1301 極洋 2021-03-29 11:30:00
新中期経営計画『Build Up Platform 2024』(2021年度~2023年度) [pdf]

                                            2021 年 3 月 29 日
各   位
                      会       社   名 株 式 会 社 極            洋
                      代 表 者       名 代表取締役社長 井 上          誠
                                  (コード番号   1301 東証第一部)
                      問 合 せ       先 企 画 部 長 小 田 匡 彦
                                        (TEL 03-5545-0703)




          新中期経営計画『Build Up Platform 2024』

                  (2021 年度∼2023 年度)




Ⅰ.社会環境
 わが国における水産・食品業界を取り巻く環境は、人口減や魚食の減少による継続的なマーケ
ットの縮小傾向、さらに人手不足による物流、労務費の上昇といった収益を圧迫する要因の増加
など、より厳しさを増しております。また、少子高齢化や女性の就業率上昇によるライフスタイ
ルの変化を背景とした「多様化する消費者ニーズへの対応力」といった事業課題もより一層重要
となっております。
 世界では特にアジア新興国を中心に経済成長が続き、中間層が拡大しております。水産物資源
についても所得増による水産物需要の高まりや和食ブーム等により、その確保については厳しい
状況が続いております。
 直近では新型コロナウイルスが世界的規模で猛威をふるい、世界の GDP 成長率がマイナスに
なるなど、世界各国の社会経済が大きなダメージを受けております。こうした影響から、社会の
意識や行動にも変化が生じており、新型コロナウイルスが収束しても、この変化は常態化(ニュ
ーノーマル)すると思われます。更には、アメリカの政権交代や中国の台頭などが世界経済や地
政学リスクに与える影響を注視していく必要があります。
 一方、2020 年 10 月、脱炭素社会の実現を目指す「2050 年カーボンニュートラル」が政府から
宣言されるなど、持続可能な社会への挑戦は経済成長の制約ではなく、産業構造や経済社会の変
革を通じた新たな成長戦略であるという認識が浸透してきております。




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Ⅱ.新中期経営計画(2021 年度∼2023 年度)の基本方針
 『経営基盤の強化を図りながら、
               「事業課題への継続的取組み」と「持続的成長への挑戦」を柱
  とする戦略を進め、社会と極洋それぞれが共有するべき価値を創造していくことで、新たな
  成長への礎となる「高収益構造への転換」を目指す。』


 現中期経営計画では、
          「魚を中心とした総合食品会社として、高収益構造への転換をはかり、資
源、環境、労働などの社会的要請を踏まえ、事業ウイングの拡大と時間価値の提供により企業価
値の向上を目指す」という基本方針のもと、
                   「ESG 重視の事業活動」を通じて「拡大」
                                       「強化」
                                          「均
衡」の各戦略を進め、高収益構造へ大きく転換していくことを目指し、取り組んできました。
 資源アクセス強化のための出資、テレビ CM による企業ブランドの向上、自己資本比率や D/E
レシオ向上など財務体質の改善に一定の成果が出た一方で、課題も多く残っております。
 「拡大」戦略では施策の中心であった食品事業・海外事業の規模が想定通りの進捗まで伸びず、
「強化」戦略ではマーケットニーズに対応した商品開発のスピード強化に課題を残しました。
                                         「均
衡」戦略では、市況変動や養殖環境変化などのリスク対応の遅れから、水産商事事業、養殖事業
等の収益安定化が道半ばとなりました。これらの課題は、今後も継続的に取り組んでいく必要が
あります。
 また、新型コロナウイルスにより、外食・産業給食から量販店・宅配・テイクアウトへと食品
需要がシフトするとともに、テレワークなど働き方にも変化が生じており、当社グループとして
も、商品構成や販売チャネルの見直しはもとより、業務の抜本的な改革を行うことで、様々な変
化に柔軟に対応し、持続的な成長を果たしていかなくてはなりません。
 更に、環境や水産資源に配慮した取り組みや、ダイバーシティ推進といった持続可能な社会の
実現に向けた国内外の意識の高まりから、自社の持つ強みを生かしながら、これらの社会問題を
解決する「企業と社会の共有価値の創造」を目指すことが求められており、当社にとっても挑戦
すべき新たなビジネスチャンスと考えられます。新中期経営計画においては、ESG、SDGs とい
った持続可能な社会の実現に向けた責任を果たし、社会と企業のそれぞれが持つ価値を共有する
ことで、高収益構造への転換を図って参ります。
あわせて「生活を楽しむための食」の提供を追求し、当社の企業理念である「健康で心豊かな生
活と食文化に貢献し、社会とともに成長する」という極洋としての強いメッセージを発信し、
                                         「魚
を中心とした総合食品会社」として独自の存在感を高めてまいります。




