラックボックスとなっており、牽制機能が無効化されていたと言わざるを得ない。
3.当社による前社長に対する不十分な監視・監督
上記1記載の前社長による㈱トライの私物化を抑止する事ができていなかった
点については、親会社である当社における前社長に対する監視・監督が不十分であ
った事にも原因があると考えられる。
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当社グループにおいては、各子会社の経理業務を当社が行う事で、一定の牽制機
能が働き、ガバナンスを保っている。
しかし、㈱トライについては2016年に当社の連結子会社となって以降も、前社長
の強い要求により、㈱トライの経理担当者1名と前社長との非常に閉鎖された環境
の中で経理業務が行われており、当社により牽制機能が十分に効かない状況であっ
た事が本件不正行為発生の背景になったと考えられる。
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第5 再発防止策
1.牽制機能の強化
(1) ㈱トライにおける内部統制の見直し
前社長に権限が集中し、また、前社長を牽制できる人材がいなかった事が本件不
正行為を容易にした一因である。前社長は㈱トライを去ったとは言え、このような
環境を再び発生させないため、㈱トライにおける適切な業務分掌の再構築、人事ロ
ーテーション等、㈱トライにおける内部統制システムによる監視・監督機能の強化
が求められる。同社の規模・人員からは親会社である当社と同等の内部監査や監査
役監査が機能する事は望めないが、同社の内部監査担当者と監査役(当社の監査役
と兼ねる事が多い)と、当社の内部監査部門・監査役会との連携を強化し、さらに
監査法人とも連携して三様監査を実効的なものにする必要がある。
具体的には、会計監査上の監査計画で示されるリスク及び監査役監査上の監査計
画で示される重点実施事項と連動した内部監査計画を策定する中で、本件不正行為
の再発を防ぐべく、不正の兆候を検出するような取引テストの実施や、月次損益推
移の異常点分析手続等を実施する事が考えられる。
また、内部通報制度の見直しも重要である。従前から当社を通報窓口とした内部
通報制度は整備されていたものの、子会社レベルでは違法・不正行為等の予防措置
としては実効性に乏しかったと考えられる。通報窓口として顧問弁護士等の社外第
三者を加える事、通報窓口をグループ全体に再度周知徹底する事、通報者の不利益
防止を担保する事等により、内部通報制度をより実効性の高いものにする必要があ
る。
(2) 当社主導による経理業務の問題改善
会社としてのガバナンスを確保するため、親会社の経理部に牽制機能を設けると
ともに、親会社の経理部門の担当者が定期的に㈱トライを訪問し、少人数体制の子
会社経理部門の相談を受ける等、問題改善にあたるべきである。
2.コンプライアンス教育
㈱トライにおいては、社長案件が存在している事について、ほとんどの者が問題
意識さえ有していなかった。今後、上記 1 記載のように牽制機能の強化を図った
としても、㈱トライの役職員が、不正の徴候を認識した場合に従来同様声を上げな
かった場合には、牽制機能を働かせる事はできない。そこで、㈱トライにおいてコ
ンプライアンス教育を拡充し、役職員 1 人 1 人の意識を高める必要がある。
この点、当社では、同社グループの役職員の職務執行が法令及び定款に適合する
よう、
「コンプライアンス・マニュアル(基本方針・行動基準)」及び「コンプライ
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アンス規程」を定めている。同規程において、「役員及び従業員は、他の役員及び
従業員の法令等に反する行為を黙認してはならない」等と定め、当社の子会社の各
役職員も、法令等に違反する行為を認識した場合に声を上げる事が求められている
ように、㈱トライにおいて、上場会社である当社の子会社として、役職員 1 人 1 人
が業務の適正を確保する必要がある事を自覚すべく、改めてこれらの「コンプライ
アンス・マニュアル(基本方針・行動基準)
」や「コンプライアンス規程」を周知
し、各役職員に対するコンプライアンス教育を行うべきである。
3.ひかりホールディングスにおける子会社管理体制の強化
(1)当社グループ内部監査部門の強化
これまで親会社である当社の監査課が内部監査を実施していたが、コンプライア
ンス室として活動を強化し、これまで年1回であった監査業務の頻度を高め、発見
された問題点を素早く改善するしくみを構築すべきである。また、監査効率を上げ
るため、監査対象とする証憑等の電子データ化に着手し、遠隔地からでも監査でき
る仕組みを構築すべきである。
(2)組織再編によるガバナンスの強化
2021年7月6日付で当社が開示した「連結子会社の再編(完全子会社間の合併)及
び商号変更に関するお知らせ」に記載の通り、㈱トライと当社の連結子会社で同一
セグメント(電気通信工事事業)の株式会社ネットを2021年9月1日付で合併する
予定である。今回の組織再編は事業基盤の強化に加え、経理部門を合併後の新会社
には置かず、当社で経理実務を行う体制を取る事で同社に対する牽制機能・監視監
督機能を高める目的があり、これによって三様監査がより実効的なものになる事が
期待される。
以 上
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