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1.新中期経営計画イメージ図



                       高収益構造への転換



                    社会と極洋の共有価値の創造
                    ・生物多様性の保全                           様々な社会問題
   様々な社会問題
                    ・脱炭素社会、資源循環型社会の実現
                    ・健康で心豊かな生活と食文化への貢献




        事業課題への継続的取組み                   持続的成長への挑戦

         ※現中計「拡大」
                「強化」「均衡」               ※「ニューノーマルな時代」の変化
          各戦略の進化、深堀                     への挑戦




         経営基盤(事業基盤・財務基盤・人材基盤等)の強化、ESG 経営




2.2024 年 3 月期目標値


   売上高 3,000 億円    営業利益 70 億円       経常利益 65 億円
   海外売上高 300 億円
   D/E レシオ 1.5 倍、営業利益率・経常利益率 2%超

(セグメント別 目標値)
                         売上高            セグメント利益
 水産商事                   1,420億円                  36億円
 食品 (冷凍食品+常温)           1,240億円                  30億円
 鰹鮪                       330億円                  14億円
 その他                       10億円             △10億円
 合計                     3,000億円                  70億円




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Ⅲ.戦略設定
1.事業課題への継続的な取組み
(1)食品事業の拡大
   食品事業は着実に伸長してきましたが、業務筋を中心とした販売となっていたことで、新
   型コロナウイルスの影響を大きく受けております。今後は従来の業務用商品に加え、市販
   用商品の拡大や、環境の変化に柔軟に対応できるチャネルの多様化にも注力していく必要
   があります。
  組織再編により、食品事業拡大のための役割分担を明確化し、安心安全な製品づくりや自
  社工場の生産規模拡大と生産性の向上、量販店・宅配や EC サイトでの販路拡大、更には
  物流費を中心とする経費の削減等を進め、食品事業の収益性を高めてまいります。


(2)海外事業の拡大
   海外事業は日本産海産物の輸出や米国現地法人の販売拡大等により、大きく伸ばしてきま
   したが、日本と比較して新型コロナウイルスの影響を強く受けたことから、海外売上高比
   率が前年比で減少する見込みとなっております。
   縮小傾向にある国内マーケットに比べ、成長性の高い海外マーケットでの販売強化を早急
   に進めていく必要があることから、新たな海外拠点の設置や、提携先の開拓など、販売体
   制の強化を図ってまいります。また、MEL取得商品の積極的な取り扱いや製造工場での
   各種認証取得、海外販売用製品の開発により、自社製品の販売拡大を図ってまいります。


(3)水産商事事業及び養殖事業の収益安定化
   水産商事事業は長年の経験やサプライヤーとの協業販売に強みを持ち、当社の収益の柱と
   なっておりますが、魚価の大幅な変動による損失計上など、収益安定化に課題を残してい
   ます。
   家庭消費をターゲットにした新規販売ルートの構築や、取り扱い魚種の多様化など、事業
   規模の拡大を図ることとあわせ、市況に左右されない高付加価値商品、差別化商品の開発
   を強化します。また、仕入れ管理の徹底により在庫回転率を高め、事業リスクを低減して
   まいります。
  さらに、養殖事業においても斃死魚対策や飼料の改良などの養殖技術の向上、また、確固
  とした販売ルートの開拓、付加価値商品比率の向上等を製販一体となって進め、収益安定
  化を図ってまいります。


(4)資源アクセスの強化
   水産物の持続的活用のためには海洋資源の適切な管理が必要であり、資源保護の観点から
   もトレーサビリティが重視されております。当社は自社漁労による海外まき網事業や完全
   養殖クロマグロをはじめとする養殖事業など、調達力の多様化を図っておりますが、引き
   続き安定供給の維持拡大を図るため、資源アクセスの強化に取り組んでまいります。


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2.持続的成長への挑戦
(1)商品開発、ブランドの強化
   共働き世帯の増加や高齢者比率の上昇などにより、食のライフスタイルが変化したことで、
   時短・簡便化といった「時間価値への要求」は従来以上に強くなっています。業務用では
   人手不足が深刻な外食、介護施設、市販用では単身、共働き世帯等の時短・簡便化ニーズ
   に応えるため、
         「時間価値の創造」にこだわった研究開発、商品開発を迅速に進めてまいり
   ます。
   また市販食品の販売には、ブランドの強化が必要不可欠です。
                              「キョクヨー」ブランドを中
   心に、市販食品ブランドである「シーマルシェ」の認知度向上のため、テレビ CM や SNS
   など、様々な媒体を通じた広報活動を進めてまいります。


(2)食の楽しみへのこだわり
   時短・簡便化のニーズが増える一方で、新型コロナウイルスによる「新しい生活様式」が
   浸透するにつれ、生活を楽しむ工夫が随所でみられるようになり、食についても素材への
   拘りや、ひと手間かけることで「生活を楽しむ」
                        「元気になる」といった役割が再認識され
   るようになってきております。
   当社では「時間価値の創造」とともに、素材と美味しさへの工夫に拘った「シーマルシェ」
   ブランド商品の拡充や多様な消費者の声を活かした商品づくりを進め、
                                  「生活を楽しむため
   の食」という価値を追求していくことで、
                     「健康で心豊かな生活と食文化に貢献する」とい
   う企業理念の実現を目指してまいります。


(3)DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
   新型コロナウイルスや異常気象による災害など、企業経営を取り巻く環境は不透明さを増
   しております。DX を推進し、業務の電子化をはじめ、効率的な製造ラインや高度な品質
   管理手法の開発など、業務の効率化・高度化を進めながら、新たなビジネスモデルの構築
   にも取り組んでまいります。


(4)2050 年カーボンニュートラルに向けた取組み
   当社グループでは、これまでグループ工場を中心に、電力使用量の削減による CO2 排出量
   の削減に努めてまいりました。
   今後は、2050 年のカーボンニュートラルに向け、AI の活用や食品ロス削減を念頭におい
   た商品開発、エシカル飼料の開発やバイオマス発電の利用など、カーボン・オフセットへ
   の取り組みを進めてまいります。


3.経営基盤の強化、ESG 経営
(1)事業基盤の強化
   当社はマダイ等の養殖会社への出資、タイ国の製造子会社の設備投資等により、事業基盤
    を拡充してまいりました。
   今後も保有する事業基盤を有効活用し、積極的に新規投資を進めることで、事業基盤を拡
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   大してまいります。


(2)財務基盤の強化
   安定した利益計上や棚卸資産等の事業用資産の効率的な活用により、自己資本比率などの
   財務基盤は、現中期経営計画の目標の達成に向けて着実に強化されてきました。
   今後も安定的な利益の積み上げで財務基盤の強化に努め、事業活動で獲得した資金につい
   ては、株主への配当、積極的な投資、有利子負債の削減等、バランスよく配分してまいり
   ます。


(3)人材基盤の強化
   変化の激しい時代に事業拡大を図るためには、多様な人材が活躍できる環境を整える必要
   があります。時間外労働の削減、有給取得、時短勤務、リモートワークなど、ワークライ
   フバランスに配慮した多様な働き方を尊重し、労働環境の改善の他、人材育成の強化や人
   事制度改革を通じ、人材基盤を強化してまいります。


(4)ESG 経営
   SDGs(国連の持続可能な開発目標)で掲げる目標に向けての取り組みを強化することは、
   これからの企業経営において必要不可欠であり、企業経営の根幹を成すものであります。
   売上や利益などの「経済価値」を追求するだけでなく、社会課題の解決に貢献する「社会
   価値」を追求することで、企業価値を高め、社会から必要とされるような存在にならなけ
   ればいけません。
   環境面では、SeaBOS への参画や海洋プラスティックごみへの対応、各種認証の取得、端
   材や加工残渣の有効活用、サプライヤーとの責任ある調達の取組み(キョクヨーグループ
   調達基本方針)などによって、水産資源の持続可能性を高め、安定した水産物の供給を行
   ってまいります。また、地域社会とのコミュニケーションを通じ、地域の活性化に努める
   とともに、社会的要請への対応、働きやすい労働環境の整備にも努めてまいります。
   積極果敢な経営判断を行い、企業価値を高めるためには、コンプライアンスの徹底はもと
   より、良好なガバナンスが必要不可欠です。経営の効率性・透明性の確保に努め、積極的
   な情報開示とステークホルダーとのコミュニケーションの充実を図ることで、社会から信
   頼される企業を目指してまいります。


  上記の戦略を通じ、常に変化する消費者のニーズや社会からの要請に対して、総合食品会社
  として当社が持つ価値を積極的に提供することで共有価値を創造し、持続可能な社会に貢献
  してまいります。そして、社会と当社で共有した価値をさまざまな戦略の中でビジネスとし
  て展開していくことで、事業拡大及び利益率改善による収益安定化を図り、高収益構造への
  転換を図ってまいります。


                                          以 上


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